JP5967436B2 - 新規フラバノン化合物、新規スチルベン化合物、抗菌剤、抗酸化剤及び高抗菌抗酸化養蜂組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、実はこれらの養蜂組成物の抗菌、抗酸化活性は産地や季節、ロットにより大きく変動し、その効果も他の化学合成された抗菌剤、抗酸化剤に遙かに及ばないのが現実である。このような中、より強く安定した抗菌性、抗酸化性を有する養蜂組成物を求める研究も盛んであり、たとえばポッカコーポレーションによる沖縄産プロポリスの研究(先行技術文献)などが知られているがその活性は十分とは言い難く、真に有効で安定な天然の高抗菌性、高抗酸化性組成物が求められてきた。
本発明のsolophenol Aはソロモン産の養蜂産物から見出された下記の化学構造式を示すものである。
ソロモン国マライタ州フィユ村の農業専門学校APSDソロモンファーマカルチャーセンターで西洋ミツバチを用いた養蜂を実施し養蜂箱よりプロポリス画分を得た。このプロポリスの原塊49.5gを乳鉢で粉砕後500mlのエタノールで室温下24時間抽出し、濾過濃縮後34.8gの抽出物を得た。その抽出物を通常のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メルク製シリカゲル60 360mm×50mm)で粗分画し、24個の分画物を得た。
溶出はヘキサン、酢酸エチル、メタノールのグラジエント方式を用いた。その分画の1つより、分取HPLC(資生堂ODSカラム250mm×20mm)を用いて5個の成分を単離した。
展開溶剤は水:アセトニトリル=70:30(0.1% TFA)、流量10ml/minの条件を用いた。
18分の留分に新規な単一成分6.1mgを得たため、ESI−MS,NMR,CD等の各種分析機器を用いて構造解析を行ったところ新規なフラバノン化合物(化1)を見出しsolophenol Aと命名した。
solophenol Aの構造解析の過程を以下に記載する。
solophenol A物理化学的性質を(図1)に要約した。ESI−MSでは、Positiveモードでm/z493.07に(M+H)+、m/z515.33に(M+Na)+、m/z537.27に(M+K)+、Negativeモードでm/z491.27に(M−H)−の分子イオンピークが観測されたことより、分子量が492であることが明らかになった(図9)。
1H−NMRスペクトルにおいて、積分値より36個のプロトンが観測され、δ6.84,δ7.01は芳香族性のプロトン、δ12.18は水酸基のプロトンと推定された(図3)。
13C−NMRスペクトルにおいて、30本のシグナルが観測され、δ197.99にカルボニル炭素と思われるシグナルが観測された(図4)。また1H−1H COSYスペクトルを測定し結果を(図5)に示す。
以上の情報及び高分解能FAB−MSの結果から、分子式をC30H36O6と推定した。
HSQCスペクトル(図6)、HMBCスペクトル(図7)より平面構造を導いた。
さらに、CDスペクトルを測定したところ、310nmで正のコットン効果を、293nmで負のコットン効果を示した(図8)。フラバノンに関して報告されているCDスペクトルの文献値と比較し、2位の立体配置をSと決定した。以上の結果から、本化合物を(2S)−5,7,3′,4′−tetrahydroxy−8−(3′′′,3′′′−dimethylallyl)−2′−geranyl flavanoneであると同定した(化1)。本化合物は、文献未記載の新規化合物であり、solophenol Aと命名した。
実施例1に示した分収HPLCで引き続き22分に4.0mg、展開溶剤を水:アセトニトリル=63:37(0.1% TFA)に変更して、23分に8.6mg、24分に3.5mgの画分を分取した。
実施例1同様に構造解析を行い化合物2 bonannione A、化合物3 sophoraflavanone A、化合物4 (2S)−5,7−dihydroxy−4′−methoxy−8−prenylflavanoneであると同定した。
化合物2(bonannione A)
グラム陽性菌の代表として、Staphylococcus aureus 黄色ブドウ球菌 FDA209P及び Bacillus subtilis 枯草菌 NBRC3134を、グラム陰性菌の代表としてPseudomonas aeruginosa 緑膿菌 NBRC13275を各菌液500μL、Nutrient agar培地19.5mLをシャーレに播き凝固させた。実施例1同様に抽出したソロモン諸島産プロポリスのEtOH抽出物をMeOHで濃度20mg/mLに調製した。その試料をクリーンベンチ内でフィルター(0.2μm)に通し、ペーパーディスク(φ8mm)に50μLずつ浸み込ませ、乾燥させた後、培地上に置き、それをインキュベーター内で、37℃で24時間、静置培養した。その後、形成された阻止円の直径を二方向から測定し、平均値を求め、抗菌活性を比較した。
また、上記と同様にして調製した沖縄産プロポリス(オオバギタイプ)及びブラジル産プロポリス(バッカリスタイプ)のEtOH抽出物と比較例として示した。
結果を表1に示す。また、参考に図12に試験の様子を示す。
CAMHB(Cation Adjusted Mueller−Hinton Broth)液体培地表2を作製した。次に、7mLずつ分注した18mm試験管をオートクレーブで、120℃で20分間、滅菌し、そこに、各試験菌を植菌して37℃で24時間、振とう培養した。それを、クリーンベンチ内で、1×107cfu/mLにCAMHBで調製し、96穴プレートに5/μL/wellずつ添加した。各化合物は、濃度を1,2,4,8,16,32,64,128,256,512mg/Lになるように、CAMHBで調製し、100μLずつ添加した。十分撹拌させた後、37℃で18時間、振とう培養した。
なお、これらの化合物は水に溶けにくいものであるため、試料をEtOHに溶かし、1%EtOH溶液とした。
培養後、肉眼で観察し、試験管内の菌の増殖が完全に阻止された試料の最小濃度をMICと判定した。結果を表3に示す。
結果を表4に示す。
図13に示す分取HPLC画各分から化合物15,19,20は既知化合物であり、それぞれ、没食子酸、puyanin、6′−geranylpinocembrinであった。残りの7個の成分を単離し、化合物16,17,18,21の構造を実施例1及び2同様に各種機器分析により同定したところ、これらは新規の化合物であり以下のように構造を決定した。
UPLC−TOF−MSでは、Negativeモードでm/z455.1747に(M−H)−の分子イオンピークが観測されたことより、分子量が456であることが明らかになった(図15)。
IRスペクトルを測定したところ、1655,1702cm−1にカルボニル基、2954cm−1にアルキル基、3111cm−1に水酸基の存在を確認した(図16)。
1H−NMRスペクトルにおいて、δ6.26,δ6.45,δ6.87,δ6.96は芳香族性のプロトン、δ12.27は分子内水素結合している水酸基のプロトンと推定された(図17)。
13C−NMRスペクトルにおいて、24本分のシグナルが観測され、δ176.99にカルボニル炭素と思われるシグナルが観測された(図18)。
以上の情報とHRESIMSから、分子式をC25H28O8と推定した。
HSQCスペクトル(図19)、HMBCスペクトル(図20)より、(図21)に示すようなプロトンとカーボンのHMBC相関が見られた。
以上のことより、本化合物の構造を(図22)のように導き出すことができた。
以上の結果から、本化合物を
2′−(8″−hydroxy−3″,8″−dimethyl−oct−2″−enyl)−quercetinであると同定した(図22)。
本化合物は、文献未記載の新規化合物でありsolophenol Bと命名した。solophenol Bの理化学的性質を(図14)に要約した。
UPLC−TOF−MSでは、Negativeモードでm/z455.1687に(M−H)−の分子イオンピークが観測されたことより、分子量が456であることが明らかになった(図24)。
IRスペクトルを測定したところ、1654,1702cm−1にカルボニル基、2965cm−1にアルキル基、3110cm−1に水酸基の存在を確認した(図25)。
1H−NMRスペクトルにおいて、δ6.61,δ7.00,δ7.70,δ7.82は芳香族性のプロトン、δ12.43は分子内水素結合した水酸基のプロトンと推定された(図26)。
13C−NMRスペクトルにおいて、24本分のシグナルが観測され、δ176.38にカルボニル炭素と思われるシグナルが観測された(図27)。
以上の情報とHRESIMSから、分子式をC25H28O8と推定した。
HSQCスペクトル(図28)、HMBCスペクトル(図29)より、(図30)に示すようなプロトンとカーボンのHMBC相関が見られた。
以上のことより、本化合物の構造を(図31)ように導き出すことができた。
以上の結果から、本化合物を
6−(8″−hydroxy−3″,8″−dimethyl−oct−2″−enyl)−quercetinであると同定した(図31)。
本化合物は、文献未記載の新規化合物でありsolophenol Cと命名した。solophenol Cの理化学的性質を(図23)に要約した。
UPLC−TOF−MSでは、Negativeモードでm/437.1576に(M−H)−の分子イオンピークが観測されたことより、分子量が438であることが明らかになった(図33)。
IRスペクトルを測定したところ、1654,1702cm−1にカルボニル基、2956cm−1にアルキル基、3111cm−1に水酸基の存在を確認した(図34)。
1H−NMRスペクトルにおいて、δ6.28,δ6.40,δ6.82,δ6.95は芳香族性のプロトン、δ12.30は分子内水素結合した水酸基のプロトンと推定された(図35)。
13C−NMRスペクトルにおいて、25本のシグナルが観測され、δ176.05にカルボニル炭素と思われるシグナルが観測された(図36)。以上の情報とHRESIMSから、分子式をC25H26O7と推定した。
HSQCスペクトル(図37)、HMBCスペクトル(図38)より、(図39)に示すようなプロトンとカーボンのHMBC相関が見られた。
以上のことより、本化合物の平面構造を(図40)のように導き出すことができた。
以上の結果から、本化合物を2′−geranylquercetinであると同定した(図40)。
本化合物は、文献未記載の新規化合物でありsolophenol Dと命名した。solophenol Dの理化学的性質を(図32)に要約した。
UPLC−TOF−MSでは、Positiveモードでm/z449.2674に(M+H)+、Negativeモードでm/z447.2524に(M−H)−の分子イオンピークが観測されたことより、分子量が448であることが明らかになった(図42)。
IRスペクトルを測定したところ、2922cm−1にアルキル基、3392cm−1に水酸基の存在を確認した(図43)。
1H−NMRスペクトルにおいて、δ6.29,δ6.55,δ6.87,δ6.99は芳香族性のプロトン、δ6.81とδ6.96はカップリング定数(J=16.2Hz)より、二重結合のトランス位のプロトンと推定された(図44)。
13C−NMRスペクトルにおいて、26本のシグナルが観測された(図45)。
以上の情報とHRESIMSから、分子式をC29H36O4と推定した。
1H−1H−COSYスペクトル(図46)、HSQCスペクトル(図47)、HMBCスペクトル(図48)より、(図49)示すようなプロトンとカーボンのHMBC相関が見られた。
以上のことより、本化合物の構造を(図50)のように導き出すことができた。
以上の結果から、本化合物を5′−farnesylpiceatannolであると同定した(図50)。
本化合物は、文献未記載の新規化合物でありsolomoninと命名した。solomoninの理化学的性質を(図41)に要約した。
新たに分離同定された5化合物について実施例4同様MIC(Minimum Inhibitory Concentration)を求めた。結果を表5に示す。
Claims (7)
- 下記化1に示される構造を有するフラバノン化合物 solophenolA。
- 下記化16に示される構造を有するフラバノン化合物 solophenolB。
- 下記化17に示される構造を有するフラバノン化合物 solophenolC。
- 下記化18に示される構造を有するフラバノン化合物 solophenolD。
- 下記化1に示される構造を有するスチルベン化合物 solomonin。
- 特許請求の範囲第1項から第5項に記載された新規化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする高抗菌性組成物。
- 特許請求の範囲第1項から第5項に記載された新規化合物を含有することを特徴とする高抗酸化組成物。
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