水栓装置に対しては、上述のような吐水ヘッドの操作性向上に関する要請のほか、装置全体の施工性や搬送性の向上に関する要請もある。例えば、キッチンや洗面化粧台などのカウンターに設けられる水栓装置では、カウンターの一部に穴を開設し、その穴を介してカウンターの下方からカウンター上方の吐水ヘッドに供給することが一般的である。このような場合、施工時に装置全体をカウンターに対して上から設置しようとすれば、主弁体などを含むユニット(主弁ユニット)が比較的大型であることから、該カウンターに大きな穴を空けなければならなくなる。また、主弁ユニットと、吐水ヘッドやホース等を含むユニット(吐水ユニット)とを一体とすると、装置が大型化し搬送性が悪化する。したがって、装置の搬送性向上も考慮しつつ、カウンターに開設する穴が大きくなることを避ける手段としては、水栓装置を、このような主弁ユニットと、吐水ユニットとを別体とし、比較的大型な主弁ユニットについてはカウンターの下側から取り付けられるようにすることが考えられる。
ところが、上述のようにワイヤを利用して開閉弁の開閉を行うようにすることについても考慮すると、このように主弁ユニットと吐水ユニットとを別体とした場合にはワイヤが露出してしまう点で問題がある。すなわち、使用者が所望の位置に移動させることが可能な吐水ヘッド自体に操作部(切替スイッチ)を設け、該操作部に対する操作入力をワイヤで開閉弁に伝達する構造にしようとすると、完成品において主弁ユニットと吐水ユニットとの間に跨った状態になるワイヤの一部が、分離された状態の主弁ユニットまたは吐水ユニットから露出した状態とならざるを得ない。このような構造だと、施工者がワイヤに触れたりしてワイヤに無理な力が加わってしまうおそれがある。そうすると、操作部(切替スイッチ)の操作に基づくワイヤの進退量や、それに基づくパイロット弁の移動量など、製造時の設定が変化してしまい、止水不良や流量不足等の原因となるおそれが生じる。また、水栓装置を設置するにあたり、このような狂いを生じさせないという条件を熟練度の異なるすべての施工者に課すとすれば、施工性の向上を図ることが困難となる。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、主弁ユニットと吐水ユニットを別体として搬送性を高めるとともに、接続部材の接続によって使用可能になるという設置現場での組立が容易な水栓としながらも、施工者・使用者がホースに触れたりワイヤがホースに絡まったりすることを防止して、製造時の設定が変化してしまうことが抑制されるようにした水栓装置を提供することにある。
本発明は、カウンターの上方で固定される支持部材に対して着脱自在な吐水ヘッドを有する水栓装置において、当該水栓装置は、1次側流路と2次側流路とを連通させる主弁座と、その一側面側が該主弁座に当接しあるいは該主弁座から離間して主弁座において通水あるいは止水するとともに、他側面側には圧力室を形成する主弁体と、圧力室に連通して該圧力室内の水を流出させる圧力開放流路と、を有しており、カウンターの下方に設けられる主弁ユニット、および一端部に吐水ヘッドが設けられる可撓性のホースと、吐水ヘッドに設けられ、該吐水ヘッドからの吐水および止水を切り替えるための切替スイッチと、ホースの他端部に設けられるとともに主弁ユニットに接続され、主弁座を通過した水をホース内に導く流路を内部に有する接続部材と、その一端部側が切替スイッチに接続され、該切替スイッチの操作に伴って進退するワイヤと、を有しており、主弁ユニットに接続される吐水ユニットを有しており、接続部材は、当該接続部材が主弁ユニットに接続された状態において、当該主弁ユニットの圧力開放流路と連通し、該圧力開放流路から流入する水を当該接続部材の内部の主流路に導くパイロット流路と、該パイロット流路に設けられたパイロット弁座と、ワイヤの他端部側に設けられ、ワイヤの進退に応じて移動することでパイロット弁座を開放または閉止するパイロット弁体と、を内蔵しており、ワイヤは、当該ワイヤの一端部側から他端部側にわたって、吐水ヘッド内、ホース内および接続部材内に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、まず、切替スイッチを吐水ヘッドに設け、切替スイッチの操作によって進退するワイヤで開閉弁を開閉動作させることで、吐水/止水を切り替えるための操作を吐水ヘッドの位置において行うことが可能であり、利便性の高い水栓装置を提供することができる。
また、本発明によれば、主弁ユニットと接続される接続部材に、パイロット弁体等を内蔵させるとともに、接続部材が主弁ユニットに接続された状態において圧力開放流路とパイロット流路が連通するよう構成することで、ワイヤを一端部側から多端部側にかけて吐水ヘッド・ホース・接続部材内に配置させることを可能とし、施工者らがワイヤに触れることが無いようにしている。
したがって、本発明によれば、主弁ユニットと吐水ユニットとを別体として搬送性を高めることを可能としながらも、接続部材の接続によって使用可能になるという設置現場での組立が容易な構造の水栓装置を実現することによって、施工者らがホースに触れたりすることを抑制し、上述した製造時の設定(切替スイッチの操作に基づくワイヤの進退量や、ワイヤ進退に基づくパイロット弁体の移動量など)が変化してしまうのを回避することが可能となる。すなわち、水栓装置の搬送性・組立性を向上させつつも、確実に主弁体の開閉が可能な水栓装置を提供するものである。
本発明に係る水栓装置では、ワイヤの進退方向に対して垂直な接続部材の断面において、パイロット弁体及びパイロット弁座は径外方向に偏倚して配置されていることが好ましい。上述のように、接続部材は、ホースの他端部に設けられるとともに主弁ユニットに接続されるものであるが、この接続部材にパイロット弁体及びパイロット弁座を内蔵させると、接続部材の内部における主流路の幅が狭くなり、流路抵抗が増え、所望の流量の確保が困難となることが起こり得る。この点、本発明によれば、パイロット弁体及びパイロット弁座を当該接続部材の径外方向に偏倚させることで、パイロット弁体及びパイロット弁座、さらにそれらまで水を導くパイロット流路によって占められる領域を抑制することができる。すなわち、本発明によれば、パイロット弁体等を接続部材に内蔵させながらも、主流路の幅が狭くなることがなく、流路抵抗が増えることを抑制し、所望の流量を確保することができる。
かかる水栓装置において、主弁ユニットは、接続部材が主弁ユニットに接続された状態において、2次側流路及び圧力開放流路からの水がそれぞれ、接続部材の主流路およびパイロット流路へ向けて流入する構成であり、パイロット流路の入口端が圧力開放流路の出口端と対向するものであることが好ましい。水栓装置において吐水ヘッドを取り回した際、ホースを介して接続部材が力を受け、主弁ユニットに対する当該接続部材の位置が変わってしまうと、圧力開放流路から流出する水がスムーズにパイロット流路に流入できなくなり、切替スイッチの操作に基づいて迅速に主弁体を開閉することができなくなるというおそれがある。この点、本発明によれば、パイロット弁におけるパイロット流路の入口端を、圧力開放流路の出口端と対向する構成とすることで、圧力室の内部の水をすばやく流出させることができ、切替スイッチの操作に基づいて迅速に主弁体を開閉させることができるようになる。
また、水栓装置においては2次側流路に屈曲部が形成され、接続部材が主弁ユニットに接続された状態において、パイロット弁体及びパイロット弁座は該屈曲部の内周寄りに偏倚していることが好ましい。屈曲部における水の流れについてみてみると、外周側に比べて内周側は流速が小さくなることから、本発明のごとくパイロット弁体及びパイロット弁座を内周寄りに偏倚させることで、流れに対する影響を小さくすることができる。
さらに、水栓装置においては、主弁ユニットに対する接続部材の位置を固定する固定部が設けられており、接続部材が主弁ユニットに接続された状態において、該固定部は、パイロット流路の入口端が圧力開放流路の出口端と対向する位置で接続部材の位置を固定するものであることが好ましい。水栓装置において吐水ヘッドを取り回した際、ホースを介して接続部材が力を受け、主弁ユニットに対する当該接続部材の位置が変わってしまうと、圧力開放流路から流出する水がスムーズにパイロット流路に流入できなくなり、切替スイッチの操作に基づいて迅速に主弁体を開閉することができなくなるというおそれがある。この点、本発明によれば、パイロット流路の入口端が圧力開放流路の出口端と対向する位置で固定部が固定されるため、切替スイッチの操作に基づいて迅速に主弁体を開閉させることができる。
また、水栓装置において、接続部材が主弁ユニットに接続された状態において、吐水ユニットと主弁ユニットとの間には、圧力開放流路からパイロット流路へ流れ込む水と2次側流路から主流路へ流れ込む水とを区画するシール部材が配設されていることが好ましい。上述のごとき構造の水栓装置において、パイロット流路と主流路との2つの流路は、パイロット流路を開放することで連通される。このような構造の水栓装置においては、吐水ユニットと主弁ユニットとが接続される際、吐水ユニットと主弁ユニットとの間で水漏れが生じないようにシールをしても、圧力開放流路からの水が、パイロット流路を通過せずに主流路へ流れ込むこととなれば、パイロット弁体が確実に閉まらずに止水不良の問題を起こすことが考えられる。この点、本発明においては、吐水ユニットと主弁ユニットの間において、主流路へ流れ込む水とパイロット流路へ流れ込む水が互いにシールされるため、圧力開放流路内の水がパイロット流路を通過せず主流路へ漏れるようなことがなくなり、パイロット流路に水が溜まりやすくなり、主弁体が閉じやすくなる。これにより、簡単な構成で止水不良を防止しつつ、主弁体を確実に開閉させることが可能となる。
さらに、水栓装置において、接続部材が主弁ユニットに接続された状態において、吐水ヘッドを支持部材から取り出した際に、ワイヤよりも先にホースが引張力を受けるようにワイヤの長さはホースの長さよりも長く設定されていることが好ましい。吐水ヘッドを支持部材から取り外して取り回す際に、ワイヤに過剰な引張力が加わると、場合によってはワイヤとパイロット弁体との接続部分が損傷してしまい、切替スイッチの操作によって正確にパイロット弁体を移動させることができなくなることが考えられる。この点、本発明によれば、吐水ヘッドを取り回す際、ワイヤにかかる引張力を、ホースが代わりに受けてやることで、ワイヤに過度な引張力が加わることを抑制し、パイロット弁体を確実に移動させ、主弁体を確実に開閉させることが可能となる。
本発明によれば、主弁ユニットと吐水ユニットを別体として搬送性を高めるとともに、接続部材の接続によって使用可能になるという設置現場での組立が容易な水栓としながらも、施工者・使用者がホースに触れたりワイヤがホースに絡まったりすることを防止して、製造時の設定が変化してしまうことが抑制されるようにすることができる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1〜図10に本発明にかかる水栓装置1の実施形態を示す。本実施形態の水栓装置1は、支持部材2、吐水ヘッド3、主弁体(開閉弁)4、ホース5、切替スイッチ6、ワイヤ7等を備えている。
支持部材2は、水栓装置1の吐水ヘッド3を着脱自在に支持している。この支持部材2は、カウンター8上に設けられた台座11に取り付けられている(図1参照)。台座11には、吐水流量や吐水温度の調節を行うためのハンドルレバー13が設けられている。本実施形態の支持部材2は、ホース5およびワイヤ7のそれぞれを挿通させる挿通部21をその内部に有している(図4等参照)。
カウンター8は、水回りの台やテーブル天板など、水栓装置1が設置されうる箇所全般を表すものとして用いられている。例えば本実施形態ではキッチンのシンク12の奥側(使用者からみて遠い側)の天板部がカウンター8に該当する場合を例示しているが(図1参照)、これはあくまでも一例にすぎず、この他、洗面化粧台のボウル周りの台状部分なども本明細書でいうカウンター8に該当しうる。
吐水ヘッド3は、支持部材2に着脱自在に支持されており、吐水口33から水を吐出する。この吐水ヘッド3には可撓性のホース5が接続されており、支持部材2によって支持された状態(収納状態)の当該吐水ヘッド3を使用者が引き出し、一例としてキッチンのシンク12において所望の位置や角度で水を吐出させることができるようになっている。例えば本実施形態の吐水ヘッド3は、ヘッド本体31、該ヘッド本体31を覆うヘッドカバー32などで構成されている(図3、図4参照)。吐水口33には、吐水の流れを整える整流部材34が取り付けられている。また、吐水ヘッド3の一部(例えば収納状態の吐水ヘッド3の上端部)には切替スイッチ6が設けられている。
主弁体4は、吐水ヘッド3へ水を供給する流路を開放または閉止するための主弁ユニット40を構成している弁で、本実施形態の場合にはカウンター8の下方に設けられている(図1参照)。主弁ユニット40は、後述するように流体(水)の流れが生じさせる背圧を利用して主弁体4を開閉させるものであり(図7、図8参照)、給水管15および給湯管16と接続され、さらに流路17を介してホース5の流路50と接続されている(図1参照)。本実施形態では、主弁体4としてダイヤフラム弁を利用している。該主弁体4は、その一側面側が後述する主弁座42に当接しあるいは該主弁座42から離間して主弁座42において通水あるいは止水するとともに、他側面側には圧力室44を形成している。
ホース5は、主弁体4を通過した水を吐水ヘッド3まで導く流路50を内部に有する可撓性の管状部材である(図4等参照)。このホース5のほか、切替スイッチ6、ワイヤ7、パイロットプラグ90により、主弁ユニット40に接続される吐水ユニット10が構成されている。上述の吐水ヘッド3を支持部材2によって支持した状態(収納状態)のとき、ホース5は支持部材2および台座11内に収容された状態となる(図3参照)。本実施形態のホース5は、第一ホース継手51、第二ホース継手52、かしめ部材53、さらにフランジ部材54を介してその一端部5aがヘッド本体31に接続されている(図5、図6参照)。ホース5の途中には、台座11の裏面に当接して吐水ヘッド3の引き出し可能量を制限する留め具18が取り付けられている(図1参照)。
切替スイッチ6は、吐水ヘッド3からの吐水/止水を切り替えるために使用者が操作する操作入力部を構成している。この切替スイッチ6は、吐水ヘッド3の一部(例えば収納状態の吐水ヘッド3の上端部)に設けられている。このため、使用者は吐水と止水とを切り替えるための操作を、吐水ヘッド3を掴んでいる手で行うことが可能であり、利便性が高い。このような切替スイッチ6として、本実施形態ではスラストロック機構を備えたものを用いている(図3、図4参照)。
切替スイッチ6に用いられているスラストロック機構62は、浴槽の排水栓装置やボールペンなどで利用されているように、切替スイッチ6の支持軸61の進退を繰り返した場合に、進退経路の一端側で支持軸61をロックした状態と、次にこのロックを解除した状態とを交互に繰り返すように動作するものである。本実施形態の切替スイッチ6およびスラストロック機構62は、止水状態(吐水口33から水を吐出しない状態、図5参照)から切替スイッチ6を一回押し込むと、ワイヤ7を所定量引き込むことによって吐水状態(吐水口33から水を吐出させる状態)とし、スラストロック機構62によってこの吐水状態でロックするように構成されている(図6参照)。ここではスラストロック機構62自体の詳細までは説明しないが、構成の概略を一例として示しておくと、遠隔操作する方式、ダイレクトプッシュするような直接的に操作する方式のいずれも、基本的には、支持軸61に固定した固定歯と、その固定歯と直列状に回転可能、尚かつ軸方向に摺動可能に連設した回転歯と、メカボックス内に設けた係止歯とを備えており、支持軸61の上下動の一端側で固定歯との係合により回転歯が回転し、その回転毎に係止歯に対して係脱を繰り返すことで、ワイヤ7を進退させた状態(送り込んだ状態と、引っ張り込んだ状態)を維持する。
ワイヤ7は、切替スイッチ6の操作に伴って進退し、主弁体4を開閉動作させる操作入力伝達手段として機能する。本実施形態では、アウターチューブ71内に進退自在に挿通したスパイラル状のメタル製インナーワイヤをこのワイヤ7として用いている(図3等参照)。ワイヤ7の一端部7aは、上述したスラストロック機構62の可動部に接続されている(図3、図4参照)。また、ワイヤ7の他端部7bは、主弁ユニット40を構成するパイロットプラグ90のワイヤガイド93に接続されている(図7、図8参照)。
また、ワイヤ7は、吐水ヘッド3を支持部材2から取り出した際に、ワイヤ7よりも先にホース5が引張力を受けるように構成されている。これによれば、使用者らが吐水ヘッド3を取り回す際、ワイヤ7に作用する引張力をホース5が代わりに受けてやることができ、これにより、ワイヤ7に過度な引張力が加わることを抑制することがでる。このような水栓装置1においては、パイロット弁体94を確実に移動させ、主弁体4を確実に開閉させることが可能となる。一方で、これとは逆に、吐水ヘッド3を支持部材2から取り外して取り回す際、ワイヤ7に過剰な引張力が加わると、場合によってはワイヤ7とパイロット弁体94との接続部分が損傷してしまい、切替スイッチ6の操作によって正確にパイロット弁体94を移動させることができなくなるおそれがあるが、上述のごとく本実施形態ではこのような事態が生じるのを回避している。ワイヤ7よりも先にホース5が引張力を受けるための構成としては、例えば、ワイヤ7の長さをホース5の長さよりも長くするなど、ホース5に引張力が作用してもワイヤ7には引張力が作用しないようにした構成を挙げることができる。要は、ワイヤ7の長さは、切替スイッチ6の操作を確実にパイロット弁体94まで伝達し、尚かつホース5に引張力が作用しても当該ワイヤ7には引張力が作用しない程度の長さであることが好適である。
アウターチューブ71は、内部にワイヤ7を進退自在に挿通するための筒状部材であり、一例として4フッ化エチレン材から成る樹脂材で構成されて側方への可撓性を有している。アウターチューブ71の一端部は、鍔状に外側方向に突出した鍔部71aを介して吐水ヘッド3のヘッド本体31に接続されている(図5、図6参照)。また、アウターチューブ71の他端部は、外周面に雄ねじが設けられた金属材からなるアウターエンド71bを介してパイロットプラグ90のプラグ本体91に接続されている(図7、図8参照)。
上述した主弁ユニット40は、開閉弁(主弁体)4の他、蓋体41、主弁座42、圧力開放流路43、筒部49、パイロット流路98、そしてパイロットプラグ90などで構成されている。上述したカウンター8内には、水供給源と接続された流路17を有する流路本体14が設置されており、主弁体4は、この流路本体14中の主弁座42に対して接近離反することによって流路17を開閉するように設置されている(図7、図8参照)。主弁体4が主弁座42から離反して開いた状態になると、主弁座42を介して1次側流路17aと2次側流路17bとが連通した状態となる。この主弁体4の背面には背圧室44となるスペースが形成されており、背圧の大きさに応じて主弁体4が主弁座42に対して接近離反するようになっている。圧力開放流路43とパイロット流路98は、パイロットプラグ90内のパイロット室97とこの背圧室44とを連通させており、圧力開放流路43から流入する水を2次側流路17bに導く。本実施形態のパイロットプラグ90において、2次側流路17bには屈曲部17Vが形成されている(図7参照)。さらに、主弁ユニット40は、2次側流路17b及び圧力開放流路43からの水がそれぞれ、パイロットプラグ90の主流路17cおよびパイロット流路98へ向けて流入するように構成されている(図7等参照)。
パイロットプラグ90は、ホース5の他端部5bに設けられているもので、流路本体14の端部開口に取り付けられ、上述した主弁ユニット40に接続されている(図7、図8参照)。本実施形態のパイロットプラグ90は、プラグ本体91、バイアスばね92、ワイヤガイド93、パイロット弁体94、パイロット弁座95、パイロット孔96、パイロット流路98などを備えている。パイロット弁体94はパイロット室97をストロークするバルブで、止水時にはパイロット弁座95に密着してパイロット孔96を閉じた状態となっている(図7参照)。また、パイロット弁体94はワイヤガイド93と接続されており、ワイヤ7が引っ張り込まれまたは送り込まれると該ワイヤ7やワイヤガイド93と同量ストロークする。プラグ本体91内に設けられたバイアスばね92は、ワイヤガイド93を介してワイヤ7を押し戻すように(パイロット弁体94をパイロット孔96から遠ざける方向に)付勢している。
なお、パイロット弁体94及びパイロット弁座95は、ワイヤ7の進退方向に対して垂直なパイロットプラグ90の断面において、該パイロットプラグ90の中心付近に配置されてもよいが(図10参照)、本実施形態のパイロット弁体94及びパイロット弁座95は、2次側流路17bの屈曲部17Vの内周寄りに配置されて、当該パイロットプラグ90の径外方向に偏倚している(図7〜図9参照)。このような水栓装置1においては、パイロット弁体94及びパイロット弁座95、さらにそれらまで水を導くパイロット流路98によって占められる領域が抑制される。このため、パイロット弁体94等をパイロットプラグ90に内蔵した構造としながらも、流路幅が狭くなることがなく、流路抵抗が増えることを抑制できるので、所望の流量を確保しやすい。また、屈曲部17Vにおける水の流れについてみてみると、外周側に比べて内周側は流速が小さくなるところ、本実施形態ではパイロット弁体94及びパイロット弁座95を内周寄りに偏倚させているので、流れに対する影響を小さくすることができる。
また、本実施形態においては、パイロットプラグ90のプラグ本体91の外周に突部99を設け、該突部99を、主弁ユニット40の筒部49に形成された凹部46に嵌合させ、主弁ユニット40に対するパイロットプラグ90の周方向の向きを一定にして位置を固定するための固定部として機能させている(図9参照)。このような水栓装置1においては、パイロット流路98の入口端98aが圧力開放流路43の出口端43aと対向する位置で、プラグ本体91の先端が突き当たるまでパイロットプラグ90を主弁ユニット40の筒部49に差し込むことで、当該パイロットプラグ90の位置を固定することができ、こうすることにより、圧力室44の内部の水をすばやく流出させることが可能となる(図7等参照)。したがって、切替スイッチ6の操作に基づいて迅速に主弁体4を開閉させ、応答性のよい水栓装置1を実現することが可能となっている。水栓装置1においては、例えば、吐水ヘッド3を取り回した際、ホース5を介してパイロットプラグ90が力を受け、主弁ユニット40に対する当該パイロットプラグ90の位置が変わってしまうと、圧力開放流路43から流出する水がスムーズにパイロット流路98に流入できなくなり、切替スイッチ6の操作に基づいて迅速に主弁体4を開閉することができなくなることが生じうるが、本実施形態によればこのようなことを回避することができる。なお、ここで説明した構成は一例にすぎず、この他、凹凸を逆にする(プラグ本体91に凹部、主弁ユニット40の筒部49の内周面に凸部を設ける)など、適宜別の構成とすることができるのはいうまでもない。
さらに、パイロットプラグ90には、当該パイロットプラグ90と主弁ユニット40との間を封止するOリング81〜83が設けられている(図7等参照)。これらOリング81〜83のうち、パイロット流路98よりも上流側に配置された第1のOリング81は、吐水ユニット10と主弁ユニット40との間において、圧力開放流路43からパイロット流路98へ流れ込む水と、2次側流路17bから主流路17cへ流れ込む水とを区画するシール部材として機能する。また、第2のOリング82、第3のOリング83は、圧力開放流路43からパイロット流路98へ流れ込む水が外部に漏れるのを抑止する。これらOリング81〜83による封止機能により、この水栓装置1においては、主流路17bへ流れ込む水とパイロット流路98へ流れ込む水が互いにシールされることから、圧力開放流路43内の水がパイロット流路98を通過せず主流路17bへ漏れるようなことがない。このため、パイロット流路98に水が溜まりやすくなり、主弁体4が閉じやすくなる結果、簡単な構成で止水不良を抑止しつつ、主弁体4を確実に開閉させることができるようになる。
次に、切替スイッチ6の操作に伴う主弁ユニット40での動作について簡単に説明すれば以下のとおりである。まず、止水時においては、パイロットプラグ90のパイロット弁体94がパイロット弁座95に着座した状態となっており、パイロット孔96が閉じられている。また、開閉弁(主弁体)4は主弁座42に着座した状態となっている。このため、水の流路17(流路本体14内の流路17a,17b、プラグ本体91内の流路(主流路)17cおよび流路17dを含む)とパイロット流路98とは分断された状態となっている(図7参照)。このとき、背圧室44における背圧の作用(流路17と背圧室44の差圧による作用)により、主弁体4は主弁座42に着座した状態に保持され、止水状態に保たれる。
ここで、止水状態の吐水ヘッド3(図5参照)の切替スイッチ6を押圧操作すると、ワイヤ7が所定量引き込まれ、スラストロック機構62によってその状態にロックされる(図6参照)。この動作に伴い、パイロット弁座95への着座状態にあったパイロット弁体94が引かれ、パイロット孔96が開いて、水の流路17とパイロット流路98とが連通した状態となる。そうすると、背圧室44における背圧が減少し、主弁体4が後退して開弁状態となる。この結果、水が流路本体14等を通る流路17からホース5内の流路50を通過して吐水ヘッド3の吐水口33まで供給される吐水状態となる。この吐水状態において切替スイッチ6をもう一度操作すると、ワイヤ7が所定量送り込まれ、パイロット孔96が閉じ、主弁体4が閉じて止水状態に戻る(図5参照)。
上述したように、ワイヤ7は、吐水ヘッド3の切替スイッチ6における操作入力を、このような主弁ユニット40を構成するパイロット弁体94に伝達し、当該パイロット弁体94の動きを介して主弁体4を開閉させる。ここで、本実施形態では、このように切替スイッチ6の操作によって進退して開閉弁を開閉するワイヤ7を、主弁体4から吐水ヘッド3の切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延び、該ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力をホース5から受けるよう、当該ホース5内に配置することとしている(図4等参照)。このような構成の特徴点は以下のとおりである。
すなわち、切替スイッチ6を吐水ヘッド3に設けた本実施形態のごとき水栓装置1においては、使用者が吐水ヘッド3を移動させる際、切替スイッチ6への操作入力を主弁体4(主弁ユニット40)に伝達するワイヤ7に折れや捩れが生じ、切替スイッチ6において操作を行ってもワイヤ7がスムーズに進退できず、主弁体4を使用者の所望のとおりに開閉できなくなるといったおそれがあるが、本実施形態ではワイヤ7を主弁体4から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延びるようにし、ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力を、ホース5から受けるようにしている。
さらに、本実施形態の水栓装置1によれば、当該装置としての搬送性・組立性を向上させつつも、確実に主弁体4の開閉が可能な装置を実現することができる。
すなわち、ここまで説明したごとく、主弁ユニット40と吐水ユニット10とをそれぞれ別のユニットとした本実施形態のごとき水栓装置1においては(図2等参照)、各ユニット毎に搬送し、現場で各ユニットを開梱した後で、比較的大型となりやすい吐水ユニット10はカウンター8の上から、ホース5と含む主弁ユニット40はカウンター8の下から取り付けることによって、搬送しやすさや組立やすさを向上させうるという利点がある一方で、施工時さらには使用時、施工者らがワイヤ7に触れたり、吐水ヘッド3を取り回す際にワイヤ7がホース5に絡まったりするとワイヤ7に無理な力が加わってしまうおそれがあり、無理な力が加わると、切替スイッチ6の操作に基づくワイヤ7の進退量や、ワイヤ7の進退に基づくパイロット弁体94の移動量など、製造時の設定が変化してしまい、止水不良や流量不足等の原因となる可能性がある。この点、本実施形態では、主弁ユニット40と接続されるパイロットプラグ90にパイロット弁体94等を内蔵させ、パイロットプラグ90が主弁ユニット40に接続された状態において圧力開放流路43とパイロット流路98が連通するようにしているので、ワイヤ7を一端部7a側から多端部7b側にかけて吐水ヘッド3・ホース5・接続部材90内に配置させることができるようになっている。このため、施工者らがワイヤ7に触れることが無く、尚かつ、ワイヤ7がホース5の周囲に絡みつくようなことも無い。したがって、本実施形態によれば、主弁ユニット40と吐水ユニット10とを別体として搬送性を高めることを可能としながらも、パイロットプラグ90の接続によって使用可能になるという組立容易な構造の水栓装置1を実現することによって、施工者らがホース5に触れたりワイヤ7がホース5に絡まったりすることを抑制し、製造時の設定が変化してしまうのを回避することができる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。