JP5981589B1 - 塗布方法および塗布装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗布材料を複数の分割パターンに低コストでかつ精度よく塗布することを可能にした塗布方法を提供することにある。【解決手段】実施形態の塗布方法は、略円柱状の外周面を有するヘッド本体11と、ヘッド本体11の外周面に設けられた複数の塗布領域12と、外周面の円周方向の一部に沿って隣接する塗布領域12間に設けられた分離領域13とを備える塗布ヘッド10を用意する。分離領域13が形成されていない領域を塗布対象物2の塗布面2aに向けつつ、塗布ヘッド10を塗布面2a上に所定の間隙を持って配置する。塗布ヘッド10と塗布面2aとの間に塗布材料3を供給し、複数の塗布領域12に跨って塗布材料3のメニスカス柱4を形成する。分離領域13が塗布面2aを向くように、塗布ヘッド10を回転させてメニスカス柱4を複数に分離させる。複数に分離された塗布材料3を塗布面2aに塗布する。【選択図】図8

Description

本発明の実施形態は、塗布方法および塗布装置に関する。
有機半導体を用いた有機薄膜太陽電池は、活性層の形成に安価な塗布法を適用できることから、低コストの太陽電池として期待されている。有機薄膜太陽電池モジュールを構成するセルは、有機活性層を透明電極と対向電極とで挟持した構造を有している。透明電極は、一般的に導電性が低いため、セルの面積を大面積化するほど発生電荷を外部に取り出す効率が低下する。そこで、短冊状のセルを複数並べて形成すると共に、これら複数のセル間を直列に接続することが一般的である。
上述した複数のセルを有する有機薄膜太陽電池モジュールを低コストで実現するためには、有機活性層を形成する塗布材料を複数に分割されたパターンに精度よく塗布することが求められる。さらに、有機活性層の膜厚は数10〜数100nmオーダーであるため、そのような非常に薄い層を精度よく形成することが求められる。しかしながら、従来の塗布法ではパターン化された複数の有機活性層を低コストで精度よく形成することができない。例えば、低コストで比較的大面積に極薄い層を印刷可能な塗布法としてメニスカス印刷法が知られている。しかし、従来のメニスカス印刷法では分割された複数の有機活性層パターンを低コストでかつ精度よく形成することができない。このようなことから、塗布材料を複数の分割パターンに塗布する技術の向上が求められている。
特開2013−066873号公報
本発明が解決しようとする課題は、塗布材料を複数の分割パターンに低コストでかつ精度よく塗布することを可能にした塗布方法および塗布装置を提供することにある。
実施形態の塗布方法は、略円柱状の外周面を有するヘッド本体と、ヘッド本体の外周面を複数に分割するように設けられた複数の塗布領域と、外周面の円周方向の一部に沿って、隣接する塗布領域間に設けられた分離領域とを備える塗布ヘッドを用意する工程と、外周面のうちの分離領域が形成されていない領域を塗布対象物の塗布面側に向けつつ、塗布ヘッドを塗布面上に所定の間隙を持って配置する工程と、塗布ヘッドと塗布面との間に塗布材料を供給し、複数の塗布領域に跨って塗布材料のメニスカス柱を形成する工程と、分離領域が塗布面側を向くように、塗布ヘッドを外周面の円周方向に回転させ、メニスカス柱を複数の塗布領域に応じて複数に分離させる工程と、塗布ヘッドおよび塗布対象物の少なくとも一方を移動させ、複数に分離された塗布材料を塗布面に塗布する工程とを具備している。
実施形態の塗布装置を示す正面図である。 図1に示す塗布装置の側面図である。 図1に示す塗布装置における塗布ヘッドの第1の構成例を示す図である。 図1に示す塗布装置における塗布ヘッドの第2の構成例を示す図である。 図1に示す塗布装置における塗布ヘッドの第3の構成例を示す図である。 図1に示す塗布装置における塗布ヘッドの第4の構成例を示す図である。 図1に示す塗布装置を用いた塗布方法を示す図である。 図1に示す塗布装置を用いた塗布方法を示す図である。 図1に示す塗布装置を用いた塗布方法を示す図である。 図1に示す塗布装置の塗布ヘッドにおける分離領域の形状を説明するための図である。 図1に示す塗布装置を用いて作製される有機薄膜太陽電池の構成例を示す断面図である。 図11に示す有機薄膜太陽電池の平面図である。
以下、実施形態の塗布方法および塗布装置について、図面を参照して説明する。図1は実施形態の塗布装置を示す正面図、図2は実施形態の塗布装置を示す側面図である。図1および図2に示す塗布装置1は、塗布対象物である基板2の塗布面(表面)2aに液状の塗布材料3を塗布することによって、基板2上に所望形状の塗膜を形成するための装置である。塗布装置1は、塗布ヘッド10と、塗布材料3を供給する供給機構20と、塗布ヘッド10を回転させる回転機構30と、塗布ヘッド10および塗布対象物である基板2の少なくとも一方を移動させる移動機構40とを具備している。
塗布ヘッド10は、略円柱状の外周面を有するヘッド本体11と、ヘッド本体11の外周面を複数に分割するように設けられた複数の塗布領域12と、外周面の円周方向の一部に沿って、隣接する塗布領域12間に設けられた分離領域13とを備えている。ヘッド本体11は、図中x方向に長尺な円柱形状を有し、例えば円柱軸を回転軸として回転機構30により回転可能とされている。ヘッド本体11の回転軸は、後述するように円柱軸から偏心していてもよい。塗布ヘッド10は、図示を省略した昇降機構によって、例えば図中z方向(重力方向/上下方向)に昇降可能とされていてもよい。
ヘッド本体11の外周面には、その長手方向を複数の領域に分割するように、複数の塗布領域12が設けられており、これらにより例えば多連短冊状のパターンに分割された塗膜が形成される。複数の塗布領域12のそれぞれは、分割された塗膜の各パターンに対応している。分離領域13は、ヘッド本体11の外周面を複数の塗布領域12に分割するように設けられている。分離領域13は、隣接する塗布領域12間に設けられている。分離領域13は、ヘッド本体11の外周面の円周方向の一部のみに沿って設けられている。従って、ヘッド本体11の外周面は、その円周方向において、分離領域13が設けられている領域と、分離領域13が設けられていない領域とを有する。
分離領域13は、後述する塗布材料のメニスカス柱を、複数の塗布領域12に応じて複数に分離させる機能を有する。メニスカス柱の分離動作については、後に詳述する。分離領域13の具体的な構成としては、図3に示すくぼみ部14、図4に示す撥液部15、図5に示すくぼみ部14と撥液部15とを組み合わせた構造等が挙げられる。くぼみ部14は、外周面から軸方向に向けて凹ませた形状を有する。図3(a)は塗布ヘッド10の正面図、図3(b)は図3(a)のX−X線に沿った断面図である。図4および図5も同様である。くぼみ部14の具体的な形状は、特に限定されず、V溝状、角溝状、丸溝状等が適用される。くぼみ部14の円周方向の形状は、円周方向に対して一定であってもよいし、また円周方向の端部に向けて幅が狭くなるような形状であってよい。
撥液部15は、例えば塗布材料3に対してヘッド本体11の外周面より撥液性が高い材料の被膜を有する。撥液部15は、ヘッド本体11にそれより撥液性が高い部材を繋ぎ合わせて形成してもよい。撥液部15としての被膜(撥液被膜)は、塗布材料3やヘッド本体11の構成材料により選択された材料を用いて形成される。撥液被膜の形成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂材料、フッ素樹脂を含む金属メッキ材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。撥液被膜は、ヘッド本体11の外周面に撥液材料をパターン化して製膜する方法、ヘッド本体11の外周面全体に撥液材料を製膜した後に、撥液性が不要な部分の膜を除去する方法等により形成することができる。撥液部15が形成されている領域と形成されていない領域との間の形状は任意であり、撥液部15が凸状となる形状、撥液部15が凹状となる形状、両領域間に段差がない平坦な形状のいずれであってもよい。
撥液部15としての被膜は、図5に示すように、くぼみ部14内に形成してもよい。この場合、撥液被膜はくぼみ部14の深さ方向の全部を埋めるように形成してもよいし、くぼみ部14の深さ方向の一部を埋めるように形成してもよい。さらに、撥液被膜がくぼみ部14から突出するように形成してもよい。撥液部15としての被膜は、図6に示すように、くぼみ部14の円周方向における端部の微小領域のみに設けてもよい。撥液被膜を形成するくぼみ部14の形状は、V溝状、角溝状、丸溝状等のいずれであってもよい。くぼみ部14の先端形状も、矩形状、鋭角状、鈍角状、円状のいずれであってもよい。
撥液部15としての被膜は、くぼみ部14内に撥液材料を選択的に埋め込む方法、くぼみ部14を有するヘッド本体11の外周面全体に撥液材料を製膜した後に、撥液性が不要な部分の膜を除去する方法等により形成することができる。例えば、深さdのくぼみ部14を有する円柱状のヘッド本体11の外周面全体に厚さtの撥液被膜を形成し、切削加工等で撥液被膜を削り量aで削り取る場合、削り量aがt<a<d−tを満足するように加工することで、所望の撥液部15を得ることができる。撥液材料の製膜方法は、撥液材料に応じて適宜選択され、例えば塗布法やメッキ法が適用される。
供給機構20は、塗布ヘッド10と基板2の塗布面2aとの間に塗布材料3を供給する。供給機構20には、例えば微量の材料を正確に吐出することが可能なシリンジポンプが適用される。ただし、供給機構20はこれに限られるものではなく、微量材料の吐出に適した方法を用いることができる。移動機構40は、例えば塗布対象物である基板2が載置されるステージ41と、ステージ41の駆動機構42とを有している。ステージ41は、図中y方向に駆動機構42により移動可能とされている。駆動機構42は、ステージ41を図中z方向に移動させる機構を有していてもよい。移動機構40は、塗布ヘッド10を移動させるように構成してもよい。
次に、塗布装置1を用いて基板2に塗布材料3を塗布する工程について、図7ないし図9を参照して説明する。まず、塗布ヘッド10を基板2の塗布面2a上に所定の間隙を持って配置する。塗布ヘッド10は、ヘッド本体11の外周面のうち、その円周方向における分離領域13が設けられていない領域が塗布面2aを向くように配置される。すなわち、塗布ヘッド10は、ヘッド本体11の平坦な外周面を塗布面2aに向けて配置される。この状態で、塗布ヘッド10と基板2の塗布面2aとの間に供給機構20から塗布材料3を供給する(図7(a)および図8(a))。
供給機構20から供給された塗布材料3は、ヘッド本体11の外周面と塗布面2aとの間をx方向に濡れ広がることによって、複数の塗布領域12に跨るメニスカス柱4を形成する。メニスカス柱4は、円弧状の曲面を有する柱状体であり、ヘッド本体11と基板2の塗布面2aとの間の間隙、塗布材料3の性質(粘度や表面張力等)、塗布材料3の供給量等に応じて所望の形状を有する。複数の塗布領域12に跨るメニスカス柱4を形成するにあたって、1つの供給機構20から複数の塗布領域12と塗布面2aとの間に塗布材料3を供給する。1つの供給機構20から塗布材料3が供給される塗布領域12の数は、特に限定されるものではなく、複数であればよい。図1および図8では1つの供給機構20を示しているが、塗布領域12の数によっては複数の供給機構20を用いてもよい。この場合においても、供給機構20の数は塗布領域12の数より少なくなるように設定される。
次に、複数の塗布領域12に跨って形成されたメニスカス柱4を、複数の塗布領域12に応じて複数に分離させる。メニスカス柱4を複数に分離させるにあたって、まず図7(b)および図8(b)に示すように、ヘッド本体11と塗布面2aとの間の間隙を広げる。間隙の拡大工程は、塗布ヘッド10を上昇させたり、またステージ41を下降させることにより実施される。あるいは、ヘッド本体11の回転軸を円柱軸から偏心させて設け、ヘッド本体11を回転させた際に間隙が広がるようにしてもよい。このような工程を実施することによって、メニスカス柱4の分離を助長することができる。ただし、この工程は任意であり、間隙を拡大することなくメニスカス柱4の分離工程を実施してもよい。さらに、間隙の拡大と同時に塗布ヘッド10の回転や基板2の移動を実施したり、またこれらの工程を別々に実施(順番は限定されない)してもよい。
図7(c)および図8(c)に示すように、ヘッド本体11の外周面のうちの分離領域13が設けられている領域が塗布面2aを向くように、塗布ヘッド10を回転させる。塗布ヘッド10の回転方向は、特に限定されない。塗布面2aを向いた分離領域13がメニスカス柱4を切り裂く作用を示すことから、当初の1つのメニスカス柱4は複数の塗布領域12に応じた複数のメニスカス柱4Aに分離される。例えば、分離領域13としてくぼみ部14を適用した場合、塗布領域12の材料の表面張力と分離領域13(空気等)の表面張力の違いによって、メニスカス柱4が分離されると推測される。また、場合によっては、くぼみ部14の位置に対応する塗布材料3が例えば毛管現象でくぼみ部14内に引き込まれことによって、分離領域13を境としてメニスカス柱4が分離されると推測される。撥液部15を適用した場合、撥液部15の位置に対応する塗布材料3がはじかれることによって、分離領域13を境としてメニスカス柱4が分離される。
分離領域13としてのくぼみ部14や撥液部15は、塗膜の分割パターン間の幅、塗布材料3の諸特性、ヘッド本体11と塗布面2aとの間の間隙等にもよるが、メニスカス柱4の分離作用を効果的に発揮させるために、ヘッド本体11の長手方向に対して0.1mm以上の幅を有することが好ましい。くぼみ部14や撥液部15の幅が0.1mm未満であると、メニスカス柱4の分離機能が不十分になるおそれがある。塗布の分割パターン間の幅を広くしたい場合(例えば10mm)には、例えば直径の大きな塗布ヘッド10を用い、分離領域13の円周方向の形状を、円周方向の端部の幅は狭くし(例えば0.1mm)、円周方向の中央部に向けて徐々に広く(例えば10mm)なるような形状にすることで対応可能である。さらに、くぼみ部14はヘッド本体11外周面から0.1mm以上の深さを有することが好ましい。このようなくぼみ部14を適用することによって、メニスカス柱4の分離作用およびパターン塗布性を高めることができる。
分離領域13のヘッド本体11の円周方向に対する形成領域は、メニスカス柱4のニップ長に応じて設定することが好ましい。図10に示すように、ヘッド本体11の外周面の全円周長をL、メニスカス柱4のニップ長Lに対応する外周面の円周長をL、外周面の全円周長Lからニップ長Lに相当する円周長Lを引いた円周長をLとしたとき、分離領域13の円周方向に対する形成領域Lは、円周長Lを超え、かつ円周長Lと未満の範囲に設定することが好ましい。分離領域13の形成領域Lが円周長L以下であると、メニスカス柱4の分離作用が低下する。分離領域13の形成領域Lが円周長L以上であると、当初の1つのメニスカス柱4の形成性が低下する。
次に、ステージ41を駆動して基板2を一方向(y方向)に移動させることによって、図7(d)および図9に示すように、塗布材料3を塗布して塗膜5を形成する。塗布材料3は分離された複数のメニスカス柱4Aを形成しているため、塗膜5は複数のメニスカス柱4Aに応じて複数に分割されたパターン状に形成される。すなわち、複数の塗布領域12およびそれに対応する複数のメニスカス柱4Aに基づいて、多連短冊状のパターン5Aを有する塗膜5を形成することができる。この際、塗布材料3がくぼみ部14内に引き込まれた場合、塗布当初は図9に示すようにベタ膜状となることがあるが、くぼみ部14内の塗布材料3の基板2への移行が終了すると、分割されたパターン5Aが形成される。
上述したように、複数の塗布領域12に跨るメニスカス柱4の形成工程と、塗布ヘッド10の回転に基づくメニスカス柱4の分離工程とを適用することによって、多連短冊状のパターン5Aを有する塗膜5を高精度に形成することができる。さらに、塗布装置1の装置構成としては、従来のメニスカス印刷用の塗布装置とほとんど変わらないため、装置コストの大幅な上昇等を招くこともない。従って、多連短冊状のパターン5Aを有する塗膜5を低コストでかつ高精度に形成することが可能になる。
ここで、複数に分離されたメニスカス柱の他の形成方法としては、例えばくぼみ部のような分離領域を塗布ヘッドの円周方向全体に形成し、さらに複数の塗布領域にそれぞれシリンジポンプを配置し、複数の塗布領域に対して各シリンジポンプからそれぞれ塗布材料を供給することが考えられる。この場合、塗布ヘッドは回転させない。このような方法では、多数のシリンジポンプが必要となることから、様々な問題の発生が懸念される。
例えば、メニスカス柱に気泡が混入しないようにするためには、シリンジポンプ内に少量の塗布材料が残るように吐出させることが望ましく、余分な塗布材料量が多くなる。シリンジポンプには個体差があるため、供給量のばらつきが生じ、塗布膜厚、塗布幅、塗布位置等にばらつきが生じる。シリンジポンプを洗浄する際、洗浄液の必要量が多くなる。また、パターン塗布の塗布幅や塗布ピッチを変えるときには、シリンジポンプの配置ピッチを変える必要がある。塗布ピッチをかなり狭くしようとすると、シリンジポンプ同志が干渉して並べられなかったり、塗布ヘッドへのニードルの位置合わせが困難になる。さらに、ニードル部の位置に縦スジ状の塗布むらが発生しやすい。
実施形態の塗布装置1によれば、複数の塗布領域12に対して少数の供給機構(シリンジポンプ等)20から塗布材料3を供給するため、上述したような点を改善することができる。塗布幅や塗布ピッチを変えるときにおいても、供給機構20の調整が不要となる。供給機構20の配置ピッチを変える必要がない。かなり狭い塗布ピッチに対しても適用可能である。供給機構20の塗布ヘッド10に対する位置合わせ作業が簡便になる。また、縦スジ状の塗布むらの発生が抑制される。さらに、供給機構20の数を減らすことで、次のような効果が得られる。メニスカス柱への気泡の混入を防止する場合においても、余分な塗布材料の量が減らせる。供給機構20の個体差による塗布膜厚、塗布幅、塗布位置等のばらつきが改善される。供給機構20を洗浄する際に必要な洗浄液量が減らせる。
実施形態の塗布装置1およびそれを用いた塗布方法は、例えば有機薄膜太陽電池モジュールの製造方法における有機活性層の形成工程に好適に用いられる。図11および図12は、実施形態の塗布方法が有機活性層の形成工程に適用される有機薄膜太陽電池モジュール100の一例を示している。なお、図12は対向電極の図示を省略している。図11および図12に示す有機薄膜太陽電池モジュール100は、直列接続された複数のセル部102A、102Bを有している。支持基板101上には、分離された複数の第1電極層103A、103Bが形成されている。第1電極層103A、103B上には、それぞれ光電変換層104A、104Bが形成されている。光電変換層104A、104B上には、それぞれ第2電極層105A、105Bが形成されている。セル部102Aの第2電極層105Aは、セル部102Bの第1電極層103Bと電気的に接続されている。
図11に示す有機薄膜太陽電池モジュール100において、光電変換層104には支持基板101側から太陽光や照明光等の光が照射される。光電変換層104は、例えばp型半導体とn型半導体とを含む有機活性層と、場合によって、第1電極層103と有機活性層との間に配置された、図示しない第1中間層(例えば電子輸送層)、および有機活性層と第2電極層105との間に配置された、図示しない第2中間層(例えば正孔輸送層)とを有している。光電変換層104に照射された光を有機活性層が吸収すると、p型半導体とn型半導体との相界面で電荷分離が生じることによって、電子とそれと対になる正孔とが生成される。有機活性層で生成された電子と正孔のうち、例えば電子は第1電極層103で捕集され、正孔は第2電極層105で捕集される。
支持基板101は、光透過性を有する材料により構成される。支持基板101の構成材料としては、無アルカリガラス、石英ガラス、サファイア等の無機材料、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー等の有機材料が挙げられる。
第1電極層103は、光透過性と導電性とを有する材料により構成される。第1電極層103の構成材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素がドープされた酸化錫(FTO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物(IGZO)等の導電性金属酸化物、金、白金、銀、銅、チタン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、インジウム、アルミニウム等の金属やそれら金属を含む合金、あるいはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)のような導電性高分子等が挙げられる。第1電極層103は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等により形成される。
有機活性層は、照射された光により電荷分離を行う機能を有し、p型半導体とn型半導体とを含んでいる。p型半導体には、電子供与性を有する材料が用いられる。n型半導体には、電子受容性を有する材料が用いられる。有機活性層を構成するp型半導体およびn型半導体は、それらが共に有機材料であってもよいし、一方が有機材料であってもよい。
有機活性層に含まれるp型半導体には、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体等を用いることができ、またこれらを併用してもよい。
有機活性層に含まれるn型半導体としては、フラーレンおよびフラーレン誘導体を用いることが好ましい。フラーレン誘導体は、フラーレン骨格を有するものであればよい。フラーレンおよびフラーレン誘導体としては、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン、これらフラーレンの炭素原子の少なくとも一部が酸化された酸化フラーレン、フラーレン骨格の一部の炭素原子を任意の官能基で修飾した化合物、これら官能基同士が互いに結合して環を形成した化合物等が挙げられる。
有機活性層は、例えばp型半導体材料とn型半導体材料との混合物を含むバルクヘテロ接合構造を有する。バルクヘテロ接合型の有機活性層は、p型半導体材料とn型半導体材料とのミクロ相分離構造を有する。有機活性層内において、p型半導体相とn型半導体相とは互いに相分離しており、ナノオーダーのpn接合を形成している。有機活性層が光を吸収すると、これらの相界面で正電荷(正孔)と負電荷(電子)とが分離され、各半導体を通って電極103、105に輸送される。
バルクヘテロ接合型の有機活性層は、p型半導体とn型半導体を溶媒に溶解させた溶液を塗布材料として使用し、この塗布材料を第1電極層(透明電極)103等を有する支持基板(透明基板)101上に塗布することにより形成される。有機活性層を構成する塗布材料は、実施形態の塗布装置1およびそれを用いた塗布方法を適用して支持基板(透明基板)101上に塗布される。これによって、図12に示すような多連短冊状のパターンを有する光電変換層103A、103Bを、高精度にかつ低コストで形成することが可能になる。有機活性層の厚さは特に限定されないが、10nm〜1000nmが好ましい。
電子輸送層は、有機活性層で生成された正孔をブロックし、電子を選択的にかつ効率的に第1電極層103に輸送する機能を有する。電子輸送層の構成材料としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ガリウムのような金属酸化物、ポリエチレンイミンのような有機材料等が挙げられる。正孔輸送層は、有機活性層で生成された電子をブロックし、正孔を選択的にかつ効率的に第2電極層105に輸送する機能を有する。正孔輸送層の構成材料としては、PEDOT/PSS、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンポリピロール、ポリアニリンのような有機導電性ポリマー、酸化モリブデン、酸化バナジウムのような金属酸化物等が挙げられる。電子輸送層および正孔輸送層は、例えば真空蒸着法やスパッタ法のような真空成膜法、ゾルゲル法、塗布法等により形成される。
第2電極層105は、導電性を有し、場合によっては光透過性を有する材料により構成される。第2電極層105の構成材料としては、例えば白金、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、タングステン、チタン、ジルコニウム、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、サマリウム、テルビウムのような金属、それらを含む合金、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)のような導電性金属酸化物、PEDOT/PSSのような導電性高分子、あるいはグラフェン、カーボンナノチューブのような炭素材料等が挙げられる。第2電極層105は、例えば真空蒸着法やスパッタ法のような真空成膜法、ゾルゲル法、塗布法等により形成される。
なお、実施形態の塗布装置1およびそれを用いた塗布方法は、上述した有機薄膜太陽電池モジュールの有機活性層の形成工程に限らず、電子輸送層や正孔輸送層の形成工程、第1電極層や第2電極層の形成工程等、塗布法を適用する形成工程に適用可能である。さらに、有機薄膜太陽電池モジュールの製造工程に限らす、活性層に有機−無機ハイブリット構造を有するペロブスカイト半導体薄膜を用いたペロブスカイト太陽電池、ペロブスカイト半導体薄膜と有機半導体薄膜とを組み合わせた太陽電池等の製造工程に適用することができる。例えば、活性層に用いられるペロブスカイト半導体としては、(CHNH)BX(BはPbやSn等の金属原子、XはI、Br、Cl等のハロゲン元素である)が知られている。さらに、太陽電池の製造工程に限らず、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)方式の照明やディスプレイのように、図9に示したような多連短冊状のパターン塗布が有用となる技術全般に対して適用することができる。
次に、実施例およびその評価結果について述べる。
(実施例1)
直径が16mm、長さが302.4mmのSUS303製の円柱体の外周面に、幅が1.2mmのくぼみ部を均等間隔に22個形成することによって、23個の塗布領域(幅:12mm)を有する塗布ヘッドを製作した。くぼみ部の深さは0.5mmとした。くぼみ部の形成領域は、円周に対して180°の範囲とした。くぼみ部の先端形状としては、矩形状、角度30°の鋭角状、半径が0.6mmの円状の3種類を適用したが、後述する効果に差異はなかった。
モノクロロベンゼン1mlに、8mgのPTB7([ポリ{4,8−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−2,6−ジイル−1t−alt−3−フルオロ−2−[(2−エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4−b]チオフェン−4,6−ジイル}]/p型半導体)と、12mgのPC70BM([6,6]フェニルC71ブチル酸メチルエスター/n型半導体)とを分散させることによって、有機活性層の形成材料である塗布液を調製した。
塗布液供給機構には、シリンジポンプを用いた。バレルはガラス製で、ニードルはステンレス製である。塗布対象物としては、ITO電極を有する無アルカリガラス基板を使用した。前処理としてUVオゾン洗浄したガラス基板と、前処理していないガラス基板とを用いたが、後述する効果に差異はなかった。
上述した塗布ヘッドをガラス基板上に、くぼみ部がガラス基板とは反対側を向くように配置した。塗布ヘッドとガラス基板との間隙は0.88mmとした。3本のシリンジポンプを使用し、これらを塗布ヘッドの全幅に対してほぼ均等な配置となるように設置した。塗布液を3本合計で1.25ml吐出させ、塗布ヘッドの全幅に対して1つのメニスカス柱を形成した。塗布ヘッドを円周方向に180°回転させたところ、メニスカス柱が23個に分割された。この後、ガラス基板を移動させることによって、図9に示したような多連短冊状のパターンを有する塗膜を形成することができた。
得られた多連短冊状の塗膜を観察したところ、パターン間が良好に分割されており、また形状精度に優れるものであった。また、シリンジポンプのニードル位置に縦スジ状の塗布むらは発生していなかった。塗布ヘッドの回転方向に差異はなかった。さらに、有機活性層(塗膜)上にAg電極を蒸着法で形成して有機薄膜太陽電池を作製したところ、良好な特性を示すことが確認された。ここでは詳述していないが、ITO電極と有機活性層との間には電子輸送層を、また有機活性層とAg電極との間には正孔輸送層を形成した。
(実施例2)
直径が16.2mm、長さが302.4mmのSUS303製の円柱体の外周面に、幅が1.2mm、深さが0.25mmのくぼみ部を均等間隔に22個形成した。くぼみ部の形成領域は、円周に対して120°の範囲とした。次いで、くぼみ部を有する円柱体の全面に対して撥液処理を行った。撥液処理は、PTFEコンパウンドメッキ(株式会社金属被膜研究所製)により実施した。メッキ厚は10μmとした。塗布ヘッドの最表面を切削法で0.11mm削ることによって、撥液部を形成した。0.25mmのくぼみ部内に製膜されためっき膜は削られることがない。このようにして、22個の撥液部と23個の塗布領域を有する塗布ヘッドを製作した。得られた塗布ヘッドを用いて、実施例1と同条件で塗布液の塗布を実施したところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
(実施例3)
直径が16mm、長さが302.4mmのSUS303製の円柱体の外周面に、幅が1.2mm、深さが0.5mmのくぼみ部を均等間隔に22個形成した。くぼみ部の形成領域は、円周に対して120°の範囲とした。くぼみ部の先端形状は、角度30°の鋭角状とした。さらに、くぼみ部の先端に直径1.6mm、深さ0.25mmの円形状のくぼみを形成した。この後、実施例2と同一条件で撥液処理および切削加工を行った。このようにして得られた塗布ヘッドを用いて、実施例1と同条件で塗布液の塗布を実施したところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…塗布装置、2…基板、3…塗布材料、4…メニスカス柱、5…塗膜、10…塗布ヘッド、11…ヘッド本体、12…塗布領域、13…分離領域、14…くぼみ部、15…撥液部、20…供給機構、30…回転機構、40…移動機構、41…ステージ、42…ステージ駆動機構。

Claims (12)

  1. 略円柱状の外周面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体の前記外周面を複数に分割するように設けられた複数の塗布領域と、前記外周面の円周方向の一部のみに沿って、隣接する前記塗布領域間に設けられた分離領域とを備える塗布ヘッドを用意する工程と、
    前記外周面のうちの前記分離領域が形成されていない領域を塗布対象物の塗布面側に向けつつ、前記塗布ヘッドを前記塗布面上に所定の間隙を持って配置する工程と、
    前記塗布ヘッドと前記塗布面との間に塗布材料を供給し、前記複数の塗布領域に跨って前記塗布材料のメニスカス柱を形成する工程と、
    前記分離領域が前記塗布面側を向くように、前記塗布ヘッドを前記外周面の円周方向に回転させ、前記メニスカス柱を前記複数の塗布領域に応じて複数に分離させる工程と、
    前記塗布ヘッドおよび前記塗布対象物の少なくとも一方を移動させ、前記複数に分離された塗布材料を前記塗布面に塗布する工程と
    を具備する塗布方法。
  2. 前記分離領域は、前記外周面の円周方向の一部に沿って形成されたくぼみ部および撥液部の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の塗布方法。
  3. 前記くぼみ部は、前記ヘッド本体の長手方向に対して0.1mm以上の幅と、前記外周面から0.1mm以上の深さとを有する、請求項2に記載の塗布方法。
  4. 前記撥液部は、前記塗布材料に対して前記ヘッド本体の前記外周面より撥液性が高い材料を含み、かつ前記ヘッド本体の長手方向に対して0.1mm以上の幅を有する、請求項2に記載の塗布方法。
  5. 前記分離領域は、前記外周面の円周方向に対して、前記メニスカス柱のニップ長Lに相当する前記外周面の円周長Lを超え、かつ前記外周面の全円周長Lから前記ニップ長Lに相当する前記円周長Lを引いた円周長L未満の範囲に形成されている、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の塗布方法。
  6. さらに、前記塗布材料のメニスカス柱を形成した後に、前記塗布ヘッドと前記塗布面との間の間隙を広げる工程を具備する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の塗布方法。
  7. 略円柱状の外周面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体の前記外周面を複数に分割するように設けられた複数の塗布領域と、前記外周面の円周方向の一部のみに沿って、隣接する前記塗布領域間に設けられた分離領域とを備える塗布ヘッドと、
    前記複数の塗布領域に跨って塗布材料のメニスカス柱を形成するように、前記外周面のうちの前記分離領域が形成されていない領域を塗布対象物の塗布面側に向けて配置された前記塗布ヘッドと前記塗布面との間に塗布材料を供給する供給機構と、
    前記メニスカス柱を前記複数の塗布領域に応じて複数に分離させるように、前記塗布ヘッドを前記外周面の円周方向に回転させる回転機構と、
    前記複数に分離された塗布材料を前記塗布面に塗布するように、前記塗布ヘッドおよび前記塗布対象物の少なくとも一方を移動させる移動機構と
    を具備する塗布装置。
  8. 前記分離領域は、前記外周面の円周方向の一部に沿って形成されたくぼみ部および撥液部の少なくとも一方を有する、請求項7に記載の塗布装置。
  9. 前記くぼみ部は、前記ヘッド本体の長手方向に対して0.1mm以上の幅と、前記外周面から0.1mm以上の深さとを有する、請求項8に記載の塗布装置。
  10. 前記撥液部は、前記塗布材料に対して前記ヘッド本体の前記外周面より撥液性が高い材料を含み、かつ前記ヘッド本体の長手方向に対して0.1mm以上の幅を有する、請求項8に記載の塗布装置。
  11. 前記分離領域は、前記外周面の円周方向に対して、前記メニスカス柱のニップ長Lに相当する前記外周面の円周長Lを超え、かつ前記外周面の全円周長Lから前記ニップ長Lに相当する前記円周長Lを引いた円周長L未満の範囲に形成されている、請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載の塗布装置。
  12. 前記供給機構の数は、前記複数の塗布領域の数より少ない、請求項7ないし請求項11のいずれか1項に記載の塗布装置。
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