JP5966650B2 - 車両用変速装置 - Google Patents
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Description
MT車のレリーズ機構は、ギアシフト機構から独立して動作可能な構成を有する。このため、MT車には、ギアシフト機構を操作するためのシフトレバーと、これとは別にクラッチを操作するためのクラッチレバーとが設けられる。運転者は、まずクラッチレバーを操作し、次いでシフトレバーを操作することによってシフトチェンジを行う。
これに対して、AT車のレリーズ機構は、ギアシフト機構と連動して動作する構成を有する。たとえば、AT車のレリーズ機構およびギアシフト機構は、シフトレバーのストロークの前半を用いてクラッチを切断状態に切り替え、ストロークの後半を用いて変速ギアの組み合わせを変更する。したがって、運転者は、シフトレバーの操作のみによってシフトチェンジを行うことができる。
AT車のシフトレバーのストローク量を小さくするため、たとえば、シフトレバーとシフトシャフトとの間にリンク機構が設けられる構成が提案されている(特許文献1参照)。シフトレバーのストロークは、このリンク機構によって増幅されてシフトシャフトに伝達される。このため、シフトチェンジに要するシフトレバーのストローク量を小さくできる。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、リンク機構が必要であるため部品点数が増加する。このため、自動二輪車のコストの上昇を重量の増加を招く。さらに、シフトレバーの操作に要する力が大きくなるため、リンク機構を構成する部材が撓みやすくなる。その結果、シフトレバーの操作感が悪化するおそれがある。一方、操作感の悪化を防止するためにリンク機構の剛性を高くすると、さらなるコストの上昇と重量の増加を招く。
このほかに、内燃機関の内部に、シフト駆動軸とクラッチレリーズ軸とが別個に配設されるとともに、リンク機構によってシフト駆動軸とクラッチレリーズ軸とが連結される構成が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載の構成によれば、シフト駆動軸とクラッチレリーズ軸とが別々に配設されるため、内燃機関の大型化を招く。また、同一の内燃機関をMT車に適用する場合にも、リンク機構が必要になる。このため、MT車のコストの上昇と重量の増加を招く。
まず、本発明の実施形態にかかる車両用変速装置3が適用される自動二輪車1について、図1と図2を参照して説明する。図1は、自動二輪車1の構成を模式的に示す右側面図である。図2は、自動二輪車1の左側面図である。なお、説明の便宜上、自動二輪車1および車両用変速装置3の前後上下左右の各向きは、自動二輪車1に乗車する運転者の向きを基準とする。自動二輪車1および車両用変速装置3を構成する部材や機器についても同様とする。各図においては、必要に応じて、自動二輪車1および車両用変速装置3の上方を矢印Tpで、下方を矢印Btで、前方を矢印Frで、後方を矢印Rrで、左方を矢印Lで、右方を矢印Rで示す。
車体フレーム11は、ステアリングヘッドパイプ111と、左右一対のメインフレーム112と、左右一対のダウンチューブ113と、左右一対のリヤフレーム114とを含む。
ステアリングヘッドパイプ111は、ステアリングシャフト121(後述)を回転可能に支持する部分であり、後傾する管状に形成される。左右一対のメインフレーム112は、互いに左右方向に所定の距離をおいて離間し、ステアリングヘッドパイプ111から後方斜め下に向かって延伸する。左右一対のダウンチューブ113は、ステアリングヘッドパイプ111から略下方に向かって延伸し、さらに後方に向かって延伸する。左右一対のダウンチューブ113の先端部(上端部)はステアリングヘッドパイプ111に接合され、後端部(下端部)は左右一対のメインフレーム112の後端部(下端部)に接合される。左右一対のリヤフレーム114は、左右方向に所定の距離をおいて互いに離間しており、メインフレーム112の後部から後方斜め上方に向かって延伸する。
ステアリングヘッドパイプ111と、左右一対のメインフレーム112と、左右一対のダウンチューブ113と、左右一対のリヤフレーム114とは、鉄系またはアルミニウム合金などによって形成され、溶接などによって一体に接合される。また、左右一対のメインフレーム112と、左右一対のダウンチューブ113と、左右一対のリヤフレーム114は、いずれも棒状に形成される。
シリンダブロック211は、クランクケースアセンブリ23の前寄りの上側に設けられる。シリンダブロック211の内部には、燃焼室214が形成される。燃焼室214の内部には、ピストン215が往復動可能に配設される。
シリンダヘッド212は、シリンダブロック211の上側に設けられる。シリンダヘッド212には、インテークポート216とエグゾーストポート217とが形成される。インテークポート216とエグゾーストポート217とは、それぞれ、燃焼室214の内部と外部とを連通する。インテークポート216にはエアクリーナ(図略)などが接続される。エグゾーストポート217には排気装置15の排気管151が接続される。さらにシリンダブロック211には、インテークポート216を開閉する吸気バルブと、エグゾーストポート217を開閉する排気バルブと、吸気バルブと排気バルブを駆動するバルブ駆動機構とが設けられる(いずれも図略)。このほか、シリンダヘッド212には、点火プラグ218が設けられる。
シリンダヘッドカバー213は、シリンダヘッド212の上側に設けられる。そして、シリンダヘッドカバー213は、シリンダヘッド212に設けられるバルブ駆動機構などの各種機構や部材を覆う。
クランク室231の内部には、クランクシャフト233が配設される。クランクシャフト233は、その軸線(回転中心線)が左右方向を向く姿勢で、クランクケースアセンブリ23の筐体230に回転可能に支持される。クランクシャフト233とピストン215とは、コンロッド219によって連結される。クランクシャフト233の一端部(右側端部)には、プライマリドライブギア234が設けられる。プライマリドライブギア234は、クランクシャフト233と一体に回転する。
ミッション室232の内部には、カウンターシャフト311とドリブンシャフト312とが配設される。カウンターシャフト311とドリブンシャフト312とは、クランクケースアセンブリ23の筐体230に回転可能に支持される。カウンターシャフト311は、クランクシャフト233の後側に、クランクシャフト233に平行に配設される。ドリブンシャフト312は、カウンターシャフト311の後側に、カウンターシャフト311に平行に配設される。
カウンターシャフト311の一端部(右側端部)近傍には、プライマリドリブンギア237が同軸に設けられる。プライマリドリブンギア237は、クランクシャフト233に設けられるプライマリドライブギア234と噛み合っており、クランクシャフト233から回転動力が伝達されて回転する。ミッション室232の側方(右側)であって、プライマリドリブンギア237の右側には、クラッチ25が設けられる。クラッチ25は、カウンターシャフト311およびプライマリドリブンギア237に同軸に設けられる。また、クラッチ25は、クランクケースアセンブリ23の筐体230の右側に設けられるクラッチカバー257に覆われる。クラッチ25は、プライマリドリブンギア237とカウンターシャフト311の間で、回転動力の伝達を断続する。したがって、クラッチ25が繋がった状態にあると、クランクシャフト233の回転動力はカウンターシャフト311に伝達される。一方、クラッチ25が切断した状態にあると、プライマリドリブンギア237は空転し、クランクシャフト233の回転動力はカウンターシャフト311に伝達されない。そして、クランクケースアセンブリ23には、クラッチ25を繋がった状態から切断した状態に切り替えるレリーズ機構32が設けられる。
クラッチハウジング251は、軸線方向の一方が開放するカップ状の構成を有する。そして、クラッチハウジング251は、プライマリドリブンギア237の右側に、開放する側が軸線方向右側を向く姿勢で設けられる。クラッチハウジング251とプライマリドリブンギア237とは、緩衝機構などを介して接続される。そして、クラッチハウジング251は、プライマリドリブンギア237と一体に回転する。
複数のドライブプレート253は、中心部に貫通孔が形成される円盤状の部材である。そして、複数のドライブプレート253は、クラッチハウジング251の内周側に、軸線方向に所定の間隔をおいて並べられるように設けられる。複数のドライブプレート253は、クラッチハウジング251と一体に回転する。
クラッチスリーブハブ252は、円筒状の構成を有する。そして、クラッチスリーブハブ252は、カウンターシャフト311の一端部(右側端部)に設けられる。カウンターシャフト311の一端部(右側端部)近傍は、クラッチハウジング251の内周に入り込んでいる。そして、クラッチスリーブハブ252は、クラッチハウジング251の内周に位置する。
複数のドリブンプレート254は、中心部に貫通孔が形成される円盤状の部材である。そして、複数のドリブンプレート254は、クラッチスリーブハブ252の外周側に、軸線方向に所定の間隔をおいて並べられるように設けられる。複数のドリブンプレート254は、クラッチスリーブハブ252と一体に回転する。そして、クラッチハウジング251に設けられる複数のドライブプレート253と、クラッチスリーブハブ252に設けられる複数のドリブンプレート254とが、軸線方向に交互に並ぶ。
プレッシャープレート256は、コイルばねなどの付勢部材255の付勢力によって、複数のドライブプレート253と複数のドリブンプレート254とを所定の圧力をもって接触させる。プレッシャープレート256は、カウンターシャフト311に対して軸線方向に往復動可能に設けられる。プレッシャープレート256とクラッチスリーブハブ252との間に付勢部材255としての圧縮コイルばねが架設される。そして、プレッシャープレート256は、付勢部材255によって、往復動の可動範囲の右側に向かって付勢される。その結果、複数のドライブプレート253と複数のドリブンプレート254とは、プレッシャープレート256とクラッチスリーブハブ252とに所定の圧力をもって挟まれる。このため、プレッシャープレート256に付勢部材255の付勢力以外の力が掛かっていない状態においては、クラッチ25は繋がった状態に維持される。
一方、プレッシャープレート256が軸線方向左側に移動すると、複数のドライブプレート253と複数のドリブンプレート254とを接触させる力が無くなる。そうすると、クラッチ25は切断した状態となる。
このような構成のクラッチ25は、プライマリドリブンギア237に伝達された回転動力を、クラッチハウジング251と、複数のドライブプレート253と、複数のドリブンプレート254と、クラッチスリーブハブ252とを介して、カウンターシャフト311に伝達することができる。そして、プレッシャープレート256に軸線方向左向きの力を掛けることによって、クラッチ25を繋がった状態から切断した状態に切り替えることができる。
そして、クランクケースアセンブリ23には、レリーズ機構32が設けられる。レリーズ機構32は、プレッシャープレート256に軸線方向左向きの力を加えることによって、クラッチ25を繋がった状態から切断した状態に切り替える(詳細は後述)。
なお、前記構成は一例であり、エンジンユニット2に適用されるクラッチ25の構成は前記構成に限定されない。要は、クラッチ25は、プレッシャープレート256に軸線方向左向きの力が加えられると繋がった状態から切断した状態に切り替わる構成であればよい。
カウンターシャフト311に設けられる複数の変速ギア313の一部は、カウンターシャフト311に一体に回転する(このような変速ギア313を、「一体回転ギア」と称する)。残りの変速ギア313は、カウンターシャフト311に対して相対的に回転可能である(このような変速ギア313を、「フリー回転ギア」と称する)。また、カウンターシャフト311に設けられる複数の変速ギア313のうちの一部(たとえば、複数の一体回転ギアの一部または全部)は、軸線方向に往復動可能である(このような変速ギア313を、「スライドギア」と称する)。スライドギアと、スライドギアに軸線方向に隣接するフリー回転ギアとには、ドッグクラッチが設けられる。そして、スライドギアが軸線方向に移動して隣接するフリーギアに接近すると、ドッグクラッチが繋がった状態となる。そうすると、当該フリーギアは、カウンターシャフト311と一体に回転する。一方、スライドギアが軸線方向に移動して隣接するフリーギアから遠ざかると、ドッグクラッチが切断した状態となる。そうすると、当該フリーギアは、カウンターシャフト311に対して相対的に回転可能な状態となる。
ドリブンシャフト312に設けられる複数の変速ギア313も、カウンターシャフト311に設けられる複数の変速ギア313と同様な構成を有する。
カウンターシャフト311に設けられる一体回転ギアのそれぞれと、ドリブンシャフト312に設けられるフリー回転ギアのそれぞれとは、常時噛み合っている。同様に、カウンターシャフト311に設けられるフリー回転ギアのそれぞれと、ドリブンシャフト312に設けられる一体回転ギアのそれぞれとは、常時噛み合っている。そして、スライドギアの移動によって、カウンターシャフト311からドリブンシャフト312に回転動力を伝達する変速ギア313の組み合わせ(回転動力の伝達経路)を変更できる。
なお、本発明の実施形態にかかる車両用変速装置3は、常時噛み合い方式である。そして、カウンターシャフト311と、ドリブンシャフト312と、複数の変速ギア313とは、従来公知の常時噛み合い方式の車両用変速装置と同じ構成が適用できる。
クランクケースアセンブリ23には、所定のスライドギアを軸線方向に移動させるギアシフト機構5が設けられる。
アームプレート54の第二の腕546の半径方向先端部(またはその近傍)には、増幅リンク機構64の第一の連結ピン542が設けられる。第一の連結ピン542は、レバー側に突出する円柱状の構成を有する。
なお、レリーズアーム53の係合部531の円周方向寸法は、アームプレート54の被係合部541の内周面どうしの間の寸法よりも小さい(図8参照)。そして、レリーズアーム53とアームプレート54の両方が中立位置にあると、レリーズアーム53の係合部531は、アームプレート54の被係合部541の円周方向中心に位置する。このため、レリーズアーム53の係合部531の円周方向の両端面と、アームプレート54の被係合部541の両内周面との間には、同じ寸法の隙間Mが形成される(図8参照)。このような構成であると、レリーズアーム53が回転を開始しても、レリーズアーム53の係合部531がアームプレート54の被係合部541に接触するまでは、アームプレート54は揺動を開始しない。したがって、アームプレート54は、レリーズアーム53の回転に遅延して揺動を開始する。このように、本実施形態おいては、レリーズアーム53の係合部531と、アームプレート54の被係合部541とが、遅延機構652となる。
なお、図8に示すように、アームプレート54が中立位置にあると、リンク軸56と、第一の連結ピン542の中心と、第二の連結ピン573の中心と、シフトシャフト51の中心Oとが、軸線方向視で直線A上に並ぶ。そして、リンク軸56に近い側から順に、第一の連結ピン542、第二の連結ピン573の順に並ぶ。このように、第二の連結ピン573は、第一の連結ピン542よりも、リンク軸56(リンクアーム55の揺動中心)から遠い位置にある。このような構成であると、第二の連結ピン573の揺動のストロークは、第一の連結ピン542の揺動のストロークよりも大きくなる。したがって、アームプレート54の揺動は、リンクアーム55によって増幅されて、過回転防止部材57に伝達される。このため、過回転防止部材57の揺動のストロークを、アームプレート54の揺動のストロークに比較して大きくできる。このように、増幅リンク機構64は、レリーズアーム53の回転ストローク(シフトシャフト51の回転ストローク)を増幅して、過回転防止部材57およびシフトアーム58に伝達する。
過回転防止部材57とシフトアーム58とは、シフトシャフト51に同軸でかつ相対的に揺動可能(回転可能)に設けられる。たとえば、過回転防止部材57とシフトアーム58とには、軸線方向に貫通する支持孔576,587が形成され、これら支持孔576,587にシフトシャフトが相対的に揺動可能に挿入される。
また、過回転防止部材57とシフトアーム58とは、一体に揺動する。具体的には、過回転防止部材57には、クラッチ側に突出する第三の連結ピン571が設けられる。一方、シフトアーム58には、軸線方向に貫通する連結孔584が形成される。そして、過回転防止部材57の第三の連結ピン571が、シフトアーム58の連結孔584にレバー側から入り込んでいる(係合している)。このため、過回転防止部材57の揺動は、第三の連結ピン571を介してシフトアーム58に伝達される。
ギアシフト機構5は、第二復元バネ631と、第二位置決めピン632とを有する。そして、第二復元バネ631と、第二位置決めピン632と、過回転防止部材57に設けられる第二位置決め突起575とによって、第二復元機構63が構成される。過回転防止部材57とシフトアーム58とは、第二復元機構63によって、所定の揺動方向位置(中立位置)に保持される。また、第二復元バネ631の復元力は、過回転防止部材57と、リンクアーム55と、アームプレート54と、レリーズアーム53とを介してシフトシャフト51に伝達される。このため、シフトシャフト51も、第二復元機構63によって、中立位置に保持される。なお、第二復元機構63の構成は、第一復元機構62の構成と共通である。したがって、説明は省略する。過回転防止部材57とシフトアーム58とは、中立位置から正逆両方向に、所定の角度揺動することができる。
シフトアーム58には、軸線方向に貫通する連結孔584と開口部581とが形成される。前記のとおり、連結孔584には、過回転防止部材57の第三の連結ピン571が入り込んでいる。開口部581の半径方向外側の部分には、レバー側に向かって張り出す膨出部586が形成される。このため、膨出部586は、他の部分に比較して、シフトカム81の端面に接近している。膨出部586には、二つの押圧面582が形成される。二つの押圧面582は、円周方向に離間して互いに対向している。また、膨出部586の円周方向両側には、傾斜面583が形成される。このため、シフトアーム58の過回転防止部材57の側の面は、円周方向の中心に向かうにしたがって、徐々にシフトカム81に接近する。
シフトアーム58が中立位置にあると、二つの押圧面582の間に、複数のシフトピン813のうちの円周方向に隣接する二つが入り込む(図8参照)。そして、シフトアーム58が正逆いずれかの方向に揺動すると、二つの押圧面582の一方が、二つのシフトピン813の一方をシフトカム81の回転方向に押圧する。したがって、シフトカム81が回転する。このように、シフトアーム58は、シフトピン813を介してシフトカム81を回転させる。
なお、シフトアーム58は、軸線方向に往復動できる構成ではなく、半径方向外側の部分がクラッチ側に倒れるように傾斜できる構成であってもよい。この場合には、付勢部材651によって、シフトアーム58の膨出部586がシフトカム81に最も接近する位置に付勢される。
図5と図6に示すように、レリーズ機構32は、腕部材322と、第一押圧部材321と、第二押圧部材324と、球体325と、付勢部材323とを有する。腕部材322は、第一押圧部材321とクラッチ25のプレッシャープレート256とに跨るように設けられる(特に図5参照)。そして、腕部材322の中間部は、クランクケースアセンブリ23の筐体230(またはクラッチカバー257)に揺動可能に支持される。第一押圧部材321は、シフトシャフト51のクラッチ側の端部に設けられる。第二押圧部材324は、レリーズアーム53のクラッチ側に並べて設けられる。そして、第一押圧部材321と第二押圧部材324との間には付勢部材323が設けられる。付勢部材323には、圧縮コイルばねが適用される。球体325は、第二押圧部材324とレリーズアーム53との間に介在するように設けられる。第二押圧部材324とレリーズアーム53のそれぞれの互いに対向する面には凹部が形成される。球体325は、これらの凹部に嵌まり込んでいる。
それぞれの互いに対向する側には、そして、球体325は、付勢部材323の付勢力によって、第二押圧部材324とレリーズアーム53とに挟まれた状態に維持される。
シフトシャフト51が中立位置にあると、球体325は、第二押圧部材324とレリーズアーム53の凹部の最も深い位置に嵌まり込んだ状態にある。この状態では、第一押圧部材321は腕部材322を押圧しない。
シフトシャフト51が中立位置から回転すると、レリーズアーム53と第二押圧部材324に設けられる凹部の円周方向の相対位置が変化し、球体325は凹部の最も深い位置から移動する。このため、第二押圧部材324は球体325によってクラッチ側に押されて移動する。このため、第一押圧部材321は第二押圧部材324と一体となってクラッチ側に移動し、腕部材322の一端部を軸線方向右側に向かって押圧する。そうすると、腕部材322は、中間部(揺動可能に支持される部分)を中心に搖動する。そして、腕部材322の他端部がクラッチ25のプレッシャープレート256をクランクシャフト233の軸線方向左側に向かって押圧する。その結果、クラッチ25のドライブプレート253とドリブンプレート254との間の付勢力が無くなり(または小さくなり)、クラッチ25は繋がった状態から切断した状態に切り替わる。
シフトシャフト51が中立位置に戻ると、腕部材322はプレッシャープレート256を押圧しなくなる。したがって、クラッチ25は切断している状態から繋がっている状態に切り替わる。
第二押圧部材324は、シフトシャフト51が中立位置から回転を開始すると、直ちにクラッチ側に移動する構成を有する。具体的には、シフトシャフト51が回転を開始してからレリーズアーム53の係合部531がアームプレート54の被係合部541に接触するまでの間に、クラッチ25を繋がった状態から切断した状態に切り替えることができる構成を有する。
なお、腕部材322の一端を変位させるための構成は、前記構成に限定されるものではない。シフトシャフト51の回転を腕部材322の軸線方向に押圧する運動に変換できる構成であればよい。
また、図9および図11と、図10および図12とは、シフトレバー52が反対向きに操作された場合の動作を示す。
シフトシャフト51が中立位置にあると、第一押圧部材321は腕部材322を押圧しないため、クラッチ25は繋がった状態に維持される。このため、この状態においては、クランクシャフト233の回転は、クラッチ25を介してカウンターシャフト311に伝達される。カウンターシャフト311の回転は、変速ギア313の所定の組み合わせを介してドリブンシャフト312に伝達される。ドリブンシャフト312に伝達された回転動力は、ドライブチェーンスプロケット146とドライブチェーン145とを介して後輪142に伝達される。
また、過回転防止部材57が揺動すると、ストッパ部572は、シフトピン813の回転軌跡内に入り込み、ある一つのシフトピン813の回転方向前方に位置する。このため、シフトカム81はそれ以上回転できない。このように、過回転防止部材57は、シフトカム81が所定の角度を超えて回転することを防止する。
なお、シフトアーム58は、中立位置に戻る際に、軸線方向左側に移動することによって、シフトピン813を乗り越える。すなわち、シフトアーム58が図11と図12に示す位置から図8に示す位置に戻る際に、傾斜面583がシフトピン813に接触する。そして、傾斜面583がシフトピン813を押す力の反力によって、シフトアーム58はクラッチ側(シフトカム81から離れる向き)に移動する。
シフトシャフト51の中心Oおよびリンク軸56の中心Pは、シフトカム81の回転中心Qよりも下方に位置する。また、リンク軸56の中心Pは、シフトシャフト51の中心Oよりも前側に位置する。そして、シフトシャフト51の中心Oおよびリンク軸56の中心Pを通過する直線Aは、略水平となる。アームプレート54の第二の腕546は、中立位置においては、シフトシャフト51から前側に向かって略水平に突出する。一方、リンクアーム55は、中立位置においては、リンク軸56から後方に向かって略水平に突出する。このため、中立位置においては、第一の連結ピン542の中心と、第二の連結ピン573の中心とは、リンク軸56の中心Pとシフトシャフト51の中心Oとの間に位置し、直線A上に(一直線上に)並ぶ。具体的には、軸線方向視(側面視)において、アームプレート54の第二の腕546の先端部とリンク軸56の後端部とが重畳する。リンクアーム55には、前記重畳する部分に係合孔551が形成される。リンクアーム55の係合孔551は、リンク軸56の半径方向(リンクアーム55の揺動の半径方向)に長い長孔である。この係合孔551には、第一の連結ピン542と第二の連結ピン573とが係合する。このように、シフトシャフト51の回転を増幅してシフトアーム58に伝達する増幅リンク機構64は、シフトシャフト51とリンクアーム55との間に設けられる。このような構成によれば、増幅リンク機構64の半径方向の小型化を図ることができる。
また、このような構成であると、前後方向に関しては、シフトカム81を、シフトシャフト51とリンク軸56との間に配設することができる。さらに、シフトカム81がシフトシャフト51よりも前側に位置するため、アームプレート54を後方斜め上方に向かって突出する構成にできる。したがって、アームプレート54の第一の腕545の後方への突出量を小さくすることができるから、ギアシフト機構5の前後方向の小型化を図ることができる。
図13に示すように、ギアシフト機構5は、側面視において、カウンターシャフト311およびドリブンシャフト312の下方であって、クランクケースアセンブリ23の筐体230の底部近傍に設けられる。
前記のとおり、本発明の実施形態によれば、ギアシフト機構5の上下方向の小型化を図ることができるから、カウンターシャフト311およびドリブンシャフト312と、クランクケースアセンブリ23の筐体230の底面との間の狭いスペースに配設できる。または、ギアシフト機構5が、カウンターシャフト311およびドリブンシャフト312の下側に配設される構成であっても、クランクケースアセンブリ23が上下方向に大型化することを防止または抑制できる。特に、リンクアーム55が上下方向に揺動した場合であっても、リンクアーム55がレリーズアーム53の下辺よりも下側に突出することがない。換言すると、ギアシフト機構5が動作した場合であっても、ギアシフト機構5の上下方向寸法は大きくならない。このため、ギアシフト機構5の下側(クランクケースアセンブリ23の筐体230の底面近傍)に、無駄なスペースが生じることを防止できる。
Claims (7)
- 複数の変速ギアと、
前記複数の変速ギアを移動させるシフトフォークと、
回転することによって前記シフトフォークを移動させるシフトカムと、
筐体に回転可能に支持されるシフトシャフトと、
前記シフトシャフトに相対的に回転可能に支持され、揺動することによって前記シフトカムを回転させるシフトアームと、
前記シフトシャフトの回転ストロークを増幅して前記シフトアームに伝達するリンク機構と、
を有し、
前記リンク機構は、
前記シフトシャフトに回転可能に支持されるアームプレートと、
前記筐体に固定されるリンク軸と、
前記リンク軸に回転可能に支持されるリンクアームと、
前記リンクアームと前記アームプレートとを揺動を伝達可能に連結する第一の連結ピンと、
前記リンクアームと前記シフトアームとを揺動を伝達可能に連結する第二の連結ピンと、
を有し、
前記リンク軸の中心から前記シフトシャフトの中心に向かって、前記第一の連結ピン、前記第二の連結ピンの順に配設され、
前記リンク軸の少なくとも一部は、前記シフトシャフトの軸線方向視において、前記シフトアームの回転軌跡の外縁よりも半径方向内側に位置することを特徴とする車両用変速装置。 - 複数の変速ギアと、
前記複数の変速ギアを移動させるシフトフォークと、
回転することによって前記シフトフォークを移動させるシフトカムと、
筐体に回転可能に支持されるシフトシャフトと、
前記シフトシャフトに相対的に回転可能に支持され、揺動することによって前記シフトカムを回転させるシフトアームと、
前記シフトシャフトの回転ストロークを増幅して前記シフトアームに伝達するリンク機構と、
を有し、
前記リンク機構は、
前記シフトシャフトに回転可能に支持されるアームプレートと、
前記筐体に固定されるリンク軸と、
前記リンク軸に回転可能に支持されるリンクアームと、
前記リンクアームと前記アームプレートとを揺動を伝達可能に連結する第一の連結ピンと、
前記リンクアームと前記シフトアームとを揺動を伝達可能に連結する第二の連結ピンと、
を有し、
前記リンク軸の中心から前記シフトシャフトの中心に向かって、前記第一の連結ピン、前記第二の連結ピンの順に配設されているものであり、
駆動源からの回転動力の伝達を断続するクラッチを前記シフトシャフトの回転によって繋がった状態から切断した状態に切り替えるレリーズ機構と、
前記シフトシャフトの回転を前記アームプレートに伝達するレリーズアームと、
前記アームプレートの回転を前記レリーズアームの回転より遅延させる遅延機構と、
をさらに有し、
前記遅延機構は、前記シフトシャフトが回転して前記クラッチが繋がった状態から切断した状態に切り替わってから前記アームプレートを揺動させることを特徴とする車両用変速装置。 - 前記リンク軸と前記シフトシャフトの中心を通過する直線の方向視において、前記リンクアームの揺動の範囲は、前記レリーズアームの外周よりも内側にあることを特徴とする請求項2に記載の車両用変速装置。
- シフトシャフトの軸線方向視において、前記第二の連結ピンは、前記シフトアームの揺動方向の中心線と、前記揺動方向の中心線に平行で前記シフトアームの揺動方向の端部を通過する直線との間に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用変速装置。
- 前記リンク軸と、前記第一の連結ピンと、前記第二の連結ピンと、前記シフトシャフトの中心は、一直線上に並ぶことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用変速装置。
- 前記リンクアームは、側面視において前記シフトカムよりも下方に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用変速装置。
- 前記リンクアームは、側面視において前記変速ギアよりも下方に設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用変速装置。
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