JP5977531B2 - 摩擦調整材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、自動車、鉄道車両、産業機械などに用いられるブレーキ用摩擦材及びクラッチフェーシングに関するものであり、特に摩擦材に配合される摩擦調整材に関する。
自動車等に使用されるディスクブレーキやドラムブレーキなどのブレーキ、あるいはクラッチなどに使用される摩擦材は、摩擦作用を与え、かつその摩擦性能を調整する摩擦調整材、補強作用をする繊維基材、これらを一体化し強度を与える結合材等の材料からなっている。摩擦材は、その相手材と摩擦係合し、運動エネルギーを熱エネルギーに変える役割を担っているため、優れた耐熱性、耐摩耗性と、高い摩擦係数が必要とされる。
摩擦材の摩擦特性を調整する材料としては、無機系や有機系の摩擦調整材及び固体潤滑材があるが、1種類ではすべての要求を満足することが難しいため、通常2種類以上のものが組み合わされて使用されている。
摩擦調整材としては、例えば、アルミナやシリカ、マグネシア、ジルコニア、銅、アルミニウム、亜鉛等の無機系摩擦調整材や、ゴムダストやカシューダストなどの有機系摩擦調整材がある。
固体潤滑材としては、黒鉛(グラファイト)や二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、相対運動する材料表面の損傷の防止や、摩擦・摩耗の低減のために、粉末又は薄膜で利用される。
有機系摩擦調整材のひとつであるカシューダストは、カシューオイル(カシューナッツシェルリキッドと称することもある。)の重合物であり、摩擦係合時に溶融して摩擦材の表面に平滑な潤滑性被膜を形成し、それによって摩擦材の摩擦係数を向上すると共に安定化し、また、摩擦を少なくして摩擦材の寿命を長くする作用を有している。一方で、カシューダストは250〜300℃で熱分解し始めるため、フェード現象の一要因であると考えられている。
特許文献1では、カシューダストの耐熱性の向上のために、ホウ素又はリン化合物で変性させる方法が開示されている。ホウ素又はリン化合物によるカシューダストの耐熱性の向上は、摩擦材のフェード特性の改良につながり、高負荷時であっても十分に高い摩擦係数を確保することができる。
特開平09−48967号公報
しかしながら、カシューダストの低い耐熱性は、特許文献1のようにホウ素やリン化合物で変性すれば改善される一方で、これらはフェノール性水酸基の保護によって耐熱性を向上しているために、その変性量は2〜10重量%の範囲に限られ、耐熱性の向上効果には限度があった。また、ホウ素は環境負荷物質であるために、ホウ素化合物の使用は、環境配慮の点でも制約が課されるなど、摩擦調整材として改善の余地があった。
従って、本発明の第一の課題は、カシューダストの耐熱性を向上させることにより、摩擦調整材を配合した摩擦材のフェード現象を抑制し、高温での耐摩耗性を向上させることを目的とするものである。
また、本発明の第二の課題は、上述の特性を備え、かつ環境に優しい摩擦調整材を配合した、上記の優れた性能を有する摩擦材の提供を目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研鑽を積んだ結果、カシューオイルとポリカルボシランとを混合し、加熱硬化させることにより、高耐熱性を有する摩擦調整材を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)から(5)に関するものである。
(1) カシューオイルとケイ素含有ポリマーとを含む摩擦調整材であって、該カシューオイル、該ケイ素含有ポリマー、及び硬化剤の混合物を加熱硬化し、次いで粉砕して得られる、摩擦調整材。
(2) 前記ケイ素含有ポリマーがポリカルボシラン、ポリオルガノボロシラザン、ポリボロシロキサン、ポリカルボシラザン、パーヒドロポリシラザンからなる群より選択される1又は2以上の化合物である、前記(1)に記載の摩擦調整材。
(3) 前記ケイ素含有ポリマーを5〜30質量%含有する、前記(1)又は(2)に記載の摩擦調整材。
(4) 繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む摩擦材であって、該摩擦調整材として、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の摩擦調整材を含有する摩擦材。
(5) カシューオイル、ケイ素含有ポリマー、及び硬化剤の混合物を加熱硬化し、次いで粉砕する工程を含む、摩擦調整材の製造方法。
本発明の摩擦調製材は、カシューオイルとポリカルボシランと硬化剤の混合物を加熱硬化することで得られる、高耐熱性を有する摩擦調整材であり、該摩擦調整材を添加した摩擦材の、高温時におけるフェード現象や摩耗の増大を抑制することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するカシューオイルは、カルダノール、カルドール、メチルカルドール又はアナカルド酸を成分として含むカシューナッツシェルから抽出したオイル(リキッド)であり、主成分はカルダノールである。カルダノールはm−位に炭素数10〜30の直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基を有するフェノール誘導体で、炭化水素基にはアルケニル、ジエン又はトリエンからなる不飽和結合を含む。
カシューオイルを本発明で使用する場合、モノマー(オイル)、オリゴマー、又は変性カシューオイルのいずれの形態で使用することも可能である。
本発明の、カシューオイルに混合させる有機金属化合物は、ケイ素含有ポリマーが好ましい。具体的なケイ素含有ポリマーとしては、ポリカルボシラン、ポリオルガノボロシラザン、ポリボロシロキサン、ポリカルボシラザン、パーヒドロポリシラザン等の群からなる熱分解可能なポリマーを挙げることができる。
摩擦調整材中の、前記カシューオイルに対するケイ素含有ポリマーの配合割合は5〜30質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。この範囲であれば、耐熱性、耐摩耗性を有する摩擦調整材を得ることができる。
価格及び入手のしやすさを考えると、本発明で使用するバインダー(結合材)としては、上記ケイ素含有ポリマーの中でポリカルボシランが好ましい。本発明で使用されるポリカルボシランの種類は特に限定されないが、例えば、下記一般式I、一般式II又は一般式IIIで表される繰返し単位を少なくとも30質量%以上含む有機ケイ素重合体である。
Figure 0005977531
(式中、Rは水素原子、アルキル基又は水酸基を示し、Rはアルキル基、フェニル基又はハロゲン原子を示し、nは整数を表す。RとRは同一でもよい。)
ポリカルボシランは単独重合体であってもよく、共重合体、ブロック体若しくはグラフト体又はこれらのブレンド体であってもよい。本発明における前記ポリカルボシランの数平均分子量は、通常、500〜10,000である。
摩擦調整材の製造方法は、撹拌機を備えた反応槽にて、カシューオイル(オリゴマーも含む)とケイ素含有ポリマーと硬化剤を混合した後、加熱硬化させ、冷却、粉砕により、摩擦調整材を得ることができる。
より好ましくは、カシューオイル(オリゴマーも含む)とケイ素含有ポリマーを溶媒存在下で十分に撹拌して混合し、その後、硬化剤及び必要に応じて触媒を添加して、熱処理(架橋重合)により硬化させ、冷却、粉砕により、摩擦調整材を得ることができる。
さらに好ましくは、カシューオイル(オリゴマーも含む)とケイ素含有ポリマーを溶液状態で10〜30℃で1〜6時間、十分に撹拌して混合し、その後、硬化剤及び必要に応じて触媒と共に、5〜30分間攪拌、混合の後、10〜30℃で12〜36時間静置することでゲル化する。得られたゲル状混合物を150〜250℃で、1〜10時間熱処理(架橋重合)により硬化させ、冷却、粉砕により、摩擦調整材を得ることができる。
ここで、粉砕された摩擦調整材の粒径は特に限定されるものではなく、摩擦材に要求される特性などに応じて当業者の裁量で定めることができるが、摩擦材原材料混合時の分散性の悪化を避けるため、10〜1000μmであることが好ましく、平均粒径を100〜500μm程度にすることが更に好ましい。平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定される値である。
ポリマー状態であるカシューポリマーとケイ素含有ポリマーの粉末同士を混合する摩擦調整材の製造方法と比べると、上記摩擦調整材の製造方法は、カシューオイルとケイ素含有ポリマーを、溶媒を用いて均一に混合する点に特徴がある。よく混合した後、加熱硬化させると、分子レベルのまま、カシューダスト(カシューオイルの重縮合物)とケイ素含有ポリマーとがin situで均一に複合化された、摩擦調整材が得られるものと考えられる。また、カシューオイルとケイ素含有ポリマーの配合比を変えることにより、任意の硬さの摩擦調整材を得ることができる。
ポリカルボシランは、加熱によりセラミックス化し、加熱減量しなくなる性質を有している。そのため、カシューダスト中にポリカルボシランが仮に、分子レベルで均一に分散されていた場合、摩擦調整材におけるポリカルボシランの上記性質の効果が万遍なく発揮されると推定される。この摩擦調整材を摩擦材に添加すると、高温で発生するフェード現象を抑制し、耐摩耗性の向上効果が大きくなると考えられる。
上記反応において反応溶媒は特に制限されないが、o−キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、アセトニトリル、酢酸エチル若しくはトルエン、又はそれらの混合物を使用することができ、中でもo−キシレンが好ましい。
また、反応溶媒の使用量は適宜決定すればよい。
摩擦調整材の硬化剤としては、アルデヒド化合物、アミン化合物(例えば、ヘキサメチレンテトラミン等)、エポキシ化合物(例えば、エピクロルヒドリン等)等が挙げられるが、中でもアルデヒド化合物が好ましい。
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フルフラール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられるが、中でもフルフラール、パラホルムアルデヒド等が好ましい。
硬化剤の種類に応じて、適宜触媒の添加が必要であり、触媒としては、アミン系又は酸性の硬化触媒等が挙げられ、中でも酸性の硬化触媒が好ましい。酸性の硬化触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸などの鉱物酸、それらのアルキルエステル、シュウ酸などの有機酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸などを使用することができるが、中でも鉱物酸のアルキルエステルが好ましく、例えば、硫酸アルキルエステル、具体的には、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
硬化剤にフルフラールを用いる場合には、触媒としてジメチル硫酸を添加するのが特に好ましい。
本発明の製造方法の具体的な態様としては、カシューオイルと、カシューオイルに対して5〜30質量%のポリカルボシランとを、o−キシレンを溶媒として混合させてから脱溶媒し、硬化剤であるフルフラールと触媒であるジメチル硫酸を添加後、加熱して重合反応を進め、硬化させた摩擦調整材である。
また、硬化剤をフルフラールの代わりにヘキサメチレンテトラミンを用いてもよい。この場合は触媒を添加する必要はなく、そのまま加熱硬化すればよい。
本発明で得られた摩擦調整材は摩擦材の配合材として使用できる。摩擦材の配合に際しては、通常用いられる配合材が使用されるが、例えば、繊維基材;結合材;研削材、充填材、固体潤滑材等と呼ばれる摩擦調整材が挙げられる。
繊維基材としては、有機繊維、無機繊維、金属繊維が使用される。有機繊維としては、例えば芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、耐炎性アクリル繊維が使用され、無機繊維としては、例えばチタン酸カリウム繊維やアルミナ繊維等のセラミック繊維、生体溶解性無機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール等が使用され、また、金属繊維としては、例えば銅繊維やスチール繊維が使用される。
結合材としては、例えばフェノール樹脂(ストレートフェノール樹脂、ゴム等による各種変性フェノール樹脂を含む)、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される。
摩擦調整材としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、マイカ等の無機充填材、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、酸化クロム等の研削材、銅、アルミニウム、青銅、亜鉛等の金属粉末、各種ゴム粉末(ゴムダスト、タイヤ粉末等)、カシューダスト、メラミンダスト等の有機充填材、黒鉛(グラファイト)、二硫化モリブデン等の固体潤滑材が使用される。
これらの摩擦調整材と本発明の摩擦調整材を併用して配合することは何ら問題なく、その配合比率は当業者の裁量により決定することが出来る。
各種配合材の混合比率は、繊維基材が摩擦材全体の15〜55質量%、摩擦調整材が10〜60質量%、結合材が5〜35質量%とするのが好ましく、本発明の摩擦調整材は摩擦材全体の1〜15質量%が好ましい。
上記混合比率のうち、より好ましくは繊維基材が摩擦材全体の25〜45質量%、摩擦調整材が20〜50質量%、結合材が15〜25質量%であり、本発明の摩擦調整材は摩擦材全体の5〜15質量%がより好ましい。
摩擦材の製造は、周知の製造工程により行うことができ、例えば、予備成形、熱成形、加熱、研摩等の工程を経て摩擦材を作製することができる。
ディスクブレーキ用摩擦パッドの製造における一般的な工程を以下に示す。
(a)板金プレスによりプレッシャプレートを所定の形状に成形する工程、
(b)上記プレッシャプレートに脱脂処理及びプライマー処理を施す工程、
(c)有機繊維や無機繊維、金属繊維等の繊維基材と、摩擦調整材、本発明の摩擦調整材、及び結合材等の粉末原料とを配合し、撹拌により十分に均質化した原材料を、常温にて所定の圧力で成形して予備成形体を作製する工程、
(d)上記予備成形体と接着剤が塗布されたプレッシャプレートとを、所定の温度及び圧力を加えて両部材を一体に固着する熱成形工程、
(e)アフターキュアを行って、最終的に仕上げ処理を施す工程。
本願発明における摩擦材も、このような工程により製造することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(摩擦調整材Aの調製)
2000mLのフラスコにカシューオイル500gとポリカルボシラン(宇部興産(株)製)25gを取り、o−キシレン500gと混合させた。この溶液を室温で1時間攪拌してカシューオイルとポリカルボシランをよく混合した後、170℃で10時間真空乾燥して溶媒であるo−キシレンを除き、カシューオイルとポリカルボシランの混合物を回収した。
次に、得られた混合物を硬化剤であるフルフラール160gと混合し、さらに触媒のジメチル硫酸13.5gを添加し、10分間攪拌による混合の後、バットにあけて室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Aを得た。
(摩擦調整材Bの調製)
2000mLのフラスコにカシューオイル500gとポリカルボシラン50gを取り、o−キシレン500gと混合させた。この溶液を室温で1時間攪拌してカシューオイルとポリカルボシランをよく混合した後、170℃で10時間真空乾燥して溶媒であるo−キシレンを除き、カシューオイルとポリカルボシランの混合物を回収した。
次に、得られた混合物を硬化剤であるフルフラール160gと混合し、さらに触媒のジメチル硫酸13.5gを添加し、10分間攪拌による混合の後、バットにあけて室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Bを得た。
(摩擦調整材Cの調製)
2000mLのフラスコにカシューオイル500gとポリカルボシラン150gを取り、o−キシレン500gと混合させた。この溶液を室温で1時間攪拌してカシューオイルとポリカルボシランをよく混合した後、170℃で10時間真空乾燥して溶媒であるo−キシレンを除き、カシューオイルとポリカルボシランの混合物を回収した。
次に、得られた混合物を硬化剤であるフルフラール160gと混合し、さらに触媒のジメチル硫酸13.5gを添加し、10分間攪拌による混合の後、バットにあけて室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Cを得た。
(摩擦調整材Dの調製)
2000mLのフラスコにカシューオイル500gを取り、硬化剤であるフルフラール160gと触媒のジメチル硫酸13.5gと、10分間攪拌混合した。その後バットにあけ、室温で24時間静置することでゲル化した。
ゲル状混合物を、200℃のオーブン中で5時間加熱重合により硬化させ、冷却、粉砕過程を経ることにより、平均粒径が250μmの摩擦調整材Dを得た。
摩擦調整材A〜Dにおける、カシューオイルに対するポリカルボシランの配合比を表1に示す。
Figure 0005977531
(実施例1〜3及び比較例1)
(熱重量分析測定)
上記の方法により得られた摩擦調整材A〜Dの熱安定性試験は、セイコーインスツル(株)製の示差熱熱重量同時測定装置EXSTAR TG/DTA6300を用いて、熱重量分析(TGA)を行った。測定は、温度範囲30〜1000℃まで、昇温速度を10℃/分とした。300℃、400℃、500℃における熱重量減少量から、測定前の摩擦調整材の重量を基準として、各々の重量保持率(%)を求めた。結果を表2の摩擦調整材評価結果に示す。
(摩擦材の作製)
上記方法により得られた摩擦調整材A〜Dと各種配合材とを、表2の摩擦材配合に記載の割合でミキサーで混合した後、予備成形型に投入し、30MPaにて加圧して予備成形を行った。これらの操作は室温で行った。次いで、予備成形体と、予め接着剤を塗布したプレッシャプレートとを熱成形型にセットし、150℃、50MPaで5分間加熱加圧成形した。得られた熱成形体を250℃で3時間熱処理を行い、摩擦材A〜Dを得た。
(フェード試験)
上記方法により得られた摩擦材A〜Dから13mm×15mm×35mmの試験片を切出し、曙エンジニアリング(株)製フリクションアナライザー摩擦試験機を用いてJASO−C406−82に準拠して摩擦試験を行い、第1フェードの最小摩擦係数と摩擦材摩耗量を測定した。結果を表2の摩擦材評価結果に示す。
Figure 0005977531
表2より、フェード現象が発生しやすいとされる400℃〜500℃において、ポリカルボシランを含まない摩擦調整材Dと比べて、摩擦調整材A〜Cの重量保持率は高いことが分かる。これより、カシューオイルとポリカルボシランとを、複合することによって、摩擦調整材の加熱減量が抑制され、耐熱性が向上することが分かる。
また、摩擦調整材A〜Cを配合した摩擦材において、第1フェード時の最小摩擦係数が向上し、摩擦材摩耗量が減少した。これは、摩擦調整材の耐熱性の向上に起因するものであると考えられる。
本発明は、環境負荷物質を用いることなく、耐熱性が向上した摩擦調整材を提供するものである。この耐熱性の向上に伴い、摩擦調整材を含む摩擦材のフェード抑制及び摩耗量の改良効果が大きく認められる。
これらのことから、自動車、鉄道車両、各種産業機械等のディスクパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等に好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. カシューオイル、ケイ素含有ポリマー、及び硬化剤の混合物を加熱硬化し、次いで粉砕する工程を含み、前記ケイ素含有ポリマーがポリカルボシラン、ポリオルガノボロシラザン、ポリボロシロキサン、ポリカルボシラザン、パーヒドロポリシラザンからなる群より選択される1又は2以上の化合物である、摩擦調整材の製造方法。
  2. 前記ケイ素含有ポリマーを5〜30質量%含有する、請求項1に記載の摩擦調整材の製造方法。
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