JP5967997B2 - 絶縁性に優れたステンレス鋼材およびその製造法 - Google Patents

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本発明は、塗膜を形成することなく優れた絶縁性を付与したステンレス鋼材、およびその製造法に関する。
ステンレス鋼は耐食性や耐熱性が要求される種々の用途に広く使用されている。ただし、ステンレス鋼自体は導電性材料であるため、絶縁性が要求される用途に適用するためには表面を絶縁皮膜で覆う必要がある。絶縁皮膜の形成方法としては絶縁性の塗料をコーティングする手法が一般的である。
塗料の多くは有機樹脂を主成分としている。一般に有機樹脂の耐熱温度は200〜300℃である。このため、それより高温に曝される用途では一般的な有機樹脂系塗料を使用することができない。例えば、絶縁性の太陽電池基板を想定した場合、成膜工程(硫化処理、セレン化処理など)での500℃程度の温度への加熱に耐える材料が要求される。
比較的良好な耐熱性を有する有機樹脂としてはポリイミド樹脂が知られている。特許文献1には表面のFe酸化物の厚みを薄くすることによってポリイミドフィルムとの密着性を高めたステンレス鋼箔が開示されている。しかし、ポリイミド樹脂であっても350℃程度が使用温度の限界であり、上記のような成膜工程に適用することは困難である。
特許文献2にはシロキサン結合を主体とするシリカ系の無機ポリマー膜で被覆されたステンレス鋼箔が開示されている。しかし、この場合も500℃といった高温度域での用途には適用できない。
耐熱性の良好な酸化物皮膜をステンレス鋼表面にコーティングする手法も考えられるが、その場合には塗膜の密着性を確保するためにショットブラストや電解処理によってステンレス鋼基材の表面を粗面化しておく必要があり、コストが増大する。
一方、塗料のコーティングによらずにステンレス鋼表面に絶縁性を付与する手法として、特許文献3にはAlを含有するステンレス鋼の表面を酸化させて全表面をα−Al23で被覆する技術が開示されている。しかし、鋼成分であるAlを酸化させるのであるから絶縁皮膜の膜厚を短時間で急速に厚くすることが困難である。例えば900〜1300℃で1時間未満〜16時間加熱しても絶縁皮膜の膜厚は1.5μm程度にとどまり、絶縁性を持たせるための熱処理に長時間を要するという欠点がある。また、表面疵に対して高い信頼性を有する絶縁皮膜とするためには、より膜厚の厚い皮膜(例えば厚さ数μm以上)が望まれるが、特許文献3の手法ではそのような膜厚の絶縁皮膜を工業的に得ることは困難である。
特開2004−149885号公報 特開2004―291453号公報 特開2002−60924号公報
本発明は、塗膜の形成によらずに耐熱性の良い絶縁皮膜を形成したステンレス鋼材であって、特に絶縁性に優れ、かつ工業的に比較的低コストにて製造可能なものを提供することを目的とする。
上記目的は、質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜2.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%,Cu:0〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Mo:0〜3.0%、Al:1.0〜6.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%,V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼を基材として、その基材表面上に、Al酸化物層あるいはさらにその上のNi層を介して、厚さ1.0μm以上好ましくは50.0μm以下、あるいは厚さ3.0μm以上好ましくは50.0μm以下のNiOとNiFe24の混合層が形成されている絶縁性に優れたステンレス鋼材によって達成される。上記「Al酸化物層」と「NiOとNiFe24の混合層」の間にはNi層が存在していても構わない。
上記の絶縁性に優れたステンレス鋼材の製造法として、ステンレス鋼基材の表面に電気Niめっき法にて厚さ0.7〜30.0μmのNiめっき層を形成したのち、その鋼材をNiめっき層の表面が大気に曝される環境で980〜1220℃に加熱し、表層部に厚さ1.0μm以上のNiOとNiFe24の混合層が生成し且つステンレス鋼基材に隣接してAl酸化物層が生成する時間範囲で前記加熱を終了する手法が適用できる。特に、NiOとNiFe24の混合層の厚さを3.0μm以上にコントロールする場合には、上記Niめっき層の厚さを2.0〜30.0μmとすればよい。
本発明によれば、金属酸化物を主体とする皮膜により優れた絶縁性付与したステンレス鋼材が提供された。その皮膜は有機系の塗膜からなる絶縁皮膜と比べ耐熱性に優れることから、CIS系太陽電池用絶縁基板、薄膜Si太陽電池基板、面状発熱体など、特に高温での成膜処理を必要とする絶縁部材や、高温で使用される絶縁部材へのステンレス鋼材の適用が可能となる。また、その絶縁皮膜はNiめっきステンレス鋼材を熱処理することによって形成できるものであり、耐久性の高い絶縁皮膜を有するものを工業的に比較的低コストで量産可能である。
本発明のステンレス鋼材における表面付近の断面構造を模式的に示した図。 本発明のステンレス鋼材における表面付近の断面構造を模式的に示した図。 本発明に従って絶縁皮膜を形成したステンレス鋼材の断面における表面から深さ方向へのEDXによる元素分析プロファイル。
図1に、本発明のステンレス鋼材における表面付近の断面構造を模式的に示す。ステンレス鋼基材(以下単に「基材」ということがある)の表面上にAl酸化物層を介してNiOとNiFe24の混合層(以下「NiO+NiFe24混合層」ということがある)が形成されている。Al酸化物、NiO、NiFe24の各酸化物が絶縁物質であることから、これらAl酸化物層とNiO+NiFe24混合層によってステンレス鋼表面に絶縁性が付与される。図2に模式的に示すように、Al酸化物層とNiO+NiFe24混合層との間にはNi層が存在していても構わない。
〔NiOとNiFe24の混合層〕
NiOとNiFe24の混合層は、ステンレス鋼基材の表面に形成されたNiめっき層を大気中で酸化処理することによって形成できる。そのNiめっき層は例えば公知の電気Niめっき法によって形成できる。Niめっき層を形成した鋼材を大気中で所定温度に加熱すると、表面の金属Niが空気中の酸素と化合してNiOを主体とした酸化物が生成する。また、基材の成分であるFeがNi層中に拡散して大気に由来する酸素と反応し、NiFe24が生成する。NiOはモット絶縁体またはザン・ライス束縛状態における絶縁体と言われており、金属や半導体の性質をもつものではない。NiFe24はスピネル構造の絶縁体である。
発明者らの検討によれば、NiO+NiFe24混合層では、NiOとNiFe24のそれぞれの絶縁物質が共存することによって電子がより動きにくくなり、高い絶縁性を呈するものと推察される。
表面抵抗率が1.0×107Ω/□以上の材料であれば絶縁性材料として多くの用途に適用可能であるが、NiO+NiFe24混合層においてそのような良好な絶縁性を安定して実現するためには、NiO+NiFe24混合層の厚さは1.0μm以上とする必要がある。高い印加電圧を付与した場合でも安定して1.0×107Ω/□以上の表面抵抗率を維持するためには、NiO+NiFe24混合層の厚さは3.0μm以上であることがより効果的である。特に、NiO+NiFe24混合層の厚さを3.0μm以上とした場合には後述の実施例2に示す絶縁性試験方法において400V以上の耐電圧を安定して実現することが可能となる。部品の取り扱い時などに表面疵が生じた場合でも良好な絶縁性を維持するためには、当該混合層は5.0μm以上の厚さであることがより好ましく、10.0μm以上であることが一層好ましい。ただし、あまり厚くなると表面抵抗率、耐電圧、耐疵性などの特性は過剰となりやすく、また加工部での皮膜密着性も低下しやすくなるので、通常は50.0μm以下の範囲とすればよい。このNiO+NiFe24混合層の膜厚は、大気中での加熱処理に供する材料のNiめっき層の厚さおよび加熱条件によってコントロールできる。
NiO+NiFe24混合層の厚さは、例えばEDXによる深さ方向の分析によってNi,FeおよびOの存在が確認され、そのNiおよびOの検出強度がいずれも基材中の強度よりも高く、かつCrおよびAlの検出強度が基材中よりも低い領域の厚さとして把握することができる。また、NiOとNiFe24の存在はX線回折によって同定可能である。
〔Al酸化物層〕
Al酸化物層はバリヤー性の高い層であり、絶縁性を高める効果とステンレス鋼基材の酸化による脆化を抑制する効果を発揮する。またAl酸化物層はステンレス鋼基材との密着性が良好であるとともに、NiO+NiFe24混合層やNi層との密着性も良好であることから、Ni層が存在しない場合でも絶縁皮膜全体の密着性を高める効果を有する。このAl酸化物層は、大気中での加熱処理の際にNiめっき層あるいはそれに由来するNiO+NiFe24混合層を通して表面から侵入してくる酸素と、ステンレス鋼基材中に成分元素として存在するAlとが反応することによって、ステンレス鋼基材に隣接する位置に生成する。すなわち、基材とNiO+NiFe24混合層の間、あるいはNiめっき層の一部が残存する場合は基材とNi層の間に生成する。
発明者らは種々検討の結果、NiO+NiFe24混合層とAl酸化物層の積層効果によって、例えば1.0×107Ω/□以上という高い表面抵抗率および優れた耐電圧特性を実現することができる。NiO+NiFe24混合層については上述のように1.0μm以上の厚さを確保する必要があり3.0μm以上とすることがより好ましいが、Al酸化物層については極めて薄い状態であっても構わない。例えば平均膜厚が0.1μm程度であっても、Al酸化物層が存在していれば、それが無い場合と比べ、絶縁性は顕著に高まることが確認された。Al酸化物層の厚さは0.5μm以上であることがより効果的であり、1.0μm以上であることがさらに効果的である。ただし、過剰なAl酸化物層の形成は不経済となるので、8.0μm以下の範囲で形成させれば十分であり、5.0μm以下に管理してもよい。
Al酸化物層の厚さは、例えばEDXによる深さ方向の分析によってAlおよびOの検出強度がいずれも基材中の強度よりも高く、かつFeおよびCrの検出強度が基材中よりも低い領域の厚さとして把握することができる。
〔Ni層〕
Al酸化物層とNiO+NiFe24混合層との間に介在するNi層は、大気中での加熱処理の過程でNiめっき層の一部が残存することによって形成される。Ni層自体は導電性を有することから絶縁性の向上には寄与しないので、無くてもよい。Ni層を残存させる場合は例えば厚さ4.0μm以下の範囲とすればよい。
Ni層の厚さは、例えばEDXによる深さ方向の分析によって、Niの検出強度がNiO+NiFe24混合層中の強度よりも高く、CrおよびAlの検出強度が基材中よりも低く、かつOの検出強度が基材中と同等あるいはそれ以下である領域の厚さとして把握することができる。
〔基材〕
本発明では、鋼の中でも熱膨張係数の小さいフェライト系ステンレス鋼を適用対象とする。用途に応じて種々のフェライト系ステンレス鋼種が適用可能であるが、代表的な成分元素の含有量範囲について説明する。以下、鋼組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
C、Nは、鋼の強度を確保するうえで有効な元素であるが、多量に含有するとステンレス鋼の加工性、低温脆性に悪影響を及ぼす場合がある。本発明ではC含有量が0.0001〜0.15%、N含有量が0〜0.025%の鋼を対象とする。
Siは、多量に含有すると鋼を硬質化して加工性を阻害する場合がある。本発明ではSi含有量が0.001〜1.2%の鋼を対象とする。Si含有量は0.5%以下の範囲に管理してもよい。
Mnは、多量に含有すると加工性低下、耐食性低下を招く場合がある。本発明ではMn含有量が0.001〜2.0%の鋼、より好ましくは0.001〜1.5%の鋼を対象とする。
P、Sは、不純物として不可避的に混入するが、鋼の諸特性に悪影響を及ぼすので含有量は少ない方がよい。ただし、極度の脱P、脱Sは製鋼での負荷を増大させ好ましくない。本発明では、P含有量が0.001〜0.05%、S含有量が0.0005〜0.03%の鋼を対象とする。
Ni、Cuは、フェライト系ステンレス鋼において酸性雰囲気での耐全面腐食性を改善し、また低温靭性を改善する作用があるため、必要に応じてこれらの1種以上を含有させることができる。上記作用を十分に発揮させるには、Niの場合は0.15%以上、Cuの場合は0.2%以上の含有量を確保することがより効果的である。種々検討の結果、Ni、Cuの1種以上を含有させる場合は、Niは2.0%以下、Cuは1.0%以下の範囲で行う。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保するために重要な元素であり、本発明においては11.0%以上のCr含有量を確保する必要がある。ただし、多量のCr含有は加工性の低下を招くので、Cr含有量は32.0%以下に制限され、30.0%以下とすることがより好ましい。25.0%以下に管理しても構わない。
Moは、Crとの共存によりステンレス鋼の耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる。その作用を十分に得るためには0.3%以上のMo含有量を確保することがより効果的である。ただし、多量のMo含有はステンレス鋼を硬質化させ加工性劣化を招き、またコスト的にも不利となるので、Moを含有させる場合は3.0%以下の範囲で行う。2.0%以下に管理しても構わない。
Alは、本発明において重要な元素である。ステンレス鋼基材中のAlは、Niめっき後に行われる大気中での加熱処理時にNiめっき層と基材の界面にAl酸化物層を生成させるためのAl供給源となる。Al酸化物層が生成すると、基材は保護されて酸化が防止され、密着性の良い絶縁皮膜が構築できる。また、上述のようにAl酸化物層の形成は絶縁性を高める上で極めて有効である。鋼中のAl含有量が少ないと加熱処理時にAl酸化物層を迅速に形成させることが難しくなる。発明者らの検討によれば1.0%以上のAl含有量を確保することが望まれる。ただし、Al含有量があまり高くなると鋼板としての製造性が悪化し、またAl含有量に見合った上記効果の増大が期待できなくなる。このためAl含有量は6.0%以下とする。
Nb、Tiは、C、Nを固定し加工性を改善する作用があり、必要に応じて含有させることができる。上記作用を十分に得るには、Nb:0.03%以上、Ti:0.03%以上の1種以上を含有させることがより効果的である。ただし、Ti、Nbの1種以上を含有させる場合は、Nb、Tiとも1.0%以下、より好ましくは0.5%以下の範囲で行う。
その他、鋼の各種特性を改善するために、必要に応じてB、V、W、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の1種以上を含有させることができる。その場合、Bは0.1%以下、Vは0.5%以下、Wは0.3%以下の範囲とし、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計含有量は0.1%以下の範囲とする。
〔製造法〕
本発明に従う絶縁性に優れたステンレス鋼材は、ステンレス鋼基材の表面上に電気Niめっきを施し、そのNiめっき層の表面が大気に曝される環境で所定温度に加熱する手法によって得ることができる。具体的には以下のような条件が好適に採用できる。
〔電気Niめっき〕
ステンレス鋼基材の表面に公知の電気Niめっき法によりNiめっき層を形成させる。Niめっき層の厚さは、後述の加熱により所定厚さのNiO+NiFe24混合層が得られる厚さを確保する必要がある。種々検討の結果、厚さ1.0μm以上のNiO+NiFe24混合層を安定して形成させるためには厚さ0.7μm以上のNiめっき層を形成させることが望ましい。また、厚さ3.0μm以上のNiO+NiFe24混合層を安定して形成させるためには厚さ2.0μm以上のNiめっき層を形成させることが望ましく、3.0μm以上とすることがより好ましい。一方、過剰のNiめっきは不経済となるので、30.0μm以下の範囲とすればよい。15μm以下の範囲に管理してもよい。
〔加熱処理〕
Niめっき層を形成させたステンレス鋼材を、そのNiめっき層表面が大気に曝される状態で加熱することによりNiO+NiFe24混合層を生成させる。またNiめっき層と基材の界面にAl酸化物層を生成させる。この加熱処理は、厚さ1.0μm以上のNiOとNiFe24の混合層が生成し、かつステンレス鋼基材に隣接してAl酸化物層が生成する時間範囲で前記加熱を終了することが重要である。絶縁性能を重視する場合には厚さ3.0μm以上のNiOとNiFe24の混合層が生成し、かつステンレス鋼基材に隣接してAl酸化物層が生成する時間範囲で前記加熱を終了する。加熱温度は980〜1220℃の範囲とすることが望ましく、1000〜1200℃とすることがより好ましい。加熱温度が低すぎるとNiO+NiFe24混合層の厚さを短時間で十分に確保すること、およびAl酸化物層を生成させることが難しくなる。逆に加熱温度が高すぎると基材であるステンレス鋼の結晶粒が粗大化し強度レベルが低下することがある。加熱時間は、Niめっき層の厚さと加熱温度に応じて調整すればよい。工業的には例えば30sec〜24hの範囲で設定することができる。
図3に、本発明例のステンレス鋼材の断面における表面から深さ方向へのEDXによる元素分析プロファイルを例示する。断面のSEM像とそのSEM像中のライン分析位置を図中に重ねて示してある。このステンレス鋼材は、ステンレス鋼基材の表面に厚さ10μmのNiめっき層を形成させた後、大気中1200℃×5minの加熱処理を施したものである(表2のNo.33)図中、Fe−Crと表示した領域がステンレス鋼基材に相当し、それに隣接してAl酸化物層(図中Al−Oと表示)があり、その上(図中の左側)にNiO+NiFe24混合層がある。この例では、Niめっき層はすべて酸化され、Ni層の残存は見られないが、NiO+NiFe24混合層が所定厚さになっていればAl酸化物層とNiO+NiFe24混合層との間にNi層が存在する段階で加熱を終了しても構わない。
《実施例1》
表1に示す組成のフェライト系ステンレス鋼からなる板厚0.2〜0.4mmの冷延焼鈍鋼板(酸洗仕上げ材)を用意した。
これらのステンレス鋼板を基材として、その表面に以下の手順で電気Niめっきを施し、その後、大気中での加熱処理に供した。
〔電気Niめっき方法〕
ステンレス鋼板を60℃の5%オルソ珪酸ナトリウム溶液中に浸せきして、電流密度5A/dm2で10secの電解脱脂を行った後、水洗し、5%HCl溶液中に5sec浸せきした後、水洗した。次に、250g/LのNiCl2水溶液を塩酸でpH0.1に調整しためっき液を用いて、液温35℃、電流密度10A/dm2で15secの下地Niめっきを行った。膜厚は0.1μmであった。水洗後、275g/LのNiSO4水溶液を塩酸でpH3に調整しためっき液を用いて、液温60℃、電流密度10A/dm2で電解時間を変化させて膜厚1〜15μmの種々の厚さのNiめっき(本めっき)を施した。めっき後水洗して乾燥した。
〔加熱処理方法〕
各Niめっき鋼板から70×50mmの試験片を切り出し、これをマッフル炉(ヤマト科学製;FM−38)に装入し、Niめっき層の表面が大気に曝される状態で熱処理した。その際、鋼板の温度が900〜1200℃の範囲の所定温度となるようにそれぞれ炉温を設定した。試験片を炉内へ装入してから5min経過後に炉外に取り出すことにより加熱を終了し、常温の大気中で放冷した。
加熱処理後の各試験片の表面に形成された皮膜について、以下のように絶縁性、皮膜密着性、および皮膜構造を調べた。
〔絶縁性〕
抵抗率計(三菱油化製;HIRESTA−IP)を使用し、試験片を絶縁シート(測定台)の上に被測定面(表面皮膜のある面)が上になるように置き、試験片の表面皮膜に測定用の二重リング電極を押し付けて500Vの電圧を印加し、電圧印加開始から30sec経過時点での表面抵抗率(Ω/□)を測定した。絶縁性が要求される多くの用途では、一般に絶縁抵抗がメガオームすなわち1.0×106Ω/□以上であることが要求されるが、ここではさらに基準を引き上げ、500Vの印加電圧で測定可能な表面抵抗率の下限値1.0×108Ω/□cm2を基準とし、それ以上の表面抵抗率を有するものを合格(絶縁性;優秀)と評価した。
〔皮膜密着性〕
皮膜の表面にJIS Z1522に規定されるセロハン粘着テープを貼付したのち、そのセロハン粘着テープを剥がす方法により、皮膜密着性を調べた。試験数n=5で試験を行い、目視により皮膜がセロハン粘着テープに付着したサンプルが1つもないものを○(皮膜密着性;良好)、それ以外を×(皮膜密着性;不良)と判定した。
〔皮膜構造〕
試験片の皮膜の表面についてX線回折パターンの測定、および皮膜を含む試験片表層部の断面における表面から深さ方向へのEDXによる元素分析プロファイルの測定により、Al酸化物層、Ni層およびNiO+NiFe24混合層の厚さを調べた。
これらの結果を表2に示す。
表2からわかるように、ステンレス鋼基材の表面にNiめっき層を形成した後、その表面を大気に曝して1000〜1200℃で加熱したものにおいて、Al酸化物層あるいはさらにNi層を介して厚さ1.0μm以上のNiO+NiFe24混合層を形成させることができた(本発明例および参考例)。これらのうち特にNiO+NiFe24混合層の厚さを3.0μm以上としたもの(No.22,25,30を除く本発明例)はいずれも印加電圧500Vにおける表面抵抗率が1.0×108Ω/□以上という非常に優れた絶縁性を呈し、かつ表面の絶縁皮膜の密着性も良好であった。
No.1〜16はステンレス鋼基材のAl含有量が不足したことによりAl酸化物層を形成させることができなかった。その結果、3.0μm以上のNiO+NiFe24混合層厚さを確保した場合であっても1.0×108Ω/□以上の優れた表面抵抗率と、良好な皮膜密着性を両立させることはできなかった。No.21は加熱温度が低かったことによりAl酸化物層を形成させることができず、絶縁性に劣った。
《実施例2》
表1に示した組成のフェライト系ステンレス鋼からなる板厚0.2〜0.4mmの冷延焼鈍鋼板(酸洗仕上げ材)を用意した。
これらのステンレス鋼板を基材として、その表面に以下の手順で電気Niめっきを施し、その後、大気中での加熱処理に供した。
〔電気Niめっき方法〕
ステンレス鋼板を60℃の5%オルソ珪酸ナトリウム溶液中に浸せきして、電流密度5A/dm2で10secの電解脱脂を行った後、水洗し、5%HCl溶液中に5sec浸せきした後、水洗した。次に、250g/LのNiCl2水溶液を塩酸でpH0.1に調整しためっき液を用いて、液温35℃、電流密度10A/dm2で15secの下地Niめっきを行った。膜厚は0.1μmであった。水洗後、275g/LのNiSO4水溶液を塩酸でpH3に調整しためっき液を用いて、液温60℃、電流密度10A/dm2で電解時間を変化させて片面当たり膜厚0.5〜15μm(下地Niめっきの膜厚を含む)の種々の厚さのNiめっき(本めっき)を施した。めっき後水洗して乾燥した。
〔加熱処理方法〕
各Niめっき鋼板から70×50mmの試験片を切り出し、これをマッフル炉(デンケン製KDF008H)に装入し、Niめっき層の表面が大気に曝される状態で熱処理した。その際、鋼板の温度が900〜1220℃の範囲の所定温度となるようにそれぞれ炉温を設定した。試験片を炉内へ装入してから5〜1000minの範囲に設定した所定の時間が経過後に炉外に取り出すことにより加熱を終了し、常温の大気中で放冷した。
加熱処理後の各試験片の表面に形成された皮膜について、以下のように絶縁性、加工部の皮膜密着性、および皮膜構造を調べた。なお、各試験片の表面は両面とも同条件で形成された皮膜構造を有している。
〔絶縁性〕
耐電圧測定器(菊水電子製;TOS9201)を用いて測定した耐電圧により絶縁性を評価した。対向するプラス極およびマイナス極の2本の円筒型金属電極(外径12mmφ、試験片との接触面積113mm2)の間に試験片を挟み込んで所定の一定電圧(「印加電圧」という)を印加し、印加開始後60sec経過時点での電流値が2mA以下となる最大の印加電圧(10V刻み)を当該試験片についての耐電圧(V)とした。この試験により耐電圧が300V以上のものは多くの絶縁用途で使用可能な良好な絶縁性を有すると評価できる。耐電圧が400V以上のものは絶縁性に対する信頼性が特に高いと評価できる。
〔皮膜密着性〕
実施例1と同様の方法・基準で評価した。
〔皮膜構造〕
試験片の両側の表面について、それぞれ皮膜の表面についてX線回折パターンの測定、および皮膜を含む試験片表層部の断面における表面から深さ方向へのEDXによる元素分析プロファイルの測定により、Al酸化物層、Ni層およびNiO+NiFe24混合層の厚さを調べた。両側表面についての測定値の平均値を当該試験片における各層の厚さとして採用した。
これらの結果を表3に示す。
表3からわかるように、ステンレス鋼基材の表面にNiめっき層を形成した後、その表面を大気に曝して980〜1220℃で加熱したものにおいて、Al酸化物層あるいはさらにNi層を介して厚さ1.0μm以上のNiO+NiFe24混合層を形成させることができた(本発明例および参考例)。これらはいずれも耐電圧300V以上の良好な絶縁性を呈し、かつ表面の絶縁皮膜の密着性も良好であった。これらのうちNiO+NiFe24混合層の厚さが1.0μm以上3.0μm未満の範囲にあるものでは耐電圧400V以上の優れた絶縁性を呈するもの(No.97)と、400Vを下回るもの(No.84,89)が混在している。これに対し、NiO+NiFe24混合層の厚さを3.0μm以上とした本発明例においては耐電圧400V以上の優れた絶縁性を安定して実現することができた。
No.61〜73はステンレス鋼基材のAl含有量が不足したことによりAl酸化物層を形成させることができなかった。その結果、耐電圧300V以上の良好な絶縁性と、良好な皮膜密着性を両立させることはできなかった。No.81,82は加熱温度が低かったことによりAl酸化物層を形成させることができず、絶縁性に劣った。No.83,88,96はNiO+NiFe24混合層の厚さが1.0μmに達しておらず、絶縁性に劣った。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜2.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%,Cu:0〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Mo:0〜3.0%、Al:1.0〜6.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%,V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼を基材として、その基材表面上に、Al酸化物層を介して、厚さ3.0μm以上のNiOとNiFe24の混合層が形成されている絶縁性に優れたステンレス鋼材。
  2. 質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜2.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%,Cu:0〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Mo:0〜3.0%、Al:1.0〜6.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%,V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼を基材として、その基材表面上に、Al酸化物層およびその上のNi層を介して、厚さ3.0μm以上のNiOとNiFe24の混合層が形成されている絶縁性に優れたステンレス鋼材。
  3. NiOとNiFe24の混合層の厚さが3.0〜50.0μmである請求項1または2に記載のステンレス鋼材。
  4. ステンレス鋼基材の表面に電気Niめっき法にて厚さ2.0〜30.0μmのNiめっき層を形成したのち、その鋼材をNiめっき層の表面が大気に曝される環境で980〜1220℃に加熱し、表層部に厚さ3.0μm以上のNiOとNiFe24の混合層が生成し且つステンレス鋼基材に隣接してAl酸化物層が生成する時間範囲で前記加熱を終了する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁性に優れたステンレス鋼材の製造法。
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