JP5964225B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、空気入りタイヤ、特にカーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側に巻き上げる構造の空気入りタイヤに関する。
従来より、カーカスプライをビードの周囲においてタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ巻き上げられ、カーカスプライの外側にインナーライナー及びラバーチェーハ―が備えられている空気入りタイヤが提案されているが、インナーライナーの上にラバーチェーハ―を重ねて配置すると、インナーライナーに接着させることになるが、インナーライナーはタイヤ内の空気が透過しないように少なくともその外面側は低透過性ゴムで構成されており、低透過性ゴムはモジュラス値が低く、一方、ラバーチェーハーのモジュラス値が高く、その差が大きいために接着しにくいという課題がある。
従来公知の下記特許文献1には、部分的にスリットを設けることで、インナーライナーとカーカスプライに発生する気泡を抑制し、内圧低下を防いだ空気入りタイヤが示されている。また、下記特許文献2には、インナーライナー層の外内にサイドウォールゴムとは異なる補強ゴムを配置することで、ランフラット性を向上させた空気入りタイヤが示されている。
特表2011−530449号公報 特開平11−348515号公報
しかしながら、上記特許文献1に示される公知技術においては、インナーライナーにスリットが設けられているため、エア抜けする問題がある。また、インナーライナーとラバーチェーハーとの接着性を良くする技術は開示されていない。上記特許文献2に示される公知技術においては、インナーライナーの内面に設けた上下の保護ゴム層はインナーライナーと同質のゴムで形成することができ、上下の保護ゴム層は複素弾性率7〜13MPaで構成されているため、インナーライナーの変形に追従できず、保護ゴム層とインナーライナーとの層間における耐久性が低下する欠点がある。
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、空気入りタイヤにおいて、インナーライナーはタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げ、カーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側へ巻き上げる構造において、ラバーチェーハーと接するインナーライナー側の面の一部を接着性の良いゴムにし、当該箇所をラバーチェーハーで覆うことで、エア透過性を損なうことなく、部材の接着性を高め、耐久性を向上させることができることを見出した。
本発明に係る請求項1に記載の空気入りタイヤは、ビードコアを含む左右一対のビードと、前記ビードコアに架け渡されたカーカスプライと、前記カーカスプライの内周側に配置されるインナーライナーを有する空気入りタイヤにおいて、前記カーカスプライがビードコアの周りをタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側へ巻き上げられてなり、前記インナーライナーの両端部が前記ビード及び前記カーカスプライの間に延在してなり、前記ビードコアの周りにおいて、ラバーチェーハーが配置されてなり、前記インナーライナーの一部に前記ラバーチェーハーを接着するための接着補強ゴム層を設け、前記接着補強ゴム層の300%モジュラス値が、前記インナーライナーの300%モジュラス値よりも高く、前記ラバーチェーハーの300%モジュラス値よりも低いことを特徴とするものである。
上記のように構成したことにより、本発明に係る空気入りタイヤは、インナーライナーの一部に設けた接着補強ゴム層とラバーチェーハーとの接着性が高くなる。
本発明に係る請求項2に記載の空気入りタイヤは、上記請求項1において、前記接着補強ゴム層の300%モジュラス値が4.1MPa〜6.1MPaであり、前記インナーライナーの300%モジュラス値が3.0MPa〜4.0MPaであることを特徴とするものである。なお、ラバーチェーハーの300%モジュラス値は14MPa以下であることが望ましい。
本発明に係る請求項3に記載の空気入りタイヤは、上記請求項1又は2において、前記接着補強ゴム層は、前記ビード下端から前記タイヤトレッド面上端までの垂直高さの下端から5%〜55%の範囲であることを特徴とするものである。
本発明に係る請求項4に記載の空気入りタイヤは、上記請求項1〜3のいずれか1項において、前記接着補強ゴム層の上端は前記ラバーチェーハーにより被覆されていることを特徴とするものである。
本発明の空気入りタイヤは、上記のように、インナーライナーの一部に設けた接着補強ゴム層とラバーチェーハーとの接着性が高くなるので、インナーライナーとラバーチェーハーとの変形による追従性が向上し、耐久性が向上する。
本発明の実施例1に係る空気入りタイヤの概略部分断面図である。 図1の部分拡大図である。
以下、本発明に係る好適な実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
実施例1の概要は、タイヤの幅方向内側にインナーライナーを配置し、タイヤの幅方向外側にカーカスプライを配置したものであり、インナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ、カーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側へ巻き上げる構造である。
図1及び図2は実施例1を示し、図中の符号Tは空気入りタイヤを示し、当該空気入りタイヤTは、タイヤトレッド1、サイドウォール2及びビード3を備えている。タイヤトレッド1は、ベルト及びベルト補強1a及びトレッドゴム1bを含む。ビード3は、ビードコア3a及びビードコア3aよりタイヤ半径方向外方に延びる硬質ゴムよりなるビードフィラー3bを含む。
符号4は、タイヤ内面に配置されているインナーライナーであり、ビードコア3aの周りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ巻き上げられている。符号5は、カーカスプライであり、当該カーカスプライ5は、タイヤトレッド1、サイドウォール2及びビード3に亘って各ビードコア3a間を跨ぐように配置されており、ビードコア3aの周りをタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側へ巻き上げられている。そして、前記インナーライナー4及びカーカスプライ5は、ビードコア3aの周りにおいて、インナーライナー4がカーカスプライ5の内側に配置されている。
また、符号6は、ラバーチェーハーであり、当該ラバーチェーハー6は、ビードコア3aの周りにおいて、インナーライナー4及びカーカスプライ5を被覆するように配置されている。したがって、インナーライナー4及びカーカスプライ5は、それらの端部4a、5aを含めてビード3の表面に露出しない。
前記インナーライナー4において、タイヤ幅方向内側の一部に接着補強ゴム層7が設けられており、接着補強ゴム層7の上端7’はラバーチェーハー6により被覆されている。すなわち、前記ビードの下端3a’から前記ラバーチェーハー6の上端6’までの垂直高さをHRCH、ビード下端3a’から前記接着補強ゴム層7の上端7’までの高さをHAとすると、HRCHの方がHAより大きい値となる。逆にHAの方がHRCHより大きくなるとエア透過性が悪くなり、エア抜けするおそれがあると共に耐久性が低下する。
また、前記ビード下端3a’から前記タイヤトレッド面上端1’までの垂直高さをHとすると、インナーライナー4における前記接着補強ゴム層7は前記垂直高さHの20%〜33%の範囲Aを占めている。なお、接着補強ゴム層7は、垂直高さHの下端から5%〜55%の範囲(長さとしては5〜25mm)を占めることが好ましい。接着補強ゴム層7の下端が5%未満又は上端が55%を超えると耐久性が低下し、接着補強ゴム層7の長さが5mm未満では接着性が十分でなく、25mmを超えるとエア透過性が悪くなり、エア抜けするおそれがある。
本実施例における前記ラバーチェーハー6の300%モジュラス値は10.0MPaであり、前記インナーライナー4の300%モジュラス値は3.0MPaであり、前記接着補強ゴム層7の300%モジュラス値は、ラバーチェーハー6の300%モジュラス値とインナーライナー4の300%モジュラス値との間の4.2MPaである。このように構成することにより、前記接着補強ゴム層7と前記ラバーチェーハー6との接着性が高まる。なお、前記接着補強ゴム層の300%モジュラス値は4.1MPa〜6.1MPaであり、前記インナーライナーの300%モジュラス値は3.0MPa〜4.0MPaであることが好ましく、前記ラバーチェーハーの300%モジュラス値は14MPa以下であることが好ましい。なお、JIS K 6253による硬度であれば、前記接着補強ゴム層の硬度は56〜65であり、前記インナーライナーの硬度は50〜55であり、前記ラバーチェーハー6の硬度は66〜70であることが好ましい。
本実施例は上記のように構成したことにより、接着性が良くなって耐久性が向上すると共にエア透過性が高まってエア抜けしない。
[比較テスト]
次に本発明に係る空気入りタイヤについて、以下の条件の下に、下記の従来例、上記の実施例1、下記の実施例2、実施例3及び比較例1について比較試験を行った。
テストタイヤ:195/65R15 91H
テスト項目
耐エア透過性を評価するために、タイヤを15×6Jのリムに装着し、内圧240kPaを充填し、23℃で1気圧の雰囲気下に6ヶ月放置した後、内圧の低下代を測定した。従来例1の評価を100として指数で示し、数値が大きいほど耐エア透過性に優れていることを示す。
耐久性を評価するために、FMVSS139に準拠した試験方法により、タイヤが故障するまでの走行距離を測定した。従来例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど耐久性に優れていることを示す。
タイヤ横剛性を評価するために、圧縮試験機を用いてタイヤに基準負荷値(4.2kN)をかけた状態で、基準負荷の30%の横方向の力を更にタイヤにかけて横撓み量を測定し、その横撓み量の値で横方向の力を除して横剛性を測定した。従来例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど剛性が高いことを示す。
[従来例の構成]
従来例の空気入りタイヤの概要は、一般的なタイヤ構造である。すなわち、ビードコアの周りにカーカスプライをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げ、カーカスプライの外側に重ねてインナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げた構造であり、接着補強ゴム層を設けていない構造である。
[比較例1の構成]
比較例1の空気入りタイヤの概要は、ビードコアの周りにカーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側へ巻き上げ、カーカスプライの外側に重ねてインナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げた構造であり、ビードとカーカスプライが直接接触し、ラバーチェーハーとインナーライナーとが直接接触する構造であり、接着補強ゴム層を設けていない構造である。
[実施例1の構成]
実施例1の空気入りタイヤの概要は、上記したように、タイヤ幅方向外側から内側へカーカスプライを巻き上げる構造であり、ラバーチェーハーで接着補強ゴム層を覆う構造である。
[実施例2の構成]
実施例1とほぼ同様の構造であり、接着補強ゴム層の300%モジュラス値が5.0MPaである。
[実施例3の構成]
実施例1とほぼ同様の構造であり、接着補強ゴム層の300%モジュラス値が5.9MPaである。
Figure 0005964225

[比較試験の結果]
比較例1については、ビードコアの周りにカーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側へ巻き上げ、カーカスプライの外側に重ねてインナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げた構造であるため、タイヤ横剛性には優れているが、接着補強ゴム層を設けていないために、耐久性が劣っていた。
実施例1については、耐エア透過性は問題がなく、ビードコアの周りにカーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側へ巻き上げ、カーカスプライの内側に位置させてインナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げた構造であるため、タイヤ横剛性に優れており、また、接着補強ゴム層を設けているため、比較例1よりも耐久性が向上した。しかしながら、接着補強ゴム層の300%モジュラス値が4.2MPaであったため、耐久性が、ビードコアの周りにカーカスプライをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げ、カーカスプライの外側に重ねてインナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げた一般構造の従来例と同程度であった。
実施例2については、耐エア透過性については問題がなく、上記実施例1と同様にビードコアの周りにカーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側へ巻き上げ、カーカスプライの内側に位置させてインナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げた構造であるため、タイヤ横剛性に優れており、接着補強ゴム層の300%モジュラス値を5.0MPaとしたことにより、実施例1よりも耐久性が向上した。
実施例3については、耐エア透過性については問題がなく、上記実施例1と同様にビードコアの周りにカーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側へ巻き上げ、カーカスプライの内側に位置させてインナーライナーをタイヤ幅方向内側から外側へ巻き上げた構造であるため、タイヤ横剛性に優れており、接着補強ゴム層の300%モジュラス値を5.9MPaとしたことにより、実施例2よりも耐久性が向上した。
以上の試験結果から、カーカスプライをタイヤ幅方向外側から内側に巻き上げ、インナーライナーをカーカスプライの内側に位置させる構成を備え、インナーライナーの一部に接着性の良い接着補強ゴム層を設けてラバーチェーハーとの接着性を向上させると、耐エア透過性、耐久性及びタイヤ横剛性の全てを向上させることが判明した。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
T………空気入りタイヤ
1………タイヤトレッド
1’……タイヤトレッドの頂部
1a……ベルト及びベルト補強
1b……トレッドゴム
2………サイドウォール
3………ビード
3a……ビードコア
3a’…ビードの下端
3b……ビードフィラー
4………インナーライナー
4a……インナーライナーの端部
5………カーカスプライ
5a……カーカスプライの端部
6………ラバーチェーハー
6’……ラバーチェーハーの上端
7………接着補強ゴム層
7’……接着補強ゴム層の上端
HRCH…ビードの下端からラバーチェーハーの上端までの垂直高さ
HA………ビード下端から接着補強ゴム層の上端までの高さ
H…………ビード下端からタイヤトレッド面上端までの垂直高さ
A…………インナーライナーにおける前記接着補強ゴム層の範囲

Claims (4)

  1. ビードコアを含む左右一対のビードと、前記ビードコアに架け渡されたカーカスプライと、前記カーカスプライの内周側に配置されるインナーライナーを有する空気入りタイヤにおいて、
    前記カーカスプライがビードコアの周りをタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側へ巻き上げられてなり、
    前記インナーライナーの両端部が前記ビード及び前記カーカスプライの間に延在してなり、
    前記ビードコアの周りにおいて、ラバーチェーハーが配置されてなり、
    前記インナーライナーの一部に前記ラバーチェーハーを接着するための接着補強ゴム層を設け、
    前記接着補強ゴム層の300%モジュラス値が、前記インナーライナーの300%モジュラス値よりも高く、前記ラバーチェーハーの300%モジュラス値よりも低い
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記接着補強ゴム層の300%モジュラス値が4.1MPa〜6.1MPaであり、前記インナーライナーの300%モジュラス値が3.0MPa〜4.0MPaであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記接着補強ゴム層は、前記ビード下端から前記タイヤトレッド面上端までの垂直高さの下端から5%〜55%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記接着補強ゴム層の上端は前記ラバーチェーハーにより被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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