JP5977531B2 - 摩擦調整材の製造方法 - Google Patents
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摩擦材の摩擦特性を調整する材料としては、無機系や有機系の摩擦調整材及び固体潤滑材があるが、1種類ではすべての要求を満足することが難しいため、通常2種類以上のものが組み合わされて使用されている。
摩擦調整材としては、例えば、アルミナやシリカ、マグネシア、ジルコニア、銅、アルミニウム、亜鉛等の無機系摩擦調整材や、ゴムダストやカシューダストなどの有機系摩擦調整材がある。
固体潤滑材としては、黒鉛(グラファイト)や二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、相対運動する材料表面の損傷の防止や、摩擦・摩耗の低減のために、粉末又は薄膜で利用される。
従って、本発明の第一の課題は、カシューダストの耐熱性を向上させることにより、摩擦調整材を配合した摩擦材のフェード現象を抑制し、高温での耐摩耗性を向上させることを目的とするものである。
また、本発明の第二の課題は、上述の特性を備え、かつ環境に優しい摩擦調整材を配合した、上記の優れた性能を有する摩擦材の提供を目的とするものである。
(1) カシューオイルとケイ素含有ポリマーとを含む摩擦調整材であって、該カシューオイル、該ケイ素含有ポリマー、及び硬化剤の混合物を加熱硬化し、次いで粉砕して得られる、摩擦調整材。
(2) 前記ケイ素含有ポリマーがポリカルボシラン、ポリオルガノボロシラザン、ポリボロシロキサン、ポリカルボシラザン、パーヒドロポリシラザンからなる群より選択される1又は2以上の化合物である、前記(1)に記載の摩擦調整材。
(3) 前記ケイ素含有ポリマーを5〜30質量%含有する、前記(1)又は(2)に記載の摩擦調整材。
(4) 繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む摩擦材であって、該摩擦調整材として、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の摩擦調整材を含有する摩擦材。
(5) カシューオイル、ケイ素含有ポリマー、及び硬化剤の混合物を加熱硬化し、次いで粉砕する工程を含む、摩擦調整材の製造方法。
本発明で使用するカシューオイルは、カルダノール、カルドール、メチルカルドール又はアナカルド酸を成分として含むカシューナッツシェルから抽出したオイル(リキッド)であり、主成分はカルダノールである。カルダノールはm−位に炭素数10〜30の直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基を有するフェノール誘導体で、炭化水素基にはアルケニル、ジエン又はトリエンからなる不飽和結合を含む。
カシューオイルを本発明で使用する場合、モノマー(オイル)、オリゴマー、又は変性カシューオイルのいずれの形態で使用することも可能である。
摩擦調整材中の、前記カシューオイルに対するケイ素含有ポリマーの配合割合は5〜30質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。この範囲であれば、耐熱性、耐摩耗性を有する摩擦調整材を得ることができる。
ポリカルボシランは単独重合体であってもよく、共重合体、ブロック体若しくはグラフト体又はこれらのブレンド体であってもよい。本発明における前記ポリカルボシランの数平均分子量は、通常、500〜10,000である。
より好ましくは、カシューオイル(オリゴマーも含む)とケイ素含有ポリマーを溶媒存在下で十分に撹拌して混合し、その後、硬化剤及び必要に応じて触媒を添加して、熱処理(架橋重合)により硬化させ、冷却、粉砕により、摩擦調整材を得ることができる。
さらに好ましくは、カシューオイル(オリゴマーも含む)とケイ素含有ポリマーを溶液状態で10〜30℃で1〜6時間、十分に撹拌して混合し、その後、硬化剤及び必要に応じて触媒と共に、5〜30分間攪拌、混合の後、10〜30℃で12〜36時間静置することでゲル化する。得られたゲル状混合物を150〜250℃で、1〜10時間熱処理(架橋重合)により硬化させ、冷却、粉砕により、摩擦調整材を得ることができる。
ポリカルボシランは、加熱によりセラミックス化し、加熱減量しなくなる性質を有している。そのため、カシューダスト中にポリカルボシランが仮に、分子レベルで均一に分散されていた場合、摩擦調整材におけるポリカルボシランの上記性質の効果が万遍なく発揮されると推定される。この摩擦調整材を摩擦材に添加すると、高温で発生するフェード現象を抑制し、耐摩耗性の向上効果が大きくなると考えられる。
また、反応溶媒の使用量は適宜決定すればよい。
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フルフラール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられるが、中でもフルフラール、パラホルムアルデヒド等が好ましい。
硬化剤にフルフラールを用いる場合には、触媒としてジメチル硫酸を添加するのが特に好ましい。
また、硬化剤をフルフラールの代わりにヘキサメチレンテトラミンを用いてもよい。この場合は触媒を添加する必要はなく、そのまま加熱硬化すればよい。
繊維基材としては、有機繊維、無機繊維、金属繊維が使用される。有機繊維としては、例えば芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、耐炎性アクリル繊維が使用され、無機繊維としては、例えばチタン酸カリウム繊維やアルミナ繊維等のセラミック繊維、生体溶解性無機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール等が使用され、また、金属繊維としては、例えば銅繊維やスチール繊維が使用される。
摩擦調整材としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、マイカ等の無機充填材、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、酸化クロム等の研削材、銅、アルミニウム、青銅、亜鉛等の金属粉末、各種ゴム粉末(ゴムダスト、タイヤ粉末等)、カシューダスト、メラミンダスト等の有機充填材、黒鉛(グラファイト)、二硫化モリブデン等の固体潤滑材が使用される。
これらの摩擦調整材と本発明の摩擦調整材を併用して配合することは何ら問題なく、その配合比率は当業者の裁量により決定することが出来る。
上記混合比率のうち、より好ましくは繊維基材が摩擦材全体の25〜45質量%、摩擦調整材が20〜50質量%、結合材が15〜25質量%であり、本発明の摩擦調整材は摩擦材全体の5〜15質量%がより好ましい。
ディスクブレーキ用摩擦パッドの製造における一般的な工程を以下に示す。
(a)板金プレスによりプレッシャプレートを所定の形状に成形する工程、
(b)上記プレッシャプレートに脱脂処理及びプライマー処理を施す工程、
(c)有機繊維や無機繊維、金属繊維等の繊維基材と、摩擦調整材、本発明の摩擦調整材、及び結合材等の粉末原料とを配合し、撹拌により十分に均質化した原材料を、常温にて所定の圧力で成形して予備成形体を作製する工程、
(d)上記予備成形体と接着剤が塗布されたプレッシャプレートとを、所定の温度及び圧力を加えて両部材を一体に固着する熱成形工程、
(e)アフターキュアを行って、最終的に仕上げ処理を施す工程。
本願発明における摩擦材も、このような工程により製造することができる。
(摩擦調整材Aの調製)
2000mLのフラスコにカシューオイル500gとポリカルボシラン(宇部興産(株)製)25gを取り、o−キシレン500gと混合させた。この溶液を室温で1時間攪拌してカシューオイルとポリカルボシランをよく混合した後、170℃で10時間真空乾燥して溶媒であるo−キシレンを除き、カシューオイルとポリカルボシランの混合物を回収した。
次に、得られた混合物を硬化剤であるフルフラール160gと混合し、さらに触媒のジメチル硫酸13.5gを添加し、10分間攪拌による混合の後、バットにあけて室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Aを得た。
2000mLのフラスコにカシューオイル500gとポリカルボシラン50gを取り、o−キシレン500gと混合させた。この溶液を室温で1時間攪拌してカシューオイルとポリカルボシランをよく混合した後、170℃で10時間真空乾燥して溶媒であるo−キシレンを除き、カシューオイルとポリカルボシランの混合物を回収した。
次に、得られた混合物を硬化剤であるフルフラール160gと混合し、さらに触媒のジメチル硫酸13.5gを添加し、10分間攪拌による混合の後、バットにあけて室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Bを得た。
2000mLのフラスコにカシューオイル500gとポリカルボシラン150gを取り、o−キシレン500gと混合させた。この溶液を室温で1時間攪拌してカシューオイルとポリカルボシランをよく混合した後、170℃で10時間真空乾燥して溶媒であるo−キシレンを除き、カシューオイルとポリカルボシランの混合物を回収した。
次に、得られた混合物を硬化剤であるフルフラール160gと混合し、さらに触媒のジメチル硫酸13.5gを添加し、10分間攪拌による混合の後、バットにあけて室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Cを得た。
2000mLのフラスコにカシューオイル500gを取り、硬化剤であるフルフラール160gと触媒のジメチル硫酸13.5gと、10分間攪拌混合した。その後バットにあけ、室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Dを得た。
摩擦調整材A〜Dにおける、カシューオイルに対するポリカルボシランの配合比を表1に示す。
(熱重量分析測定)
上記の方法により得られた摩擦調整材A〜Dの熱安定性試験は、セイコーインスツル(株)製の示差熱熱重量同時測定装置EXSTAR TG/DTA6300を用いて、熱重量分析(TGA)を行った。測定は、温度範囲30〜1000℃まで、昇温速度を10℃/分とした。300℃、400℃、500℃における熱重量減少量から、測定前の摩擦調整材の重量を基準として、各々の重量保持率(%)を求めた。結果を表2の摩擦調整材評価結果に示す。
上記方法により得られた摩擦調整材A〜Dと各種配合材とを、表2の摩擦材配合に記載の割合でミキサーで混合した後、予備成形型に投入し、30MPaにて加圧して予備成形を行った。これらの操作は室温で行った。次いで、予備成形体と、予め接着剤を塗布したプレッシャプレートとを熱成形型にセットし、150℃、50MPaで5分間加熱加圧成形した。得られた熱成形体を250℃で3時間熱処理を行い、摩擦材A〜Dを得た。
上記方法により得られた摩擦材A〜Dから13mm×15mm×35mmの試験片を切出し、曙エンジニアリング(株)製フリクションアナライザー摩擦試験機を用いてJASO−C406−82に準拠して摩擦試験を行い、第1フェードの最小摩擦係数と摩擦材摩耗量を測定した。結果を表2の摩擦材評価結果に示す。
また、摩擦調整材A〜Cを配合した摩擦材において、第1フェード時の最小摩擦係数が向上し、摩擦材摩耗量が減少した。これは、摩擦調整材の耐熱性の向上に起因するものであると考えられる。
これらのことから、自動車、鉄道車両、各種産業機械等のディスクパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等に好適に用いることができる。
Claims (2)
- カシューオイル、ケイ素含有ポリマー、及び硬化剤の混合物を加熱硬化し、次いで粉砕する工程を含み、前記ケイ素含有ポリマーがポリカルボシラン、ポリオルガノボロシラザン、ポリボロシロキサン、ポリカルボシラザン、パーヒドロポリシラザンからなる群より選択される1又は2以上の化合物である、摩擦調整材の製造方法。
- 前記ケイ素含有ポリマーを5〜30質量%含有する、請求項1に記載の摩擦調整材の製造方法。
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