以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(印刷装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷装置1の斜視図である。図2は、図1に示す印刷装置1からインクリボンカートリッジ6を取り外したときの斜視図である。図3は、図1に示すインクリボンカートリッジ6の分解斜視図である。図4は、図1に示す印刷装置1の内部構成を側面から説明するための図である。図5は、図4に示すインクリボン3の一部の平面図である。
本形態の印刷装置1は、印刷媒体であるカード2(図4参照)に対して文字、記号および図形等の画像を印刷するための装置である。具体的には、印刷装置1は、帯状のフィルムにインクが塗布されて形成されたインクリボン3を使い、インクリボン3のインクを加熱することで、インクリボン3のインクをカード2に転写して印刷する熱転写方式の印刷装置である。この印刷装置1は、たとえば、カード発行装置等の上位装置に搭載されて使用される。
印刷装置1は、図4に示すように、インクリボン3が巻回される供給ロール4および巻取ロール5を有するインクリボンカートリッジ6(以下、「カートリッジ6」とする。)と、カートリッジ6が着脱可能に取り付けられる本体部7とから構成されている。また、印刷装置1は、カード2を搬送するカード搬送機構8と、インクリボン3を加熱してカード2にインクリボン3のインクを転写し印刷するサーマルヘッド9と、供給ロール4と巻取ロール5との間でインクリボン3を送るリボン送り機構10とを備えている。
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の塩化ビニール製のカードであり、略長方形状に形成されている。このカード2の表面には、たとえば、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。なお、カード2の内部に、ICチップや通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
インクリボン3は、図5に示すように、カード2に転写されるインクの層であるインク層が形成されるインク領域3aと、カード2に転写されたインクの表面を覆うオーバーコート材の層であるオーバーコート層が形成されるオーバーコート領域3bとを備えている。インク領域3aとオーバーコート領域3bとは、帯状に形成されるインクリボン3の長手方向において、交互に配列されている。インクリボン3の長手方向におけるインク領域3aの幅とオーバーコート領域3bの幅とは略等しくなっている。また、インクリボン3の長手方向におけるインク領域3aの幅およびオーバーコート領域3bの幅は、カード2の長手方向の幅と略等しくなっている。
本形態では、1つのインク領域3aと1つのオーバーコート領域3bとによって、1枚のカード2に印刷が行われる。すなわち、本形態では、1つのインク領域3aと1つのオーバーコート領域3bとによって、1枚のカード2の印刷に要するインクリボン3の領域である1画面領域3cが構成されている。また、本形態のインクリボン3は、単色(たとえば、黒色)の印刷のみが可能なものである。
以下の説明では、図1において互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を「前後方向」、Y方向を「左右方向」、Z方向を「上下方向」とし、X1方向側を「前」側、X2方向側を「後(後ろ)」側、Y1方向側を「左」側、Y2方向側を「右」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。また、図4における時計回りの方向を「時計方向」とし、図4における反時計回りの方向を「反時計方向」とする。本形態では、略長方形状に形成されるカード2の長手方向が前後方向(X方向)と略一致するように、かつ、カード2の厚み方向が上下方向(Z方向)と略一致するように、カード2は、カード搬送機構8によって、前から後ろに向かって搬送される。
本体部7は、上側に配置される第1筺体13と、下側に配置される第2筺体14とから構成される筺体15を備えている。第2筺体14の前上端側には、左右方向を軸方向として配置される軸16(図2、図4参照)が取り付けられている。第1筺体13の前端側は、軸16に回動可能に保持されており、第1筺体13は、軸16を中心に第2筺体14に対して、図1に示す状態から反時計方向(図4における反時計方向)へ回動可能となっている。図1に示す状態から軸16を中心に第1筺体13を反時計方向へ回動させると、筺体15から上側に向かってカートリッジ6を取り出すことが可能になる。また、図2に示す状態で、第2筺体14に上側からカートリッジ6を搭載し、第1筺体13を時計方向へ回動させてカートリッジ6を上側から覆うと、筺体15にカートリッジ6が取り付けられる。
カード搬送機構8およびサーマルヘッド9は、筺体15に取り付けられている。すなわち、本体部7は、カード搬送機構8およびサーマルヘッド9を備えている。また、本体部7の内部には、カード2が搬送される媒体搬送路としてのカード搬送路17が形成されている。カード搬送路17は、前後方向で印刷装置1を貫通するように、かつ、直線状に形成されている。
カード搬送機構8は、カード2に当接してカード2を搬送する複数のカード搬送ローラ19と、カード搬送ローラ19に対向配置されるパッドローラ20とを備えている。カード搬送ローラ19は、下側からカード搬送路17に臨むように配置されている。複数のカード搬送ローラ19は、プーリやタイミングベルト等から構成される動力伝達機構21を介してカード搬送用モータ22に連結されている。パッドローラ20は、上側からカード搬送ローラ19に対向しており、カード搬送ローラ19に向かって付勢されている。
サーマルヘッド9は、印刷装置1の前後方向の略中心に、かつ、カード搬送路17の上側に配置されている。サーマルヘッド9の下方には、プラテンローラ23が配置されている。プラテンローラ23は、動力伝達機構21を介してカード搬送用モータ22に連結されており、カード搬送ローラ19と一緒に回転する。また、サーマルヘッド9は、カード搬送路17を通過するカード2に近づく方向およびこのカード2から離れる方向へサーマルヘッド9を移動させるヘッド移動機構24(図2参照)に連結されている。
カード2およびインクリボン3は、上下方向において、サーマルヘッド9とプラテンローラ23との間を通過する。また、サーマルヘッド9は、ヘッド移動機構24から伝達される動力によって、カード搬送路17に対して(具体的には、プラテンローラ23に対して)上下動する。このサーマルヘッド9は、インクリボン3を介してカード2の上面に所定の当接力で当接して、カード搬送路17を通過するカード2の上面に印刷を行う。
前後方向におけるサーマルヘッド9の両側等には、印刷装置1内でインクリボン3を案内するためのガイド軸25が配置されている。ガイド軸25は、左右方向を軸方向として第1筺体13または第2筺体14に固定されている。このガイド軸25は、カード搬送路17の上方に配置されている。
カートリッジ6は、上述の供給ロール4および巻取ロール5を有するインクリボンカセット26と、インクリボンカセット26が着脱可能に取り付けられるカートリッジ本体部27とを備えている(図3参照)。このカートリッジ6は、カード搬送路17の上側に配置され、上側から筺体15に着脱可能となっている。供給ロール4および巻取ロール5は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。また、供給ロール4は、サーマルヘッド9よりも前側に配置されており、供給ロール4には、サーマルヘッド9に向かって供給されるインクリボン3(未使用のインクリボン3)が巻回されている。巻取ロール5は、サーマルヘッド9よりも後ろ側に配置されており、巻取ロール5には、供給ロール4から供給されサーマルヘッド9によってカード2にインクが転写された後のインクリボン3(使用済みのインクリボン3)が巻き取られる。カートリッジ6の具体的な構成については後述する。
リボン送り機構10は、インクリボン3に当接してインクリボン3を送るリボン送りローラ28と、リボン送りローラ28に対向配置されるパッドローラとを備えている。また、リボン送り機構10は、リボン送りローラ28が連結されるリボン送り用モータ30と、リボン送り用モータ30の動力をリボン送りローラ28等に伝達するための動力伝達機構31(図4参照)とを備えている。
リボン送りローラ28は、サーマルヘッド9の斜め後ろ上側に配置されており、サーマルヘッド9と巻取ロール5との間に配置されている。また、リボン送りローラ28は、第1筺体13に回転可能に保持されている。パッドローラは、略後ろ側からリボン送りローラ28に対向しており、リボン送りローラ28に向かって付勢されている。動力伝達機構31は、本体部7の一部をなす動力伝達機構32と、カードリッジ6の一部をなす動力伝達機構33とから構成されている。
本形態では、リボン送り機構10は、巻取ロール5がインクリボン3を巻き取る方向(以下、この方向を「リボン巻取方向」とする。)と、供給ロール4がインクリボン3を巻き取る方向(以下、この方向を「リボン巻戻し方向」とする。)との両方向へインクリボン3を送ることが可能になっている。リボン巻取方向へインクリボン3が送られるときには、リボン送りローラ28、供給ロール4および巻取ロール5は反時計方向へ回転し、リボン巻戻し方向へインクリボン3が送られるときには、リボン送りローラ28、供給ロール4および巻取ロール5は時計方向へ回転する。動力伝達機構32、33の具体的な構成については後述する。
なお、サーマルヘッド9によってカード2に対する印刷が行われると、インクリボン3には、カード2へ転写されたインクの剥離跡が形成される。本形態では、カード2に印刷される画像と同じ形のインクの剥離跡が使用後のインクリボン3に形成されるように、リボン送り機構10は、1枚のカード2の印刷時に、リボン巻取方向へインクリボン3を順次、送る。
(インクリボンカセットの構成)
図6は、図3に示すインクリボンカセット26を別の角度から示す斜視図である。図7は、図6に示すインクリボンカセット26の分解斜視図である。図8は、図7のE部の拡大図である。図9は、図7のF部の拡大図である。図10は、図6のG−G断面の断面図である。図11は、図10に示す巻取ロール5が圧縮コイルバネ44の付勢力に抗して移動したときの状態を説明するための断面図である。
インクリボンカセット26は、上述の供給ロール4および巻取ロール5に加え、供給ロール4および巻取ロール5が収容されるケース体36を備えている。ケース体36は、ケース本体37と、ケース本体37の右端側に固定されるカバー部材38とを備えている。また、インクリボンカセット26は、供給ロール4を手動で回転させるためのスリーブ39および摘み40と、供給ロール4を左側へ付勢する圧縮コイルバネ41と、巻取ロール5を手動で回転させるためのスリーブ42および摘み43と、巻取ロール5を左側へ付勢する圧縮コイルバネ44とを備えている。
ケース本体37は、供給ロール4に巻回されたインクリボン3の略全体を覆うカバー部37aと、巻取ロール5に巻回されたインクリボン3の略全体を覆うカバー部37bと、カバー部37aとカバー部37bとを繋ぐ連結部37cとを備えている。カバー部37aおよびカバー部37bは、略円筒状に形成されている。略円筒状に形成されるカバー部37aおよびカバー部37bは、左右方向を軸方向として配置されている。また、カバー部37aとカバー部37bとは、前後方向において所定の間隔をあけた状態で配置されている。連結部37cは、カバー部37aの右後端とカバー部37bの右前端とを繋いでいる。カバー部37aとカバー部37bとの間であって、連結部37cの左側では、インクリボン3がケース体36の外部に露出している。
カバー部37bは、図10に示すように、円環状に形成されカバー部37bの左端を構成する底部37dと、底部37dの外周端から右側へ立ち上がる略円筒状の筒部37eと、底部37dの内周端から右側へ立ち上がる円筒状の内側筒部37fとを備えている。左右方向における内側筒部37fの長さ(すなわち、内側筒部37fの軸方向の長さ)は、左右方向における筒部37eの長さ(すなわち、筒部37eの軸方向の長さ)よりも短くなっている。巻取ロール5に巻回されたインクリボン3の外周側は、筒部37eに覆われている。筒部37eには、巻取ロール5に巻回されるインクリボン3を引き出すためのスリットが形成されている。
内側筒部37fの右端には、内側筒部37fの内周側へわずかに突出する円環状の円環部37gが形成されている。円環部37gの右面には、後述の回転防止機構46を構成する歯止め37hが形成されている。歯止め37hは、円環部37gの右面から右側へ突出するように形成されている。また、歯止め37hは、たとえば、180°ピッチで円環部37gの右面の2箇所に形成されている。
カバー部37aは、カバー部37bと同形状に形成されている。すなわち、カバー部37aは、底部37dに相当する底部37jと、筒部37eに相当する筒部37kと、内側筒部37fに相当する内側筒部37mとを備えている。内側筒部37mの右端には、円環部37gに相当する円環部が形成されており、この円環部の右面には、歯止め37hに相当する歯止めが形成されている。筒部37kの下端側には、2個のプリズム45(図7参照)が固定されている。2個のプリズム45は、前後左右方向で互いにずれた状態で配置されている。
カバー部材38は、筒部37eの右端の内周側に配置されて固定される固定部38aと、筒部37kの右端の内周側に配置されて固定される固定部38bとを備えている。固定部38aには、左側に向かって立ち上がる円筒状の筒部38cと、右側に向かって立ち上がる円筒状のスリーブ保持部38dとが同心状に形成されている。筒部38cの内径は、スリーブ保持部38dの内径よりも大きくなっている。筒部38cの左端には、後述の回転防止機構47を構成する歯止め38eが形成されている。歯止め38eは、筒部38cの左端から左側へ突出するように形成されている。また、歯止め38eは、たとえば、180°ピッチで筒部38cの左端の2箇所に形成されている。固定部38aは、カバー部37bの筒部37eと筒部38cとが同心状に配置されるように筒部37eの右端の内周側に固定されている。
固定部38bは、固定部38aと同形状に形成されている。すなわち、固定部38bには、筒部38cに相当する筒部38fと、スリーブ保持部38dに相当するスリーブ保持部とが形成されている。また、筒部38fの左端には、歯止め38eに相当する歯止めが形成されている。固定部38bは、カバー部37aの筒部37kと筒部38fとが同心状に配置されるように筒部37kの右端の内周側に固定されている。
スリーブ42は、略円板状に形成される底部42aと円筒状に形成される筒部42bとを有する鍔付きの略有底円筒状に形成されている。底部42aは、筒部42bの右端に繋がっている。また、スリーブ42は、底部42aから右側へ立ち上がる円筒状の筒部42cを備えている。筒部42cは、筒部42bと同心状に形成されている。
底部42aの外周側部分は、筒部42bよりも外周側に広がっている。底部42aには、左側に向かってわずかに立ち上る円筒状のバネ保持部42dが形成されている。バネ保持部42dは、筒部42bと同心状に形成されている。バネ保持部42dの内径は、筒部42bの外径よりも大きくなっている。底部42aおよび筒部42bは、カバー部材38の筒部38cの内周側に配置されている。筒部42bの外周面には、図8に示すように、筒部42bの外周側へ突出する凸部42eが形成されている。凸部42eは、左右方向の細長い直方体状に形成されている。また、凸部42eは、たとえば、180°ピッチで2箇所に形成されている。筒部42cは、カバー部材38のスリーブ保持部38dの内周側に回転可能に保持されている。筒部42cの右端には、摘み43が固定されている。摘み43は、カバー部材38の右側面よりも右側へ突出するように筒部42cに固定されている。
スリーブ39は、スリーブ42と同形状に形成されている。すなわち、スリーブ39は、底部42aに相当する底部39aと、筒部42bに相当する筒部39bと、筒部42cに相当する筒部39cとを備えている。底部39aには、バネ保持部42dに相当するバネ保持部が形成され、筒部39bの外周面には、凸部42eに相当する凸部が形成されている。底部39aおよび筒部39bは、カバー部材38の筒部38fの内周側に配置されている。筒部39cは、固定部38bのスリーブ保持部の内周側に回転可能に保持されている。筒部39cの右端には、摘み40が固定されている。摘み40は、カバー部材38の右側面よりも右側へ突出するように筒部39cに固定されている。
巻取ロール5は、図10に示すように、略円板状に形成される底部5aと円筒状に形成される筒部5bとを有する略有底円筒状に形成されている。底部5aは、筒部5bの右端に繋がっている。また、巻取ロール5は、筒部5bの内周側に配置される円筒状の第1内側筒部5cと、第1内側筒部5cの内周側に配置される有底円筒状の第2内側筒部5dと、底部5aから右側へ立ち上がる円筒状のバネ保持筒部5eとを備えている。第1内側筒部5c、第2内側筒部5dおよびバネ保持筒部5eは、筒部5bと同心状に形成されている。
第1内側筒部5cおよび第2内側筒部5dは、底部5aから左側に向かって立ち上がるように形成されている。左右方向における第1内側筒部5cの長さ(すなわち、第1内側筒部5cの軸方向の長さ)は、左右方向における筒部5b(すなわち、筒部5bの軸方向の長さ)の長さよりも短くなっている。左右方向における第2内側筒部5dの長さ(すなわち、第2内側筒部5dの軸方向の長さ)は、左右方向における第1内側筒部5cの長さよりも短くなっている。上述のように、第2内側筒部5dは、略有底円筒状に形成されており、第2内側筒部5dの底部5fは、第2内側筒部5dの左端に配置されている。バネ保持筒部5eの外径は、筒部5bの外径よりも小さくなっている。また、バネ保持筒部5eの外径は、圧縮コイルバネ44の内径よりも小さくなっている。
バネ保持筒部5eの内径は、スリーブ42の筒部42bの外径よりもわずかに大きくなっており、バネ保持筒部5eの内周側に筒部42bが配置されている。バネ保持筒部5eの内周面には、筒部42bに形成される凸部42eに係合する係合凹部が径方向の外側へ窪むように形成されている。そのため、摘み43を回転させることで、スリーブ42と一緒に巻取ロール5を回転させることが可能になる。また、凸部42eは、左右方向の細長い直方体状に形成されているため、巻取ロール5は、スリーブ42に対して左右方向へ相対移動可能となっている。
図10に示すように、筒部5bの外径は、カバー部37bの筒部37eの内径よりも小さくなっている。筒部5bの内径は、カバー部37bの内側筒部37fの外径よりも大きくなっている。筒部5bは、筒部5bの径方向において、筒部37eと内側筒部37fとの間に配置されている。インクリボン3は、筒部5bの外周面に巻回されている。また、左右方向における底部5aの右面と第1内側筒部5cの左端面との距離は、左右方向における内側筒部37fの右端面と固定部38aの筒部38cの左端との距離よりも短くなっている。
第1内側筒部5cの左端面には、内側筒部37fの右端に形成される歯止め37hに係合可能な歯車5hが形成されている。歯車5hを構成する複数の歯および歯止め37hは、歯車5hと歯止め37hとが係合しているときに、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転を防止するように(すなわち、時計方向への巻取ロール5の回転を防止するように)形成されている。本形態では、歯車5hと歯止め37hとによって、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転を防止する回転防止機構46が構成されている。なお、本形態の回転防止機構46は、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転のみを防止するラチェット機構であり、歯車5hと歯止め37hとが係合していても、リボン巻取方向への巻取ロール5の回転は可能となっている。
底部5aの右面の外周端側には、固定部38aの筒部38cの左端に形成される歯止め38eに係合可能な歯車5gが形成されている。歯車5gを構成する複数の歯および歯止め38eは、歯車5gと歯止め38eとが係合しているときに、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転を防止するように形成されている。本形態では、歯車5gと歯止め38eとによって、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転を防止する回転防止機構47が構成されている。また、本形態では、歯車5gを構成する複数の歯および歯止め38eは、歯車5gと歯止め38eとが係合しているときに、リボン巻取方向への巻取ロール5の回転も防止するように形成されている。
圧縮コイルバネ44の左端側の内周には、バネ保持筒部5eが挿入され、圧縮コイルバネ44の右端側の内周には、スリーブ42のバネ保持部42dが挿入されている。巻取ロール5は、圧縮コイルバネ44の付勢力によって、左側へ付勢されている。圧縮コイルバネ44の付勢力によって巻取ロール5が左側へ付勢されているときには、図10に示すように、筒部5bの左端は、カバー部37bの底部37dの右面に当接している。また、このときには、歯車5hと歯止め37hとが係合している。そのため、このときには、回転防止機構46の作用で、リボン巻取方向へ巻取ロール5を回転させることは可能であるが、リボン巻戻し方向へ巻取ロール5を回転させることはできない。
圧縮コイルバネ44の付勢力に抗して、巻取ロール5を右側へ移動させると、歯車5hと歯止め37hとの係合状態が解除される。この状態では、リボン巻取方向およびリボン巻戻し方向の両方向へ巻取ロール5を回転させることが可能である。一方、圧縮コイルバネ44の付勢力に抗して、巻取ロール5をさらに右側へ移動させると、図11に示すように、歯車5gと歯止め38eとが係合する。そのため、この状態では、回転防止機構47の作用で、リボン巻戻し方向およびリボン巻取方向へ巻取ロール5を回転させることはできない。
供給ロール4は、巻取ロール5と同形状に形成されている。すなわち、供給ロール4は、底部5aに相当する底部と、筒部5bに相当する筒部4bと、第1内側筒部5cに相当する第1内側筒部と、第2内側筒部5dに相当する第2内側筒部と、バネ保持筒部5eに相当するバネ保持筒部4eとを備えている。
バネ保持筒部4eの内径は、スリーブ39の筒部39bの外径よりもわずかに大きくなっており、バネ保持筒部4eの内周側に筒部39bが配置されている。バネ保持筒部4eの内周面には、筒部39bに形成される凸部に係合する係合凹部が径方向の外側へ窪むように形成されている。そのため、摘み40を回転させることで、スリーブ39と一緒に供給ロール4を回転させることが可能になる。また、筒部39bの凸部は、左右方向の細長い直方体状に形成されているため、供給ロール4は、スリーブ39に対して左右方向へ相対移動可能となっている。
筒部4bの外径は、カバー部37aの筒部37kの内径よりも小さくなっている。筒部4bの内径は、カバー部37aの内側筒部37mの外径よりも大きくなっている。筒部4bは、筒部4bの径方向において、筒部37kと内側筒部37mとの間に配置されている。インクリボン3は、筒部4bの外周面に巻回されている。また、左右方向における供給ロール4の底部の右面と第1内側筒部の左端面との距離は、左右方向における内側筒部37mの右端面と固定部38bの筒部38fの左端との距離よりも短くなっている。
供給ロール4の第1内側筒部の左端面には、第1内側筒部5cと同様に、内側筒部37mの左端に形成される歯止めに係合可能な歯車が形成されている。この歯車を構成する複数の歯および内側筒部37mの歯止めは、この歯車と内側筒部37mの歯止めとが係合しているときに、リボン巻取方向への供給ロール4の回転を防止するように(すなわち、反時計方向への供給ロール4の回転を防止するように)形成されている。本形態では、供給ロール4の第1内側筒部の歯車と内側筒部37mの歯止めとによって、リボン巻取方向への供給ロール4の回転を防止する回転防止機構が構成されている。なお、この回転防止機構は、リボン巻取方向への供給ロール4の回転のみを防止するラチェット機構であり、供給ロール4の第1内側筒部の歯車と内側筒部37mの歯止めとが係合していても、リボン巻戻し方向への供給ロール4の回転は可能となっている。
供給ロール4の底部の右面の外周端側には、固定部38bの筒部38fの左端に形成される歯止めに係合可能な歯車が形成されている。この歯車を構成する複数の歯および筒部38fの歯止めは、この歯車と筒部38fの歯止めとが係合しているときに、リボン巻取方向への供給ロール4の回転を防止するように形成されている。本形態では、供給ロール4の底部の歯車と筒部38fの歯止めとによって、リボン巻取方向への供給ロール4の回転を防止する回転防止機構が構成されている。また、本形態では、供給ロール4の底部の歯車を構成する複数の歯および筒部38fの歯止めは、供給ロール4の底部の歯車と筒部38fの歯止めとが係合しているときに、リボン巻戻し方向への供給ロール4の回転も防止するように形成されている。
圧縮コイルバネ41の左端側の内周には、バネ保持筒部4eが挿入され、圧縮コイルバネ41の右端側の内周には、スリーブ39のバネ保持部が挿入されている。供給ロール4は、圧縮コイルバネ41の付勢力によって、左側へ付勢されている。圧縮コイルバネ41の付勢力によって供給ロール4が左側へ付勢されているときには、筒部4bの左端は、カバー部37aの底部37jの右面に当接している。また、このときには、供給ロール4の第1内側筒部の歯車と内側筒部37mの歯止めとが係合しており、リボン巻戻し方向へ供給ロール4を回転させることは可能であるが、リボン巻取方向へ供給ロール4を回転させることはできない。
圧縮コイルバネ41の付勢力に抗して、供給ロール4を右側へ移動させると、供給ロール4の第1内側筒部の歯車と内側筒部37mの歯止めとの係合が解除される。この状態では、リボン巻取方向およびリボン巻戻し方向の両方向へ供給ロール4を回転させることが可能である。一方、圧縮コイルバネ41の付勢力に抗して、供給ロール4をさらに右側へ移動させると、供給ロール4の底部の歯車と筒部38fの歯止めとが係合するため、この状態では、リボン巻取方向およびリボン巻戻し方向へ供給ロール4を回転させることはできない。
なお、本形態では、インクリボンカセット26を構成する全ての部品は、樹脂で形成されている。
(カートリッジ本体部の構成)
図12は、図3に示すカートリッジ本体部27の構成を側面から説明するための図である。図13は、図3に示すカートリッジ本体部27の構成を説明するための断面図である。図14は、図3に示すカートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられたときの巻取ロール5の周辺部分の状態を説明するための断面図である。
カートリッジ本体部27は、左右方向を軸方向として配置される複数の軸51と、複数の軸51を介して連結される一対のフレーム52、53とを備えている。また、カートジッリ本体部27は、動力伝達機構31の一部をなす上述の動力伝達機構33を備えている。
フレーム52は、カートリッジ本体部27の左側面を構成している。フレーム53は、カートリッジ本体部27の右側面を構成している。本形態では、インクリボンカセット26は、カートリッジ本体部27に右側から取り付けられ、カートリッジ本体部27の右側へ取り外される。
フレーム53には、図3に示すように、インクリボンカセット26をカートリッジ本体部27に着脱するための貫通孔53aが形成されている。貫通孔53aは、インクリボンカセット26の右端側部分の形状に応じた形状に形成されており、カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられると、インクリボンカセット26の右端側部分が貫通孔53aの中に配置される。また、カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられると、インクリボンカセット26の右端側部分によって貫通孔53aが埋まる。また、フレーム53には、カートリッジ本体部27に取り付けられたインクリボンカセット26をロックするためのロック機構50が取り付けられている。ロック機構50は、前後方向における貫通孔53aの両側に配置されている。
動力伝達機構33は、フレーム52の右側に配置されている。この動力伝達機構33は、左側から供給ロール4に係合して供給ロール4を回転させるための供給側係合部54と、左側から巻取ロール5に係合して巻取ロール5を回転させるための巻取側係合部55とを備えている。供給側係合部54は、供給ロール4に連結される連結部56と、トルクリミッタ57を介して連結部56に連結される回転軸58とを備えている。巻取側係合部55は、巻取ロール5に連結される連結部59と、トルクリミッタ60を介して連結部59に連結される回転軸61とを備えている。本形態の連結部56は供給側連結部であり、トルクリミッタ57は供給側トルクリミッタであり、回転軸58は供給側回転軸であり、連結部59は巻取側連結部であり、トルクリミッタ60は巻取側トルクリミッタであり、回転軸61は巻取側回転軸である。
また、動力伝達機構33は、図12、図13に示すように、歯車68と、歯車68に噛み合う歯車69と、歯車69とワンウェイクラッチ62を介して連結されるプーリ63と、回転軸58に固定されるプーリ64と、プーリ63とプーリ64とに架け渡されるベルト65と、回転軸61にワンウェイクラッチ66を介して連結される歯車67とを備えている。本形態のプーリ64は第1プーリであり、ワンウェイクラッチ62は供給側ワンウェイクラッチであり、プーリ63は第2プーリであり、歯車69は供給側歯車であり、ワンウェイクラッチ66は巻取側ワンウェイクラッチであり、歯車67は巻取側歯車である。
回転軸58の左端側は、フレーム52に回転可能に支持されており、回転軸58は、フレーム52から右側へ突出している。トルクリミッタ57は、左右方向における回転軸58の略中心位置に取り付けられている。トルクリミッタ57の外周面には、鍔付きの略有底円筒状に形成されるスリーブ70が固定されている。連結部56は、鍔付きの略円筒状に形成されている。この連結部56は、スリーブ70を介してトルクリミッタ57に取り付けられている。すなわち、連結部56と回転軸58とは、トルクリミッタ57およびスリーブ70を介して互いに連結されている。連結部56は、回転軸58の右端側に配置されている。回転軸58の右端側は、連結部56の右端よりも右側へ突出している。
連結部56の外周面には、径方向の外側へ突出する複数の凸部56aが形成されている。凸部56aは、左右方向に細長い直方体状に形成されている。また、複数の凸部56aは、連結部56の周方向において所定のピッチで形成されている。スリーブ70には、供給ロール4の回転量を検出するためのスリット部70aが形成されている。スリット部70aは、スリーブ70の左端側部分を構成する円環状の鍔部の外周端側に形成されている。
回転軸58の左端側には、ワンウェイクラッチ71を介して略円筒状に形成される回転部材72が取り付けられている。すなわち、回転軸58と回転部材72との間にワンウェイクラッチ71が配置され、回転部材72は、回転軸58の左端側に相対回転可能に保持されている。ワンウェイクラッチ71は、リボン巻取方向における回転軸58の回転力(すなわち、反時計方向における回転軸58の回転力)を回転部材72に伝達するとともにリボン巻戻し方向における回転軸58の回転力(すなわち、時計方向における回転軸58の回転力)の回転部材72への伝達を遮断する機能を果たしている。本形態のワンウェイクラッチ71は、第2供給側ワンウェイクラッチである。
回転部材72の外周側には、付勢部材としての引張りコイルバネ73の一端が取り付けられている。引張りコイルバネ73の他端は、フレーム52に取り付けられている。回転部材72は、引張りコイルバネ73の付勢力で、回転軸58を中心にしてリボン巻戻し方向(すなわち、時計方向)へ付勢されている。なお、回転部材72の回転範囲は、図示を省略する回転規制機構によって規制されている。また、回転部材72は、フレーム52の右側面に固定されるカバー74に覆われている。
プーリ64は、回転軸58の左端側に固定されている。歯車68は、フレーム52に回転可能に支持されている。歯車69は、フレーム52に回転可能に支持される回転軸75の右端側に固定されている。ワンウェイクラッチ62は、回転軸75の左端側に取り付けられている。プーリ63は、ワンウェイクラッチ62に取り付けられている。ワンウェイクラッチ62は、リボン巻戻し方向における回転軸75の回転力(すなわち、時計方向における回転軸75の回転力)をプーリ63に伝達するとともにリボン巻取方向における回転軸75の回転力(すなわち、反時計方向における回転軸75の回転力)のプーリ63への伝達を遮断する機能を果たしている。
回転軸61の左端側は、フレーム52に回転可能に支持されており、回転軸61は、フレーム52から右側へ突出している。トルクリミッタ60は、左右方向における回転軸61の略中心位置に取り付けられている。トルクリミッタ60の外周面には、略有底円筒状に形成されるスリーブ77が固定されている。連結部59は、鍔付きの略円筒状に形成されている。この連結部59は、スリーブ77を介してトルクリミッタ60に取り付けられている。すなわち、連結部59と回転軸61とは、トルクリミッタ60およびスリーブ77を介して互いに連結されている。連結部59は、回転軸61の右端側に配置されている。回転軸61の右端側は、連結部59の右端よりも右側へ突出している。連結部59の外周面には、連結部56と同様に、径方向の外側へ突出する複数の凸部59aが形成されている。複数の凸部59aは、複数の凸部56aと同様に形成されている。
回転軸61の左端側には、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転を防止する回転防止機構78が設けられている。回転防止機構78は、回転軸61の左端側に固定される歯車79と、歯車79に係合する2個の爪部材80とを備えている。歯車79を構成する複数の歯および爪部材80は、歯車79と爪部材80とが係合しているときに、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転を防止するように形成されている。なお、本形態の回転防止機構78は、リボン巻戻し方向への巻取ロール5の回転のみを防止するラチェット機構であり、歯車79と爪部材80とが係合していても、リボン巻取方向への巻取ロール5の回転は可能となっている。
爪部材80は、固定軸82に回動可能に保持されている。固定軸82は、歯車67および歯車79を覆うカバー81に固定されている。2個の爪部材80は、歯車79の上端側と下端側とのそれぞれに係合可能となるように配置されている。また、爪部材80は、ネジリコイルバネ83によって、固定軸82を中心に歯車79に係合する方向(具体的には、反時計方向)に付勢されている。なお、カバー81は、フレーム52の右側面に固定されている。
ワンウェイクラッチ66は、回転軸61の左端側に取り付けられている。歯車67は、ワンウェイクラッチ66に取り付けられている。ワンウェイクラッチ66は、リボン巻取方向における歯車67の回転力(すなわち、反時計方向における歯車67の回転力)を回転軸61に伝達するとともにリボン巻戻し方向における歯車67の回転力(すなわち、時計方向における歯車67の回転力)の回転軸61への伝達を遮断する機能を果たしている。
カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられると、図14に示すように、第1内側筒部5cの内周側に連結部59および回転軸61が挿入されて、連結部59の外周面に形成された複数の凸部59aが、第1内側筒部5cの内周面に形成される係合凹部に係合する。そのため、連結部59と巻取ロール5との間で回転力の伝達が可能になる。
また、第1内側筒部5cの内周側に回転軸61が挿入されると、回転軸61の右端が第2内側筒部5dの底部5fに当接して、巻取ロール5を右側へ押す。回転軸61に押された巻取ロール5は、圧縮コイルバネ44の付勢力に抗して、歯車5hと歯止め37hとの係合が解除されるまで、かつ、歯車5gと歯止め38eとが係合しない位置まで右側へ移動する。すなわち、カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられると、歯車5hと歯止め37hとの係合が解除されるとともに歯車5gと歯止め38eとの係合が解除された状態となる。ただし、カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられた状態では、歯車79に2個の爪部材80が係合しているため、巻取ロール5は、リボン巻取方向へは回転するが、リボン巻戻し方向へは回転しない。
また、カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられると、供給ロール4の第1内側筒部の内周側に連結部56および回転軸58が挿入されて、連結部56の外周面に形成された複数の凸部56aが、供給ロール4の第1内側筒部の内周面に形成される係合凹部に係合する。そのため、連結部56と供給ロール4との間で回転力の伝達が可能になる。
また、供給ロール4の第1内側筒部の内周側に回転軸58が挿入されると、回転軸58の右端が供給ロール4の第2内側筒部の底部に当接して、供給ロール4を右側へ押す。回転軸58に押された供給ロール4は、圧縮コイルバネ41の付勢力に抗して、供給ロール4の第1内側筒部の歯車と内側筒部37mの歯止めとの係合が解除されるまで、かつ、供給ロール4の底部の歯車と筒部38fの歯止めとが係合しない位置まで右側へ移動する。すなわち、カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられると、供給ロール4の第1内側筒部の歯車と内側筒部37mの歯止めとの係合が解除されるとともに供給ロール4の底部の歯車と筒部38fの歯止めとの係合が解除された状態となる。そのため、カートリッジ本体部27にインクリボンカセット26が取り付けられると、供給ロール4は、リボン巻取方向およびリボン巻戻し方向の両方向へ回転可能となる。
(歯車と爪部材との係合状態を解除するための構成)
図15(A)は、図1に示すカートリッジ6が第2筺体14に搭載されたときの状態を説明するための図であり、図15(B)は、図15(A)のH部の拡大図である。図16(A)は、図1に示すカートリッジ6が筺体15に取り付けられたときの状態を説明するための図であり、図16(B)は、図16(A)のJ部の拡大図である。
第2筺体14には、2個の爪部材80のうちの歯車79の下端側に係合する爪部材80と歯車79との係合状態を解除するための係合解除部14aが形成されている。図15に示すように、カートリッジ6が第2筺体14に搭載されると、歯車79の下端側に係合する爪部材80に係合解除部14aが接触し、この爪部材80が、ネジリコイルバネ83の付勢力に抗して固定軸82を中心に時計方向へ回動する。爪部材80が時計方向へ回動すると、この爪部材80と歯車79との係合状態が解除される。
また、第1筺体13には、2個の爪部材80のうちの歯車79の上端側に係合する爪部材80と歯車79との係合状態を解除するための係合解除部13aが形成されている。図16に示すように、第2筺体14に搭載されたカートリッジ6が第1筺体13に上側から覆われて筺体15に取り付けられると、歯車79の上端側に係合する爪部材80に係合解除部13aが接触し、この爪部材80が、ネジリコイルバネ83の付勢力に抗して固定軸82を中心に時計方向へ回動する。この爪部材80が時計方向へ回動すると、爪部材80と歯車79との係合状態が解除される。
このように、カートリッジ6が第2筺体14に搭載されるとともに、第1筺体13に上側から覆われて筺体15に取り付けられると、2個の爪部材80と歯車79との係合状態が解除される。そのため、カートリッジ6が筺体15に取り付けられると(すなわち、カートリッジ6が本体部7に取り付けられると)、巻取ロール5は、リボン巻取方向およびリボン巻戻し方向の両方向へ回転可能となる。
(動力伝達機構の構成とリボン送り機構の動作)
図17は、図12に示す回転部材72および引張りコイルバネ73の作用を説明するための図である。
リボン送り機構10は、上述のように、本体部7の一部をなす動力伝達機構32を備えている。動力伝達機構32は、リボン送り用モータ30の出力軸に固定されるプーリ87と、第2筺体14に回転可能に支持されるプーリ88と、プーリ87とプーリ88との架け渡されるベルト89と、プーリ88と同軸上に配置されプーリ88と一緒に回転する歯車90と、歯車90に噛み合う歯車91と、歯車91に噛み合う歯車92と、歯車92に噛み合う歯車93とを備えている。歯車91、92は、第2筺体14に回転可能に支持されている。歯車93は、第1筺体13に回転可能に支持されている。また、歯車93は、リボン送りローラ28と同軸上に配置されており、リボン送りローラ28と一緒に回転する。
カートリッジ6が本体部7に取り付けられると、カートリッジ6側の歯車68と本体部7側の歯車93とが噛み合う。また、カートリッジ6が本体部7に取り付けられると、カートリッジ6側の歯車67と本体部7側の歯車90とが噛み合う。
カートリッジ6が本体部7に取り付けられた状態で、リボン送り用モータ30が時計方向に回転すると、リボン送り用モータ30の動力が巻取ロール5およびリボン送りローラ28に伝達されて、巻取ロール5およびリボン送りローラ28は、反時計方向へ回転する。すなわち、リボン送り用モータ30が時計方向に回転すると、巻取ロール5およびリボン送りローラ28は、リボン巻取方向へインクリボン3を送る。
本形態では、巻取ロール5で巻き取られるインクリボン3の巻取速度がリボン送りローラ28で送られるインクリボン3の送り速度よりも速くなっている。そのため、リボン送り用モータ30が時計方向へ回転すると、トルクリミッタ60が作用して、巻取ロール5で巻き取られるインクリボン3の巻取速度とリボン送りローラ28で送られるインクリボン3の送り速度との差が調整される。
一方、リボン送り用モータ30が時計方向に回転すると、ワンウェイクラッチ62の作用で、リボン送り用モータ30の動力の供給ロール4への伝達は遮断される。すなわち、プーリ63に対して回転軸75が空転して、リボン送り用モータ30の動力の供給ロール4への伝達が遮断される。
ここで、リボン送り用モータ30が時計方向に回転すると、巻取ロール5およびリボン送りローラ28によって、リボン巻取方向へインクリボン3が送られるため、供給ロール4は、リボン巻取方向(すなわち、反時計方向)へ回転する。供給ロール4が反時計方向へ回転すると、供給ロール4と一緒に連結部56、回転軸58、プーリ63、64も反時計方向へ回転する。本形態では、供給ロール4の筒部4bの外径がリボン送りローラ28の外径よりも大きくなっており、供給ロール4と一緒に反時計方向へ回転するプーリ63の回転速度は、リボン送り用モータ30の動力で回転する回転軸75の回転速度よりも遅くなっている。そのため、プーリ63と回転軸75との間で駆動力の干渉は生じない。
また、供給ロール4が反時計方向へ回転すると、供給ロール4、連結部56および回転軸58と一緒に回転部材72が反時計方向へ回転する。回転部材72の回転範囲は、回転規制機構(図示省略)によって規制されているため、回転部材72が反時計方向へ所定角度回転すると、回転部材72および回転軸58は停止する。回転部材72および回転軸58が停止しても、トルクリミッタ57の作用で、供給ロール4は連結部56と一緒に反時計方向へ回転し続ける。
なお、回転部材72が反時計方向へ回動すると、図17(A)に示すように、引張りコイルバネ73が伸びて、回転部材72が時計方向へ付勢される。そのため、リボン巻取方向へインクリボン3を送る際に、供給ロール4側でインクリボン3がたるむと、引張りコイルバネ73の付勢力によって、回転部材72、回転軸58および連結部56と一緒に供給ロール4が時計方向(すなわち、リボン巻取り方向)へ回転して、インクリボン3のたるみが解消される。また、回転部材72が時計方向へ付勢されている状態で、カートリッジ6が本体部7から取り外されると、引張りコイルバネ73の付勢力によって、回転部材72、回転軸58および連結部56と一緒に供給ロール4が時計方向へ回転する。そのため、本体部7からカートリッジ6が取り外される最中に、カートリッジ6で生じうるインクリボン3のたるみが解消され、図17(B)に示すように、カートリッジ6を取り外した後であっても、カートリッジ6では、インクリボン3のたるみは生じない。
また、カートリッジ6が本体部7に取り付けられた状態で、リボン送り用モータ30が反時計方向に回転すると、リボン送り用モータ30の動力が供給ロール4およびリボン送りローラ28に伝達されて、供給ロール4およびリボン送りローラ28は、時計方向へ回転する。すなわち、リボン送り用モータ30が反時計方向に回転すると、供給ロール4およびリボン送りローラ28は、リボン巻戻し方向へインクリボン3を送る。
本形態では、供給ロール4で巻き取られるインクリボン3の巻取速度がリボン送りローラ28で送られるインクリボン3の送り速度よりも速くなっている。そのため、リボン送り用モータ30が反時計方向へ回転すると、トルクリミッタ57が作用して、供給ロール4で巻き取られるインクリボン3の巻取速度とリボン送りローラ28で送られるインクリボン3の送り速度との差が調整される。なお、リボン送り用モータ30の動力で回転軸58が時計方向へ回転しても、ワンウェイクラッチ71の作用で、回転部材72は回転しない。ただし、引張りコイルバネ73の付勢力によって、回転部材72が時計方向へ付勢されている場合には、回転規制機構によって規制される位置まで、回転部材72は時計方向へ回転する。
一方、リボン送り用モータ30が反時計方向に回転すると、ワンウェイクラッチ66の作用で、リボン送り用モータ30の動力の巻取ロール5への伝達は遮断される。すなわち、回転軸61に対して歯車67が空転して、リボン送り用モータ30の動力の巻取ロール5への伝達が遮断される。
ここで、リボン送り用モータ30が反時計方向に回転すると、供給ロール4およびリボン送りローラ28によって、リボン巻戻し方向へインクリボン3が送られるため、巻取ロール5は、リボン巻戻し方向(すなわち、時計方向)へ回転する。巻取ロール5が時計方向へ回転すると、巻取ロール5と一緒に連結部59および回転軸61も時計方向へ回転する。本形態では、巻取ロール5の筒部5bの外径がリボン送りローラ28の外径よりも大きくなっており、巻取ロール5と一緒に時計方向へ回転する回転軸61の回転速度は、リボン送り用モータ30の動力で回転する歯車67の回転速度よりも遅くなっている。そのため、歯車67と回転軸61との間で駆動力の干渉は生じない。
本形態のリボン送り用モータ30は、供給ロール4および巻取ロール5を回転させるための駆動源である。また、本形態では、トルクリミッタ57は、リボン送り用モータ30から供給ロール4への動力伝達経路において、ワンウェイクラッチ62と供給ロール4との間に配置され、トルクリミッタ60は、リボン送り用モータ30から巻取ロール5への動力伝達経路において、ワンウェイクラッチ66と巻取ロール5との間に配置されている。
(インクリボンの検知機構の構成)
図18(A)は、図5に示すインクリボン3の検知機構96の構成を側面から説明するための図であり、図18(B)は、図18(A)のK−K方向から検知機構96を示す図である。
印刷装置1は、インクリボン3を検知するための検知機構96を備えている。検知機構96は、インクリボンカセット26を構成するケース本体37のカバー部37aに固定される2個のプリズム45と、本体部7に取り付けられる2個のセンサ97とを備えている。センサ97は、発光部97aと、発光部97aから射出されプリズム45で反射された光を受光する受光部97bとを有する光学式のセンサである。発光部97aと受光部97bとは、左右方向で隣り合うように配置されている。
センサ97は、カートリッジ6が本体部7に取り付けられた状態におけるプリズム45の下側に配置されている。カートリッジ6が本体部7に取り付けられると、供給ロール4から引き出されるインクリボン3は、上下方向において、プリズム45とセンサ97との間に挟まれる。本形態では、受光部97bでの受光量に基づいて、インクリボン3が検知される。
(リボン送り機構の制御方法)
リボン送り機構10は、1枚のカード2への印刷が終了すると、インクリボン3に形成されるインクの剥離跡が、インクリボンカセット26のカバー部37bの中に入るまでリボン巻取方向へインクリボン3を送る。また、リボン送り機構10は、次の1枚のカード2の印刷時に、前の1枚のカード2への印刷終了後の送り量以下の送り量でリボン巻戻し方向へインクリボン3を送る。
本形態では、1個の1画面領域3cを用いて1枚のカード2への印刷が行われており、リボン送り機構10は、1枚のカード2への印刷後、1画面領域3cの1個分以上の送り量でリボン巻取方向へインクリボン3を送る。たとえば、リボン送り機構10は、1枚のカード2への印刷後、1画面領域3cの1個分または2個分の送り量で、リボン巻取方向へインクリボン3を送る。また、リボン送り機構10は、次の1枚のカード2の印刷時に、前のカード2の印刷時に使用された1画面領域3cの次の未使用の1画面領域3cの基準位置とカード2の基準位置とが合うように、リボン巻戻し方向へインクリボン3を送る。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、動力伝達機構32、33によって、リボン送り用モータ30からの動力を供給ロール4および巻取ロール5へ伝達することが可能となっている。そのため、本形態では、1台のリボン送り用モータ30を用いて、供給ロール4と巻取ロール5との間でインクリボン3を双方向へ送ることが可能になる。したがって、本形態では、印刷装置1の構成を簡素化しつつ、供給ロール4と巻取ロール5との間でインクリボン3を双方向へ送ることが可能になる。
本形態では、歯車69とプーリ63とがワンウェイクラッチ62を介して連結され、歯車67と回転軸61とがワンウェイクラッチ66を介して連結されている。また、巻取ロール5がインクリボン3を巻き取る際には、リボン送り用モータ30の動力の供給ロール4への伝達が遮断されて、供給ロール4は、リボン送りローラ28の回転に追従して回転する。また、供給ロール4がインクリボン3を巻き取る際には、リボン送り用モータ30の動力の巻取ロール5への伝達が遮断されて、巻取ロール5は、リボン送りローラ28の回転に追従して回転する。したがって、本形態では、供給ロール4と巻取ロール5との間で双方向へインクリボン3を送るときに、インクリボン3が過度に突っ張ったり、過度にたるんだりするのを防止することが可能になる。その結果、本形態では、供給ロール4と巻取ロール5との間でインクリボン3を双方向へ適切に送ることが可能となる。
本形態では、連結部56と回転軸58とがトルクリミッタ57を介して連結され、連結部59と回転軸61とがトルクリミッタ60を介して連結されている。そのため、本形態では、上述のように、リボン送り用モータ30が時計方向へ回転するときに、トルクリミッタ60の作用で、巻取ロール5で巻き取られるインクリボン3の巻取速度とリボン送りローラ28で送られるインクリボン3の送り速度との差が調整され、リボン送り用モータ30が反時計方向へ回転するときに、トルクリミッタ57の作用で、供給ロール4で巻き取られるインクリボン3の巻取速度とリボン送りローラ28で送られるインクリボン3の送り速度との差が調整される。したがって、本形態では、供給ロール4や巻取ロール5によるインクリボン3の巻取速度をリボン送りローラ28によるインクリボン3の送り速度より速くして、供給ロール4と巻取ロール5との間で送られるインクリボン3のたるみを防止しても、インクリボン3の過度の突っ張りを防止することが可能になる。すなわち、本形態では、供給ロール4と巻取ロール5との間で送られるインクリボン3のたるみを防止しつつ、インクリボン3の過度の突っ張りを防止することが可能になる。
本形態では、回転部材72が反時計方向へ回動すると、上述のように、引張りコイルバネ73が伸びて、回転部材72が時計方向へ付勢される。そのため、本形態では、上述のように、リボン巻取方向へインクリボン3を送る際に、供給ロール4側でインクリボン3がたるんでも、このインクリボン3のたるみが解消される。また、本形態では、回転部材72が時計方向へ付勢されている状態で、カートリッジ6が本体部7から取り外されると、引張りコイルバネ73の付勢力によって供給ロール4が時計方向へ回転するため、上述のように、本体部7からカートリッジ6が取り外される最中に、カートリッジ6で生じうるインクリボン3のたるみが解消される。したがって、本形態では、本体部7からカートリッジ6が取り外されたときのインクリボン3の損傷等を抑制することが可能になり、また、カートリッジ6の取扱いも容易になる。また、本形態では、回転軸58と回転部材72とがワンウェイクラッチ71を介して連結されているため、供給ロール4がインクリボン3を巻き取る際に、リボン送り用モータ30の動力で回転軸58が時計方向へ回転しても、ワンウェイクラッチ71の作用で、回転部材72は回転しない。したがって、本形態では、供給ロール4がインクリボン3を巻き取る際に引張りコイルバネ73が支障となることはない。
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
上述した形態では、歯車69とプーリ63との間にワンウェイクラッチ62が配置されている。この他にもたとえば、歯車69とプーリ63との間にワンウェイクラッチ62が配置される代わりに、プーリ64と回転軸58との間にワンウェイクラッチが配置されても良い。また、上述した形態では、リボン巻戻し方向におけるリボン送り用モータ30の動力を供給ロール4に伝達するとともにリボン巻取方向におけるリボン送り用モータ30の動力の供給ロール4への伝達を遮断する機能を果たすワンウェイクラッチ62がカートリッジ6側に設けられているが、この機能を果たすワンウェイクラッチが本体部7側に設けられても良い。同様に、上述した形態では、リボン巻取方向におけるリボン送り用モータ30の動力を巻取ロール5に伝達するとともにリボン巻戻し方向におけるリボン送り用モータ30の動力の巻取ロール5への伝達を遮断する機能を果たすワンウェイクラッチ66がカートリッジ6側に設けられているが、この機能を果たすワンウェイクラッチが本体部7側に設けられても良い。
上述した形態では、カード2に印刷される画像と同じ形のインクの剥離跡が使用後のインクリボン3に形成されるように、リボン送り機構10は、カード2の印刷時に、リボン巻取方向へインクリボン3を順次、送っている。この他にもたとえば、カード2に印刷される画像と異なる形のインクの剥離跡が使用後のインクリボン3に形成されるように、リボン送り機構10が、カード2の印刷時に、リボン巻取方向へのインクリボン3の送りと、リボン巻戻し方向へのインクリボン3の送りとをランダムに行いながら、インクリボン3を送っても良い。すなわち、印刷装置1は、いわゆるランダム印刷を行っても良い。
上述した形態では、カートリッジ6において、供給ロール4に巻回されたインクリボン3は、カバー部37aに覆われ、巻取ロール5に巻回されたインクリボン3は、カバー部37bに覆われている。この他にもたとえば、カートリッジ6において、供給ロール4に巻回されたインクリボン3および巻取ロール5に巻回されたインクリボン3は、カバー部に覆われずに露出していても良い。また、上述した形態では、供給ロール4および巻取ロール5を有するインクリボンカセット26がカートリッジ本体部27に着脱可能となっているが、供給ロール4と巻取ロール5とが個別に着脱可能となるようにカートリッジ本体部が構成されても良い。また、インクリボンカセット26が本体部7に直接、着脱可能となるように、本体部が構成されても良い。
上述した形態では、インクリボン3は、単色の印刷のみが可能なものであるが、インクリボン3は、複数色の印刷が可能なものであっても良い。また、上述した形態では、インクリボン3は、オーバーコート領域3bを備えているが、インクリボン3は、オーバーコート領域3bを備えていなくても良い。また、上述した形態では、印刷装置1で印刷される印刷媒体は、カード2であるが、印刷装置1で印刷される印刷媒体は、印刷用紙等のカード2以外のものであっても良い。