以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置として、膝保護用エアバッグ装置を例に採り説明する。
実施形態の膝保護用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Sは、図1,4に示すように、乗員としての運転者Dの膝K(KL,KR)を保護できるように、運転者Dの車両前方側であるステアリングコラム8の下方に配設されている。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、エアバッグ装置Sを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後の方向に対応するものである。
ステアリングコラム8は、図1,4に示すように、コラム本体9と、コラム本体9の外周側を覆うコラムカバー12と、を備えている。コラム本体9は、図1に示すように、メインシャフト10と、メインシャフト10の周囲を覆うコラムチューブ11と、から構成されている。
エアバッグ装置Sは、図1〜3に示すように、折り畳まれたエアバッグ63と、エアバッグ63に膨張用ガスを供給するインフレーター43と、折り畳まれたエアバッグ63とインフレーター43とを収納するとともに車両後方側を開口させたケース27と、ケース27における突出用開口27aの車両後方側を覆うエアバッグカバー17と、を備えて構成されている。
エアバッグカバー17は、ポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーから形成されて、ケース27の車両後方側を覆い可能に、構成されている。このエアバッグカバー17は、図2,3に示すように、アッパパネル13aとロアパネル13bとから構成されるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)13のロアパネル13b側に配置されている。エアバッグカバー17は、実施形態の場合、ケース27の突出用開口27a付近に配置される扉配設部18と、扉配設部18の周囲に延びる周縁部25と、を備えて構成されている。
扉配設部18は、ケース27の突出用開口27aを覆う扉部19と、扉部19の上下両側から前方に延びてエアバッグカバー17をケース27に取り付けるための取付片部22,23と、を備えている。扉部19は、ケース27の突出用開口27aより僅かに大きく形成されて、突出用開口27aの車両後方側を覆う略長方形板状とされている。そして、扉部19は、実施形態では、周囲に、図4に示すように、車両後方側から見て略H字形状とされる薄肉の破断予定部20と、上下両端側に配置されて開き時の回転中心となるヒンジ部21と、を配設させて構成され、開き時に、上下両側に開く構成とされている。取付片部22,23は、図2に示すように、ケース27における後述する上側壁32と下側壁33との外周側に、それぞれ、隣接して、車両前方側に突出するように配置されるもので、前端側に、ケース27に形成される係止爪32a,33aを係止させるための長方形状に開口した係止穴22a,23aを、それぞれ、係止爪32a,33aに対応して、左右方向に沿った4箇所に、配設させている。
周縁部25は、扉配設部18の左右両側の部位において、扉部19より一段車両前方側に凹むような段差状として構成され、ロアパネル13bにおける扉部19の左右両側に配置される部位を支持して、扉部19とロアパネル13bとの車両後方側の面を略面一とするように、構成されている(図3参照)。
ケース27は、板金製とされるもので、図5〜7に示すように、車両前方側に配置される略四角形状の底壁部28と、底壁部28の周縁から前後方向に略沿って延びる略四角筒状の周壁部31と、を有して、周壁部31の後端側に、エアバッグ63を突出可能な突出用開口27aを有した略箱形状とされている。
底壁部28は、左右に幅広の略長方形板状とされるもので、実施形態の場合、インフレーター43とエアバッグ63とを取り付ける取付部位を構成して、インフレーター43の後述するリテーナ52に配設されるボルト59を挿通させるための挿通孔28aを、左右方向に沿って2箇所に、配設させている。また、底壁部28において、挿通孔28a,28a間の略中央となる位置には、ボルト59の突出方向に略沿ってケース27の内側(インフレーター43側であって、車両後方側)に突出するように、支持突起29が、形成されている。この支持突起29は、外形形状を略円錐台形状とされるもので、車両搭載時において、図3に示すように、略平面状の先端部29aを、インフレーター43における後述するインフレーター本体44の本体部45の外周面45bに当接させることにより、インフレーター本体44を支持可能な構成とされている。実施形態の場合、支持突起29は、底壁部28の上下左右の略中央に、形成されている。
周壁部31は、上下方向で対向する上側壁32,下側壁33と、左右方向で対向する左側壁34,右側壁35と、を備えている。上側壁32,下側壁33における後端近傍には、エアバッグカバー17の取付片部22,23に形成される係止穴22a,23a周縁を係止するための係止爪32a,33aが、上下の外方へ突出し、先端を車両前方側に向けるように断面略L字形状に屈曲して、形成されている。係止爪32a,33aは、上側壁32,下側壁33に、それぞれ、左右方向に沿って4箇所ずつ、形成されている。
右側壁35は、実施形態の場合、図7に示すように、水平方向に略沿った横断面において、それぞれ前後方向に沿って配置される元部側部位35aと先端側部位35bとの間に、前後方向に対して傾斜する傾斜部位35cを配置させて、段差状に、形成されている。具体的には、傾斜部位35cは、先端側部位35b側となる後端側を外方に向け、元部側部位35a側となる前端側を内方に向けるように、傾斜している。
右側壁35には、図6,7に示すように、インフレーター43をケース27に取り付けた状態で、インフレーター本体44の後述する接続口部48を露出させるための挿通孔36が、形成されている。この挿通孔36は、元部側部位35aから傾斜部位35cの前半分程度にかけての領域に形成される略半円形状の穴本体37と、傾斜部位35cの後半分程度から先端側部位35bにかけての領域に形成される略長方形状の補助開口38と、を有して、図6に示すように、右方側から見た外形形状を、後方側(突出用開口27a側)を狭幅としたマッシュルーム形状とされている。穴本体37は、大きさを、接続口部48のみを挿通可能でインフレーター本体44自体を挿通不能な大きさに設定され、補助開口38は、開口幅寸法を、接続口部48を挿通可能な寸法に設定されている。そして、実施形態の場合、インフレーター43をケース27に取り付けた状態で、補助開口38と穴本体37との境界部位付近の部位が、右方側から見て、インフレーター本体44の接続口部48周縁の右端面45aと重なる領域を有しており(図6参照)、この境界部位付近の部位が、押え部39として、インフレーター本体44の挿通孔36からの抜けを防止することとなる。
実施形態のケース27の周壁部31における上側壁32の左右両端側と、下側壁33の左右両端側と、には、図5に示すように、ケース27を車両のボディ1側に取り付ける取付ブラケット40,41が、配置されている。上側壁32に配置される取付ブラケット40,40は、図4に示すように、ボディ1側のインパネリインフォースメント2から延びるブラケット4,4に連結されるもので、下側壁33に配置される取付ブラケット41,41は、ボディ1側の図示しないセンターブレースやフロントボディピラーから延びるブラケット5,6に連結される構成である。
インフレーター43は、図2,3に示すように、外形形状を略円柱状とされるインフレーター本体44と、インフレーター本体44を保持してケース27の底壁部28に取り付けるリテーナ52と、を備えている。
インフレーター本体44は、図3に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせて配置されるもので、大径の本体部45と、本体部45の左右方向の一端側から突設される小径のガス吐出部46と、を備えて構成されている。ガス吐出部46には、膨張用ガスGを吐出可能なガス吐出口46aが、周方向に沿って多数放射状に形成されている。実施形態の場合、ガス吐出部46は、本体部45の左端側に、配設されている。本体部45における左右方向の他端側である右端側には、作動信号入力用のリード線50を結線させたコネクタ49を接続させるための接続口部48が、形成されている。実施形態のインフレーター本体44では、接続口部48は、本体部45における右端側の部位より小径とされて、本体部45の右端面45aから右方に僅かに突出するように、形成されている(図3参照)。また、実施形態では、インフレーター本体44として、加圧ガスとガス発生剤とを内蔵させたハイブリッドタイプのものが使用されており、インフレーター本体44の本体部45における右端近傍の部位には、本体部45内に加圧ガスを封入させる際の封入口を閉塞させる封入ピン47が、図3に示すように、外周面45bから突出するように、配置されている。
リテーナ52は、図8に示すように、インフレーター本体44の外周側を覆う略円筒状の保持部53と、保持部53から突出するように配置される取付手段としてのボルト59と、を備えて構成されている。ボルト59は、保持部53の軸方向と略直交するように突設されて、保持部53の軸方向に沿った2箇所に、形成されている。また、ボルト59は、図2,3に示すように、車両搭載時に、車両前方側に向かって突出するように、配置される。
保持部53は、板金製とされて、軸方向を左右方向に略沿わせた略円筒状とされている。保持部53において、右端側の開口が、インフレーター本体44をガス吐出部46側から内部に挿入させる挿入用開口53dを、構成している。保持部53において、インフレーター本体44の後方側に配置される部位には、車両搭載時においてインフレーター本体44の本体部45の外周面45bと当接する当接部54が、形成されている。この当接部54は、図8に示すように、ボルト59と前後方向で対向する位置の2箇所に形成されている。各当接部54は、詳細には、図2に示すように、前後方向に沿った断面において、略上下方向に沿うように、保持部53の周方向に沿って配置される2つの突起55,55を、備えている。各突起55は、当接部54をインフレーター本体44側に向かって凹ませるようにして、インフレーター本体44側に突出して形成されるもので、外形形状を略半円弧状として、先端面55aを、インフレーター本体44の本体部45における外周面45bと当接させる構成とされている。また、保持部53において、車両搭載時のインフレーター本体44の前方側となる位置であって、ボルト59,59の間となる部位には、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29を挿通させるための貫通孔52aが、形成されている(図8,9参照)。さらに、保持部53の右端側であって、車両搭載時のインフレーター本体44における前方側の部位には、図8に示すように、保持部53を右端から略長方形状に切り欠くようにして、切欠凹部53bが、形成されている。この切欠凹部53bは、内部にインフレーター本体44をガス吐出部46側から挿入させた際のインフレーター本体44の位置決めとなるもので、図3,17に示すように、インフレーター本体44における本体部45の外周面45bから外方に突出して形成される封入ピン47を挿通させて、左側の縁部に当接させることにより、インフレーター本体44の左方への移動を規制し、リテーナ52内におけるガス吐出部46の位置を決めるために、形成されている。
また、保持部53において、当接部54,54間となる部位であって、エアバッグ63の後述するシールチューブ72が配置される部位には、バッグ本体64の膨張時に、シールチューブ72の後述する本体部74を直接インフレーター本体44の外周面45bに圧接させて、バッグ本体64に形成される挿入用開口66周縁をシール可能とする圧接用開口部56が、形成されている(図3,8参照)。この圧接用開口部56は、具体的には、右側に配置される当接部54Rの左側となる領域に形成されるもので、図9に示すように、保持部53において、底壁部28と隣接して配置される前側部位53cを除いて、周方向の全域にわたって切り欠かれるようにして、構成されている。また、圧接用開口部56は、開口幅寸法を、バッグ本体64の膨張時に、図17に示すように、シールチューブ72における本体部74の先端74aを、自由端として配置させ、直接インフレーター本体44の外周面45bに圧接可能とするような寸法に、設定されている。
さらに、保持部53において、圧接用開口部56の左側となる部位であって、インフレーター本体44における後方側の部位には、図8に示すように、先端を前方側(インフレーター本体44側)に向けるように傾斜しつつ突出して形成される押え片57が、配置されている。この押え片57は、保持部53の内部にインフレーター本体44を挿入させた状態で、図3に示すように、シールチューブ72を介在させることなく、直接、本体部45の外周面45bに圧接されて配置されるもので、インフレーター本体44を押えて、インフレーター本体44のリテーナ52に対するガタツキを防止するために、配置されている。さらにまた、保持部53における右端側には、リテーナ52をエアバッグ63内に収納させてエアバッグ63を折り畳んだ状態で、バッグ本体64の挿入用開口66から突出するように配置される係止爪部58が、形成されている。係止爪部58は、車両搭載時における後縁側から後方に突出して、先端側を上方に向けるように屈曲された略L字形状とされている(図2参照)。実施形態のエアバッグ装置Sでは、組立作業時において、リテーナ52を内部に収納させた状態でエアバッグ63を折り畳んだ後、インフレーター本体44を、挿入用開口66からエアバッグ63内に挿入させて、リテーナ52の保持部53内に挿入させる構成であり、この係止爪部58は、挿入用開口66の周縁の部位が、エアバッグ63内に収納されたリテーナ52の保持部53における挿入用開口53dを塞ぐことを防止するために、配設されている。
そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター本体44をエアバッグ63内に配置されるリテーナ52の保持部53に収納させて、エアバッグ63をケース27内に収納させる際に、リテーナ52のボルト59をケース27の底壁部28から突出させて、ボルト59にナット60を締結させることにより、インフレーター43とエアバッグ63とを、取付部位としてのケース27の底壁部28に取り付ける構成である。詳細には、インフレーター本体44は、このナット60の締結時に、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29と、リテーナ52の保持部53に形成される当接部54,54と、により、挟持されて、リテーナ52に保持されることとなる。
エアバッグ63は、実施形態の場合、図10〜14に示すように、バッグ本体64と、バッグ本体64内に配置されるシールチューブ72と、バッグ本体64内に配置されるテザー76,77と、を備えて構成されている。
バッグ本体64は、膨張完了時の形状を、図1,4の二点鎖線に示すように、略長方形板状として、運転者Dの左右の膝K(KL,KR)を保護可能に構成されている。バッグ本体64は、図10に示すように、外形形状を略同一として、膨張完了時にステアリングコラム8側に配置される車体側壁部64aと、膨張完了時に運転者D側に配置される乗員側壁部64bと、の、周縁相互を結合させて、袋状とされている。また、バッグ本体64は、図10に示すように、膨張完了時にケース27内に配置される取付部65と、取付部65より左右に幅広とされて膨張完了時に運転者Dの左右の膝K(KL,KR)を保護する保護膨張部70と、を備えて構成されている。
車体側壁部64aにおける取付部65の領域には、図10,11に示すように、挿入用開口66と、2つの挿通孔67(67L,67R)と、貫通穴68と、が、形成されている。挿入用開口66は、インフレーター43をバッグ本体64の内部に挿入させるためのものであり、取付部65の右端側に配置されて、実施形態の場合、車体側壁部64aを切り抜くように開口して形成されている。詳細には、挿入用開口66は、前後の幅寸法を左右の幅寸法より僅かに大きく設定される略長方形状に、開口して形成されている。さらに詳細には、挿入用開口66は、前後左右の幅寸法L1,L2(図11参照)を、ともに、インフレーター本体44における本体部45の外径寸法D1(図7参照)より大きく設定され、かつ、リテーナ52を挿通可能な寸法に、設定されている。挿通孔67(67L,67R)は、リテーナ52の各ボルト59を挿通させるためのものであり、挿入用開口66の左側の領域において、左右方向に沿って2箇所に、形成されている。貫通穴68は、ケース27の底壁部28に形成される支持突起29を挿通させるためのものであり、挿通孔67L,67R間の略中央となる位置に、形成されている。実施形態の場合、挿通孔67L,67R及び貫通穴68は、貫通穴68と左側の挿通孔67Lとの間にバッグ本体64の左右の中心線が通るように、バッグ本体64の左右の中心から右側にずれた位置に、形成されている(図10参照)。そして、実施形態では、ボルト59を挿通孔67L,67Rから突出させるようにして、このバッグ本体64の内部にリテーナ52とインフレーター本体44とを収納させた状態では、インフレーター本体44は、図3に示すように、右側の部位を、挿入用開口66から大きく突出させるようにして、リテーナ52に保持されることとなる。
なお、実施形態の場合、バッグ本体64は、図10,12に示すように、車体側壁部64aと乗員側壁部64bとを上縁側で連結させた1枚の本体用基布79を、外周縁を一致させるように折り返して、左右両縁側と下縁側を縫合糸を用いて縫着させることにより、袋状とされるもので、車体側壁部64aと乗員側壁部64bとにおいて前側のテザー76より前方となる領域(取付部65の領域)の内周側には、それぞれ、補強布81,81が重ねられて2枚重ね状とされている(図10,12〜14参照)。さらに、車体側壁部64aにおいて、左側の挿通孔67Lの周縁となる部位には、挿通孔67L周縁を補強するためのさらなる補強布82が、重ねられている(図10,12参照)。この補強布82は、前縁側と後縁側とを、車体側壁部64aに縫着されている。また、テザー77と車体側壁部64a及び乗員側壁部64bとの結合部位(縫着部位)にも、帯状の補強布82が、重ねられている(図10,12参照)。
シールチューブ72は、挿入用開口66の周縁からバッグ本体64内に延びる略筒状として、挿入用開口66の周縁に、全周にわたって結合されている。シールチューブ72は、図11,14,16に示すように、挿入用開口66の周縁に全周にわたって結合される連結部73と、連結部73から筒状に延びる本体部74と、を備えている。また、実施形態の場合、シールチューブ72は、図15に示すように、シールチューブ72を左右で2分割するように構成される2枚のシールチューブ用基布83,84から、構成されている。各シールチューブ用基布83,84は、連結部73を構成する元部側部位83a,84aと、前後方向側の幅寸法を元部側部位83a,84aより小さく設定されて本体部74を構成する先端側部位83b,84bと、を備えている。
本体部74は、各シールチューブ用基布83,84の先端側部位83b,84b相互を重ね、前後両縁側をそれぞれ、縫合糸を用いて縫着させることにより、筒状とされている。この本体部74は、内径寸法を、インフレーター43におけるリテーナ52を容易に挿入可能で、かつ、インフレーター43の作動時に、バッグ本体64内に流入した膨張用ガスGにより、略全周にわたってインフレーター本体44の外周面45bに支障なく圧接可能な寸法に、設定されている。具体的には、本体部74は、平らに展開した状態での縫合部位86,86間の離隔距離L3(図11参照)を、挿入用開口66における前後方向側の幅寸法L1の1.8倍程度に、設定されている。また、本体部74は、長さ寸法L4(図11参照)を、車体側壁部64aと乗員側壁部64bとを重ねるように平らに展開した状態のバッグ本体64において、先端74aを左方に向けるように折り返した状態で、先端74aを貫通穴68の右側に接近させて配置させるような寸法に、設定されている。そして、本体部74は、車両搭載時に、先端74aを、リテーナ52における圧接用開口部56の領域内であって、圧接用開口部56の左縁56a近傍に位置させるように、構成されている(図3参照)。すなわち、本体部74は、長さ寸法を、車両搭載時に、圧接用開口部56を、左縁56a側を除いた略全域にわたって覆い可能で、かつ、先端74aを自由端として圧接用開口部56の領域内に配置可能な寸法に、設定されており、インフレーター43の作動時に、本体部74の先端74aは、圧接用開口部56内に押し込まれて、本体部74における圧接用開口部56を覆っている左右の広い領域にわたって、インフレーター本体44の外周面45bに圧接されることとなる(図17参照)。また、本体部74において、インフレーター43を挿入させた際にインフレーター43と車体側壁部64aとの間に配置される左側の部位(先端側部位84b)の領域の元部側には、インフレーター43のボルト59を挿通可能な挿通孔74bが、形成されている(図14〜16参照)。すなわち、実施形態では、シールチューブ72は、本体部74における元部側の部位を、リテーナ52のボルト59を用いて、バッグ本体64及びインフレーター43とともに、ケース27の底壁部28に共締めされる構成である。
連結部73は、実施形態の場合、筒状とされている本体部74から延びている各シールチューブ用基布83,84の元部側部位83a,84aを、相互に離隔させるように開いた状態で、縫合糸を用いて周縁を全周にわたって、車体側壁部64aにおける挿入用開口66の周縁に縫着させて、構成されている。詳細には、連結部73は、本体部74を構成している先端側部位83b,84bの縁部相互を縫着させている2つの縫合部位86,86の元部側の端末を、挿入用開口66の左右の略中央を通る線上に配置させるようにして、元部側部位83a,84aを相互に離隔させるように開いた状態で、元部側部位83a,84aの外周縁近傍となる部位を、車体側壁部64aに縫着して、形成されるもので(図15参照)、連結部73を車体側壁部64aに縫着させる縫合部位87は、略長方形状として、連結部73の外周縁近傍であって、本体部74を構成している縫合部位86,86よりも前後の外方に位置するように、構成されている。また、連結部73は、挿入用開口66の左側の領域を、左方に延ばすように構成されており、この連結部73における挿入用開口66の左側の領域には、バッグ本体64に形成される右側の挿通孔67Rに対応した位置に、リテーナ52の右側のボルト59を挿通可能な挿通孔73aが、形成されている(図15,16参照)。そして、実施形態の場合、このシールチューブ72の連結部73が、挿通孔67R周縁を補強する補強布の役目も果たしている。なお、連結部73を車体側壁部64aに縫着させる縫合部位87は、実施形態の場合、図11に示すように、バッグ本体64を構成する本体用基布79の周縁相互を縫着させている縫合部位をまたぐような略逆U字形状として構成され、前縁側の部位は、バッグ本体64を構成する本体用基布79の周縁相互を縫着させている縫合部位と共用されている。
テザー76,77は、図10,12に示すように、バッグ本体64の内部において、前後で離隔されるようにして2つ配置されるもので、それぞれ、左右方向に略沿って配置されている。テザー76は、取付部65と保護膨張部70とを区画するように配置され、テザー77は、保護膨張部70の領域を前後(上下)で区画するように配置されている。前側のテザー76には、図10に示すように、膨張用ガスを流通可能な2つのガス流通孔76a,76aが、左右対称となる位置に、形成されている。後側のテザー77には、図10に示すように、左右の中央に、膨張用ガスを流通可能な1つのガス流通孔77aが、形成されている。
実施形態では、バッグ本体64を構成する本体用基布79,補強布80,81,82、シールチューブ用基布83,84、及び、テザー76,77は、ポリエステル糸やポリアミド糸等の織布にガス漏れ用のコーティング剤を塗布させたコート布から、形成されている。
次に、実施形態のエアバッグ装置Sの車両への搭載について説明する。まず、リテーナ52を、ボルト59を挿通孔67から突出させるようにして、挿入用開口66から、シールチューブ72の本体部74内に挿入させつつ、エアバッグ63内に収納させる。このとき、リテーナ52の右側のボルト59は、シールチューブ72の本体部74に形成される挿通孔74bを経て、挿通孔67R(挿通孔73a)から突出されることとなり、リテーナ52における右側の部位は、シールチューブ72の本体部74内に挿入されている。そして、保持部53に形成される係止爪部58を、挿入用開口66から突出させた状態で、エアバッグ63を、ケース27内に収納可能とするように折り畳み、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、周囲をくるんでおく。このとき、挿入用開口66は、周縁の部位も含めて、ラッピング材から露出させておく。
次いで、インフレーター本体44を、挿入用開口66を経て、ガス吐出部46側からエアバッグ63内(リテーナ52の保持部53内)に挿入させる。このとき、インフレーター本体44における本体部45の外周面45bから突出している封入ピン47を、保持部53に形成される切欠凹部53bに挿通させ、縁部に当接するまで、インフレーター本体44を、保持部53内に挿入させる。その後、底壁部28からボルト59を突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ63とインフレーター43とを、ケース27内に収納させ、底壁部28から突出しているボルト59にナット60を締結させて、エアバッグ63とインフレーター43とをケース27に取り付ける。このナット60の締結時に、インフレーター本体44が、底壁部28に形成される支持突起29と、リテーナ52の保持部53に形成される当接部54,54と、により挟持されて、リテーナ52に保持されることとなり、また、シールチューブ72における本体部74の元部側の一部が、エアバッグ63及びインフレーター43とともに、底壁部28に共締めされることとなる。
その後、各係止爪32a,33aを係止穴22a,23a周縁に係止させるようにして、エアバッグカバー17をケース27に組み付ければ、エアバッグ組付体を組み立てることができる。そして、エアバッグ組付体を、ブラケット4,5,6を利用して、ボディ1側に取付固定し、ケース27の挿通孔36から露出しているインフレーター本体44の接続口部48に、エアバッグ作動回路から延びるリード線50を結線させたコネクタ49を接続させる。その後、インパネ13やアンダーカバー14(図1,2参照)を取り付ければ、エアバッグ装置Sを車両に搭載することができる。
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線50を経て、インフレーター本体44に作動信号が入力されれば、インフレーター本体44のガス吐出口46aから膨張用ガスが吐出されて、バッグ本体64内に流入することとなる。そして、バッグ本体64は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー17の扉部19を押圧し、扉部19が、周囲の破断予定部20を破断させつつ、ヒンジ部21を回転中心として上下に開くこととなる。そして、バッグ本体64が、ケース27の突出用開口27aから車両後方側に向かって突出し、図1,4の二点鎖線に示すように、膨張を完了させることとなる。
実施形態のエアバッグ装置Sでは、エアバッグ63が、バッグ本体64に形成される挿入用開口66の周縁に、バッグ本体64内へ延びるシールチューブ72を、配設させる構成とし、インフレーター43におけるインフレーター本体44を、挿入用開口66を経て、左端側となるガス吐出部46側からこのシールチューブ72内に挿入させるようにして、右端側となる接続口部48側を挿入用開口66から突出させつつ、エアバッグ63内に挿入させる構成である。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Sでは、シールチューブ72が、エアバッグ63内に収納され、かつ、取付部位としてのケース27の底壁部28に取り付けられたインフレーター43の外周側を覆い、インフレーター43に固定される状態として、バッグ本体64とは別体の状態とされていることから、バッグ本体64の展開膨張時に、このシールチューブ72が、膨張するバッグ本体64の影響を受けて、インフレーター43から離れるように移動することを防止できて、シールチューブ72全体を、全周にわたって、インフレーター43から吐出される膨張用ガスGの内圧を受けて、インフレーター43の外周面側(リテーナ52における保持部53の外周面側とインフレーター本体44の外周面45b側)に圧接させることができる(図17,18参照)。そのため、インフレーター43の外周面、特に、インフレーター本体44の外周面45bを、シールチューブ72の本体部74によって隙間なく覆うことができ、挿入用開口66とインフレーター43との間からのガス漏れを極力防止することができる。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、膨張用ガスGによる押圧力を利用して、シールチューブ72の本体部74をインフレーター43の外周面に圧接させる構成であることから、所定の長さを確保したシールチューブ72の本体部74全体をインフレーター43の外周面側(インフレーター本体44の外周面45b側)に圧接可能であれば、シールチューブ72(本体部74)の内径寸法をインフレーター43の外径寸法(リテーナ52における保持部53の外形寸法)より大きく設定しても、支障なくガス漏れを防止することができる。そのため、シールチューブ72(本体部74)の内径寸法をインフレーター43の外径寸法より大きく設定することにより、インフレーター43のエアバッグ63内への挿入作業を容易にすることができる。
したがって、実施形態のエアバッグ装置Sでは、挿入用開口66へのインフレーター43の挿入作業性が良好で、かつ、挿入用開口66のシール性も良好である。
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、シールチューブ72における本体部74の一部である元部側の部位を、バッグ本体64から突出されるリテーナ52のボルト59を用いて、バッグ本体64及びインフレーター43とともに、取付部位としてのケース27の底壁部28に共締めさせる構成であることから、シールチューブ72の本体部74が、元部側の部位を、バッグ本体64とインフレーター43との間で挟持されるようにして、バッグ本体64内に配置されることとなって、バッグ本体64の展開膨張時に、バッグ本体64内を流れる膨張用ガスによってシールチューブ72の本体部74が捲れ上がることを防止でき、シールチューブ72の本体部74全体によって、インフレーター43の外周側を確実に覆うことができる。勿論、このような点を考慮しなければ、シールチューブを、挿入用開口の周縁のみに連結させて、リテーナのボルトを利用して共締めさせない構成としてもよい。
さらに、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43を、インフレーター本体44と、インフレーター本体44を保持して底壁部28に取り付けるリテーナ52と、を備える構成としていることから、リテーナ52を予め内部に収納させた状態で折り畳んだ状態のエアバッグ63に、インフレーター本体44を、挿入用開口66を経て、リテーナ52における保持部53の内部に挿入させて、リテーナ52に保持させれば、インフレーター43をエアバッグ63内部に収納させることができる。そのため、エアバッグ63の折り畳み作業と、インフレーター本体44のエアバッグ63内への収納作業と、を別の場所で行なうことが容易であることから、予めリテーナ52を内部に収納させて折り畳んだ状態のエアバッグ63を、別の場所に運搬して、取り扱いに注意を要するインフレーター本体44の収納作業のみ、別の場所で行なうことができる。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター43を、インフレーター本体44とリテーナ52とを備える構成として、インフレーター本体44が、リテーナ52の保持部53に保持された状態で、バッグ本体64内に配置されるものの、バッグ本体64の膨張時に、膨張用ガスGの押圧力を受けて、シールチューブ72の本体部74が、保持部53に形成される圧接用開口部56に、押し込まれるようにして、インフレーター本体44の外周面45bに直接圧接されることとなる。そのため、インフレーター43がインフレーター本体44とリテーナと52を備える構成であっても、インフレーター本体44と挿入用開口66との間からのガス漏れを、的確に防止することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、インフレーターとして、別体のリテーナを備えず、インフレーター自体から取付手段としてのボルトを突設させた構成のものを使用してもよい。
特に、実施形態のエアバッグ装置Sでは、挿入用開口66は、保持部53において、ケース27の底壁部28と隣接して配置される前側部位53cを除いて、周方向の全域にわたって切り欠かれるようにして、形成されていることから、シールチューブ72の本体部74が、図18に示すように、インフレーター本体44における本体部45の外周側を、前側の領域を除いた略全域にわたって直接覆うこととなり、また、前側部位53cと本体部45との間の隙間に一部を進入させるようにして配置されることから、インフレーター本体44とリテーナ52の保持部53との間の隙間からのガス漏れも、極力防止することができる。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、シールチューブ72における本体部74が、圧接用開口部56全体を覆う構成ではなく、先端74aを、圧接用開口部56の領域内に配置させていることから、この先端74aが自由端となって、バッグ本体64の膨張時に、膨張用ガスGの押圧力を受けて、圧接用開口部56内に押し込まれるようにして、インフレーター本体44の外周面45bに圧接されることとなる(図17参照)。そのため、シールチューブ72における本体部74の先端74aが、強くインフレーター本体44の外周面45bに圧接されることとなり、挿入用開口66からのガス漏れを極力防止することができる。なお、このような点を考慮しなければ、シールチューブを、圧接用開口部全体を覆うような大きさに設定してもよい。
また、実施形態では、膝保護用エアバッグ装置Sを例に採り説明したが、本発明を適用可能なエアバッグ装置はこれに限られるものではなく、例えば、座席に着座した乗員の左右の側方に配置される側突用のエアバッグ装置に、本発明を適用してもよい。