JP5967490B2 - 車両用シートクッションフレーム - Google Patents

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Description

本発明は、車両用シートクッションフレームに関し、とくに、フレーム構造全体の軽量化をはかりつつ、部品点数の削減、高剛性・高強度化をはかるようにした車両用シートクッションフレームに関する。
車両用シートフレームは、例えば図8に示すように、一般に、シートクッションのフレーム101と、それに連結されるシートバックのフレーム102とから構成されている(例えば、特許文献1)。従来の車両用シートクッションフレームは、主としてスチールの板金構造で構成されており、樹脂製のシートクッションフレームは実質的に存在しない。したがって、従来構造では、車両用シートクッションフレームの軽量化には限界がある。
また、車両用シートクッションフレームには、衝突時等において乗員を保護するために、シートクッションフレームのフロント部が過剰に沈み込むのを防止する機構(以下、サブマリン防止機構と呼ぶこともある。)の設置が求められることがある。例えば特許文献1では、図8に示すように、シートクッションフレーム102とは別体の複雑な構造のサブマリン防止機構103を設けている。
さらに、従来のスチール製のシートクッションフレームにおいては、フレーム全体としては、リア側(シート後方側)を開口側とするC形の平面形状を有する構造に構成されているが、各構造部が互いに別の部品として作製され、それらが接続される構造となっている。
特開2004−338632号公報
上述の如く、従来の車両用シートクッションフレームは、スチールで構成されているので、重量が大きく、シートクッションフレーム全体に要求される剛性を確保しつつ軽量化するには限界があり、大幅な軽量化は困難である。
また、サブマリン防止機構を取り付ける場合には、シートクッションフレームとは別部品として複雑な機構を取り付けるようにしているので、部品点数が増大するとともに、全体としての構造も複雑化する。
さらに、従来の車両用シートクッションフレームは、互いに別の部品として作製された各構造部材が接続される構造となっているので、部品点数が多く、かつ、組立に多大な工数を要することとなっている。
そこで本発明の課題は、このような従来の車両用シートクッションフレームにおける問題点に着目し、主構成部材の素材を樹脂に変更することにより大幅な軽量化を達成するとともに、サブマリン防止機能を考慮した上で、部品点数の削減と全体構造の簡素化が可能な車両用シートクッションフレームを提供することにある。
また、本発明のさらなる課題は、主構成部材の素材を樹脂に変更しても、十分に高い剛性、強度を確保できるとともに、容易に製造できるようにした車両用シートクッションフレームを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用シートクッションフレームは、リア側を開口側とするC形の平面形状を有する車両用シートクッションフレームであって、該C形フレームが熱可塑性樹脂からなるとともに、該C形フレームのフロント部が、上面側がシート幅方向に断続的に延びる面に形成され、かつ、下面側がシート幅方向に連続的に延びる面に形成されている構造を有することを特徴とするものからなる。
このような本発明に係る車両用シートクッションフレームにおいては、C形の平面形状を有するシートクッションフレームの実質的に全体が熱可塑性樹脂で構成されるので、例えば射出成形等によってシートクッションフレームの実質的に全体を一体成形することが可能になり、従来のスチール製のフレームに比べ、大幅な軽量化が可能になるとともに、互いに別の部品として作製された各構造部材を接続する必要がなくなり、部品点数の大幅な削減、組立工数の大幅な低減、全体構造の簡素化が可能になる。そして、C形フレームのフロント部が、上面側がシート幅方向に断続的に延びる面に形成され、かつ、下面側がシート幅方向に連続的に延びる面に形成されているので、衝突時等においてシートクッションフレームのフロント部に該フロント部を沈み込ませようとする荷重が加わり、該フロント部が下方に向けて湾曲変形されていく際に、断続的に形成されている上面のうち隣接上面部分が、フロント部の下方に向けての湾曲により互いに接近する方向に変位し、隣接上面部分の端部同士が当接した時点で湾曲変形が構造的に停止されることになる。その結果、それ以上の沈み込み、つまり、フロント部の過剰な沈み込みが自動的に防止され、複雑なサブマリン防止機構を設けることなく、所望のサブマリン防止機能が得られる。このサブマリン防止機能は、従来のサブマリン防止機構のように機械的な係止による急激な変位防止とは異なり、フロント部が下方に向けて徐々に湾曲変形していく過程で徐々に荷重を吸収していき、最終的に上記の如く隣接上面部分の端部同士の当接によりそれ以上の変位を阻止するものであるから、シート上の乗員が従来のサブマリン防止機構を設けた場合のような反力としての大きな衝撃力を受けることがなくなり、作動の面からも望ましいサブマリン防止機能が得られることとなる。そして、従来のような複雑なサブマリン防止機構を設ける必要が無いので、部品点数の削減、全体構造の簡素化が一層促進される。
上記本発明に係る車両用シートクッションフレームにおいて、上記熱可塑性樹脂が強化繊維を含む構造を採用すれば、シートクッションフレームの実質的に全体の一体成形を可能としつつ、主構成部材の素材を樹脂に変更してもシートクッションフレームに十分に高い剛性、強度を付与することが可能になり、上述の部品点数の削減、全体構造の簡素化を達成しつつ、高剛性・高強度化についても同時に達成することが可能になる。この上記熱可塑性樹脂が強化繊維を含む構造は、強化繊維を含有する熱可塑性樹脂の射出成形や、先に強化繊維基材が配置されている成形型内に熱可塑性樹脂を注入する方式の成形により、容易に達成することができ、所望の車両用シートクッションフレームを容易に製造することが可能である。
また、本発明に係る車両用シートクッションフレームにおいては、上記の如く上面側が断続的に延びる面に形成されることによって上記フロント部がシート幅方向に複数の小部分に区画されており、各小部分がシート前方に向かって開口する開袋状形状に形成されている構造とすることもできる。このような構造においては、各小部分に高い剛性、強度を形状的に付与することが可能になり、各小部分が所望の形態を保ちつつ、フロント部全体の下方に向けての湾曲により隣接小部分の上面部分の端部同士の接近、当接が可能になり、フロント部各部の望ましい剛性、強度を確保しつつ、望ましいサブマリン防止機能が得られる。ただし、各小部分がシート前方に向かって開口する開袋状形状に形成されていても、隣接小部分の上面部分がシート幅方向に連続的に延びる面に形成されていたのでは、望ましいサブマリン防止機能は得られない。
また、本発明に係る車両用シートクッションフレームにおいては、とくに、上記フロント部の下面側に、シート幅方向に延びる強化繊維を含む帯状複合材が上記熱可塑性樹脂と一体化されている形態が好ましい。帯状複合材はとくにその長手方向に対して高い引張強度を発揮できるので、このように帯状複合材をフロント部の下面側に設けておけば、フロント部が下方に向けて湾曲変形されようとする際に、優れた湾曲抑制機能を発揮できるようになり、フロント部の沈み込み方向の変位量を小さく抑えて、変形に抗する望ましい剛性を付与しつつ、より望ましいサブマリン防止機能を発現できるようになる。本発明ではフロント部の下面側はシート幅方向に連続的に延びる面に形成されているので、該下面側にこのような帯状複合材を容易に一体化して設けることが可能になっている。
上記帯状複合材としては、例えば強化繊維と金属との複合材も適用可能ではあるが、シートクッションフレーム全体の軽量性を維持する観点からは、強化繊維と樹脂との複合材からなる複合材であることが好ましい。中でも、上記複合材が、上記C形フレームを構成する熱可塑性樹脂と同種または同一の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂としている形態がとくに好ましい。このようにすれば、C形フレームを構成する熱可塑性樹脂と上記帯状複合材とを一体化する際に、両者間の望ましい接合状態が得られ、車両用シートクッションフレーム全体としての所望の剛性、強度が確保されるとともに、優れた耐久性も得られる。
上記複合材の強化繊維としては、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維などの任意の強化繊維の使用が可能であるが、剛性、強度向上の効果の点から、さらに、剛性、強度の設計のしやすさの点から、強化繊維として少なくとも炭素繊維を含んでいることが好ましい。この場合、複合材の強化繊維が炭素繊維のみの場合、炭素繊維と他の強化繊維の組み合わせの場合の両方を含む。
なお、上記複合材が強化繊維と樹脂との複合材からなる場合、そのマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれの使用も可能であるが、上記の如く好ましい形態としては、複合材が、上記C形フレームを構成する熱可塑性樹脂と同種または同一の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂としている形態である。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミド等の樹脂を挙げることができる。また、C形フレームを構成する熱可塑性樹脂としても、同様の樹脂を用いることができる。
また、本発明に係る車両用シートクッションフレームにおいては、シートクッションフレーム全体にわたって望ましい剛性、強度を持たせるために、上記C形フレームのサイド部においても構造的に工夫を付加することができる。例えば、上記C形フレームのサイド部の少なくとも一部が、フレームの外側に向けて開口する断面を有することが好ましい。シートベルトによる横方向の荷重や、側突荷重に対して、もしサイド部の断面形状が閉空間(筒状や箱形形状の断面)であると、荷重に対してサイド部で突っ張る等して却ってフレーム自体の破壊を招くおそれが生じるが、上記のような構造においては、サイド部の一部がフレームの外側に向けて開口する断面形状に形成されていることで、フレーム自体に破壊を生じさせることなく円滑にエネルギーを吸収させる性能を持たせることが可能になる。
上記C形フレームのサイド部の少なくとも一部が、フレームの外側に向けて開口する断面を有する構造においては、その開口断面において、上部部分と下部部分がフレームの外側に向けて同じ長さ分延びる構造とすることもできるし、上部部分よりも下部部分の方がフレームの外側に向けてより長く延在されている構造とすることもできる。とくに後者の構造においては、上部部分については上記のような開口形状を有することで良好なエネルギー吸収性能を確保しつつ、下部部分については、該下部部分を適切に延設することで、フレーム自体に適度に高い剛性を持たせることが可能になる。
また、本発明に係る車両用シートクッションフレームにおいては、上記C形フレームのサイド部の上面および下面の少なくとも一方に、強化繊維と樹脂からなる補強用複合材が配置されている構造を採用することができる。シートクッションフレームには、とくに上下方向に加わる荷重や衝撃力に対して高い剛性、強度が求められるので、補強用複合材がシートクッションフレームのサイド部の上面および下面の少なくとも一方に配置されていることにより、このフレーム部分の、ひいてはシートクッションフレーム全体の剛性、強度が効率よく高められることになる。
上記C形フレームのサイド部の上面および下面の両方に、強化繊維と樹脂からなる補強用複合材が配置されている場合には、上面の補強用複合材が下面の補強用複合材よりも多く配置されていることが好ましい。シートクッションフレームは、前方衝突時、後方衝突時などに、サイド部に曲げモーメントが発生し、上面に大きな応力が発生するので、上面に補強材としての複合材が配置されることにより、フレームの剛性、強度が効率よく高められることになる。
このような補強用複合材においても、前述のフロント部の下面側に設けられる帯状複合材と同様、強化繊維として炭素繊維を含むことが好ましい。
このように、本発明に係る車両用シートクッションフレームによれば、フレーム全体の大幅な軽量化が可能になり、フレームのフロント部に所望のサブマリン防止機能を持たせつつ、フレームの部品点数を大幅に削減でき、全体構造も大幅に簡素化することが可能になる。
また、C形フレームを構成する熱可塑性樹脂に強化繊維を含有させたり、フレームのフロント部を複数の開袋状形状の小部分に区画形成したり、フロント部の下面側に所定の帯状複合材を一体的に設けたりすることにより、望ましいサブマリン防止機能を得つつ、高い剛性、強度を達成することができ、しかも、そのような優れた性能を有するシートクッションフレームを容易に製造することが可能になる。
さらに、C形フレームのサイド部にも構造的な工夫を付加することにより、フレーム全体に対してより望ましい剛性、強度を持たせることが可能になる。
本発明の一実施形態に係る車両用シートクッションフレームの概略斜視図である。 図1に示したフレームのフロント部の下面側に帯状複合材を設けた場合の概略正面図である。 図2とは別の実施形態に係るシートクッションフレームのフロント部の下面側に帯状複合材を設けた場合の概略正面図である。 図2、図3との比較のために示した参考形態に係るシートクッションフレームのフロント部の下面側に帯状複合材を設けた場合の概略正面図である。 図2、図3、図4に示した形態における荷重と変位の関係を表した概略特性図である。 シートクッションフレームのサイド部の構造の一例を示す概略断面図である。 シートクッションフレームのサイド部の構造の別の例を示す概略断面図である。 従来の車両用シートクッションフレームの概略斜視図である。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用シートクッションフレームを示している。図1において、1は、車両用シートクッションフレームを示しており、シートクッションフレーム1のリア側には、シートバックフレーム2が回動可能に連結される。シートクッションフレーム1は、そのリア側を開口側とするC形の平面形状を有しており、フロント部1aと両側のサイド部1bを有している。このC形のシートクッションフレーム1は、全体が熱可塑性樹脂、例えば射出成形された熱可塑性樹脂から構成されており、図示例では、側方に向かって開口するC形横断面形状を有する両側のサイド部1bの上面側に、このフレーム部分の剛性、強度を向上するために、少なくともそのフレーム部分延在方向に延びる強化繊維を含む補強用複合材3が、C形のシートクッションフレーム1を構成する熱可塑性樹脂部と一体化されている。一体化は、例えば、一方向に強化繊維が配された複合材3(一方向繊維強化複合材)を、該強化繊維の配向方向をフレーム延在方向として成形型(図示略)内に配置し、該成形型内にフレーム1の熱可塑性樹脂部を形成する熱可塑性樹脂を射出して複合材3と一体化することにより実現できる。この複合材3の強化繊維としては、炭素繊維を含むことが好ましい。また、複合材3を設ける構成とは別に、あるいは、その構成とともに、C形のシートクッションフレーム1を構成する熱可塑性樹脂に強化繊維を含有させることもできる。この強化繊維としても、炭素繊維を含むことが好ましい。
上記C形のシートクッションフレーム1のフロント部1aは、図2にも示すように、その上面側がシート幅方向W−Wに断続的に延びる面11に形成され、かつ、下面側がシート幅方向W−Wに連続的に延びる面12に形成されている。そして図示例では、フロント部1aの上面側が断続的に延びる面11に形成されることによって、フロント部1aがシート幅方向W−Wに複数の小部分13に区画されており、各小部分13はシート前方Fに向かって開口する開袋状形状に形成されている。
また、図示例では、シート幅方向W−Wの中央部に存在する各小部分13は、シート前方から見て、左右対称形の台形形状を有しており、該台形形状の各辺が上記シート前方Fに向かって開口する開袋状形状を形成している。シート幅方向W−Wの両側端部に存在する各小部分13は、左右非対称形の台形形状を有している。
さらに、図示例では、上記シートクッションフレーム1のフロント部1aの下面12側に、シート幅方向W−Wに延びる強化繊維を含む帯状複合材14が、C形のシートクッションフレーム1を構成する熱可塑性樹脂と一体化されるように設けられている。この一体化は、帯状複合材14を接着することによっても実現できるし、成形型内に配置した帯状複合材14を、シートクッションフレーム1を構成するための熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂の射出成形等により一体成形することによっても実現できる。とくに後者の場合には、帯状複合材14が、C形フレーム1を構成する熱可塑性樹脂と同種または同一の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂としていることが好ましい。帯状複合材14の強化繊維としても、炭素繊維を含むことが好ましい。
上記のような実施形態においては、C形の平面形状を有するシートクッションフレーム1の実質的に全体が所定の熱可塑性樹脂で構成されるので、シートクッションフレーム1の少なくとも熱可塑性樹脂部の全体を一体成形することが可能になり、従来のスチール製のフレームに比べ、大幅な軽量化が可能になり、かつ、部品点数の大幅な削減、組立工数の大幅な低減、全体構造の簡素化が可能になる。また、C形フレーム1のフロント部1aの上面側がシート幅方向W−Wに断続的に延びる面11に形成され、下面側がシート幅方向W−Wに連続的に延びる面12に形成されているので、衝突時等においてシートクッションフレーム1のフロント部1aに上方から該フロント部1aを沈み込ませようとする荷重Pが図2に示すように加わる際、フロント部1aが下方に向けて湾曲変形されていくが、その際に、断続的に形成されている上面11のうち隣接上面部分が互いに接近する方向に変位し、隣接上面部分の端部同士が当接した時点で湾曲変形が構造的に停止されることになる。すなわち、荷重Pの増加にしたがって徐々にフロント部1aの下方に向けての湾曲変形量が増大し(上面11の沈み込み変位量が増大し)、隣接上面部分の端部同士が当接した時点で湾曲変形量(沈み込み変位量)が略一定となる。その結果、荷重Pを徐々に吸収し、ある量以上の沈み込みが阻止されるという、望ましいサブマリン防止機能が得られる。このサブマリン防止機能は、従来のサブマリン防止機構のように機械的な係止による急激な変位防止とは異なり、フロント部が下方に向けて徐々に湾曲変形していく過程で徐々に荷重Pが吸収されていき、最終的に上記の如く隣接上面部分の端部同士の当接によりそれ以上の変位を阻止するものであるから、シート上の乗員に急激な衝撃を与えるおそれがなくなる。
さらに上記実施形態では、とくに、シートクッションフレーム1のフロント部1aが、シート幅方向W−Wに、シート前方Fに向かって開口する開袋状形状を有する複数の小部分13に区画されているので、各小部分13の強度、剛性が構造的に保たれており、フロント部1a自体の所望の強度、剛性が確保されるとともに、各小部分13の上面部分の端部同士が当接した時点でそれ以上の変形、沈み込みがより確実に阻止され、サブマリン防止性能が望ましい条件で実現されている。しかも、上記実施形態では、とくに、シートクッションフレーム1のフロント部1aの下面12側に、シート幅方向W−Wに延びる強化繊維を含む帯状複合材14が一体的に設けられているので、フロント部1a自体の所望の強度、剛性が一層良好に確保されるとともに、上方からの荷重Pに対する剛性、強度が高められることになり、荷重吸収性能の面からも、より望ましいサブマリン防止性能が実現される。
上記実施形態のシートクッションフレーム1のフロント部1aにおける、シート幅方向W−Wに区画される複数の小部分の、シート前方Fに向かって開口する開袋状形状に関しては、図2に示した形態(形態A)の他に、種々の形態を採り得る。例えば、図3に別の形態Bを示すように、シートクッションフレームのフロント部21において、シート幅方向W−Wに区画される複数の小部分22の、シート前方に向かって開口する開袋状形状を、帯状複合材23が一体的に設けられた下面側から上方に向かって途中まで四角形状に形成し、その途中から上面までを台形形状に形成することも可能である。このように構成すれば、四角形状に形成された部分同士が隣接する部位では、フロント部21の沈み込み方向の湾曲変形に対してより高い強度、剛性を発現できるので、上方からの荷重Pに対してより高い変形抑止性能(沈み込み変位抑止性能)を発現し、湾曲変形(沈み込み変位)があるレベル以上になると、それよりも上方に位置する台形形状が機能し、上述の実施形態と同様の変形抑止性能(沈み込み変位抑止性能)を発現するようになる。
図2に示した形態Aおよび図3に示した形態Bにおける概略特性(概略荷重―変位特性)を、図4に比較のために示した形態の概略特性とともに、図5に示す。図4に示した比較形態においては、シートクッションフレームのフロント部31において、シート幅方向W−Wに区画される複数の小部分32の、シート前方に向かって開口する開袋状形状は、帯状複合材33が一体的に設けられた下面側から上方に向かって上面まで四角形状に形成されており、各小部分32の上面が直接隣接しているため、フロント部31の上面は、シート幅方向W−Wに断続的に延びる面には形成されず、連続的に延びる面に形成されることとなっている。
図5に示すように、図2に示した形態Aおよび図3に示した形態Bでは、上方からの荷重に対して、シートクッションフレームのフロント部が徐々に滑らかに沈み込み方向に変位していき、あるレベル以上の荷重に対しては、変位が阻止されるようになっている。形態Bの方が、荷重の増加に対して途中まで、より変位が抑制される形態となっている。これに対し比較形態では、変位が小さなあるレベルに達するまで荷重がより急激に増加することとなっており、フロント部の変位が小さすぎるため乗員に急激な荷重、つまり衝撃力が負荷されることとなっている。また、この比較形態では、ある大きな荷重に達した後、荷重が増大しないでも変位が進む状態になるおそれがあり、この状態はフロント部の上面側で圧縮破壊が進行していく状態であるので、好ましくない。
また、本発明では、前述したように、シートクッションフレーム全体にわたってより望ましい剛性、強度を持たせるために、C形フレームのサイド部においても構造的に工夫を付加することができる。例えば、図6に示すように、C形フレームのサイド部41の少なくとも一部が、フレームの外側に向けて開口する断面を有することが好ましい。このように構成すれば、サイド部41の少なくとも一部がフレームの外側に向けて開口する断面形状に形成されていることで、その部分のフレーム自体に円滑にエネルギーを吸収させることができる優れたエネルギー吸収性能を持たせることが可能になる。また、図6に示す構造においては、サイド部41の上面および下面の少なくとも一方に、図示例ではそれら両面に、すなわち、上部部分42aの上面と下部部分42bの下面の両方に、強化繊維と樹脂からなる補強用複合材43a、43bが配置されており、サイド部41の剛性、強度が適切に高められている。このようにサイド部41の上面と下面の両方に補強用複合材43a、43bが配置される場合には、前述したように、上面の補強用複合材43aが下面の補強用複合材43bよりも多く配置されていることが好ましい。
また、例えば図7に示すような構造を採ることもできる。図7に示す構造においては、C形フレームのサイド部51の少なくとも一部が、フレームの外側に向けて開口する断面を有する構造に構成されるとともに、その開口断面において、上部部分52aよりも下部部分52bの方がフレームの外側に向けてより長く延在されている構造に構成されている。さらに、上部部分52a、下部部分52b、それらの間の縦壁部分52cのそれぞれが、強化繊維を含む補強用複合材53a、53b、53cで補強されている。このようなサイド部51の構造においては、前述したように、フレームの外側に向けて開口する断面形状により、シートベルトによる横方向の荷重や、側突荷重に対して、フレーム自体に破壊を生じさせることなく円滑にエネルギーを吸収させることが可能になるとともに、下部部分52bの方がフレームの外側に向けてより長く延在されていることにより、上記の良好なエネルギー吸収性能を確保しつつ、フレーム自体に適度に高い剛性を持たせることが可能になる。なお、前述の如く、上記補強用複合材53a、53b、53cにおいても、前述のフロント部の下面側に設けられる帯状複合材14と同様、強化繊維として炭素繊維を含むことが好ましい。
本発明は、現状金属製のあらゆる車両用シートクッションフレームに適用できる。
1 シートクッションフレーム
1a、21、31 フロント部
1b、41、51 サイド部
2 シートバックフレーム
3、43a、43b、53a、53b、53c 補強用複合材
11 フロント部の上面
12 フロント部の下面
13,22、32 小部分
14、23、33 帯状複合材
42a、52a サイド部の上部部分
42b、52b サイド部の下部部分
52c サイド部の縦壁部分

Claims (11)

  1. リア側を開口側とするC形の平面形状を有する車両用シートクッションフレームであって、該C形フレームが熱可塑性樹脂からなるとともに、該C形フレームのフロント部が、上面側がシート幅方向に断続的に延びる面に形成され、かつ、下面側がシート幅方向に連続的に延びる面に形成されている構造を有することを特徴とする車両用シートクッションフレーム。
  2. 前記熱可塑性樹脂が強化繊維を含む、請求項1に記載の車両用シートクッションフレーム。
  3. 前記上面側が断続的に延びる面に形成されることによって前記フロント部がシート幅方向に複数の小部分に区画されており、各小部分がシート前方に向かって開口する開袋状形状に形成されている、請求項1または2に記載の車両用シートクッションフレーム。
  4. 前記フロント部の下面側に、シート幅方向に延びる強化繊維を含む帯状複合材が前記熱可塑性樹脂と一体化されている、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用シートクッションフレーム。
  5. 前記複合材が、前記C形フレームを構成する熱可塑性樹脂と同種または同一の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂としている、請求項4に記載の車両用シートクッションフレーム。
  6. 前記複合材の強化繊維として炭素繊維を含む、請求項4または5に記載の車両用シートクッションフレーム。
  7. 前記C形フレームのサイド部の少なくとも一部が、フレームの外側に向けて開口する断面を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の車両用シートクッションフレーム。
  8. 前記C形フレームのサイド部の少なくとも一部の断面において、上部部分よりも下部部分の方がフレームの外側に向けてより長く延在されている、請求項7に記載の車両用シートクッションフレーム。
  9. 前記C形フレームのサイド部の上面および下面の少なくとも一方に、強化繊維と樹脂からなる補強用複合材が配置されている、請求項1〜8のいずれかに記載の車両用シートクッションフレーム。
  10. 前記C形フレームのサイド部の上面および下面の両方に、強化繊維と樹脂からなる補強用複合材が配置されているとともに、上面の補強用複合材が下面の補強用複合材よりも多く配置されている、請求項9に記載の車両用シートクッションフレーム。
  11. 前記補強用複合材の強化繊維として炭素繊維を含む、請求項9または10に記載の車両用シートクッションフレーム。
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