交流電源を入力とする一般的なスイッチング電源では、ブリッジ接続した整流ダイオードにて交流電圧を全波整流し、交流電圧を直流電圧に変換する際の力率低下を防止するために、昇圧型スイッチング電源を利用した力率改善回路が用いられている。例えば図42に示す第1従来例のスイッチング電源装置21は、ブリッジ接続した整流ダイオードにて交流電圧を全波整流するものである。この装置は、全波整流用のダイオードブリッジ整流回路を構成する4つのダイオードDa〜Ddと、インダクタL1、Nチャネル型電界効果トランジスタからなるスイッチング素子Q1、ダイオードD1、平滑用の電界コンデンサCoから構成されている。
交流電源PSの出力は入力端子IN1,IN2に接続されて、これらの入力端子IN1,IN2はダイオードブリッジ整流回路の入力端に接続されている。ダイオードブリッジ整流回路の正極出力端はインダクタL1の入力端に接続され、ダイオードブリッジ整流回路の負極出力端はグランドに接続されると共に負極出力端子Out2に接続されている。インダクタL1の出力端はダイオードD1のアノードに接続されると共にスイッチング素子Q1のドレインに接続され、スイッチング素子Q1のソースは負極出力端子Out2に接続されている。ダイオードD1のカソードは正極出力端子Out1に接続されている。また、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2との間には平滑用コンデンサCoが接続されると共に負荷Loadが接続されている。
このスイッチング電源装置21では、交流電源から入力された電流は必ずダイオードブリッジ回路の2つのダイオードを通過するので整流ダイオードの順方向電圧降下に起因する損失が発生する。図43はスイッチング電源装置21の動作を示す電圧及び電流波形図である。図にはスイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Vgs、インダクタL1に流れる電流、スイッチング素子Q1のドレイン電流、ダイオードD1の両端間電圧、ダイオードD1に流れる電流の波形が描かれている。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオンしたときの電流経路は図44に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図45に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。
また、図46に示すように、第1入力端子IN1の交流入力電圧が正極であり且つダイオードD1が順方向バイアスのときは、ダイオードD1のカソードからN型半導体に電子が次々に供給され、ダイオードD1のカソードからP型半導体に正孔が供給される。しかし、スイッチング素子Q1が再びオンするとき、これまで順方向バイアスであったダイオードD1に逆バイアスが与えられる。この逆バイアス状態になった過度状態(以下、逆回復時間と称する)では、電子と正孔の各キャリアは、順方向バイアス時に移動していた方向とは反対に移動を開始する。このとき、通常のダイオードの整流作用とは反して逆方向の電流が流れるため、損失(以下、逆回復損失と称する)が発生する。図43のA2に示すようにダイオードD1には逆回復時間に出力から逆流する電流が流れる。また、図43のA1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q1のドレインにはサージ電流が流れる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q1がオンしたときの電流経路は図47に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図48に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。
また、第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q1が再びオンしたときの電流経路は図49に示すとおりであり、これにより上記と同様にダイオードD1の逆回復時間に逆回復損失が発生する。
ダイオードブリッジ回路で発生する順方向電圧効果損失を軽減する方法として、図50に示すようにブリッジ接続した整流ダイオードを利用しない力率改善回路を有するスイッチング電源装置22(第2従来例)が提案されている。
このスイッチング電源装置22は、交流入力の電力エネルギーを蓄積すると共に、蓄積した電力エネルギーを放出するインダクタL1,L2と、ダイオード整流型昇圧回路用のスイッチング素子Q1,Q2、ダイオード整流型昇圧回路用のダイオード整流素子D1,D2、リターン電流経路用ダイオードD3,D4、平滑用コンデンサCoによって構成されている。なお、スイッチング素子Q1,Q2は、FET、トランジスタ、IGBT等からなり、ダイオード整流素子D1,D2は、ファーストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオード等からなり、リターン電流経路用ダイオードは、ファーストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオード等からなる。
交流電源PSの出力は入力端子IN1,IN2に接続されている。第1入力端子IN1はダイオードD4のカソードに接続されると共にインダクタL1の入力端に接続される。インダクタL1の出力端はダイオードD1のアノードに接続されると共にスイッチング素子Q1のドレインに接続され、スイッチング素子Q1のソースは負極出力端子Out2に接続されている。また、ダイオードD1のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードD4のカソードは負極出力端子Out2に接続されている。
第2入力端子IN2はダイオードD3のカソードに接続されると共にインダクタL2の入力端に接続され、インダクタL2の出力端はダイオードD2のアノードに接続されると共にスイッチング素子Q2のドレインに接続されている。スイッチング素子Q2のソースは負極出力端子Out2に接続されている。また、ダイオードD2のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードD3のカソードは負極出力端子Out2に接続されている。また、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2との間には平滑用コンデンサCoが接続されると共に負荷Loadが接続されている。
このスイッチング電源装置22では、ダイオードブリッジが無くなり、リターン電流用のダイオードD3,D4のみのダイオード1つ分の順方向損失が発生するだけである。図51はスイッチング電源装置22の動作を示す電圧及び電流波形図である。図にはスイッチング素子Q1,Q2のゲート・ソース間電圧Vgs、インダクタL1,L2に流れる電流、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流、ダイオードD1,D2の両端間電圧、ダイオードD1,D2に流れる電流の波形が描かれている。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオンしたときの電流経路は図52に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図53に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。第2入力端子IN2側の交流入力電圧が負極であるとき、ダイオードD3は常にオン状態になっている。
また、図54に示すように、第1入力端子IN1の交流入力電圧が正極であり且つダイオードD1が順方向バイアスのとき、ダイオードD1のカソードからN型半導体に電子が次々に供給され、ダイオードD1のカソードからP型半導体に正孔が供給される。しかし、スイッチング素子Q1が再びオンするとき、これまで順方向バイアスであったダイオードD1に逆バイアスが与えられる。この逆バイアス状態になった過度状態(以下、逆回復時間と称する)では、電子と正孔の各キャリアは、順方向バイアス時に移動していた方向とは反対に移動を開始する。このとき、通常のダイオードの整流作用とは反して逆方向の電流が流れるため、損失(以下、逆回復損失と称する)が発生する。このとき、図51のA4に示すようにダイオードD1には逆回復時間に出力から逆流する電流が流れる。また、図51のA3に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q1のドレインにはサージ電流が流れる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオンし、スイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図55に示すとおりであり、これによりインダクタL2に電気エネルギーが蓄えられる。このときダイオードD4はオン状態であり、ダイオードD3はオフ状態である。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図56に示すとおりであり、これによりインダクタL2に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。
また、第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2が再びオンしたときの電流経路は図57に示すとおりであり、これにより上記と同様にダイオードD2の逆回復時間に逆回復損失が発生する。
上記の他にも、特開2011−019323号公報(特許文献1)に開示される力率改善回路では、正弦波交流のライン入力電圧の上波側部用昇圧回路と下波側部用昇圧回路をそれぞれ設けることで、整流ダイオードブリッジを利用しないような力率改善回路になるよう工夫を行なっている。
また、特開2010−136489号公報(特許文献2)に開示される電力変換装置では、整流ダイオードブリッジを利用せずに、LC並列回路を組み合わせた力率改善回路が提案されている。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態におけるスイッチング電源装置11の主要部を示す回路図である。スイッチング電源装置11の主要部は、交流入力の電力エネルギーを蓄積すると共に蓄積した電力エネルギーを放出するインダクタL1,L2と、Nチャネル電界効果トランジスタからなるダイオード整流型昇圧回路用のスイッチング素子Q1,Q2、ダイオード整流型昇圧回路用のダイオード整流素子D1,D2、Nチャネル電界効果トランジスタからなるリターン電流経路用スイッチング素子Q3,Q4、LC直列回路用のインダクタ(直列インダクタ)Lr1,Lr2、LC直列回路用のコンデンサ(直列コンデンサ)Cr1,Cr2、LC電流経路用のダイオードDr1,Dr2、平滑用のコンデンサCoから構成されている。なお、スイッチング素子Q1〜Q4としては、電界効果トランジスタの他にバイポーラトランジスタ或いは絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いることができる。また、ダイオードD1,D2としては、ファーストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオード等を用いることができる。本実施形態では上記インダクタL1とスイッチング素子Q1とダイオードD1によって1つの昇圧回路が形成され、上記インダクタL2とスイッチング素子Q2とダイオードD2によって1つの昇圧回路が形成されている。
インダクタL1の入力端は第1入力端子IN1とスイッチング素子Q4のドレインに接続され、インダクタL1の出力端はスイッチング素子Q1のドレインとインダクタLr1の入力端に接続されている。インダクタLr1の出力端はコンデンサCr1の入力端に接続され、これらのインダクタLr1とコンデンサCr1によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr1の出力端はダイオードD1のアノードとダイオードDr1のカソードに接続されている。ダイオードD1のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr1のアノードは負極出力端子Out2(GNDライン)に接続されている。また、スイッチング素子Q4のソースとスイッチング素子Q1のソースは負極出力端子Out2に接続されている。
インダクタL2の入力端は第2入力端子IN2とスイッチング素子Q3のドレインに接続され、インダクタL2の出力端はスイッチング素子Q2のドレインとインダクタLr2の入力端に接続されている。インダクタLr2の出力端はコンデンサCr2の入力端に接続され、これらのインダクタLr2とコンデンサCr2によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr2の出力端はダイオードD2のアノードとダイオードDr2のカソードに接続されている。ダイオードD2のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr2のアノードは負極出力端子Out2に接続されている。また、スイッチング素子Q3のソースとスイッチング素子Q2のソースは負極出力端子Out2に接続されている。さらに、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2の間には平滑用のコンデンサCoが接続されている。
また、第1入力端子IN1と第2入力端子IN2には交流電源PSが接続され、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2には負荷Loadが接続されている。
図2乃至図5はスイッチング電源装置11の動作を示す電圧及び電流波形図である。図2にはスイッチング素子Q1,Q2のゲート・ソース間電圧Vgs、インダクタL1,L2に流れる電流、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流、ダイオードD1,D2の両端間電圧、ダイオードD1,D2に流れる電流の波形が描かれている。また、図3には交流電源PSの出力電圧V#ACと、スイッチング素子Q3のゲート・ソース間電圧Q3#Vgs、スイッチング素子Q4のゲート・ソース間電圧Q4#Vgs、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgs、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsが描かれている。この図3における時間T1間の詳細波形が図4に示されており、図3における時間T2間の詳細波形が図5に示されている。本実施形態におけるスイッチング素子Q1〜Q4のゲートには上記のような制御電圧が図示せぬ制御電圧発生回路から入力される。
すなわち、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が正極であるときは、スイッチング素子Q3のゲート・ソース間電圧Q3#Vgsがハイレベル(約5V)となってスイッチング素子Q3はオン状態となり、スイッチング素子Q4のゲート・ソース間電圧Q4#Vgsはローレベル(約0V)となってスイッチング素子Q4はオフ状態となる。さらに、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が正極であるときは、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsが所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返し、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsはローレベル(約0V)となる。
また、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が負極であるときは、スイッチング素子Q3のゲート・ソース間電圧Q3#Vgsがローレベル(約0V)となってスイッチング素子Q3はオフ状態となり、スイッチング素子Q4のゲート・ソース間電圧Q4#Vgsはハイレベル(約5V)となってスイッチング素子Q4はオン状態となる。さらに、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が負極であるときは、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsがローレベル(約0V)となり、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsは所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返す。
なお、スイッチング素子Q1のターンオン時間TonはインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましく、スイッチング素子Q2のターンオン時間TonはインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましい。その理由は、Lr1,Lr2の逆起電力によって発生するサージ電圧を最小限にするためである。
次に、本実施形態のスイッチング電源装置11の動作をさらに詳細に説明する。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオンしたときの電流経路は図6に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1をとおり、さらにスイッチング素子Q1,Q3を通って第2入力端子IN2に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr1を介してインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q1に流れ込むため、スイッチング素子Q1に流れる電流はインダクタL1から流れ込む電流とインダクタLr1から流れ込む電流の和となる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図7に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1とインダクタLr1とコンデンサCr1を通って負荷Loadに至り、負荷Loadからスイッチング素子Q3を通って第2入力端子IN2に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に変わると、図8に示すように、ダイオードD1には逆バイアスがかかる。この逆バイアス状態になった過度状態(以下、逆回復時間と称する)では、ダイオードD1の整流作用に反して逆方向(カソードからアノード方向)に電流が流れるようになる。つまり、電子と正孔の各キャリアは、順方向バイアス時に移動していた方向とは反対に移動を開始する。このとき、通常のダイオードの整流作用とは反して逆方向の電流が流れるため、損失(以下、逆回復損失と称する)が発生する。しかし、ダイオードD1に対して直列に接続されたインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr1に充電しながらダイオードD1に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q1に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、図2のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q1のドレインにはサージ電流が流れない。さらに、図2のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr1へ充電しながらダイオードD1に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図2のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオンしたときの電流経路は図9に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はインダクタL2をとおり、さらにスイッチング素子Q2,Q4を通って第1入力端子IN1に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr2を介してインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q2に流れ込むため、スイッチング素子Q2に流れる電流はインダクタL2から流れ込む電流とインダクタLr2から流れ込む電流の和となる。
第2入力端子IN2側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオフしたときの電流経路は図10に示すとおりであり、これによりインダクタL2に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はインダクタL2とインダクタLr2とコンデンサCr2とダイオードD2を通って負荷Loadに至り、負荷Loadからスイッチング素子Q4を通って第1入力端子IN1に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q2がオフ状態からオン状態に変わると、図11に示すように、ダイオードD2には逆バイアスがかかる。この逆回復時間では、ダイオードD2の整流作用に反して逆方向(カソードからアノード方向)に電流が流れるようになるが、ダイオードD2に対して直列に接続されたインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr2に充電しながらダイオードD2に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q2に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、上記と同様に図2のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q2のドレインにはサージ電流が流れない。さらに、図2のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr2へ充電しながらダイオードD2に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図2のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
上記のように、本実施形態によれば、昇圧回路の出力側で且つダイオードD1,D2の入力側にLC直列回路が設けられているので、ダイオードD1,D2の両端の急峻な電圧変動を抑制することができると共に、ダイオードD1,D2の逆回復時間内に出力から逆流する貫通電流を低減することができ、このときターンオンするスイッチング素子Q1,Q2の損失もあわせて低減することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図12は本発明の第2実施形態におけるスイッチング電源装置12の主要部を示す回路図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。
スイッチング電源装置12の主要部は、交流入力の電力エネルギーを蓄積すると共に蓄積した電力エネルギーを放出するインダクタL1,L2と、Nチャネル電界効果トランジスタからなるダイオード整流型昇圧回路用のスイッチング素子Q1,Q2、ダイオード整流型昇圧回路用のダイオード整流素子D1,D2、Nチャネル電界効果トランジスタからなるリターン電流経路用ダイオードD3,D4、LC直列回路用のインダクタ(直列インダクタ)Lr1,Lr2、LC直列回路用のコンデンサ(直列コンデンサ)Cr1,Cr2、LC電流経路用のダイオードDr1,Dr2、平滑用のコンデンサCoから構成されている。なお、スイッチング素子Q1,Q2としては、電界効果トランジスタの他にバイポーラトランジスタ或いは絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いることができる。また、ダイオードD1〜D4としては、ファーストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオード等を用いることができる。
本実施形態では上記インダクタL1とスイッチング素子Q1とダイオードD1によって1つの昇圧回路が形成され、上記インダクタL2とスイッチング素子Q2とダイオードD2によって1つの昇圧回路が形成されている。
インダクタL1の入力端は第1入力端子IN1とダイオードD4のカソードに接続され、インダクタL1の出力端はスイッチング素子Q1のドレインとインダクタLr1の入力端に接続されている。インダクタLr1の出力端はコンデンサCr1の入力端に接続され、これらのインダクタLr1とコンデンサCr1によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr1の出力端はダイオードD1のアノードとダイオードDr1のカソードに接続されている。ダイオードD1のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr1のアノードは負極出力端子Out2(GNDライン)に接続されている。また、ダイオードD4のアノードとスイッチング素子Q1のソースは負極出力端子Out2に接続されている。
インダクタL2の入力端は第2入力端子IN2とダイオードD3のカソードに接続され、インダクタL2の出力端はスイッチング素子Q2のドレインとインダクタLr2の入力端に接続されている。インダクタLr2の出力端はコンデンサCr2の入力端に接続され、これらのインダクタLr2とコンデンサCr2によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr2の出力端はダイオードD2のアノードとダイオードDr2のカソードに接続されている。ダイオードD2のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr2のアノードは負極出力端子Out2に接続されている。また、ダイオードD3のアノードとスイッチング素子Q2のソースは負極出力端子Out2に接続されている。さらに、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2の間には平滑用のコンデンサCoが接続されている。
また、第1入力端子IN1と第2入力端子IN2には交流電源PSが接続され、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2には負荷Loadが接続されている。
図13はスイッチング電源装置12の動作を示す電圧及び電流波形図である。図13にはスイッチング素子Q1,Q2のゲート・ソース間電圧Vgs、インダクタL1,L2に流れる電流、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流、ダイオードD1,D2の両端間電圧、ダイオードD1,D2に流れる電流の波形が描かれている。また、スイッチング素子Q1,Q2のゲート・ソース間電圧V#gsと交流電源PSの出力電圧V#ACとの関係は前述した図3に示すものと同じであり、スイッチング素子Q1,Q2のゲートには上記のような制御電圧が図示せぬ制御電圧発生回路から入力される。
なお、第1実施形態と同様に、スイッチング素子Q1のターンオン時間TonはインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましく、スイッチング素子Q2のターンオン時間TonはインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましい。
次に、本実施形態のスイッチング電源装置12の動作をさらに詳細に説明する。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオンしたときの電流経路は図14に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1をとおり、さらにスイッチング素子Q1とダイオードD3を通って第2入力端子IN2に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr1を介してインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q1に流れ込むため、スイッチング素子Q1に流れる電流はインダクタL1から流れ込む電流とインダクタLr1から流れ込む電流の和となる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図15に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1とインダクタLr1とコンデンサCr1を通って負荷Loadに至り、負荷LoadからダイオードD3を通って第2入力端子IN2に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に変わると、図16に示すように、ダイオードD1には逆バイアスがかかる。この逆回復時間では、ダイオードD1の整流作用に反して逆方向(カソードからアノード方向)に電流が流れるようになるが、ダイオードD1に対して直列に接続されたインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr1に充電しながらダイオードD1に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q1に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、図13のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q1のドレインにはサージ電流が流れる。さらに、図13のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr1へ充電しながらダイオードD1に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図13のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオンしたときの電流経路は図17に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はインダクタL2をとおり、さらにスイッチング素子Q2とダイオードD4を通って第1入力端子IN1に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr2を介してインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q2に流れ込むため、スイッチング素子Q2に流れる電流はインダクタL2から流れ込む電流とインダクタLr2から流れ込む電流の和となる。
第2入力端子IN2側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオフしたときの電流経路は図18に示すとおりであり、これによりインダクタL2に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はインダクタL2とインダクタLr2とコンデンサCr2とダイオードD2を通って負荷Loadに至り、負荷LoadからダイオードD4を通って第1入力端子IN1に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q2がオフ状態からオン状態に変わると、図19に示すように、ダイオードD2には逆バイアスがかかる。この逆回復時間では、ダイオードD2の整流作用に反して逆方向(カソードからアノード方向)に電流が流れるようになるが、ダイオードD2に対して直列に接続されたインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr2に充電しながらダイオードD2に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q2に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、上記と同様に図13のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q2のドレインにはサージ電流が流れる。さらに、図13のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr2へ充電しながらダイオードD2に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図13のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
上記のように、本実施形態によれば、昇圧回路の出力側で且つダイオードD1,D2の入力側にLC直列回路が設けられているので、ダイオードD1,D2の両端の急峻な電圧変動を抑制することができると共に、ダイオードD1,D2の逆回復時間内に出力から逆流する貫通電流を低減することができ、このときターンオンするスイッチング素子Q1,Q2の損失もあわせて低減することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図20は本発明の第3実施形態におけるスイッチング電源装置13の主要部を示す回路図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。
スイッチング電源装置13の主要部は、交流入力の電力エネルギーを蓄積すると共に蓄積した電力エネルギーを放出するインダクタL1と、Nチャネル電界効果トランジスタからなるダイオード整流型昇圧回路用のスイッチング素子Q1,Q2、ダイオード整流型昇圧回路用のダイオード整流素子D1,D2、LC直列回路用のインダクタ(直列インダクタ)Lr1,Lr2、LC直列回路用のコンデンサ(直列コンデンサ)Cr1,Cr2、LC電流経路用のダイオードDr1,Dr2、平滑用のコンデンサCoから構成されている。なお、スイッチング素子Q1,Q2としては、電界効果トランジスタの他にバイポーラトランジスタ或いは絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いることができる。また、ダイオードD1,D2としては、ファーストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオード等を用いることができる。
本実施形態では上記インダクタL1とスイッチング素子Q1とダイオードD1によって1つの昇圧回路が形成されている。
インダクタL1の入力端は第1入力端子IN1に接続され、インダクタL1の出力端はスイッチング素子Q1のドレインとインダクタLr1の入力端に接続されている。インダクタLr1の出力端はコンデンサCr1の入力端に接続され、これらのインダクタLr1とコンデンサCr1によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr1の出力端はダイオードD1のアノードとダイオードDr1のカソードに接続されている。ダイオードD1のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr1のアノードは負極出力端子Out2(GNDライン)に接続されている。また、スイッチング素子Q1のソースは負極出力端子Out2に接続されている。
第2入力端子IN2はスイッチング素子Q2のドレインとインダクタLr2の入力端に接続されている。インダクタLr2の出力端はコンデンサCr2の入力端に接続され、これらのインダクタLr2とコンデンサCr2によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr2の出力端はダイオードD2のアノードとダイオードDr2のカソードに接続されている。ダイオードD2のカソードは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr2のアノードは負極出力端子Out2に接続されている。また、スイッチング素子Q2のソースは負極出力端子Out2に接続されている。さらに、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2の間には平滑用のコンデンサCoが接続されている。
また、第1入力端子IN1と第2入力端子IN2には交流電源PSが接続され、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2には負荷Loadが接続されている。
図21乃至図24はスイッチング電源装置13の動作を示す電圧及び電流波形図である。図21にはスイッチング素子Q1,Q2のゲート・ソース間電圧Vgs、インダクタL1に流れる電流、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流、ダイオードD1,D2の両端間電圧、ダイオードD1,D2に流れる電流の波形が描かれている。また、図22には交流電源PSの出力電圧V#ACと、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgs、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsが描かれている。この図22における時間T1間の詳細波形が図23に示されており、図22における時間T2間の詳細波形が図24に示されている。本実施形態におけるスイッチング素子Q1,Q2のゲートには上記のような制御電圧が図示せぬ制御電圧発生回路から入力される。
すなわち、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が正極であるときは、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsが所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返し、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsはハイレベル(約5V)となる。
また、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が負極であるときは、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsがハイレベル(約5V)となり、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsは所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返す。
なお、第1実施形態と同様に、スイッチング素子Q1のターンオン時間TonはインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましく、スイッチング素子Q2のターンオン時間TonはインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましい。
次に、本実施形態のスイッチング電源装置13の動作をさらに詳細に説明する。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であるとき、スイッチング素子Q2は常にオン状態である。また、第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオンしたときの電流経路は図25に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1をとおり、さらにスイッチング素子Q1,Q2を通って第2入力端子IN2に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr1を介してインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q1に流れ込むため、スイッチング素子Q1に流れる電流はインダクタL1から流れ込む電流とインダクタLr1から流れ込む電流の和となる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオフしたときの電流経路は図26に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1とインダクタLr1とコンデンサCr1を通って負荷Loadに至り、負荷Loadからスイッチング素子Q2を通って第2入力端子IN2に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に変わると、図27に示すように、ダイオードD1には逆バイアスがかかる。この逆回復時間では、ダイオードD1の整流作用に反して逆方向(カソードからアノード方向)に電流が流れるようになるが、ダイオードD1に対して直列に接続されたインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr1に充電しながらダイオードD1に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q1に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、図21のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q1のドレインにはサージ電流が流れない。さらに、図21のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr1へ充電しながらダイオードD1に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図21のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であるとき、スイッチング素子Q1は常にオン状態である。また、第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオンしたときの電流経路は図28に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はスイッチング素子Q1,Q2を通って第1入力端子IN1に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr2を介してインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q2に流れ込むため、スイッチング素子Q2に流れる電流はインダクタL2から流れ込む電流とインダクタLr2から流れ込む電流の和となる。
第2入力端子IN2側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオフしたときの電流経路は図29に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して第1入力端子IN1に出力する。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はインダクタLr2とコンデンサCr2とダイオードD2を通って負荷Loadに至り、負荷Loadからスイッチング素子Q1とインダクタL1を通って第1入力端子IN1に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q2がオフ状態からオン状態に変わると、図30に示すように、ダイオードD2には逆バイアスがかかる。この逆回復時間では、ダイオードD2の整流作用に反して逆方向(カソードからアノード方向)に電流が流れるようになるが、ダイオードD2に対して直列に接続されたインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr2に充電しながらダイオードD2に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q2に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、上記と同様に図21のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q2のドレインにはサージ電流が流れない。さらに、図21のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr2へ充電しながらダイオードD2に逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図21のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
前述したように第3実施形態のスイッチング電源装置13は、第1実施形態におけるインダクタL2を省くことができ、インダクタL2の機能をインダクタL1に集約することができるので、第1実施形態よりもコストダウンを図ることができる。
また、本実施形態によれば、上記のように、昇圧回路の出力側で且つダイオードD1の入力側にLC直列回路が設けられているので、ダイオードD1の両端の急峻な電圧変動を抑制することができると共に、ダイオードD1の逆回復時間内に出力から逆流する貫通電流を低減することができ、このときターンオンするスイッチング素子Q1の損失もあわせて低減することができる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図31は本発明の第4実施形態におけるスイッチング電源装置14の主要部を示す回路図である。図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表す。
スイッチング電源装置14の主要部は、交流入力の電力エネルギーを蓄積すると共に蓄積した電力エネルギーを放出するインダクタL1と、Nチャネル電界効果トランジスタからなるダイオード整流型昇圧回路用のスイッチング素子Q1,Q2、Nチャネル型電界効果トランジスタからなるダイオード整流型昇圧回路用のスイッチング素子Qr1,Qr2、LC直列回路用のインダクタ(直列インダクタ)Lr1,Lr2、LC直列回路用のコンデンサ(直列コンデンサ)Cr1,Cr2、LC電流経路用のダイオードDr1,Dr2、平滑用のコンデンサCoから構成されている。なお、スイッチング素子Q1,Q2,Qr1,Qr2としては、電界効果トランジスタの他にバイポーラトランジスタ或いは絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いることができる。
本実施形態では上記インダクタL1とスイッチング素子Q1とスイッチング素子Qr1によって1つの昇圧回路が形成されている。
インダクタL1の入力端は第1入力端子IN1に接続され、インダクタL1の出力端はスイッチング素子Q1のドレインとインダクタLr1の入力端に接続されている。インダクタLr1の出力端はコンデンサCr1の入力端に接続され、これらのインダクタLr1とコンデンサCr1によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr1の出力端はスイッチング素子Qr1のソースとダイオードDr1のカソードに接続されている。スイッチング素子Qr1のドレインは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr1のアノードは負極出力端子Out2(GNDライン)に接続されている。また、スイッチング素子Q1のソースは負極出力端子Out2に接続されている。
第2入力端子IN2はスイッチング素子Q2のドレインとインダクタLr2の入力端に接続されている。インダクタLr2の出力端はコンデンサCr2の入力端に接続され、これらのインダクタLr2とコンデンサCr2によってLC直列回路が形成されている。コンデンサCr2の出力端はスイッチング素子Qr2のソースとダイオードDr2のカソードに接続されている。スイッチング素子Qr2のドレインは正極出力端子Out1に接続され、ダイオードDr2のアノードは負極出力端子Out2に接続されている。また、スイッチング素子Q2のソースは負極出力端子Out2に接続されている。さらに、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2の間には平滑用のコンデンサCoが接続されている。
また、第1入力端子IN1と第2入力端子IN2には交流電源PSが接続され、正極出力端子Out1と負極出力端子Out2には負荷Loadが接続されている。
図32乃至図35はスイッチング電源装置14の動作を示す電圧及び電流波形図である。図32にはスイッチング素子Q1,Q2のゲート・ソース間電圧Vgs、インダクタL1に流れる電流、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流、スイッチング素子Qr1,Qr2の両端間電圧(ドレイン・ソース間電圧)、スイッチング素子Qr1,Qr2のドレイン電流の波形が描かれている。また、図33には交流電源PSの出力電圧V#ACと、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgs、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsが描かれている。この図33における時間T1間の詳細波形が図34に示されており、図33における時間T2間の詳細波形が図35に示されている。本実施形態におけるスイッチング素子Q1,Q2,Qr1,Qr2のゲートには上記のような制御電圧が図示せぬ制御電圧発生回路から入力される。
すなわち、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が正極であるときは、スイッチング素子Qr1のゲート・ソース間電圧Qr1#Vgsが所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返し、スイッチング素子Qr2のゲート・ソース間電圧Qr2#Vgsはローレベル(約0V)となってスイッチング素子Qr2はオフ状態となる。さらに、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が正極であるときは、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsが所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返し、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsはローレベル(約0V)となる。また、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が正極であるとき、スイッチング素子Qr1のゲート・ソース間電圧Qr1#Vgsがハイレベルのときスイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsはローレベルであり、スイッチング素子Qr1のゲート・ソース間電圧Qr1#Vgsがローレベルのときスイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsはハイレベルである。
また、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が負極であるときは、スイッチング素子Qr1のゲート・ソース間電圧Qr1#Vgsがローレベル(約0V)となってスイッチング素子Qr1はオフ状態となり、スイッチング素子Qr2のゲート・ソース間電圧Qr2#Vgsは所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返す。さらに、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が負極であるときは、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧Q1#Vgsがローレベル(約0V)となり、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsは所定周期でオン・オフ状態を交互に繰り返す。また、第1入力端子IN1に入力される交流電圧が負極であるとき、スイッチング素子Qr2のゲート・ソース間電圧Qr2#Vgsがハイレベルのときスイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsはローレベルであり、スイッチング素子Qr2のゲート・ソース間電圧Qr2#Vgsがローレベルのときスイッチング素子Q2のゲート・ソース間電圧Q2#Vgsはハイレベルである。
なお、第1実施形態と同様に、スイッチング素子Q1のターンオン時間TonはインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましく、スイッチング素子Q2のターンオン時間TonはインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましい。
次に、本実施形態のスイッチング電源装置14の動作をさらに詳細に説明する。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であるときはスイッチング素子Q2は常にオン状態である。また、第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオンするとともにスイッチング素子Qr1がオフしたときの電流経路は図36に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1をとおり、さらにスイッチング素子Q1,Q2を通って第2入力端子IN2に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr1を介してインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q1に流れ込むため、スイッチング素子Q1に流れる電流はインダクタL1から流れ込む電流とインダクタLr1から流れ込む電流の和となる。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が正極であり且つスイッチング素子Q1がオフするとともにスイッチング素子Qr1がオンしたときの電流経路は図37に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して負荷Loadに出力する。つまり、第1入力端子IN1から入力された電流はインダクタL1とインダクタLr1とコンデンサCr1とスイッチング素子Qr1を通って負荷Loadに至り、負荷Loadからスイッチング素子Q2を通って第2入力端子IN2に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に変わると、図38に示すように、スイッチング素子Qr1のボディーダイオードには逆バイアスがかかる。この逆回復時間では、スイッチング素子Qr1のボディーダイオードの整流作用に反して逆方向に電流が流れるようになるが、スイッチング素子Qr1に対して直列に接続されたインダクタLr1とコンデンサCr1からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr1に充電しながらスイッチング素子Qr1のボディーダイオードに逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q1に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、図32のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q1のドレインにはサージ電流が流れない。さらに、図32のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr1へ充電しながらスイッチング素子Qr1のボディーダイオードに逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図32のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であるとき、スイッチング素子Q1は常にオン状態である。また、第1入力端子IN1側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオンするとともにスイッチング素子Qr2がオフしたときの電流経路は図39に示すとおりであり、これによりインダクタL1に電気エネルギーが蓄えられる。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はスイッチング素子Q2,Q1をとおりさらにインダクタL1を通って第1入力端子IN1に至る。さらに、電流経路用ダイオードDr2を介してインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に蓄えられている電気エネルギーがスイッチング素子Q2に流れ込むため、スイッチング素子Q2に流れる電流はインダクタL2から流れ込む電流とインダクタLr2から流れ込む電流の和となる。
第2入力端子IN2側の交流入力電圧が負極であり且つスイッチング素子Q2がオフするとともにスイッチング素子Qr2がオンしたときの電流経路は図40に示すとおりであり、これによりインダクタL1に蓄えられた電気エネルギーを交流電源PSからの入力電圧に重畳して第1入力端子IN1に出力する。つまり、第2入力端子IN2から入力された電流はインダクタLr2とコンデンサCr2とスイッチング素子Qr2を通って負荷Loadに至り、負荷Loadからスイッチング素子Q1とインダクタL1を通って第1入力端子IN1に至る。このとき、負荷Loadに電力を出力すると同時にインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路に電気エネルギーを蓄える。
また、スイッチング素子Q2がオフ状態からオン状態に変わると、図41に示すように、スイッチング素子Qr2のボディーダイオードには逆バイアスがかかる。この逆回復時間では、スイッチング素子Qr2のボディーダイオードの整流作用に反して逆方向に電流が流れるようになるが、スイッチング素子Qr2に対して直列に接続されたインダクタLr2とコンデンサCr2からなるLC直列回路によってその電流は制限される。これは、コンデンサCr2に充電しながらスイッチング素子Qr2のボディーダイオードに逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになるためである。このため、逆回復時間内に出力側から電流が逆流しないので、従来例よりも逆回復損失を低減することができる。また、逆流した電流がスイッチング素子Q2に流れ込む量が従来例よりも少なくなるので、従来例よりもスイッチング損失を低減することができる。つまり、上記と同様に図32のB1に示すように逆回復時間に出力から逆流する電流でスイッチング素子Q2のドレインにはサージ電流が流れない。さらに、図32のB2に示すように、LC直列回路のコンデンサCr2へ充電しながらスイッチング素子Qr2のボディーダイオードに逆バイアスがかかるため電圧の変化が緩やかになる。また、図32のB3に示すように逆回復時間に出力側から電流が逆流しない。
前述したように第4実施形態のスイッチング電源装置14は、第1実施形態におけるインダクタL2を省くことができ、インダクタL2の機能をインダクタL1に集約することができるので、第1実施形態よりもコストダウンを図ることができる。また、第4実施形態では、第3実施形態におけるダイオードDr1,Dr2を用いたダイオード整流に代えてスイッチング素子Qr1,Qr2を用いた同期整流にしたので、さらに高効率化が可能になる。
また、上記のように、本実施形態によれば、昇圧回路の出力側で且つスイッチング素子Qr1の入力側にLC直列回路が設けられているので、スイッチング素子Qr1の両端の急峻な電圧変動を抑制することができると共に、スイッチング素子Qr1の逆回復時間内に出力から逆流する貫通電流を低減することができ、このときターンオンするスイッチング素子Q1の損失もあわせて低減することができる。
なお、出力定電圧制御を行う場合はスイッチング素子Q1,Q2のオン時間を固定したPFM(Pulse Frequency Modulation)行うことが好ましい。その理由は、制御範囲内においてスイッチング素子Q1、Q2のターンオン時間Tonを、Lr1、Cr1からなるLC直列回路、およびLr2、Cr2からなるLC直列回路の時定数τの0.5倍に設定することが好ましいためである。
また、昇圧回路のリターン電流の電流経路は、ダイオードを使用するよりも電界効果トランジスタ等のスイッチング素子を用いた同期整流方式を用いて形成することが好ましい。その理由は、リターン電流経路におけるダイオードの順方向損失を提言できるためである。
また、上記実施形態では交流電源PSから交流電圧を入力するスイッチング電源装置について説明したが、直流電源から直流電圧を入力し、これを昇圧して出力するスイッチング電源装置を構成した場合にも、昇圧回路の後段において昇圧回路と出力端子との間に直列接続された半導体素子の逆回復損失を低減し、及び昇圧回路の電源入力ラインとGNDライン間に配置された半導体スイッチング素子がターンオンする時のスイッチング損失を低減することができる。