JP2004236625A - 原木椎茸の周年栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】一品種の椎茸菌を使用した椎茸の原木栽培において、椎茸の生産量を調整することができる原木椎茸の周年栽培方法を提供する。
【解決手段】本発明の原木椎茸の周年栽培方法は、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程と、椎茸の発芽促進を遅効的に行う手順として、夏の高温時に榾木を所定の第1室温に保った状態におく第1保温工程と、所定の時期に榾木を腐朽温度の状態におく第2保温工程と、を含み、椎茸の発芽抑制を行う手順として、榾木を所定の第2室温に保った状態におき、一定時間放置した後に所定の水温に浸水させる浸水工程を含む。
【選択図】 図4
【解決手段】本発明の原木椎茸の周年栽培方法は、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程と、椎茸の発芽促進を遅効的に行う手順として、夏の高温時に榾木を所定の第1室温に保った状態におく第1保温工程と、所定の時期に榾木を腐朽温度の状態におく第2保温工程と、を含み、椎茸の発芽抑制を行う手順として、榾木を所定の第2室温に保った状態におき、一定時間放置した後に所定の水温に浸水させる浸水工程を含む。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一品種の椎茸菌を使用した椎茸の原木栽培において、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができ、また、一時期に椎茸が大量発生しないようにその芽数を減少させることができる椎茸栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
椎茸栽培には、大きく分けて、原木栽培と菌床栽培の2通りがある。
【0003】
椎茸の原木栽培は、古く江戸時代から行われている栽培方法であり、図1にその工程を示す。椎茸の原木栽培には、主にナラ・クヌギの木が使われ、紅葉の始まる頃に伐採される(S101)。伐採された原木は、管理しやすいように90cmから1mの長さに切断され(玉切り)(S102)、12月から4月までの間に、前記原木に種菌を植え付ける植菌作業が行われる(S103)。植菌終了後の前記原木は、この原木内に椎茸菌を伸長・蔓延させる(活着)ことを目的として、温度と湿度を一定に保ったビニルハウス内に置かれる(仮伏せ)(S104)。椎茸菌が蔓延した原木を榾木というが、仮伏せ後の榾木は、人口榾場か林内榾場に置かれ、必要に応じて人口散水するなどして、椎茸菌にこの榾木を腐朽させるための管理が行われる(本伏せ)(S105)。その後、発生した椎茸は(S106)、市場に出荷される(S107)。
【0004】
一方、椎茸の菌床栽培は、オガクズなどを固めた培地に種菌を植え付け栽培する方法である。近年、この方法による椎茸栽培が増加している。
【0005】
原木栽培された椎茸は、菌床栽培されたものや、外国から輸入されたものと比較して、形、大きさ、味及び食感のいずれにおいても優れていると需要者に高い評価を受けている。
【0006】
しかしその一方で、椎茸の原木栽培は、多大な労働力が必要であるうえに、椎茸の発生に波があり一定の生産量を保てないという問題があった。そこで、通常椎茸の出荷がほとんどない、平均気温20℃から27℃の期間、例えば山梨県では6月から8月にかけては、夏用の品種を使用するなどして、一定の生産量を確保する試みがなされている。また、椎茸を効率よく発生させる方法として、榾木をコンテナに搭載し、揺動により刺激を与える方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−42693号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複数の品種を使用することはコストがかかり、椎茸の一定生産量は確保できても、結果として赤字となってしまうケースが多かった。また、榾木をコンテナに搭載し揺動により刺激を与える方法は、振動装置を必要とするものであり、かかる方法をとった場合であっても、椎茸が発生しにくい前記期間には、十分な供給量は確保できなかった。したがって、スーパーマーケットなど椎茸の買い手側との価格交渉においては、原木栽培による椎茸は生産量が定かではなく仕入れ計画が立てられないことを理由に、売り手側である生産者が弱い立場に立たされる場合があった。
【0009】
また、榾木に発生する椎茸の芽数を調整することができずに、一度に大量の椎茸の芽が発生した場合には、個々の椎茸が大きく成長しないことから商品として出荷することができないという問題があった。これに対して、榾木を単に6時間程度浸水するなどして芽数を減少させる方法がとられているが、効果が少ないばかりか、後に発生不良を引き起こす原因となる場合もあった。
【0010】
上記の理由により、近年椎茸の原木栽培は減少する傾向にあり、市場に供給されている椎茸のうち、原木栽培によるものは全体の3割程度で、大半は菌床栽培によるものか、あるいは外国から輸入されたものであった。
【0011】
本発明は、以上のような課題を鑑みてなされたものであり、一品種の椎茸菌を使用した椎茸の原木栽培において、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができ、その一方で一時期に椎茸が大量発生しないように芽数を減少させることができ、椎茸の生産量を調整することによって市場への安定供給を実現するとともに生産者の経営を安定させ、ひいては椎茸の原木栽培の減少を抑えることができる椎茸栽培方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は以下のような椎茸栽培方法を提供する。
【0013】
(1) 椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含む原木椎茸の周年栽培方法。
【0014】
(2) 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、発芽能を有する榾木に対して、1から3ヶ月後の発芽不良を見越して、当該榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含むことを特徴とする(1)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0015】
(3) 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、椎茸が自然発生する時期に、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含むことを特徴とする(1)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0016】
(4) 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う工程を含ませることによって、椎茸の周年栽培を良好化することを特徴とする(1)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0017】
(5) 前記良好化は、椎茸の大きさ及び発生量を調整するものであることを特徴とする(4)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0018】
(6) 前記良好化は、椎茸の大きさについては、小さいものを大きくするものであり、椎茸の発生量については、過剰量を適正量に調整するものであることを特徴とする(4)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0019】
(7) 前記与傷処理は、榾木に、表皮の直径が1mmから10mmで、かつ、深さが1mmから10mmの穴をあけることを特徴とする(1)から(6)いずれかに記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0020】
(8) 椎茸の発芽促進を遅効的に行う手順として、夏の高温時に榾木を所定の第1室温に保った状態におく第1保温工程と、この第1保温工程の後に、所定の時期に榾木を腐朽温度の状態におく第2保温工程と、を含む原木椎茸の周年栽培方法。
【0021】
(9) 前記所定の第1室温は、夜間の榾木の表面温度を5℃以上20℃以下にする温度であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0022】
(10) 前記所定の第1室温は、夜間の榾木の表面温度を10℃以上18℃以下にする温度であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0023】
(11) 前記所定の第1室温は、榾木の周囲温が15℃付近の温度であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0024】
(12) 前記所定の時期は、椎茸を発芽させる時期の40日から60日前であることを特徴とする(8)から(11)いずれかに記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0025】
(13) 前記腐朽温度は、25℃から30℃であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0026】
(14) 椎茸の発芽抑制を行う手順として、榾木を所定の第2室温に保った状態におき、榾木の表面温度が所定の温度に下がるまでの時間放置をし、かつ、当該放置をしたものに対して、所定の水温の水に浸水させる浸水工程を含む原木椎茸の周年栽培方法。
【0027】
(15) 前記所定の第2室温は、15℃付近であることを特徴とする(14)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0028】
(16) 前記榾木の表面温度に関する所定の温度は18℃以下であり、かつ、前記榾木の表面温度が18℃以下に下がるまでの時間は、10時間から24時間であることを特徴とする(14)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0029】
(17) 前記所定の水温は、15℃以上であって、かつ、前記榾木の表面温度以上であることを特徴とする(14)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0030】
(18) 冷却庫と、この冷却庫で冷却された榾木の昇温を行う昇温槽と、を備えた原木椎茸の周年栽培施設。
【0031】
(19) 更に、穴あけ装置を備えていることを特徴とする(18)に記載の原木椎茸の周年栽培施設。
【0032】
(20) 前記穴あけ装置は、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をするものであることを特徴とする(19)に記載の原木椎茸の周年栽培施設。
【0033】
(21) (1)から(17)いずれかの栽培方法により得られた椎茸。
【0034】
(22) (18)から(20)いずれかの栽培施設で得られた椎茸。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な一実施形態について、詳細に説明する。
【0036】
周年栽培においては、一般的に榾木一代で平均7回から8回の椎茸の収穫が可能である。椎茸を発生させるためには、温度刺激、水分刺激又は物理的刺激を与えるのが好ましい。1回目の椎茸発生直後の榾木は、約24時間浸水を行い、その後は1日から2日に1回の割合で浸水を行う。ただし、一度椎茸が発生した後は次の浸水までに少なくとも40日から60日の期間をあけることが好ましい。
【0037】
原木栽培による椎茸の発生には波があり、特に平均気温20℃から27℃の期間、例えば山梨県では6月から8月にかけては、椎茸の発生が激減し、一定の生産量を保てないという問題があった。しかし、本発明によってかかる時期でも椎茸を発生させることができる。
【0038】
[1.椎茸の発芽を促進する方法]
<(1)椎茸の発芽促進を速効的に行う方法>
平均気温20℃から23℃の期間、例えば山梨県における6月には、椎茸が発生しにくいという原因の一つとして、平均気温12℃から15℃の期間、例えば山梨県では4月の榾木の状態に関係があると考えられる。山梨県における4月の榾木は、菌糸が榾木全体に廻り、菌糸量も増えているため、24時間浸水でも水分補給が十分ではない状態にある。
【0039】
図2は、榾木の断面を示す図である。榾木には、一般的に内側から外側に向かって、芯材部、木質部(辺材部)11、形成層12、コルク層13及び表皮14が含まれる。菌糸膜16は、仮伏せ時に榾木に廻った菌糸が形成した古い膜である。一般的には、菌糸膜16は、コルク層13と表皮14との間に形成されるものであり、水分Wの吸収を妨げていると考えられる。
【0040】
本発明においては、図2に示すとおり、例えば山梨県において6月に椎茸を発生させたい場合には4月に、榾木に穴15をあけて菌糸膜16を貫通する穴を形成し、コルク層13及び形成層12等に十分な水分補給を可能にする。榾木の穴15は、剣山に近似した針のついた器具を榾木にあて、ハンマーでその器具をたたいてあける(パンチング)。榾木の穴15は、どのような形状でもよく、例えば、円錐形又は円柱形でもよい。この作業の結果、作業前には400cc程度しか水分を吸収しなかった榾木が、作業後は1リットル近く水分を吸収するようになり、十分な水分補給が可能となる。
【0041】
榾木に穴をあける方法として、クランク機構を使用した、穴あけ装置を作成し、自動化することもできる。
【0042】
この作業によって、榾木内部に十分な水分補給がなされ、内部の菌糸が活発化し、芽作りが開始される。この作業は、まず、椎茸が自然発生する時期に行うことが重要である。椎茸が自然発生する時期は地域によって異なるため、これに伴い、上記作業をする時期も地域によって異なる。
【0043】
そして、更に、例えば山梨県において6月に椎茸を発生させたい場合には、4月に上記作業を行うことが重要であり、5月に行った場合には効果はあまり表れず、6月に行った場合には効果は全く表れない。つまり、発芽能のある未だ枯渇していない榾木に上記作業を行うことが好ましい。穴をあけられた榾木は、急激な水分刺激により4月は発生過多になるが、本発明の椎茸の発芽を抑制する方法により調整することができる。
【0044】
椎茸が発生しにくい時期に椎茸を発生させるには、椎茸が自然発生する時期及び椎茸を発生させたい40日から60日前に上記方法を行えば、椎茸は発生する。例えば、山梨県における7月に春子型(春に自然発生する)の椎茸を発生させるには、上記方法を4月及び5月に行い、8月に椎茸を発生させるためには、上記方法を4月及び6月に行えばよい。
【0045】
<(2)椎茸の発芽促進を遅効的に行う方法>
(i)椎茸の菌糸は、図3に示すとおり、5℃から30℃の間で活動する。椎茸の発生温度帯は、菌種により異なるが、例えば種苗法による登録品種3627号(菌王1号)の場合は、8℃から26℃の間で発生成長する。
【0046】
本発明では、平均気温20℃から27℃の期間、例えば山梨県では6月から8月にかけて椎茸を発生させるために、まず栽培舎内に空気調整機を設置し、椎茸発生時の榾木の表面温度を少なくとも18℃以下にすることを目的として、夜間は栽培舎内の温度を15℃以下に保つようにする。芽作りする環境を、人工的に作るためである。例えば、日中の温度が30℃になっても、夜間の温度が8℃に近づくほど良質の椎茸が成長する。ただし、夏用(高温性)菌の場合は、20℃以下でよい。
【0047】
空気調整機がない場合に、夜間の温度が18℃を下回らず、椎茸発生時の温度が18℃から30℃以上の日が続いた場合には、本発明者等の研究により、高温障害が起こることが判明した。高温障害とは、翌年の平均気温が20℃前後まで上昇する頃、例えば山梨県では5月、6月頃に、発生不良を起こすことをいい、そのような榾木はザラホダと呼ばれる。榾木一代で平均7回から8回は椎茸の収穫が可能であるが、高温障害を引き起こすと5回程度でザラホダとなってしまい、減収・コスト高となる。したがって、夜間は栽培舎内の温度を15℃以下に保つことは重要である。
【0048】
(ii)きのこ類は、一般的に秋に発生する性質を有しているため、椎茸の菌糸は夏を感じると休養状態に入り、椎茸の芽を発生させるために栄養を蓄える。したがって、菌糸を休養させるためには、夏の温度を再現し、日中は腐朽温度の状態を作った休養舎に榾木を30日前後置くことが好ましい。ここで、夏の温度とは、昼は30℃前後、夜は15℃前後の温度をいい、腐朽温度とは25℃から30℃をいう。
【0049】
一般的に平均気温6℃から15℃の期間、例えば山梨県においては3月・4月の頃は、容易に椎茸が発生するため通常は温度調整をしないが、本発明においては、休養舎内の温度について前記夏の温度を再現する。榾木は夏の温度を感じると休養期間として栄養を取り込み始めるため、平均気温2℃から4℃の冬を過ぎて栄養分が不足している菌体に対し、椎茸が発生しにくい平均気温20℃から23℃の期間、例えば山梨県における6月に、椎茸を発生させるための準備をさせるために、日中は腐朽温度(25℃から30℃)の状態におくことによって、榾木を活性化させる。
【0050】
上記方法によって、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができる。
【0051】
[2.椎茸の発芽を抑制する方法]
平均気温26℃から27℃の頃、例えば山梨県では8月下旬頃から、榾木の熟度が増し椎茸の芽が多量に発生するため、このまま放置していては個々の椎茸の成長が妨げられ、非常に小さな椎茸となってしまう。したがって、芽数を減少させることが求められている。
【0052】
図4に、本発明に係る椎茸の芽数を減少させる方法の工程を示す。
【0053】
(1)通常は、椎茸の収穫後40日から60日経過した榾木はすぐに浸水するが(S207)、本発明においては、25℃程度ある榾木の表面温度を15℃から18℃程度まで下げることを目的として、浸水前に、室温を15℃付近に保ったビニルハウスに、榾木を15時間から16時間放置する(S203)。椎茸の芽は、物理的刺激(移動刺激)を受けることにより発生しやすくなるという性質を有するが、これにより物理的刺激(移動刺激)を消すことができる。
【0054】
(2)その後、水温が15℃以上であって、かつ、前記榾木の表面温度以上の水に、榾木を15時間から30時間、好ましくは約24時間浸水する(S204)。温度が上昇傾向にあるときには、椎茸の芽は発生しにくくなるので、榾木に対し温度が上昇傾向にある状況を人工的に作ることによって、芽数を減少させることができる。榾木を浸水する水温は菌の種類によって異なり、例えば、夏用(高温性)菌の場合には水温は25℃程度でよい。
【0055】
上記の方法により、椎茸の芽の大量発生を防ぎ、大きく良質な椎茸を生産することができる。
【0056】
本発明の実施は、図5に示すような、原木椎茸の周年栽培施設において行うのが好ましい。前記施設は、コントローラ20、冷却庫21、昇温槽22、搬送機23及び穴あけ装置24を備えており、これらは、コントローラ20によって制御される。このような周年栽培施設では、榾木は冷却庫21に搬送され、ここで冷却される。この冷却庫内での温度調整は、コントローラ20によって行われる。そして、この冷却庫21で冷却された榾木は、搬送機23によって昇温槽22に搬送される。また、この実施形態においては、搬送機23による搬送途中で、必要に応じて、穴あけ装置24により榾木の穴あけが行われる。そして、(穴あけが行われると否とにかかわらず)搬送機23により昇温槽22に搬入された榾木は、この昇温槽22内で昇温される(温められる)。
【0057】
この昇温槽22の温度制御もコントローラ20によって行われる。なお、コントローラ20は、一ヶ所に集中配置されているものでもよく、各地に分散配置されているものでもよい。
【0058】
なお、本発明の原木椎茸の周年栽培方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨(例えば、「椎茸に夏を感じさせて休養をさせる」など)を逸脱しない範囲内において種々変更がなされ得るものであり、その基本的な考え方が同じである以上は、この実施形態等と異なっていても、本発明の範囲内にあると解釈されるべきである。
【0059】
【発明の効果】
以上のような本発明に係る椎茸栽培方法によれば、一品種の椎茸菌を使用した椎茸の原木栽培において、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができ、その一方で一時期に椎茸が大量発生しないように芽数を減少させることができ、椎茸の生産量を調整することによって市場への安定供給を実現するとともに生産者の経営を安定させ、ひいては椎茸の原木栽培の減少を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】椎茸の原木栽培の工程を示す図である。
【図2】榾木の断面を示す図である。
【図3】菌糸の伸長速度を示す図である。
【図4】椎茸の芽数を減らすための工程を示す図である。
【図5】原木椎茸の周年栽培装置を示す図である。
【符号の説明】
11 木質部(辺材部)
12 形成層
13 コルク層
14 表皮
15 穴
16 菌糸膜
20 コントローラ
21 冷却庫
22 昇温槽
23 搬送機
24 穴あけ装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、一品種の椎茸菌を使用した椎茸の原木栽培において、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができ、また、一時期に椎茸が大量発生しないようにその芽数を減少させることができる椎茸栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
椎茸栽培には、大きく分けて、原木栽培と菌床栽培の2通りがある。
【0003】
椎茸の原木栽培は、古く江戸時代から行われている栽培方法であり、図1にその工程を示す。椎茸の原木栽培には、主にナラ・クヌギの木が使われ、紅葉の始まる頃に伐採される(S101)。伐採された原木は、管理しやすいように90cmから1mの長さに切断され(玉切り)(S102)、12月から4月までの間に、前記原木に種菌を植え付ける植菌作業が行われる(S103)。植菌終了後の前記原木は、この原木内に椎茸菌を伸長・蔓延させる(活着)ことを目的として、温度と湿度を一定に保ったビニルハウス内に置かれる(仮伏せ)(S104)。椎茸菌が蔓延した原木を榾木というが、仮伏せ後の榾木は、人口榾場か林内榾場に置かれ、必要に応じて人口散水するなどして、椎茸菌にこの榾木を腐朽させるための管理が行われる(本伏せ)(S105)。その後、発生した椎茸は(S106)、市場に出荷される(S107)。
【0004】
一方、椎茸の菌床栽培は、オガクズなどを固めた培地に種菌を植え付け栽培する方法である。近年、この方法による椎茸栽培が増加している。
【0005】
原木栽培された椎茸は、菌床栽培されたものや、外国から輸入されたものと比較して、形、大きさ、味及び食感のいずれにおいても優れていると需要者に高い評価を受けている。
【0006】
しかしその一方で、椎茸の原木栽培は、多大な労働力が必要であるうえに、椎茸の発生に波があり一定の生産量を保てないという問題があった。そこで、通常椎茸の出荷がほとんどない、平均気温20℃から27℃の期間、例えば山梨県では6月から8月にかけては、夏用の品種を使用するなどして、一定の生産量を確保する試みがなされている。また、椎茸を効率よく発生させる方法として、榾木をコンテナに搭載し、揺動により刺激を与える方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−42693号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複数の品種を使用することはコストがかかり、椎茸の一定生産量は確保できても、結果として赤字となってしまうケースが多かった。また、榾木をコンテナに搭載し揺動により刺激を与える方法は、振動装置を必要とするものであり、かかる方法をとった場合であっても、椎茸が発生しにくい前記期間には、十分な供給量は確保できなかった。したがって、スーパーマーケットなど椎茸の買い手側との価格交渉においては、原木栽培による椎茸は生産量が定かではなく仕入れ計画が立てられないことを理由に、売り手側である生産者が弱い立場に立たされる場合があった。
【0009】
また、榾木に発生する椎茸の芽数を調整することができずに、一度に大量の椎茸の芽が発生した場合には、個々の椎茸が大きく成長しないことから商品として出荷することができないという問題があった。これに対して、榾木を単に6時間程度浸水するなどして芽数を減少させる方法がとられているが、効果が少ないばかりか、後に発生不良を引き起こす原因となる場合もあった。
【0010】
上記の理由により、近年椎茸の原木栽培は減少する傾向にあり、市場に供給されている椎茸のうち、原木栽培によるものは全体の3割程度で、大半は菌床栽培によるものか、あるいは外国から輸入されたものであった。
【0011】
本発明は、以上のような課題を鑑みてなされたものであり、一品種の椎茸菌を使用した椎茸の原木栽培において、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができ、その一方で一時期に椎茸が大量発生しないように芽数を減少させることができ、椎茸の生産量を調整することによって市場への安定供給を実現するとともに生産者の経営を安定させ、ひいては椎茸の原木栽培の減少を抑えることができる椎茸栽培方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は以下のような椎茸栽培方法を提供する。
【0013】
(1) 椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含む原木椎茸の周年栽培方法。
【0014】
(2) 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、発芽能を有する榾木に対して、1から3ヶ月後の発芽不良を見越して、当該榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含むことを特徴とする(1)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0015】
(3) 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、椎茸が自然発生する時期に、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含むことを特徴とする(1)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0016】
(4) 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う工程を含ませることによって、椎茸の周年栽培を良好化することを特徴とする(1)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0017】
(5) 前記良好化は、椎茸の大きさ及び発生量を調整するものであることを特徴とする(4)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0018】
(6) 前記良好化は、椎茸の大きさについては、小さいものを大きくするものであり、椎茸の発生量については、過剰量を適正量に調整するものであることを特徴とする(4)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0019】
(7) 前記与傷処理は、榾木に、表皮の直径が1mmから10mmで、かつ、深さが1mmから10mmの穴をあけることを特徴とする(1)から(6)いずれかに記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0020】
(8) 椎茸の発芽促進を遅効的に行う手順として、夏の高温時に榾木を所定の第1室温に保った状態におく第1保温工程と、この第1保温工程の後に、所定の時期に榾木を腐朽温度の状態におく第2保温工程と、を含む原木椎茸の周年栽培方法。
【0021】
(9) 前記所定の第1室温は、夜間の榾木の表面温度を5℃以上20℃以下にする温度であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0022】
(10) 前記所定の第1室温は、夜間の榾木の表面温度を10℃以上18℃以下にする温度であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0023】
(11) 前記所定の第1室温は、榾木の周囲温が15℃付近の温度であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0024】
(12) 前記所定の時期は、椎茸を発芽させる時期の40日から60日前であることを特徴とする(8)から(11)いずれかに記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0025】
(13) 前記腐朽温度は、25℃から30℃であることを特徴とする(8)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0026】
(14) 椎茸の発芽抑制を行う手順として、榾木を所定の第2室温に保った状態におき、榾木の表面温度が所定の温度に下がるまでの時間放置をし、かつ、当該放置をしたものに対して、所定の水温の水に浸水させる浸水工程を含む原木椎茸の周年栽培方法。
【0027】
(15) 前記所定の第2室温は、15℃付近であることを特徴とする(14)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0028】
(16) 前記榾木の表面温度に関する所定の温度は18℃以下であり、かつ、前記榾木の表面温度が18℃以下に下がるまでの時間は、10時間から24時間であることを特徴とする(14)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0029】
(17) 前記所定の水温は、15℃以上であって、かつ、前記榾木の表面温度以上であることを特徴とする(14)に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
【0030】
(18) 冷却庫と、この冷却庫で冷却された榾木の昇温を行う昇温槽と、を備えた原木椎茸の周年栽培施設。
【0031】
(19) 更に、穴あけ装置を備えていることを特徴とする(18)に記載の原木椎茸の周年栽培施設。
【0032】
(20) 前記穴あけ装置は、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をするものであることを特徴とする(19)に記載の原木椎茸の周年栽培施設。
【0033】
(21) (1)から(17)いずれかの栽培方法により得られた椎茸。
【0034】
(22) (18)から(20)いずれかの栽培施設で得られた椎茸。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な一実施形態について、詳細に説明する。
【0036】
周年栽培においては、一般的に榾木一代で平均7回から8回の椎茸の収穫が可能である。椎茸を発生させるためには、温度刺激、水分刺激又は物理的刺激を与えるのが好ましい。1回目の椎茸発生直後の榾木は、約24時間浸水を行い、その後は1日から2日に1回の割合で浸水を行う。ただし、一度椎茸が発生した後は次の浸水までに少なくとも40日から60日の期間をあけることが好ましい。
【0037】
原木栽培による椎茸の発生には波があり、特に平均気温20℃から27℃の期間、例えば山梨県では6月から8月にかけては、椎茸の発生が激減し、一定の生産量を保てないという問題があった。しかし、本発明によってかかる時期でも椎茸を発生させることができる。
【0038】
[1.椎茸の発芽を促進する方法]
<(1)椎茸の発芽促進を速効的に行う方法>
平均気温20℃から23℃の期間、例えば山梨県における6月には、椎茸が発生しにくいという原因の一つとして、平均気温12℃から15℃の期間、例えば山梨県では4月の榾木の状態に関係があると考えられる。山梨県における4月の榾木は、菌糸が榾木全体に廻り、菌糸量も増えているため、24時間浸水でも水分補給が十分ではない状態にある。
【0039】
図2は、榾木の断面を示す図である。榾木には、一般的に内側から外側に向かって、芯材部、木質部(辺材部)11、形成層12、コルク層13及び表皮14が含まれる。菌糸膜16は、仮伏せ時に榾木に廻った菌糸が形成した古い膜である。一般的には、菌糸膜16は、コルク層13と表皮14との間に形成されるものであり、水分Wの吸収を妨げていると考えられる。
【0040】
本発明においては、図2に示すとおり、例えば山梨県において6月に椎茸を発生させたい場合には4月に、榾木に穴15をあけて菌糸膜16を貫通する穴を形成し、コルク層13及び形成層12等に十分な水分補給を可能にする。榾木の穴15は、剣山に近似した針のついた器具を榾木にあて、ハンマーでその器具をたたいてあける(パンチング)。榾木の穴15は、どのような形状でもよく、例えば、円錐形又は円柱形でもよい。この作業の結果、作業前には400cc程度しか水分を吸収しなかった榾木が、作業後は1リットル近く水分を吸収するようになり、十分な水分補給が可能となる。
【0041】
榾木に穴をあける方法として、クランク機構を使用した、穴あけ装置を作成し、自動化することもできる。
【0042】
この作業によって、榾木内部に十分な水分補給がなされ、内部の菌糸が活発化し、芽作りが開始される。この作業は、まず、椎茸が自然発生する時期に行うことが重要である。椎茸が自然発生する時期は地域によって異なるため、これに伴い、上記作業をする時期も地域によって異なる。
【0043】
そして、更に、例えば山梨県において6月に椎茸を発生させたい場合には、4月に上記作業を行うことが重要であり、5月に行った場合には効果はあまり表れず、6月に行った場合には効果は全く表れない。つまり、発芽能のある未だ枯渇していない榾木に上記作業を行うことが好ましい。穴をあけられた榾木は、急激な水分刺激により4月は発生過多になるが、本発明の椎茸の発芽を抑制する方法により調整することができる。
【0044】
椎茸が発生しにくい時期に椎茸を発生させるには、椎茸が自然発生する時期及び椎茸を発生させたい40日から60日前に上記方法を行えば、椎茸は発生する。例えば、山梨県における7月に春子型(春に自然発生する)の椎茸を発生させるには、上記方法を4月及び5月に行い、8月に椎茸を発生させるためには、上記方法を4月及び6月に行えばよい。
【0045】
<(2)椎茸の発芽促進を遅効的に行う方法>
(i)椎茸の菌糸は、図3に示すとおり、5℃から30℃の間で活動する。椎茸の発生温度帯は、菌種により異なるが、例えば種苗法による登録品種3627号(菌王1号)の場合は、8℃から26℃の間で発生成長する。
【0046】
本発明では、平均気温20℃から27℃の期間、例えば山梨県では6月から8月にかけて椎茸を発生させるために、まず栽培舎内に空気調整機を設置し、椎茸発生時の榾木の表面温度を少なくとも18℃以下にすることを目的として、夜間は栽培舎内の温度を15℃以下に保つようにする。芽作りする環境を、人工的に作るためである。例えば、日中の温度が30℃になっても、夜間の温度が8℃に近づくほど良質の椎茸が成長する。ただし、夏用(高温性)菌の場合は、20℃以下でよい。
【0047】
空気調整機がない場合に、夜間の温度が18℃を下回らず、椎茸発生時の温度が18℃から30℃以上の日が続いた場合には、本発明者等の研究により、高温障害が起こることが判明した。高温障害とは、翌年の平均気温が20℃前後まで上昇する頃、例えば山梨県では5月、6月頃に、発生不良を起こすことをいい、そのような榾木はザラホダと呼ばれる。榾木一代で平均7回から8回は椎茸の収穫が可能であるが、高温障害を引き起こすと5回程度でザラホダとなってしまい、減収・コスト高となる。したがって、夜間は栽培舎内の温度を15℃以下に保つことは重要である。
【0048】
(ii)きのこ類は、一般的に秋に発生する性質を有しているため、椎茸の菌糸は夏を感じると休養状態に入り、椎茸の芽を発生させるために栄養を蓄える。したがって、菌糸を休養させるためには、夏の温度を再現し、日中は腐朽温度の状態を作った休養舎に榾木を30日前後置くことが好ましい。ここで、夏の温度とは、昼は30℃前後、夜は15℃前後の温度をいい、腐朽温度とは25℃から30℃をいう。
【0049】
一般的に平均気温6℃から15℃の期間、例えば山梨県においては3月・4月の頃は、容易に椎茸が発生するため通常は温度調整をしないが、本発明においては、休養舎内の温度について前記夏の温度を再現する。榾木は夏の温度を感じると休養期間として栄養を取り込み始めるため、平均気温2℃から4℃の冬を過ぎて栄養分が不足している菌体に対し、椎茸が発生しにくい平均気温20℃から23℃の期間、例えば山梨県における6月に、椎茸を発生させるための準備をさせるために、日中は腐朽温度(25℃から30℃)の状態におくことによって、榾木を活性化させる。
【0050】
上記方法によって、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができる。
【0051】
[2.椎茸の発芽を抑制する方法]
平均気温26℃から27℃の頃、例えば山梨県では8月下旬頃から、榾木の熟度が増し椎茸の芽が多量に発生するため、このまま放置していては個々の椎茸の成長が妨げられ、非常に小さな椎茸となってしまう。したがって、芽数を減少させることが求められている。
【0052】
図4に、本発明に係る椎茸の芽数を減少させる方法の工程を示す。
【0053】
(1)通常は、椎茸の収穫後40日から60日経過した榾木はすぐに浸水するが(S207)、本発明においては、25℃程度ある榾木の表面温度を15℃から18℃程度まで下げることを目的として、浸水前に、室温を15℃付近に保ったビニルハウスに、榾木を15時間から16時間放置する(S203)。椎茸の芽は、物理的刺激(移動刺激)を受けることにより発生しやすくなるという性質を有するが、これにより物理的刺激(移動刺激)を消すことができる。
【0054】
(2)その後、水温が15℃以上であって、かつ、前記榾木の表面温度以上の水に、榾木を15時間から30時間、好ましくは約24時間浸水する(S204)。温度が上昇傾向にあるときには、椎茸の芽は発生しにくくなるので、榾木に対し温度が上昇傾向にある状況を人工的に作ることによって、芽数を減少させることができる。榾木を浸水する水温は菌の種類によって異なり、例えば、夏用(高温性)菌の場合には水温は25℃程度でよい。
【0055】
上記の方法により、椎茸の芽の大量発生を防ぎ、大きく良質な椎茸を生産することができる。
【0056】
本発明の実施は、図5に示すような、原木椎茸の周年栽培施設において行うのが好ましい。前記施設は、コントローラ20、冷却庫21、昇温槽22、搬送機23及び穴あけ装置24を備えており、これらは、コントローラ20によって制御される。このような周年栽培施設では、榾木は冷却庫21に搬送され、ここで冷却される。この冷却庫内での温度調整は、コントローラ20によって行われる。そして、この冷却庫21で冷却された榾木は、搬送機23によって昇温槽22に搬送される。また、この実施形態においては、搬送機23による搬送途中で、必要に応じて、穴あけ装置24により榾木の穴あけが行われる。そして、(穴あけが行われると否とにかかわらず)搬送機23により昇温槽22に搬入された榾木は、この昇温槽22内で昇温される(温められる)。
【0057】
この昇温槽22の温度制御もコントローラ20によって行われる。なお、コントローラ20は、一ヶ所に集中配置されているものでもよく、各地に分散配置されているものでもよい。
【0058】
なお、本発明の原木椎茸の周年栽培方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨(例えば、「椎茸に夏を感じさせて休養をさせる」など)を逸脱しない範囲内において種々変更がなされ得るものであり、その基本的な考え方が同じである以上は、この実施形態等と異なっていても、本発明の範囲内にあると解釈されるべきである。
【0059】
【発明の効果】
以上のような本発明に係る椎茸栽培方法によれば、一品種の椎茸菌を使用した椎茸の原木栽培において、椎茸が発生しにくい時期でも椎茸を発生させることができ、その一方で一時期に椎茸が大量発生しないように芽数を減少させることができ、椎茸の生産量を調整することによって市場への安定供給を実現するとともに生産者の経営を安定させ、ひいては椎茸の原木栽培の減少を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】椎茸の原木栽培の工程を示す図である。
【図2】榾木の断面を示す図である。
【図3】菌糸の伸長速度を示す図である。
【図4】椎茸の芽数を減らすための工程を示す図である。
【図5】原木椎茸の周年栽培装置を示す図である。
【符号の説明】
11 木質部(辺材部)
12 形成層
13 コルク層
14 表皮
15 穴
16 菌糸膜
20 コントローラ
21 冷却庫
22 昇温槽
23 搬送機
24 穴あけ装置
Claims (22)
- 椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含む原木椎茸の周年栽培方法。
- 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、発芽能を有する榾木に対して、1から3ヶ月後の発芽不良を見越して、当該榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う手順として、椎茸が自然発生する時期に、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をする工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 椎茸の周年栽培方法において、椎茸の発芽促進を速効的に行う工程を含ませることによって、椎茸の周年栽培を良好化することを特徴とする請求項1に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記良好化は、椎茸の大きさ及び発生量を調整するものであることを特徴とする請求項4に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記良好化は、椎茸の大きさについては、小さいものを大きくするものであり、椎茸の発生量については、過剰量を適正量に調整するものであることを特徴とする請求項4に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記与傷処理は、榾木に、表皮の直径が1mmから10mmで、かつ、深さが1mmから10mmの穴をあけることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 椎茸の発芽促進を遅効的に行う手順として、夏の高温時に榾木を所定の第1室温に保った状態におく第1保温工程と、この第1保温工程の後に、所定の時期に榾木を腐朽温度の状態におく第2保温工程と、を含む原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記所定の第1室温は、夜間の榾木の表面温度を5℃以上20℃以下にする温度であることを特徴とする請求項8に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記所定の第1室温は、夜間の榾木の表面温度を10℃以上18℃以下にする温度であることを特徴とする請求項8に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記所定の第1室温は、榾木の周囲温が15℃付近の温度であることを特徴とする請求項8に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記所定の時期は、椎茸を発芽させる時期の40日から60日前であることを特徴とする請求項8から11いずれかに記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記腐朽温度は、25℃から30℃であることを特徴とする請求項8に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 椎茸の発芽抑制を行う手順として、榾木を所定の第2室温に保った状態におき、榾木の表面温度が所定の温度に下がるまでの時間放置をし、かつ、当該放置をしたものに対して、所定の水温の水に浸水させる浸水工程を含む原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記所定の第2室温は、15℃付近であることを特徴とする請求項14に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記榾木の表面温度に関する所定の温度は18℃以下であり、かつ、前記榾木の表面温度が18℃以下に下がるまでの時間は、10時間から24時間であることを特徴とする請求項14に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 前記所定の水温は、15℃以上であって、かつ、前記榾木の表面温度以上であることを特徴とする請求項14に記載の原木椎茸の周年栽培方法。
- 冷却庫と、この冷却庫で冷却された榾木の昇温を行う昇温槽と、を備えた原木椎茸の周年栽培施設。
- 更に、穴あけ装置を備えていることを特徴とする請求項18に記載の原木椎茸の周年栽培施設。
- 前記穴あけ装置は、榾木に対して菌糸膜を破壊する程度の与傷処理をするものであることを特徴とする請求項19に記載の原木椎茸の周年栽培施設。
- 請求項1から17いずれかの栽培方法により得られた椎茸。
- 請求項18から20いずれかの栽培施設で得られた椎茸。
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CN103704013A (zh) * | 2013-12-16 | 2014-04-09 | 武义创新食用菌有限公司 | 一种分段出菇栽培香菇的方法 |
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JP5991422B1 (ja) * | 2015-12-28 | 2016-09-14 | 三良坂きのこ産業有限会社 | シイタケ栽培方法 |
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2003
- 2003-02-07 JP JP2003031571A patent/JP2004236625A/ja active Pending
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