JP5967160B2 - 減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物 - Google Patents
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Description
MgO(固体)+C(固体)→Mg(ガス)+CO(ガス) (1)
このマグネシア−カーボン反応は、高温ほど起こりやすいことはいうまでもないが、処理中に脱ガス、脱炭のために減圧を伴うDH法、RH法、VOD法などでは、生成したMg(ガス)やCOガスが真空引きによって系外に取り出されるため、(1)の反応は進みやすいと考えられる。このため、耐用性が向上しない一つの理由は、スラグに対する耐食性と共にマグネシア−カーボン反応にあると考えられた。
従って、精錬処理中に脱ガス、脱炭のために減圧するDH法、RH法、VOD法などに使用される真空脱ガス槽のような減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物として更なる耐用性の優れた耐火物が求められているのが現状である。
マグネシア−カーボン煉瓦の稼働面には10〜20mm程度の脱炭層が生じており、脱炭層の一部、あるいは全体にスラグの浸潤が認められた。この浸潤層は稼働中の温度変化によって構造スポーリングを起こし損傷量を著しく増加させている。脱炭層内の微組織を観察すると組織中のカーボンが消失しているだけではなく、スラグ浸潤の起こっていない部位でもマグネシアの劈開面が鋸歯状に損傷している様子が確認された。そこで、当該マグネシア−カーボン煉瓦と同一ロットの未使用煉瓦を大気雰囲気中で加熱し、十分に酸化、脱炭させた試験片と、使用後マグネシア−カーボン煉瓦の脱炭層の物性を比較したところ、後者の気孔率が著しく高いことが判明した。これまで、稼働面の脱炭層は槽内の混入酸素、あるいはトップランスから吹きこまれた酸素による気相酸化だと考えられてきたが、上記のことからマグネシア−カーボン反応でマグネシアとカーボンが反応・消失したことにより脱炭・脆化の進んだ部位であることが分かった。また、上記したように、この脱炭層は高気孔率化による溶損助長だけでなく、構造スポーリングによる剥離を引き起こすため、マグネシア−カーボン煉瓦の耐用を大きく損なう重要なものである。つまりRH法脱ガス下部槽におけるマグネシア−カーボン煉瓦の損傷には、マグネシア−カーボン反応が大きく影響している。
これを基に、次の(1)〜(4)を検討した:
(1)ペリクレースの含有量を低減させる;
(2)ペリクレースにAl2O3を固溶させる;
(3)スピネル固溶体を用いる;
(4)スピネル固溶体においてMgO含有量をより低下させる。
そこで、より積極的に(3)及び(4)の手法を採用してみたところ、マグネシア−カーボン反応抑制に著しい効果が得られることが分かった。
スピネル固溶体は、マグネシアと同様にカーボンとの共存下において含有するMgO成分の揮発が生じる。MgOの揮発は粒子の表面から徐々に進行するが、Al2O3成分はそのまま残存してAl2O3質保護層となり、MgO成分の継続的な揮発をさらに阻害する。このように、スピネル固溶体を骨材として使用することは、単にマグネシアの活量を低下させるだけではなく、MgO成分の揮発に対する保護層を形成するという効果を併せ持つことで、MgO成分の揮発をより効果的に抑制することが可能となることが分かった。
しかしながら、本発明者らは、転炉スラグを用いて侵食試験を行うことについて疑問を持ち、RH法、VOD法の使用後煉瓦の調査や操業中の処理材使用量を基に炉内で発生するスラグの組成を推計したところ、従来の知見とは異なる低塩基度(CaO/SiO2質量比)、高Al2O3含有スラグとなる場合があることを見出した。また、そのような条件下でRH下部槽で使用したマグネシア−カーボン煉瓦の使用後解析を行ったところ、脱炭層に浸潤したスラグの組成は、低塩基度、高Al2O3含有スラグであることを見出した。低塩基度、高Al2O3含有スラグとなる理由は、RH法やVOD法では、金属Siや金属Alを投入することで、多量のSiO2やAl2O3が生成することによるものである。
これらの知見により、本発明を完成するに至ったものである。
ここで、マグネシアリッチスピネルのMgO含有量は理論組成から40質量%までが好ましい。MgO量が40質量%を超えると、脱ガス操業時のマグネシア−カーボン反応が大きくなり、また、低塩基度、高Al2O3含有スラグに対する耐食性に劣るようになるために好ましくない。より好ましくは、MgO含有量は36質量%以下である。
また、アルミナリッチスピネルのMgO含有量は、7質量%から理論組成(28.3質量%)までであることが好ましい。MgO含有量が7質量%未満であると、上記低塩基度、高Al2O3含有スラグに対する耐食性が劣るようになるために好ましくない。より好ましくは、MgO含有量は10質量%以上である。
なお、マグネシアの活量に関しては、マグネシアリッチスピネル、理論組成スピネル、アルミナリッチスピネルの順に小さくなる。このため、マグネシア−カーボン反応をより抑制するためには、理論組成スピネルあるいはアルミナリッチスピネルを用いることが好ましい。
以下の表1及び2に記載する配合割合にて、本発明の二次精錬設備用内張り耐火物を作製した。また、表3に記載する配合割合にて、比較品の耐火物を作製した。
「アルミナリッチスピネル1」は、Al2O3:MgO質量比が93:7のもので、−0.3mm(0.3mm未満)の粒子中の0.01mm以下の微粉の割合は、10質量%である;
「アルミナリッチスピネル2」は、Al2O3:MgO質量比が90:10のもので、−0.3mm(0.3mm未満)の粒子中の0.01mm以下の微粉の割合は、10質量%である;
「理論組成スピネル」は、Al2O3:MgO質量比が71.7:28.3のもので、−0.3mm(0.3mm未満)の粒子中の0.01mm以下の微粉の割合は、10質量%である;
「マグネシアリッチスピネル1」は、Al2O3:MgO質量比が64:36のもので、−0.3mm(0.3mm未満)の粒子中の0.01mm以下の微粉の割合は、10質量%である;
「マグネシアリッチスピネル2」は、Al2O3:MgO質量比が60:40のもので、−0.3mm(0.3mm未満)の粒子中の0.01mm以下の微粉の割合は、10質量%である;
「スピネル微粉1」は、Al2O3:MgO質量比が71.7:28.3のもので、粒径が0.01mm以下のものである;
「スピネル微粉2」は、Al2O3:MgO質量比が90:10のもので、粒径が0.01mm以下のものである;
フェノール樹脂の1000℃還元雰囲気熱処理後に測定した残炭率は25質量%であった;
「カーボン原料の量(質量%)」は、鱗状黒鉛とフェノール樹脂の上記残炭量との和を示すものであり、その残部を「スピネル原料とマグネシア原料の量の和(質量%)」として示した。なお、残炭量は、JIS K 6910(フェノール樹脂試験方法)中の固定炭素測定法に基づいて測定したものである;
「成形」の欄は、アイリッヒミキサーを用いて混練し、230×200mmの金型を用いて油圧プレスで2.5トン/cm2の圧力で成形し、成形時の状態を評価したもので、「成形体の状態」は、成形時の稜線欠けや角欠けなどの発生状況を示すものである。評価は、5段階で行い、◎は稜線欠けや角欠けが発生せず正常な成形が可能な場合を示し、○、□としたものは欠けの発生頻度や程度が許容しうるものであった、一方、稜線欠けや角欠けが多く発生したものを△とし、れんがに強度がなくハンドリングに困難をきたしたものを×と評価した。また、「面付き/ラミネーションの有無」は、発生頻度に応じて5段階で評価したものである。◎が良好であることを示し、○、□としたものはこれらの発生頻度や程度が許容しうるものであった、一方、△や×と評価したものは歩留まりが極めて悪く実際の製造には適さない。更に、「成形時の生角かさ比重(g/cc)」は、れんがの緻密さを評価したものであり、成形直後のかさ比重を測定したものである。なお、かさ比重は、煉瓦1個の質量を、その煉瓦の体積で除したものであり、数値が大きいほど緻密な煉瓦であることを意味する;
「高温加熱試験(質量減少率)」は、マグネシア−カーボン反応の程度について、雰囲気調整可能な電気炉を用いて評価したものである。本発明は、減圧を伴う二次精錬設備用の内張り耐火物として優れたものを提供することにあり、本来ならば減圧下、あるいは真空下での測定を行うべきものである。しかし、減圧ないし真空で処理するとMg(ガス)が発生し、そのガスが炉壁に金属Mgとして析出するため、処理後に炉蓋を開けて際に、空気と反応して爆発を起こす恐れがあり、危険である。そこで、それに代わる方法として本試験方法を採用した。試験温度を1800℃に設定し、Ar雰囲気とすると共に,Arを吹きこむことでp(Mg)やp(CO)を下げ、減圧下ないし真空下での処理と同様にマグネシア−カーボン反応を促進させた。マグネシア−カーボン反応は固体のマグネシアとカーボンがMgガスとCOガスとなる反応であり、反応の起こった試料は必ず質量減少を伴うため、この質量減少率を用いて評価した。数値は小さいほど反応が抑制されており、質量減少率が20質量%以上ものを不適と判断した;
「高周波侵食試験」は、煉瓦の耐食性を評価するもので、雰囲気調整機能を有する高周波誘導炉を用いた侵食試験により行った結果である。誘導加熱で溶解させた鋼の上にRH法脱ガス槽内のスラグを模した塩基度(CaO/SiO2質量比)=2.8で、Al2O3を30質量%含有するスラグを浮かべ炉壁に配した各煉瓦の侵食量を比較した。また、試験温度を1800℃に設定し、Ar雰囲気とすると共に、Arを吹きこむことでp(Mg)やp(CO)を下げ、マグネシア−カーボン反応を促進させた。試験は5時間にわたり行われた。「侵食量(mm)」は、試験前の厚みから最も煉瓦の損傷が進んだ部分の残厚を差し引くことで求めたものであり、小さいほど良好である。5mm以上侵食されたものは改善効果が薄いあるいは改善効果がないと判断した。また、「スラグ浸潤の有無」は、脱炭層へのスラグ浸潤の有無とその程度を良好なものから順番に◎、○、□、△、×の5段階で評価した。◎は脱炭層が認められないものであり、○、□は脱炭層と浸潤層の厚みの程度に応じて評価した。△と判断したものは脱炭層が厚く、脱炭層へのスラグ浸潤が顕著であり実使用時の剥離損傷が懸念される。×と判断したものはマトリックスの脆化が著しく、マトリックス分へのスラグ浸潤が極めて顕著で煉瓦としての組織がほとんど失われている様子が観察された;
「溶銑浸漬耐スポーリング試験」は、試料サイズを40×40×230mmとし、残留揮発分による爆裂防止のために、事前に還元雰囲気下において1000℃で3時間熱処理したものを供試体として使用し、試験は1700℃に昇温した溶銑に1分間浸漬後、15秒水冷することにより行われた。その後、供試体を切断し断面を観察した。亀裂が見られるものはその数と太さを測定し、その程度と量を5段階で評価した。◎のものは亀裂が全く見られなかった試料であり、亀裂の幅が1mm以下のものは亀裂の数に応じて○または□と評価した。一方、△は幅が1mmを超える亀裂が観察された試料、×は水冷時にれんがが折損したものであり、何れも使用には適さないと判断される;
これらの評価を取りまとめ、「総合評価」として良好なものから順番に◎、○、□、△、×の5段階で示した。特に顕著な改善が見られたものは◎とし、改善の程度に応じて○、□と評価した。△、×は改善の効果が薄いか全く見られなかったと判断した。
それに対し、比較品1(マグネシア−カーボン質煉瓦)は、高温加熱試験における質量減少率が大きく、また、耐食性に劣り、スラグ浸潤が大きかった。
比較品2〜6は、比較品1のマグネシア骨材の一部をスピネルに置換したものである。これらは何れも高温加熱試験後に置いて質量減少率が極めて大きい。この現象はマグネシア−カーボン反応が活発に起こった結果であり、比較品2〜6は、マグネシア−カーボン反応の抑制に至ってない。また、その結果として高周波侵食試験の結果も不良であった。
比較品7は、カーボン量を極めて少なくした場合であるが、充填によるパッキングが十分でなく、角欠けや稜線欠けが多く発生した。また、高周波浸食試験におけるスラグ浸潤量が大きく、溶銑浸漬スポーリング試験において劣った結果となった。
比較品8は、カーボンを多量に配合した場合であるが、成形時に面付きやラミネーションが発生したほか、高周波侵食試験における侵食量が多くなり、適さないと判断された。
比較品9は、スピネル微粉の配合量を多くしたものであるが、成形時に面付きやラミネーションが多発し、溶銑浸漬スポーリング試験において亀裂が多数発生した。
比較品10(アルミナ−カーボン質煉瓦)は、高周波浸食試験におけるスラグ侵食量が大きくなる結果となった。
本発明品をRH下部槽に使用した。本発明品のうち、特に良好な結果が得られた本発明品4、8、10、15、20及び22を使用し、実機にて張り分けテストを行った。626ch使用後回収し、残厚から損傷速度を比較した。なお、当該RH下部槽に従来使用されていたのは比較品1のマグネシア−カーボン質煉瓦である。張り分けテストした6材質について、比較品1の損傷速度を100として指数表示した。指数は小さいほど良好である。
以上のように、本発明の二次精錬設備用内張り耐火物の優位性は明らかである。
Claims (7)
- 8〜1mm超のスピネル粒子の配合量が20〜70質量%、1〜0.3mmのスピネル粒子の配合量が30〜50質量%、0.3mm未満のスピネル粒子の配合量が30質量%以下の範囲内にあり、その合計量が75〜99.5質量%及びカーボン0.5〜25質量%を含有するスピネル−カーボン質煉瓦からなることを特徴とする、減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。
- 二次精錬処理後の取鍋スラグの組成が、塩基度(CaO/SiO2質量比)0.5〜3.0、Al2O3含量20〜40質量%となる条件下で操業される二次精錬設備に使用される、請求項1記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。
- スピネルの0.3mm未満の粒子として0.01mm以下のスピネル微粉を30質量%以下の量で使用する、請求項1または2記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。
- 0.01mm以下のスピネル微粉を5〜25質量%の量で使用する、請求項3記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。
- スピネルが理論組成を有するスピネルまたはアルミナリッチスピネルである、請求項1ないし4のいずれか1項記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。
- アルミナリッチスピネルのMgO含有量が7質量%以上28.3質量%未満、Al2O3含有量が71.7質量%を超え93質量%以下の範囲内にある、請求項5記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。
- 減圧処理を行うための二次精錬設備の内張りライニング構造において、二次精錬設備の少なくともスラグライン部、湯面近傍に、請求項1ないし6のいずれか1項記載の減圧処理を行うための二次精錬設備用内張り耐火物を配設してなることを特徴とする減圧処理を行うための二次精錬設備の内張りライニング構造。
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