JP5985086B2 - 手鋸 - Google Patents
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Description
一方、電動鋸は比較的近年に開発されたもので、電動力を用いた圧倒的な馬力で木等の切断を行う電動具である。エンジンを用いたチェーンソーも同様である。前記電動鋸等の圧倒的パワーを備えた、いわゆる動力鋸と、そのような動力を用いずに人の力だけで切断を行う手鋸とは、何れも切断歯を用いている点は同じであるものの、実際には、それらの構成や機能に関する考え方が大きく異なっており、実質的に技術分野を異にしている。
図10(A)、(B)に示す手鋸は、いわゆる縦挽き鋸の一例を示す。縦挽き鋸は木を木目の方向に沿って切るのに適した鋸である。この縦挽き鋸は、鋸身2の長手方向側縁に多数の三角歯3を配列し、その三角歯3の先端を刃先Pとして、切断を行うものである。各三角歯3の裾は隣接する三角歯3の裾とで谷Vを構成している。
図11(A)、(B)に示す手鋸は、いわゆる横挽き鋸の一例を示す。横挽き鋸は木を木目方向に交差して切るのに適した鋸である。この横挽き鋸は、鋸身2の長手方向側縁に形成された各三角歯3の先端の前後一対の傾斜部に「ヒガキ」と称される尖った縦刃3a、3bを構成している。切断方向Dに対して前にあるのが符号3aで示す縦刃で、切断方向Dに対して後方にあるのが符号3bで示す縦刃である。
縦刃3a、3bは、ナイフの如く木に切り込み、木目を切断する。各隣接する三角歯3の裾は谷Vを構成している。
また横挽き鋸には、三角歯3の先端付近を斜めにカットして、「上目」と称される先端カット面4を構成し、その先端カット面4の前後縁を横刃4a、4bとしたものが知られている。この先端カット面4と横刃4a、4bは、縦挽き鋸の機能を果たすことができるもので、木を切断する際に鋸身2の肉厚に対応する木材部分をノミのようにすくい、削り取る機能を果たす。
また特開2003−117903号公報(特許文献2)には、切りくずが鋸の両側面と樹木の切断面との間に詰まるのを解消する目的で、切断刃(2)の外側面に凹部(10)をからなる切りくずの貯留部(7)を設けた鋸刃が開示されている。
また特開2013−52575号公報(特許文献3)には、切粉が詰まり難くする目的で、隣り合う歯(3)、(3)の基部(3B)、(3B)が、円弧状溝底面(20)を介して分離状に形成された鋸刃が開示されている。
上記特許文献2の鋸刃の場合は、鋸の両側面と樹木の切断面との間に切くずが詰まるのを解消することはできるが、やはり三角歯間の窄まった谷には切くずが詰まり易く、作業中に次第に切れ味が悪くなってしまう問題が残る。
上記特許文献3の鋸刃の場合は、円弧状溝底面(20)の存在により切粉がその分だけ詰まり難くなるが、やはり三角歯を用いている限り谷の窄まりは残り、切粉の詰まりが十分には解消されない。
また特許文献3の鋸刃の場合は、円弧状溝底面(20)の円弧を大きく構成するために、なげし部(7A)、(7B)の面取り角度(なげし部の刃先角度)をかなり鋭角にする必要があり、結果として各歯(3)の厚みが薄くなって、強度が低下する問題が生じる。更になげし部(7A)、(7B)の刃先角度の鋭角がきついので、上目部(8)の面積が非常に小さくならざるを得ない問題がある。
しかしながら三角歯を用いた手鋸では、既述したように、三角歯間に窄まった谷が存在し、切粉が詰まり易くなるという基本的問題がある。
また三角歯を用いる手鋸では、各歯の先端にある刃先の鋸身の長手方向のピッチが長く疎になり易いという基本的な問題がある。そのピッチを小さくするため三角歯をより密に並べて配置すると、各三角歯間の谷の重なりが増し、切粉が詰まり易くなって切れ味の低下につながる。一方、三角歯の配置間隔を疎にすると、三角歯間の谷の重なりが減少して切粉の詰まりは軽減されるが、各刃先のピッチがますます長く疎になって、切れ味自体が悪くなる。
また三角歯の場合、歯の裾は広いが、先端部は尖るように狭くなる。このため先端部を斜めにカットしてなる「上目」(先端カット面4(図11参照))の面積もまた非常に小さくなり易い。このような小さい面積の上目(先端カット面4)では削り幅が鋸身の幅より小さく、よって削り残しが生じ易く、切れ味が上がらない問題がある。
前記角柱状歯は三角柱状歯とし、
各三角柱状歯は、その柱の3つの側辺のうちの2つの側辺を前記鋸身の表裏の1側面に面一に立ち上がる面一側面の両側辺として構成すると共に残る1つの側辺を前記鋸身の表裏の他の1側面に面一に立ち上がる側辺として構成し、
各三角柱状歯は、前記面一側面が鋸身の表裏の各側面に対して交互に位置するように三角柱状歯の向きを左右交互に変更して配列し、
各三角柱状歯の先端には、該三角柱状歯を斜めにカットしてなる先端傾斜カット面を構成すると共に該先端傾斜カット面が鋸身の表裏両側面に跨る傾斜三角形となるように構成し、
各三角柱状歯の前記面一側面に属する側辺に縦刃を構成し、
各三角柱状歯の前記先端傾斜カット面に属する縁辺の内、前記面一側面に属さない縁辺に横刃を構成した、ことを第1の特徴としている。
また本発明の手鋸は、上記第1の特徴に加えて、三角柱状歯は二等辺三角柱状歯としたことを第2の特徴としている。
また本発明の手鋸は、上記第1又は第2の特徴に加えて、三角柱状歯は、直角柱状歯若しくは斜角柱状歯とすることを第3の特徴としている。
また本発明の手鋸は、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、三角柱状歯の立ち上がり角度における同角度とは、±10度以内の差を含めるものとし、各三角柱状歯間の隙間の立ち上がり方向における一定とは、角度20度以内の拡大と角度20度以内の縮小を含めるものとすることを第4の特徴としている。
また本発明の手鋸は、上記第4の特徴に加えて、三角柱状歯の立ち上がり角度における同角度とは、±5度以内の差を含めるものとし、各三角柱状歯間の隙間の立ち上がり方向における一定とは、角度10度以内の拡大と角度10度以内の縮小を含めるものとすることを第5の特徴としている。
また本発明の手鋸は、上記第1〜第5の何れかの特徴に加えて、各三角柱状歯の各側面における両側辺は、それぞれ相互に平行若しくは平行から±10度以内の交差角をもって立ち上がるように構成したことを第6の特徴としている。
た本発明の手鋸は、上記第6の特徴に加えて、各三角柱状歯の各側面における両側辺は、それぞれ相互に平行若しくは平行から±5度以内の交差角をもって立ち上がるように構成したことを第7の特徴としている。
しかも鋸歯の形状が角柱状であるので、歯の裾部が広く歯の先端部が狭くなる従来の三角歯に比べて、歯の裾部から歯の先端部にかけての寸法が変わらない。よって従来の三角歯に比べて、角柱状歯では歯をより密に並べて配列することが可能となる。また従来の三角歯と比べて、角柱状歯では歯の先端部の面積をより広くすることが可能となる。これによって、鋸歯に形成される切刃の配列密度を増加させることができると共に、切刃自体の刃寸法を大きくすることが可能となり、切れ味そのものの大幅な向上を図ることができる。
よって三角柱状歯を用いて、縦刃と横刃との組み合わせにより、効率よく被切断体の切断ができると共に、各歯間の隙間には切粉が詰まり難い、非常に切れ味のよい手鋸を提供することができる。
先ず図1〜図5を参照して第1実施形態を説明する。
図1において、手鋸はグリップ部10と鋸身20と鋸歯30とを有する。なお、グリップ部10は図面上、一部を省略している。
手鋸は鋸身20をグリップ部10に折り畳むことができる折り畳み式の手鋸として示しているが、必ずしも折り畳み式である必要はなく、あらゆる手鋸が対象となる。
手鋸は、いわゆる片刃鋸として、鋸歯30が鋸身20の片側の長手方向側縁21に配列されている。勿論、鋸身20の両側の長手方向側縁21に鋸歯30を配列した両刃鋸であってもよい。
また図1に示す手鋸は、引き鋸として構成されているが、押し鋸であってもよい。
角柱状歯30は鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aから立ち上がるように構成されている。
各角柱状歯30は、前記縁面21aから同じ方向に立ち上がるように、立ち上がり角度θを一定に構成している。この第1実施形態に示す角柱状歯30の立ち上がり角度θは90度で、垂直である。各角柱状歯の立ち上がり角度θは、一定であれば、垂直でなくても、斜めに傾斜していてもよい。
各角柱状歯30の立ち上がり角度θを一定にすることで、各隣接する角柱状歯30間の隙間Sが角柱状歯の立ち上がり方向に一定となる。これにより各歯間の隙間が歯の先端部から歯の裾部に向けて窄まるという従来の問題構造が解消される。よって、切粉が窄まって歯間の隙間に押し詰まって切れ味が悪くなるという従来の欠点を完全に解消できる。
ところで、各隣接する角柱状歯30間の隙間Sが角柱状歯の立ち上がり方向に一定となるようにするためには、少なくとも隣接する角柱状歯30、30の鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aからの立ち上がり角度θが同角度であればよい。隣接する角柱状歯30、30の立ち上がり角度θが同じであれば、両角柱状歯30、30間の隙間Sは歯の立ち上がり方向に一定となり、歯間の隙間が歯の先端部から歯の裾部に向けて窄まるという欠点が解消される。
なお上記において、立ち上がり角度θにおける一定とは、厳密な意味での一定値に限定される意味ではない。同様に、立ち上がり角度θにおける同角度とは、厳密な意味での同角度である必要はない。また隣接する角柱状歯30間の隙間Sにおける一定についても、厳密な意味での一定である必要はない。発明の目的、機能、効果に基づいて許容される多少の増減を含む概念である。この点については後述する。
三角柱状歯30は、鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aから立ち上がる3つ側辺30a、30b、30cと、3つの側面31、32、33を備える。
また三角柱状歯30の先端には、三角柱を斜めにカットしてなる先端傾斜カット面34を備える。
先端傾斜カット面34は3つの縁辺34a、34b、34cを備える。縁辺34aは前記側面31の上辺に対応し、縁辺34bは前記側面32の上辺に対応し、縁辺34cは前記側辺33の上辺に対応する。
各三角柱状歯30は、前記面一側面31が鋸身20の表側面20aと裏側面20bとに対して交互に面一の位置をとるように、三角柱状歯30の向きを左右交互に変更して配列する構成にされている。
各三角柱状歯30の前記面一側面31に対向する角(側辺30b)が、鋸身20の長手方向において、前記面一側面31の両側辺30a、30cの中間位置に位置するように構成される。言い換えれば、各三角柱状歯30の三角の形状は、面一側面31に隣接する側面32、33の各交差角α1、α2が何れも90度未満となるような形状とする。
第1実施形態に係る三角柱状歯30の場合は、前記交差角α1、α2が何れも90度未満の同じ角度とし、三角形が左右対称の二等辺三角形からなる二等辺三角柱状歯として構成されている。
角柱状歯を二等辺三角柱状歯30とすることで、この二等辺三角柱状歯30を鋸身20の長手方向側縁21に左右交互に向きを変えて配置したときに、各隣接する二等辺三角柱状歯30、30の対向する側面32と側面33とが、平面視において平行となる。即ち、隣接する二等辺三角柱状歯30間の隙間Sを、平面視(立ち上がり方向に直角な方向にもおいて)で一定となるようにすることができる。
ここで、切断方向Dは、引き鋸の場合は鋸を引く方向である。押し鋸の場合は鋸を押す方向である。
前縦刃VE1の刃角(側面31と側面32との交差角α1)、及び後縦刃VE2の刃角(側面31と側面33との交差角α2)は、共に90度未満の鋭角とするが、45度以下の鋭角であるのが好ましい。
前縦刃VE1は、鋸身20が切断方向Dに移動する際に、被切断体にV字状の溝を切り込んでいく主たる縦刃である。後縦刃VE2は、鋸身20が切断方向Dとは逆方向に戻る際に、被切断体にV字状の切り込みを行うことができる刃であるが、前縦刃VE1に対して従たる縦刃である。
前横刃HE1の刃角は先端傾斜カット面34と前縦刃VE1の刃面を構成する側面32との交差角となる。この交差角は90度未満とする。前横刃HE1と前記前縦刃VE1とは三角柱状歯30の刃先Pで合流する。
前横刃HE1は、鋸身20が切断方向Dに移動する際に、被切断体の表面をノミで削るように斜め水平方向にスライスして削る。後横刃HE2は、鋸身20が切断方向Dとは反対方向に移動する際に、切粉を被切断体の切溝から排出させるのに役立つ。
本実施形態では、先端傾斜カット面34は前記刃先Pを頂点として一定の傾斜角度で斜め下方にカットして構成している。より具体的には、刃先Pから先端傾斜カット面34の縁辺34aへの傾斜よりも、刃先Pから前横歯HE1を構成する縁辺34bへの傾斜の方が急となるように斜め下方にカットして構成している。
勿論、刃先Pを頂点とする傾斜角度は、必要に応じて種々の角度を採用することができる。
また図示しないが、既述した先端傾斜カット面34のカットの仕方とは異なる傾斜カット面を有する三角柱状歯を採用することも可能である。この様な異なる傾斜カット面の例として、刃先P(30aの先端)を頂点とせずに、側辺30bの先端を頂点とし、この頂点である側辺30bの先端から一定の傾斜角度で斜め下方にカットしてなる傾斜カット面(以下、異種の先端傾斜カット面とする)を挙げることができる。
この異種の傾斜カット面は、より具体的には、側辺30bの先端から刃先P(30aの先端)へ向う縁辺34bの傾斜よりも、側辺30bの先端から縁辺34cへの傾斜の方が急となるように構成している。
この異種の先端傾斜カット面を有する三角柱状歯(後述する台形柱状歯の場合も同様である)は、切粉を被切断体の切溝から排出する機能に長けていることから、上記の先端傾斜カット面34を備えた三角柱状歯30の配列のところどころに配置して用いることができる。
更に三角柱状歯30は柱状であり、従来の三角歯に比べて、同じ面積の先端傾斜カット面34を形成するのに、より歯裾寸法の小さいスリムな歯を用いることができる。よって、同じピッチで歯を配列する場合には、従来の三角歯の場合に比べて、三角柱状歯30の場合の方が、先端傾斜カット面34の面積を大きく、且つ各歯裾間の寸法も大きくすることができる。各歯裾間の寸法が大きいということは、切粉が詰まり難いと言うことである。先端傾斜カット面34の面積が大きいということは、横刃HE1、HE2によるスライスカットの切れ味が大きいと言うことである。
一方、前記各歯間寸法を同じにした場合は、従来の三角歯に比べて三角柱状歯30の方がより小さなピッチでより多くの歯を配列することができ、鋸の切れ味そのものをより向上させることができる。
各先端傾斜カット面34が鋸身20の表裏両側面20a、20bに跨る傾斜三角形に構成されることで、各先端傾斜カット面34に構成される横刃HE1、HE2が鋸身20の表裏側面20a、20b間の厚みを完全に横断する刃渡り(刃長)となる。
各先端傾斜カット面34に構成される横刃HE1、HE2が鋸身20の厚みを完全に横断することで、被切断体の切断作業に際して、各横刃HE1、HE2は鋸身20の厚み方向の全域にわたって被切断体を削ることができる。
各横刃HE1、HE2が鋸身20の厚み方向の過半未満で終わる長さの場合には、各横刃HE1、HE2は鋸身の厚み方向全域では被切断体を削ることができず、被切断体の一部に摩擦接触するだけの部分が残る傾向となる。このようなことは従来の三角歯の場合に多くあり、切れ味が悪くなり易く、切断効率が悪くなり易い。
各横刃HE1、HE2が鋸身20の厚みの過半に至る長さの場合は、三角柱状歯30の向きが交互に逆に変わることで、各横刃HE1、HE2は隣接する横刃と2個一対で鋸身20の厚み方向の全域で被切断体を削り残しなく削ることができる。本発明の手鋸では先端傾斜カット面34の面積を大きくし易く、各横刃HE1、HE2の長さを容易に鋸身20の厚み方向の過半に至る長さとすることができる。但し、各横刃HE1、HE2が鋸身20の厚み方向に横断するものが、切れ味の点でより好ましい。また歯の強度の点でもより好ましい。
この第2実施形態の手鋸は、角柱状歯を台形柱状歯40として構成している。
上記第1実施形態に係る三角柱状歯30の底面形状は三角形である。この三角形は、底面に対向する1角をカットすることで台形となる。本第2実施形態はそのような台形柱状歯40を、鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aに配列している。
各台形柱状歯40は、その柱の4つの側辺40a、40b、40c、40dのうちの2つの側辺40a、40cを鋸身20の表裏の1側面20a(20b)に面一に立ち上がる面一側面41の両側辺として構成し、残る2側面40b、40dを鋸身20表裏の他の1側面20b(20a)と面一に立ち上がる第2面一側面45の両側辺として構成している。第2面一側面45は面一側面41に対して小面積である。
各台形状歯40は前記面一側面41、第2面一側面45の他、2つの側面42、43を有する。
各台形柱状歯40は鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aから同じ方向に立ち上がるように、即ち立ち上がり角度θが一定となるように、構成されている。この第2実施形態に示す台形柱状歯40の立ち上がり角度θは90度で、垂直である。各台形柱状歯の立ち上がり角度θは、一定であれば、垂直でなくても、斜めに傾斜していてもよい。
先端傾斜カット面44は4つの縁辺44a、44b、44c、44dを備える。縁辺44aは前記面一側面41の上辺に対応し、縁辺44bは前記側面42の上辺に対応し、縁辺44cは前記側辺43の上辺に対応し、縁辺44dは前記第2面一側面45に対応する。
各台形柱状歯40は、前記面一側面41が鋸身20の表側面20aと裏側面20bとに対して交互に面一の位置をとるように、歯の向きを左右交互に変更して配列する構成にされている。
各台形柱状歯40の前記面一側面41と隣接する側面42、43との各交差角α1、α2は何れも90度未満となる。
二等辺台形柱状歯40とすることで、この二等辺台形柱状歯40を鋸身20の長手方向側縁21に左右交互に向きを変えて配置したときに、各隣接する二等辺台形柱状歯40、40の対向する側面42と側面43とが、平面視において平行となる。即ち、隣接する二等辺台形柱状歯40間の隙間Sを、平面視で(立ち上がり方向に直角な方向にもおいて)一定となるようにすることができる。
後縦刃VE2は、鋸身20が切断方向Dとは逆方向に戻る際に、被切断体にV字状の切り込みを行うことができる刃であるが、前縦刃VE1に対して従たる縦刃である。
各台形柱状歯40の先端に構成される先端傾斜カット面44の縁辺44bに前横刃HE1が構成され、縁辺44cに後横刃HE2が構成されている。前横刃HE1は切断方向Dの前方にあって、鋸身20を厚み方向に斜めに横断するように形成されている。後横刃HE1は切断方向Dの後方に位置する。
前横刃HE1の刃角は先端傾斜カット面44と前縦刃VE1の刃面を構成する側面42との交差角となる。この交差角は90度未満とする。前横刃HE1と前記前縦刃VE1とは台形柱状歯40の刃先Pで合流する。
台形柱状歯40の場合は三角柱状歯30に比べて、歯自体の強度を上げることが可能であるが、鋸身20の長手方向に歯の幅を取り易い。
台形柱状歯40を用いた手鋸の他の作用効果は、三角柱状歯30を用いた手鋸について上述した作用効果と同じである。
既述した第1実施形態及び第2実施形態に係る手鋸の場合は、柱状歯30、40を直角柱状歯として、三角柱状歯30や台形柱状歯40が鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aから垂直の立ち上がり角度θをもって立ち上がる手鋸を示した。
第3実施形態では、斜角柱状歯50が鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aから傾斜した立ち上がり角度θをもって立ち上がる手鋸を示す。
斜角柱状歯50の立ち上がり角度θは90度の垂直の他、垂直から手鋸の切断方向Dに多少傾いた一定の角度とする場合が多いが、立ち上がり角度θを一定とすることで、各隣接する斜角柱状歯50、50間の隙間Sを歯50の立ち上がり方向に一定とすることができる。これによって隙間Sが歯の裾部に向かって窄まることなく、且つ十分な寸法の隙間Sを確保することができる。
前記斜角柱状歯50の立ち上がり角度θは必ずしも限定されるものではないが、垂直方向(90度)から±30度以内とするのが好ましい。
斜角柱状歯50を供えた第3実施形態の手鋸の他の特徴は、上記第1実施形態の手鋸と同じである。
第1実施形態における直角三角柱状歯30の30台の符合で示す側面31、32、33、先端傾斜カット面34、側辺30a、30b、30c、縁辺34a、34b、34cは斜角三角柱状歯50の側面51、52、53、先端傾斜カット面54、側辺50a、50b、50c、縁辺54a、54b、54cにそれぞれ対応する。
また隙間S、縦刃VE1、VE2、横刃HE1、HE2、頂点Pについては第1実施形態の場合と同じ符号としている。
この第4実施形態の手鋸は、角柱状歯を三角柱状歯(図8(A)参照)や台形柱状歯(図8(B))としている点は、上記第1実施形態や第3実施形態に係る三角柱状歯30や50、第2実施形態に係る台形柱状歯40と同じである。
その一方、本第4実施形態に係る手鋸では、三角柱状歯60、60(図8(A)参照)、台形柱状歯70、70(図8(B)参照)の配置を比較的密にしている。このため鋸身20の長手方向において、後の歯60(70)の前端60fe(70fe)が前の歯60(70)の後端60re(70re)よりも前に位置する構成となっている。このため隙間Sも、そのかなりの部分が歯60(70)の背後に隠れる構成となっている。しかしながら、このような構成においても、隙間Sは歯60(70)の立ち上がり方向に一定の広さを維持し、隙間Sが歯の付け根方向に向けて窄まることがない。このような第4実施形態に係る手鋸も本発明の範囲に属する。
この第5実施形態の手鋸の場合も、角柱状歯を三角柱状歯(図9(A)参照)や台形柱状歯(図9(B))としている点は、上記第1実施形態や第3実施形態に係る三角柱状歯30や50、第2実施形態に係る台形柱状歯40と同じである。
その一方、本第5実施形態に係る手鋸では、三角柱状歯80(図9(A)参照)の三角、台形柱状歯90(図9(b)参照)の台形は、形状が小さく、鋸身20の表側面20aから裏側面20bに跨る大きさの三角や台形とはなっていない。
このような鋸身20の表・裏側面20a、20bに跨らない三角柱状歯80、台形柱状歯90の場合であっても、角柱状歯としての機能は備える点で、本発明の手鋸に用いられる歯と言える。
ただし、このような鋸身20の厚み方向に全域に形成されない三角柱状歯80、台形柱状歯90は、それらの先端傾斜カット面に構成される横刃HE1、HE2も鋸身20の厚み方向の全域には形成されないので、横切HE1、HE2によっては切れない部分が鋸身20の厚み内に生じる。このことは、手鋸の切れ味そのものの低下につながる。
従って各三角柱状歯80、台形柱状歯90の三角や台形の大きさは、図9(A)、(B)に示すように、少なくとも鋸身20の厚み方向の半域を超える大きさであるのがよい。
三角柱状歯80、台形柱状歯90の三角や台形の大きさが鋸身20の厚み方向の半域を超えるものであれば、それら各三角柱状歯80や各台形柱状歯90が左右交互に対向して配置されることで、各前後する2つの歯80、80(90、90)を一対として、鋸身20の厚み内に切れない部分が生じることがなくなる。
勿論、図2(A)、図4(A)、図6(A)、図7(A)に示される三角柱状歯30、50、60や台形柱状歯40のように、三角や台形が鋸身20の厚み方向の表側面20aから裏側面20bに至る全域に跨って形成されたものが好ましいと言える。
先ず各角柱状歯30(40、50)の鋸身20の長手方向側縁21の縁面21aからの立ち上がり角度θについて言及する。この立ち上がり角度θは、例えば90度(垂直)、或いは長手方向に一定角度だけ傾いた一定角度とすることができる。しかし、この一定の立ち上がり角度θは、配列される全ての角柱状歯30(40、50)に対して厳密に正確な角度として求められるものではない。配列される各角柱状歯30(40、50)に対して、その立ち上がり角度θは±10度以内の差である場合には、これを許容範囲として、一定の立ち上がり角度θに含むものとする。各角柱状歯30(40、50)における立ち上がり角度θの±10度以内の差は、隣接する角柱状歯30(40、50)間の隙間Sにおいて、該隙間Sの立ち上がり方向における20度以内での拡大、或いは縮小となって現れる。しかし、その程度のズレ範囲内では、切粉が歯間の隙間Sへ押し詰まるという悪影響は生じず、鋸の切れ味に悪影響を及ぼさない。
その他、立ち上がり角度θが、鋸身20の長手方向に徐々に変化するように各角柱状歯30(40、50)を配列した手鋸の場合は、鋸身20の長手方向両端にある歯同士の立ち上がり角度θは大きく異なることが予想される。その一方、相互に隣接する角柱状歯30(40、50)においては、その立ち上がり角度θはほとんど同じである。このような場合には、隣接する角柱状歯30(40、50)間の隙間Sは、歯の立ち上がり方向に実質的一定であると言える。本発明はこのような歯の配列構成もその範囲に含む。
角柱状歯30(40、50)は、厳密に言えば、各側面の両辺が全て平行である必要があるが、平行から多少ずれていても、平行からのズレが±10度以内であれば、角柱状歯としての形状の特徴を発揮することができ、切粉が歯間隙間への押し詰まるという悪影響は生じず、鋸の切れ味に悪影響を及ぼさない。よってこのような範囲も本発明の角柱状歯に属する。
20 鋸身
20a 鋸身の表側面
20b 鋸身の裏側面
21 鋸身の長手方向側縁
21a 鋸身の長手方向側縁の縁面
30 三角柱状歯
30a〜30c 三角柱状歯の側辺
31 三角柱状歯の面一側面
32、33 三角柱状歯の側面
34 先端傾斜カット面
34a〜34c 縁辺
40 台形柱状歯
40a〜40d 台形柱状歯の側辺
41 台形柱状歯の面一側面
42、43 台形柱状歯の側面
44 先端傾斜カット面
44a〜44d 縁辺
45 台形柱状歯の第2面一側面
50 斜角柱状歯
50a〜50c 斜角柱状歯の側辺
51 斜角柱状歯の面一側面
52、53 斜角柱状歯の側面
54 先端傾斜カット面
54a〜54c 縁辺
60 三角柱状歯
60fe 前端
60re 後端
70 台形柱状歯
70fe 前端
70re 後端
80 三角柱状歯
90 台形柱状歯
α1、α2 面一側面に対する隣接する両側面の交差角
θ 立ち上がり角度
D 切断方向
P 頂点
S 隙間
VE1 前縦刃
VE2 後縦刃
HE1 前横刃
HE2 後横刃
Claims (7)
- 鋸身の長手方向側縁に複数の鋸歯を配列してなる手鋸であって、前記鋸歯はその形状を角柱状とした角柱状歯に構成すると共に、各角柱状歯は、少なくとも隣接する角柱状歯において、前記鋸身の長手方向側縁の縁面からの立ち上がり角度が同角度になるように構成し、よって隣接する各角柱状歯間の隙間が歯の立ち上がり方向に一定となるように構成したものにおいて、
前記角柱状歯は三角柱状歯とし、
各三角柱状歯は、その柱の3つの側辺のうちの2つの側辺を前記鋸身の表裏の1側面に面一に立ち上がる面一側面の両側辺として構成すると共に残る1つの側辺を前記鋸身の表裏の他の1側面に面一に立ち上がる側辺として構成し、
各三角柱状歯は、前記面一側面が鋸身の表裏の各側面に対して交互に位置するように三角柱状歯の向きを左右交互に変更して配列し、
各三角柱状歯の先端には、該三角柱状歯を斜めにカットしてなる先端傾斜カット面を構成すると共に該先端傾斜カット面が鋸身の表裏両側面に跨る傾斜三角形となるように構成し、
各三角柱状歯の前記面一側面に属する側辺に縦刃を構成し、
各三角柱状歯の前記先端傾斜カット面に属する縁辺の内、前記面一側面に属さない縁辺に横刃を構成した、ことを特徴とする手鋸。 - 三角柱状歯は二等辺三角柱状歯としたことを特徴とする請求項1に記載の手鋸。
- 三角柱状歯は、直角柱状歯若しくは斜角柱状歯とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の手鋸。
- 三角柱状歯の立ち上がり角度における同角度とは、±10度以内の差を含めるものとし、各三角柱状歯間の隙間の立ち上がり方向における一定とは、角度20度以内の拡大と角度20度以内の縮小を含めるものとすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の手鋸。
- 三角柱状歯の立ち上がり角度における同角度とは、±5度以内の差を含めるものとし、各三角柱状歯間の隙間の立ち上がり方向における一定とは、角度10度以内の拡大と角度10度以内の縮小を含めるものとすることを特徴とする請求項4に記載の手鋸。
- 各三角柱状歯の各側面における両側辺は、それぞれ相互に平行若しくは平行から±10度以内の交差角をもって立ち上がるように構成したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の手鋸。
- 各三角柱状歯の各側面における両側辺は、それぞれ相互に平行若しくは平行から±5度以内の交差角をもって立ち上がるように構成したことを特徴とする請求項6に記載の手鋸。
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