シートが定着ニップ部を通過する際に、シートに発生する紙しわを防止するために、定着ローラーの表面が軸方向に沿って逆クラウン形状からなる技術が知られている。このような技術において、特許文献1に記載されたようなガイド部が適用されると、シートの搬送が部分的に妨げられ、定着画像上に画像欠陥が生じることがあった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、シートを定着ニップ部にスムーズに案内するとともに、シートの搬送が部分的に妨げられることによって発生する画像欠陥が防止された定着装置、およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の一の局面に係る定着装置は、第1のシート面にトナー像が形成されたシートに定着処理を施す定着装置であって、加熱され、所定の回転方向に回転され、前記回転における軸方向の中央部の外径が前記軸方向の両端部の外径よりも小径に構成され、前記第1のシート面に接触する第1周面を備えた定着部材と、前記第1のシート面とは反対側の第2のシート面に接触する第2周面を備え、前記定着部材の前記第1周面に対して押圧され、前記定着部材との間で前記シートが通過する定着ニップ部を形成する加圧部材と、前記第1周面に対して所定の間隔をおいて配置され、前記シートの先端部を前記定着部材の前記第1周面に向かって案内した後、前記定着ニップ部に進入させるガイド部と、前記シートが前記ガイド部を通過する間に、前記ガイド部の形状を変化させるガイド調整部と、を有することを特徴とする。
本構成によれば、シートは、定着部材と加圧部材との間の定着ニップ部を通過することで、定着処理を施される。シートは、ガイド部によって定着部材の第1周面に向かって案内された後、定着ニップ部に進入する。一方、定着部材の軸方向の中央部の外径は、軸方向の両端部の外径よりも小径に構成されている。このため、定着ニップ部に進入したシートの軸方向の両端部には、軸方向外側に向かって張力が付与される。この結果、シートが軸方向外側に引っ張られながら定着ニップ部を搬送され、紙しわの発生が防止される。更に、上記の構成によれば、シートが定着ニップ部を通過する際に、ガイド部の形状がガイド調整部によって変化される。このため、定着ニップ部よりも上流側においてガイド部に規制されるシート部分の姿勢が、定着ニップ部を通過するシート部分の動きを妨げることが防止される。したがって、シートが定着ニップ部にスムーズに案内されるとともに、シートの搬送が部分的に妨げられることによって発生する画像欠陥が防止される。
上記の構成において、前記ガイド部は、前記軸方向の両端部が前記軸方向の中央部よりも前記定着部材の回転中心から離間した位置に配置されるように所定の円弧形状からなる端縁を備え、前記ガイド調整部は、前記シートが前記ガイド部の前記端縁を通過する間に、前記端縁の前記円弧形状の曲率を変化させることが望ましい。
本構成によれば、ガイド部の端縁が円弧形状からなる。また、ガイド調整部によってガイド部の端縁の曲率を変化させることが可能であるため、ガイド部の端縁と定着部材の第1周面との距離を、軸方向に沿って変化させることが可能となる。
上記の構成において、前記ガイド調整部は、前記シートの先端部が前記定着ニップ部に進入した後、前記ガイド部の前記端縁の前記軸方向の端部と前記定着部材の前記第1周面との距離が前記ガイド部の前記端縁の前記軸方向の中央部と前記定着部材の前記第1周面との距離よりも大きくなるように、前記端縁の前記円弧形状を第1の曲率に設定し、前記シートの後端部が前記ガイド部の前記端縁に至る前に、前記第1の曲率よりも、前記ガイド部の前記端縁の前記軸方向の端部と前記定着部材の前記第1周面との距離が前記ガイド部の前記端縁の前記軸方向の中央部と前記定着部材の前記第1周面との距離に近づくように、前記端縁の前記円弧形状を第2の曲率に設定することが望ましい。
本構成によれば、シートの先端部が定着ニップ部に進入すると、ガイド部の端縁が第1の曲率に設定される。この際、ガイド部の端縁の軸方向の端部と定着部材の第1周面との距離が、ガイド部の端縁の軸方向の中央部と定着部材の第1周面との距離よりも大きく設定される。このため、定着ニップ部よりも上流側のシート部分では、軸方向の端部がガイド部の端縁によって強く規制されることがなく、軸方向の中央部と比較して定着部材の第1周面から離間した位置を搬送される。このため、定着ニップ部よりも上流側のシート部分の姿勢が、定着ニップ部において軸方向外側に引っ張られるシートの動きを妨げることが防止される。この結果、シートの搬送が部分的に妨げられることによって発生する画像欠陥が防止される。一方、シートの後端部がガイド部の端縁を通過する際には、ガイド部の端縁が第2の曲率に設定されている。この際、第1の曲率よりも、ガイド部の端縁の軸方向の端部と定着部材の第1周面との距離が、ガイド部の端縁の軸方向の中央部と定着部材の第1周面との距離に近づくように設定される。したがって、シートの後端部が軸方向全体に亘って安定して定着ニップ部に向かって搬送される。また、シートの後端部のうち、軸方向の両端部が定着部材の第1周面から遠い位置を搬送されることが抑止されるため、シートの後端部において部分的に発生する定着不良が防止される。
上記の構成において、前記ガイド調整部は、前記シートの先端部が前記定着ニップ部に進入するまでの間、前記ガイド部の前記端縁の前記円弧形状を前記第2の曲率に設定することが望ましい。
本構成によれば、シートの先端部が軸方向全体に亘って安定して定着ニップ部に案内される。特に、シートの先端部が、定着部材の第1周面に沿うように定着ニップ部に案内されるため、シートに対してプレ加熱処理が施され、シートに対する定着性能が向上する。
上記の構成において、前記第2の曲率において、前記ガイド部の前記端縁と前記定着部材の前記第1周面との距離が前記軸方向に沿って略一定であることが望ましい。
本構成によれば、シートの先端部または後端部が、軸方向全体に亘って、更に安定して定着ニップ部に案内される。
上記の構成において、前記ガイド部は、前記端縁を含み、前記軸方向に沿って延設され、湾曲変形が可能なガイド板と、前記ガイド板の前記軸方向の中央部を固定支持するガイド本体と、を備え、前記ガイド板の前記軸方向の端部が前記ガイド本体に対して移動することによって、前記端縁の前記円弧形状の曲率が変化することが望ましい。
本構成によれば、ガイド板の端部の移動によって、ガイド部の端縁の円弧形状の曲率を調整することが可能となる。
上記の構成において、前記軸方向と交差する断面視において、前記ガイド板の前記軸方向の端部が前記ガイド本体に対して移動する移動方向は、前記ガイド部によって案内される前記シートの搬送方向であることが望ましい。
本構成によれば、ガイド板の端部がシート搬送方向に移動されることで、ガイド部の端縁の円弧形状の曲率を調整することが可能となる。
上記の構成において、前記軸方向と交差する断面視において、前記ガイド板の前記軸方向の端部が前記ガイド本体に対して移動する移動方向は、前記ガイド部によって案内される前記シートの搬送方向と直交する方向であることが望ましい。
本構成によれば、ガイド板の端部がシート搬送方向と直交する方向に移動されることで、ガイド部の端縁の円弧形状の曲率を調整することが可能となる。
上記の構成において、前記ガイド本体は、前記ガイド板に対向して配置され、前記第1の曲率に設定された湾曲面を備え、前記ガイド板の前記端縁を前記第2の曲率に規制する規制部と、前記ガイド板の前記軸方向の端部を前記規制部または前記湾曲面に当接させる移動機構と、を更に備えることが望ましい。
本構成によれば、ガイド板の端部の当接先が規制部とガイド本体の湾曲面との間で切り替えられることで、端縁の円弧形状の曲率を第1の曲率および第2の曲率に調整することが可能となる。
上記の構成において、前記移動機構は、前記ガイド板に連設され、前記ガイド板の前記軸方向の端部を前記規制部に向かって付勢する付勢部材と、前記付勢部材に連設され、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ガイド板の前記軸方向の端部を前記湾曲面に当接させる駆動部と、を備えることが望ましい。
本構成によれば、付勢部材および駆動部によって、ガイド板の端部の当接先が規制部とガイド本体の湾曲面との間で切り替えられる。
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成部と、上記の何れか1に記載の定着装置と、を備えることを特徴とする。
本構成によれば、定着ニップ部よりも上流側においてガイド部に規制されるシート部分の姿勢が、定着ニップ部におけるシート部分の動きを妨げることが防止される。したがって、シートが定着ニップ部にスムーズに案内されるとともに、シートの搬送が部分的に妨げられることによって発生する画像欠陥が防止される。
本発明によれば、シートを定着ニップ部にスムーズに案内するとともに、シートの搬送が部分的に妨げられることによって発生する画像欠陥が防止された定着装置、およびこれを備えた画像形成装置が提供される。
以下、本発明の一実施形態に係る定着装置20及び画像形成装置1について図面を参照して説明する。尚、本実施の形態では画像形成装置1としてプリンターを例に説明するが、プリンターの他に複写機、ファクシミリ等や各機能を備えた複合機であってもよい。
図1は、本実施形態における画像形成装置1の概略断面図である。図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体内にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色別に画像形成部2Y、2M、2C及び2K(以下、まとめて「画像形成部2」という。)が並設されている。
画像形成部2は、シートPに対するカラー画像の形成(印刷)を行うものであり、例えば感光体ドラム3、感光体ドラム3の周囲に配設された帯電部4、露光部5、現像部6(現像部6Y、6M、6C及び6K)及びドラムクリーニング部7を備えている。
帯電部4は、感光体ドラム3の表面を所定電位に均一に帯電させるものである。露光部5は、画像データに基づき生成された光を感光体ドラム3に照射し、感光体ドラム3の表面上に静電潜像を形成するものである。
現像部6は、感光体ドラム3に形成された静電潜像に対してトナーコンテナ61から供給されるトナーを付着させることで、トナー像としての静電潜像を顕在化させるものである。ドラムクリーニング部7は、後述する中間転写ベルト10へのトナー画像の一次転写後、感光体ドラム3の表面に付着したトナーを除去するものである。
トナーコンテナ61は、各現像部6に対応してイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック用のトナーが収容されており、装置本体に対して着脱自在に構成されている。トナーコンテナ61内のトナー量が少なくなると、新しいカートリッジと交換することによって装置本体内にトナーが再び補充される。
画像形成部2の下方には、感光体ドラム3の表面に顕在化したトナー像の中間転写を行うための一次転写ローラー9及び中間転写ベルト10が配設されている。中間転写ベルト10は、所定のベルト体からなり、各感光体ドラム3と対向配置された一次転写ローラー9によって感光体ドラム3に押圧された状態で駆動ローラー11〜13によって無端回転するように構成されている。感光体ドラム3上に形成される各色のトナー像は、無端回転される中間転写ベルト10上にそれぞれタイミングを合わせてイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの順に転写されて重ね合わされる。これにより、中間転写ベルト10上に4色からなるカラー画像が形成される。
駆動ローラー12と対向する位置には、中間転写ベルト10上の残留トナーを除去するベルトクリーニング部18が設けられている。駆動ローラー13と対向する位置には、中間転写ベルト10上のカラー画像をシートPへ転写する二次転写ローラー14が設けられている。
また、画像形成装置1は、画像形成部2へ向けて給紙を行う給紙部15を備えている。給紙部15は、シートP(用紙)を収納する給紙カセット151、シートPが搬送される経路である搬送路152及び搬送路152中のシートPの搬送を行う搬送ローラー153等を備え、給紙カセット151から1枚ずつ取り出されたシートPを画像形成部2、即ち二次転写ローラー14の位置へ向けて搬送する。また、給紙部15は、二次転写処理されたシートPを定着装置20へ搬送し、この定着処理されたシートPを装置本体上部の排出トレイ17へ排出する。
定着装置20は、搬送路152における二次転写ローラー14より下流側の適所に設けられ、シートPに転写されたトナー像を定着させる。定着装置20は、定着ローラー21(定着部材)と、加圧ローラー22(加圧部材)と、進入ガイド50(ガイド部)と、ガイド調整部55とを備える。定着装置20は、定着ローラー21の熱によってシートP上のトナーを溶かし、加圧ローラー22によって圧力をかけてトナー像をシートP上に定着させる。
図2は、本発明の一実施形態における定着装置20の断面図である。図3は、本実施形態に係る進入ガイド50およびガイド調整部の正面図である。また、図4は、進入ガイド50およびガイド調整部の斜視図である。なお、図4では説明のために、進入ガイド50の前後方向の長さを縮小して示している。更に、図5は、本実施形態に係る進入ガイド50の後記の第1の状態を略上方から見た図である。また、図6は、進入ガイド50の後記の第2の状態を略上方から見た図である。
定着装置20は、搬送路152を搬送され、第1のシート面P1(図10参照)にトナー像が形成されたシートPに定着処理を施す。定着ローラー21は、加圧ローラー22に従動して回転される。定着ローラー21は、第1周面21Aと、ヒーター21Hとを備える。第1周面21Aは、上記の第1のシート面P1に接触する。ヒーター21Hは、定着ローラー21の内部に固定された熱源である。不図示の電源からヒーター21Hに電圧が印加されると、定着ローラー21が加熱される。本実施形態では、定着ローラー21の回転における軸方向の中央部の外径が、軸方向の両端部の外径よりも小径に構成されている。換言すれば、定着ローラー21は逆クラウン形状からなる。定着ローラー21の軸方向両端部の直径と軸方向中央部の直径の差は0.1mmに設定されている。
加圧ローラー22は、第2周面22Aを備える。第2周面22Aは、第1のシート面P1とは反対側の第2のシート面P2(図10参照)に接触する。加圧ローラー22の第2周面22Aは、定着ローラー21の第1周面21Aに対して押圧される。この結果、加圧ローラー22は、定着ローラー21との間でシートPが通過する定着ニップ部Nを形成する。この際、適切な定着温度で定着処理が施されるよう、予め加圧ローラー22の定着ローラー21に対する押圧荷重および定着ニップ部Nのニップ幅が設定されている。
進入ガイド50は、シートPのシート搬送方向において、定着ニップ部Nの上流側に配置されている。本実施形態では、進入ガイド50は、定着ローラー21の第1周面21Aに対して所定の間隔をおいて配置されている。進入ガイド50は、シートPの先端部を定着ローラー21の第1周面21Aに向かって案内した後、定着ニップ部Nに進入させる。このように、トナー像が形成されたシートPを定着ローラー21側にガイドすることによって、シートPは定着ニップ部Nに至る前に定着ローラー21に近接または接触する。この結果、シートPおよびシートP上のトナー像に熱量が付与され、定着性能が向上される(予備加熱、プレ加熱効果)。
ガイド調整部55は、シートPが進入ガイド50を通過する間に、進入ガイド50の形状を変化させる機能を備える。以下に、進入ガイド50およびガイド調整部55の構造について更に詳述する。
進入ガイド50は、ガイド本体501と、ガイド板502とを備える。ガイド本体501は、上下方向の厚さが5mmの板状部材である。ガイド本体501は、樹脂材料からなる剛体である。ガイド本体501の先端部のうち、定着ローラー21の軸方向(前後方向)の中央部(図5、図6の固定部50S)には、ガイド板502の中央部が固定支持されている。ガイド本体501の上面部501U(図3)は、シートPを定着ニップ部Nに向かって案内するガイド面の機能を備えている。また、ガイド本体501は、湾曲面501Sを備える。湾曲面501Sは、ガイド本体501のうち、ガイド板502に対向して配置される面である。上記の固定部50Sは、湾曲面501Sの軸方向の中央部に配置されている。湾曲面501Sは、軸方向の中央部が軸方向の両端部よりも定着ニップ部N側に突出した湾曲形状からなる。湾曲面501Sは、第1の曲率を備えるように予め設定されている。第1の曲率の曲率半径Rは、3000mmに設定されている。
ガイド板502は、定着ローラー21の軸方向に沿って延設され、湾曲変形が可能とされる。本実施形態では、ガイド板502は、厚さ200μmのSUS板からなる。上記のように、ガイド板502の中央部がガイド本体501に固定支持される一方、ガイド板502の両端側は、ガイド本体501に対して離間可能とされるとともに、ガイド本体501に密着可能とされている。図3を参照して、ガイド板502の上端部は、ガイド本体501の上端部よりも、間隔hだけ下方に配置されている。このため、ガイド本体501によって案内されたシートPの先端部がガイド板502に衝突して、シートPの搬送が妨げられることが防止される。
ガイド板502は、ガイド端縁50Aを備える。ガイド端縁50Aは、定着ローラー21の軸方向に沿って延びている。図3および図4に示すように、ガイド端縁50Aは、ガイド板502のうち、上方かつ左方の角部によって形成される端縁である。本実施形態では、ガイド端縁50Aは、軸方向の両端部が軸方向の中央部よりも定着ローラー21の回転中心21C(図2、図9参照)から離間した位置に配置されるように所定の円弧形状からなる。
ガイド調整部55は、シートPが進入ガイド50のガイド端縁50Aを通過する間に、ガイド端縁50Aの円弧形状の曲率を変化させる。詳しくは、ガイド板502の軸方向の端部がガイド本体501に対して移動することによって、ガイド端縁50Aの円弧形状の曲率が変化する。ガイド調整部55は、規制部505と、移動機構50Bと、制御部506とを備える。
規制部505は、ガイド板502のガイド端縁50Aを第2の曲率に規制する機能を備える。規制部505は、ガイド本体501のシート幅方向(前後方向)の両端部から左方に向かって延設される一対の板状部材である。規制部505の先端部は下方に向かって屈曲されている。規制部505の屈曲された部分に、ガイド板502の上端部が当接可能とされる。規制部505は、進入ガイド50を通過するシートPのシート幅方向の端部よりも外側に配置されている。ガイド板502の軸方向の中央部がガイド本体501に固定支持され、ガイド板502の軸方向の両端部が規制部505に当接すると、ガイド板502のガイド端縁50Aが第2の曲率に設定される。また、規制部505は、ガイド板502が所定の距離よりも定着ローラー21に近づくことを防止する。
移動機構50Bは、ガイド板502の軸方向の端部を規制部505またはガイド本体501の湾曲面501Sに当接させる。移動機構50Bは、ソレノイド503(駆動部)と、付勢ばね504(付勢部材)と、を備える。付勢ばね504は、ガイド板502に連設され、ガイド板502の軸方向の端部を規制部505に向かって付勢する。ソレノイド503は、付勢ばね504に連設され、付勢ばね504の付勢力に抗してガイド板502の軸方向の端部を湾曲面501Sに当接させる。ソレノイド503は、出没軸503Aを備える。出没軸503Aは、制御部506によって制御され、ソレノイド503の本体部分から出没可能とされる。出没軸503Aの先端部は、付勢ばね504に固定されている。
制御部506は、ソレノイド503の出没軸503Aの出没動作を制御する。制御部506によってソレノイド503が通電されると、出没軸503Aがソレノイド503の本体部分に没入する。この結果、図6の矢印に示すように、付勢ばね504に連設されたガイド板502の両端部が、ソレノイド503側に移動される。したがって、図5に示すように、ガイド板502がガイド本体501の湾曲面501Sに密着して配置される。この時、ガイド板502(ガイド端縁50A)の曲率は、湾曲面501Sの第1の曲率に設定される。以後、図5に示される状態を第1の状態と定義する。
一方、制御部506によってソレノイド503への通電が遮断されると、出没軸503Aがソレノイド503の本体部分から突出する。この結果、付勢ばね504に連設されたガイド板502の両端部が、規制部505側に移動される。したがって、図6に示すように、ガイド板502の両端部が規制部505に当接される。この時、ガイド板502(ガイド端縁50A)の曲率は、規制部505および固定部50Sによって第2の曲率に設定される。以後、図6に示される状態を第2の状態と定義する。
次に、図7乃至図9を参照して、第1の状態および第2の状態におけるガイド端縁50Aの配置について、詳述する。図7は、進入ガイド50のガイド端縁50Aと定着ローラー21の第1周面21Aとの距離を示したグラフである。図8は、進入ガイド50のガイド板502とガイド本体501との距離を示したグラフである。図9は、進入ガイド50のガイド板502の形状を示したグラフである。
前述のように、本実施形態では、定着ローラー21は逆クラウン形状からなる。このため、定着ローラー21の軸方向の両端部は、軸方向の中央部よりも進入ガイド50側に配置されている。ガイド板502がガイド本体501の湾曲面501Sに沿って配置された第1の状態(図8の破線参照)では、進入ガイド50のガイド端縁50Aの軸方向の端部と定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が、進入ガイド50のガイド端縁50Aの軸方向の中央部と定着ローラー21の第1周面21Aとの距離よりも大きくなる(図7および図9の破線)。換言すれば、ガイド端縁50Aと定着ローラー21との距離が、図7および図9の破線で示される状態となるように、湾曲面501Sの第1の曲率が設定されている。一方、ガイド板502が規制部505に当接した第2の状態(図8の実線参照)では、第1の状態よりも、進入ガイド50のガイド端縁50Aの軸方向の端部と定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が、進入ガイド50のガイド端縁50Aの軸方向の中央部と定着ローラー21の第1周面21Aとの距離に近づく。換言すれば、ガイド端縁50Aと定着ローラー21との距離が、図7および図9の実線で示される状態となるように、規制部505および固定部50Sによって第2の曲率が設定されている。なお、本実施形態では、ガイド端縁50Aが第2の曲率に設定されると、進入ガイド50のガイド端縁50Aと定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が軸方向に沿って略一定とされる。このように、本実施形態では、ガイド調整部55によって進入ガイド50のガイド端縁50Aの曲率を変化させることが可能であるため、進入ガイド50のガイド端縁50Aと定着ローラー21の第1周面21Aとの距離を、軸方向に沿って変化させることが可能となる。また、ガイド板502の端部のガイド本体501に対する移動によって、ガイド端縁50Aの円弧形状の曲率を調整することが可能となる。更に、ガイド板502のガイド板中央部502C(図4)がガイド本体501に固定され、ガイド板端部502S(図4)の移動によってガイド端縁50Aの形状が変化される。このため、ガイド端縁50Aの形状が、軸方向端部に向かって連続的に変化される。したがって、ガイド端縁50Aの形状を定着ローラー21の第1周面21Aに沿うように設定することが可能となり、後記のように、シートPの後端部において定着性能が下がる領域を可及的に縮小することができる。
次に、図10乃至図12を参照して、シートPが定着装置20を通過する際の進入ガイド50の形状および作用について説明する。図10は、本実施形態に係る定着装置20において、シートPの先端部が定着ニップ部Nに向かって案内される様子を示した模式的な正面図である。図11は、定着装置20において、シートPが定着ニップ部Nを通過する様子を示した模式的な正面図である。図12は、定着装置20において、シートPの後端部が定着ニップ部Nに向かって案内される様子を示した模式的な正面図である。なお、図10乃至図12において、ガイド板中央部502Cは板状のガイド板502の軸方向の中央部であり、ガイド板端部502Sはガイド板502の軸方向の端部を示している(図4参照)。前述のように、ガイド板502は円弧形状からなるため、各図に示すように、ガイド板端部502Sは、ガイド板中央部502Cよりもシート搬送方向(矢印DP方向)の上流側に位置している。なお、各図においてガイド板中央部502Cとガイド板端部502Sとの距離は、説明のために誇張して示されている。また、図10乃至図12では、シートPの軸方向(幅方向)の中央部が、ガイド端縁50Aのうちガイド板中央部502Cにガイドされる様子を示しているが、シートPの軸方向の端部は、ガイド端縁50Aのうちガイド板端部502Sによってガイドされている。
本実施形態では、シートPの先端部または後端部の位置に応じて、制御部506がガイド板502の位置を変更することで、ガイド端縁50Aの円弧形状の曲率を変化させる。搬送ローラー153(図1)によってシートPが送り出されてからの時間が不図示のカウント部によってカウントされる。制御部506は、カウント部がカウントする時間を参照して、搬送路152上におけるシートPの位置を検出する。なお、搬送ローラー153よりも搬送方向下流側に不図示のレジストローラーが配置され、レジストローラーによってシートPが送り出されてからの時間が不図示のカウント部によってカウントされてもよい。
図10を参照して、制御部506は、シートPの先端部が進入ガイド50に至る前から、シートPの先端部が定着ニップ部Nに進入するまでの間、進入ガイド50を図6に示す第2の状態に設定する。すなわち、制御部506は、進入ガイド50のガイド端縁50Aの円弧形状を第2の曲率に設定する。シートPの先端部は、第1周面21Aのプレ加熱部PHに沿いながら、定着ニップ部Nに進入する。このため、シートPのトナー像が予め加熱され、定着性能が向上される。この際、定着ローラー21の軸方向に沿って、ガイド端縁50Aと定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が略一定に維持されている。したがって、シートPの定着ニップ部Nへの進入タイミングが、軸方向全体に亘って均一化される。この結果、シートPをスムーズに定着ニップ部Nに進入させることができる。また、上記のように、シートPが定着ローラー21の第1周面21Aに接触した後、定着ニップ部Nに進入することで、シートPの先端部が第1周面21Aによって軽く屈曲される。このため、偏含水によってシートPの先端部に波うちが発生している場合であっても、波うちが伸ばされた状態で、シートPが定着ニップ部Nに進入する。この結果、紙しわの発生が防止される。
一方、図11を参照して、制御部506は、シートPの先端部が定着ニップ部Nに進入すると、進入ガイド50を図5に示す第1の状態に設定する。すなわち、制御部506は、進入ガイド50のガイド端縁50Aの円弧形状を第1の曲率に設定する。定着ローラー21の第1周面21Aは逆クラウン形状からなるため、定着ニップ部Nを通過する間、シートPの軸方向の両端部には軸方向外側に向かって張力が付与される。すなわち、シートPは軸方向外側に引っ張られながら定着ニップ部Nを搬送される。この結果、定着ニップ部NにおいてシートPに紙しわが発生することが防止される。更に、上記のように、進入ガイド50のガイド端縁50Aが第1の曲率に設定されている。このため、定着ニップ部Nよりも上流側のシート部分では、シートPの軸方向の端部が進入ガイド50のガイド端縁50Aによって強く規制されることがなく、シートPの軸方向の中央部と比較して定着ローラー21の第1周面21Aから下方に離間した位置を搬送される。このため、定着ニップ部Nよりも上流側のシート部分の姿勢が、定着ニップ部において軸方向外側に引っ張られるシートPの動きを妨げることが防止される。
この結果、定着ニップ部Nを搬送されるシート部分において、紙しわやミミズ画像が発生することが防止される。ここで、ミミズ画像とは、定着ニップ部Nに進入する直前で、シートP上のトナー画像が部分的にずれた結果、定着画像上で発生する画像欠陥であり、ミミズが這った痕跡のように画像が乱れる欠陥である。定着ニップ部Nよりも上流側のシート部分の挙動がガイド端縁50Aによって強く規制される一方、シートP上のトナー画像には定着ローラー21の逆クラウン形状によってシート幅方向に移動するような移動力が働いた場合に、トナー画像のスリップが生じ上記の現象が発生しやすい。換言すれば、シートPの搬送方向の中央部が定着ニップ部Nを通過している間、ガイド端縁50Aが第2の曲率に設定されたままであると、上記の画像欠陥が発生しやすくなる。本実施形態では、シートPの搬送方向の中央部が定着ニップ部Nを通過している間、シートPの軸方向の端部に対する規制力を弱めるべく、ガイド端縁50Aが第1の曲率に設定されるため、上記の画像欠陥が防止される。したがって、定着ローラー21の逆クラウン形状の公差や進入ガイド50の形状公差にばらつきが生じている場合や、進入ガイド50に反りなどが発生している場合であっても、ガイド端縁50Aの曲率が変化されることによって、安定して画像欠陥の発生が抑止される。
更に、図12を参照して、制御部506は、シートPの後端部PEが、ガイド端縁50Aに至る前に、再び、ガイド端縁50Aを図6に示す第2の状態に設定する。本実施形態では、シートPの後端部PEが、ガイド板中央部502Cよりもシート搬送方向上流側に1cm離れた位置に至ったタイミングで、ガイド端縁50Aの円弧形状が第2の曲率に設定される。
シートPの後端部PEがガイド端縁50Aを抜けたタイミングでは、急激にシートPの姿勢が変化しやすい。この際、仮に、ガイド端縁50Aが第1の曲率のまま設定されていると、シートPの軸方向の両端部が下方に落下し、プレ加熱部PHから離間した位置を搬送される。この結果、シートPの軸方向の両端部において定着不良が発生しやすくなる。一方、本実施形態では、上記のように、ガイド端縁50Aが第2の曲率に設定されるため、ガイド端縁50Aと定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が軸方向全体に亘って略一定に維持される。特に、第1の曲率と比較して、ガイド端縁50Aの軸方向の両端部と定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が狭くなる。この結果、シートPの後端部PEが定着ニップ部Nに向かって安定して搬送されるとともに、シートPの後端部PEの軸方向全体に亘って、すなわち、シートPの画像保証範囲内において確実に定着性能を確保することができる。また、上記のように、軸方向全体に亘って、シートPの後端部PEがガイド端縁50Aによって支持されるため、シートPのコシが折れ、ガイド端縁50Aから離れる際の後端部PEの跳ね上がりが防止される。
なお、本実施形態では、前述のように、ガイド端縁50Aの第2の曲率において、ガイド端縁50Aと定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が軸方向に沿って略一定とされている。このため、シートPの先端部または後端部が、軸方向全体に亘って、更に安定して定着ニップ部Nに案内される。
以上、上記の実施形態による定着装置20、および、これを備えた画像形成装置1について説明した。上記の構成によれば、シートPが定着ニップ部Nを通過する際に、進入ガイド50の形状がガイド調整部55によって変化される。このため、定着ニップ部Nよりも上流側において進入ガイド50に規制されるシート部分の姿勢が、定着ニップ部Nを通過するシート部分の動きを妨げることが防止される。したがって、シートPが定着ニップ部Nにスムーズに案内されるとともに、シートPの搬送が部分的に妨げられることによって発生する画像欠陥が防止される。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記の実施形態では、図10に示されるように、軸方向と交差する断面視において、ガイド板502の軸方向の端部がガイド本体501に対して移動する移動方向は、進入ガイド50によって案内されるシートPの搬送方向(図10の矢印DP)であった。この場合、ガイド板502の端部がシート搬送方向に移動されることで、ガイド端縁50Aの円弧形状の曲率を調整することが可能となる。更に、ガイド本体501の上面部501U(図3)を利用して、シートPをガイドすることが可能となる。したがって、進入ガイド50においてシートPを大きく湾曲させることなく、シートPをストレートに定着装置20に搬送することができる。一方、図13は、本発明の変形実施形態に係る定着装置20Aにおいて、シートPの先端部が定着ニップ部Nに向かって案内される様子を示した模式的な正面図である。図14は、定着装置20Aにおいて、シートPが定着ニップ部Nを通過する様子を示した模式的な正面図である。更に、図15は、定着装置20Aにおいて、シートPの後端部PEが定着ニップ部Nに向かって案内される様子を示した模式的な正面図である。
定着装置20Aは、先の実施形態に係る進入ガイド50の代わりに、進入ガイド70を備える。進入ガイド70は、ガイド本体701と、ガイド板702とを備える。なお、ガイド本体701およびガイド板702の構造は、先のガイド本体501およびガイド板502と同様である。一方、図13に示されるように、定着ローラー21の軸方向と交差する断面視において、ガイド板702の軸方向の端部がガイド本体701に対して移動する移動方向は、進入ガイド70によって案内されるシートPの搬送方向(図13の矢印DP)と直交する方向(図13の矢印DR)である。この場合、ガイド板702の移動によって、図14のガイド端縁70Aの円弧形状の曲率が変化される。したがって、ガイド板702の軸方向の端部がシート搬送方向と直交する方向に移動されることで、ガイド端縁70Aの円弧形状の曲率を調整することが可能となる。
先の実施形態と同様に、シートPの先端部が定着ニップ部Nに至るまでは、不図示の制御部によって、ガイド端縁70Aの円弧形状の曲率が第2の曲率に設定される。そして、シートPの先端部が定着ニップ部Nに進入すると、制御部はガイド端縁70Aの円弧形状の曲率を第1の曲率に設定する。その後、シートPの後端部PEがガイド端縁70Aに至る前に、制御部はガイド端縁70Aの円弧形状の曲率を再び第2の曲率に設定する。本構成においても、シートPの先端部および後端部が、定着ニップ部Nに安定して搬送されるとともに、定着ニップ部NにおいてシートPの一部の搬送が妨げられることによって生じる画像欠陥が防止される。また、図13乃至図15に示すように、本構成の場合、シート搬送方向において、進入ガイド70が占有するスペースが可及的に縮小される。このため、簡単な構成で本発明のガイド部を適用することができるとともに、定着装置20Aのシート搬送方向のサイズがコンパクトに設定される。
(2)上記の実施形態では、ガイド板502の移動方向がシート搬送方向である態様にて説明した。また、上記の変形実施形態では、ガイド板702の移動方向がシート搬送方向と直交する方向である態様にて説明した。本発明はこれに限定されるものではない。他の変形実施形態において、ガイド本体に対するガイド板の移動方向が、定着ローラー21の半径方向に設定される態様でもよい。この場合、第2の曲率に設定されたガイド板の端縁と定着ローラー21の第1周面21Aとの距離が、軸方向に沿って、更に一定に維持される。