JP5968564B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

この発明は、コンデンサを介したコンバータとインバータとで構成され交流モータ等を駆動する電力変換装置に係り、特に、交流電源が有するインダクタンス成分LとコンデンサCとで形成されるLC共振現象による過電圧の発生を抑制する技術に関するものである。
この種の電力変換装置の主回路は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して平滑用のコンデンサで構成される直流リンク部に供給するコンバータと、直流リンク部の直流電圧を可変電圧可変周波数の交流電圧に変換して交流負荷である交流モータに供給するインバータで構成される。電力変換装置を交流電源に接続すると、交流電源が有するインダクタンス成分Lと直流リンク部のコンデンサCとでLC共振回路が形成される。
三相の交流電圧をダイオードからなるコンバータで整流すると、直流出力側に電源周波数の6倍の周波数の振動が発生することが知られている。このため、上述のLC共振回路の共振周波数が、電源周波数の6倍の周波数に一致すると、電力変換装置内の直流リンク部の電圧が大きく振動する。その結果、主回路部品の破損や交流モータの制御が不安定になる恐れがあった。
特に、平滑用のコンデンサに小容量のものを採用した場合は、このLC共振現象が生じる確率が高くなる。
これに対し、例えば、特許文献1には、この共振現象による過電圧の発生を抑制する技術が紹介されている。即ち、この特許文献1の図15では、同期モータをベクトル制御で駆動する電力変換装置において、その直流リンク部の電圧の振動を抑制する方法を記載している。
具体的には、直流リンク部の電圧を検出し、この検出電圧の交流成分を抽出し更にこの交流成分にゲインKを乗算して得られる信号により、q軸電圧指令を補正する。
これにより、直流リンク部の電圧が大きく振動して過電圧を発生することを防ぐことができるとしている。
WO2012/060357A1号公報(段落0082〜0085、図15)
交流負荷となる交流モータとして、例えば、各種の車両等の用途で、広い速度範囲での駆動が要求される場合、モータを高速回転すると、モータの速度起電力により、インバータの出力電圧が高くなり過ぎて、絶縁的にも磁気的にも過酷な条件となる。これを防止するため、いわゆる弱め磁束制御が採用される。
この弱め磁束制御は、d軸電流をマイナスに制御することによって、インバータの出力電圧を抑制し、電圧飽和を防止する。
しかるに、従来の特許文献1の装置では、もっぱら、q軸電圧指令のみを補正するもので、上述したように、d軸電流をも同時に流す弱め磁束制御が要請される場合には、共振による過電圧抑制の効果が十分でなくなり、その影響によって、直流リンク部の電圧が大きく振動してしまい、連続運転が不可能となる恐れがある。
この発明は、以上のような従来の課題を解決するためになされたもので、交流モータの運転方法を制約することなく、即ち、弱め磁束制御を行う場合も含め、LC共振現象による過電圧の発生を確実に防止することができる電力変換装置を得ることを目的とする。
この発明に係る電力変換装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換してコンデンサに供給するコンバータ、コンデンサの直流電圧を交流電圧に変換して交流負荷に供給するインバータ、dq二軸直交座標上のd軸電流指令値とd軸電流検出値との偏差が零となるようd軸電圧指令値を生成するd軸電流制御器、dq二軸直交座標上のq軸電流指令値とq軸電流検出値との偏差が零となるようq軸電圧指令値を生成するq軸電流制御器、およびd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値に基づきインバータを駆動するゲート信号を生成するゲート信号生成部を備えた電力変換装置であって、
コンデンサの電圧を検出する電圧検出部、この電圧検出部で検出した電圧の交流成分を抽出するフィルタ部、このフィルタ部からの出力に第一ゲインを乗算して出力する乗算器、この乗算器の出力に第二ゲインを乗算してd軸電圧補正信号として出力するd軸電圧補償部、および前記乗算器の出力に第三ゲインを乗算してq軸電圧補正信号として出力するq軸電圧補償部を備え、
ゲート信号生成部は、d軸電圧指令値にd軸電圧補正信号を加算した信号およびq軸電圧指令値にq軸電圧補正信号を加算した信号に基づきゲート信号を生成することにより、交流電源が有するインダクタンス成分とコンデンサとで形成されるLC共振現象による過電圧の発生を抑制するようにし、
更にデータのサンプリングと演算を予め設定した制御周期で行う場合、制御周期に基づく無駄時間を補償するため、d軸電圧補正信号およびq軸電圧補正信号をそれぞれ制御周期の1.5倍に相当する位相だけ進める位相進み部を備えたものである。
又この発明に係る別の電力変換装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換してコンデンサに供給するコンバータ、コンデンサの直流電圧を交流電圧に変換して交流負荷に供給するインバータ、d軸電圧指令値を生成するd軸電流制御器、q軸電圧指令値を生成するq軸電流制御器、およびd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値に基づきインバータを駆動するゲート信号を生成するゲート信号生成部を備えた電力変換装置であって、
コンデンサの電圧を検出する電圧検出部、この電圧検出部で検出した電圧の交流成分を抽出するフィルタ部、このフィルタ部からの出力に第一ゲインを乗算して出力する乗算器、この乗算器の出力に第二ゲインを乗算してd軸電圧補正信号として出力するd軸電圧補償部、および乗算器の出力に第三ゲインを乗算してq軸電圧補正信号として出力するq軸電圧補償部を備え、
ゲート信号生成部は、d軸電圧指令値にd軸電圧補正信号を加算した信号およびq軸電圧指令値にq軸電圧補正信号を加算した信号に基づきゲート信号を生成することにより、交流電源が有するインダクタンス成分とコンデンサとで形成されるLC共振現象による過電圧の発生を抑制するようにし、
乗算器の出力に第二ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるd軸電流成分を演算しd軸電流補正信号として出力するd軸電流補償部、乗算器の出力に第三ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるq軸電流成分を演算しq軸電流補正信号として出力するq軸電流補償部を備え、
d軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のd軸電流指令値にd軸電流補正信号を加算した値とd軸電流検出値との偏差が零となるようd軸電圧指令値を生成し、q軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のq軸電流指令値にq軸電流補正信号を加算した値とq軸電流検出値との偏差が零となるようq軸電圧指令値を生成し、
更にデータのサンプリングと演算を予め設定した制御周期で行う場合、制御周期に基づく無駄時間を補償するため、d軸電圧補正信号およびq軸電圧補正信号をそれぞれ制御周期の1.5倍に相当する位相だけ進める位相進み部を備え、d軸電流補償部およびq軸電流補償部は、それぞれd軸電流補正信号およびq軸電流補正信号を制御周期の0.5倍に相当する位相だけ遅らせる位相遅れ部を備えたものである。
更にこの発明に係る別の電力変換装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換してコンデンサに供給するコンバータ、コンデンサの直流電圧を交流電圧に変換して交流負荷に供給するインバータ、d軸電圧指令値を生成するd軸電流制御器、q軸電圧指令値を生成するq軸電流制御器、およびd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値に基づきインバータを駆動するゲート信号を生成するゲート信号生成部を備えた電力変換装置であって、
コンデンサの電圧を検出する電圧検出部、この電圧検出部で検出した電圧の交流成分を抽出するフィルタ部、このフィルタ部からの出力に第一ゲインを乗算して出力する乗算器、この乗算器の出力に第二ゲインを乗算してd軸電圧補正信号として出力するd軸電圧補償部、および乗算器の出力に第三ゲインを乗算してq軸電圧補正信号として出力するq軸電圧補償部を備え、
ゲート信号生成部は、d軸電圧指令値にd軸電圧補正信号を加算した信号およびq軸電圧指令値にq軸電圧補正信号を加算した信号に基づきゲート信号を生成することにより、交流電源が有するインダクタンス成分とコンデンサとで形成されるLC共振現象による過電圧の発生を抑制するようにし、
乗算器の出力に第二ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるd軸電流成分を演算しd軸電流補正信号として出力するd軸電流補償部、乗算器の出力に第三ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるq軸電流成分を演算しq軸電流補正信号として出力するq軸電流補償部を備え、
d軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のd軸電流指令値にd軸電流補正信号を加算した値とd軸電流検出値との偏差が零となるようd軸電圧指令値を生成し、q軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のq軸電流指令値にq軸電流補正信号を加算した値とq軸電流検出値との偏差が零となるようq軸電圧指令値を生成し、
d軸電流制御器およびq軸電流制御器の制御応答速度がLC共振現象の共振周波数に相当する速度に比較して十分高い場合、d軸電圧補償部およびq軸電圧補償部を省略し、ゲート信号生成部は、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値に基づきゲート信号を生成するようにし、
更にデータのサンプリングと演算を予め設定した制御周期で行う場合、制御周期に基づく無駄時間を補償するため、d軸電流補償部およびq軸電流補償部は、それぞれd軸電流補正信号およびq軸電流補正信号を制御周期の2倍に相当する位相だけ遅らせる位相遅れ部を備えたものである。
この発明に係る電力変換装置は、以上のように、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値の両者について、それぞれd軸電圧補正信号およびq軸電圧補正信号を加算した信号に基づき生成したゲート信号によりインバータを制御するようにしたので、弱め磁束制御でq軸電流に加えd軸にも電流を流す運転を行う場合にも、LC共振現象による過電圧の発生を確実に抑制することができる。更に無駄時間を補償したので、適正な共振抑制の効果を得ることができる。
この発明の実施の形態1による電力変換装置の全体構成を示す図である。 図1の制御ユニット7の内部構成を示す図である。 この発明の実施の形態1による直流リンク部のDCリンク電圧Vdcを示す図である。 一般的な構造による直流リンク部のDCリンク電圧Vdcを示す図である。 この発明の実施の形態2による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。 交流モータ3の消費電力とDCリンク電圧Vdcとの関係を示す図である。 交流モータ3の消費電力とDCリンク電圧Vdcとの関係を示す図である。 図5の波高値導出部19の動作を説明するための波形図である。 図5のテーブル20の入出力特性を示す図である。 この発明の実施の形態3による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。 電流制御系の応答速度を変化させた場合のDCリンク電圧Vdcの変化を示す図である。 電流制御系の応答速度を変化させた場合のDCリンク電圧Vdcの変化を示す図である。 電流制御系の応答速度を変化させた場合のDCリンク電圧Vdcの変化を示す図である。 この発明の実施の形態4による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。 この発明の実施の形態5による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。 電流制御系の応答速度が十分高い場合の動作を説明する図である。 この発明の実施の形態6による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置の全体構成を示す図である。電力変換装置の主回路は、三相の交流電源1、平滑用のコンデンサ6で構成される直流リンク部5、コンバータ2及びインバータ4とからなる。コンバータ2は交流電源1からの三相交流電圧を直流電圧に変換するとともに、直流リンク部5に供給する。又インバータ4は直流リンク部5の直流電圧を可変電圧可変周波数の交流電圧に変換して交流負荷である交流モータ3に供給する。
コンバータ2は、その内部の図示を省略しているが、通例、ダイオード素子を三相ブリッジに結線した構成で、インバータ4は、図示の通り、スイッチング素子Sとこれに逆並列に接続されたダイオード素子Dとを三相ブリッジに結線して構成される。
制御を担う制御ユニット7は、詳しくは後述するが、電圧検出部8で検出した直流リンク部5の、即ち、コンデンサ6のDCリンク電圧Vdc、速度指令値ω*および速度検出値ωを入力し、インバータ4の各スイッチング素子Sをオンオフ駆動するためのゲート信号Gu+、Gu−、Gv+、Gv−、Gw+、Gw−を生成する。
図1の制御ユニット7の内部構成を図2に基づき説明するとともに、更にこの発明の実施の形態1による電力変換装置の制御構成およびその動作について以下詳細に説明する。
本実施形態においては、dq二軸直交座標系で演算するベクトル制御方式が採用され、概略的には、q軸上で実行する速度制御系と、d軸上で実行する励磁制御系と、本願発明の主要部である共振抑制制御ブロック9とから構成される。
先ず、速度制御系では、速度制御器10は、上位制御系から入力される交流モータ3の速度指令値ω*と図示しない速度検出部から入力される速度検出値ωとの偏差が零となるよう、PI制御等でq軸電流指令値iq*を生成する。位相角導出部11は、速度検出値ωを積分することで、二相/三相変換で必要となる位相角θeを後述するゲート信号生成部17に送出する。
q軸電流制御器10Qは、q軸電流指令値iq*と図示しない電流検出部からのq軸電流検出値iqとの偏差が零となるよう、PI制御等でq軸電圧指令値vq*を生成する。
次に、励磁制御系では、図示しない励磁制御器により、弱め磁束制御を含め予め設定されたパターンに基づきd軸電流指令値id*を生成する。
d軸電流制御器10Dは、d軸電流指令値id*と図示しない電流検出部からのd軸電流検出値idとの偏差が零となるよう、PI制御等でd軸電圧指令値vd*を生成する。
次に、共振抑制制御ブロック9について説明する。フィルタ部としてのハイパスフィルタ12は、電圧検出部8で検出したDCリンク電圧Vdcの交流成分を出力する。ここでは、既述したように、交流電源1が有するインダクタンス成分Lとコンデンサ6の容量Cとで形成されるLC共振現象を想定しているので、その電源周波数の6倍の周波数の共振成分VdcACが交流成分となる。乗算器13は、後述する電圧補正信号Vcmp*の大きさが、共振抑制効果を奏するのに適した値となるよう予め設定する第一ゲインK1を共振成分VdcACに乗算して出力する。
位相進み部14は、乗算器13からの信号を所定の位相だけ進めて電圧補正信号Vcmp*として出力する。実際の制御動作においては、予め設定された制御周期毎に、電流や電圧等のデータのサンプリングやこれらデータを用いた演算を実行するが、当然ながら、この制御周期に基づき無駄時間が発生する。
この発明では、後述するように、電圧指令値に電圧補正信号を加算することで共振抑制を行うことから、適正な共振抑制の効果を得るためには、上述の無駄時間を補償する位相進み部14が必要となるわけである。
制御周期および無駄時間の具体的な一例について、以下に説明する。
共振周波数FLCは、電源周波数の6倍であるため、例えば、60Hz系統においては、FLC=360Hzとなる。1制御周期当たりの時間Tcを250μsとすると、1制御周期に相当する、共振周波数における位相角θcは、(1)式で表される。
θc=360Hz・0.00025s・360deg=32.4deg ・・・(1)
通常、前回のサンプリング値を今回まで保持する、いわゆる0次ホールドを採用するため、この0次ホールド処理で制御周期の0.5倍、更に、演算処理で1制御周期を要するため、合計、制御周期の1.5倍の無駄時間が発生する。
従って、位相進み部14としては、
32.4×1.5=48.6deg
の位相進みを実現する伝達機能を備えた回路構成に設計される。
もっとも、高速度の、従って、一般に高価となる演算処理装置を装備して、この無駄時間が無視できる程度に制御周期を極短時間の値に設定できれば、位相進み部14で設定する位相を零とする、従って、実質的には、位相進み部14を省略することも可能である。
次に、d軸電圧補償部としての乗算器15およびq軸電圧補償部としての乗算器16について説明する。
先ず、その前提として、DCリンク電圧Vdcの共振振動を抑制する原理について説明する。
d軸電圧vd、q軸電圧vq、d軸電流id、q軸電流iqとすると、インバータの出力電力Pは(2)式で表される。
Figure 0005968564
vd、vq、id、iqが、それぞれΔvd、Δvq、Δid、Δiqだけ変動した場合の電力Pの変動をΔPとすると、(3)式が成立する。
Figure 0005968564
(2)式(3)式から、電力の変動ΔPは、(4)式で表される。
Figure 0005968564
(4)式右辺の、前段3項に関し、Δid、Δvdはid、vdと比較して微小であるので、ΔvdΔidの項は無視できる。同様に、後段3項に関しては、ΔvqΔiqの項を無視できる。この結果、電力の変動ΔPは、(5)式のように簡略化できる。
Figure 0005968564
(5)式に基づき、この発明の実施の形態1による電力変換装置においては、ΔvdおよびΔvqを調整することにより、インバータの出力電力の変動ΔPを抑制し、即ち、LC共振現象による過電圧の発生を抑制するものである。
なお、後述する実施の形態3、4では、Δvd、Δvqに加えて、Δid、Δiqを調整し、実施の形態5、6では、Δid、Δiqのみを調整するものである。
この共振を抑制するためには、DCリンク電圧Vdcが振動した場合、その振動を抑えるため次の操作をすればよい。
DCリンク電圧Vdcが上昇したら、出力電力を上昇させ、DCリンク電圧Vdcの上昇を抑える。
即ち、d軸電圧vd、q軸電圧vqが大きくなるように補正する。
また、DCリンク電圧Vdcが低下したら、出力電力を低下させ、DCリンク電圧Vdcの低下を抑える。
即ち、d軸電圧vd、q軸電圧vqが小さくなるように補正する。
従って、先の図2で説明した乗算器13で設定する第一ゲインK1は、符号としては正の数値を設定すればよいことがわかる。
そして、(5)式で説明したように、この実施の形態1では、d軸電圧vd、q軸電圧vqの両者を補正するため、d軸電圧補償部としての乗算器15により、位相進み部14からの電圧補正信号Vcmp*に第二ゲインK2を乗算した信号をd軸電圧補正信号vdcmp*として出力する。そして、このd軸電圧補正信号vdcmp*とd軸電流制御器10Dからのd軸電圧指令値vd*とを加算した信号vd1をゲート信号生成部17に送出する。
同様に、電圧補正信号Vcmp*に第三ゲインK3を乗算した信号をq軸電圧補正信号vqcmp*として出力する。そして、このq軸電圧補正信号vqcmp*とq軸電流制御器10Qからのq軸電圧指令値vq*とを加算した信号vq1をゲート信号生成部17に送出する。
そして、d軸電圧vdとq軸電圧vqの補正量、即ち、乗算器15で設定する第二ゲインK2と乗算器16で設定する第三ゲインK3とは、(6)式(7)式で算出する。
Figure 0005968564
ここで、idはd軸電流検出値、iqはq軸電流検出値であるが、これらの検出値の変動が大きい場合は、これらの検出値に替わってそれぞれd軸電流指令値およびq軸電流指令値を使用してもよい。
また、設定を簡単にしたい場合は、必ずしも精度のよい共振抑制とは言えないが、K2=K3=1/(√2)と固定値としてもよい。勿論、弱め磁束制御をしない場合は、K2=0、K3=1とすればよい。
図3、図4は、以上で説明した共振抑制制御ブロック9を適用して得られた直流リンク部5のDCリンク電圧Vdcを、一般的な構造の場合と比較して示す図である。即ち、図3が、この発明の場合で、上段がDCリンク電圧Vdc、中段がd軸電流検出値id、下段がq軸電流検出値を示す。d軸電流id、q軸電流iqに応じて、d軸電圧vd、q軸電圧vqの両者が補正される結果、DCリンク電圧Vdcの振動振幅が、後述する図4の場合に比較して大幅に抑制されていることがわかる。
これに対し、図4では、q軸電圧vqのみ補正を行いd軸電圧vdの補正は行っていないので、弱め磁束制御でd軸電流指令値id*(約−30A)を流しているが、d軸電流idは単にその指令値に追従して一定の電流が流れるのみで、結果として、DCリンク電圧Vdcには、大きな振動が発生しているのがわかる。
以上のように、この発明の実施の形態1による電力変換装置では、d軸電圧指令値vd*と、電圧補正信号Vcmp*に第二ゲインK2を乗算して求めたd軸電圧補正信号vdcmp*とを加算した信号vd1およびq軸電圧指令値vq*と、電圧補正信号Vcmp*に第三ゲインK3を乗算して求めたq軸電圧補正信号vqcmp*を加算した信号vq1により得られるゲート信号に基づきインバータ4を制御するようにしたので、モータの運転範囲を拡大し、弱め磁束制御でq軸電流に加えd軸にも電流を流す運転を行う場合にも、LC共振現象による過電圧の発生を確実に抑制することができる。
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。実施の形態1の図2の場合と異なるのは、共振抑制制御ブロック9内に、共振抑制制御調整部18を備えた点である。以下、この部分を中心に説明する。
共振抑制制御が必要となる条件は、LC共振回路の共振周波数が電源周波数の6倍の周波数に一致するのに加え、インバータ4の出力電力が大きいことである。
図6、図7は、共振周波数が電源周波数の6倍の周波数に一致する場合の交流モータ3の消費電力と、DCリンク電圧Vdcの振動の関係の一例を示している。図6が消費電力の小さい場合、図7が消費電力の大きい場合の、上段から順次、DCリンク電圧Vdc(A)、モータ速度(B)、出力電流(C)を示している。
消費電力が大きいほど、平滑用のコンデンサ6に流入する電流が多くなりDCリンク電圧Vdcの振動が増大してしまう。逆に、交流モータ3の消費電力が少ない場合では、流入電流が小さくなるため、共振周波数が電源周波数の6倍の周波数に一致しても、DCリンク電圧Vdcの振動は小さくなる。この時は共振抑制制御を実施しなくても、DCリンク電圧Vdcは大きく振動しない。
一方、共振抑制制御を実施すると、交流モータ3とコンデンサ6との間でエネルギーのやり取りをするため、交流モータ3のトルクリプル増加につながるという不具合がある。
そこで、常に共振抑制の制御を行う先の実施の形態1とは異なり、この実施の形態2では、DCリンク電圧Vdcに過電圧を発生させる条件に応じて共振抑制制御の強弱を調整する共振抑制制御調整部18を新たに備えている。
この調整は、共振抑制制御調整部18内で設定する調整係数N(0〜1の範囲で設定する)を、乗算器21により、電圧補正信号Vcmpに乗算することにより行う。
即ち、乗算器13で設定する第一ゲインK1を、先の実施の形態1では、固定値としたが、この実施の形態2では、これに調整係数Nを乗算することで、実質的に、第一ゲインK1を、変化させるものと言える。
以下、この調整係数Nの導出方法について説明する。
DCリンク電圧Vdcの共振成分VdcACを入力し、波高値導出部19を用いて、共振電圧VdcACの振幅VHを導出する。波高値導出部19は、包絡線検波のような動作をし、共振成分VdcACの振動の大きさを抽出する。
この共振成分の振幅VHの大小で共振抑制の必要性が判断できる。VHが大きいほど、共振抑制が必要であるので、調整係数Nを大きくし、VHが小さいほど、共振抑制は不必要であるので、調整係数Nを小さくすればよい。テーブル20を用いて、共振成分の振幅VHから調整係数Nを決定する。
波高値導出部19は、DCリンク電圧Vdcの共振成分VdcACを入力とし、以下の(8)式(9)式に基づき、その振幅VHを出力する。
Figure 0005968564
上式において、tは、現在値で、t−1は、1サンプル前の値である。共振成分の絶対値|VdcAC|の現在値が1サンプル前の値と比べて増加した場合(条件(i)の(8)式)は、|VdcAC|の現在値を共振成分の振幅VHとする。
逆に、共振成分の絶対値|VdcAC|の現在値が1サンプル前の値と比べて減少した場合(条件(ii)の(9)式)は、αを係数とするローパスフィルタを用いてVHを決定する。αは、0に近い小数を用いる。
(8)式に示すように、共振成分の振幅VHを増加しやすくすることで、共振成分が急激に増加した場合、振幅VHはこれに即応して上昇する。逆に、共振成分が減少する場合は、(9)式に示すように、振幅VHの追従を遅らせることで、共振抑制制御の急激なオン、オフの切り替わりを連続的に繰り返すことを防止し、共振抑制制御調整の動作が安定化する。
図8は、波高値導出部19の動作を説明するもので、上段から順に、DCリンク電圧Vdc、共振成分電圧VdcAC、その絶対値|VdcAC|、共振成分の振幅VHの波形を示す。振幅VHが、|VdcAC|の波高値に沿っていることが確認できる。
テーブル20は、振幅VHを入力とし、調整係数Nを出力する。既述したように、振幅VHが大きいほど共振抑制制御が必要となるので、振幅VHが大きいほど調整係数Nが1に近づくように設定する。また、共振抑制制御の強弱の急激な変化を防止するため、ある程度の傾きをもたせる。
図9は、テーブル20の一例である。ここで、VH0は共振抑制制御のオン・オフの目安となる値であり、テーブル20を用いて制御を行うと、DCリンク電圧Vdcの振動波高値は、概ねVH0付近の値となる。
以上のように、この発明の実施の形態2による電力変換装置では、波高値導出部19により、DCリンク電圧Vdcの共振成分VdcACの振幅VHを求め、この振幅VHに応じて電圧補正信号Vcmpを調整するようにしたので、モータの運転範囲を拡大し、弱め磁束制御を行う場合にも、LC共振現象による過電圧の発生を確実に抑制することができるとともに、低負荷時の不要な共振抑制制御を低減して、モータトルクリプルの増大を最小限に抑えることができる。
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す。実施の形態1の図2と異なるのは、共振抑制制御ブロック9において、d軸電圧指令値vd*、q軸電圧指令値vq*の補正制御に加えてd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を補正する制御を行う点である。以下、この点を中心に説明する。
問題は、d軸電流制御器10Dおよびq軸電流制御器10Qで構成される電流制御系の制御応答に関係する。即ち、電流制御系からみた場合、共振抑制の制御によって補正される電圧指令は外乱である。電流制御系の制御応答が、共振周波数と比較して高い場合は、共振抑制の制御によって補正される電圧指令を打ち消してしまう動作になり、共振抑制効果が十分得られない。
図11、12、13は、それぞれ電流制御系の応答を、100Hz⇒200Hz⇒300Hzと上げていった場合の、DCリンク電圧Vdcの波形を示す。即ち図11は電流制御系の応答が100Hzの場合、図12は電流制御系の応答が200Hzの場合、図13は電流制御系の応答が300Hzの場合をそれぞれ示している。但し、図11〜13では、q軸電圧のみの補正を行っている。
応答が100Hz、200Hzでは、DCリンク電圧Vdcは抑制できているものの、応答が300Hzになると、DCリンク電圧Vdcが大きく振動していることがわかる。
これは、電流制御系の応答が上がると、共振抑制制御の電圧補正動作(360Hz)を打ち消してしまうためである。
そこで、この実施の形態3では、電圧指令の補正による電流の変化分を算出し、この変化分を、フィードフォワードで電流制御系の入力段に加算することで、実質的に、電圧指令の補正による電流の変化分が電流制御系にフィードバックされることを防止するものである。
以下、具体的な構成動作を図10を参照して説明する。共振抑制制御ブロック9において、先の実施の形態1の図2のものから、d軸電流補償部22およびq軸電流補償部26を追加している。
先ず、d軸電流補償部22において、位相遅れ部23は、乗算器13からの共振成分電圧VdcACの電圧信号を、制御周期の0.5倍に相当する位相だけ遅らせるものである。
先の図2で説明したように、電圧の補正に関し、制御周期に伴う無駄時間が制御周期の1.5倍になるが、この図10で実施する電流補償は、更に、その電圧によりフィードバックされる電流を対象とするものであるので、その場合の無駄時間は、制御周期の2倍に相当する値となる。言い換えると、ここでは、2制御周期分前の電圧信号に対応する電流を対象として補償動作を行う必要があるため、この電圧信号VdcACを制御周期の2倍に相当する位相だけ遅らせる必要がある。
もっとも、電圧補正の回路には、無駄時間を補償するため、制御周期の1.5倍に相当する位相だけ進める位相進め部14を設けているので、差し引き、位相遅れ部23は、上述したとおり、制御周期の0.5倍に相当する位相だけ遅らせるものとすればよい。
従って、無駄時間が無視できる程度に制御周期を極短時間の値に設定し位相進み部14を省略する場合は、位相遅れ部23は、制御周期の2倍に相当する位相だけ遅らせることになる。
乗算器24は、乗算器15と同じく第二ゲインK2の乗算を行う。モータモデル25は、制御対象である交流モータ3のモータ定数で構成され、(10)式で計算される。
Figure 0005968564
ここで、Rは、固定子抵抗成分、Ldは、d軸インダクタンスである。
q軸電流補償部26も、d軸電流補償部22と同様で、制御周期の0.5倍に相当する位相だけ遅らせる位相遅れ部23、乗算器16と同じく第三ゲインK3の乗算を行う乗算器27、および(11)式で計算されるモータモデル28を備えている。
Figure 0005968564
ここで、Rは、固定子抵抗成分、Lqは、q軸インダクタンスである。
d軸電流補償部22で生成されたd軸電流補正信号idcmp*は、d軸電流指令値id*と加算され、この加算値とd軸電流検出値idとの偏差が零となるようd軸電流制御器10Dが動作する。また、q軸電流補償部26で生成されたq軸電流補正信号iqcmp*は、q軸電流指令値iq*と加算され、この加算値とq軸電流検出値iqとの偏差が零となるようq軸電流制御器10Qが動作する。
以上の構成により、電流制御系の応答速度の程度に応じて、電流による補正と電圧による補正による動作が干渉することなく、確実な共振抑制効果が得られる。
以上のように、この発明の実施の形態3による電力変換装置では、d軸電流補償部22およびq軸電流補償部26を新たに備えたので、モータの運転範囲を拡大し、弱め磁束制御を行う場合にも、LC共振現象による過電圧の発生を確実に抑制することができるとともに、電流制御系の応答を上げても、電流による補正と電圧による補正による動作が干渉することなく、確実な共振抑制効果が得られる。
実施の形態4.
図14は、この発明の実施の形態4による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。先の実施の形態3の図10で説明した共振抑制制御ブロック9に、先の実施の形態2の図5で説明した共振抑制制御調整部18を付加したものである。
各部の構成動作は説明済みであるので、重複の説明は避けるが、この実施の形態4による電力変換装置では、d軸電流補償部22、q軸電流補償部26、更には、共振抑制制御調整部18を備えたので、モータの運転範囲を拡大し、弱め磁束制御を行う場合にも、LC共振現象による過電圧の発生を確実に抑制し、電流制御系の応答を上げても、電流による補正と電圧による補正による動作が干渉することなく、確実な共振抑制効果が得られとともに、低負荷時の不要な共振抑制制御を低減して、モータトルクリプルの増大を最小限に抑えることができる。
実施の形態5.
図15は、この発明の実施の形態5による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。先の実施の形態3の図10と異なる点は、共振抑制制御ブロック9において、電圧補正に係る制御系、即ち、d軸電圧補正信号vdcmp*およびq軸電圧補正信号vqcmp*を生成する回路を省略している点である。
先の実施の形態3の図11において、電流制御系の応答を変化させた場合のDCリンク電圧Vdcの変化について説明したが、次の図16は、この電流制御系の応答速度を更に高め、共振周波数(本願の例では、360Hz)に比較して十分高い、ここでは、1000Hzに相当する値にした場合の特性を示す。図16(A)は時間とVdcとの関係をグラフに示しており、図16(B)は時間とq軸電流との関係をグラフに示したものである。
図16では、q軸についてのみ図示しているが、電流制御系、従って、q軸電流制御器10Qの応答速度が十分高いため、電流検出値と電流指令値とが一致(図16(B))、即ち、
q軸電流検出値iq=q軸電流指令値iq*+q軸電流補正信号iqcmp*
が成立している。即ち、q軸電流補正信号iqcmp*がq軸電流検出値iqに確実に反映されており、従って、電圧補正を採用しなくても、十分な共振抑制効果が得られることがわかる。事実、DCリンク電圧Vdcの振動成分も小さい値に抑制されていることがわかる。
以上の検討結果に基づき、この実施の形態5では、図15に示したように、電圧補正に係る制御系を省略し、その分、構成が簡便となる利点がある。
なお、電圧補正に係る制御系を省略するということは、例えば、図2において、乗算器15、16で設定するゲインK2、K3を零に設定することと等価であることから、この実施の形態5に係る発明も、本願請求項1に記載の発明に属するものと言える。
更に実施の形態3で説明したように、位相進み部14は省略されているので、データのサンプリングと演算を予め設定した制御周期で行う場合、制御周期に基づく無駄時間を補償するため、d軸電流補償部22およびq軸電流補償部26は、それぞれd軸電流補正信号idcmp*およびq軸電流補正信号iqcmp*を制御周期の2倍に相当する位相だけ遅らせる位相遅れ部23を備える。
以上のように、この発明の実施の形態5による電力変換装置では、電流制御系の応答速度が共振周波数に相当する速度に比較して十分高い条件の下で、d軸電流補償部22およびq軸電流補償部26を備え、電圧補正に係る制御系を省略したので、モータの運転範囲を拡大し、弱め磁束制御を行う場合にも、LC共振現象による過電圧の発生を確実に抑制することができるとともに、電圧補正に係る制御系を省略できるのでその分構成が簡便となる利点がある。
実施の形態6.
図17は、この発明の実施の形態6による電力変換装置における制御ユニット7の内部構成を示す図である。先の実施の形態5の図15で説明した共振抑制制御ブロック9に、先の実施の形態2の図5で説明した共振抑制制御調整部18を付加したものである。
各部の構成動作は説明済みであるので、重複の説明は避けるが、この実施の形態6による電力変換装置では、電流制御系の応答速度が共振周波数に相当する速度に比較して十分高い条件の下で、d軸電流補償部22およびq軸電流補償部26、更には、共振抑制制御調整部18を備え、電圧補正に係る制御系を省略したので、モータの運転範囲を拡大し、弱め磁束制御を行う場合にも、LC共振現象による過電圧の発生を確実に抑制することができ、電圧補正に係る制御系を省略できるのでその分構成が簡便となる利点があるとともに、低負荷時の不要な共振抑制制御を低減して、モータトルクリプルの増大を最小限に抑えることができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。

Claims (6)

  1. 交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換してコンデンサに供給するコンバータ、前記コンデンサの直流電圧を交流電圧に変換して交流負荷に供給するインバータ、dq二軸直交座標上のd軸電流指令値とd軸電流検出値との偏差が零となるようd軸電圧指令値を生成するd軸電流制御器、dq二軸直交座標上のq軸電流指令値とq軸電流検出値との偏差が零となるようq軸電圧指令値を生成するq軸電流制御器、および前記d軸電圧指令値および前記q軸電圧指令値に基づき前記インバータを駆動するゲート信号を生成するゲート信号生成部を備えた電力変換装置であって、
    前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部、この電圧検出部で検出した電圧の交流成分を抽出するフィルタ部、このフィルタ部からの出力に第一ゲインを乗算して出力する乗算器、この乗算器の出力に第二ゲインを乗算してd軸電圧補正信号として出力するd軸電圧補償部、および前記乗算器の出力に第三ゲインを乗算してq軸電圧補正信号として出力するq軸電圧補償部を備え、
    前記ゲート信号生成部は、前記d軸電圧指令値に前記d軸電圧補正信号を加算した信号および前記q軸電圧指令値に前記q軸電圧補正信号を加算した信号に基づき前記ゲート信号を生成することにより、前記交流電源が有するインダクタンス成分と前記コンデンサとで形成されるLC共振現象による過電圧の発生を抑制するようにし、
    更にデータのサンプリングと演算を予め設定した制御周期で行う場合、前記制御周期に基づく無駄時間を補償するため、前記d軸電圧補正信号および前記q軸電圧補正信号をそれぞれ前記制御周期の1.5倍に相当する位相だけ進める位相進み部を備えた電力変換装置。
  2. 交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換してコンデンサに供給するコンバータ、前記コンデンサの直流電圧を交流電圧に変換して交流負荷に供給するインバータ、d軸電圧指令値を生成するd軸電流制御器、q軸電圧指令値を生成するq軸電流制御器、および前記d軸電圧指令値および前記q軸電圧指令値に基づき前記インバータを駆動するゲート信号を生成するゲート信号生成部を備えた電力変換装置であって、
    前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部、この電圧検出部で検出した電圧の交流成分を抽出するフィルタ部、このフィルタ部からの出力に第一ゲインを乗算して出力する乗算器、この乗算器の出力に第二ゲインを乗算してd軸電圧補正信号として出力するd軸電圧補償部、および前記乗算器の出力に第三ゲインを乗算してq軸電圧補正信号として出力するq軸電圧補償部を備え、
    前記ゲート信号生成部は、前記d軸電圧指令値に前記d軸電圧補正信号を加算した信号および前記q軸電圧指令値に前記q軸電圧補正信号を加算した信号に基づき前記ゲート信号を生成することにより、前記交流電源が有するインダクタンス成分と前記コンデンサとで形成されるLC共振現象による過電圧の発生を抑制するようにし、
    前記乗算器の出力に前記第二ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるd軸電流成分を演算しd軸電流補正信号として出力するd軸電流補償部、前記乗算器の出力に前記第三ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるq軸電流成分を演算しq軸電流補正信号として出力するq軸電流補償部を備え、
    前記d軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のd軸電流指令値に前記d軸電流補正信号を加算した値とd軸電流検出値との偏差が零となるよう前記d軸電圧指令値を生成し、前記q軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のq軸電流指令値に前記q軸電流補正信号を加算した値とq軸電流検出値との偏差が零となるよう前記q軸電圧指令値を生成し、
    更にデータのサンプリングと演算を予め設定した制御周期で行う場合、前記制御周期に基づく無駄時間を補償するため、前記d軸電圧補正信号および前記q軸電圧補正信号をそれぞれ前記制御周期の1.5倍に相当する位相だけ進める位相進み部を備え、前記d軸電流補償部および前記q軸電流補償部は、それぞれ前記d軸電流補正信号および前記q軸電流補正信号を前記制御周期の0.5倍に相当する位相だけ遅らせる位相遅れ部を備えた電力変換装置。
  3. 交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換してコンデンサに供給するコンバータ、前記コンデンサの直流電圧を交流電圧に変換して交流負荷に供給するインバータ、d軸電圧指令値を生成するd軸電流制御器、q軸電圧指令値を生成するq軸電流制御器、および前記d軸電圧指令値および前記q軸電圧指令値に基づき前記インバータを駆動するゲート信号を生成するゲート信号生成部を備えた電力変換装置であって、
    前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部、この電圧検出部で検出した電圧の交流成分を抽出するフィルタ部、このフィルタ部からの出力に第一ゲインを乗算して出力する乗算器、この乗算器の出力に第二ゲインを乗算してd軸電圧補正信号として出力するd軸電圧補償部、および前記乗算器の出力に第三ゲインを乗算してq軸電圧補正信号として出力するq軸電圧補償部を備え、
    前記ゲート信号生成部は、前記d軸電圧指令値に前記d軸電圧補正信号を加算した信号および前記q軸電圧指令値に前記q軸電圧補正信号を加算した信号に基づき前記ゲート信号を生成することにより、前記交流電源が有するインダクタンス成分と前記コンデンサとで形成されるLC共振現象による過電圧の発生を抑制するようにし、
    前記乗算器の出力に前記第二ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるd軸電流成分を演算しd軸電流補正信号として出力するd軸電流補償部、前記乗算器の出力に前記第三ゲインを乗算して得られる電圧によって流れるq軸電流成分を演算しq軸電流補正信号として出力するq軸電流補償部を備え、
    前記d軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のd軸電流指令値に前記d軸電流補正信号を加算した値とd軸電流検出値との偏差が零となるよう前記d軸電圧指令値を生成し、前記q軸電流制御器は、dq二軸直交座標上のq軸電流指令値に前記q軸電流補正信号を加算した値とq軸電流検出値との偏差が零となるよう前記q軸電圧指令値を生成し、
    前記d軸電流制御器および前記q軸電流制御器の制御応答速度が前記LC共振現象の共振周波数に相当する速度に比較して十分高い場合、前記d軸電圧補償部および前記q軸電圧補償部を省略し、前記ゲート信号生成部は、前記d軸電圧指令値および前記q軸電圧指令値に基づき前記ゲート信号を生成するようにし、
    更にデータのサンプリングと演算を予め設定した制御周期で行う場合、前記制御周期に基づく無駄時間を補償するため、前記d軸電流補償部および前記q軸電流補償部は、それぞれ前記d軸電流補正信号および前記q軸電流補正信号を前記制御周期の2倍に相当する位相だけ遅らせる位相遅れ部を備えた電力変換装置。
  4. 前記d軸電流検出値をid、前記q軸電流検出値をiqとしたとき、前記第二ゲインK2および前記第三ゲインK3を下式で設定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
    K2=id/(√(id+iq))
    K3=iq/(√(id+iq))
  5. 前記フィルタ部で抽出した前記交流成分の波高値を出力する波高値導出部を備え、前記第一ゲインを前記波高値に応じて変化させる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  6. 前記交流負荷は交流モータであり、
    前記交流モータの速度指令値と速度検出値との偏差が零となるよう前記q軸電流指令値を生成する速度制御器、および前記交流モータの励磁電流を設定する前記d軸電流指令値を生成する励磁制御器を備えた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
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