JP5974093B2 - 組織保存液および組織保存方法 - Google Patents

組織保存液および組織保存方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5974093B2
JP5974093B2 JP2014526838A JP2014526838A JP5974093B2 JP 5974093 B2 JP5974093 B2 JP 5974093B2 JP 2014526838 A JP2014526838 A JP 2014526838A JP 2014526838 A JP2014526838 A JP 2014526838A JP 5974093 B2 JP5974093 B2 JP 5974093B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tissue
solution
cells
hbss
ebselen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014526838A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2014017267A1 (ja
Inventor
竜平 林
竜平 林
幸二 西田
幸二 西田
良祐 香取
良祐 香取
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka University NUC
Original Assignee
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka University NUC filed Critical Osaka University NUC
Publication of JPWO2014017267A1 publication Critical patent/JPWO2014017267A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5974093B2 publication Critical patent/JP5974093B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N1/00Preservation of bodies of humans or animals, or parts thereof
    • A01N1/02Preservation of living parts
    • A01N1/0205Chemical aspects
    • A01N1/021Preservation or perfusion media, liquids, solids or gases used in the preservation of cells, tissue, organs or bodily fluids
    • A01N1/0226Physiologically active agents, i.e. substances affecting physiological processes of cells and tissue to be preserved, e.g. anti-oxidants or nutrients

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Dentistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Physiology (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、生物を構成する組織、臓器、細胞等を保存するための組織保存液および組織保存方法に関するものである。
角膜、心臓、表皮などの分野においては、既存の治療法が有効でない重症疾患や難治性疾患に対して、患者自身の細胞を用いて作製した培養細胞シート等を用いた再生治療法が開発されており、既に臨床応用が行われている。例えば角膜分野においても、患者自身の口腔粘膜上皮や輪部上皮に存在する前駆細胞を用いて作製した培養上皮シートの移植が行われており、複数の施設において本治療法が難治性角膜疾患に極めて有効であることが実証されている。このような培養細胞シートを用いる再生治療法をより多くの患者に適用するためには、製造施設において培養上皮細胞シートを製造し、各病院へ輸送し、一定期間保存できることが重要である。また、産業化を想定した場合においては、細胞シートを一定期間保存する技術はさらに重要性が増す。
また、免疫抑制剤の進歩等により組織移植の重要性も増している。組織移植においては、組織提供者(ドナー)から摘出された組織が直ちに受容者(レシピエント)に移植されるのが理想的ではあるが、必ずしも直ちに移植できるとは限らない。そのため、摘出した組織を一定期間保存する技術は非常に重要である。したがって、今後の再生医療や組織移植の普及に当たっては、細胞シート等の再生医療製品や移植用組織(細胞、臓器を含む)の保存液の開発が必須である。
従来の組織保存液としては、例えばユーロ−コリンズ液(Euro−Collins液)、UW液(University of Wisconsin液、特許文献1)、ET−Kyoto液(特許文献2)などが知られている。
特開平1−246201号公報 特開平6−40801号公報
本発明は、生物を構成する組織、臓器、細胞等の保存性に優れ、再生医療、移植医療等の分野において有用な組織保存液を提供することを課題とする。
本発明は、上記の課題を解決するために以下の各発明を包含する。
[1]Nrf2活性化作用を有する化合物を含有することを特徴とする組織保存液。
[2]Nrf2活性化作用を有する化合物が、親電子性物質であることを特徴とする前記[1]に記載の組織保存液。
[3]Nrf2活性化作用を有する化合物が、エブセレンおよび/またはtert−ブチルヒドロキノンであることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の組織保存液。
[4]Nrf2活性化作用を有する化合物を含有するハンクス平衡塩類溶液である前記[1]に記載の組織保存液。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の組織保存液を保存対象と接触させることを特徴とする組織保存方法。
[6]ハンクス平衡塩類溶液を保存対象と接触させることを特徴とする組織保存方法。
本発明により、生物を構成する組織、臓器、細胞等の保存性に優れ、再生医療、移植医療等の分野において有用な組織保存液を提供することができる。
細胞シートの保存に用いる基礎保存溶液のスクリーニング結果を示す図であり、(A)はルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを基礎保存溶液に浸漬して7日間保存した後のATP残存量を示し、(B)は7日間保存後のルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを、KCM培地を用いて7日間再培養した後のATP残存量を示す。 細胞シートの保存に用いる基礎保存溶液への添加物のスクリーニング結果を示す図である。 ヒト由来口腔細胞シートの保存後7日目における生細胞率を測定した結果を示す図である。 保存後7日目におけるヒト由来口腔細胞シートをHE染色し、形態を観察した結果を示す図である。 保存液にエブセレン添加PBSを用いてルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを保存し、保存後7日目および再培養7日目のATP残存量を測定した結果を示す図である。 保存液にエブセレン添加Optisol GS(商品名)を用いてルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを保存し、保存後7日目および再培養7日目のATP残存量を測定した結果を示す図である。 保存後14日目におけるブタ角膜のパラフィン切片をHE染色し、形態を観察した結果を示す図である。 保存後14日目におけるブタ角膜の凍結切片をZO−1免疫染色し、形態を観察した結果を示す図である。 ヒト由来口腔細胞シートをエブセレン添加HBSSに7日間保存し、再培養を開始した後のNQO−1遺伝子の発現量を経時的に測定した結果を示す図である。 ヒト由来口腔細胞シートをエブセレン添加HBSSに7日間保存し、再培養を開始した後のHO−1遺伝子の発現量を経時的に測定した結果を示す図である。 保存液にtert−ブチルヒドロキノン添加HBSSを用いてルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを保存し、保存後7日目のATP残存量を測定した結果を示す図である。
〔組織保存液〕
本発明は、Nrf2活性化作用を有する化合物を含有する組織保存液を提供する。
本発明の組織保存溶液の保存対象には、生物を構成する全ての組織、臓器、細胞等が含まれ、いわゆる狭義の組織に限定されるものではない。保存対象の細胞には、組織や臓器を構成する細胞が含まれ、分散された状態の細胞も含まれる。組織としては、例えば、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などが挙げられる。臓器としては、例えば、脳、脊髄、胃、膵臓、膵島、腎臓、肝臓、甲状腺、骨髄、皮膚、筋肉、肺、消化管(例えば、大腸、小腸など)、血管、心臓、胸腺、脾臓、末梢血、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、骨格筋などが挙げ得られる。細胞としては、例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、膵β細胞、骨髄細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞 (例えば、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、単球など)、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞などが挙げられる。また、不妊治療などに用いる精子、卵子、受精卵なども本発明の保存液の保存対象として好適である。また、これら細胞の前駆細胞、幹細胞(間葉系幹細胞、神経前駆細胞、造血幹細胞など)、がん細胞、ES細胞、iPS細胞なども保存対象として好適である。さらに、培養技術を利用して調製した再生医療用製品も保存対象として好適である。再生医療用製品としては、例えば、培養皮膚、培養軟骨、培養角膜上皮、各種細胞シート(例えば、培養表皮細胞シート、口腔粘膜細胞シート、角膜輪部上皮細胞シート、角膜内皮細胞シート、心筋シート、筋芽細胞シート、培養軟骨細胞シート、膵島細胞シート、肝細胞シート、繊維芽細胞シート、歯根膜細胞シートなど)、再生医療用の各種培養細胞などが挙げられる。
保存対象は、どのような生物由来であってもよい。好ましくは動物由来であり、より好ましくは脊椎動物由来であり、さらに好ましくは哺乳動物由来である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット動物、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることができる。中でもヒト由来であることが特に好ましい。
本発明の組織保存液は、Nrf2活性化作用を有する化合物を含有するものであればよい。Nrf2は、哺乳類に存在する塩基性ロイシンジッパー(basic−leucine zipper)モチーフを有する転写因子の1つで、NF−E2関連因子2、Nuclear factor erythroid 2−related factor 2、 Nuclear factor erythroid 2−like 2 (Nfe2l2)、Nuclear factor erhythroid 2−related transcription factor 2などとも称される(Proc Natl Acad Sci U S A. 91 9926-30 (1994); Biochem Biophys Res Commun. 209 40-6 (1995); 生化学 78 79-92 (2006))。
Nrf2活性化作用を有する化合物は、Nrf2活性化剤と同義であり、転写因子Nrf2を活性化する作用を有するものであれば特に制限されない。例えば、Nrf2活性化剤として以下の食品成分または医薬関連成分が知られている。
食品成分:スルフォラファン(J Nutr. 131 (Suppl 11) 3027S-33S (2001))、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)(Toxicol. Appl. Pharmacol. 141 59-67 (1996))、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)(Mol Carcinog. 45 841-50 (2006)、Biochem Soc Trans. 28 (2000)、Toxicol. Appl. Pharmacol. 126, 150-55 (1994))、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(エトキシキン)(Biochem Soc Trans. 28 (2000))、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-HITC) (J.Biol.Chem. 277 3456-63 (2002))、カフェストール (Food Chem Toxicol. 40 1155-63 (2002))、カウェオール(kahweol)(Food Chem Toxicol.40 1155-63 (2002))、クルクミン(Biochem J. 371 887-95 (2003)、Am J Physiol Endocrinol Metab. 293 E645-55 (2007))、デメトキシクルクミン(Am J Physiol Endocrinol Metab. 293 E645-55 (2007))、ビスデメトキシクルクミン(Am J Physiol Endocrinol Metab. in press (2007))、ピペリン(J Nutr Biochem. 18 615-22 (2007))、フェネチルイソチオシアネート(Pharm Res. 20 1351-6 (2003))、カルノソール(carnosol)(J Biol Chem. 279 8919-29 (2004))、ゼルンボン(zerumbone)(FEBS Lett. 572 245-50 (2004))、レスベラトロール(Biochem Biophys Res Commun. 331 993-1000 (2005))、リコピン(Mol CancerTher. 4 177-86 (2005))、硫化ジアリル(Free Radic Biol Med. 37 1578-90 (2004)、Arch Biochem Biophys. 432 252-60 (2004))、三硫化ジアリル(Free Radic Biol Med. 37 1578-90 (2004))、キサントフモル(Chem Res Toxicol. 18 1296-305 (2005))、3-O-カフェオイル-1-メチルキナ酸(methylquinic acid)(Free Radic Biol Med. 40 1349-61 (2006))、クロロゲン酸(J Biol Chem. 280 27888-95 (2005))、α-リポ酸(Proc Natl Acad Sci U S A. 101 3381-6 (2004))、アセチルカルニチン(J Neurosci Res. 79 509-21 (2005))、アヴィシンス(avicins)(J Clin Invest. 113 65-73 (2004))、フィセチン(fisetin)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、ルテオリン(luteolin)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、エリオジクチオール(eriodictyol)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、ガランギン(galangin)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、エピガロカテキン-3-ガレート(Pharm Res. 22 1805-20 (2005))、ケルセチン(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006)、Free Radic Biol Med.42 1690-703 (2007))、ケルセチン3-O-β-L-アラビノピラノシド(Food Chem Toxicol. 44 1299-307 (2006))、ケルセチン3-O-β-D-グルコピラノシド(Food Chem Toxicol. 44 12 99-307 (2006))、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコース(World J Gastroenterol. 12 214-21 (2006))、アクテオシド(Pharmazie. 61 356-8 (2006))、イソフムロン(PCT/JP2005/019415)、イソコフムロン(PCT/JP2005/019415)、4-アセチル-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、4-(1-ヒドロキシ-エチル)-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、5-ヒドロキシ-3, 4, 5-トリメチル-5-H-フラン-2-オン、酢酸1-(4-メチル-5-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3-イル)-エチルエステル、(5-エチル-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-酢酸、2-フェニル-ピラン-4-オン、ジヒドロ-4-フェニル-2(3H)-フラノン、2-(2-ホルミルピロール-1-イル)-4-メチル吉草酸(特願2007-043783)、デヒドロコスタスラクトン(Eur J Pharmacol. 565 37-44 (2007))、トリフロレトールA(triphlorethol-A)(FEBS Lett. 581 2000-8 (2007))など。
医薬関連成分:oltipraz(4-メチル-5-[2-ピラジニル]-1,2-ジチオール-3-チオン)(Proc Natl Acad Sci USA 98 3410-5 (2001))、アセタミノフェン(Hepatology 39 1267-76 (2004))、アスピリン(Carcinogenesis 27, 803-10(2006))、フルナリジン(Cell Death Differ. 13 1763-75(2006))、α-ルミノール一ナトリウム(Galavit)(J Virol. 80(9):4557-69 (2006))、アポモルフィン(J Neurosci Res. 84 860-6.(2006))、ブシラミン(Biochem Pharmacol. 72 455-62 (2006))、エブセレン(Chem Res Toxicol. 19 1196-204 (2004))、デルタメトリン(Toxicol Lett. 171 87-98 (2007)、15-デオキシ-Δ(12,14)-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)(J Biol Chem. 275 11291-9 (2000))、4-ヒドロキシ-2-ノネナール(Circ Res. 94 609-16 (2004))、2-インドール-3-イル-メチレンキヌクリジン-3-オール(Cancer Res. 63 5636-45 (2003))、4-ヒドロキシエストラジオール(Biochim Biophys Acta. 1629 92-101 (2003))、3',4',5',3,4,5-ヘキサメトキシ-カルコン(Br J Pharmacol. 142 1191-9 (2004))、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエン-28-酸(Cancer Res. 65 4789-98 (2005))、1-[2-シアノ-3-,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエノ-28-イル]イミダゾール(Cancer Res. 65 4789-98 (2005))、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(Eur J Pharmacol. 56537-44 (2007))、ニトロ-リノール酸(Am J Physiol Heart Circ Physiol. 293 H770-6 (2007))、3-ヒドロキシアントラニル酸(Atherosclerosis. 187 274-84 (2006))、ビス(2-ヒドロキシベンジリデン)アセトン(Cancer Lett. 245 341-9 (2007))、2',4',6'-トリス(メトキシメトキシ)カルコン(Biochem Pharmacol. 74 870-80 (2007))など。
本発明の組織保存液は、上記のようなNrf2活性化作用を有する化合物の1種以上を含有するものであればよい。Nrf2活性化作用を有する化合物の中でも、親電子性物質が好ましい。親電子性物質は、分子中に極性の偏りによる電子密度の低い部位をもつ分子である。親電子性物質が、非ストレス状態の細胞においてNrf2の抑制に働くKeap1を刺激することにより、Nrf2がKeap1から開放されて活性化する。上記Nrf2活性化作用を有する化合物のうち、親電子性物質としては、例えば、tert−ブチルヒドロキノン(以下「tBHQ」と記す)、エブセレン、スルフォラファン、クルクミンなどが挙げられる。なかでも好ましくはtBHQおよびエブセレンである。
本発明の組織保存液は、基礎となる保存溶液(基礎保存溶液)にNrf2活性化作用を有する化合物を1種または2種以上添加し、溶解することにより製造することができる。例えば、滅菌済みの基礎保存溶液にNrf2活性化作用を有する化合物を無菌的に添加して製造してもよく、Nrf2活性化作用を有する化合物を添加した後に滅菌処理を行ってもよい。滅菌にはオートクレーブ滅菌、ろ過滅菌等の公知の滅菌法を用いることができる。製造された組織保存液は、使用時まで約2〜8℃の低温で保管することが好ましい。
本発明の組織保存液におけるNrf2活性化作用を有する化合物の含量は、保存する組織に対して毒性を示さない含量であれば特に限定されない。用いるNrf2活性化作用を有する化合物に応じて、適宜至適含量を設定すればよい。例えば、エブセレンを単独で用いる場合、0.1μM〜100μMが好ましく、より好ましくは0.5μM〜50μMであり、さらに好ましくは1μM〜10μMである。また、tBHQを単独で用いる場合、0.1μM〜100μMが好ましく、より好ましくは0.5μM〜50μM、さらに好ましくは1μM〜10μMである。
基礎保存溶液は特に限定されず、一般的な緩衝液、生理的緩衝液、平衡塩類溶液、細胞培養用の基礎保存溶液、組織保存液等の公知の溶液から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、生理食塩液、PBS、ハンクス平衡塩類溶液(以下「HBSS」と記す)、DMEM、EMEM、MEM−α、F−12、DMEM/F−12、RPMI−1640、ユーロ−コリンズ液、UW、ET−Kyoto、Optisol GS(商品名)などが挙げられる。好ましくは、PBS、HBSS、UW、ET−Kyoto、Optisol GS(商品名)であり、より好ましくは、HBSSおよびUWである。本発明の組織保存液は、保存中の組織の膨張または収縮するのを防ぐために、浸透圧が約270〜約450Osm/lの範囲にあることが好ましい。また、細胞の酸性分解を防止するために、pHが約7〜8の範囲にあることが好ましい。
〔組織保存方法〕
本発明は、上記本発明の組織保存液を用いる組織保存方法を提供する。本発明の組織保存方法は、本発明の組織保存液を保存対象の組織、臓器、細胞等と接触させるものであればよい。
本発明の組織保存方法の第1の実施形態は、保存対象の組織、臓器、細胞等を本発明の組織保存液に浸漬することにより、保存液と保存対象とを接触させて組織、臓器、細胞等を保存する方法である。保存対象に対する保存液の量は特に限定されないが、保存対象が完全に浸漬する量以上の量であればよい。
容器は特に限定されず、密封容器および解放容器のいずれも使用可能である。目的に応じて適宜選択すればよい。好ましくは、好気条件(酸素、二酸化炭素、窒素などの気体が自由に通気可能な条件)を維持できる容器である。
保存温度は特に限定されないが、−196℃〜20℃の範囲が好ましく、より好ましくは−20℃〜15℃、さらに好ましくは0℃〜10℃である。なお、本発明の組織保存液中に保存対象を浸漬して凍結保存する場合は、所望により組織保存液に公知の凍結保護剤(例えば、DMSO、グリセリン等)を添加してもよい。
保存期間は目的に応じて適宜設定することができる。通常数分〜3か月程度の保存期間を設定することができる。好ましくは30分〜1か月程度であり、より好ましくは30分〜20日間程度である。
本発明の組織保存方法の第2の実施形態は、保存対象の組織の表面に本発明の組織保存液を散布等することにより保存液と組織とを接触させて組織を保存する方法である。第2の実施形態は、本発明の組織保存液を切開手術や内視鏡手術における組織洗浄液または潅流液として使用する場合の形態である。第2の実施形態は、生体の組織をそのままの状態で短時間保存する場合に適している。第2の実施形態の保存期間は、通常1分〜10時間程度、好ましくは5分〜5時間程度、より好ましくは5分〜2時間程度である。保存期間中は、組織の表面に本発明の組織保存液を散布、潅流等することにより、組織の表面と本発明の組織保存液との接触状態を維持すればよい。
本発明者らは、Nrf2活性化作用を有する化合物を添加していないHBSSに組織(細胞シート)を保存したところ、既存の組織保存液を用いた場合より保存後のATP残存量(細胞生存率)および再培養後のATP残存量(細胞生存率)が高いことを新たに見出した。つまり、HBSSは既存の組織保存液より組織保存性に優れていることを新たに見出した(実施例1参照)。それゆえ、本発明は、HBSSを組織と接触させることを特徴とする組織保存方法を提供する。HBSSを用いる組織保存方法は、上記と同様の形態で実施することができる。
〔本発明の有用性〕
本発明の組織保存液を用いれば、既存の組織保存液を用いた場合より保存後の細胞生存率が高いことが示された。また、本発明の組織保存液にブタ角膜組織を2週間保存しても組織形態が維持されることを確認した。このように、本発明の保存液は、既存の組織保存液より組織保存性が極めて優れており、組織保存液として非常に有用である。それゆえ、移植医療分野に本発明の組織保存液を用いれば、組織提供者(ドナー)から摘出された組織を一定期間保存できるので、遠隔地の受容者(レシピエント)に移植することが可能となる。また、再生医療分野に本発明の組織保存液を用いれば、製造施設で製造した培養細胞シート等の再生医療製品を一定期間保存することができるので、再生治療法をより多くの患者に適用することが可能となる。また、本発明の組織保存液は、細胞の生存率を高く維持することが可能であるため、細胞の生存状態が極めて重要である不妊治療法の成績を向上させることができる。さらに、ES細胞やiPS細胞の保存液としても有用である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:ルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを用いた基礎保存溶液のスクリーニング〕
(1)細胞シートの作製
Luciferase tg rat(Hakamata Y,Murakami T,Kobayashi E.Transplantation 2006; 81(8): 1179−1184)口腔組織(自治医科大学先端治療開発部門 小林英司先生より提供)を1%Antibiotics and antimycotics(AbAm、Gibco)を添加したDMEM(Gibco)中で2回洗浄した。続いて、洗浄した組織を1%AbAmを添加したDMEMで溶解したDispase I (1,000 PU/ml)溶液に4℃で4時間浸漬した。Dispase処理後、0.02%EDTA溶液(nacalai tesque)へ組織を移し、室温で2分間浸漬した後、PBSで2回洗浄した。続いて、ピンセットを用いて口腔組織から基底膜とともに口腔粘膜上皮を剥離した。剥離した上皮を0.25% trypsin−EDTA溶液(Gibco)に浸漬し、37℃で20分間処理した後、10%KCM培地(Hayashi R,Yamato M,Takayanagi H,Oie Y,Kubota A,Hori Y,Okano T,Nishida K.Tissue Engineering Part C Methods 2010;16(4):553−560)で懸濁した。その後、mitomycin C処理をしたNIH/3T3を播種しておいた6 well plateに4×10cells / wellの濃度で播種し、37℃、5%COの条件下で培養した。コンフレントに達するまで培養した口腔粘膜上皮細胞を0.25% trypsin−EDTA溶液で37℃で5分間処理し、10%KCM培地で再懸濁した。続いて、細胞懸濁液を96 well plate white / clear , Tissue culture treated plate, Flat bottom with Lid (BD FalconTM) に1well当たり1 / 150量の濃度で播種し、37℃、5% COの条件下で14日間培養し、Luciferase tg rat由来口腔粘膜細胞シートを作製した。実験には、継代数 5以下の口腔粘膜上皮細胞シートを用いた。
(2)細胞シートのATP測定方法
細胞シートのATP量は細胞シートのViabilityと相関することから、保存前、保存後、および再培養後の細胞シートのATP量を測定し、細胞シートのViabilityの指標とした。細胞シートのATP測定方法は以下のとおりである。すなわち、96ウェルプレート white / clear , Tissue culture treated plateに作製したLuciferase tg rat由来口腔粘膜細胞シートをHBSSで2回洗浄した後、HBSSを190μlを添加し、4℃で1時間静置した。続いて、発光マイクロプレートリーダーCentro LB960(Berthold Technologies GmbH & Co.KG)に静置後の96ウェルプレートを準備し、機器設定によりLuciferinの添加(終濃度;0.19mg/ml)、およびATP量の測定を行った。測定は4℃で2秒間の測定を12分間行い、発光量の最大値をATP量の測定値とした。測定終了後、HBSSで3回洗浄した後、各保存液を用いて細胞シートを4℃で7日間保存した。保存期間終了後、HBSSで2回洗浄し、同様にしてATP量の測定を行った。測定後、HBSSで2回洗浄し、10%KCM200μlを添加して37℃、5%COの環境下で7日間培養をした。7日間培養した後、HBSSで2回洗浄し、再び同様の方法でATP量を測定した。
(3)保存試験および再培養試験
基礎保存溶液として、PBS、HBSS、DMEM/F12、UW、ET−KyotoおよびOptisol GS(商品名)の6種類を用いた。保存前のATP量を測定したLuciferase tg rat由来口腔粘膜細胞シートをHBSSで3回洗浄し、各基礎保存溶液300μlを添加し、4℃で7日間保存した。保存期間終了後、HBSSで2回洗浄し、ATP量を測定した。測定後、HBSSで2回洗浄し、10%KCM200μlを添加し、37℃、5%COの条件下で再培養を行った。7日間培養した後、ATP量を測定した。
(4)結果
結果を図1(A)および(B)に示した。(A)は保存後7日目のATP残存量を示し、(B)は再培養7日目のATP残存量を示す。図1(A)から明らかなように、保存後7日目のATP残存量は、HBSSが約5%で最も高く、以下UW、ET−Kyoto、Optisol GS(商品名)の順で高かった。また、図1(B)から明らかなように、再培養によりシートを再形成したのはHBSSおよびUWで保存した細胞シートであり、HBSSで保存した細胞シートのほうが再培養後のATP残存量が高く(約50%)、UWより保存性に優れていることが示された。
〔実施例2:ルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを用いた基礎保存溶液への添加物のスクリーニング〕
(1)実験方法
基礎保存溶液にHBSSを用い、添加物として、デキストラン40(0.2g/l、2g/l、20g/l)、コンドロイチン硫酸(0.01%、0.1%。1%)、N−アセチルシステイン(0.1mM、1mM、10mM)、アロプリノール(0.1mM、1mM、10mM)、グルタチオン(0.3mM、3mM、30mM)、アデノシン(0.05mM、0.5mM、5mM)、ヒアルロン酸(0.01%、0.1%、0.5%)、ジブチリルcAMP(0.2mM、2mM、20mM)、トレハロース(12mM、120mM、1200mM)およびエブセレン(1μM、10μM、100μM)の10種類を用いた。添加物の濃度はそれぞれ括弧内に示した通りとし、それぞれn=3で実験を行った。実施例1と同様にして、保存開始前と保存後7日目のATP量を測定した。
(2)結果
結果を図2に示した。図2から明らかなように、エブセレンを添加した場合に保存後7日目のATP残存量の著しい増加が認められた。
〔実施例3:ヒト由来口腔細胞シートを用いたエブセレン添加保存液の効果の検証〕
(1)細胞シートの作製
凍結保存されたHuman Oral Keratinocytes(HOK、SciencellTM Research Laboratories)を37℃で溶解し、CnT−24に懸濁した。続いて、T75フラスコに播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。コンフレントに達したHOKを0.25%Trypsin−EDTAで処理し、剥離した後、Cnt−24を添加し懸濁液とした。続いて、1200rpmで5分間遠心し、上清を除去した後、CnT−24で再懸濁した。細胞懸濁液は、5×10cellずつT75フラスコに播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。再びコンフレントに達したHOKを上記と同様の方法で剥離し、10%KCMで細胞懸濁液とした。続いて、mitomycin C処理をしたNIH/3T3を播種した35mmUpCell(登録商標、CellSeed)にHOK細胞懸濁液を3×10cellずつ播種し、37℃、5%CO条件下で14日間培養し、ヒト口腔粘膜細胞シートを作製した。
(2)保存後7日目における生細胞率の測定
保存液として、PBS、Optisol GS(商品名)、HBSSおよびエブセレン(10μM)添加HBSSを用いた。実施例1と同様に、細胞シートを保存液に浸漬し、4℃で7日間保存した。保存前と保存後7日目に生細胞率を測定した。生細胞率の測定は、7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD)染色によるフローサイトメトリー法で行った。すなわち、剥離した細胞シートの1/2を0.25%Trypsin−EDTAで処理し、細胞懸濁液とした後、5%FBSを添加したPBSで中和し、1200rpmで5分間遠心した。遠心後、上清を除去し5%FBSを添加したPBS1mlで細胞懸濁液とし、細胞数測定を行った。続いて7−AADを20μl添加し、室温、暗所で20分間静置した後、フローサイトメトリーによる解析を行った。7−AAD陰性の細胞集団を生細胞、7−AAD陽性の細胞集団を死細胞とし、生細胞率を算出した。
(3)保存後7日目における細胞シートの形態(HE染色)
細胞シートの1/4を10%ホルマリン溶液に一晩浸漬した後、パラフィン包埋した。包埋した細胞シートを3μmの厚さに切薄し、パラフィン切片を作製した。続いて、脱パラフィンを行うためにキシレンに2回、100%エタノール、99%エタノール、95%エタノール、90%エタノール、80%エタノール、70%エタノール、蒸留水の順に切片を浸漬した。続いて、TBSに5分間浸漬した後、蒸留水に通し、ヘマトキシリンで10分間染色した。ヘマトキシリン染色後、流水で10分間洗浄し、1%塩酸エタノール中で10秒間脱色した。脱色後、ただちに流水で1分間洗浄し、蒸留水に15分間浸漬した。続いて、エオジンで2分間染色し、流水で5分間洗浄した。切片を透徹、封入するために、100%エタノールに5回、キシレンに3回浸漬した後、封入剤(MGK−S、松浪硝子工業株式会社)を用いて切片を封入した。観察は、BIOREVO BZ−9000顕微鏡(KEYENCE)で対物レンズ20倍を使用して行った。
(4)生細胞率の結果
図3にフローサイトメトリーのチャートを示した。また、表1に保存前および保存後の各保存液における細胞数、生細胞率および細胞シート当たりの生細胞数を示した。図3および表1から明らかなように、エブセレン添加HBSSを用いた場合の生細胞率は91.1%であり、エブセレンを添加していないHBSSと比較して24%高く、エブセレン添加によって生細胞数は約4倍多く維持されることが示された。
(5)HE染色の結果
結果を図4に示した。図4から明らかなように、エブセレン添加HBSSで保存した細胞シートは厚さや形態が良好に維持されていた。エブセレンを添加していないHBSSで保存した細胞シートは、エブセレン添加HBSSには劣るものの厚さや形態は維持されていた。一方、PBSで保存した細胞シートは形態が大きく崩れており、Optisol GS(商品名)保存した細胞シートは重層上皮が脱落し、ほぼ単層になっていた。
〔実施例4:PBS、Optisol GS(商品名)へのエブセレンの添加〕
(1)実験方法
PBSにエブセレンを添加した保存液、またはOptisol GS(商品名)にエブセレンを添加した保存液を用いて実施例1と同様にして、保存開始前、保存後7日目および再培養7日目のATP量を測定した。エブセレンの濃度は1μM、10μMおよび100μMの3段階とした。
(2)結果
PBSの結果を図5に、Optisol GS(商品名)の結果を図6にそれぞれ示した。図5から、保存液にエブセレン添加PBSを用いた場合には、10μM以上のエブセレン添加により再培養において増殖が認められた。図6から、保存液にエブセレン添加Optisol GS(商品名)を用いた場合には、1μM以上のエブセレン添加により再培養において増殖が認められた。これらの結果から、単独では細胞シートを保存することが難しいPBSおよびOptisol GS(商品名)でも、エブセレンを添加することにより保存液として使用できることが明らかとなった。
〔実施例5:ブタ由来角膜組織を用いたエブセレン添加保存液の効果の検証〕
(1)ブタ角膜の採取
ブタ眼球の角膜輪部周辺にメスで切れ目を入れた後、強膜を2〜3mm残し鋏で取り除いた。続いて、ピンセットを用いて水晶体を取り除き、さらに実態顕微鏡下で虹彩を取り除き、強角膜片とした。
(2)保存前および14日間保存後における組織形態の対比
保存液として、PBS、エブセレン添加PBS、Optisol GS(商品名)、エブセレン添加Optisol GS(商品名)、HBSS、およびエブセレン添加HBSSの6種類を用いた。エブセレン濃度はいずれも10μMとした。9mlの保存液に採取したブタ角膜を浸漬し、4℃で14日間保存した。14日目に角膜を取り出し、鋏を用いて1/2に切断した。一方は、10%ホルマリン溶液に一晩浸漬した後、パラフィン包埋し、もう一方は、凍結切片作製用包埋剤(O.C.T.Compound、サクラファインテックジャパン株式会社)を用いて凍結ブロックとした。
ブタ強角膜片のHE染色方法は以下の通りである。パラフィン包埋した角膜組織を3μmの厚さに切薄し、パラフィン切片を作製した。続いて、脱パラフィンを行うためにキシレンに2回、100%エタノール、99%エタノール、95%エタノール、90%エタノール、80%エタノール、70%エタノール、蒸留水の順に切片を浸漬した。続いて、TBSに5分間浸漬した後、蒸留水に通し、ヘマトキシリンで10分間染色した。ヘマトキシリン染色後、流水で10分間洗浄し、1%塩酸エタノール中で10秒間脱色させた。脱色後、ただちに流水で1分間洗浄し、蒸留水に15分間浸漬した。続いて、エオジンで2分間染色し、流水で5分間洗浄した。切片を透徹、封入するために、100%エタノールに5回、キシレンに3回浸漬した後、封入剤(MGK−S、松浪硝子工業株式会社)を用いて切片を封入した。観察は、BIOREVO BZ−9000顕微鏡(KEYENCE)で対物レンズ20倍を使用して行った。
ZO−1免疫染色方法は以下の通りである。凍結包埋した角膜組織を10μmの厚さに切薄し、凍結切片を作製した。十分に乾燥させた後、0.1M TBSに5分間洗浄し、O.C.T.Compoundを除去した。続いて、5%ロバ血清(Jackson Immuno Research)、および0.3%TritonX−100を添加した0.1M TBS(5%NST)に室温で1時間浸漬し、ブロッキングを行った。5%NSTを除去した後、1%ロバ血清、および0.3%TritonX−100を添加した0.1M TBS(1%NST)にZO−1、Mouse Monoclonal Antibody(invitrogen)を終濃度5μg/mlとなるように添加した一次抗体溶液に4℃で一晩浸漬した。続いて、0.1M TBSで10分間、3回洗浄した後、1%NSTにAlexaFluor(登録商標)488 Donkey Anti−mouse IgG(invitrogen)を終濃度20μg/mlになるように添加した二次抗体溶液に室温で1時間浸漬した。二次抗体溶液を除去した後、1%NSTにbisBenzimide H33342 trihydrochlorideを終濃度10μg/mlとなるように添加した溶液に室温で1時間浸漬し、核染色した。次に、0.1M TBSで10分間、2回洗浄した後、封入剤(Mount Permafluor、Thermo scientific)を用いて封入した。観察は、ハイエンド倒立蛍光顕微鏡(Axio observer.D1、Carl Zeiss)を使用した。
(3)結果
HE染色の結果を図7に示し、ZO−1免疫染色の結果を図8に示した。図7では、PBSで保存したブタ角膜は、上皮が脱落しかけている部分が多くみられたが、エブセレン添加PBSで保存した場合は、脱落部分はみられなかった。図8から、14日間保存後において、エブセレン添加HBSSでは角膜上皮のタイトジャンクションの形成が保持されていた(図中、点線で囲った部分)。
〔実施例6:ヒト由来口腔細胞シートの再培養期間におけるNrf2関連遺伝子の発現〕
ヒト由来口腔細胞シートをHBSSにエブセレン添加した保存液を用いて4℃で7日間保存し、その後10%KCMを用いて37℃、5%COの条件下で再培養を開始した。エブセレンの濃度は1μM、10μMおよび100μMの3段階とし、コントロールとしてエブセレン無添加のHBSSを用いた。Nrf2関連遺伝子として、NQO−1およびHO−1を選択した。NQO−1は、NAD(P)H(キノンオキシドレダクターゼ1)の略称であり、キノン類を二電子還元しヒドロキノンに変換し、他の薬物代謝酵素により抱合・排出されやすい形にする酸化還元反応を触媒する酵素である。NQO−1は、その発現がNrf2の活性化により調節されていることが知られている。HO−1は、ヘムオキシゲナーゼの略称であり、ヘムを鉄イオン、一酸化炭素、ビリベルジンに分解する。さらに、ビリベルジンは還元酵素によりビリルビンとなるが、これらビリベルジン、およびビリルビンがフリーラジカルスカベンジャーとなり、生体を酸化ストレスから防御する。HO−1もNQO−1同様に、Nrf2の活性化により発現が調節されていることが知られている。
Luc tg rat由来口腔粘膜細胞シートを12well plateに作製し、保存前、保存7日後の再培養0時間後、6時間後、および24時間後にmRNAを抽出し、RNeasy plus micro kit(QIAGEN)を用いて精製した。続いて、SuperScript First−strand synthesis super mix for qRT−PCR(invitrogen)を用いて、精製したmRNAからcomplementary DNAを合成し、7500 Fast Real−Time PCR System(Applied Biosystems)を使用して、gapdh(Rn01775763_g1,Applied biosystems)、Hmox1(Rn01536933_m1,Applied biosystems)、Nqo1(Rn00566528_m1,Applied biosystems)のthreshold cycle(CT)値を測定した。次に、gapdhをハウスキーピング遺伝子として、NQO−1およびHO−1の相対的な発現量をそれぞれ算出した。
NQO−1の結果を図9に示し、HO−1の結果を図10に示した。エブセレンを10μM以上添加したHBSSで保存した細胞シートは、再培養後6時間でNQO−1およびHO−1ともに発現上昇が認められた。この結果から、エブセレンの添加によりNrf2が活性化した結果、細胞保存効果が発現していることが示唆された。
〔実施例7:ルシフェラーゼトランスジェニックラット由来口腔粘膜細胞シートを用いたtBHQの添加HBSSの効果〕
HBSSにtBHQを添加した保存液を用いて実施例1と同様にして、保存後7日目のATP量を測定した。tBHQの濃度は1μM、10μMおよび100μMの3段階とした。何も添加していないHBSSを陰性対照およびエブセレン添加HBSS(10μM)を陽性対照とした。
結果を図11に示した。図11から明らかなように、HBSSにtBHQを添加することにより、保存後7日目のATP残存量の増加が認められた。この結果から、tBHQもエブセレンと同様に保存液に添加することで細胞の生存率を向上させることが示された。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (3)

  1. Nrf2活性化作用を有する化合物を含有することを特徴とする組織保存液であって、エブセレンおよび/またはtert−ブチルヒドロキノンを含有するハンクス平衡塩類溶液である組織保存液。
  2. エブセレンを含有するハンクス平衡塩類溶液である請求項1に記載の組織保存液。
  3. 請求項1又は2に記載の組織保存液を保存対象と接触させることを特徴とする組織保存方法。
JP2014526838A 2012-07-25 2013-07-03 組織保存液および組織保存方法 Active JP5974093B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012164902 2012-07-25
JP2012164902 2012-07-25
PCT/JP2013/068283 WO2014017267A1 (ja) 2012-07-25 2013-07-03 組織保存液および組織保存方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2014017267A1 JPWO2014017267A1 (ja) 2016-07-07
JP5974093B2 true JP5974093B2 (ja) 2016-08-23

Family

ID=49997083

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014526838A Active JP5974093B2 (ja) 2012-07-25 2013-07-03 組織保存液および組織保存方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20150351380A1 (ja)
EP (1) EP2878197B1 (ja)
JP (1) JP5974093B2 (ja)
KR (1) KR102023339B1 (ja)
HK (1) HK1206934A1 (ja)
WO (1) WO2014017267A1 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015077523A1 (en) * 2013-11-22 2015-05-28 Le Centre Nationale De La Recherche Scientifique (Cnrs) Assay-ready frozen cell and method for minimizing variability in the performance thereof
US10083369B2 (en) 2016-07-01 2018-09-25 Ricoh Company, Ltd. Active view planning by deep learning
JP7037395B2 (ja) * 2018-03-15 2022-03-16 テルモ株式会社 シート状細胞培養物の製造方法
CN113151160B (zh) * 2021-05-07 2022-05-13 天津力牧生物科技有限公司 提高牛体外受精效率的方法和所用的冻存液和解冻液
CN114181901B (zh) * 2021-12-08 2024-02-02 杭州中赢生物医疗科技有限公司 一种免疫细胞的体外诱导扩增和冻存的方法

Family Cites Families (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4879283A (en) 1985-10-03 1989-11-07 Wisconsin Alumni Research Foundation Solution for the preservation of organs
US5336616A (en) * 1990-09-12 1994-08-09 Lifecell Corporation Method for processing and preserving collagen-based tissues for transplantation
JPH0733601A (ja) * 1992-04-01 1995-02-03 Ho Chen Chun 組織保存用組成物
JP3253131B2 (ja) 1992-07-24 2002-02-04 洋巳 和田 移植臓器用溶液
FR2718441B1 (fr) * 1994-04-07 1996-06-28 Bioxytech Nouveaux composés de structure benzisoséléna-zoline et -zine, leur procédé de préparation et leurs applications thérapeutiques.
JP5230042B2 (ja) * 1999-06-02 2013-07-10 株式会社ビーエムジー 動物の細胞または臓器の保存剤およびその保存方法。
US7611830B2 (en) * 2000-04-10 2009-11-03 The United States Of America As Represented By The Department Of Veteran's Affairs Device to lavage a blood vessel
JP4908718B2 (ja) * 2000-07-05 2012-04-04 株式会社大塚製薬工場 細胞・組織保存液
JP2003267801A (ja) * 2002-03-12 2003-09-25 Pharmafoods Kenkyusho:Kk 保存剤用組成物及び該組成物を含有する動物の細胞または臓器の保存剤
US20050163759A1 (en) * 2003-11-26 2005-07-28 Geliebter David M. Compositions and methods for ex vivo preservation of blood vessels for vascular grafts using inhibitors of type I and/or type II phosphodiesterases
JP4715373B2 (ja) 2005-08-01 2011-07-06 富士電機システムズ株式会社 インバータ装置
JP2009051786A (ja) * 2007-08-28 2009-03-12 Nomura Unison Co Ltd 臓器の保存方法および細胞の分離方法
GB0819530D0 (en) * 2008-10-24 2008-12-03 Univ Sheffield Methods and compositions
JP5796290B2 (ja) * 2010-12-03 2015-10-21 公益財団法人先端医療振興財団 膵島組織保存溶液及びそれを用いる方法

Also Published As

Publication number Publication date
KR20150067130A (ko) 2015-06-17
HK1206934A1 (en) 2016-01-22
EP2878197A1 (en) 2015-06-03
WO2014017267A1 (ja) 2014-01-30
EP2878197A4 (en) 2016-04-27
JPWO2014017267A1 (ja) 2016-07-07
KR102023339B1 (ko) 2019-09-20
EP2878197B1 (en) 2018-12-26
US20150351380A1 (en) 2015-12-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Malladi et al. Effect of reduced oxygen tension on chondrogenesis and osteogenesis in adipose-derived mesenchymal cells
Wang et al. Promotion of cardiac differentiation of brown adipose derived stem cells by chitosan hydrogel for repair after myocardial infarction
Yamamoto et al. Low oxygen tension enhances proliferation and maintains stemness of adipose tissue–derived stromal cells
JP5974093B2 (ja) 組織保存液および組織保存方法
RU2756561C2 (ru) Среда для формирования колоний и её применение
Wang et al. Enhanced hepatogenic differentiation of bone marrow derived mesenchymal stem cells on liver ECM hydrogel
Lim et al. Trichostatin A enhances differentiation of human induced pluripotent stem cells to cardiogenic cells for cardiac tissue engineering
CN102933703A (zh) 使用胎盘干细胞的血管生成
Collins et al. Isolation and grafting of single muscle fibres
PT103843A (pt) Método de isolamento de células precursoras a partir do cordão umbilical humano
Erker et al. Therapeutic liver reconstitution with murine cells isolated long after death
Carvalho et al. Characterization of decellularized heart matrices as biomaterials for regular and whole organ tissue engineering and initial in-vitro recellularization with ips cells
Xiang et al. Decellularized spleen matrix for reengineering functional hepatic-like tissue based on bone marrow mesenchymal stem cells
JP6626245B2 (ja) 再構成皮膚の作製用の組成物および方法
US20200163326A1 (en) Cryopreservation
Di Scipio et al. A simple protocol to isolate, characterize, and expand dental pulp stem cells
Noori et al. Decellularized lung extracellular matrix scaffold promotes human embryonic stem cell differentiation towards alveolar progenitors
Krüger et al. High level of polarized engraftment of porcine intrahepatic cholangiocyte organoids in decellularized liver scaffolds
AU2020263769B2 (en) Trehalose-containing liquid for mammalian cell preservation
Hu et al. Induced autologous stem cell transplantation for treatment of rabbit type 1 diabetes
Kim et al. Efficient cryopreservation of human mesenchymal stem cells using silkworm hemolymph‐derived proteins
KR20180075808A (ko) 중간엽 줄기세포를 심근세포로 분화시키는 방법
US20210395689A1 (en) Method for producing insulin-producing cells
WO2012133575A1 (ja) 間葉系幹細胞の細胞死抑制方法
Swaminathan et al. Developing a partially perfused liver model using caprine liver explant conditioned to the chicken extra-embryonic perfusion system

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160621

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160715

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5974093

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250