以下、本発明に係る記録装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンター1と称する)を例示する。
図1は、本実施形態に係るプリンター1の外観を示す斜視図である。図2は、プリンター1の概略構成を示す断面図である。
プリンター(記録装置)1は、比較的大型のメディアMを扱うラージフォーマットプリンター(LFP)である。メディアMは、例えば64インチ(Inch)程度の幅を有する帯状の媒体であり、例えば塩化ビニル系フィルムや紙などから形成されている。
プリンター1は、ロール・ツー・ロール方式でメディアMを搬送する搬送部2と、メディアMに対して液体としてのインク(例えば紫外線硬化型インク)を噴射して画像や文字等を記録する記録部3と、メディアM上に噴射されたインクに紫外線を照射して硬化させる処理部4とを有する。これら各構成部は、本体フレーム5に支持されている。
搬送部2は、ロール状に回巻されたメディアMを送り出す巻出部21と、送り出されたメディアMをロール状に巻き取る巻取部22と、巻出部21,巻取部22の間の搬送経路においてメディアMを保持して搬送力を与える搬送ローラー対23と、を有する。巻出部21、巻取部22、搬送ローラー対23は、不図示のモーター及び減速機により駆動される。
記録部3は、搬送ローラー対23の下流側の搬送経路においてメディアMに対してインクを噴射するインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31を搭載して幅方向に往復移動自在なキャリッジ32と、を有する。インクジェットヘッド31は、複数のノズルNzを備え(図3参照)、メディアMとの関係で選択されて紫外線照射を必要とする紫外線硬化型インクを噴射可能な構成となっている。インクジェットヘッド31は、複数色(本実施形態では5色)のインクを噴射可能であり、各色のインクを噴射する5列のノズル列を有している。
インクジェットヘッド31内部には、インク流路として各ノズルNzから噴射されるインクが収容される圧力発生室、及び各圧力発生室に共通に連通される共通インク室等が形成されている。圧力調整部30からインクジェットヘッド31内に供給されたインクは、共通インク室を介して各圧力発生室へと供給され、圧力発生室内の圧力変動によってノズルNzからインク滴を噴射する構成となっている。
紫外線硬化型のインクは樹脂材料、硬化剤としての光重合開始剤、溶媒または分散媒を主材料とする。この主材料に顔料または染料等の色素や、親液性または撥液性等の表面改質材料等の機能性材料を添加することにより固有の機能を有する機能液を形成することができる。本実施形態では、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ホワイトの顔料を添加している。インクの樹脂材料は樹脂膜を形成する材料である。樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。さらに、粘性の小さい樹脂材料が好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。モノマーの形態であればさらに好ましい。光重合開始剤はポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であり、例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール等を用いることができる。溶媒または分散媒は樹脂材料の粘度を調整するものである。
メディア支持部10は、メディアMの搬送経路の一部を構成するものであり、巻出部21,22の間において、メディアMを上方に凸となるように湾曲させて支持する構成となっている。
処理部4は、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向下流側でメディアMに紫外線を照射する紫外線照射部43を有する。
紫外線照射部43は、紫外線を照射する発光部43aと反射板43bとを有する。
発光部43aは、多数のLED(Light Emitting Diode)素子が配列して設置されている。このLED素子は、電力の供給を受けて紫外線の光である紫外光を発光する素子である。反射板43bは、発光部43aから射出される紫外線を反射させて当該紫外線をメディアMの記録面に向けて集中して照射するためのものである。
ところで、本実施形態に係るプリンター1は、高粘度の紫外線硬化型インクを噴射するものである。このように粘度の高いインクをインクジェットヘッド31から噴射するためには、加熱して粘度を低下させる必要がある。インクの加熱とは、インクの温度を一定温度まで上昇させることを意味する。
本実施形態においては、インクジェットヘッド31に供給されるインクを加熱することで所定温度に調整し、インクの粘度を低下させることでインクジェットヘッド31から精度良く噴射できるようにしている。具体的に、本実施形態では、インクの温度を例えば35℃に加熱し、インクの温度が30℃よりも高いうちにインクジェットヘッド31から噴射されるようにしている。
図3は本実施形態に係るプリンター1のインク供給経路を概念的に示す図である。
図3に示されるように、インクカートリッジ50に貯留された紫外線硬化型のインクは、複数(本実施形態では4個)のインク流路(液体流路)11を介してキャリッジ32(記録部3)に搭載されるインクジェットヘッド31へと供給される。インクカートリッジ50はインクジェットヘッド31から吐出されるインク色に対応して複数(本実施形態では4個)設けられている。本実施形態においては、上記インクカートリッジ50が、シアン、マゼンダ、イエロー、ホワイトの色のインクをそれぞれ収容した4個のインクカートリッジ50C,50M,50Y,50Wから構成されている。
インク流路11は、第1流路部11aと、第2流路部11bと、第3流路部11cと、を含む。第1流路部11aは可撓性を有する複数のチューブ12から構成され、各々の一端側がインクカートリッジ50に接続されている。第2流路部11bは第1の熱源(加熱部)25により加熱され、第3流路部11cは第2の熱源(加熱部)26により加熱されている。
プリンター1においては、上記第1の熱源25及び第2の熱源26がキャリッジ32内に密閉状態(すなわち、6面がすべて囲まれている)で設けられている。これにより、第1の熱源25及び第2の熱源26の熱がインク流路11(第2流路部11b及び第3流路部11c)に効率的に伝わるようにしている。なお、キャリッジ32内の雰囲気を循環することでインク流路11の加熱効率を向上させるようにしても構わない。
キャリッジ32内部には、キャリッジ32内の内部空間の温度を検出する温度センサー(検出部)90が設けられている。温度センサー90は、制御部150に電気的に接続されており、キャリッジ32内の内部空間の検出温度を制御部150に送信するようになっている。制御部150は、プリンター1の各構成部材(例えば、インクジェットヘッド31等)の駆動を制御するものである。
第2流路部11bは第1の熱源25により内部を流れるインクが加熱される平板流路13から構成されるものである。第3流路部11cは平板流路13とインクジェットヘッド31との間に設けられる圧力調整部30によって構成されるものである。
圧力調整部30は、例えばポリプロピレン等の樹脂製材料を用いて形成されている。圧力調整部30には、弾性シートで区画されることで外部の圧力に応じて容積が変動するインク室を有している。この弾性シートは、インク室を収縮させる方向と膨張させる方向とに変形可能である。そして、弾性シートの変形によるダンパ機能によって、インクの圧力変動が吸収される。すなわち、弾性シートの作用によって圧力調整部が圧力ダンパとして機能する。したがって、インクは、圧力調整部30内で圧力変動が吸収された状態でインクジェットヘッド31側に供給されるようになっている。すなわち、圧力調整部は、インクジェットヘッド31に供給するインクを一時的に貯留可能な液体貯留部を構成している。
図4はインクジェットヘッド31の周辺のインク流路の詳細構成を示す図である。図4に示すように、本実施形態に係るプリンター1は、インクカートリッジ50に収容されたインク色に対応する圧力調整部30を5つ備えている。具体的に本実施形態に係るプリンター1は、圧力調整部30C,30M,30Y,30Wを有している。
圧力調整部30Cはインクカートリッジ50Cからインクが供給されるものであり、圧力調整部30Mはインクカートリッジ50Mからインクが供給されるものであり、圧力調整部30Yはインクカートリッジ50Yからインクが供給されるものである。
また、圧力調整部30Wは、インクカートリッジ50Wからインクが供給されるものである。ホワイト色のインクが供給される圧力調整部30Wは、他色(シアン、マゼンダ、イエロー)のインクが供給される圧力調整部30C,30M,30Yを挟持するように配置されている。
インクカートリッジ50C,50M,50Y内のインク(シアン、マゼンダ、イエロー色のインク)は、インク流路11の第1流路部11aを構成するチューブ12を経て、圧力調整部30C,30M,30Yを介してインクジェットヘッド31に供給される。インクジェットヘッド31内に供給されたこれらの各色のインクは、ヘッド内の共通インク室を介して適宜圧力発生室へと供給され、ノズルNzからそれぞれ噴射される。
一方、本実施形態においては、インクカートリッジ50W内のインク(ホワイト色のインク)は、インク流路11の第1流路部11aを構成するインクチューブ61を経て、上記圧力調整部30Wを介してインクジェットヘッド31に供給される。
プリンター1は、第1の熱源25とインクジェットヘッド31との間において第3流路部11cを構成する圧力調整部30内のインクを加熱可能な第2の熱源25を備えている。第2の熱源26は、ヒーター26aと、該ヒーター26aで温められた空気を圧力調整部30(第3流路部11c)側に供給するファン26bとを有する。
これにより、圧力調整部30内に一時的貯留されるインクを加熱できるようになっている。よって、圧力調整部30からインクジェットヘッド31側に送られるインクは、その粘度が所定状態に保たれるため、圧力調整部30内のインク流路を滞りなく流れることでインクジェットヘッド31に良好に供給されることとなる。
図5は第2の熱源26と圧力調整部30C,30M,30Y,30Wとの位置関係を示す図である。
図5に示されるように、5つの圧力調整部30は、それぞれ隙間を開けた状態でインクジェットヘッド31に取り付けられている。第2の熱源26は、ヒーター26aで加熱した外気をファン26bが圧力調整部30側に供給する。
本実施形態では、ファン26bの吹き出し方向と平行となるように圧力調整部30を配置し、且つ隣接する圧力調整部30間に隙間を設けているので、ファン26bによる温風を圧力調整部30に効率的に当てることができる。これにより、圧力調整部30内のインクを効率的に加熱し、所定温度(35℃)に保持することができる。
図6は第2流路部11b及び第1の熱源25に係る構成を示す図であり、図6(a)は第2流路部11bの周辺構成の図6(b)におけるA−A線矢視の断面図であり、図6(b)は平板流路13を構成する金属板の平面構成を示す図である。
平板流路13は、図6(a)に示す金属板14に形成された複数(本実施形態では5本)の溝14aから構成される。金属板14としては熱伝導性が高いものが好ましく、本実施形態ではステンレスを用いている。金属板14に形成された溝14aは一端側に設けられた接続部14bを介して、上記第1流路部11aを構成する複数のチューブ12にそれぞれ接続されている。また、溝14aの他端側は不図示の領域において第3流路部11cを構成する複数(本実施形態では5個)の上述の各圧力調整部30C,30M,30Y,30W1,30W2に連通している。
図6(a)に示されるように、平板流路13は複数の溝14aが形成された金属板14と、該溝14aが形成された側の面を封止する封止板(封止部材)15と、該封止板15の金属板14と反対側に設けられた固定板16と、を備えている。金属板14と固定板16とは、封止板15を挟持した状態で不図示の領域で螺子によって締結されている。すなわち、溝14aは固定板16によってシールされた状態となっており、固定板16及び溝14aによって第2流路部11bが構成されている。
第1の熱源25は平板流路13に貼着されたヒーター25aから構成されている。ヒーター25aとしては、例えば抵抗加熱方式の配線が埋め込まれたフィルム材から構成される。具体的にヒーター25aは金属板14に直接貼り付けられている。ヒーター25aの金属板14と反対面側には断熱材17が貼り付けられている。これにより、ヒーター25aの熱が金属板14側に効率的に伝わるようになっている。
このように金属板14に形成した溝14aによって第1流路部11aが構成され、金属板14がヒーター25aで直接加熱されるので、第1流路部11a(溝14a)内のインクを効率的に加熱することができる。よって、複数の溝14aから構成された複数のインク流路11を同一の熱源(第1の熱源25)で効率的に加熱することができる。
なお、プリンター1は、インクジェットヘッド31のノズルNzが形成されたノズル面Nz1の温度を検出可能な温度センサーを有し、温度センサーの検出結果に基づいて、ポンプ62の駆動を切り替え可能な構成を採用してもよい。これによれば、プリンター1は、インクジェットヘッド31(キャリッジ32)の移動が停止状態にある場合において、インクジェットヘッド31のノズル面Nz1の温度が低下した際に必要に応じて循環部60を機能させることでインクジェットヘッド31内の温度を保持することができる。
上記プリンター1は、印字開始のジョブ指令が入力されると次のように動作する。
まず、上記ジョブ指令が入力されると、第1の熱源25(ヒーター25a)及び第2の熱源26(ヒーター26a、ファン26b)を駆動させ、インク流路11(第2流路部11b、第3流路部11c)内のインクを加熱する。
本実施形態では、上述のようにインク流路11の上流側を第1の熱源25、インク流路11の下流側を第2の熱源26で加熱する2段加熱方式を採用しているため、インクジェットヘッド31に供給されるインクの温度を安定させることができる。
そして、インク流路11内のインクの温度が所定温度に保持された状態となると、メディアMをメディア支持部10の印字領域まで搬送し、記録部3のインクジェットヘッド31がメディアMに印字処理を開始する。インクジェットヘッド31は、キャリッジ32に搭載された状態で、メディアMの幅方向を往復しながら印字処理を行う。
処理部4の発光部43aは、インクが噴射されたメディアMに対して紫外線を照射する。本実施形態で用いたインクは、上述のように紫外線硬化型であって紫外線により重合が開始する光重合開始剤を含んでいるため、表面が直ちに固化または硬化される。これにより、インクが硬化されメディアMに定着する。このように本実施形態では、メディアMにインク滴を噴射した直後に紫外線を照射して硬化させるので、インク滴の滲みが抑制されて滲みの少ない高品質の印刷処理を行うことができる。
ところで、プリンター1においては、第1の熱源25及び第2の熱源26で加熱されたインクがインクジェットヘッド31に供給される。しかし、キャリッジ32の移動時にプリンター1内の空気がインクジェットヘッド31に当たる。プリンター1内の空気は35℃になっておらず、インクジェットヘッド31が冷却される。そのため、インクジェットヘッド31に供給されたインクの温度が低下し、粘度が増加したインクがノズルNzから良好に吐出されない、いわゆる吐出不良が発生する可能性がある。
本実施形態においては、キャリッジ32(不図示)に保持されるインクジェットヘッド31が同図に示される矢印方向に沿って移動するようになっている(図4参照)。すなわち、プリンター1は、インクジェットヘッド31の移動方向と直交する方向に沿って複数の圧力調整部30が配置された構成となっている。
本実施形態に係るプリンター1は、図4に示したようにインク流路11がインクジェットヘッド31に供給したインクの少なくとも一部をノズルNzを介さずに当該インクジェットヘッド31から排出させて第1の熱源25の上流側へと循環させる循環部60を有している。循環部60は、キャリッジ32の内部に少なくとも一部が配置されている。
本実施形態においては、循環部60がインク流路11の第1流路部11aを構成する複数のチューブ12にそれぞれ設けられている。なお、図4においては、図を簡略化するため、圧力調整部30Wに設けられた循環部60のみを図示しており、他の圧力調整部30C,30M,30Yについては図示を省略している。
以下、圧力調整部30Wに対応する循環部60を例に挙げて説明するが、他の圧力調整部30C,30M,30Yに対応する循環部60の構成及び作用効果については同一となっている。
循環部60は、ポンプ62と、インクカートリッジ50Wと第1の熱源25との間のチューブ12に設けられた分岐部63とを主体として構成される。ポンプ62は制御部150に電気的に接続されており、その駆動が制御されるようになっている。
分岐部63は、チューブ12における第1の熱源25側の端部が2つに分岐された第1分岐部61a及び第2分岐部61bから構成されるものである。第1分岐部61a及び第2分岐部61bは平板流路13を介して圧力調整部30Wに連通されている。
このような構成に基づき、プリンター1は、チューブ12を介し、ホワイト色のインクをインクカートリッジ50Wから第1分岐部61a及び圧力調整部30Wを経てインクジェットヘッド31へと供給する。プリンター1は、インクジェットヘッド31内に供給されたホワイトインクの一部を、共通インク室を介して適宜圧力発生室へと供給し、ノズルNzからそれぞれ噴射させることができる。
プリンター1は、ポンプ62を駆動して循環部60を機能させることができる。例えば、循環部60は、圧力調整部30Wを介してインクジェットヘッド31に供給したホワイトインクの一部を共通インク室のみを通って圧力発生室及びノズルNzを介さず、インクジェットヘッド31から圧力調整部30Wへと排出させる。そして、インクジェットヘッド31から排出されたインクは圧力調整部30W、第2分岐部61b、及びポンプ62を介して第1分岐部61aへと戻される。第1分岐部61aに戻されたインクは、再度第1の熱源25及び圧力調整部30Wを介してインクジェットヘッド31へと循環される。
プリンター1は、ポンプ62の駆動を切り替えることでインクジェットヘッド31内におけるインクの循環方向を変更することができる。プリンター1は、ポンプ62の切り替えにより、チューブ12を介し、ホワイト色のインクをインクカートリッジ50Wから第2分岐部61b及び圧力調整部30Wを経てインクジェットヘッド31へと供給する。
循環部60は、インクジェットヘッド31に供給したホワイトインクの一部をノズルNzを介さず、インクジェットヘッド31から圧力調整部30Wへと排出させることができる。インクジェットヘッド31から排出されたインクは圧力調整部30W、及び第1分岐部61aを介して第2分岐部61bへと戻される。第2分岐部61bに戻されたインクは、再度第1の熱源25及び圧力調整部30Wを介してインクジェットヘッド31へと循環される。
すなわち、循環部60はインクジェットヘッド31が往復移動する所定方向に沿ってインクを循環させることができる。ここで、ヘッドの移動方向における先頭側では温度低下が大きく、インクジェットヘッド31に供給されるインクの温度が低下するおそれがある。
本実施形態に係るプリンター1は、インクジェットヘッド31の移動方向における先頭側に配置されたチューブ12(第1分岐部61a又は第2分岐部61b)に対し、循環部60による往路を流れるインクを供給するようにしている。具体的には、例えば、インクジェットヘッド31が同図中における左斜め下方向に移動する場合、図中矢印で示すように第1分岐部61aが往路となるように循環部60のポンプ62を駆動する。
また、プリンター1は、他の循環部60を用いることでインクカートリッジ50C,50M,50Yから供給される各色のインクをノズルNzを介さずにインクジェットヘッド31から排出させ、再度インクジェットヘッド31に循環させることができる。
以上述べたように、本実施形態に係るプリンター1によれば、圧力調整部30ごとに循環部160が設けられているので、インクジェットヘッド31に供給されるインクの温度を安定させることができる。すなわち、キャリッジ32の移動によって温度低下がし易い各インクジェットヘッド31の移動方向先頭側に対し、各循環部60により第1の熱源25によって加熱されたインクを循環できるので、各インクジェットヘッド31に供給される各色のインクの温度を安定させることができる。
また、循環部60はインクジェットヘッド31に対してインクを循環させることができるので、例えば顔料の粒子の沈降が生じやすいといった特性を有した紫外線硬化型インクについても沈降を防止することでインクジェットヘッド31における良好なインク噴射特性を得ることができる。
特にインクカートリッジ50Wに貯留されるホワイトインクは、他の色のインクに比べて、顔料の粒子の沈降が生じやすいといった特性を有しているため、循環部60によってインクジェットヘッド31内に循環させることでインクの沈降を効果的に防止できる。
また、プリンター1においては、第1の熱源25及び第2の熱源26(以下、熱源25,26と称す場合もある)によってインク流路11を加温するようにしているが、これら熱源25,26はキャリッジ32内に密閉状態で設けられている。そのため、これら熱源25,26が発した熱がキャリッジ32内に籠ることでキャリッジ32内の内部空間の温度が過熱状態になる可能性がある。
このような過熱状態が起こる要因としては、例えば、インクジェットヘッド31内においてインク詰りが発生した場合や、第1の熱源25及び第2の熱源26を駆動させた状態でプリンター1がインク噴射を長期的に実施しない場合、その他機器の暴走によってキャリッジ32内の温度が上昇した場合等がある。
これに対し、本実施形態に係るプリンター1は、温度センサー62によってキャリッジ32内の内部空間の温度を検出し、キャリッジ32内が過熱状態、すなわち内部空間の温度に基づいてインクジェットヘッド31内のインクの温度が所定温度(例えば、45℃)より高いと判断した場合、制御部150が第1の熱源25及び第2の熱源26の加熱を停止した状態で循環部60によってインクを循環させるようにしている。
具体的に制御部150は、第1の熱源25(ヒーター25a)の駆動を停止することで平板流路13内のインクの加熱を中止する。また、制御部150は、第2の熱源26(ヒーター26a、ファン26b)の駆動を停止することで各圧力調整部30の加熱を中止する。そして、制御部150は循環部60のポンプ62を駆動し、各インクカートリッジ50から供給される各色のインクをノズルNzを介さずにインクジェットヘッド31から排出させ、再度インクジェットヘッド31に循環させる。
このとき、熱源25、26の加熱が停止した状態とされるので、インクジェットヘッド31には熱源25、26により加熱されない状態のインクが循環されることとなる。よって、比較的温度の低いインクを循環させることでインクジェットヘッド31内の温度上昇が緩和されて、結果的にヘッド内のインクの温度を低下させることができる。また、循環部60の一部がキャリッジ32の外部に設けられるので、循環部60を構成する分岐部63を流れるインクによってキャリッジ32の内部空間の温度を低下させることができる。
したがって、インクジェットヘッド31は内部のインクの温度が安定するので、ノズルNzから安定した温度のインクを噴射することができ、良好なインク噴射精度を得ることができる。
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係るプリンターの構成について説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは、循環部の構成である。それ以外の構成については上記実施形態と同じであることから、同一構成及び部材については同じ符号を付し、その構成についての詳細な説明については省略若しくは簡略化するものとする。
具体的に、上記実施形態では、インクジェットヘッド31の移動方向と直交する方向に沿って複数の圧力調整部30が配置されるプリンター1を例示したが、移動方向に沿って複数の圧力調整部30が配置されるプリンター1にも本発明は適用可能である。
図7は本実施例に係るプリンター1のインクジェットヘッド31の周辺のインク流路の詳細構成を示す図である。
図7に示されるように、本実施例においては、上記実施形態と異なり、ホワイト色のインクに対応した圧力調整部として、2つの圧力調整部30W1,30W2を有している。圧力調整部30W1,w2は、それぞれインクカートリッジ50Wからインクが供給されるものである。圧力調整部30W1、30W2は、他色(シアン、マゼンダ、イエロー)のインクが供給される圧力調整部30C,30M,30Yを挟持するように配置されている。
循環部160は、インク流路11の第1流路部11aを構成する複数のチューブ12のうち、インクカートリッジ50Wと第1の熱源25との間に設けられたインクチューブ161と、該インクチューブ161に設けられたポンプ(切り替え機構)162とを主体として構成される。インクチューブ161は、第1の熱源25側の端部が2つに分岐された第1分岐部161a及び第2分岐部161bを含む分岐部163を有している。第1分岐部161aは平板流路13を介して圧力調整部30W1に連通され、第2分岐部161bは平板流路13を介して圧力調整部30W2に連通される。
このような構成に基づき、プリンター1は、インクチューブ161を介し、ホワイト色のインクをインクカートリッジ50Wから第1分岐部161a及び圧力調整部30W1を経てインクジェットヘッド31へと供給する。プリンター1は、インクジェットヘッド31内に供給されたホワイトインクの一部を、共通インク室を介して適宜圧力発生室へと供給し、ノズルNzからそれぞれ噴射させることができる。
また、プリンター1は、ポンプ62を駆動して循環部60を機能させることができる。例えば、循環部60は、圧力調整部30W1を介してインクジェットヘッド31に供給したホワイトインクの一部を共通インク室のみを通って圧力発生室及びノズルNzを介さず、インクジェットヘッド31から圧力調整部30W2へと排出させる。そして、インクジェットヘッド31から排出されたインクは圧力調整部30W2、第2分岐部61b、及びポンプ62を介して第1分岐部61aへと戻される。第1分岐部61aに戻されたインクは、再度第1の熱源25及び圧力調整部30W1を介してインクジェットヘッド31へと循環される。
また、循環部160を構成する第1分岐部161a及び第2分岐部161bは、少なくともキャリッジ32の外部において、他のインクカートリッジ50C,50M,50Yとインクジェットヘッド31との間を接続するチューブ12を挟持するように配置されている。これによれば、キャリッジ32外部の外気に晒されることで温度低下が生じやすい領域に配置されるチューブ12を、第1の熱源25を循環することで安定した温度のインクが流れる第1分岐部161a及び第2分岐部161bによって保温することができる。キャリッジ32の外部において、チューブ12内のインクを加温することができる。よって、チューブ12を介して第1の熱源25に供給されたインクの加熱時間を短くすることができる。
また、プリンター1は、ポンプ62の駆動を切り替えることでインクジェットヘッド31内におけるインクの循環方向を変更することができる。具体的にプリンター1は、後述するようにインクジェットヘッド31の移動方向に応じてポンプ62の駆動を切り替えるようにしている。
例えば、プリンター1は、インクジェットヘッド31のノズルNzが形成されたノズル面Nz1の温度を検出可能な温度センサー(不図示)を有しており、該温度センサーの検出結果に基づいて、ポンプ62の駆動の切り替えを行っている。これによれば、プリンター1は、インクジェットヘッド31(キャリッジ32)が停止している場合において、インクジェットヘッド31のノズル面Nz1の温度が低下した際に必要に応じて循環部160を機能させることでインクジェットヘッド31内の温度を保持することができる。
循環部160は、圧力調整部30W2を介してインクジェットヘッド31に供給したホワイトインクの一部を共通インク室のみを通って圧力発生室及びノズルNzを介さず、インクジェットヘッド31から圧力調整部30W1へと排出させることができる。インクジェットヘッド31から排出されたインクは圧力調整部30W1、及び第1分岐部161aを介して第2分岐部161bへと戻される。第2分岐部161bに戻されたインクは、再度第1の熱源25及び圧力調整部30W2を介してインクジェットヘッド31へと循環される。
以上のようにして、プリンター1は、インクジェットヘッド31内に供給したホワイトインクの一部をノズルNzから吐出させることなく、第1の熱源25の上流側に循環されるので、再度第1の熱源25によって加熱されたインクを圧力調整部30W1又は30W2に供給することができる。
プリンター1は、インクジェットヘッド31が所定方向に沿って往復移動するため、圧力調整部30W1,30W2が当該インクジェットヘッド31の移動方向における先頭側に配置された状態となっている。ここで、ヘッドの移動方向における先頭側では上述したようなキャリッジ32の内部空間における温度低下が大きく、インクジェットヘッド31に供給されるインクの温度が低下するおそれがある。
本実施形態に係るプリンター1においては、インクジェットヘッド31の移動方向における先頭側に位置する圧力調整部30W1,30W2に対し、循環部160の往路内のインクを供給するようにしている。例えば、プリンター1は、インクジェットヘッド31が図7中の矢印の右斜め下方向に沿って移動している場合、冷却されやすい圧力調整部30W2に対してインクを供給する第2分岐部161bが往路となるようにインクを循環させる。
これによれば、内部空間の温度低下による影響を受けやすい圧力調整部30W1,30W2に対し、循環部160を介して第1の熱源25によって再度加熱されたインクが供給されるので、圧力調整部30W1,30W2内のインクの温度低下が防止されて、インクジェットヘッド31に供給されるホワイト色のインクの温度を安定させることができる。
また、圧力調整部30C,30M,30Yは、循環部160によってインクが循環されることでインク温度が安定した圧力調整部30W1,30W2に挟持されているので、キャリッジ32の内部空間の温度低下の影響を受け難くなっている。
また、インクカートリッジ50Wに貯留されるホワイトインクは、他の色のインクに比べて、顔料の粒子の沈降が生じやすいといった特性を有している。これに対し、本実施形態に係るプリンター1によれば、循環部160を介してホワイトインクをインクジェットヘッド31内に循環させる構成を採用しているので、当該インクジェットヘッド31内においてホワイトインクの沈降が生じるのを防止することができる。
本実施形態に係るプリンター1においても、循環部160によって第1の熱源25の上流に循環されたインクが再度加熱されてインクジェットヘッド31に供給されるので、循環部160内を流れるインクは所定温度に加熱された状態を保持することができる。よって、複数のインク流路11のうち、インクジェットヘッド31の移動によって温度低下が生じやすい先頭側に循環部60(第1分岐部161a及び第2分岐部161b)が配置されるので、インクジェットヘッド31が移動する構成においても、インクジェットヘッド31に供給される液体の温度を安定させることができる。
また、本実施形態においても、温度センサー62によってキャリッジ32内の内部空間の温度を検出し、キャリッジ32内が過熱状態であると判断した場合、制御部150が第1の熱源25及び第2の熱源26の加熱を停止した状態で循環部160によってインクを循環させるようにしている。
このように本実施形態においても、熱源25、26により加熱されない状態のインクをインクジェットヘッド31に循環することで、インクジェットヘッド31内の温度上昇を緩和し、結果的にヘッド内のインクの温度を低下させることができる。したがって、インクジェットヘッド31の内部のインクの温度を安定させることで、ノズルNzから安定した温度のインクを噴射することで良好なインク噴射精度を備えたプリンター1を提供できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、第1の熱源25と第2の熱源26とを備えたものを例示したが、いずれか一方でもよいし、3つ以上の熱源を備えてもよい。また、インクジェットヘッド31から噴射するインクの色は上記実施形態と異なる他の色でもよい。
また、本実施形態においては、記録装置がプリンター1である場合を例にして説明したが、これに限らない。複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
また、液体噴射装置としては、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。本発明は、例えば微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインク(紫外線硬化型インク)が挙げられるが、粘性が高ければ紫外線硬化型インクではなくてもよい。また、メディアMとしては、紙や塩化ビニル系フィルム等のプラスチックフィルム以外に、薄く熱伸びする機能紙、基板や金属板などを包含するものとする。また、メディアMは、帯状に限らず、予め切断された記録媒体であってもよい。