本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定のゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び前記式(I)及び/又は(II)で示されるポリスルフィド化合物を所定の配合で含むものである。
特定のゴム成分とシリカを含む配合において、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性などの性能向上の効果が期待できるものの、加工性の低下が懸念されるメルカプト系シランカップリング剤と、特定のポリスルフィド化合物とを配合することで、加工性が改善されると同時に、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性の改善効果も発揮され、これらの性能バランスを相乗的に改善できる。
更に、通常ゴム組成物は、硫黄、スルフェンアミド系加硫促進剤などの加硫薬品(加硫剤及び加硫促進剤)以外の薬品を混練するベース練り工程と、該工程で得られた混練物に加硫薬品を添加して混練する仕上げ練り工程とをこの順に行って製造されるが、ここで、前記ポリスルフィド化合物を仕上げ練り工程より前に行われるベース練り工程で混練することで、劇的に加工性が向上するとともに、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性も大きく改善されるため、前記性能バランスをより顕著に改善することが可能になる。
前記ゴム組成物において、ゴム成分は、ポリイソプレン系ゴム以外のジエン系ゴム、必要に応じてポリイソプレン系ゴムを所定量含む。
ポリイソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴムなどをあげることができる。これらのゴム成分は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のポリイソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。1質量%未満であると、耐摩耗性が著しく低下するおそれがある。また、該含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。60質量%を超えると、加工性が低下する傾向がある。
ポリイソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムのなかでも、加工性、低燃費性、ゴム強度、及び耐摩耗性をバランス良く改善できるという点から、共役ジエン化合物由来の構造単位を50質量%以上含むものを好適に使用することができ、具体的には、BRが好ましい。
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなどの高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617などのシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。BRのシス含有量は、95質量%以上が好ましい。
本発明のゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、BRの含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。60質量%を超えると、ゴム強度が低下する傾向がある。
ポリイソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)などがあげられる。NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。同様に、IRについても、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
ポリイソプレン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、0〜99質量%であるが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。また、該ポリイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。99質量%を超えると、耐摩耗性が低下するおそれがある。
本発明では、前記効果が充分に得られるという点から、ゴム成分100質量%中のBR及びポリイソプレン系ゴムの合計含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上であり、また、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。上記範囲内であれば、低燃費性及び加工性がバランス良く得られる。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。10質量部未満であると、充分な低燃費性が得られないおそれがあり、また、耐摩耗性が低下するおそれもある。また、該シリカの含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。80質量部を超えると、ゴム組成物中において、シリカが均一に分散することが困難となり、ゴム組成物の加工性が悪化するだけでなく、転がり抵抗も増大するおそれがある。
本発明では、転がり抵抗の低減とゴム強度や耐摩耗性の向上とを両立できるという理由から、シリカとして、N2SAが40m2/g以上、120m2/g未満のシリカ(1)と、N2SAが120m2/g以上のシリカ(2)とを併用することがより好ましい。
シリカ(1)としては特に限定されず、例えば、デグッサ社製のウルトラジル360、ローディア社製のZ40、ローディア社製のRP80などとして入手できる。同様に、シリカ(2)としては特に限定されず、ローディア社製のゼオシル1205MPなどとして入手できる。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ(1)及び(2)は、N2SAが下記式を満たすことが好ましい。
(シリカ(2)のN2SA)/(シリカ(1)のN2SA)≧1.4の関係を満たすことが好ましく、(シリカ(2)のN2SA)/(シリカ(1)のN2SA)≧2.0の関係を満たすことがより好ましい。1.4未満であると、シリカ(1)及び(2)の粒子径の差が小さく、2種類のシリカをブレンドすることによる効果が充分に得られない傾向がある。
シリカ(1)のN2SAは、40m2/g以上、好ましくは50m2/g以上である。40m2/g未満であると、充分な補強性が得られず、ゴム強度や耐摩耗性が低下するおそれがある。また、シリカ(1)のN2SAは、120m2/g未満、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは80m2/g以下である。120m2/g以上であると、シリカ(1)及び(2)の併用による効果が充分に得られないおそれがある。
シリカ(2)のN2SAは、120m2/g以上、好ましくは150m2/g以上である。120m2/g未満であると、シリカ(1)及び(2)の併用による効果が充分に得られないおそれがある。また、シリカ(2)のN2SAは、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは220m2/g以下である。250m2/gを超えると、低燃費性や加工性が悪化する傾向がある。
シリカ(1)及び(2)は、含有量が下記式を満たすことが好ましい。
(シリカ(1)の含有量)×0.06≦(シリカ(2)の含有量)≦(シリカ(1)の含有量)×15
シリカ(2)の含有量がシリカ(1)の含有量の0.06倍未満では、充分なゴム強度や耐摩耗性が得られない傾向がある。また、シリカ(2)の含有量がシリカ(1)の含有量の15倍を超えると、転がり抵抗が増大する傾向がある。なお、シリカ(2)の含有量は、シリカ(1)の含有量の0.3倍以上がより好ましく、0.5倍以上がさらに好ましい。また、シリカ(2)の含有量は、シリカ(1)の含有量の7倍以下がより好ましく、4倍以下がさらに好ましい。
シリカ(1)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。また、シリカ(1)の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。30質量部を超えると、低燃費性は良好であるが、ゴム強度や耐摩耗性が低下する傾向がある。
シリカ(2)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、充分なゴム強度、耐摩耗性が得られないおそれがある。また、シリカ(2)の含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。70質量部を超えると、ゴム強度、耐摩耗性は良好であるが、加工性が悪化する傾向がある。
シリカ(1)及び(2)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、シリカ(1)及び(2)のブレンドによる充分な補強効果、転がり抵抗低減効果が得られないおそれがある。また、シリカ(1)及び(2)の合計含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。80質量部を超えると、ゴム組成物中において、シリカが均一に分散することが困難となり、ゴム組成物の加工性が悪化するだけでなく、転がり抵抗も増大するおそれがある。
メルカプト基(−SH)を有するシランカップリング剤としては、下記式(1)で表される化合物、及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物を好適に使用できる。
(式(1)中、R
101〜R
103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R
111−O)
z−R
112(z個のR
111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR
111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R
112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R
101〜R
103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R
104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
(式(2)及び(3)中、R
201は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R
202は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)
以下、式(1)で表される化合物について説明する。
式(1)で表される化合物を使用することで、シリカが良好に分散し、本発明の効果が良好に得られ、低燃費性を顕著に改善できる。
R101〜R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R111−O)z−R112で表される基を表す。本発明の効果が良好に得られるという点から、R101〜R103は、少なくとも1つが−O−(R111−O)z−R112で表される基であることが好ましく、2つが−O−(R111−O)z−R112で表される基であり、かつ、1つが分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基であることがより好ましい。
R101〜R103の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基などがあげられる。
R101〜R103の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトシキ基、tert−ブトシキ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、へプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基などがあげられる。
R101〜R103の−O−(R111−O)z−R112において、R111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。
該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基などがあげられる。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基が好ましい。
R111の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。
R111の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。
R111の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。
R111の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などがあげられる。
zは1〜30(好ましくは2〜20、より好ましくは3〜7、さらに好ましくは5〜6)の整数を表す。
R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
R112の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などがあげられる。
R112の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基などがあげられる。
R112の炭素数6〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などがあげられる。
R112の炭素数7〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
−O−(R111−O)z−R112で表される基の具体例としては、例えば、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C12H25、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C14H29、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)3−C13H27、−O−(C2H4−O)4−C13H27、−O−(C2H4−O)6−C13H27、−O−(C2H4−O)7−C13H27などがあげられる。中でも、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)6−C13H27が好ましい。
R104の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、R111の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基をあげることができる。
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式で表される化合物(EVONIK−DEGUSSA社製のSi363)などがあげられ、下記式で表される化合物を好適に使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
次に、式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物について説明する。
式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物は、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
また、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C7H15部分が結合単位Bの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
上述した加工中の粘度上昇を抑制する効果や、スコーチ時間の短縮を抑制する効果を高めることができるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(2)、(3)と対応するユニットを形成していればよい。
R201のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などがあげられる。
R201の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R201の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R201の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R202の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R202の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R202の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C7H15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
メルカプト基を有するシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満では、低燃費性の改善効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。20質量部を超えると、ゴム強度が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、補強用充填剤としてシリカの他に、カーボンブラックを含有することが好ましい。使用できるカーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは85m2/g以上であり、また、好ましくは150m2/g以下、より好ましくは105m2/g以下である。カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは80ml/100g以上、より好ましくは110ml/100g以上であり、また、好ましくは180ml/100g以下、より好ましくは140ml/100g以下である。これらの特性が下限未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。上限を超えると、加工性が悪化する傾向がある。なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001に準拠して測定され、ジブチルフタレート(DBP)吸油量はJIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該カーボンブラックの含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。90質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。30質量部未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。該合計含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。200質量部を超えると、充分な低燃費性、加工性が得られないおそれがある。
本発明のゴム組成物のカーボン比率は、40以上、好ましくは50以上、より好ましくは53以上である。40未満であると、高荷重での耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、本発明のゴム組成物のカーボン比率は、好ましくは90以下、より好ましくは80以下である。90を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
なお、カーボン比率は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
本発明では、下記式(I)及び/又は(II)で示されるポリスルフィド化合物が使用される。
(式中、R
1は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基を表す。nは、2〜6の整数を表す。)
(式中、R
2は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基を表す。mは、2〜6の整数を表す。)
上記式(I)において、R1は、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基であるが、該炭素数は、好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10である。R1の1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基が好ましい。
R1としては、例えば、炭素数3〜15のアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基などが挙げられ、なかでも、アラルキル基、置換アラルキル基が好ましい。ここで、アルキル基としては、ブチル基、オクチル基;シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基;アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基;などが挙げられ、置換基としては、オキソ基(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アセチル基、アミド基、イミド基などの極性基などが挙げられる。
上記式(I)において、nは、2〜6の整数であるが、好ましくは2〜3、更に好ましくは2である。
上記式(II)において、R2は、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基であるが、該炭素数は、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜8である。R2の2価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましい。
R2としては、例えば、炭素数3〜15のアルキレン基、置換アルキレン基などが挙げられる。ここで、アルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基などが挙げられ、置換基としては、R1の置換基と同様のものなどが挙げられる。
上記式(II)において、mは、2〜6の整数であるが、好ましくは2〜3、更に好ましくは2である。
上記式(I)、(II)で示されるポリスルフィド化合物の具体例としては、N,N′−ジ(γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−メチル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−エチル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−イソプロピル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−メトキシ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−エトキシ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−クロル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−ニトロ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−アミノ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−バレロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−メチル−δ−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−エチル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−イソプロピル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−メトキシ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−エトキシ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−クロル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−ニトロ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−アミノ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(ω−ヘプタラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(ω−オクタラクタム)ジスルフィド、ジチオジカプロラクタム、モルホリン・ジスルフィド、N−benzyl−N−[(dibenzylamino)disulfanyl]phenylmethanamine(N,N′−ジチオビス(ジベンジルアミン))などが挙げられる。これらのポリスルフィド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ポリスルフィド化合物の含有量は、前記シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。0.5質量部未満では、良好な加工性を確保できず、前記性能バランスを充分に改善できないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは13質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えると、加工性が低下するおそれがある。
また、前記ポリスルフィド化合物の含有量は、メルカプト基を有するシランカップリング剤100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは80質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、更に好ましくは300質量部以下である。下限未満である場合、上限を超える場合、前記と同様の傾向がある。
本発明のゴム組成物は、通常、仕上げ練り工程で添加、混練される加硫薬品を含む。加硫薬品としては、加硫剤、加硫促進剤が挙げられる。
加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄が挙げられる。
本発明のゴム組成物が硫黄を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。0.5質量部未満では、架橋が少なく、各種ゴム物性が悪化するおそれがある。また、該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。6.0質量部を超えると、ゴム強度が低下する傾向がある。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、加硫特性に優れる点から、スルフェンアミド系、グアニジン系加硫促進剤が好ましく、これらの併用がより好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられ、グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)等が挙げられる。
本発明のゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上である。0.7質量部未満では、加硫開始時間が遅くなる傾向がある。また、該含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下である。5.0質量部を超えると、加硫速度が早く、加工中に焼け(スコーチ)が発生するおそれがある。
本発明のゴム組成物には、前記成分の他、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、可塑剤、滑剤、ワックスなど、タイヤ工業において一般的に用いられている各種材料が適宜配合されていてもよい。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫(架橋)する方法等により製造できる。
なかでも、加硫薬品の混練工程より前の工程において、前記ポリスルフィド化合物を混練して作製することが好ましく、例えば、ゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤及び前記ポリスルフィド化合物を混練する工程1と、該工程1で得られた混練物及び加硫薬品を混練する工程2とを含む製造方法により好適に製造できる。この場合、加工性が劇的に改善されるとともに、低燃費性も顕著に改善される。
(工程1(ベース練り工程))
工程1では、前記ゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤及びポリスルフィド化合物を混練する。混練方法としては特に限定されず、バンバリーミキサー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される混練機を使用できる。なお、ベース練り工程は1回でもよいが、添加剤を分割したり、練り増しするなど、練り回数は特に限定されない。
工程1の混練温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下である。また、混練時間は特に限定されないが、通常30秒〜30分であり、好ましくは1〜30分間である。下限未満であると、シランカップリング剤とシリカの反応が十分に進まず、シリカを良好に分散させることができなくなり、ゴム物性の改善効果が小さくなる傾向がある。一方、上限を超えると、ムーニー粘度が上昇し、加工性が悪化する傾向がある。
本発明の効果が良好に得られるという点から、工程1で混練するゴム成分は、全量を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
(工程2(仕上げ練り工程))
工程1を行った後、工程1で得られた混練物を冷却した後、更に加硫剤、加硫促進剤の加硫薬品を添加して混練し、未加硫ゴム組成物を得る。
工程2の混練温度は、通常100℃以下であり、室温(20℃)〜80℃が好ましい。100℃を超えると、ゴム焼け(スコーチ)が生じるおそれがある。工程2の混練時間は特に限定されないが、通常30秒以上であり、好ましくは1〜30分間である。
(工程3(加硫工程))
工程2で得られた未加硫ゴム組成物を公知の方法で加硫することにより、本発明のゴム組成物が得られる。工程3の加硫温度は、本発明の効果が良好に得られるという点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
なお、適宜添加される配合材料(カーボンブラック、酸化亜鉛、可塑剤、滑剤、ワックス、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤など)を混練する時期は特に限定されないが、工程1で混練することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に用いることができ、トレッド(特に重荷重用タイヤのトレッド)に好適に用いることができる。
本発明の空気入りタイヤは、通常の方法により製造される。すなわち、上記ゴム組成物を通常の加工方法を用いて混練りし、得られた未加硫ゴム組成物を、タイヤのトレッドなどの形状に押し出し加工し、タイヤ成型機上で他の部材とともに通常の方法により貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを得ることができる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤ(トラック・バス用タイヤ)などに用いることができ、高い耐摩耗性が要求される重荷重用タイヤに特に好適に用いることができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴム(NR):TSR20
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のウベポールBR150B
シリカ1:デグッサ社製のウルトラジル360(N2SA:50m2/g)
シリカ2:ローディア社製のゼオシル1205MP(N2SA:200m2/g)
シリカ3:デグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤1:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位A及び結合単位Bを含む化合物(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
シランカップリング剤3:EVONIK−DEGUSSA社製のSi363
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m2/g、DBP吸収量:124ml/100g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のX−140
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン3C
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
ポリスルフィド化合物1:ジチオジカプロラクタム(三新化学工業(株)製)
ポリスルフィド化合物2:N−benzyl−N−[(dibenzylamino)disulfanyl]phenylmethanamine(Aldrich社製)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:住友化学(株)製のソクシノールCZ
加硫促進剤2:住友化学(株)製のソクシノールD
<実施例及び比較例>
(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、表1中のベース練りの項目に記載の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た(ベース練り工程)。次に、得られた混練り物に、表1中の仕上げ練りの項目に記載の材料を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た(仕上げ練り工程)。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成した後、170℃で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(カーボン比率)
JIS K6226−1:2003にて求められるカーボンブラック質量分率をA、灰分質量分率をBとし、以下の式により加硫ゴム組成物のカーボン比率を測定した。カーボン比率が高いほど、補強用充填剤に占めるカーボンブラックの割合が高いことを示している。
(カーボン比率)=A/(A+B)×100
(加工性指数1(ムーニー粘度))
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度を130℃で測定した。比較例1のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
(加工性指数2(シートの平滑度))
ロール加工後のゴムシートの平滑度について、表面及びエッジの平滑度の基準を3として、それぞれ5段階官能評価を実施し、その平均値をゴムシートの平滑度とした。数字が大きい方が優れている。
(低燃費性指数1(粘弾性))
前記加硫ゴム組成物から所定サイズの試験片を切り出し、(株)上島製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で、30℃における加硫ゴムシートの損失正接(tanδ)を測定した。比較例1のtanδを100とし、以下の計算式により指数表示した(低燃費性指数1)。指数が大きいほど、低燃費性に優れる。
(低燃費性指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(低燃費性指数2(転がり抵抗))
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した(低燃費性指数2)。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
(ゴム強度指数)
JIS K6251:2010に準じて引張試験を行い、破断伸びを測定した。測定結果を、比較例1を100とした指数で示した。指数が大きい程、ゴム強度(破壊強度)が大きいことを示している。
(ゴム強度指数)=(各配合の破断伸び)/(比較例1の破断伸び)×100
(耐摩耗性指数)
LAT試験機(Laboratory Abrasion and Skid Tester)を用い、荷重50N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件にて、各加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。比較例1の容積損失量を100とし、各配合について指数表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど耐摩耗性に優れる。
シランカップリング剤としてSi69を使用し、前記ポリスルフィド化合物を配合していない比較例1において、メルカプト系シランカップリング剤に置換した比較例2〜3では、加工性が低下し、また、前記ポリスルフィド化合物を添加した比較例5及び7では、加工性、ゴム強度及び耐摩耗性が低下し、低燃費性の改善効果も見られなかった。これに対し、メルカプト系シランカップリング剤と前記ポリスルフィド化合物を配合した実施例では、加工性の改善効果が発揮されるとともに、低燃費性も大きく改善され、更にゴム強度及び耐摩耗性の改善効果も見られ、これらの性能バランスを相乗的に改善できることが明らかとなった。また、シリカとして低比表面積シリカと高比表面積シリカの混合物を使用することで、低燃費性及びゴム強度や耐摩耗性がバランス良く改善された(実施例7〜8)。更に、仕上げ練り工程に比べて、ベース練り工程でポリスルフィド化合物を混練することで、前記性能バランスを顕著かつ相乗的に改善できることも明らかとなった。