JP5988301B2 - パイプ形状部を有する素材の据え込み加工方法 - Google Patents
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Description
ここで、鍛造加工法は、素材を所定の温度に加熱し、加熱された素材を一対の鍛造型の間に挟み強圧して素材を型に従わせて成形するものであり、素材のパイプ形状部の肉厚が比較的厚いものであるときに好適に適用される加工法である。
一方、拡径加工法は、例えば、30°或いは45°程度の小拡角度の円錐形ローラを用いて素材の開口端部を折り曲げ加工して小さい角度のテーパ状の初期フランジを形成し、次いで、折り曲げ角度の大きな円錐形ローラをその初期フランジの内面に当接させて回転させ、90°の角度に折り曲げ加工して所望のフランジを形成する加工法であり、例えば、特許文献1にて提案されている。
一方、上記の特許文献1に係る拡径加工法では、素材のパイプ形状部の肉厚が比較的薄いものであるときには、素材の開口端部を円錐形ローラで容易に折り曲げることができるものの、素材のパイプ形状部の肉厚が比較的厚いものであるときには、素材の開口端部を円錐形ローラで折り曲げることが難しいという問題点がある。
こうして、押圧ローラによる局部的な圧縮力が回転状態の素材の開口端部に加えられることにより、素材の開口端部の全周に亘って押圧ローラからの圧縮力が加えられることになる。
これによって、素材の開口端部が全周に亘って軸芯に沿った方向に均一に押し潰されて断面積が大きくされ、素材の開口端部にフランジが形成される。
本発明のパイプ形状部を有する素材の据え込み加工方法によれば、従来の鍛造加工法のように素材を予め所定の温度に加熱する必要はなく、また素材の開口端部に対する押圧ローラからの圧縮力も局部的に作用させることができればよいので、比較的小さな推力でも当該据え込み加工の実施が可能となり、従来の拡径加工法では加工が困難であった比較的肉厚の厚いパイプ形状部を有する素材であっても、大がかりな設備を要することなく、例えば、スピニングマシンを用いて、素材の開口端部にフランジ等を容易に形成することができる。
本実施形態においては、図1に示されるスピニングマシン1を用いて素材2に対し後述する据え込み加工が実施される。
ここで、素材2は、一端側(図1において左側)が円柱状に形成された丸棒形状部2aと、他端側(図1において右側)が円筒状に形成されたパイプ形状部2bとからなり、後述する据え込み加工はパイプ形状部2bの開口端部に施される。
なお、一端側が閉鎖され、他端側が開口された素材2に代えて、両端が開口された完全なパイプ材を加工対象の素材とすることもできる。
図1に示されるスピニングマシン1は、回転機構3に連結される主軸4の先端部に配設されて素材2の外周面を挟持するチャック5と、素材2のパイプ形状部2bの開口端部を押圧する押圧ローラ6とを備えて構成されている。
チャック5は、その軸芯に沿った方向に所定深さで形成されるワーク固定穴7aを有するチャック本体7を備え、このチャック本体7のワーク固定穴7aに、主軸4と同軸芯上に配される素材2を挟持する挟持部材としての割りスリーブ8が組み込まれて構成されている。素材2は、パイプ形状部2bを外部に臨ませて丸棒形状部2aが割りスリーブ8と共にチャック本体7のワーク固定穴7aの奥面に突き当てられた状態でチャック本体7に固定されている。
また、チャック5は、主軸4から割りスリーブ8と共に取り外し、製品形状(素材2)に応じたチャック5と取り換え可能に構成される。
押圧ローラ6は、素材2のパイプ形状部2bの開口端部の端面に接触可能なローラ面6aを有してなり、主軸4の軸芯と直角をなす軸芯回りに回転自在にホルダ9に取り付けられ、回転機構3による主軸4の回転駆動にて主軸4と同軸芯上で回転される素材2のパイプ形状部2bの端面に接触して転動するようになっている。
この押圧ローラ6を回転自在に支持するホルダ9は、制御機器(図示省略)からの制御信号に応じて、主軸4の軸芯に沿った方向、言い換えれば素材2の軸芯に沿った方向(図1中記号X矢印方向)に移動するようにされている。
以上に述べたように構成されるスピニングマシン1による素材2への据え込み加工は以下のとおりである。
すなわち、図2(a)〜(b)に示されるように、チャック5によって挟持された素材2を、回転機構3による主軸4の回転駆動にて主軸4の軸芯回りに回転させながら、素材2のパイプ形状部2bにおける開口端部の端面に対し押圧ローラ6のローラ面6aを接触させ、更に押圧ローラ6を図2中記号X矢印方向に押進させることにより、素材2のパイプ形状部2bの開口端部を押圧ローラ6で軸芯に沿った方向に圧縮して塑性変形させる。
本実施形態の据え込み加工方法においては、押圧ローラ6による局部的な圧縮力が回転状態の素材2におけるパイプ形状部2bの開口端部に加えられることにより、素材2のパイプ形状部2bの開口端部の全周に亘って押圧ローラ6からの圧縮力が加えられることになり、素材2のパイプ形状部2bの開口端部が全周に亘って軸芯に沿った方向に均一に押し潰されて断面積が大きくされ、図2(b)に示されるように、素材2のパイプ形状部2bの開口端部において、径方向の内側に内向きのフランジ10が、径方向の外側に外向きのフランジ11がそれぞれ形成される。
本実施形態の据え込み加工方法によれば、従来の鍛造加工法のように素材2を予め所定の温度に加熱する必要はなく、また素材2のパイプ形状部2bの開口端部に対する押圧ローラ6からの圧縮力も局部的に作用させることができればよいので、比較的小さな推力でも当該据え込み加工の実施が可能となり、従来の拡径加工法では加工が困難であった比較的肉厚の厚いパイプ形状部2bを有する素材2であっても、大がかりな設備を要することなく、スピニングマシン1を用いて、素材2のパイプ形状部2bの開口端部に内向きのフランジ10と外向きのフランジ11とを同時に容易に形成することができる。
図3には、本発明の一実施形態に係る据え込み加工方法による加工動作説明図が示され、同図(a)には素材をチャックに取り付けた状態図が、同図(b)には加工を完了した状態図が、それぞれ示されている。
なお、本実施形態において、第1参考例の実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては本実施形態に特有の部分を中心に説明を行うものとする(以下の各実施形態についても同様)。
本実施形態の据え込み加工方法によれば、素材2のパイプ形状部2bの開口端部が押圧ローラ6で軸芯に沿った方向に圧縮された際、圧縮された部分の肉が素材2の径方向内側に向かって流れようとしても、マンドレル12の外周面によって遮られるので、圧縮された部分の肉はすべて素材2の径方向外側に向かって流れることになり、図3(b)に示されるように、素材2のパイプ形状部2bの開口端部において外向きのフランジ13のみを形成することができる。
図4には、第2参考例の実施形態に係る据え込み加工方法による加工動作説明図が示され、同図(a)には素材をチャックに取り付けた状態図が、同図(b)には加工を完了した状態図が、それぞれ示されている。
ここで、押圧ローラ14は、素材2のパイプ形状部2bの開口端部の内周面と端面との交わりの角部に接触可能なローラ面15、すなわちパイプ形状部2bの開口端部の端面と接触可能な第1ローラ面部15aと、パイプ形状部2bの開口端部の内周面と接触可能な素材2の径方向内向きに傾斜が付された第2ローラ面部15bとを有してなるものである。
本実施形態の据え込み加工方法によれば、素材2のパイプ形状部2bの端面が押圧ローラ14の第1ローラ面部15aで軸芯に沿った方向に圧縮された際、圧縮された部分の肉が素材2の径方向の内側と外側とに向かって流れようとするが、径方向内側に向かって流れようとする肉は第2ローラ面部15bによって遮られるので、圧縮された部分の肉はすべて素材2の径方向外側に向かって流れることになり、図4(b)に示されるように、素材2のパイプ形状部2bの開口端部において外向きのフランジ13のみを形成することができる。
図5には、第3参考例の実施形態に係る据え込み加工方法による加工動作説明図が示され、同図(a)には素材をチャックに取り付けた状態図が、同図(b)には加工を完了した状態図が、それぞれ示されている。
ここで、押圧ローラ16は、素材2のパイプ形状部2bの開口端部の外周面と端面との交わりの角部に接触可能なローラ面17、すなわちパイプ形状部2bの開口端部の端面と接触可能な第1ローラ面部17aと、パイプ形状部2bの開口端部の外周面と接触可能な第2ローラ面部17bとを有してなるものである。
本実施形態の据え込み加工方法によれば、素材2のパイプ形状部2bの端面が押圧ローラ16の第1ローラ面部17aで軸芯に沿った方向に圧縮された際、圧縮された部分の肉が素材2の径方向の内側と外側とに向かって流れようとするが、径方向外側に向かって流れようとする肉は第2ローラ面部17bによって遮られるので、圧縮された部分の肉はすべて素材2の径方向内側に向かって流れることになり、図5(b)に示されるように、素材2のパイプ形状部2bの開口端部において内向きのフランジ18のみを形成することができる。
図6には、第4参考例の実施形態に係る据え込み加工方法による加工動作説明図が示され、同図(a)には素材をチャックに取り付けた状態図が、同図(b)には加工を完了した状態図が、それぞれ示されている。
本実施形態の据え込み加工方法によれば、素材2のパイプ形状部2bの開口端部に押圧ローラ6からの圧縮力が加えられると、この開口端部に対して、その圧縮力の一部が軸芯に沿った方向に作用するとともに、その圧縮力の残部が径方向内向きに作用して、パイプ形状部2bの開口端部に対する軸芯に沿った方向の圧縮動作と同時に、パイプ形状部2bの開口端部に対する径方向内向きの圧縮動作が行われ、図6(b)に示されるように、パイプ形状部2bの開口端部において径方向内向きに形成されるフランジ19でその開口端部を尖り形状に塞ぐことができる。
なお、本実施形態では、素材2のパイプ形状部2bの開口端部が内向きのフランジ19で完全に塞がれる例を示したが、内向きのフランジ19で完全に塞ぐことなく、所要の大きさの開口を設けるように内向きのフランジ19の大きさを調整してもよい。
2 素材
2a 丸棒形状部
2b パイプ形状部
6 押圧ローラ
6a ローラ面
12 マンドレル
14 押圧ローラ
15 ローラ面
16 押圧ローラ
17 ローラ面
Claims (1)
- 素材を軸芯回りに回転させながらその素材のパイプ形状部における開口端部を押圧ローラで軸芯に沿った方向に圧縮して塑性変形させるようにしたパイプ形状部を有する素材に対して施される据え込み加工方法において、素材のパイプ形状部の内部にマンドレルを嵌め込むようにするとともに、素材のパイプ形状部の開口端部を、前記軸芯と直角をなす軸芯回りに回転自在に取り付けられた押圧ローラで、素材の軸芯に沿った方向に圧縮し、圧縮された部分の肉が素材の径方向内側に向かって流れることをマンドレルの外周面によって遮るようにして、素材のパイプ形状部の開口端部において外向きのフランジのみを形成することを特徴とするパイプ形状部を有する素材の据え込み加工方法。
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