以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態におけるフロントバンパ用グリル取付構造を概略的に示す図である。なお各図に示す矢印X、Y、Zは、それぞれ左右方向の左側(あるいは外側)、上下方向の下側、前後方向の前側を示している。
フロントバンパ用グリル取付構造100は、フロントバンパ102と、フロントバンパ102に取付けられるフロントグリル104とを含む。フロントグリル104は、逆台形状の外形を有し(図2(b)参照)、例えば格子状に形成されていて、不図示の車両に設置されるラジエータに対する空気取入口として機能する。
フロントバンパ102は、例えば車両の前端に設置される合成樹脂製の車両用部品であり、以下では、外装となるバンパフェイシア106と、バンパフェイシア106の裏面に配置されたロアネット108とを組付けた状態で示している。
フロントバンパ102は、図中矢印Aに示すように、フロントグリル104が前側から取付けられる開口部(グリル取付部110)を有する。グリル取付部110は、図示のように、フロントグリル104の外形に対応した外形、すなわち対向する側縁112、114同士の距離が下方ほど小さくなる逆台形状を有する。上記ロアネット108は、グリル取付部110を後側から覆うように配置されている。
また、フロントバンパ102は、グリル取付部110の両方の側縁112、114に沿って開口の内側に突出するリブ116、118と、リブ116、118の根本に形成され、ここでは図示を省略するスリット120(図3(a)参照)とを含む。
図2は、図1のフロントグリル104を示す図である。図2(a)は、フロントグリル104の分解斜視図である。図2(b)は、フロントグリル104の裏面を示す図である。
フロントグリル104は、図2(a)に示すように、ベースグリル122と、めっきが施されたガーニッシュ124とを組付けて成り、例えばベースグリル122とガーニッシュ124との間には隙間を設けてよい。なお、ガーニッシュ124には、図示を省略するエンブレムが設置される。
ベースグリル122は、柔軟性を有する合成樹脂(例えば、ABS樹脂)からなり、図2(a)の矢印Bに示すように、前側にガーニッシュ124が設置される。また、ベースグリル122は、図2(a)に示すように、上辺のほぼ中央に形成された図示を省略するクリップを固定するための固定部126を有する。なおクリップを固定部126に挿入する機械固定によって、フロントグリル104はフロントバンパ102に対して上下方向に動かないように規制される。
ベースグリル122の外形は、図2(b)に示すように、対向する側縁128、130同士の距離が下方ほど小さくなる逆台形状であり、フロントバンパ102の上記グリル取付部110の外形に対応している。
ベースグリル122は、図2(b)に示すように、対向する側縁128、130からそれぞれ外側に延びるフィン132、134と、下辺から下方に延びる複数(ここでは、6つ)の第1爪部136a〜136fと、上辺から下方に延びる複数(ここでは、6つ)の第2爪部138a〜138fとを有する。ここで、ベースグリル122を含むフロントグリル104の形状は、図2(b)に示すように左右対称となっているので、以下では、フロントグリル104の左側の側縁128の周辺について主に説明する。
図3は、図1のフロントバンパ用グリル取付構造100の一部を拡大して示す図である。図3(a)は、フロントバンパ102のグリル取付部110に向けて、図中矢印Cに示すようにフロントグリル104を近付ける状態を示す図である。図3(b)は、図3(a)のフロントグリル104をフロントバンパ102側から見た状態を示す図である。
フロントグリル104の側縁128から外側に延びるフィン132は、図3(a)の矢印Cに示すように、フロントバンパ102のグリル取付部110に接近している。グリル取付部110の側縁112、114は、上記したように逆台形状の外形を成すので、対向する側縁112、114同士の距離が下方ほど小さくなるように傾斜している。この傾斜した側縁112、114に沿って上記リブ116、118が形成されている。リブ116の根本には、図3(a)に点線で示すように、側縁112に沿って延びるスリット120が形成されている。なお、図示は省略するが、側縁114に沿ったリブ118の根本にも、スリット120が形成されている。
また、グリル取付部110の下辺には、図3(a)に示すように孔部140が形成されている。孔部140は、フロントグリル104の下辺の第1爪部136aが嵌り込むように形成されている。なお、他の第1爪部136b〜136fは、グリル取付部110の下辺に形成された不図示の孔部に嵌り込むように形成されている。
つぎに、図4〜図6を参照して、フロントバンパ102のグリル取付部110にフロントグリル104を前側から接触させた状態を説明する。図4は、図1のフロントグリル104をフロントバンパ102に接触させた状態のフロントバンパ用グリル取付構造100を示す図である。図4(a)は、フロントバンパ用グリル取付構造100を概略的に示している。図4(b)は、図4(a)のフロントバンパ用グリル取付構造100の一部を拡大して示す図である。
図5は、図4のフロントバンパ用グリル取付構造100を後側から見た状態を示す図である。図5(a)は、フロントバンパ用グリル取付構造100の後側を概略的に示している。図5(b)は、図5(a)のフロントバンパ用グリル取付構造100の一部を拡大して示している。
図6は、図4および図5のフロントバンパ用グリル取付構造100の断面を示す図である。図6(a)は、図4(b)のD−D断面図である。図6(b)は、図4(b)のE−E断面図である。図6(c)は、図5(b)のF−F断面図である。
フロントバンパ用グリル取付構造100は、図4(b)に示すように、フロントグリル104のフィン132と、グリル取付部110のリブ116とが接触している。フィン132とリブ116とが接触した状態では、図4(b)に示すように、リブ116の上端116aは、フィン132よりも高い位置に形成されている。このとき、フィン132は、前側から見てリブ116と重なるように形成されている。また、上記リブ116が傾斜した側縁112に沿って形成されているため、フィン132の下方には、リブ116の根本に形成されたスリット120が位置している。
上記接触した状態でのフィン132およびリブ116は、これらを水平面で切断した図6(a)に示すD−D断面において、グリル取付部110の外側にゆくほど後側へ向かうよう傾斜して延びている。すなわち、フィン132は、左右方向での外側かつ前後方向での後側に傾斜して延びている。リブ116は、フィン132の断面形状に対応して、フィン132の後側から、左右方向での内側かつ前後方向での前側に傾斜して延びている。
フロントバンパ用グリル取付構造100では、図6(a)のD−D断面にて示すように、フィン132とリブ116とが接触することで、前後方向の位置決めが可能となる。ただし、この状態では、図4(a)に示すように、フロントグリル104の下辺に形成された複数の第1爪部136a〜136fは、グリル取付部110の下辺に形成された対応する不図示の各孔部に嵌り込んでいない。
図4(b)では、フロントグリル104の第1爪部136aの下方に、グリル取付部110の孔部140が位置している状態が代表的に示されている。すなわち第1爪部136aは、図6(b)のE−E断面にて示すように、グリル取付部110の孔部140の上方に位置していて、孔部140には嵌り込んでいない。
また、図5(a)に示すように、フロントグリル104の上辺に形成された複数の第2爪部138a〜138fも、グリル取付部110の上辺に位置するロアネット108に形成された不図示の係合爪部に係合していない。図5(b)では、フロントグリル104の第2爪部138a、138bの下方に、グリル取付部110の係合爪部142a、142bが位置している状態が代表的に示されている。特に図6(c)のF−F断面にて示すように、第2爪部138aは、ロアネット108に形成された係合爪部142aの上方に位置していて、係合爪部142aに係合していない。
このようにフロントバンパ用グリル取付構造100では、傾斜した側縁112、114に沿って延びるリブ116、118に対して、フィン132、134を前側から接触させて前後方向の位置決めが行われると、フィン132、134、第1爪部136a〜136fおよび第2爪部138a〜138fの下方に、スリット120、孔部140や他の孔部、および係合爪部142a、142bや他の係合爪部がそれぞれ位置している状態となる。
続いて、図7および図8を参照して、上記のようにフィン132とリブ116とを接触させながら、さらにフロントグリル104を下方にスライドさせた状態を説明する。
図7は、図4のフロントグリル104を下方に移動させた状態のフロントバンパ用グリル取付構造100を示す図である。図7(a)は、フロントグリル104がフロントバンパ102に組み付けられた状態のフロントバンパ用グリル取付構造100を概略的に示している。図7(b)は、図7(a)のフロントバンパ用グリル取付構造100のリブ116およびフィン132の周辺を拡大して示す図である。図7(c)は、図7(a)のフロントバンパ用グリル取付構造100のフロントグリル104の上辺およびその周辺を拡大して示す図である。
図8は、図7のフロントバンパ用グリル取付構造100の断面を示す図である。図8(a)は、図7(b)のG−G断面図である。図8(b)は、図7(b)のH−H断面図である。図8(c)は、図7(b)のI−I断面図である。
フロントバンパ用グリル取付構造100は、図7(b)に示すように、フロントグリル104のフィン132が、グリル取付部110のリブ116の根本に形成されたスリット120に嵌り込んでいる。フィン132とリブ116とが接触した状態では、図4(b)に示したように、スリット120はフィン132の下方に位置している。
そのため、フロントグリル104を下方に移動させるだけで、フィン132はリブ116に接触しながら下方にスライドし、リブ116の根本に形成されたスリット120に対して外側に向かって進入し、スリット120に嵌り込むことが可能となる。ここで、上記状態でのフィン132およびリブ116は、これらを水平面で切断した図8(a)に示すG−G断面において、フィン132がグリル取付部110の外側かつ後側に延びて、リブ116の根本に形成されたスリット120に進入し嵌り込んでいる。
フィン132およびリブ116は、上記したようにグリル取付部110の外側にゆくほど車両後方へ向かうよう傾斜していることから、フロントバンパ102にフロントグリル104を近付けて、フロントグリル104のフィン132をフロントバンパ102のリブ116に接触させることで、フロントバンパ102に対するフロントグリル104の前後方向だけでなく左右方向での位置決めも可能となる。
このため、フィン132とリブ116とを接触させた状態から、フロントグリル104を下方に移動させる動作までを連続して行うことができ、作業効率が向上する。また、フィン132をリブ116に接触させた際に、フィン132およびリブ116が撓んだとしても、フロントバンパ102に対するフロントグリル104の位置決めが可能であるから、作業効率は損なわれない。なお、傾斜したフィン132およびリブ116が撓むことで、フィン132をリブ116に接触させた際の衝撃を緩和することもできる。
また、フロントグリル104のフィン132がスリット120に嵌り込むことで、上記複数の第1爪部136a〜136fおよび第2爪部138a〜138fは、対応する上記孔部および係合爪部にそれぞれ嵌り込みあるいは係合している。すなわち第1爪部136aは、図8(b)のH−H断面にて代表的に示すように、グリル取付部110の孔部140に上方から嵌り込んでいる。また、図8(c)のI−I断面にて代表的に示すように、第2爪部138aは、係合爪部142aに上方から係合している。
また、図7(c)に示すように、フロントグリル104の上辺に形成された固定部126には、クリップ144が挿入されることで、フロントバンパ102に対するフロントグリル104の上下方向の動きが規制される。
このようにフロントバンパ用グリル取付構造100では、フロントグリル104をフロントバンパ102に接触させ、フロントグリル104を下方に移動させるだけで、フィン132がスリット120に嵌り込むだけでなく、第1爪部136a〜136fが対応する孔部に嵌り込み、さらに第2爪部138a〜138fが対応する係合爪部に係合する。
このようにして、フロントバンパ用グリル取付構造100では、図7(a)に示すように、フロントバンパ102の前側にフロントグリル104が取り付けられた状態となる。このように、作業者の目視による第1爪部136a〜136fおよび第2爪部138a〜138fなどの複数の爪部の位置決めが不要となり、作業効率が損なわれない。したがって、フロントグリル104に複数の爪部を設定できる。
また、図7(b)に示すように、フロントバンパ102にフロントグリル104が組み付けられた状態では、フィン132およびリブ116は外側から視認できず、仮に取付作業中にこれらの部分に傷が付いたとしても、外観が損なわれない。
図9は、比較例のフロントバンパ用グリル取付構造200を説明する図である。なお図中では、フロントグリル202の裏面を示している。比較例のフロントグリル202は、側縁204、206に上記フィン132、134が形成されていない点で、上記のフロントバンパ用グリル取付構造100と主に異なる。
また、比較例のフロントグリル202では、不図示のフロントバンパからフロントグリル202の裏面に前後方向に図示を省略するスクリューを締付けて固定するためのスクリュー締結部208が形成されている。また、フロントグリル104では、下辺から下方に延びる複数の爪部210a〜210gと、上辺から下方に延びる爪部212a、212bとを有している。さらに、フロントグリル202の上辺には、上方からクリップが挿入される固定部214a、214bが形成されている。
比較例のフロントグリル202をフロントバンパ102に組付けるためには、まず、フロントグリル104に形成された全ての爪部210a〜210g、212a、212bを、フロントバンパに形成された対応する各孔部などに目視にて位置合わせして、爪部210a〜210g、212a、212bを各孔部に嵌め込む必要がある。
このとき、爪部210a〜210g、212a、212bのうち1つでも孔部に位置合わせできない場合には、フロントグリル104をフロントバンパ102に正しく組付けることができず、爪部210a〜210g、212a、212bの破損、あるいはフロントバンパの意匠面を傷付ける可能性がある。
さらに、比較例のフロントグリル202では、全ての爪部210a〜210g、212a、212bをフロントバンパの各孔部に正しく組付けた後、さらにフロントグリル202が前後方向に動かないように、上記スクリュー締結部208にスクリューを締付けて固定する必要がある。
つまり、比較例のフロントバンパ用グリル取付構造200では、フロントグリル202の爪部210a〜210g、212a、212bをフロントバンパの各孔部に嵌め込んだ後、一度フロントバンパを裏返して、工具を用いてスクリューをスクリュー締結部208に締付ける別工程が必要となる。
他の比較例としては、フロントバンパの正面または上面に形成された孔部に対して、フロントグリルの爪部を嵌め込み、さらにフロントグリルの上方からクリップあるいはスクリューを締付けて固定する構造が挙げられる。しかし、このような構造でも上記スクリュー締結部208は必要とされ、上記別工程により作業効率が損なわれてしまう。
これに対して、本実施形態におけるフロントバンパ用グリル取付構造100では、フロントバンパ102のグリル取付部110にフロントグリル104を近付けて、フロントグリル104のフィン132、134をフロントバンパ102のリブ116、118に接触させるだけで、フロントバンパ102に対するフロントグリル104の前後方向の位置決めが可能となる。
フロントバンパ用グリル取付構造100では、前後方向の位置決めを行ったとき、フロントグリル104のフィン132、134の下方にスリット120が位置しているので、フロントグリル104を下方に移動させるだけで、フィン132、134がリブ116、118に接触しながら下方にスライドし、スリット120に進入し嵌り込むことが可能となる。このとき、フロントグリル104の第1爪部136a〜136fおよび第2爪部138a〜138fも、対応する各孔部および係合爪部に嵌り込みあるいは係合する。
このため、作業者は、比較例のようにフロントグリル104の爪部210a〜210g、212a、212bが対応する各孔部の真上に位置するように、目視による微調整(位置合わせ)を行う必要がない。
したがって、フロントバンパ用グリル取付構造100では、フロントバンパ102にフロントグリル104を取付ける場合に、フロントバンパ102に対するフロントグリル104の前後方向の位置決めおよびその後の組付作業を容易に行うことができる。
また、フロントグリル104のフィン132、134は、グリル取付部110のスリット120に嵌り込んだ状態で前後方向の動きが規制される。このため、比較例での前後方向の動きを規制する別工程は不要となり、作業工程を削減できる。なお、比較例でのフロントグリル202の裏面に締付け固定するスクリューを廃止することで、コストや重量も低減できる。
また、フロントグリル104のフィン132、134によって、作業者は、目視による第1爪部136a〜136fおよび第2爪部138a〜138fの位置合わせを行うことなく、フロントグリル104をフロントバンパ102に組み付けられるので、多数の爪部を設定できる。なおフロントグリル104では、合計12個の爪部を設定していて、フロントバンパ102へのより強固な固定が可能となる。このため、図7(c)に示したように、クリップ144が挿入されるフロントグリル104の固定部126は1つで済む。なお、比較例では、フロントグリル202の左右方向で2つの固定部214a、214bが必要とされる。よって、固定部126の数を減らすことで、その分、コスト、重量および組付工数も削減できる。
さらに、柔軟性を有する合成樹脂製のベースグリル122にフィン132、134が形成され、さらに、ベースグリル122とガーニッシュ124とは密着せず、隙間を介して配置してよい。このため、フィン132、134をリブ116、118に接触させた場合に、ベースグリル122は、ガーニッシュ124に対して例えば隙間の分だけ移動可能となり、フィン132、134をリブ116、118に接触させた際の衝撃を吸収できる。
また上記実施形態では、フィン132およびリブ116は、これらを水平面で切断した図6(a)および図8(a)に示すように、グリル取付部110の外側にゆくほど後側へ向かうよう傾斜して延びているとしたが、これに限定されない。
図10は、他の実施形態におけるフロントバンパ用グリル取付構造100Aを示す図である。なお図10は、例えば図6(a)に示す断面図に対応している。フロントバンパ用グリル取付構造100Aは、フィン132Aおよびリブ116Aが左右方向に延びている点で、上記フロントバンパ用グリル取付構造100と異なる。
このようなフロントバンパ用グリル取付構造100Aであっても、フィン132Aがリブ116Aに接触することで、フロントバンパ102Aに対するフロントグリル104Aの前後方向の位置決めが可能となり、その後、フロントグリル104Aを下方にスライドさせることで、フロントバンパ102Aへの組付を行うことができる。
さらに、上記実施形態では、フロントバンパ102にフロントグリル104を取付ける取付構造について説明したが、これに限定されない。一例として、上記フィン132、134と、根本にスリット120が形成されたリブ116、118とを有する構造を採用すれば、例えば車両の内装部品など、裏側からスクリューの締付けが困難な部品に適用しても、前後方向の位置決めを容易に行うことが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。