JP5978766B2 - 軟磁性圧粉磁芯 - Google Patents
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これらの機器は鉄板などの軟磁性材料とコイル導体で構成されており、従来から小形化や高効率化などが要求されている。
このため、これらを解決する方法として、特許文献1に示されるように、鉄基軟磁性粉末表面に、無機系化成皮膜と、シリコーン樹脂皮膜とを複合させることで、より高度な耐熱性を有する電気絶縁層を形成する方法が提案されている。しかしながら、このような方法では、樹脂のような柔らかい金属粉以外の介在物が存在するため、成形時の加圧力が粉に伝わりづらくなる。このため金属粉が変形しづらくなり、軟磁性圧粉磁芯の密度が低下し、軟磁性圧粉磁芯内部の空孔部が多くなる。また、軟磁性金属粒子の表面に上記の複合化合物等が均一に被覆されないため、強度にばらつきを生じ、強度が低下してしまう。
軟磁性圧粉磁芯の機械的強度を向上させる別の手法としては、特許文献2に記載されているように、Fe基軟磁性合金アトマイズ粉末とシリコーン樹脂との混合圧粉成形体中に樹脂の含浸処理を行う手法が記載されている。
また特許文献3には圧縮処理され、熱処理された軟磁性圧粉磁芯中に低粘度の樹脂を含ませ乾燥させる方法が記載されている。しかし、特許文献2、3に開示の手法では、圧粉成形体の内部へ樹脂が充分に含浸しないため、軟磁性圧粉磁芯の強度をさらに向上させることが難しい。
本発明は、かかる実情に鑑みて為されたものであり、その目的は、高密度の軟磁性圧粉磁芯であっても、軟磁性圧粉磁芯内部に存在する空孔部が大きくなるようにコントロールすることにより、十分に樹脂等を含浸しやすくなる構造体にすることにより、軟磁性圧粉磁芯の強度のバラツキがなく、安定して100MPa以上の強度を保持できる軟磁性圧粉磁芯を提供することである。
従来の軟磁性圧粉磁芯においては、軟磁性原料粉末における微粉の制御等を行わないので、微粉が空孔部を埋めてしまい、樹脂を偏析させるのに十分な空隙(空孔部)を確保することが出来なかった。そのため軟磁性圧粉磁芯に存在する樹脂は、主に隣接する2つの粉末粒子の間にしか存在せず、それ故、隣接する2つの粉末粒子しか結着させることが出来ず、複数の軟磁性粉末粒子を結着させることができなかった。その結果、軟磁性圧粉磁芯の強度の低下や、強度ばらつきが生じてしまう。
これにより、軟磁性圧粉磁芯の密度を低下させることなく、強度のバラツキがなく、安定して100MPa以上の強度を保持し、寸法精度の高精度な軟磁性圧粉磁芯が得られる。
図1は本発明に係る軟磁性圧粉磁芯の一実施形態における断面模式図であり、樹脂含浸後における粉体部1、空孔部2、樹脂部3との関係を示す。
本発明による軟磁性圧粉磁芯の製造方法は、絶縁コーティングされた軟磁性原料粉末を粒径制御する工程(ST3)と、潤滑材を添加・混練する工程(ST4)と、加圧成形する工程(ST5)と、加圧成形により得られた成形体を、真空、窒素ガス雰囲気中、アルゴンガス雰囲気中、炭酸ガスなどの雰囲気中で、400℃以上700℃未満の温度で熱処理する工程(ST6)と、樹脂中に浸漬し真空含浸することにより樹脂を内部に含浸させる工程(ST7)と大気中、100℃から200℃程度の温度に保持して樹脂を効果させる硬化処理工程(ST8)を経て、本実施形態の軟磁性圧粉磁芯が作製される。
粒径制御の条件は特に限定されないが、室温で10〜60分間行うことが好ましい。かかる粒径制御条件とすることにより、所望の粒径の軟磁性粉末を得ることができる。また予め絶縁コーティングが軟磁性原料粉末表面に形成されている材料については粒径制御工程(ST3)から行える。
軟磁性原料粉末や、潤滑材としては、上記のものを用いればよい。
この混練処理により、分散性の良い軟磁性原料粉末を得ることができる。混練条件は特に限定されないが、室温で10〜60分間混練することが好ましい。かかる混練条件とすることにより、軟磁性粉末の分散性をより向上させることができる。
熱処理温度を400℃以上とすることで、上記した歪の低減効果が発揮出来る。また熱処理温度を700℃未満とすることで、絶縁性被膜の破壊及び酸化等の劣化を効果的に防止することができる。
その結果、高密度で絶縁性の良好な軟磁性圧粉磁芯を効率よく得ることができる。熱処理温度は、400〜650℃であることが好ましく、450〜550℃であることがより好ましい。 熱処理の処理時間は、特に限定されず、熱処理温度や軟磁性圧粉磁芯に所望する特性等に応じて適宜選択することができる。
(実施例1)
リン酸処理された鉄粉(ヘガネス社製、ソマロイ700)の粒度調整を行い、該鉄粉(軟磁性原料粉末)の粒度分布の範囲を分級により、平均粒径が106μm以上180μm以下の範囲とする。分級の方法としては目の開き180μmと106μmのメッシュを用意し、メッシュを目の開きが上から180μm、106μmの順となるように並べることにより、メッシュ間には106μm以上180μm以下の粉が残り、この粉を用いて、以下のように圧粉磁芯を作製した。
リン酸処理された鉄粉に対して、ステアリン酸亜鉛0.1wt%を添加し、Vミキサー(筒井理化学器械製)を用いて、12rpmで10分間混練した。得られた混合物(混練物)を、(圧縮成形機;神藤金属製:室温25℃で成形圧力980MPaの条件下において加圧成形し、長さ30mm、幅10mmの棒状であり、成形体厚みは5.5mmの成形体を作製した。得られた成形体を真空中で熱処理した。熱処理炉には赤外線ゴールドイメージ炉(アルバック製)を用いた。熱処理条件は昇温速度5℃/minで450℃まで昇温させた後、450℃で1時間保持した。
処理の済んだ軟磁性圧粉磁芯はMEKで希釈したエポキシ樹脂を入れた容器中に浸漬し、容器ごとベルジャー内に入れ、気圧調整により真空にし、10分程度樹脂含浸を行った。その後、小型高温チャンバー(エスペック製)内に入れ、大気中にて、170℃1時間保持し、硬化処理を行った。得られた軟磁性圧粉磁芯を切断し、内部(断面)を観察した。樹脂は軟磁性圧粉磁芯内部に含浸され少なくとも3つ以上の粒子に囲まれた空孔部に偏析していることを確認した。
図3に実施例1の軟磁性圧粉磁芯の断面像を示す。図3は樹脂含浸後の圧粉磁芯内部の樹脂の状態を把握するためCP(Cross−sectionPolisher)加工後にSEM観察を実施した結果である。樹脂は含浸により粉体間の隙間に偏析する。
(実施例2)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を180μm以上250μm以下とし、成形圧力を686MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例2の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例3)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を250μm以上355μm以下とし、成形圧力を980MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例3の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例4)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を355μm以上500μm以下とし、成形圧力を686MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例4の軟磁性圧粉磁芯を得た。(実施例5)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を355μm以上500μm以下とし、成形圧力を980MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例5の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例6)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を106μm以上500μm以下とし、成形圧力を784MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例6の軟磁性圧粉磁芯を得た。軟磁性圧粉磁芯の樹脂量、空孔部の割合、長軸径の調整を適宜行った。
(参考例1)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を1μm以上1000μm以下とし、成形圧力を588MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例7の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(参考例2)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を106μm以上500μm以下とし、成形圧力を588MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例8の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(参考例3)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を106μm以上700μm以下とし、成形圧力を980MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例9の軟磁性圧粉磁芯を得た。
[比較例]
比較例についても実施例1と同様の処理を行い、粒径が106μm未満の微粉や500μmを超える粗粉を含む粒度分布範囲とし、加圧成形時の圧力を調整し、軟磁性圧粉磁芯を得た。
(比較例1)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を45μm以上355μm以下とし、成形圧力を784MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、比較例1の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(比較例2)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を45μm以上250μm以下とし、成形圧力を980MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、比較例2の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(比較例3)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を1μm以上1000μm以下とし、成形圧力を980MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、比較例3の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(比較例4)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を106μm以上355μm以下とし、成形圧力を490MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、比較例4の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(比較例5)
軟磁性原料粉末の粒度分布の範囲を106μm以上500μm以下とし、成形圧力を1176MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行い、比較例5の軟磁性圧粉磁芯を得た。
実施例1〜6、参考例1〜3の軟磁性圧粉磁芯及び比較例1〜5の軟磁性圧粉磁芯について、各種性能の評価を行った。表1に、得られた構造体の樹脂量、空孔部の割合、長軸径を示し、それらの強度、強度のばらつき、密度、コアロスの評価結果を示す。
〔樹脂量〕
樹脂含浸前後の軟磁性圧粉磁芯の重量を測定し、これから樹脂量を算出し樹脂の比率をwt%で表示した。また樹脂含浸前の重量が不明な樹脂含浸品については、真空または窒素中で1100℃1Hr保持の熱処理を行い。樹脂を分解し揮発させた後、重量測定を行い樹脂含浸前の重量とする。
〔空孔部の割合〕
樹脂含浸後の圧粉磁芯を真空中または窒素中で1100℃1Hr保持の熱処理を行う。これにより樹脂を分解し揮発させた後、重量測定を行い密度を算出する。また鉄の理論値は7.86g/ccのため、これから算出して空孔部をVol%で求める。
〔長軸径〕
圧縮成形された粒子の、成形時の加圧方向に垂直な方向の最大径(直径)を長軸径とする。測定はメジャーリングマイクロスコープSTM−MJS(オリンパス製)を用いて行った。100個の粒子につき測定を行い、その平均値を長軸径とした。
〔密度〕
強度測定用試料につき、強度測定の前にこれら試料の体積と質量を測定し、この値から密度を計算した。
〔強度の平均、強度のばらつきσ〕
JISZ2511(金属粉―抗折試験による圧粉体強さ測定方法)に準拠し3点曲げ試験を行い強度を測定した。試料形状は30mm×10mm×5.5mmとし樹脂含浸、硬化処理後のものを強度測定した。強度測定には強度試験機(アイコーエンジニアリング製)を用いた。
各実施例、比較例について20点の強度を測定し、平均値、標準偏差σを算出した。
〔コアロス〕
リング状試料を用いてコアロス測定を行った。試料形状は外形17内径10厚み5mmとした。測定器はB−Hアナライザー、SY−8258(IWATSU製)を用い、1KHz 1Tの条件でのコアロスを測定した。
2 空孔部
3 樹脂部
Claims (1)
- 表面の少なくとも一部が無機酸化物層により絶縁コーティングされた軟磁性原料粉末を圧
縮成形してなる軟磁性圧粉磁芯であって、
前記軟磁性圧粉磁芯は、軟磁性粉末粒子が占める粉体部、空孔部及び樹脂部で構成され、
樹脂の含有量が0.07wt%以上0.5wt%以下含み、
前記粉体部の軟磁性粉末粒子が隣接する領域に、少なくとも3つ以上の粉末粒子で囲まれ
た空隙(空孔部)に樹脂が偏析し、空孔部と樹脂部とを形成しており、
前記空孔部は、0.4Vol%以上4.9Vol%以下であり、
前記粉体部の軟磁性粉末粒子の平均長軸径は、130μm以上700μm以下であること
を特徴とする磁性圧粉磁芯。
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