JPH0948967A - 摩擦材 - Google Patents

摩擦材

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JPH0948967A
JPH0948967A JP19784195A JP19784195A JPH0948967A JP H0948967 A JPH0948967 A JP H0948967A JP 19784195 A JP19784195 A JP 19784195A JP 19784195 A JP19784195 A JP 19784195A JP H0948967 A JPH0948967 A JP H0948967A
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JP
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friction
boron
cashew dust
phosphorus
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JP19784195A
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Tamotsu Hayashi
保 林
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Aisin Chemical Co Ltd
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Aisin Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐フェード性を向上し、高負荷時の摩擦係数
を確保する。 【解決手段】 繊維基材と、フェノール樹脂からなる樹
脂結合剤と、カシューダスト及びその他の無機質充填剤
とを含む摩擦材において、それらのフェノール樹脂及び
カシューダストとして、ホウ素(ボロン)及びリンのう
ちの少なくとも1種で変性された変性フェノール樹脂、
及び変性カシューダストを使用する。ホウ素またはリン
の変性によって有機質成分であるフェノール樹脂とカシ
ューダストの耐熱性が共に高められるので、摩擦材の耐
フェード性が向上し、高速制動時等の高負荷時における
摩擦係数の低下を抑制し、高い摩擦係数を確保できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両、産業用機械等
において使用されるディスクブレーキパッド、ドラムブ
レーキライニング、或いはクラッチフェーシング等の摩
擦材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車等に使用されるディスクブレーキ
パッド、ドラムブレーキライニング等の摩擦材は、その
相手材であるディスクロータ、ブレーキドラムと摩擦係
合し、運動エネルギーを熱エネルギーに変える重要な役
割を担っている。そのため、摩擦材には優れた耐熱性と
耐摩耗性が必要であるだけでなく、十分に高い摩擦係数
を有することが必要であり、しかも、制動時には常に熱
を発生し高温となるため、温度変化によっても摩擦係数
の変化の少ない安定した摩擦特性が要求される。更に
は、相手材に対する攻撃性がないこと、制動時に異音
(ノイズ、鳴き)を生じないこと等も必要であり、摩擦
材に求められる特性は多項目に亘っている。
【0003】そこで、これらの各種の特性を満足するた
めに、摩擦材は複合材として構成されている。即ち、摩
擦材は、その骨格を形成するアラミド繊維、チタン酸カ
リウム繊維等の繊維基材と、この繊維基材を結合保持す
るフェノール樹脂等の樹脂結合剤と、これらの繊維と結
合剤とのマトリックス中に分散して充填される摩擦性能
を調整するための各種の充填剤とから一般に構成されて
いる。そして、この充填剤としては、硫酸バリウム、炭
酸カルシウム等の体質充填剤、グラファイト、二硫化モ
リブデン等の固体潤滑剤、カシューダスト、シリカ等の
アブレッシブ剤、或いはその他の摩擦調整のための添加
剤等が使用されている。
【0004】ここで、充填剤の一部として使用されるカ
シューダストは、フェノール誘導体であるカルダノール
及びカルドールを主成分とするカシューナットの殻液ま
たはその重合体を、アルデヒド類或いはポリアミン類か
らなる硬化剤によって加熱下で重縮合させて硬化し、こ
れを冷却した後ダスト状に粉砕したものである。そし
て、このカシューダストは、摩擦係合時に溶融して摩擦
材の表面に平滑な潤滑性皮膜を形成し、それによって摩
擦材の摩擦係数を向上すると共に安定化し、また摩耗を
少なくして摩擦材の寿命を長くする作用を有している。
更には、その潤滑性皮膜によって制動時の鳴き(ノイ
ズ)を減少する作用、つまり、鳴き性能を向上する作用
も有している。そのため、カシューダストは、摩擦材の
重要な成分の一つとして広く使用されている。
【0005】なお、このようなカシューダストとして
は、茶色の外観を呈する比較的軟質な「茶ダスト」と、
黒色の外観を呈する比較的硬質な「黒ダスト」とが代表
的である。これらは使用する硬化剤が相違するものであ
り、茶ダストは、硬化剤としてホルムアルデヒド(また
はパラホルムアルデヒド)またはヘキサミンを用いて製
造されたものであり、また、黒ダストは、フルフラール
を硬化剤として製造されたものである。そして、これら
のカシューダストはいずれも一般的に使用されている
が、摩擦係合時の鳴き(ノイズ)をより低減する上で
は、比較的柔らかい茶ダストが良いとされている。しか
し、茶ダストは一般に耐熱性が低い傾向にあり、そのた
め、摩擦係合時の発熱が特に高いディスクブレーキパッ
ドのような場合には、耐熱性がより高い黒ダストが主に
使用されている。
【0006】また他方、樹脂結合剤は、繊維基材と充填
剤を結合保持するために重要であるだけでなく、摩擦材
の耐熱性を左右し、また摩擦特性や耐摩耗性等にも大き
な影響を及ぼす。そのため、このような樹脂結合剤とし
ては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステ
ル樹脂等が使用される場合もあるが、結合性(接着性)
及び成形性に優れるだけでなく、耐熱性等にも優れたフ
ェノール樹脂が最も一般に使用されている。
【0007】このフェノール樹脂は、フェノール、クレ
ゾール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、パラホ
ルムアルデヒド等のアルデヒド類とを重縮合して得ら
れ、この場合、フェノール類を過剰として酸触媒下で反
応させることによってノボラック型樹脂が、また、アル
デヒド類を過剰としてアルカリ触媒下で反応させること
によってレゾール型樹脂が、それぞれ製造される。そし
て、ディスクブレーキパッドの場合には、そのノボラッ
ク型樹脂が一般に用いられている。
【0008】なお、このようなフェノール樹脂は、一般
にはそのまま無変性で使用されるが、その耐熱性をより
高めるために、メラミンまたはキシレン樹脂等の芳香族
炭化水素樹脂で変性して使用される場合もある。また、
そのような有機化合物による変性だけでなく、ホウ素
(ボロン)やリン(燐)の無機物質を用いて変性するこ
とも知られている。そして、そのボロンやリンで変性し
た無機変性フェノール樹脂を用いた例としては、例え
ば、特開昭59−24773号公報に開示されている。
具体的には、この公報に開示の摩擦材はスチール繊維を
繊維基材とするセミメタリック摩擦材に関しており、そ
の耐熱性を高め、高温下での摩擦特性を向上するため
に、特定の難燃剤が補助材として配合されると共に、ボ
ロン変性されたフェノール樹脂が樹脂結合剤として使用
されている。なお、ここでは、充填剤としては、黒鉛、
硫酸バリウム等の無機質の充填剤のみが使用され、上記
のカシューダストは使用されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年では、
一般の乗用自動車もその高性能化、高出力化と共に道路
環境の整備にもよって高速化が進み、それに伴なって制
動条件もますます過酷になってきている。そして、例え
ば、時速100kmを越える速度から急激な制動が行わ
れる場合や、そのような高速での制動が繰返し行われる
場合等も増加する傾向にある。
【0010】このような過酷な制動がなされる場合、ま
ず問題となるのは、多量に発生する摩擦熱によって、フ
ェードまたはこれに近い状態が生じることである。即
ち、摩擦材に含まれる有機質分が制動時の高熱下で熱分
解してガスを発生し、この分解ガスが摩擦材と相手材
(ロータ)との摩擦係合面に介在して気体潤滑作用を生
じ、その結果、摩擦係数(効き)が低下する。そして、
このような摩擦係数の低下は、制動時の作動力を強くす
ることによって補うことができるものではあるが、制動
操作の安定性の点からも好ましいものではない。
【0011】そのため、ディスクブレーキパッド等の摩
擦材においては、上記のような過酷な条件での使用を考
慮し、そのような高負荷時にも十分な摩擦係数が確保さ
れるように、その耐フェード性をより高めることが必要
になってきている。そして、この耐フェード性の向上の
ためにまず考えられることは、フェードの原因となる有
機質分である樹脂結合剤の配合量を少なくすることであ
る。しかし、樹脂結合剤は繊維基材と充填剤を結合保持
するために不可欠な成分であり、その配合量を少なくす
ることには一定の限度がある。また、例えば、摩擦材の
成形時の加圧圧力を少な目にすることによって摩擦材の
気孔率を高め、それによって、分解ガスを摩擦係合面か
ら放出解放し易くすることも知られている。しかし、こ
の方法も、気孔率が高められた分だけ摩擦材の強度も低
くなるため、耐摩耗性等が低下する欠点がある。
【0012】そこで考えられるのは、フェードの原因と
なる樹脂結合剤自体として、ホウ素(ボロン)またはリ
ンの変性により耐熱性が向上された上記の変性フェノー
ル樹脂を使用することである。なお、ホウ素またはリン
の変性によりフェノール樹脂の耐熱性が向上する理由に
ついては、一般に次のように考えられている。即ち、フ
ェノール樹脂の熱分解は、それを形成しているフェノー
ル類のフェノール性水酸基が加熱下では攻撃を受け易い
ため、その水酸基がまず攻撃されて酸化分解することに
始まり、それに続いてベンゼン環が崩壊することによっ
て進行する。ホウ素またはリンによって変性すると、そ
の攻撃を受け易いフェノール性水酸基がホウ素またはリ
ンと反応してエステル結合等によって結合され、その結
果、高熱下での攻撃も受け難くなる。そのため、ベンゼ
ン環が壊れ難くなり、残炭率も上り、耐熱性が向上す
る。
【0013】しかしながら、そのようなホウ素またはリ
ン変性フェノール樹脂を用いて実際に摩擦材を試作し、
試験してみると、ホウ素またはリンのいずれで変性した
場合にも、期待通りの結果は得られなかった。つまり、
高速制動試験時及びフェード試験時の摩擦係数は、無変
性の通常のフェノール樹脂の場合よりも確かに増加した
が、その増加は少なく、上記のような高負荷時の十分な
摩擦係数を確保するという点では不十分なものであっ
た。
【0014】そこで、本発明は、耐フェード性を向上
し、高負荷時の摩擦係数を確保することができる摩擦材
の提供を課題とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ホウ素また
はリン変性フェノール樹脂を使用しても耐フェード性が
余り向上しないことについて更に検討を重ねた結果、そ
の原因は、摩擦材に摩擦特性の向上等のために配合され
ているカシューダストにあり、その耐熱性が、比較的耐
熱性が高い黒ダストを使用しても、上記のような高速制
動時等の高負荷時にはなお不十分なためであることが分
かった。つまり、そのような高負荷時の摩擦係数を十分
に確保するためには、フェノール樹脂の耐熱性だけでな
く、それと同様の樹脂化合物からなるカシューダストの
耐熱性(耐熱分解性)も重要であるということである。
そこで、実際に、樹脂結合剤としてホウ素またはリン変
性フェノール樹脂を使用すると共に、カシューダストと
しても、同様にホウ素またはリンで変性した変性カシュ
ーダストを用いたところ、それによって、摩擦材の耐フ
ェード性が有効に向上されることが確認された。
【0016】即ち、本発明にかかる摩擦材は、繊維基材
と、フェノール樹脂からなる樹脂結合剤と、カシューダ
スト及びその他の無機質充填剤とを含む摩擦材におい
て、そのフェノール樹脂とそのカシューダストとは共
に、ホウ素(ボロン)及びリンのうちの少なくとも1種
で変性された変性フェノール樹脂、及び変性カシューダ
ストからなるものである。
【0017】このように、フェノール樹脂だけでなく、
これと同様な樹脂硬化物の粉砕物であるカシューダスト
が、ホウ素またはリンで変性されることによって、その
耐熱性が高められているので、摩擦材全体の耐熱性(耐
熱分解性)が高められ、その結果、耐フェード性が向上
され、また高負荷時の十分な摩擦係数が確保される。な
お、ホウ素またはリンの変性によってカシューダストの
耐熱性が高められる理由は、フェノール樹脂の場合と同
様であると考えられる。つまり、カシューダストはフェ
ノール誘導体であるカルダノール等を主成分とするカシ
ューナット殻液を原料として製造したものであるが、ホ
ウ素またはリンは、酸化を受け易いそのフェノール性水
酸基とエステル結合等によって結合し、酸化によるその
耐熱分解性を高める結果、残炭率が上り、耐熱性が向上
すると考えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、この摩擦材について、より
詳細に説明する。
【0019】上記のように、本発明の摩擦材において
は、樹脂結合剤であるフェノール樹脂と充填剤であるカ
シューダストとして、共に、ホウ素(ボロン,B)また
はリン(燐、P)で変性したものを使用する。即ち、樹
脂結合剤としてホウ素またはリン変性フェノール樹脂を
使用すると共に、カシューダストとしてホウ素またはリ
ン変性カシューダストを使用する。これによって、フェ
ードの原因となる摩擦材中の有機質成分であるフェノー
ル樹脂とカシューダストとの耐熱性が共に高められ、そ
の結果、耐フェード性が有効に向上され、高負荷時の十
分に高い摩擦係数を確保することができる。
【0020】このようなホウ素またはリン変性フェノー
ル樹脂は、例えば、ホウ素またはリンの酸またはその
塩、ハロゲン化物、或いは酸化物または水酸化物等を、
フェノール類とアルデヒド類との重縮合時に添加し、反
応させることによって得ることができる。また、ホウ素
またはリン変性カシューダストの場合も同様であり、カ
シューナット殻液またはその重合体とアルデヒド類また
はヘキサミンからなる硬化剤とを加熱下で重縮合させる
際に、上記のホウ素またはリン化合物を添加し、反応さ
せて変性することができる。なお、その硬化剤として
は、より高い耐熱性を得るためにフルフラールが好まし
い。つまり、ホウ素またはリン変性カシューダストは、
茶ダストよりは黒ダストの変性物であることが好まし
い。
【0021】ここで、これらの変性フェノール樹脂及び
変性カシューダストにおいて、ホウ素またはリンの変性
量は、いずれも共に、一般に2〜10重量%程度が好ま
しい。この変性量が余り少ないと耐熱性の十分な向上効
果が得られず、また、変性量が多い程耐熱性は高められ
るが、一般に10重量%を超えるとその耐熱性の向上効
果が少ないだけでなく、変性自体も技術的に困難とな
る。より好ましい変性量は、3〜7重量%である。な
お、この「変性量(重量%)」は、それらのホウ素また
はリン変性フェノール樹脂及びカシューダストを600
℃程度で燃焼して灰化し、残渣として生じた灰分(ホウ
素またはリンの酸化物)の重量を測定し、その灰分量を
当初の全体重量に対する割合として表したものである。
したがって、このホウ素またはリンの変性量は、フェノ
ール樹脂またはカシューダストの製造時に変性のために
添加したホウ素またはリンの化合物の量を、酸化物とし
て換算した場合の添加割合にほぼ等しい。
【0022】なお、これらのホウ素またはリンで変性し
たフェノール樹脂及びカシューダストは、耐熱性以外の
特性においては、無変性の場合と実質的な差異がない。
そのため、これらの変性フェノール樹脂及び変性カシュ
ーダストは、従来と同様の割合で摩擦材に配合し、使用
することができる。即ち、変性フェノール樹脂は、繊維
基材と充填剤とを十分に結合保持するために必要な分量
で配合することができ、摩擦材全体に対して、一般に5
〜20重量%の割合で配合することができる。また、変
性カシューダストについても、所望の摩擦特性を得るた
めに任意の割合で配合することができ、摩擦材全体に対
して、一般に3〜20重量%の割合で配合することがで
きる。ただし、ホウ素またはリンの変性によって耐熱性
が高められているとは言え、多量の配合は摩擦材の耐フ
ェード性を低下させる傾向がある。そのため、耐フェー
ド性の点からは、20重量%を限度として、それよりも
少ない最少限度の割合で使用することが好ましい。
【0023】また、本発明の摩擦材において、これらの
樹脂結合剤とカシューダスト以外の成分、即ち、繊維基
材及びその他の充填剤は、従来と同様である。
【0024】繊維基材、即ち、摩擦材の骨格を形成する
繊維状の成分である繊維基材しては、シリケート繊維、
アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維またはウィスカ、
ロックウール、スラグウール、カーボン繊維、或いはガ
ラス繊維等の無機繊維、スチール繊維、ステンレススチ
ール繊維、銅繊維、真鍮繊維等の金属繊維、アラミド繊
維、ノボロイド繊維、レーヨン繊維等の耐熱性のある有
機繊維等を挙げることができる。そして、これらの繊維
は、摩擦材の具体的種類または用途等に応じて、それぞ
れ単独でまたは適宜組合せて使用することができる。デ
ィスクブレーキパッドの場合、一般に、これらの無機繊
維、金属繊維、有機繊維を適切に組合せて使用すること
が好ましい。
【0025】充填剤としては、硫酸バリウム、炭酸カル
シウム等の体質充填剤の他に、グラファイト、二硫化モ
リブデン、三硫化アンチモン等の固体潤滑剤を使用する
ことができる。また、主に熱伝導性を向上するための銅
粉、亜鉛粉、真鍮粉等の金属粉、摩擦係数を向上するた
めのシリカ、アルミナ、ケイ酸ジルコニウム(ジルコ
ン)等のアブレッシブ剤、或いはその他の摩擦調整のた
めの無機質の添加剤等を適宜使用することができる。な
お、鳴き性能の向上のための充填剤として、加硫ゴムの
粉砕物であるゴムダストが知られている。しかし、この
有機質であるゴムダストは耐熱性が低いため、その使用
は耐フェード性の点から好ましくない。そのため、鳴き
性能は、例えば、変性カシューダスト等の適切な配合等
によって確保するものとして、この変性カシューダスト
以外には無機質の充填剤を使用することが好ましい。
【0026】そして、本発明にかかる摩擦材は、例え
ば、上記のホウ素またはリンで変性した変性フェノール
樹脂及び変性カシューダストと、繊維基材、及びその他
の充填剤とを混合し、この混合物を予備成形した後、加
熱加圧成形する通常の熱成形方法によって、製造するこ
とができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により更に
詳細に説明する。
【0028】〔摩擦材(パッド)の作製〕図1に示す配
合組成(重量%)で、本発明の実施例1乃至実施例5の
摩擦材を作製した。また、これらの実施例との対比のた
めに、比較例1乃至比較例3の摩擦材も合わせて作製し
た。なお、これらの実施例及び比較例の摩擦材は、具体
的には、自動車のディスクブレーキ用パッド(PD51
形)として具体化したものである。
【0029】図1のように、これらの実施例及び比較例
の摩擦材(ディスクブレーキパッド)はいずれも、繊維
基材と、フェノール樹脂からなる樹脂結合剤と、カシュ
ーダストを含む充填剤とから形成されている。ただし、
各実施例及び比較例では、それらのフェノール樹脂とカ
シューダストの種類が種々に変えられている。
【0030】ここで、摩擦材の骨格を形成する繊維基材
は、主材としてのアラミド繊維8重量%と、耐熱強度と
耐摩耗性を確保するためのチタン酸カリ繊維(チタン酸
カリウム繊維)10重量%と、耐熱強度と共に摩擦係数
を確保するためのセラミック(アルミナ−シリカ系)繊
維8重量%と、主に熱伝導性を確保するための銅繊維1
0重量%の混合物からなっている。したがって、ここで
は、摩擦材はスチール繊維を含まない非スチール系摩擦
材として形成されている。なお、これらの繊維基材の配
合は、各実施例及び比較例において同じである。
【0031】充填剤としては、有機質であるカシューダ
ストの他に、固体潤滑剤であるグラファイト8重量%
と、アブレッシブ剤であるジルコンサンド(ケイ酸ジル
コニウム)3重量%と、体質充填剤としての硫酸バリウ
ム31重量%とを使用し、各実施例及び比較例において
同じ割合で配合した。なお、これらは、いずれも無機質
の充填剤からなるものである。
【0032】これらの成分に対し、繊維基材と充填剤を
結合保持する樹脂結合剤としては、通常の無変性のフェ
ノール樹脂と、これをボロン(ホウ素)及びリンでそれ
ぞれ変性したボロン変性フェノール樹脂(変性量:4重
量%)とリン変性フェノール樹脂(変性量:4重量%)
の3種類のフェノール樹脂を使用した。
【0033】そして、これらのフェノール樹脂を、同じ
12重量%の割合で、種類を変えて各実施例及び比較例
に配合した。即ち、実施例1及び実施例2にはボロン変
性フェノール樹脂を、実施例3及び実施例4ではリン変
性フェノール樹脂を、そして実施例5ではボロン変性フ
ェノール樹脂とリン変性フェノール樹脂の6重量%ずつ
の等量混合物を、それぞれ配合した。また、比較例1及
び比較例3では無変性フェノール樹脂を使用し、比較例
2ではボロン変性フェノール樹脂を使用した。
【0034】また、カシューダストとしては、硬化剤と
してフルフラールを用いて製造した無変性のカシューダ
スト(黒ダスト)と、これを、上記のフェノール樹脂と
同様に、ボロン(ホウ素)及びリンでそれぞれ変性した
ボロン変性カシューダスト(変性量:5重量%)とリン
変性カシューダスト(変性量:4重量%)の3種類のカ
シューダストを使用した。
【0035】そして、これらのカシューダストについて
も、同じ10重量%ずつの配合割合で、種類を変えて各
実施例及び比較例において配合した。即ち、実施例1と
実施例3ではボロン変性カシューダストを、実施例2と
実施例4ではリン変性カシューダストを、そして実施例
5ではボロン変性カシューダストとリン変性カシューダ
ストの5重量%ずつの等量混合物を、それぞれ配合し
た。また、比較例1と比較例2では無変性カシューダス
トを、比較例3ではボロン変性カシューダストを使用し
た。
【0036】このように、配合割合は同じであるが、樹
脂結合剤としてのフェノール樹脂と有機質の充填剤であ
るカシューダストとの種類を変えて、各実施例及び比較
例の摩擦材を作製した。つまり、実施例1乃至実施例5
は、ボロンまたはリン変性フェノール樹脂と、ボロンま
たはリン変性カシューダストとを組合わせて使用したも
のであり、比較例1乃至比較例3はそれらの少なくとも
一方として、無変性のフェノール樹脂またはカシューダ
ストを使用したものである。
【0037】なお、これらの実施例及び比較例の摩擦材
(ディスクブレーキパッド)の作製は、通常の熱成形に
よる方法によって、具体的には次のように行った。即
ち、各種の変性または無変性フェノール樹脂とカシュー
ダストとを含む上記の配合の摩擦材原料を、V型ブレン
ダで十分均一に混合し、次いで、この粉状混合物を予備
成形金型に投入し、常温下、200kg/cm2 の圧力
で1〜2分間加圧して、予備成形した。この摩擦材の予
備成形物を、予め表面にフェノール樹脂系接着剤を塗布
した裏金と共に熱成形金型にセットし、400kg/c
2 の加圧圧力、160℃の温度で10分間熱成形し
た。そして、これを250℃で120分間熱処理して、
摩擦材を得た。
【0038】〔評価試験〕次に、作製したこれらの実施
例及び比較例の各摩擦材(ディスクブレーキパッド)に
ついて、その摩擦性能に関する評価試験を行った。
【0039】具体的には、JASO−C406−82に
準じて、擦り合わせ後の第2効力時(安定期)の高速制
動試験を行い、その時の摩擦係数μを測定した。この試
験条件は次のとおりである。 使用キャリパブレーキ型式:PD51−18V イナーシャ:4kgf・m・s2 初速度:130km/h 減速度:0.6G。
【0040】また、同じくJASO−C406−82に
準じて、上記の条件で第1フェード試験を実施し、その
第1フェード時の最小摩擦係数μを測定した。
【0041】測定したこれらの高速制動時(130km
/h制動時)の摩擦係数μと、第1フェード時の最小摩
擦係数μを、図1に合わせて示す。
【0042】〔試験結果〕図1のように、実施例1乃至
実施例5の摩擦材(ディスクブレーキパッド)は、樹脂
結合剤であるフェノール樹脂としてボロンまたはリンで
変性した変性フェノール樹脂を用い、かつ、有機質の充
填剤であるカシューダストとして同じくボロンまたはリ
ンで変性した変性カシューダストを用いたものである
が、これらはいずれも、高速(130km/h)制動時
において高い摩擦係数を保持していると共に、第1フェ
ード時においても十分な最小摩擦係数を有している。つ
まり、耐フェード性に優れ、高負荷時にも十分に高い摩
擦係数を保持している。
【0043】これらの実施例に対して、両方とも無変性
であるフェノール樹脂とカシューダストを使用した比較
例1では、高速制動時の摩擦係数が低下している。これ
は、その苛酷な制動によって、フェードに近い現象が生
じたためであると考えられる。そして、この傾向は第1
フェード時に更に顕著であり、著しく摩擦係数が低下し
ている。また、ボロン変性フェノール樹脂を使用してい
るが無変性のカシューダストを使用した比較例2と、ボ
ロン変性カシューダストを使用しているが無変性のカシ
ューダストを使用した比較例3とは、比較例1の場合よ
りも摩擦係数が増加してはいるが、その増加は僅かであ
る。
【0044】そこで、この評価試験の結果から、フェノ
ール樹脂及びカシューダストとして、ボロンまたはリン
で変性した変性フェノール樹脂及び変性カシューダスト
を共に用いることによって、摩擦材の耐フェード性を向
上し、高速制動時等の高負荷時にも十分に高い摩擦係数
を確保することができることが分かる。なお、実施例1
乃至実施例5では、変性フェノール樹脂及び変性カシュ
ーダストの変性物質がボロンであるかリンであるかにお
いて相違しているが、試験結果には特に差は生じていな
い。つまり、変性物質がボロンであるかリンであるかに
よる作用には、格別な傾向は見られない。
【0045】なお、本発明の摩擦材について、特に、デ
ィスクブレーキパッドを例として説明したが、本発明を
実施する場合は、ディスクブレーキパッドだけに限定さ
れるものではなく、ドラムブレーキのライニング、或い
はクラッチフェーシング等のその他の摩擦材にも同様に
適用することができる。また、繊維基材等の種類と配合
割合等についても、この実施例に限定されることなく、
種々に変更することができる。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかる摩擦材
は、繊維基材と、フェノール樹脂からなる樹脂結合剤
と、カシューダスト及びその他の無機質充填剤とを含む
摩擦材において、それらのフェノール樹脂とカシューダ
ストとは共に、ホウ素(ボロン,B)及びリン(P)の
うちの少なくとも1種で変性された変性フェノール樹
脂、及び変性カシューダストからなるものである。
【0047】したがって、この摩擦材においては、有機
質成分であるフェノール樹脂とカシューダストとが共に
ホウ素またはリンで変性されているので、それらの耐熱
性(耐熱分解性)が高められ、摩擦材の耐フェード性が
向上される。そのため、高速から制動を行った場合等の
高負荷時における摩擦係数の低下を抑制することがで
き、十分に高い摩擦係数を確保することができる。
【0048】即ち、本発明にかかる摩擦材によれば、耐
フェード性を向上し、高速制動時等の高負荷時の摩擦係
数を確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施例及び比較例の摩擦材
(ディスクブレーキパッド)の配合組成と、摩擦性能に
関する評価試験の結果とを示す表図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維基材と、フェノール樹脂からなる樹
    脂結合剤と、カシューダスト及びその他の無機質充填剤
    とを含む摩擦材において、 前記フェノール樹脂と前記カシューダストとは共に、ホ
    ウ素及びリンのうちの少なくとも1種で変性された変性
    フェノール樹脂、及び変性カシューダストからなること
    を特徴とする摩擦材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6479413B1 (en) * 2000-08-30 2002-11-12 Benjamin V. Booher Composite friction elements and pultrusion method of making
JP2013166888A (ja) * 2012-02-16 2013-08-29 Akebono Brake Ind Co Ltd 摩擦調整材

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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