JP5991422B1 - シイタケ栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】榾木栽培において、心材における菌糸の繊維方向の伸びを利用して、少ない種駒により榾木にシイタケ菌を蔓延させるシイタケ栽培方法を提供する。【解決手段】榾木1に対してドリル5、12により断面円形の所定深さを有する植菌孔6を穿孔し、その後、植菌孔6を横切り植菌孔6の直径よりも狭い幅でありかつ榾木1の心材4に到達する切削を行って切込み8、11、13を形成し、植菌孔6に対して種駒9を植菌する。植菌孔6から心材4に到達した菌糸は、繊維方向にさらに延びる速度を速めて、榾木1の心材4から蔓延を開始し、栄養価が高く柔らかい辺材3へ到達するため、榾木1に埋め込む種駒9の数を減らせる。【選択図】図1
Description
この発明はシイタケの栽培に際し、クヌギやコナラなどの榾木を使用したシイタケ栽培方法に関するものである。
シイタケの栽培においては、直径が約10cm程度、長さ約90〜120cmのクヌギやコナラなどの榾木にドリルで多数の植菌孔を穿ち、この植菌孔に円柱状の木片にシイタケ菌を接種した木片駒を埋め込み、または特許文献1に示すようにオガクズとシイタケ菌を混合して培養した鋸屑種菌が円筒、円錐、角錐状の成形シートにパックされた成形駒を埋め込み、或いは鋸屑種菌を詰め込みロウ或いは発泡スチロールなどで封止してシイタケ菌を榾木へ活着させ蔓延させる。シイタケは、榾木に十分に菌糸が蔓延し、適した温湿度条件が続くと発生する。
榾木の植菌孔は、木片駒或いは成形駒(以下、統合して「種駒」と称する。)の長さよりもいくぶん深めに開けられる。種駒は通常長さ22mm乃至25mmであり、長くても30mmである。植菌孔の直径は、10mm乃至12mmである。特許文献2は、植菌孔を穿つ際に利用されるドリルの例を示している。
シイタケ菌は植菌孔を中心に榾木の縦方向(繊維方向)には菌糸の蔓延が早く、円周方向(繊維方向と直角)には菌糸の蔓延が遅いという特性があることはよく知られている。これを利用し、特許文献3においては、榾木への菌糸の蔓延を早めるために、木片駒、成形駒或いは鋸屑種菌によるシイタケ種菌を接種する植菌孔を縦及び横方向ともすべて同一線上に並べている。
長野県林指研究報告第3号(1987)P.7-P.12 「長野県のコナラ・クヌギ林の生長と心・辺材及び樹皮厚」
榾木として用いられるクヌギやコナラは、通常の木材と同様に、赤身と呼ばれる心材、白太と呼ばれる辺材、及び樹皮で構成されている。辺材は木が成長している際の、新陳代謝が活発な部分であり、光合成によるデンプン等栄養豊富な箇所である。心材は、細胞が安定化して死んで変質した部位であって、辺材より堅くて腐りにくい。栄養豊富な辺材の中に活着したシイタケ菌の菌糸は、固くかつ栄養が枯渇した心材へは伸びにくい。そのため、特許文献3に示されるように、榾木の表面に密度を高くして多数の種駒を埋め込み、辺材の側から心材に向かって榾木全体への菌糸の蔓延を図るのである。
非特許文献1(長野県林業指導所、現「長野県林業総合センター」)の調査によると、同文献図7のコナラでは辺材厚は1.0cm〜4.0cmの範囲に分布し、同文献図8のクヌギでは1.7cm〜4.5cmの範囲に分布しており、ほとんど心材が認められないものも多数存在している。また、同文献図9のコナラでは樹皮厚は0.2cm〜0.9cmの範囲に分布し、同文献図10のクヌギでは0.2cm〜1.0cmの範囲に分布していると報告している。皮付直径が10cm(クヌギでは12cm)を超えても、辺材の厚さは厚くなることが無いから、椎茸の榾木として利用されるコナラ、クヌギの辺材厚は、1.0cm〜4.0cmの範囲(クヌギでは1.7cm〜4.5cm)である。
一方、榾木を先行するドリルとしては、木工用ドリルに通常見られるように、ドリル本体を被削物の中に引き込んでいくための誘導ネジと呼ばれる先ネジがドリル本体の先端に付いているものもある。そのようなドリルでは、ドリル本体により開けられる植菌孔よりも、さらに深く切削するようになっている。このようなドリルを用いて植菌孔を穿つ場合、通常多く用いられる種駒の長さ2.2cm〜2.5cmを考慮しても、ドリルの先ネジの先端が到達する位置は、せいぜい樹皮表面から3.5cmである。
このような深さにおいては、植菌孔の先端が榾木の心材に届いているかもしれないし、届いていないかもしれないという状態である。このように、従来技術においては、榾木に心材、辺材の別を認識し、これらの相違を意図的に利用して菌糸の蔓延を効率化しようとする試みはされていない。
この発明は、榾木栽培において、心材における菌糸の繊維方向の伸びを利用して、少ない種駒により榾木にシイタケ菌を蔓延させることを可能にしたものである。
本発明は、榾木の心材に存在する縦方向の繊維を利用して、榾木の内側から榾木全体への菌糸の蔓延をさせるものである。
本発明のシイタケ栽培方法によれば、榾木に対してドリルにより断面円形の所定深さを有する植菌孔を穿孔し、その後、前記植菌孔を横切り当該植菌孔の直径よりも狭い幅でありかつ前記榾木の心材に到達する補助切削を直径方向に行い、前記植菌孔に対してシイタケ種菌を植菌することを特徴とする。
本発明のシイタケ栽培方法によれば、榾木に対してドリルにより断面円形の所定深さを有する植菌孔を穿孔し、その後、前記植菌孔を横切り当該植菌孔の直径よりも狭い幅でありかつ前記榾木の心材に到達する補助切削を直径方向に行い、前記植菌孔に対してシイタケ種菌を植菌することを特徴とする。
心材は栄養価が低く、シイタケ菌は心材の中を繊維方向に栄養を求めて菌糸を活発に伸ばすことがわかった。この速度は、栄養価の高い辺材における繊維方向と直角に延びる早さよりも速い。本発明ではこれを利用し、辺材に穿孔された植菌孔に対してさらに、植菌孔の径よりも狭い幅で、植菌孔の底から心材に到達する切削を行い、植菌孔に埋められた種駒からシイタケ菌が容易に心材へ菌糸を伸ばす通路を確保する。心材に到達した菌糸は、繊維方向にさらに延びる速度を速めて、榾木の心材から蔓延を開始し、栄養価の高く柔らかい辺材へ到達するため、シイタケ種菌を植菌する植菌孔の数を減らせるという効果がある。
以下、本発明のシイタケ栽培方法について、図面を用いて説明する。
図1はシイタケ栽培方法の工程を示している。使用される榾木1は、クヌギやコナラなどの樹木を秋に伐採し、そのまま放置して乾燥させその後直径が約10cm、長さ約100cmに玉切りしたものである。図1Aにおいて、榾木1は、外側から樹皮2、辺材3、心材4の層構造を有している。図1Aの榾木1は、辺材3の厚さT2が、心材4の直径T3の約半分程度の、典型的な榾木を示している。
図1はシイタケ栽培方法の工程を示している。使用される榾木1は、クヌギやコナラなどの樹木を秋に伐採し、そのまま放置して乾燥させその後直径が約10cm、長さ約100cmに玉切りしたものである。図1Aにおいて、榾木1は、外側から樹皮2、辺材3、心材4の層構造を有している。図1Aの榾木1は、辺材3の厚さT2が、心材4の直径T3の約半分程度の、典型的な榾木を示している。
図1Bにおいて、ドリル5を使用して榾木1に深さ約25〜30mm程度の直径12mmの断面円形の植菌孔6を形成する。図1Bにおいては、植菌孔6およびドリル5の先ネジ5aによる切削痕6aも辺材3の範囲内に留まっているが、榾木によっては、切削痕6aが心材に到達している場合もある。
次に、植菌孔6に対して補助切削を行う。補助切削は、丸鋸刃7、バンドソー10或いは、ドリル5よりも小直径(3mm)のドリル12を用いて行う。図1Cは、丸鋸刃7による切削を示しており、榾木1の外周から榾木1の直径方向に植菌孔6の中心を横切るように切削する。丸鋸刃7による補助切削の結果として形成された切込み8は、榾木1の心材4の層にまで達するが、中心Oにまでは到らないようにする。図には示していないが、植菌孔6を同一円周上で2個以上穿孔すると、切込み8を切削したときに榾木1の切断或いは折れになってしまう恐れがあるからである。植菌孔6に対して、種駒或いは鋸屑種菌の詰め込みによるシイタケ種菌を接種する。図1Dは、植菌孔6に種駒9を埋め込んだ様子を示している。尚、切込み8を榾木1の直径方向に設けているのは、植菌孔6の直径よりも広い範囲で、心材4における繊維を多く切断することにより、心材4の層に到ったシイタケ菌の菌糸が広い範囲で繊維の断面に到り、繊維方向に伸ばす為である。切込み8は植菌孔6の中心を横切るのが良いが、厳密に中心で無くとも良く、横切るものであれば良い。
図1Eは、バンドソー10による補助切削の結果として形成された切込み11を示しており、この場合も植菌孔6の中心を横切るように、また榾木1の直径方向に切込み11を切削する。この場合も、中心Oにまでは到らないようにする。図1Fは、植菌孔6に種駒9を埋め込んだ様子を示している。
丸鋸刃7及びバンドソー10による場合、切込み8、11の開口部が樹皮2の表面に現れるため、心材4が外気に触れる状態とすることができる。このため、湿度の調整や換気ができるため、菌糸の成長が促進される。
丸鋸刃7及びバンドソー10による場合、切込み8、11の開口部が樹皮2の表面に現れるため、心材4が外気に触れる状態とすることができる。このため、湿度の調整や換気ができるため、菌糸の成長が促進される。
図1Gは、小直径のドリル12による補助切削を示しており、植菌孔6の中心付近からさらに切込み13を切削する。図1Hは、植菌孔6に種駒9を埋め込んだ様子を示している。丸鋸刃7、バンドソー10の場合と異なり、湿度の調整や換気ができないことになる。また、心材4において切断する繊維が少なく、心材4の層に到ったシイタケ菌の菌糸が菌糸を伸ばせる範囲も限定される。しかしながら、本例においては、切込み13の開口部が樹皮2の表面に表れず、外気から雑菌が侵入する恐れが少ないという利点がある。
図2は、丸鋸刃7若しくはバンドソー10による切込み8若しくは切込み11を切削した榾木1を示している。丸鋸刃7若しくはバンドソー10のアサリ幅は、ドリル5の直径よりも小さく(3mm程度)であり、その結果切削された切込み8若しくは切込み11の幅w2若しくはw3は、植菌孔6の幅w1よりも狭いものとなっている。
図3は、シイタケ栽培方法のフローを示している。まず、榾木1の木口を観察して、樹皮2の表面から心材4までの距離を確認する(ステップS1)。植菌孔6として予定している深さよりも、樹皮2と辺材3が厚いかどうかを判断し(ステップS2)、厚いと判断された場合に先に図1で示した本発明のシイタケ栽培方法の各工程を行う。すなわち、ドリル5による予定深さの植菌孔6の穿孔(ステップS3)、植菌孔6に対して心材4に到る補助切削を行い切込み8、11若しくは13を形成する(ステップS4)、植菌孔6への種駒9の埋め込み(ステップS5)を実施する。
ステップS1において樹皮2の表面から心材4までの距離を確認し、植菌孔6の予定深さよりも辺材3が薄い、すなわち、心材4の部分が多いと判断される場合(ステップS6)、植菌孔6を穿孔しただけで、心材4に達してしまう場合が、多少存在する。この場合、辺材3の部分が少なく栄養価の低い榾木であると推定できる。但し、この場合であっても、切込み8若しくは11を設けた場合、心材4の部分の繊維をより多く切断するため、心材4の広い範囲で菌糸の成長が可能となり、また、外気と触れることにより菌糸の成長が促進される。
一方、ステップS3において植菌孔6として予定している深さよりも、樹皮2と辺材3が厚いことが確認されても、心材4が殆ど無いと判断される場合(ステップS7)がある。この場合、心材4に到達するまで切込み8若しくは11を設けると榾木1の切断に到ることがあり、また、切込み13を設けても、わずかに存在する心材4を利用した菌糸の蔓延はさほど期待できない。
また、図3のシイタケ栽培方法のフローによらずに、予め決められた深さだけ補助切削を行っても良い。この場合においては、ステップS1及びS2の榾木1の木口を観察と判定をすることなく、ステップS3の植菌孔6の穿孔を行う。そして、ステップS4において、植菌孔6の穿孔の後に予め決められた深さだけ補助切削を行う。予め決められた深さの切削であるため、心材4が殆ど無い場合には補助切削が心材4に届かない場合があるかもしれない。しかしながら、そのような確認の作業が不要となるため、榾木に対して個別の判断が不要な作業で良いことになる。
使用される榾木は、コナラを秋に伐採し、そのまま放置して乾燥させたものである。直径約10cm×長さ約90cmに玉切りした50本の榾木に対して植菌を行った。植菌したのは3月である。
図1に示したように、植菌孔6をあけ、さらに切込み8(丸鋸刃を使用)を切削し種駒9を植菌した。植菌孔6及び種駒9の数は、榾木1本あたり計10個乃至20個(凡そ16.8cm2あたり1個乃至11.9cm2あたり1個)である。植菌孔6の配列は千鳥状である(図2参照)。
シイタケの5品種に対して夫々50本の榾木を用意し、従来公知の通り仮伏せ、本伏せを行なったのち、浸水、水切り、芽出し作業を行ってきのこを発生させた。植菌の年の秋から翌年の秋までの間に5回浸水して、夫々シイタケを発生させた。
シイタケの5品種に対して夫々50本の榾木を用意し、従来公知の通り仮伏せ、本伏せを行なったのち、浸水、水切り、芽出し作業を行ってきのこを発生させた。植菌の年の秋から翌年の秋までの間に5回浸水して、夫々シイタケを発生させた。
榾木により大きくばらついてはいるが、1回の浸水当たりの榾木1本における平均収量は、228.6gであった。また、5回の浸水により収穫できたシイタケは、榾木の1本当たり1.143Kgであった。
これは、出願人における通常業務により行っている公知のシイタケ栽培(榾木1本あたり50個乃至70個(凡そ7.5cm2あたり1個乃至6.4cm2あたり1個)の植菌孔6を穿孔して植菌する)による収穫量に対して遜色が無い。すなわち、本発明を利用した場合、少ない種駒で、同量の収穫量を得ることができる。
また、植菌孔を穿孔する精算現場においては、多数のドリルで一度に多数の植菌孔を穿孔する道具を使用して作業者の肉体的、精神的な負担の軽減が図られているが、本実施例によれば、そもそもの植菌孔の個数が少ないので、さらに作業者の負担を減らせる。また、植菌孔の個数が少ないので、種駒を埋める作業時間が短縮できるという効果がある。
上記実施例においては、木片駒或いは成形駒による種駒を、植菌孔に埋め込んだ結果であるが、種駒9の代わりに、植菌孔6に対して鋸屑種菌を詰め込みロウなどで封止する栽培方法においても適用できる。この場合、切込み8,11は樹皮2の表面に開口しているが、切込み8、11は開口幅が狭くかつ表面が荒れており、おがくずの粒度では切込み8、11に詰め込むのは実質困難である。実質、植菌孔6に詰め込まれた鋸屑種菌が若干切込み8、11に落下する程度であり、菌糸が延びる状況は、種駒の場合と同様である。
1 榾木
2 樹皮
3 辺材
4 心材
5、12 ドリル
6 植菌孔
7 丸鋸刃
8、11、13 切込み
10 バンドソー
2 樹皮
3 辺材
4 心材
5、12 ドリル
6 植菌孔
7 丸鋸刃
8、11、13 切込み
10 バンドソー
Claims (2)
- 榾木に対してドリルにより断面円形の所定深さを有する植菌孔を穿孔し、その後、前記植菌孔を横切り当該植菌孔の直径よりも狭い幅でありかつ前記榾木の心材に到達する補助切削を直径方向に行い、前記植菌孔に対してシイタケ種菌を植菌することを特徴とするシイタケ栽培方法。
- 前記補助切削は、丸鋸刃若しくはバンドソーを前記榾木の直径方向に当てて切削するものであることを特徴とする請求項1記載のシイタケ栽培方法。
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