以下、本発明の水性塗料組成物について詳細に説明する。
本発明の水性塗料組成物は、下記の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及び下記のブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有することを特徴とするものである。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)
本発明の水性塗料組成物において用いられる水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、酸成分とアルコール成分との反応によって得られ、且つ該酸成分中の脂環族多塩基酸成分(a−1)の含有量が該酸成分の合計量を基準として55〜100モル%、好ましくは65〜95モル%、さらに好ましくは75〜90モル%である、数平均分子量800〜3000の水酸基含有ポリエステル樹脂である。
脂肪族多塩基酸成分(a−1)の含有量が該酸成分の合計量を基準として55モル%未満の場合は十分な硬度の塗膜を得ることが難しい。また、該脂環族多塩基酸は加熱時に塗膜を黄変させにくい点から、同じく塗膜の硬度を高める効果が期待できる芳香族多塩基酸よりも好ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、スピットの発生を防止し塗装作業性に優れた水性塗料組成物を得る観点から、特に1000〜2500、さらに特に1500〜2000の数平均分子量であることが好適である。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の分子量が3000を超える場合、塗料液の液切れが悪く、スプレーガンのノズル周りに塗料液が付着堆積しやすくなることで、得られる塗膜にスピットが生じやすくなり好ましくない。一方、分子量が800未満の場合、タレの原因となり好ましくない。
前記脂環族多塩基酸(a−1)は、1分子中に1個以上の脂環式構造(好ましくは4〜6員環)と少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物及び該化合物の酸無水物が包含される。具体的には例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸1,2−無水物、ヘット酸等が挙げられる。なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を好適に用いることができる。上記脂環族多塩基酸(酸無水物を含む)(a−1)は単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
前記脂環族多塩基酸(酸無水物を含む)(a−1)と併用し得る他の酸成分としては、特に限定されるものではなく、ポリエステル樹脂の製造に際して通常使用されるものが同様に使用可能であり、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの無水物等の脂肪族多価カルボン酸(酸無水物を含む);フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸無水物、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸(酸無水物を含む);ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;安息香酸、4−tert−ブチル安息香酸等を挙げることができる。
前記アルコール成分としては、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができ、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環族多価アルコールなどが挙げられる。
上記アルコール成分のうち、得られる塗膜の仕上がり外観等の観点から、分岐アルキレン基を有する炭素原子数が少なくとも5のジオール(a−2)を、アルコール成分の合計量を基準として、少なくとも40モル%、特に45〜90モル%、さらに特に50〜80モル%の範囲内で含んでなるものが好ましい。
分岐アルキレン基を有する炭素原子数が少なくとも5のジオール(a−2)としては、上記2価アルコールのうち、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールを挙げることができる。
また、上記アルコール成分は、得られる水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の耐加水分解性等の観点から、上記アルコール以外のアルコール成分として、水酸基を少なくとも2個有するヒドロキシ酸(a−3)を、アルコール成分の合計量を基準として、通常1〜20モル%、特に1.5〜15モル%、さらに特に2〜10モル%の範囲内で含んでなることが好ましい。
水酸基を少なくとも2個有するヒドロキシ酸(a−3)の使用によりポリエステル樹脂中に導入されるカルボキシル基は、ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入する方法として通常行われる無水トリメリット酸等の多塩基酸の酸無水物をポリエステル樹脂の水酸基と反応させてハーフエステル化により導入されるカルボキシル基に比べ、耐加水分解性に優れるので好ましい。
水酸基を少なくとも2個有するヒドロキシ酸(a−3)としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸及びこれらを縮合したポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
さらに、上記アルコール以外の他のアルコール成分としては、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド;「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られるアルコール化合物等を挙げることができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の合成方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分を、窒素気流中、約150〜約250℃で5〜10時間程度加熱し、水酸基とカルボキシル基のエステル化反応を行なうことにより合成することができる。
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応せしめる際には、これらを一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させてハーフエステル化させてもよい。
前記エステル化反応において、反応を促進させるために、触媒、例えば、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、該水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の製造中又はエステル化反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
上記脂肪酸としては、例えば、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などを挙げることができる。これらの脂肪酸の使用量は、一般に油長で30重量%以下であることが適している。また、ポリエステル樹脂は、安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
上記モノエポキシ化合物としては、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド;前記「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などが挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4(または2,6)−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネートなどの如き有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて使用することができる。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、塗装作業性、硬化性及び仕上がり外観等の観点から、一般に50〜250mgKOH/g、好ましくは70〜200mgKOH/g、さらに好ましくは100〜180mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、塗装作業性及び得られる塗膜の仕上がり外観等の観点から、一般に50mgKOH/g以下、好ましくは5〜40mgKOH/g、さらに好ましくは10〜25mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、塗装作業性に優れた水性塗料組成物を得て、仕上り外観に優れた塗膜を得る観点から、800〜3000、特に1000〜2500、さらに特に1500〜2000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
なお、本明細書における「数平均分子量」及び「重量平均分子量」は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(「HLC8120GPC」、東ソー社製、商品名)で測定した数平均分子量又は重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/min、検出器:RIの条件で測定したものである。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが好ましい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール等の第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン等の第2級モノアミン化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン等の第3級モノアミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン化合物;ピリジン;モルホリン等を挙げることができる。これらのうち、第1級モノアミン化合物、第2級モノアミン化合物、第3級モノアミン化合物、ポリアミン化合物を使用するのが好ましい。
ブロックポリイソシアネート化合物(B)
本発明の水性塗料組成物において用いられるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(I)中、R
1、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(II)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(III)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じであり、R
6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有することを特徴とするブロックポリイソシアネート化合物である。
上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基に、活性メチレン化合物(b2)を反応させて、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)を得た後、得られたブロックポリイソシアネート化合物(b3)と2級アルコール(b4)とを反応させることによって、得ることができる。
ポリイソシアネート化合物(b1)
ポリイソシアネート化合物(b1)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシア
ナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン
、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、得られるブロックポリイソシアネート組成物の加熱時の黄変が発生しにくいことから、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。なかでも形成される塗膜の柔軟性向上の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びその誘導体がさらに好ましい。
また、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
また、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
上記ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、数平均分子量が300〜20,000の範囲内であることが好ましく、400〜8,000の範囲内であることがより好ましく、500〜2,000の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、1分子中の平均イソシアネート官能基数が2〜100の範囲内であることが好ましい。下限としては、得られるブロックポリイソシアネート組成物の反応性を高める観点から3がより好ましい。上限としては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造時にゲル化を防ぐ観点から20がより好ましい。
活性メチレン化合物(b2)
上記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基をブロック化する活性メチレン化合物(b2)としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マロン酸メチルイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルイソブチル、マロン酸エチルイソブチル、マロン酸メチルsec−ブチル、マロン酸エチルsec−ブチル、マロン酸ジフェニル及びマロン酸ジベンジル等のマロン酸ジエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル及びアセト酢酸ベンジル等のアセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル及びイソブチリル酢酸ベンジル等のイソブチリル酢酸エステル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり外観の観点から、活性メチレン化合物(b2)が、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、マロン酸ジイソプロピル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び貯蔵安定性ならびに該ブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり外観の観点から、マロン酸ジイソプロピルであることがさらに好ましい。
活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、必要に応じて反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、例えば金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等の塩基性化合物が良い。これらのうち、オニウム塩としてはアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩が好適である。該反応触媒の使用量は、通常、ポリイソシアネート化合物(b1)及び活性メチレン化合物(b2)の合計固形分質量を基準として、10〜10,000ppmの範囲内であることが好ましく、20〜5,000ppmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、0〜150℃で行うことができ、溶媒を用いても良い。この場合、溶媒としては非プロトン性溶剤が好ましく、特に、エステル、エーテル、N−アルキルアミド、ケトン等が好ましい。反応が目的どおり進行したならば酸成分を添加することで、触媒である塩基性化合物を中和し、反応を停止させてもよい。
活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応において、活性メチレン化合物(b2)の使用量は、特には限定されないが、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルに対して0.1〜3モル、好ましくは0.2〜2モル用いることが好適である。また、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基と反応しなかった活性メチレン化合物は、ブロック化反応終了後に除去することができる。
また上記ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基を、活性水素含有化合物と反応させてもよい。ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と活性水素含有化合物とを反応させることにより、例えば、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性の向上、ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の調整及び形成される塗膜の柔軟性向上等を図ることができる。
上記活性水素含有化合物としては、例えば、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
上記水酸基含有化合物としては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。なお、本明細書において、「ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の高粘度化を抑制する観点から、上記水酸基含有化合物は、1価のアルコールであることが好ましい。該1価のアルコールとしては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
また、前記アミノ基含有化合物としては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリオキシプロピレン−α,ω−ジアミン(市販品としては、例えば、ハンツマン社製の「ジェファーミンD−400」等が挙げられる)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の高粘度化を抑制する観点から、上記アミノ基含有化合物は、1価のアミンであることが好ましい。該1価のアミンとしては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、上記活性水素含有化合物を反応させる場合、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに形成される塗膜の仕上がり外観の観点から、ポリイソシアネート化合物(b1)と活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が、0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、水性塗料組成物の硬化性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性ならびに形成される塗膜の仕上がり外観の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性ならびに形成される塗膜の仕上がり外観の観点から、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)であることが好ましい。
上記親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)は、例えば、前記活性水素含有化合物として、親水基を有する活性水素含有化合物を使用することによって、得ることができる。
親水基を有する活性水素含有化合物としては、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、カチオン性の親水基を有する活性水素含有化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基を活性メチレン化合物(b2)によってブロック化する反応が阻害されにくいため、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物を使用することが好ましい。
上記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。上記ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物が好ましい。
上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、得られるブロックポリイソシアネート化合物の水分散後の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、3個以上、好ましくは5〜100個、より好ましくは8〜45個のオキシエチレン基が連続したポリオキシエチレン基を有することが好適である。
また、上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、連続したオキシエチレン基以外に、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含有してもよい。該オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物における、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、50〜100モル%の範囲内であることが好ましい。オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率が20モル%未満になると、親水性の付与が十分でなくなり、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。
また、前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、数平均分子量が200〜2,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量の下限としては、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、300がより好ましく、400がさらに好ましい。上限としては、該ブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の耐水性の観点から、1,500がより好ましく、1,200がさらに好ましい。
前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシエチレン)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシプロピレン)、ω−メトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ω−エトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)などのω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノエチルエーテル等のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシプロピレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
また、上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの市販品としては、例えば、日油社製の「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」等が挙げられる。また、前記ポリエチレングリコールの市販品としては、例えば、日油社製の「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#1540」、「PEG#2000」等が挙げられる。
前記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物、スルホン酸基を有する活性水素含有化合物、リン酸基を有する活性水素含有化合物及びこれらの中和塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。
上記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中の酸基の一部または全部は、前記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基を、前記の活性メチレン化合物(b2)によってブロック化する反応が阻害されにくくなるため、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。
上記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中の酸基の中和は、該アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物と上記ポリイソシアネート化合物(b1)との反応前に行ってもよく、反応後に行ってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;金属アルコキシド;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性化合物の使用量としては、アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中のアニオン性基に対して通常0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の範囲内とすることができる。
前記カルボキシル基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸及びクエン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸及び2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシカルボン酸、これらジヒドロキシカルボン酸のラクトン開環付加物、グリシン、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニン等を挙げることができる。
前記スルホン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2−アミノ−1−エタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
前記リン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート、ヒドロキシアルキルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸等を挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、上記親水基を有する活性水素含有化合物を反応させる場合、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに該水性塗料組成物によって形成される塗膜の付着性、仕上がり外観及び耐水性の観点から、ポリイソシアネート化合物(b1)と親水基を有する活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、得られる水性塗料組成物の硬化性及び該水性塗料組成物によって形成される塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性ならびに該水性塗料組成物によって形成される塗膜の付着性、仕上がり外観及び耐水性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
また、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、界面活性剤と予め混合することにより水分散性を付与することもできる。この場合、塗料の安定性の観点から、該界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
ブロックポリイソシアネート化合物(b3)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、前記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)及び活性メチレン化合物(b2)を反応させることにより得られる。該ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、通常、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部又は全部が、活性メチレン化合物(b2)によってブロックされたブロックポリイソシアネート化合物である。
なかでも、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)が、下記一般式(IV)
〔式(IV)中、R
1は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び下記一般式(V)
〔式(V)中、R
6及びR
7は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)の少なくとも一方であることが好ましい。
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)は、前記一般式(IV)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記活性メチレン化合物(b2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、R1が、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性、ならびに該水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(b1)と、活性メチレン化合物(b2)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するマロン酸ジアルキルとを反応させることによって得ることができる。
上記マロン酸ジアルキルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチルが好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピルがより好ましく、マロン酸ジイソプロピルがさらに好ましい。
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)は、前記一般式(V)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記活性メチレン化合物(b2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、R6及びR7が、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性、該水性塗料組成物によって形成される塗膜の仕上がり性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(b1)と、活性メチレン化合物(b2)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するアセト酢酸エステル又は炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させることによって得ることができる。なかでも、活性メチレン化合物(b2)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルを用いて反応させて得ることが好ましい。
上記イソブチリル酢酸エステルとしては、例えば、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル、イソブチリル酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル及びイソブチリル酢酸イソプロピルが好ましい。
また、前記アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル、アセト酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセト酢酸イソプロピルが好ましい。
また、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)、活性メチレン化合物(b2)及び前記活性水素含有化合物を反応させることによって得られる化合物であってもよい。具体的には、例えば、上記活性水素含有化合物として、前記ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を使用することにより、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部が活性メチレン化合物(b2)によってブロックされ、他のイソシアネート基の一部又は全部がポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物と反応したブロックポリイソシアネート化合物とすることができる。
本方法においてブロックポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)と、下記一般式(VI)で示される2級アルコール(b4)
〔式(VI)中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
とを反応させることによって、得ることができる。
2級アルコール(b4)
2級アルコール(b4)は、前記一般式(VI)で示される化合物である。なかでも、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)と上記2級アルコール(b4)との反応性を高める観点から、R2はメチル基であることが好ましい。また、R3、R4及びR5は、それぞれ炭素数が多いと、得られるブロックポリイソシアネート組成物の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、R3は炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、R4及びR5はメチル基であることが好ましい。
上記2級アルコール(b4)としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び上記2級アルコール(b4)の反応後に、未反応の2級アルコール(b4)の一部又は全部を蒸留除去する際に、該2級アルコール(b4)の除去が比較的容易であることから、比較的低い沸点を有する4−メチル−2−ペンタノールがより好ましい。
ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、具体的には、例えば、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の説明において記載した下記一般式(IV)
〔式(IV)中、R
1は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)と、上記2級アルコール(b4)とを反応させることによって得ることができる。
この場合、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のブロックイソシアネート基におけるR1の少なくとも一方が、下記一般式(VII)
〔式(VII)中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
また、この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(I)中、R
1、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
又は下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(II)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じ。〕
を有する。
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のブロックイソシアネート基におけるR1の少なくとも一方を、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のR1の少なくとも一方に由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(I)又は(II)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を得る方法が好ましい。
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎると親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の分解劣化が激しくなり、硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の説明において記載した下記一般式(V)
〔式(V)中、R
6及びR
7は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)と、前記2級アルコール(b4)とを反応させることによって得ることができる。
この場合、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のブロックイソシアネート基におけるR7は、下記一般式(VII)
〔式(VII)中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(III)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じであり、R
6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
を有する。
前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のブロックイソシアネート基におけるR7を、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のR7に由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を得る方法が好ましい。
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎるとブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の分解劣化が激しくなり硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造における、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の配合割合は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性および製造効率の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の固形分100質量部を基準として、2級アルコール(b4)が5〜500質量部の範囲内であることが好ましく、10〜200質量部の範囲内であることがさらに好ましい。5質量部未満では、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の反応速度が遅すぎる場合がある。また、500質量部を超えると生成するブロックポリイソシアネート化合物(B)の濃度が低くなりすぎ製造効率が低下する場合がある。
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の反応においては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の分子量を調整するために、該ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)に、ポリオール化合物を加えてから前記除去操作を行ってもよい。
前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)の数平均分子量は、他の塗料成分との相溶性や形成される塗膜の仕上がり外観、付着性及び耐水性等の観点から、600〜30,000の範囲内であることが好ましい。上記数平均分子量の上限は、他の塗料成分との相溶性ならびに形成される塗膜の仕上がり外観の観点から、10,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。また、下限は、形成される塗膜の付着性、耐水性の観点から、900がより好ましく、1,000がさらに好ましい。
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、界面活性剤と予め混合してもよい。この場合、該ブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物の安定性の観点から、該界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が親水基を有する場合には、特に水中での貯蔵安定性に優れる理由としては、水中で比較的安定に存在し、さらに、分岐構造を有する炭化水素基を有するためにブロックイソシアネート基が低極性化し加水分解しにくくなるためと推察される。
本発明では、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)の使用割合は特に制限されるものではないが、塗膜の硬化性、耐水性、付着性及び仕上がり外観等の観点から、前記成分(A)及び成分(B)の合計固形分に基づいて7〜50質量%の範囲内であることが好ましく、13〜45質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明の水性塗料組成物において、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の配合量は、本発明の水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して30〜65質量部、特に35〜60質量部の範囲内であることが塗装作業性及び得られる塗膜の硬度や仕上がり外観等の観点から好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物において、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の配合量は、本発明の水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して4〜35質量部、特に7〜25質量部の範囲内であることが塗装作業性及び得られる塗膜の硬度や仕上がり外観等の観点から好ましい。
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、例えば以上に述べた水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びブロックポリイソシアネート化合物(B)を定法に従い混合し、適宜水性媒体、例えば脱イオン水で希釈することにより調製することができる。
本発明の水性塗料組成物は、上記成分(A)及び成分(B)以外の樹脂成分を含有させることができ、例えば水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂、成分(B)以外のブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等を含有することができる。
水性アクリル樹脂
上記水性アクリル樹脂としては、通常、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーなどの親水性基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を共重合させることにより得られる、重量平均分子量が通常5,000〜100,000、好ましくは5,000〜50,000の範囲内の水溶性アクリル樹脂、或いは質量平均分子量が50,000以上、好ましくは100,000以上のアクリル樹脂エマルションを使用することができる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらのうちのジカルボン酸のハーフモノアルキルエステル化物などが挙げられる。
また、これ以外の親水性基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレン鎖含有重合性不飽和モノマー;
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;
2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有重合性不飽和モノマー;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー;
2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;
4級アンモニウム塩化カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等などが挙げられる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー以外の親水性基含有重合性不飽和モノマーの中でも、本発明の水性塗料組成物中での親水性成分との相溶性向上の観点からポリアルキレン鎖含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。該ポリオキシアルキレン鎖は分子量が200〜3000、好ましくは300〜2500の範囲内にあることが好適である。該分子量が200より小さい場合には親水基としての効果を十分発揮することができず、水性塗料の安定性が不十分となり、一方3000より大きい場合には、室温において固形化し取り扱いにくく、また耐水性といった塗膜性能に悪影響を及ぼすため好ましくない。
また、適宜使用されることがある塩基性成分を水性塗料組成物中に安定に分散させることができる点から、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー及び/又はリン酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することが好ましい。
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−もしくはi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−もしくはt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−もしくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
上記その他の重合性不飽和モノマーの中でも、本発明の水性塗料組成物中での疎水性成分との相溶性向上、仕上がり外観等の観点から、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステルを含有することが好ましく、さらにその中でも塗装作業性ならびに得られる塗膜の硬度、付着性及び仕上がり外観等の観点からイソボルニル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
また、前記その他の重合性不飽和モノマーの中でも、得られる塗膜の硬度、付着性、耐水性及び仕上がり外観等の観点から、前記アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを含有することが好ましく、さらにその中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
上記モノマー混合物の共重合は、特に制限されるものではなく、それ自体既知の方法で行うことができ、例えば、水溶性アクリル樹脂は溶液重合法などによって行なうことができ、また、アクリル樹脂エマルションは乳化重合法などによって行なうことができる。
水性アクリル樹脂が、特に乳化重合によって得られるアクリル樹脂エマルションである場合には、水及び乳化剤の存在下にモノマー混合物を用いて多段階で乳化重合させて得られる多層構造粒子状のエマルションであってもよい。
水性アクリル樹脂中の親水性基含有重合性不飽和モノマーに由来するカルボキシル基などの酸性基は、必要に応じて塩基性物質を用いて中和することができる。その際に用いることができる塩基性物質は、水溶性であることが好ましく、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
水性アクリル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水分散性や他成分との相溶性、形成塗膜の硬化性などの点から、一般に20〜200mgKOH/g、特に20〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に1〜100mgKOH/g、特に10〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが望ましい。
本発明の水性塗料組成物が上記水性アクリル樹脂を含有する場合、その配合量は水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して1〜40質量部、特に5〜30質量部の範囲内であることが得られる塗膜の硬度や仕上がり外観等の観点から好ましい。
水性ポリウレタン樹脂
前記水性ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族および/又は脂環式ジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも一種以上のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメタノールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径1nm〜3000nm程度の自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。また、上記水性ポリウレタン樹脂の市販品としては、例えば、「ユーコートUX−3100」、「ユーコートUX−5000」、「ユーコートUX−8100」(商品名、三洋化成工業社製)等を挙げることができる。
本発明の水性塗料組成物が、上記水性ポリウレタン樹脂を含有する場合、その配合量は水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として通常1〜40質量部、特に5〜35質量部の範囲内であることが得られる塗膜の仕上がり外観等の観点から好ましい。
成分(B)以外のブロックポリイソシアネート化合物
前記成分(B)以外のブロックポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物であって、前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート化合物である。
1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)などの3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体(ビウレット、イソシアヌレートなど);これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーなどが挙げられる。
また、前記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
なかでも、好ましいブロック剤としては、オキシム系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
また、上記ブロック剤として、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸なども使用できる。特に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロックポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
本発明の水性塗料組成物が、上記成分(B)以外のブロックポリイソシアネート化合物を含有する場合、その配合量は、得られる塗膜の付着性、耐水性、耐薬品性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として通常1〜40質量部、特に5〜35質量部の範囲内であることが得られる塗膜の仕上がり外観等の観点から好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物が、上記成分(B)以外のブロックポリイソシアネート化合物を含有する場合、その配合量は、成分(B)及び成分(B)以外のブロックポリイソシアネート化合物の合計固形分100質量部を基準として5〜90質量%、特に30〜80質量%であることが塗装作業性及び得られる塗膜の仕上がり外観等の観点から好ましい。
顔料
本発明の水性塗料組成物は、通常、顔料を含有することができる。顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料などを挙げることができ、顔料はそれぞれ単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
本発明の水性塗料組成物が顔料を含有する場合、該顔料の配合量は、本発明の水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、一般に1〜260質量部、好ましくは5〜240質量部、さらに好ましくは10〜220質量部の範囲内であることができる。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
本発明の水性塗料組成物が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、本発明の水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜210質量部、好ましくは3〜190質量部、さらに好ましくは5〜170質量部の範囲内であることができる。
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、仕上がり外観の観点から硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。
なかでも、上記体質顔料として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れるため、好適である。
なお、本明細書において、硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム20個の最大径を平均した値である。
本発明の水性塗料組成物が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、本発明の水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜120質量部、好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは10〜80質量部の範囲内であることができる。
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料などを挙げることができ。これらの光輝性顔料は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。
本発明の水性塗料組成物が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、本発明の水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることができる。
添加剤
また、本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
本発明の水性塗料組成物が増粘剤を含有する場合、該増粘剤としては例えば、無機系増粘剤;ポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;繊維素誘導体系増粘剤;タンパク質系増粘剤;アルギン酸系増粘剤;ポリビニル系増粘剤;ポリエーテル系増粘剤;無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイド系増粘剤などが挙げられる。これらの増粘剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」等が挙げられる。また、上記会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」、ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。さらにまた、上記ポリアマイド系増粘剤として使用できる市販品としては、楠本化成社製の「ディスパロン6500」、「ディスパロンAQ−600」、「ディスパロンAQ−610」、「ディスパロンAQ−870」、共栄社化学社製の「チクゾールW−300」「チクゾールW−400LP」が挙げられる。
上記増粘剤としては、塗装作業性、仕上がり外観に優れる観点からポリアマイド系増粘剤を使用することが好ましい。
また、水性塗料組成物が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の配合量は、本発明の水性塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.05〜3質量部であるのがより好ましく、0.1〜2質量部であるのが更に好ましい。
有機溶剤
本発明の水性塗料組成物が有機溶剤を含有する場合、該有機溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれの有機溶剤も使用できる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
非極性有機溶剤としては脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられ、例えば、
n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、n−デカン、ミネラルターペン、テレピン油、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、VM&Pナフサ、ソルベントナフサなどを使用できる。
これらの市販品としては、例えば、
「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」、「ソルベッソ200」、「エッソナフサNo.6」、「アイソパーC」、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「エクソールD」(以上商品名、エクソンモービル社製);「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(以上商品名、JX日鉱日石エネルギー社製);「イプゾール100」、「IPソルベント100」、「IPソルベント1620」、「IPクリーン」(以上商品名、出光興産社製);「シェルゾールTK」、「HAWS」、「LAWS」(以上商品名、シェルケミカルズジャパン社製);「Aソルベント」「AFソルベント」、「ノルマルパラフィンH」(以上商品名、新日本石油社製)、「サンセン」、「サンパー」(以上商品名、サン石油社製)、「アクアソルベントG」、「アクアソルベントG−71」 (アクア化学社製)、などが挙げられる。
上記極性有機溶剤としては、例えば、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記極性有機溶剤としては具体的に、
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の炭素数1〜8の脂肪族アルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、ブチルカルビトール等のエーテル類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類等が挙げられる。
本発明の水性塗料組成物としては、中でもスピットの発生を防止し塗装作業性に優れる点及び得られる塗膜の仕上がり外観に優れる点から非極性有機溶剤を使用することが好ましく、中でもイソパラフィン系有機溶剤であることが好ましい。
イソパラフィン系有機溶剤の量は、塗装作業性に優れる点及び得られる塗膜の仕上がり外観に優れる点から、上記有機溶剤100質量%に対して5〜30%、特に7〜25%であることが好ましい。
また、前記非極性有機溶剤は、180℃以上、特に200℃以上の初留点を持つ非極性有機溶剤を使用することが好ましい。
初留点180℃以上の非極性有機溶剤の量は、塗装作業性に優れる点及び得られる塗膜の仕上がり外観に優れる点から、上記有機溶剤100質量%に対して5〜30%、特に7〜25%であることが好ましい。
表面調整剤
本発明の水性塗料組成物に使用される前記表面調整剤としては、
ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等のシリコーン系表面調整剤;
フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系表面調整剤;
パーフルオロ変性シリコーン等のシリコーン−フッ素系表面調整剤;
ポリエーテル変性アクリルポリマー、ポリエステル変性アクリルポリマー、パーフルオロアルキル変性アクリルポリマー等のアクリル系表面調整剤等が挙げられる。
中でもスピットの発生を防止し塗装作業性に優れる観点からシリコーン系表面調整剤が好ましい。シリコーン系表面調整剤の中でも水性塗料への適用性の観点からポリエステル変性、ポリエーテル変性、ベンゼン環を有するアラルキル変性等の変性シリコーン系表面調整剤が好ましい。該変性シリコーン系表面調整剤としては、得られる塗膜の仕上がり外観等の観点から、ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤が好ましい。
上記ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤としては市販品を使用できる。市販品の商品名として、具体的には例えば、ビックケミー社製の「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−320」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−345」、「BYK−346」、「BYK−347」、「BYK−348」、「BYK−349」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」;
エボニック社製の「TEGO Flow−425」、「TEGO Glide−100」、「TEGO Glide−110」、「TEGO Glide−410」、「TEGO Glide−440」、「TEGO Glide−450」、「TEGO Glide−ZG400」、「TEGO Wet−240」、「TEGO Wet−KL245」、「TEGO Wet−250」、「TEGO Wet−260」、「TEGO Wet−270」、「TEGO Wet−280」;
共栄社化学社製の「ポリフローKL−100」、「ポリフローKL−400HF」、「ポリフローKL−401」、「ポリフローKL−402」、「ポリフローKL−403」、「ポリフローKL−404」等が挙げられる。
水性塗料組成物の調整
本発明の水性塗料組成物は、例えば以上に述べた水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びブロックポリイソシアネート化合物(B)等を定法に従い混合し、適宜水性媒体、例えば脱イオン水で希釈することにより調製することができる。
本発明の水性塗料組成物の固形分含有率は、通常、20〜70質量%であるのが好ましく、30〜60質量%であるのがより好ましく、35〜60質量%であるのが更に好ましい。
塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物は、種々の被塗物に塗装することにより優れた仕上がり外観の塗膜を形成することができる。
被塗物
本方法が適用される被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等を挙げることができる。またこれらにより形成された自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体や部品;家電製品・家具等であってもよい。上記家具の具体例としては例えば、机、椅子、キャビネット、ロッカー、ダストボックス、パーテーション、巾木、ドア、ドア枠等が上げられる。
また、被塗物としては、上記金属基材や車体の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物としては、上記金属基材、車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよいし、また、バンパー等プラスチック素材に脱脂処理、水洗処理などが施されていたりプライマー塗膜が形成されたものであってもよい。
水性塗料組成物の塗装
本発明の水性塗料組成物は、塗装粘度を、適正な粘度、例えば、B型粘度計を用いて20℃において回転数60rpmで測定したときの値が、通常200〜500mPas、特に250〜450mPasとなるように調整することが好ましい。
本発明の水性塗料組成物の塗装は、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装が特に好ましい。本発明の水性塗料組成物の塗布量は、硬化塗膜に基づく膜厚が一般に10〜60μm、特に20〜50μm、さらに特に25〜45μmになる量とすることが好ましい。
本発明の水性塗料組成物の塗装後に、次いで焼付け硬化することによって硬化塗膜を作成することができる。該焼付け硬化は通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。
加熱硬化温度は、80〜200℃、特に100〜180℃、さらに特に120〜170℃の範囲内であることが適している。また、加熱保持時間は、5〜40分間、特に、10〜35分間、さらに特に、15〜30分間の範囲内であることが適している。
上記焼付け硬化を行う前に必要に応じて塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前記プレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートを行なう場合、プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜20分間が好ましく、1〜15分間がより好ましく、2〜10分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
また、上記焼付け硬化前または後に、必要に応じて既知の上塗り塗料、例えばクリヤ塗料を塗装し、加熱硬化することもできる。
本発明の水性塗料組成物は、工業製品全般の塗料として好適に使用することができる。本発明の水性塗料組成物は、工業製品の中でも特にアミノ樹脂フリーであることが求められる屋内で使用される鋼製家具の塗料として特に好適に使用することができる。
本発明の水性塗料組成物によれば塗装作業性に優れ、仕上り外観に優れる塗膜を得ることができる理由は定かではないが、以下のように推測することができる。
本発明の水性塗料組成物が、比較的低分子量のポリエステル樹脂を含有するものであることから、塗装時に発生した泡が塗膜から容易に抜けていくため、平滑性に優れるものと推測される。また、本発明の水性塗料組成物が脂環族多塩基酸成分に富むポリエステル樹脂を含有することによって液切れの良い塗料液となり、スピット(塗装スプレーのノズル周りに付着し乾燥した塗料液がスプレーエアに飛ばされて塗膜に付着し塊状物になったもの)の発生を抑制するものと推察される。さらにまた、該ポリエステル樹脂が脂環族多塩基酸成分に富むことから十分な硬度の塗膜を得ることができるものと推測される。
また、本発明の水性塗料が、特定のブロックポリイソシアネートを含有するものであることから低温かつ短時間で硬化を開始することができるため、優れた硬化性をもたらすことによって、塗膜の表面と内部との乾燥速度のひずみを抑制しチヂミ(塗膜が縮んで皺のように見えること)を防ぐことができるものと推測される。また、かかる優れた硬化性によって塗膜の粘性発現効果がもたらされ、塗装時にタレ(塗料液が垂れること)を防ぐことができると推測される。
これらの相乗効果により、塗装作業性に優れ、仕上り外観に優れた塗膜を得ることができると考えられる。
また、本発明の水性塗料組成物が特にイソパラフィン系有機溶剤を含有した場合には、該イソパラフィン系有機溶剤が塗料液の表面張力を低下させるため、さらにチヂミやスピットの発生を抑制することができると推測される。
さらにまた、本発明の水性塗料組成物が特にポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤を含有した場合には、該表面調整剤がさらに塗料液の表面張力を低下させるためスピットの発生をさらに抑制し、優れた仕上がり外観の塗膜を得ることができると推測される。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとし、また、塗膜の膜厚はいずれも硬化塗膜に基づくものである。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、精留塔及び水分離器を備えた反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸110.9部、アジピン酸16.1部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール94.4部、トリメチロールプロパン53.2部、ジメチロールプロピオン酸2.7部を仕込み、160℃まで昇温させた。160℃から230℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。90分間230℃で反応を続けた後、内容物にトルエンを加えて水とトルエンを共沸させ、縮合水を水分離器により留去させながら230℃で4時間縮合反応し、トルエンを減圧除去した。次いで、得られた縮合反応生成物に無水トリメリット酸を加え、170℃で30分間反応させた後、ジメチルエタノールアミンで中和を行い、脱イオン水を攪拌しながら添加して、固形分濃度45%である水酸基含有ポリエステル樹脂(A−1)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が17mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,500であった。
製造例2〜10
製造例1において、配合組成を下記表1に示す通りとする以外は、製造例1と同様にして、水酸基含有ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−10)を得た。各水酸基含有ポリエステル樹脂の特数値を併せて表1に示す。
ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造
製造例11
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)360部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約550)60部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル252部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.12モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール683部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−1)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが95部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−1)の固形分濃度は約60%であった。
製造例12
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」360部、「ユニオックスM−400」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約400)50部、「PEG#600」(日油社製、ポリエチレングリコール、平均分子量 約600)5部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル247部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.11モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール670部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−2)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが92部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−2)の固形分濃度は約60%であった。
製造例13
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル365部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−3)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが183部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−3)の固形分濃度は約60%であった。
製造例14
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジイソプロピル330部及びアセト酢酸イソプロピル27部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−4)1390部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが173部含まれていた。得
られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−4)の固形分濃度は約60%であった。
製造例15
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジエチル280部及びイソブチリル酢酸エチル30部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−5)1350部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが133部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−5)の固形分濃度は約60%であった。
製造例16
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに5−メチル−2−ヘキサノール990部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、5−メチル−2−ヘキサノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−6)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが180部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−6)の固形分濃度は約60%であった。
製造例17
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「デュラネートTPA−100」(商品名、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率23.0%)450部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに6−メチル−2−ヘプタノール1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、6−メチル−2−ヘプタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−7)1430部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが170部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−7)の固形分濃度は約60%であった。
製造例18
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにn−ブタノールを630部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、n−ブタノールを90部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−8)1270部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが100部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−8)の固形分濃度は約60%であった。
製造例19
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これに2−エチルヘキサノールを1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、2−エチルヘキサノールを120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−9)1410部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが130部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−9)の固形分濃度は約60%であった。
製造例20
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを1000部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−10)1380部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが125部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−10)の固形分濃度は約60%であった。
水酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例21
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート18部、n−ブチルアクリレート15部、イソボルニルメタクリレート35部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、アクリル酸1.5部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート0.5部、「NFバイソマーS20W」(商品名、第一工業製薬社製、分子量2000であるポリエチレングリコールモノメタクリレート)20部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(C−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が15mgKOH/g、水酸基価が48mgKOH/gであった。
水性塗料組成物(X)の製造
参考例1
製造例1で得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(A−1)溶液を固形分質量で65部、製造例11で得たブロックポリイソシアネート化合物(B−1)溶液を固形分質量で35部、「アルミペーストGX−40A」(商品名、旭化成ケミカルズ社製)を固形分質量で15部、エチレングリコールモノブチルエーテル30部を定法に従って均一に混合した。次いで、得られた混合物に、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度35%、B型粘度計を用いて20℃において回転数60rpmで測定したときの値が400mPasである水性塗料組成物(X−1)を得た。
実施例2、7〜19、21〜31、参考例3〜6、20、比較例1〜7
参考例1において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、参考例1と同様にして、pH8.0、固形分濃度35%、B型粘度計を用いて20℃において回転数60rpmで測定したときの値が400mPasである水性塗料組成物(X−2)〜(X−38)を得た。
尚、表中の樹脂、顔料、表面調整剤の量を表す数値は固形分を表している。また、原料から持込まれる溶剤は省略している。
(注1)「デスモジュールBL3575」(商品名、ピラゾールブロック型ポリイソシアネート、バイエルマテリアルサイエンス社製)
(注2)「JR−603」(商品名、酸化チタン、白色顔料、テイカ社製)
(注3)「シェルゾールTK」(商品名、イソパラフィン系有機溶剤、初留点185℃、シェルケミカルズジャパン社製)
(注4)ミネラルスピリット(初留点150℃、シェルケミカルズジャパン社製)
(注5)「スワゾール1000」(商品名、芳香族炭化水素系有機溶剤、初留点150℃、JX日鉱日石エネルギー社製)
(注6)「ソルベッソ150」(商品名、芳香族炭化水素系有機溶剤、初留点183℃、エクソンモービル社製)
(注7)「ポリフローKL−100」(商品名、ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤、共栄社化学社製)
(注8)「BYK−381」(商品名、アクリル系表面調整剤、BYK社製)
塗膜形成方法
リン酸鉄化成処理を施した冷延鋼板(サイズ:30×45cm)に、上記で作製した水性塗料組成物(X−1)〜(X−38)を乾燥膜厚30μmとなるようにエアスプレー塗装し、60℃で10分間プレヒート後、155℃で25分間加熱して硬化させて各試験塗装板とした。
塗膜評価
上記で得られた各試験塗板について目視観察して以下の基準で評価し、また、鉛筆硬度の試験を行った。評価結果を併せて表2に示す。特に断りがない限り「○」以上が合格である。
スピット:
◎:スピットの個数が0個である
○:スピットの個数が1〜3個かつスピットの直径が1mm未満である
△:スピットの個数が1〜3個かつスピットの直径が1〜2mmである、もしくは
スピットの個数が4個以上かつスピットの直径が1mm未満である
×:スピットの個数が1〜3個かつスピットの直径が2mm以上である、もしくは
スピットの個数が4個以上かつスピットの直径が1mm以上である
タレ:
◎:タレがなく、かつ試験塗板のエッジ部分にも塗料が溜まっていない
○:タレがない。試験塗板のエッジ部分に塗料溜まりがあるが、溜まり部分の塗膜表面が荒れていない
△:タレがない。試験塗板のエッジ部分に塗料溜まりがあり、かつ溜まり部分の塗膜表面が荒れている
×:タレがある
チヂミ:
◎:チヂミ発生なし。
○:エッジ部分にチヂミ発生しているが顔料配向に乱れがない程度の軽微なものである。
△:エッジ部分にチヂミ発生かつ顔料配向に乱れがみられるがツヤはある。
×:エッジ部分にチヂミ発生かつ顔料配向に乱れがみられ、ツヤもない。
仕上がり肌(平滑性):
◎:平滑性があり良好。
○:平滑性があるが◎と比較するとやや劣る。
△:平滑性に劣り、肌が荒れているがチリ肌状ではない。
×:平滑性に著しく劣り、チリ肌状になっている。
鉛筆硬度:
JIS K 5600−5−4(1999)に準じて鉛筆引っかき試験機で傷の発生しない鉛筆硬度を求めた。「H」以上で合格である。