JP5975836B2 - ゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、加工性を悪化させることなく、破壊強度、破断伸び、低発熱性、ウェットグリップ性能に優れるゴム組成物を提供することを目的とする。
1. 硫黄架橋可能なジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック1〜100質量部及び/又は無機充填材10〜150質量部と、含硫黄配合剤1〜30質量部と、スズオキサイド化合物0.1〜20質量部とを配合してなるゴム組成物。
2. 前記スズオキサイド化合物が、下記式(1)で表わされる化合物である上記1に記載のゴム組成物。
[式中、nは1又は2であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、−NRR′基(前記R、前記R′はそれぞれ独立に置換基を有してもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、又は水素である。)、ハロゲン又は水素である。]
3. 前記含硫黄配合剤が、硫黄、含硫黄シランカップリング剤及び含硫黄加硫促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1又は2に記載のゴム組成物。
4. 前記無機充填材がシリカであり、前記含硫黄配合剤が少なくとも含硫黄シランカップリング剤を含み、前記含硫黄シランカップリング剤の量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して1〜15質量部である上記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
5. 上記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用する空気入りタイヤ。
本発明のゴム組成物は、硫黄架橋可能なジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック1〜100質量部及び/又は無機充填材10〜150質量部と、含硫黄配合剤1〜30質量部と、スズオキサイド化合物0.1〜20質量部とを配合してなるゴム組成物である。
スズオキサイド化合物の構造において>Sn=Oを構成するスズは、一般的なスズ化合物同様に、含硫黄シランカップリング剤とシリカの縮合反応を促進する。さらに、>Sn=O結合を持たない一般的な4価の有機スズ化合物と比較してその求電子性(特にp軌道における求電子性)が高く、酸素や硫黄などの非共有電子対を有する元素と相互作用しやすい。また、スズオキサイド化合物においてスズ原子の周辺の空間が比較的大きく立体障害が小さいため硫黄などの高周期(原子半径が大きい。)元素とも相互作用しやすい。一方、一般的な2価のスズ化合物と比較して、スズオキサイド化合物は、ポリスルフィド結合からの脱硫反応による失活が起きにくいため、スズオキサイド化合物によって、含硫黄配合剤−ゴムの化学反応が効率的に促進され、その結果、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスに優れるゴムを、加工性を悪化させることなく得ることが可能となったと考えられる。なお上記メカニズムは本願発明者の推測であり上記メカニズム以外であっても本願発明の範囲内である。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。なかでも、ウェットグリップ性能により優れたタイヤが得られる理由から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)であることが好ましい。
ジエン系ゴムの重量平均分子量は、加工性、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスにより優れるという観点から、200,000〜2,500,000であるのが好ましい。本発明において、ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
ジエン系ゴムはその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。ジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、カーボンブラックの量は、硫黄架橋可能なジエン系ゴム100質量部に対して1〜100質量部である。カーボンブラックの量は、加工性、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスにより優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、3〜90質量部であるのが好ましく、5〜80質量部であるのがより好ましい。
シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。シリカは、ゴムの補強性の観点から湿式シリカを含むことが好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカがシランカップリング剤との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
無機充填材はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
無機充填材がシリカである場合、含硫黄配合剤が少なくとも含硫黄シランカップリング剤を含むのが、低発熱性、加工性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスにより優れるという観点から、好ましい態様の1つとして挙げられる。
なかでも、低発熱性、加工性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスにより優れるという観点から、硫黄原子が2個以上のポリスルフィド結合を有するポリスルフィド系シランカップリング剤が好ましく、硫黄原子が2〜5個のポリスルフィド結合を有するポリスルフィド系シランカップリング剤がより好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがさらに好ましい。
ポリスルフィド結合は、2つの炭素原子の間に硫黄原子を2つ及び/又はそれ以上の複数個有する結合である。炭素原子に結合する硫黄原子は脱硫しにくく、両側に硫黄原子が結合する硫黄原子は脱硫しやすい。本発明において、スズオキサイド化合物は硫黄原子が3個以上のポリスルフィド系シランカップリング剤から硫黄原子が脱硫することによるスズオキサイド化合物の失活を適度に抑制し、かつ、含硫黄配合剤−ゴムの化学反応(例えば、硫黄−ゴム、含硫黄加硫促進剤−ゴム、シリカ−含硫黄シランカップリング剤−ゴムの化学反応)を促進し、このことによって、より優れた、低発熱性、加工性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスに寄与すると本願発明者は推察する。なかでも、シリカ−含硫黄シランカップリング剤−ゴムの化学反応が特に促進され、詳細にはシリカ−含硫黄シランカップリング剤の縮合反応、含硫黄シランカップリング剤−ゴムの架橋反応の二つを同時にバランスよく促進すると考えられる。
なかでも、加工性、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスにより優れるという観点から、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
含硫黄配合剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
硫黄の量はジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であるのが好ましい。
含硫黄加硫促進剤の量はジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であるのが好ましい。
含硫黄シランカップリング剤及の量は、加工性、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスにより優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜15質量部であるのが好ましく、3〜12質量部であるのがより好ましい。
スズオキサイド化合物は有機基を有することができる。有機基はスズ原子に結合するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。有機基としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられ、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、不飽和結合を有してもよい。具体的には、例えば、置換基を有してもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、−NRR′基(前記R、前記R′はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基及び/又は水素である。)が挙げられる。置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲンなどが挙げられる。
また、スズオキサイド化合物は、スズ原子に、例えば、ヒドロキシ基(−OH基)、アミノ基(−NH2基)、ハロゲン(例えば、−F、−Cl、−Br、−I)のような官能基、水素(−H)が結合するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
[式中、nは1又は2であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、−NRR′基(前記R、前記R′はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、又は水素である。)、ハロゲン又は水素である。]
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基が挙げられる。
−NRR′基において、R、R′はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、又は水素であり、炭素数1〜20の炭化水素基は上記と同様である。−NRR′基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジシクロヘキシル基、ジフェニル基、アミノ基などが挙げられる。
ハロゲンとしては、例えば、−F、−Cl、−Br、−Iが挙げられる。
スズオキサイド化合物は、式(1)で表される化合物を少なくとも含むものとすることができる。
また、無機充填材がシリカである場合、本発明のゴム組成物が、硫黄を含まないシランカップリング剤をさらに配合するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
硫黄を含まないシランカップリング剤は特に制限されない。例えば、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、ヒドロキシシランカップリング剤が挙げられる。
また、硫黄を含まないシランカップリング剤の量は、加工性、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスにより優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜15質量部であるのが好ましく、3〜12質量部であるのがより好ましい。
添加剤としては、例えば、本発明のゴム組成物に含有される、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、アロマオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、硫黄以外の加硫剤、硫黄原子を有さない加硫促進剤、硫黄原子を有さない加硫促進助剤など、ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
本発明のゴム組成物は例えば、タイヤ、ベルト、ホースなどに使用することができる。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物をキャップトレッドに使用する空気入りタイヤである。本発明において使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。本発明の空気入りタイヤが有するキャップトレッドは本発明のゴム組成物を使用して製造される。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例について、そのタイヤ子午線方向の部分断面を模式的に表す断面図である。図1において、符号1はキャップトレッド、符号2はサイドウォール、符号3はビードである。
キャップトレッド1が本発明のゴム組成物により構成されている。
<未加硫ゴム組成物の製造>
表1、表2に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物をオープンロールで、加硫系を加えて混練し、未加硫ゴム組成物を得た。
<加硫ゴムの製造>
次に上述のとおり得られた未加硫ゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。
上述のとおり得られた、未加硫ゴム組成物、加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。結果を表1、表2に示す。表1において、結果は比較例1の値を100とする指数で示される。表2において、結果は比較例8の値を100とする指数で示される。
・tanδの測定
岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃、50℃、条件にて加硫ゴム試験片についてtanδを測定した。tanδ(0℃)は指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。tanδ(50℃)は指数が小さいほど低発熱性であることを示す。
・引張応力(モジュラス)、引張強度(破断強度、TB)、破断伸び(EB)の測定
加硫ゴム試験片からJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、加硫ゴム試験片の100%モジュラス、引張強度、破断伸びを室温にて測定した。指数の値が大きいほど、モジュラス、引張強度、破断伸びが良好なことを示す。
・ビスの測定
JIS K6300に準拠して、L形ローターを使用し、未加硫ゴム組成物のムーニー粘度ML(1+4)100℃を求めた。指数の値が小さいほど未加硫ゴム組成物の粘度が低く良好なことを示す。
・スコーチ時間の測定
JIS K6300に準拠して、125℃にて未加硫ゴム組成物の粘度が5ポイント上昇する時間(分)を測定した。指数の値が大きいほど加工性が良好なことを示す。
・E−SBR:乳化重合SBR Nipol1502、日本ゼオン社製
・ジ−n−オクチルスズオキサイド:下記式で表される化合物、北興化学工業社製DOTO
・ジ−n−オクチルスズジクロライド:(n−C8H17)2SnCl2、北興化学工業社製DOTC
・ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ:キシダ化学社製
・シリカ:湿式シリカ、日本シリカ社製ニップシールAQ、CTAB吸着比表面積170m2/g
・カーボンブラック:昭和キャボット社製ショウブラックN339M
・酸化亜鉛:正同化学社製亜鉛華3号
・ステアリン酸:日本油脂社製ステアリン酸
・老化防止剤:老化防止剤(S−13)、住友化学社製アンチゲン6C
・含硫黄シランカップリング剤:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド。ポリスルフィドとして−S4−を有する。−S4−の両端は炭素原子と結合する。エボニック・デグサ社製Si69
・オイル:昭和シェル石油社製エクストラクト4号S
・イオウ:軽井沢精錬所社製油処理硫黄
・含硫黄加硫促進剤(CZ):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学社製サンセラーCM−PO
・加硫促進剤(DPG):ジフェニルグアニジン、三新化学社製サンセラーD−G
これに対して、実施例1〜2、参考例1〜2(カーボンブラック及び無機充填材を含有する。)は、加工性を悪化させることなく、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスに優れる。
これに対して、参考例3〜4(カーボンブラックを含有する。)は、加工性を悪化させることなく、低発熱性、ウェットグリップ性能、破壊強度、破断伸び、モジュラスに優れる。
2 サイドウォール
3 ビード
4 カーカス
7 インナーライナー
8 ベルト
Claims (5)
- 硫黄架橋可能なジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック1〜100質量部と、無機充填材10〜150質量部と、含硫黄配合剤1〜30質量部と、スズオキサイド化合物0.1〜20質量部とを配合し、
前記スズオキサイド化合物が、下記式(2)で表される化合物、又は、下記式(1)で表わされる化合物を少なくとも含むものである、ゴム組成物。
- 前記含硫黄配合剤が、硫黄、含硫黄シランカップリング剤及び含硫黄加硫促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のゴム組成物。
- 前記無機充填材がシリカであり、前記含硫黄配合剤が少なくとも含硫黄シランカップリング剤を含み、前記含硫黄シランカップリング剤の量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して1〜15質量部である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- 前記スズオキサイド化合物が、下記式で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用する空気入りタイヤ。
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