(1)実施の形態に係るイオン源用電極は、プラズマ中のイオンを加速させてイオンビームを生成するイオン源用電極であって、耐熱性でかつ線膨張係数が小さい金属板で形成され、厚み方向に貫通する複数のビーム引出し孔を有する電極板と、前記電極板よりも線膨張係数が大きくかつ熱伝導性が良好な金属製で、前記電極板をこの電極板の厚み方向と直交する方向から挟んで前記電極板に接合されたヘッダと、前記ヘッダと同種の金属製で、前記ヘッダに挿入して接合された管端部を有して前記電極板に貫通され、この貫通の方向と直交する方向に並んで配設された複数の冷却管と、を具備し、前記電極板と前記ヘッダとがこれらの接合部位の少なくとも一部を凹凸嵌合させた形態で接合され、前記凹凸嵌合が、前記電極板に形成されて前記冷却管の並び方向に間隔的に配置された複数の第1凸部に隣接した凹溝と、前記ヘッダに形成されて前記凹溝に嵌入し前記冷却管の並び方向に前記第1凸部で挟まれた第2凸部とでなされていることを特徴とする。
前記実施形態によれば、イオンビームの生成に伴って高温となる電極板を、これを貫通した冷却管に通される冷媒により冷却できる。加えて、電極板に接合されているヘッダに、電極板の熱が放出される。しかも、この放熱において、電極板とヘッダとが凹凸嵌合されていることで、伝熱面積をより多く確保できる。したがって、電極板の除熱効果が向上され、電極板の熱負荷が低減されるので、電極板の耐久性を高めることが可能である。
更に、電極板とヘッダとは凹凸嵌合された接合部位において、ヘッダより線膨張係数が小さい電極板が有する複数の第1凸部で、電極板より線膨張係数が大きいヘッダの第2凸部が、複数の冷却管の並び方向に挟まれている。これにより、電極が高温となることに伴って、ヘッダが冷却管の並び方向に膨張することが抑制され、その結果、電極板とヘッダとの線膨張係数の差に起因して前記接合部位において冷却管に作用するせん断力を低減できる。したがって、せん断力を原因とする冷却管の損傷による冷媒の漏れが抑制されるに伴い、漏れ出る冷媒を原因とする電極板の腐食を防止することが可能である。
(2)前記(1)のイオン源用電極において、前記ヘッダが、前記第2凸部を複数有するとともに、これら第2凸部に隣接し前記第1凸部が嵌入される凹溝を複数有し、前記第2凸部と前記電極板が有する前記凹溝との嵌合、及び前記第1凸部と前記ヘッダが有する前記凹溝との嵌合が、前記冷却管の並び方向に沿って前記接合部位の略全体にわたっていることが好ましい。
前記(2)の実施形態によれば、電極板からヘッダへの伝熱面積をより多く確保できるとともに、より多くの箇所で冷却管の並び方向へのヘッダの膨張を抑制できる。
(3)前記(1)又は(2)のイオン源用電極において、前記第1凸部及びこれに隣接した前記電極板の凹溝と、この凹溝に嵌合された前記第2凸部とが、夫々ダブテールで形状であることが好ましい。
前記(3)の実施形態によれば、電極が高温となることに伴って、ヘッダが冷却管の軸方向へ膨張することが抑制される。この結果、高温状態から電極の温度が下がってヘッダが冷却管の軸方向に熱収縮するに伴って、冷却管の管端部をその根元において座屈させようとする力が低減される。したがって、座屈を原因とする冷却管の損傷による冷媒の漏れが抑制されるので、漏れ出る冷媒を原因とする電極板の腐食を防止することが可能である。
(4)前記(1)から(3)のうちのいずれかのイオン源用電極において、前記冷却管に嵌合される複数の溝を有した二枚の電極板材で前記電極板が形成され、これら電極板材の前記溝が形成された面同士が接合されて、二枚の前記電極板材で前記冷却管が挟まれていることが好ましい。
前記(4)の実施形態によれば、冷却管を通すための通孔を電極板に加工すること、及びこの通孔に冷却管を挿通させる手間が不要となるので、コストを低減することが可能である。これとともに、溝を形成する凹面が冷却管の中間部位の周方向全体に接合されるので、電極板を冷却管で冷却する効果を高めることも可能である。
(5)前記(1)から(4)のうちのいずれかのイオン源用電極において、前記ヘッダが、前記管端部が挿入された第1ヘッダ部材と、この第1ヘッダ部材に被着された第2ヘッダ部材とを有し、前記各管端部の先端を夫々閉じる栓を取付けるとともに、前記第1ヘッダ部材に前記各管端部に夫々連通する孔を形成し、前記第2ヘッダ部材に、前記各冷却管の並び方向に延びて前記各孔に連通するヘッダ溝と、このヘッダ溝に連通され前記各冷却管より少数の出入口を形成することが好ましい。
前記(5)の実施形態によれば、冷媒を通すためにヘッダに設けられる出入口の数が冷却管の数より少ないので、出入口に接続される配管数を減らすことが可能である。
(6)実施の形態に係るイオン源用電極の製造方法は、プラズマ中のイオンを加速させてイオンビームを生成するイオン源用電極の製造方法であって、両端に夫々形成された複数の第1凸部及び厚み方向に貫通した複数のイオン引出し孔を有するモリブデン焼結体製の電極板と、前記両端から夫々突出される管端部を有し前記電極板を貫通して前記厚み方向と直交する方向に並んで配設された銅又は銅合金製の複数の冷却管を有する電極本体部を準備するとともに、前記第1凸部間に形成された凹溝に嵌入し前記第1凸部により前記冷却管の並び方向に挟まれる第2凸部及び前記管端部が挿入される複数の管通孔を夫々有する銅又は銅合金製のヘッダを準備する工程と、前記管通孔に前記管端部を夫々挿入するとともに前記凹溝と前記第2凸部とを嵌合させることにより、前記電極板を挟んで前記ヘッダを夫々配置して、前記電極本体部と前記ヘッダとを組み合わせてなる電極アッセンブリを仮組みする工程と、前記管端部と前記管通孔との接合部を、真空又は不活性ガスの雰囲気下でシール溶接する工程と、シール溶接が施された前記電極アッセンブリを接合容器本体に収納するとともに、前記接合容器本体に容器蓋を被せた上で、これら接合容器本体と容器蓋をシール溶接して接合容器を組立てる工程と、前記接合容器を熱間等方圧加圧装置に収納し、前記電極アッセンブリを外気から遮断する工程と、前記熱間等方圧加圧装置を動作させて前記電極アッセンブリを熱間等方圧加圧法で処理することにより、前記電極板と前記冷却管と前記ヘッダの各接合部を接合する工程と、前記熱間等方圧加圧装置から前記接合容器を取出す工程と、前記接合容器を解体し、前記接合により一体化された前記電極アッセンブリを取出す工程と、を備えることを特徴とする。
前記(6)の実施形態によれば、熱間等方圧加圧法によって、モリブデン製の電極板と銅又は銅合金製の冷却管とを接合するとともに、これら電極板及び冷却管と銅又は銅合金製のヘッダを接合したので、各部品相互を位置合わせできるとともに強固に接合できる。これにより製造されたイオン源用電極は、高熱負荷に曝される電極板から冷却管及びヘッダへの放熱性能が向上されることに加えて、電極板とヘッダとが凹凸嵌合された接合部位において、電極板からヘッダへの伝熱面積をより多く確保できる。したがって、電極板の除熱効果を高められる。
これとともに、製造されたイオン源用電極は、ヘッダより線膨張係数が小さい電極板が有する第1凸部で、電極板より線膨張係数が大きいヘッダの第2凸部を、複数の冷却管の並び方向に挟んでいるので、電極が高温となることに伴い、ヘッダが冷却管の並び方向へ膨張することが抑制される。その結果、電極板とヘッダとの線膨張係数の差に起因して前記接合部位において冷却管に作用するせん断力が低減される。
以上のようにように(6)の実施形態により製造された電極は、電極板の冷却効率が高いとともに、耐久性が高く、かつ、せん断力を原因とする冷却管の損傷による冷媒の漏れによる電極板の腐食を防止することができる。
(7)前記(6)のイオン源用電極の製造方法で、前記電極本体部を用意する工程においては、前記冷却管の管端部以外の中間部位に嵌合される溝が片面に複数有するとともに、前記第1凸部及び前記凹溝を形成する凹凸形状の縁部を有する二枚の電極板材を準備し、二枚の前記電極板材の溝を向き合わせ、向かい合った前記溝間に前記中間部位が配置されるように、二枚の前記電極板材で前記冷却管を挟んで前記電極板を組立てて、前記電極本体部を形成することが好ましい。
前記(7)の実施形態によれば、冷却管を通すための通孔を電極板に加工すること、及びこの通孔に冷却管を挿通させる手間が不要となるので、コストを低減することが可能である。これとともに、溝を形成する凹面が冷却管の周方向全体に接合されるので、電極板を冷却管で冷却する効果を高めることも可能である。
(8)前記(7)のイオン源用電極の製造方法において、前記管通孔及び前記第2凸部が形成された第1枠部、及びこの第1枠部と同様に前記管通孔及び前記第2凸部が形成された第2枠部を有する銅又は銅合金製の四角い枠体を用意し、前記第1、第2の枠部が有する前記管通孔に前記冷却管の管端部を夫々挿入して、前記冷却管を前記第1枠部と第2枠部にわたって配設した後、前記枠体内に、二枚の前記電極板材を収納した上で、これら電極板材を覆う銅又は銅合金製の第1蓋を収納するとともに、この第1蓋を前記枠体とともに覆う銅又は銅合金製の第2蓋を収納して、前記電極アッセンブリを仮組みシ、この仮組みにより形成された前記接合容器を前記熱間等方圧加圧法で処理し、処理された前記接合容器に機械加工を施して、前記電極アッセンブリに相当する部分以外の余分な部分を除去して前記電極アッセンブリに相当する部分を残すことが好ましい。
前記(8)の実施形態によれば、複数の冷却管を枠体の第1枠部と第2枠部にわたって配設することで、各冷却管を適正に位置決めできる。この位置決め下において、枠体内に二枚の電極板材を収容することで、これら電極板材に形成された溝の夫々が冷却管の中間部位をくるむように嵌合される。それにより、電極板に冷却管を一本一本通す面倒な手間を要することなく、電極板と冷却管とが適正に組み合わされる。この上で、枠体に第1蓋と第2蓋を収納することで、熱間等方圧加圧法で処理するのに好適な電極アッセンブリに相当する構造を有した接合容器が仮組みされる。更に、この後、熱間等方圧加圧法で処理された接合容器の不要部分を除去することでイオン源用電極とする。したがって、前記(8)の実施形態によれば、イオン源用電極の製造性を向上することが可能である。
以下、添付の図面を参照して種々の好ましい実施の形態を説明する。
まず、実施形態のイオン源用電極が利用される核融合装置の関連部分の構成について概要を説明する。
図1に示すように、核融合装置に用いられる中性粒子入射装置31のイオン源32は、水素等の第1のガス33が導入されフィラメント34を有するプラズマ生成部35において、当該フィラメント34を介してアーク放電を行うことによりプラズマを生成する。更に、イオン源32は、電源37により電極列38の各電極36に高電圧を夫々印加して、電界を形成する。この電界によって、前記プラズマ中の第1のガス33が電離したイオンを、プラズマから引出して加速し、高エネルギーを有する高速のイオンビーム40が生成される。
イオンビーム40はそのままでは核融合装置のコイルの磁場によって曲げられてしまう。このため、イオン源32は、第2のガス41を満たした中性化セル39にイオンビーム40を通過させる。それにより、イオンビーム40は、イオンと第2のガス41との衝突反応により運動エネルギーを保存したまま中性粒子ビーム42に変換される。この中性粒子ビーム42は炉心プラズマ43に入射される。
前述したイオン源におけるイオン加速用の電極列38は、平行に離間配置された3段あるいは5段(図示しない)の電極36により構成される。電極36に複数形成されたビーム引出し孔を通してプラズマからイオンビームが引出される。イオン源32に最も近い1段目の電極36は高温のイオンビーム40と直接接触する。各電極36は、電極自体の熱負荷を下げて耐久性を向上させるための冷却手段を備えている。この冷却手段は、以下の各実施形態で詳細に説明するが、電極全体を効果的に冷却するために、ビーム引出し孔と干渉しないように配置された冷却管を有する。
(第1の実施の形態)
図2〜図8を参照して第1の実施の形態を説明する。
図2及び図3に示すように、第1実施形態のイオン源用電極(以下、単に電極と略称する。)36は、電極板1と、複数の冷却管11と、二個のヘッダ15とを備える。電極板1と各冷却管11とにより電極本体部Aが構成される。更に、この電極本体部Aと各ヘッダ15とにより電極36が構成される。
電極板1は、高熱負荷に耐えることができるような耐熱性を有しかつ線膨張係数が小さい金属製である。この種の金属として、モリブデンの焼結体を好適に使用できる。電極板1を構成するモリブデンの融点は例えば2630℃であり、かつ、同モリブデンの線膨張係数は25℃で5.43×10−6・℃−1である。なお、電極板1をなす金属材料としては、モリブデンに代えて、例えばタンタルの焼結体等を用いることも可能である。
電極板1は、平板であり、その厚みは、3mm〜6mm程度、例えば5mmである。この電極板1の形状は、例えば四角形状をなしているが、これに限らず円形等であっても差し支えない。電極板1は一対の接合部位1aを有する。接合部位1aは、図2及び図3に示すように電極板1の形状が長方形である場合、その長手方向一端部と他端部が担っている。
電極板1は、プラズマからイオンビームを引き出すためのビーム引出し孔2を複数有する。これらビーム引出し孔2は電極板1の全域にわたって規則的例えば縦横に整列する形態で配列されている。各ビーム引出し孔2は、例えば丸孔であり、その両端は電極板1の厚み方向両側面に夫々開放されている。
電極板1は冷却管11と同数の通孔3(図4及び図5参照)を有する。各通孔3は例えば丸孔であり、その径は、冷却管11の外径と略同じで、例えば2mm〜3mmである。これら通孔3は、各ビーム引出し孔2と交叉しないように設けられ、その両端はヘッダ15が接続される電極板1の接合部位1aに夫々開放されている。
このため、電極板1の例えば長手方向に並べられた複数のビーム引出し孔2からなる孔列と、通孔3とは、電極板1を図2に示すように平面視した場合に、前記孔列及び通孔3が延びる方向と直交する方向に交互に設けられている。
電極板1はその接合部位1aに複数の第1凸部4を有する。一対の接合部位1aのうちの一方に形成された第1凸部4と、一対の接合部位1aのうちの他方に形成された第1凸部4とは、互に遠ざかる方向に突出されている。これら第1凸部4の両側面は平行である。
各第1凸部4は、冷却管11の並び方向、換言すれば、互に平行な通孔3の並び方向に間隔的に設けられている。各第1凸部4の先端面に通孔3の端が開放されている。
第1凸部4に隣接する複数の凹溝5が接合部位1aに夫々形成されている。各凹溝5の幅は、変化がなく一定となるように第1凸部4によって規定されている。これら凹溝5と第1凸部4とは、第1実施形態では接合部位1aの略全体にわたって、前記孔列及び通孔3が延びる方向とは直交する方向、換言すれば、長方形状の電極板1の短手方向に交互に設けられている。したがって、第1実施形態では接合部位1aは櫛形形状をなしている。
冷却管11は、電極板1よりも線膨張係数が大きくかつ熱伝導性が良好な金属製である。この種の金属として、銅(純銅)又は銅合金を好適に使用できる。純銅は純度99.99%以上の無酸素銅が好ましい。銅合金には、Cu−Ag系合金、Cu−Cr−Zn系合金、Cu−Ni系合金、Cu−Ag−Ni系合金、Cu−Ni−Al系合金、Cu−Ni−Zn系合金等を使用できる。これらの銅又は銅合金は、高温耐食性に優れ、かつ、高温・高圧の負荷環境で高い信頼性を有する。
各冷却管11は例えば無酸素銅からなる継目無し管である。これらの冷却管11は通孔3の形状に対応した丸パイプである。各冷却管11の全長は、電極板1の接合部位1aにわたる長さよりも長い。各冷却管11の外径は例えば3mmであり、厚みは0.5mmである。
各冷却管11は通孔3を貫通して電極板1に拡散接合により一体化されている。こうして電極板1を貫通した各冷却管11は、それらの貫通の方向(冷却管11の軸方向)と直交する方向に並んで配置されている。各冷却管11の両端部は夫々電極板1から突出されている。このように突出された端部を、ここでは管端部11aと称する。
各ヘッダ15は、夫々冷却管11と同種の金属、即ち銅(純銅)又は銅合金製である。ヘッダ15は、例えばベース部位15aとこれに折れ曲がるように連続した管接続部15bとを有する一体構造のブロックで形成されている。ベース部位15aと管接続部15bとは一体に形成されているが、別々の部材をろう付け等で一体化されていてもよい。
ヘッダ15の厚みは電極板1の厚みに等しい。ヘッダ15の幅は、電極板1の幅(各冷却管11が並んだ方向の両端間の寸法)に等しい。ヘッダ15の概略サイズは次の通りである。縦350mm、横50mmである。ベース部位15aの厚さは5mmである。管接続部15bの高さは15mmである。
ベース部位15aは、冷却管11と同数の管通孔16を有する。これらの管通孔16の径と配設間隔は、電極板1の通孔3の径と配設間隔と同じである。
ベース部位15aの先端部は接合部位15cをなしている。接合部位15cに、複数の第2凸部18が、互に平行な管通孔16の並び方向に間隔的に設けられている。各第2凸部18の先端面に管通孔16の端が開放されている。なお、管通孔16は、その端を次に説明する各凹溝19に開放させて設けることも可能である。
第2凸部18に隣接する複数の凹溝19が接合部位15cに夫々形成されている。これら凹溝19と第2凸部18とは、第1実施形態では接合部位15cの略全体にわたってヘッダ15の幅方向に交互に設けられている。したがって、第1実施形態において接合部位15cは櫛形形状をなしている。各凹溝19の幅は、変化がなく一定となるように第2凸部18によって規定されている。
管接続部15bは、例えば管通孔16と同数の出入口17を有する。これら出入口17は管通孔16に直角に連続した形態でこの管通孔16に連通されている。各出入口17は管接続部15bの先端面に開放され、これらの出入口17には図示しない配管が例えば挿入して接続される。
各ヘッダ15の接合部位15cと電極板1の接合部位1aとは凹凸嵌合されている。即ち、接合部位1aの第1凸部4と接合部位15cの凹溝19とが嵌合されているとともに、接合部位1aの凹溝5と接合部位15cの第2凸部18とが嵌合されている。それにより、各第2凸部18はこれに隣接した第1凸部4で冷却管11の並び方向に挟まれている(図12参照)。更に、ヘッダ15の管通孔16に、冷却管11の管端部11aが挿入されている。
したがって、二個のヘッダ15は、電極板1をこの電極板1の厚み方向と直交する方向から挟んで配置されている。この配置により、ヘッダ15のベース部位15aと電極板1とは面一に連続される。これらヘッダ15と電極板1、及びヘッダ15と各冷却管11の管端部11aとは拡散接合により一体化されている。
二個のヘッダ15は、多数の冷却管11に冷媒として例えば純水を均等に分配するための部材である。そのため、一方側のヘッダ15に出入口17に純水が図示しない冷却媒体供給源から供給されることに伴い電極36を水冷できる。つまり、供給された純水が、前記一方側のヘッダ15の出入口17を通って各冷却管11に流入するとともに、これら冷却管11を流通した純水が、他方側のヘッダ15の出入口17を通って、電極36外に流出される。
次に、第1実施形態のイオン源用電極36を製造する方法を説明する。
まず、電極板1、複数の冷却管11、及び一対のヘッダ15を準備する。この場合、準備されたヘッダ15は、それに管通孔16は形成されているが、出入口17は形成されていない構成物である。更に、準備された各部品の接合予定面を所定の表面粗さに仕上げる。この仕上げは、サンドペーパー研磨、バフ研磨、化学薬液と硬質微粒子を組み合わせた研磨法で行うことができる。例えば、バフ研磨で接合予定面を仕上げる場合は、表面粗さを5S以下となるように仕上げる。
こうして用意された電極板1と複数の冷却管11とを組み合わせて電極本体部Aを準備する。電極本体部Aは、電極板1の各通孔3に冷却管11を夫々貫通させることにより形成される。この場合、各冷却管11はその管端部11aが、電極板1の接合部位1aから夫々突出されるように電極板1に貫通される。
次に、電極アッセンブリBを形成する。ここで、電極アッセンブリBとは、後述する熱間等方圧加圧法により接合される前の状態の電極を指している。この電極アッセンブリBは、電極板1の接合部位1aとヘッダ15の接合部位15cとを凹凸嵌合させるとともに、各管端部11aをヘッダ15の管通孔16に挿入することにより形成する。それにより、接合部位1aの第1凸部4に隣接した凹溝5に、接合部位15cの第2凸部18が嵌入されるとともに、電極板1をその長手方向に挟んで二個のヘッダ15が配置される。こうして、電極本体部Aとヘッダ15とが組み合わされた電極アッセンブリBが形成される。
この後、電極アッセンブリBにおけるシール対象箇所例えば管通孔16とこれに挿入された管端部11aとの間を、真空又は不活性ガスの雰囲気下でシール溶接する。この溶接により、後述する拡散接合のために用いられる高温・高圧のガスが、冷却管11と電極板1及びヘッダ15との各接合部に侵入することがないように構成された電極アッセンブリBを得ることができる。なお、図4中に符号20で、シール溶接が施された跡、つまり、シール溶接部を示す。
このシール溶接には電子ビーム溶接を採用できる。真空下で電子ビーム溶接をする場合、電極アッセンブリBを図示しない真空容器に収納し、この容器内を脱気した状態で、溶接対象部をシール溶接する。電極アッセンブリBが収納された真空容器を完全に脱気するために30分以上真空排気をした上で、溶接対象部に対するシール溶接を、電子ビームを用いて行った。この場合、冷却管11の肉厚が薄いために、電子ビーム溶接のビーム電流などの制御を的確に行って、健全なシール溶接を行った。
なお、シール溶接後に真空容器を解体して取出された電極アッセンブリBについて、シール溶接部20の健全性の確認は、溶接ビード外観検査、蛍光探傷試験、或いは必要に応じてヘリウムリーク試験などを実施することによって行なった。
次いで、図6に示すようにシール溶接部20を有する電極アッセンブリBを容器本体12に収納する。この場合、各冷却管11の両端開口は容器本体12の側壁に開口された状態とする。この後、容器本体12に容器蓋13を被せてから、容器本体12と容器蓋13とをシール溶接するとともに、容器本体12と各冷却管11の両端とをシール溶接して、密封された接合容器14(図7参照)を組立てる。図7中符号14aは容器本体12と容器蓋13との間のシール溶接部を示す。
なお、接合容器14のシール溶接には電子ビーム溶接を採用した。電子ビーム溶接は、接合容器14内の空気を完全に脱気するために、真空排気を30分以上行った後に、実行した。又、接合容器14の気密性は、前記と同様に溶接ビード外観検査、蛍光探傷試験、或いは必要に応じてヘリウムリーク試験などを実施することによって、評価した。
次に、熱間等方圧加圧方法により電極アッセンブリBの接合部を拡散接合により一体化するために、まず、シール溶接部20を有する電極アッセンブリBが格納された接合容器14を、図8に示す熱間等方圧加圧装置21が有する加圧容器22に収納して外気から遮断する。加圧容器22は、容器本体と、これに被さる蓋とを有する。
この後、熱間等方圧加圧装置21を動作させて接合容器14を熱間等方圧加圧法で処理する。この場合の処理手順は以下の通りである。
まず、第1バルブV1を開けて真空ポンプ24を起動し、加圧容器22の内部を真空排気した。加圧容器22内の真空度が10-2パスカル程度に到達したところで、真空ポンプ24を停止させ、第1バルブV1を閉じて脱気を完了する。
次いで、第2バルブV2を開けて高圧ポンプ25を起動し、加圧容器22の中に高圧のアルゴンガスを注入し充填した。この場合、まず、初期圧の設定値とした10メガパスカル程度まで昇圧した。次いで、加圧容器22内の加熱ヒータ26に通電して昇温を開始した。昇温と共に加圧容器22内のガス圧力が上昇する。高圧ポンプ25はその駆動と停止を繰り返した。
これにより、熱間等方圧加圧処理の接合条件である温度900℃〜1000℃例えば900℃で、ガス圧力100メガパスカル〜150メガパスカルの範囲内の圧力、例えば147メガパスカルまで加圧し、この状態を2時間〜7時間例えば2時間保持した。なお、図8中の矢印27は、ガス圧力の方向を示した。このガス圧により接合容器14全体を等方圧で加圧することができる。
その後、加熱ヒータ26への通電を切るとともに、高圧ポンプ25を停止させ、第2バルブV2を閉じ、別のバルブ(図示せず)を開けることにより、加圧容器22内の高圧力のガスを放出し、常温・常圧まで冷却・降圧させた。このとき、放出されたガスの回収を行った。
こうして電極アッセンブリBが収容された接合容器14を熱間等方向加圧処理することにより、電極板1と冷却管11との接触部、冷却管11とヘッダ15との接触部、および電極板1の接合部位1aとヘッダ15の接合部位15cでの接触部(凹凸嵌合部)を、夫々固相接合(溶融しないで接合する方法)により一体化した。
特に、この等方圧加圧処理によれば、冷却管11の内部に高温・高圧のガスが入って、冷却管11が膨張される。この一方で、電極板1とヘッダ15とがその周囲から作用する圧力で圧縮される。それにより、電極板1と冷却管11、及び冷却管11とヘッダ15とが、それらの接触面において拡散接合される。したがって、電極36は、それを構成する複数の部品が、強固で健全に接合されることにより一体化された構造物として製造される。
前記熱間等方向加圧処理後に、加圧容器22内の圧力、温度がそれぞれ大気圧と常温に近い状態になった後に、加圧容器22の蓋を開いて接合容器14を取出す。更に、この接合容器14を解体して電極36を取出した。
この状態で、取出された電極36のシール溶接部20を切削や研削等により除去するとともに、所定の形状にする上で必要とされる機械加工を施した。
次いで、図4に示す銅製の栓28を各冷却管11の両端にそれぞれ溶接し、各冷却管11の両端開口を塞ぐ。更に、ヘッダ15の管接続部15bにドリル刃を挿入して出入口17を夫々加工して、これら出入口17を冷却管11の管端部11aに夫々連通させる。
以上のようにして、高熱負荷対応のイオン源用の電極36を得ることができた。
この電極36において、ヘッダ15は熱伝導性に優れた銅又は銅合金で作られている。これにより、ヘッダ15に接合された銅又は銅合金製の冷却管11を流れる純水などの冷媒との間での熱交換が迅速になる。
加えて、ヘッダ15の接合部位15cと電極板1の接合部位1aとが凹凸嵌合された形態で接合されている。これにより、電極板1からヘッダ15への伝熱面積が増える。特に、第1実施形態では、接合部位1aと接合部位15cが、共に電極36の略全幅にわたる櫛形形状をなしていて、それらが凹凸嵌合した形で接合されている。
このため、より伝熱面積を大きく確保できる。したがって、電極板1からヘッダ15への除熱が向上される。
以上説明したように第1実施形態の電極36によれば、その電極板1の冷却効率を向上することが可能であり、それに伴い電極36の耐久性を向上できる。
更に、電極36の電極板1と冷却管11及びヘッダ15は、その線膨張係数の違いにより、既述した製造時及び使用時とその停止に伴って膨張・収縮を伴う。具体的には、胴又は銅合金からなる冷却管11及びヘッダ15は、モリブデン製の電極板1より大きく膨張及び収縮をする。
しかし、ヘッダ15の接合部位15cに形成された第2凸部18は、電極板1の接合部位1aに形成された複数の第1凸部4間の凹溝5に嵌入された状態で、電極板1の幅方向(具体的には各冷却管11が並んだ方向)に第1凸部4により挟まれている。このため、各冷却管11の管端部11aの根元に、前記膨張・収縮に伴って冷却管11の軸方向に直交する方向(これは前記幅方向と同じである。)のせん断力が、与えられることが抑制される。これに伴い、各冷却管11が損傷して漏水する虞が解消されるので、漏水を原因として電極板1が腐食することも防止できる。
したがって、第1実施形態によれば、耐久性が向上され、高い信頼性を有する。
(第2の実施の形態)
図9〜図19に示す第2実施形態は、以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。なお、以下の説明では、必要により図8等も参照する。
第2実施形態は、電極板が二枚の電極板材を接合した構成であること、ヘッダが二部材で構成されていること、ブッシュ及び補強板を更に備えた構成であること、及び製造方法において四角い枠材を用いること等が、第1実施形態とは異なる。
電極板1をなす二枚の電極板材51は、図14に示すように同形状であり、しかも、図18に示すように複数の溝52と、凹凸形状をなした縁部53を有する。二枚の電極板材51の厚みは、同一であることが好ましいが、異なっていても差し支えない。
複数の溝52は、電極板材51の片面に互に平行に形成され、これら溝52の両端は図19に示すように縁部53に夫々開放されている。各溝52が延びる方向に直交する方向の溝断面形状は、例えば半円形状である。二枚の電極板材51が接合された状態で、対向する溝52は断面が円形の通孔3(図12参照)を形成する。なお、第2実施形態において、通孔3の端は、接合部位1aが有する第2凸部18ではなくこれに隣接した凹溝19に開口されている。
なお、各溝52の溝断面形状は、半楕円形若しくは四角形状等であっても差し支えない。特に、溝断面形状を四角形状とすることは、溝52の形状に倣って形成される冷却管11の断面積が増えるので、電極板1と各冷却管11との熱交換面積が増えて冷却効果を向上できる点で好ましい。
縁部53は、二枚の電極板材51が接合された状態で、接合部位1a(図9、図11、図13、及び図16参照)を形成する部位である。
ブッシュ55は、冷却管11と同種の金属材料、つまり、銅又は銅合金で形成されている。ブッシュ55は図16で代表して示すように冷却管11の両端部外周に嵌合して取付けられる。
図17に示すように第2実施形態のヘッダ15は、第1ヘッダ部材57とこれに接合された第2ヘッダ部材58とで形成される。
第1ヘッダ部材57は、第1実施形態で説明したヘッダのベース部位に相当する部材である。図9及び図11などに示すように第1ヘッダ部材57は、これ部材の接合部位1aと電極板1の接合部位15cとの凹凸嵌合部(接合部)を、電極板1の片面側から覆うカバー部15dを有する。更に、第1ヘッダ部材57は、図17に示すように各冷却管11と同数の孔15eを有する。これらの孔15eは各冷却管11に夫々連通している。
第2ヘッダ部材58は、第1実施形態で説明したヘッダの管接続部に相当する部材であり、第1ヘッダ部材57と同種の金属材料、つまり、銅又は銅合金で形成されている。第2ヘッダ部材58は、各冷却管11が並んだ方向に延びていて、第1ヘッダ部材57に図示しない金属ろう材を用いてろう付けされて、カバー部15dを含んだ第1ヘッダ部材57の一面及び端面にわたって被着されている。第1ヘッダ部材57の端面は前記一面に直角に連続し、かつ、栓28(図11参照)が露出している。
図9及び図11に示すように第2ヘッダ部材58は、ヘッダ溝58aと複数の出入口17とを有する。ヘッダ溝58aは各冷却管11が並んだ方向に延びている。このヘッダ溝58aは各孔15eに夫々連通されている。出入口17の数は孔15eの数より少なぃ。これら出入口17はヘッダ溝58aに連通されている。
したがって、孔15e及びヘッダ溝58aを経由して各冷却管11と各出入口17とが連通されている。このため、各出入口17を通して各冷却管11に純水などの冷媒を流通させることが可能である。なお、図9及び図11等において符号59は、各出入口17の近傍に形成された取付け用のねじ穴を示している。
図9、図10、図12、図17に示す補強板61は、電極板1と同種の金属、つまり、モリブデン製である。図7及び図8に示すように補強板61は、対向して配置された二個の第2ヘッダ部材58の長手方向一端部間に配置され、電極板1の一側部に図示しない金属ろう材を用いてろう付けされている。この補強板61の長手方向両端は、電極板1に形成された段部1b(図11参照)に突き当てられている。
電極36が補強板61を有することにより、電極板1の厚み方向の変形を防止できる他、一対のヘッダ15が互に近付く方向に膨張することを抑制できるようになっている。
次に、図12〜図16等を参照して第2実施形態のイオン源用電極36を製造する方法を説明する。
まず、図13に示す枠体71、図14に示す一対の第1蓋81、及び一対の第2蓋83とともに、二枚の電極板材51と、複数の冷却管11と、複数のブッシュ55とを準備する。これらのうちで各冷却管11以外の部品は、熱間等方圧加圧用の接合容器C(図12参照)を形成する部品である。
図13に示すように枠体71は、後述する接合容器Cの容器枠部(キャン)を担う部材であり、銅又は銅合金により四角に形成されている。つまり、枠体71は、互に平行な第1枠部72及び第2枠部73と、これらの枠部72,73を一体に接続しかつ互に平行な第3枠部74及び第4枠部75とを有する。
図16に示すように第1枠部72は、第1肉厚部76と、第2肉厚部77と、第3肉厚部78を有する。第1肉厚部76は最大の厚みであり、第3肉厚部78は最小の厚みであり、第2肉厚部78は、中間の厚み、つまり、第1肉厚部76より薄くかつ第3肉厚部78より厚い。
更に、図16に示すように第1枠部72は、その第1肉厚部76から第3肉厚部78にわたって延びる管通孔16を冷却管11と同数有するとともに、これら管通孔16の一端が個別に開口された嵌合穴79を有する。各嵌合穴79は第1枠部72の外側面に夫々開放して形成される。
第3肉厚部78の先端部に接合部位15cが形成されている。したがって、接合部位15cにはその長手方向略全体にわたって第2凸部18と凹溝19(なお、これらの構成は第2実施形態では詳細には図示されないが、第1実施形態で説明した通りの構成である。)が交互に形成されている。各凹溝19には管通孔16の他端が開口されている。
第2枠部73は第1枠部72と同じ構成であり、第1枠部72と対称に配設されている。このため、第2枠部73で第1枠部72と同じ構成部位については、同じ符号を付して、その説明を省略する。これとともに、対称に配設された第1枠部72と第2枠部73の各接合部位15cは互に近付く方向に突出し対向されている。
第3枠部73と第4枠部74は、第1枠部72において管通孔とともに第3肉厚部を備えない構成である。このため、第3枠部73及び第4枠部74で第1枠部72と同じ構成部位については、同じ符号を付して、その説明を省略する。これら第3枠部73と第4枠部74は、その第2肉厚部77が互に近付く方向に突出し対向された形態で対象に配設されている。
枠体71等が準備された後、各冷却管11の一端部外周に夫々ブッシュ55を密に嵌合させて取付ける。ブッシュ55は銅又は銅合金製であり、冷却管11に取付けられた状態を図11に示す。
この後、ブッシュ55が取付けられていない方の各冷却管11の他端部を先頭にして、各冷却管11を第1枠部72又は第2枠部73のうちの一方の枠部が有する管通孔16に挿通させる。これとともに、各冷却管11の前記他端部を、他方の枠部が有する管通孔16に枠体71の内側から夫々挿通させる。
次いで、前記他方の枠部から突出された各冷却管11の前記他端部の外周に残りのブッシュ55を夫々密に嵌合させて取付ける。こうして各冷却管11の両端部に取付けられたブッシュ55は、いずれも図16で代表して示すように嵌合穴79内に嵌入して配置される。
以上の手順により、枠体71の第1枠部72と第2枠部73とにわたって各冷却管11が取付けられる。第1枠部72と第2枠部73は、第1ヘッダ部材に加工される部位である。そのため、前記手順により、電極アッセンブリBが略組立てられる。この電極アッセンブリBにおいて、各冷却管11はそれらの長手方向と直交する方向に適正間隔を置いて並べられた状態に保持される。これとともに、図16で代表して示すように各冷却管11の両端部が、第1枠部72及び第2枠部72の外側面より突出されるとともに、各冷却管11の両端は夫々開放された状態に保持される。
次に、電極アッセンブリBの接合予定面を所定の表面粗さに仕上げる。この仕上げは、サンドペーパー研磨、バフ研磨、化学薬液と硬質微粒子を組み合わせた研磨法で行うことができる。例えば、バフ研磨で接合予定面を仕上げる場合は、表面粗さを5S以下となるように仕上げる。
この後、電極アッセンブリBに二枚の電極板材51を組み合わせて、電極本体部を準備する。
即ち、既に準備された二枚の電極板材51を、冷却管11群の両側から夫々被せる。この場合、電極板材51の溝52を向い合わせ、向かい合った溝52間に各冷却管11が配置されるように、二枚の電極板材51で各冷却管11を挟み込む。それにより、二枚の電極板材51の溝52を有した面が接するとともに、向かい合った溝52によって通孔3が形成され、これらの通孔3に各冷却管11が夫々接触しかつ収容された状態となる(図16参照)。
これとともに、二枚の電極板材51の縁部53によって形成された接合部位1aが、第1枠部72及び第2枠部73の接合部位15cに凹凸嵌合される。詳しくは、接合部位1aの第1凸部4に隣接した凹溝5に、接合部位15cの第2凸部18が嵌入されるとともに、第1凸部4が接合部位15cの凹溝19に嵌入され、更に、第1凸部4が第2凸部18を各冷却管11の並び方向に挟むように凹凸嵌合される。なお、第2実施形態では、第1凸部4、凹溝5、第2凸部18、及び凹溝19の構成は詳細には図示されないが、これらは、第1実施形態で説明した通りの構成である。
こうして、二枚の電極板材51が枠体71に組み合わされることにより、枠体71の第1枠部72及び第2枠部73と、複数の冷却管11と、二枚の電極板材51からなる電極板1により、電極本体部が組立てられる。
次に、熱間等方圧加圧方法に用いる接合容器(キャニング又はHIP接合容器とも称する。)Cを組立てる。
この組立ては、枠体71に二枚の第1蓋81と二枚の第2蓋83を組み合わせることによって行なう。第1蓋81と第2蓋83は、いずれも枠体71と同種の金属、つまり、銅又は銅合金製である。
キャニング用の蓋である第1蓋81は、第1枠部72及び第2枠部73が有する第3肉厚部77と、第3枠部74及び第4枠部75が有する第2肉厚部76とで囲まれた領域と略同じ大きさの四角い板であり、前記領域に嵌合される。これにより、図16に示すように第1蓋81が、電極板材51及びこれに連続した第3肉厚部78を覆って配置される。第1蓋81の板厚は、第2肉厚部77と第3肉厚部78とにより形成される段部の高さと略同じである。そのため、前記配置状態で、第1蓋81と第2肉厚部77は面一に連続される。
キャニング用の蓋である第2蓋83は、第1枠部72から第4枠部75が有するとともに互に連続した第1肉厚部76で囲まれた領域と略同じ大きさの四角い板であり、前記領域に嵌合される。これにより、図16に示すように第2蓋83は、第1蓋81及び第1枠部72から第4枠部75が有するとともに互に連続した第2肉厚部77を覆って配置される。第2蓋83の板厚は、第1肉厚部76と第2肉厚部77とにより形成される段部の高さと略同じである。そのため、前記配置状態で、第2蓋83と第1肉厚部76は面一に連続される。
この後、組立てられた接合容器Cの表に露出している接合部を、真空又は不活性ガスの雰囲気下でシール溶接する。この溶接は、図16で代表して示すようにヘッダ15となる第1枠部72(及び第2枠部73)とブッシュ55と接合部に施されるとともに、枠体71の第1肉厚部76と第2蓋83との接合部に施される。これらの接合部がシール溶接されることにより、後述する拡散接合のために用いられる高温・高圧のガスが、接合容器C内の各接合部に侵入することがないように構成された接合容器Cを得ることができる。なお、図16中符号20で、シール溶接が施された跡、つまり、シール溶接部を示す。
このシール溶接には電子ビーム溶接を採用できる。真空下で電子ビーム溶接をする場合、接合容器Cを図示しない蓋付きの真空容器に収納し、この真空容器内を脱気した状態で、接合部をシール溶接する。接合容器Cが収納された真空容器を完全に脱気するために30分以上真空排気をした上で、溶接対象部に対するシール溶接を行った
以上の手順で組立てられた接合容器Cの外観を図15に示す。なお、図14及び図15中符号83aは第2蓋83の中央に形成されたポートを示している。組立てられた接合容器Cにおいて、各冷却管11の両端部は、ブッシュ55で覆われ、第1枠部72又は第2枠部73から夫々突出されている。
なお、蓋付きの真空容器を解体して取出された接合容器Cのシール溶接部20の健全性は、溶接ビード外観検査、蛍光探傷試験、或いは必要に応じてヘリウムリーク試験などを実施することによって、確認する。
次に、熱間等方圧加圧方法により電極アッセンブリBとなり得る部品を含んだ接合容器Cの接合部を拡散接合により一体化するために、まず、図8に示した熱間等方圧加圧装置21が有する加圧容器22に接合容器Cを収納し、この接合容器Cを外気から遮断する。加圧容器22は、容器本体と、これに被さる蓋とを有する。
この後、熱間等方圧加圧装置21を動作させ、熱間等方圧加圧法で接合容器Cを処理する。この場合の処理手順は以下の通りである。
まず、第1バルブV1を開けて真空ポンプ24を起動し、加圧容器22の内部を真空排気した。加圧容器22内の真空度が10-2パスカル程度に到達したところで、真空ポンプ24を停止させ、第1バルブV1を閉じて脱気を完了する。
次いで、第2バルブV2を開けて高圧ポンプ25を起動し、加圧容器22の中に高圧のアルゴンガスを注入し充填した。この場合、まず、初期圧の設定値とした10メガパスカル程度まで昇圧した。次いで、加圧容器22内の加熱ヒータ26に通電して昇温を開始した。昇温と共に加圧容器22内のガス圧力が上昇し、高圧ポンプ25の駆動と停止を繰り返した。
これにより、熱間等方圧加圧処理の接合条件である温度900℃〜1000℃例えば900℃で、ガス圧力100メガパスカル〜150メガパスカルの範囲内の圧力、例えば147メガパスカルまで加圧し、この状態を2時間〜7時間例えば2時間保持した。なお、図8中の矢印27は、ガス圧力の方向を示した。このガス圧により接合容器C全体を等方圧で加圧することができる。
その後、加熱ヒータ26への通電を切るとともに、高圧ポンプ25を停止させ、第2バルブV2を閉じ、別のバルブ(図示せず)を開けることにより、加圧容器22内の高圧力のガスを放出し、常温・常圧まで冷却、降圧させた。このとき、放出されたガスの回収を行った。
こうして電極アッセンブリBを有する接合容器Cを熱間等方向加圧処理することにより、電極板1と冷却管11との接触部、ヘッダ15冷却管11の接触部、及び電極板1とヘッダ15との接触部(凹凸嵌合部)を、夫々固相接合(溶融しないで接合する方法)により一体化した。
特に、この等方圧加圧処理によれば、各冷却管11の内部に高温・高圧のガスが入るので、これら冷却管11は膨張される。この一方で、接合容器Cをなす各部材(枠体71、第1蓋81、及び第2蓋83)がその周囲から作用する圧力で圧縮される。それにより、電極板1と冷却管11、及びヘッダ15となる第1枠部72及び第2枠部73と冷却管11とが、それらの接触面において拡散接合される。したがって、電極36を構成する複数の部品が、強固で健全に接合され一体化された構造物が製造される。
前記熱間等方向加圧処理後に、加圧容器22内の圧力、温度がそれぞれ大気圧と常温に近い状態になった後に、加圧容器22の蓋を開いて接合容器Cを取出した。
この次に、取出された接合容器Cの不要部分を切削や研削等の機械加工により除去するとともに、所定の形状にする等必要とされる機械加工を施す。
この場合、電極板1の板面が露出し、かつ、カバー部15dを有するヘッダ15が形成されるように加工する。これとともに、カバー部15dと露出された電極板1の板面との間に段部1bが形成されるように加工する。更に、所定形状とするために、第1枠部72と第2枠部73をそれらの第2肉厚部77で切断することにより、各ブッシュ55及びシール溶接部20の一部が除去される。これとともに、第3枠部74及び第4枠部75を残りのシール溶接部20とともに除去して、電極板1の側端面が露出されるように加工する。
それにより、加工された一対のヘッダ15に対して各冷却管11の端が夫々開口された状態で露出される。次いで、銅製の栓28を各冷却管11の両端に詰めてそれぞれ溶接し、各冷却管11の両端開口を塞ぐ。更に、ヘッダ15にドリル刃を挿入し、冷却管11の管端部11aに夫々連通される孔15eを夫々加工する。こうして加工された電極アッセンブリBを図17に示す。
この後、図17に示した一対の第2ヘッダ部材58と、一個の補強板61を準備し、これらを電極アッセンブリBの所定位置に図示しないろう材を用いてろう付けする。
この場合、第2ヘッダ部材58のうちの一方は、第1枠部72を機械加工して形成された第1ヘッダ部材57に重なってろう付けされ、他方は、同じく第2枠部73を機械加工して形成された第1ヘッダ部材57に重なってろう付けされる。それにより、第2ヘッダ部材58に既に加工されたヘッダ溝58aと第1ヘッダ部材57の各孔15eとが連続し、これら孔15eと第2ヘッダ部材58に既に加工された出入口17とが連通されて、ヘッダ15が組立てられる。なお、こうしたヘッダ15の組立て後に、出入口17を加工してもよい。
また、補強板61はその長手方向両端を段部1bに夫々接触して、電極板1に対して位置決めされるとともに、一対の第2ヘッダ部材58を位置決めした状態で、ろう付けされる。
以上のようにして、高熱負荷対応のイオン源用の電極36を得ることができた。この電極36を図10に示す。
この電極36において、ヘッダ15は熱伝導性に優れた銅又は銅合金で作られている。これにより、ヘッダ15に接合された銅又は銅合金製の冷却管11を流れる純水などの冷媒との間での熱交換が迅速になる。
加えて、ヘッダ15の接合部位15cと電極板1の接合部位1aとが凹凸嵌合された形態で接合されている。これにより、電極板1からヘッダ15への伝熱面積が増える。特に、第1実施形態では、接合部位1aと接合部位15cが、共に電極36の略全幅にわたる櫛形形状をなしていて、それらが凹凸嵌合した形で接合されている。
このため、より伝熱面積を大きく確保できる。したがって、電極板1からヘッダ15への除熱が向上される。
以上説明したように第2実施形態の電極36によれば、その電極板1の冷却効率を向上することが可能であり、それに伴い電極36の耐久性を向上できる。
更に、電極36の電極板1と冷却管11及びヘッダ15は、その線膨張係数の違いにより、既述した製造時及び使用時とその停止に伴って膨張・収縮を伴う。具体的には、胴又は銅合金からなる冷却管11及びヘッダ15は、モリブデン製の電極板1より大きく膨張及び収縮をする。
しかし、ヘッダ15の接合部位15cに形成された第2凸部18は、電極板1の接合部位1aに形成された複数の第1凸部4間の凹溝5に嵌合された状態で、電極板1の幅方向(具体的には各冷却管11が並んだ方向)に第1凸部4により挟まれている。このため、各冷却管11の管端部11aの根元に、前記膨張・収縮に伴って冷却管11の軸方向に直交する方向(これは前記幅方向と同じである。)のせん断力が、与えられることが抑制される。これに伴い、各冷却管11が損傷して漏水する虞が解消されるので、漏水を原因として電極板1が腐食することも防止できる。
したがって、第2実施形態によれば、耐久性が向上され、高い信頼性を有する。
更に、第2実施形態によれば、既に説明したように複数の冷却管11を枠体71の第1枠部72と第2枠部73にわたって配設することで、各冷却管11を適正に位置決めすることができる。そして、こうした位置決め下において、枠体71内に二枚の電極板材51を収容することで、これら電極板材51に形成された溝52の夫々が冷却管11の中間部位をくるむように嵌合される。それにより、電極板1に冷却管11を一本一本通す面倒な手間を要することなく、電極板1と冷却管11とを適正に組み合せることができる。この上で、枠体71に第1蓋81と第2蓋83を収納することで、熱間等方圧加圧法で処理するのに好適な電極アッセンブリBに相当する構造を有した接合容器Cが仮組みされる。更に、この後、熱間等方圧加圧法で処理された接合容器Cの不要部分を除去することでイオン源用電極36を製造できる。したがって、電極36の製造性を向上することが可能である。
なお、第2実施形態において、接合部位1a,15cは、その長手方向の両端部だけが凹凸嵌合された構成、又は、この逆に、接合部位1a,15cの長手方向に中央部だけが凹凸嵌合された構成、若しくは、接合部位1a,15cの長手方向に間隔的に凹凸嵌合された構成とすることも可能である。
(第3の実施の形態)
図20に示す第3実施形態は、以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
この第3実施形態は、電極板1の接合部位1aとこれに凹凸嵌合されたヘッダ15の接合部位15cの形状が第1実施形態とは異なる。
即ち、接合部位に形成された第1凸部4及び凹溝5と、接合部位15cに形成された第2凸部18と凹溝19とは、いずれもダブテール形状をなしている。
ここで、ダブテール形状とは、所謂鳩の尾の形状のみに限定されるものではなく、第1凸部4及び第2凸部18の場合、その根元の幅より先端の幅の方が徐々に或いは段階的に広くなる形状を指しているとともに、凹溝5,19の場合、その開口端の幅より奥の幅の方が徐々に或いは段階的に広くなる形状を指している。このため、幅方向の片側のみに斜辺を有するダブテール形状を含むとともに、斜辺を有しない構成のダブテール形状も含んでいる。
第3実施形態のイオン源用電極36は、以上説明した以外の構成は図20に示されない構成を含めて第1実施形態と同じであるとともに、この電極36の製造方法も第1実施形態と同じである。したがって、この第3実施形態においても、耐久性が向上され、高い信頼性を有する電極36、及びこの電極36の製造方法を提供することが可能である。
加えて、第1凸部4とこれが嵌合された凹溝19、及び第2凸部18とこれが嵌合された凹溝5とが、ダフテール形状であることにより、以下の利点を有する。
第1に、電極36が高温となることに伴い、各冷却管11の軸方向にヘッダ15が膨張することが抑制されるので、各冷却管11の管端部11aの伸びが抑制される。この結果、電極36が常温に温度降下するに伴い、各冷却管11の管端部11aの収縮量が小さくなるので、収縮に起因して管端部11aがその根元で変形して潰れることが抑制される。
このように電極板1とヘッダ15及び各冷却管11との線膨張係数の差に起因して各管端部11aに座屈を生じることが抑制されるので、座屈を原因とする冷却管11の損傷による冷媒の漏れによる電極板1の腐食を防止することができる。
第2に、電極板1の接合部位1aとヘッダ15の接合部位15cとの接触面積が更に増え、電極板1からヘッダ15への伝熱性が高められる。その結果、電極板1の除熱性能が高められ、電極36の高寿命化を促進することが可能である。
なお、以上説明したダブテール形状は、前記第2実施形態において、第1凸部4、凹溝5、第2凸部18、及び凹溝19にも適用することが可能である。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、冷却効率が高く、かつ、耐食性に優れ、寿命を長くすることができる。
以上のように本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であるとともに、発明の要旨を逸脱しない限り、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形などは、発明の範囲に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。