以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置1の全体構成の一例を示す図である。ここで、図1は、画像形成装置1を、フロント側から眺めたときの断面構成を示している。
この画像形成装置1は、画像を形成する画像形成部10と、画像形成部10によって形成された画像が一次転写される中間転写ベルト20と、中間転写ベルト20に一次転写された画像を用紙Pに二次転写する二次転写装置30と、二次転写装置30に向けて記録材の一例としての用紙Pを供給する用紙供給部40と、二次転写装置30によって用紙Pに二次転写された画像を定着させる定着装置50と、画像形成装置1を構成する各部の動作を制御する制御部60とを備えている。また、画像形成装置1は、これら各部を内部に収容する本体筐体部1aを有しており、本体筐体部1aの上部には、定着装置50を通過することによって画像が定着された用紙Pを積載する排紙積載部1bが設けられている。なお、本実施の形態では、画像形成装置1の本体筐体部1aに対し、定着装置50を着脱できるように構成されている。
画像形成部10は、電子写真方式により各色成分のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えており、これら画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、それぞれが中間転写ベルト20と対向するように並べて配置されている。ここで、複数の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の画像を形成する。
複数の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々は、図中に矢印で示す方向に回転可能に取り付けられた感光体ドラム11を備えている。また、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々において、感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12、感光体ドラム11を露光して静電潜像を書き込む露光装置13、感光体ドラム11上の静電潜像を対応する色のトナーにより可視像化する現像装置14が設けられている。さらに、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々には、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写装置15、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラム清掃装置16が設けられている。
次に、中間転写ベルト20は、それぞれが回転可能に設けられた2本のロール部材21、22に掛け渡され、図中に矢印で示す方向に回転するように設けられている。ここで、ロール部材21は中間転写ベルト20を駆動するのに用いられている。また、ロール部材22は、中間転写ベルト20を挟んで二次転写ロール31に対向配置されており、これら二次転写ロール31およびロール部材22によって二次転写装置30が構成されている。なお、中間転写ベルト20を挟んでロール部材21と対向する位置には、中間転写ベルト20上の残留トナーを除去するベルト清掃装置(図示せず)が設けられている。
また、用紙供給部40は、画像形成部10の下方に配置され、画像形成装置1で用いる用紙Pを収容する用紙収容部41と、用紙収容部41に収容される用紙Pを繰り出して供給する供給ロール42と、供給ロール42によって繰り出された用紙Pが搬送される搬送経路43と、搬送経路43内において用紙Pを搬送する搬送ロール44とを備えている。ここで、搬送経路43は、用紙収容部41から、本体筐体部1a内において二次転写装置30および定着装置50を介して排紙積載部1bへと至るように設けられている。
さらに、定着装置50は、搬送経路43を挟んで対向して配置され、矢印A方向に搬送されてくる用紙Pの一方の面に接触してこの用紙Pを加熱する加熱モジュール51と、この用紙Pの他方の面に接触してこの用紙Pに圧力を加える加圧モジュール52とを備えている。ここで、加熱モジュール51は、用紙Pのうち、二次転写装置30を通過する際に中間転写ベルト20(ロール部材22)と対向していた面(一方の面)に対向するように配置されており、加圧モジュール52は、用紙Pのうち、二次転写装置30を通過する際に二次転写ロール31と対向していた面(他方の面)と対向するように配置されている。なお、定着装置50の具体的な構成については後述する。また、以下の説明においては、上記矢印A方向を搬送方向Aと呼ぶことにする。
では、図1に示す画像形成装置1を用いた画像形成動作について説明する。
図示しない外部機器から画像情報を受信することに伴い、制御部60は、画像情報に基づく露光データを作成して画像形成部10における各露光装置13に出力し、また、画像形成装置1を構成する各部に動作開始の制御信号を出力する。
そして、例えばイエロー(Y)の画像形成ユニット10Yでは、図中矢印方向に回転駆動される感光体ドラム11が、帯電装置12により帯電され、制御部60から供給された露光データに基づいて発光する露光装置13により露光される。これにより、感光体ドラム11上には、イエロー画像に関する静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム11上に形成された静電潜像は現像装置14により現像され、感光体ドラム11上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、他の画像形成ユニット10M、10C、10Kにおいても、それぞれ、上述した手順にてマゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像が形成される。
各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの感光体ドラム11に形成されたトナー像は、それぞれに設けられた一次転写装置15により、図中矢印方向に回転駆動される中間転写ベルト20に一次転写(静電転写)され、中間転写ベルト20上で重ね合わされる。そして、中間転写ベルト20上で重ね合わされた重ねトナー像は、中間転写ベルト20の回転に伴い、二次転写装置30が設けられた二次転写位置へと向かう。なお、一次転写後に各感光体ドラム11に残留する残トナーは、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kに設けられたドラム清掃装置16によって取り除かれる。
一方、用紙供給部40では、用紙収容部41に収容されている用紙Pを、供給ロール42を用いて1枚ずつ取り出して搬送経路43へと送り出す。その後、搬送経路43に設けられた搬送ロール44は、用紙収容部41から送られてきた用紙Pを、中間転写ベルト20上の重ねトナー像が二次転写位置に到達するタイミングに合わせて、二次転写位置に向けて搬送する。
そして、中間転写ベルト20上の重ねトナー像は、二次転写装置30により、二次転写位置を通過する用紙Pに二次転写(静電転写)される。このとき、用紙Pのうち、中間転写ベルト20と対向する面に対し、重ねトナー像の二次転写が行われる。
それから、二次転写位置を通過することによって重ねトナー像が転写された用紙Pは、定着装置50を通過する。このとき、用紙Pにおける重ねトナー像の被転写面は、加熱モジュール51により加熱されるとともに、加熱モジュール51および加圧モジュール52によって用紙Pが加圧されることで、用紙Pに対する重ねトナー像の定着がなされる。その後、定着装置50を通過することで重ねトナー像が定着された用紙Pは、排紙積載部1bに排出される。また、二次転写位置を通過した後に中間転写ベルト20に残留する残トナーは、図示しないベルト清掃装置によって取り除かれる。
次に、画像形成装置1に設けられた定着装置50の構成について、より詳細に説明を行う。
図2は、図1に示す画像形成装置1における定着装置50の全体構成を示す断面図である。ここで、図2は、定着装置50を、フロント側(図1において図中手前側)から眺めたときの構造を示している。
本実施の形態の定着装置50は、上述した加熱モジュール51および加圧モジュール52と、加熱モジュール51および加圧モジュール52を一体的に支持する支持モジュール53と、加熱モジュール51と加圧モジュール52との対向部よりも用紙Pの搬送方向Aの下流側において搬送経路43を挟むように配置され、定着後の用紙Pを排紙積載部1b(図1参照)に排出するための搬送を行う排出ロール54と、これら各モジュールや排出ロール54等を内部に収容する定着筐体部55と、搬送経路43のうち、加熱モジュール51と加圧モジュール52との対向部よりも搬送方向Aの下流側且つ排出ロール54よりも搬送方向Aの上流側において、用紙Pの通過を検知するのに用いられる検知片56とを備えている。本実施の形態では、上述した加熱モジュール51と加圧モジュール52と支持モジュール53とが、一体化した定着ユニット500を構成している。
ここで、加熱モジュール51は、搬送経路43の下方に配置され、搬送経路43と対向する部位において搬送方向Aに沿う矢印B方向に回転する、加熱回転体の一例としての加熱ロール510を備えている。一方、加圧モジュール52は、搬送経路43の上方であって加熱ロール510と対向する部位に配置され、搬送経路43(加熱ロール510)と対向する部位において搬送方向Aに沿う矢印C方向に回転する、無端ベルトの一例としての加圧ベルト520とを備えている。なお、定着ユニット500の詳細な構成については後述する。また、以下の説明においては、上記矢印B方向を「ロール回転方向」と呼ぶことにし、上記矢印C方向を「ベルト回転方向」と呼ぶことにする。
本実施の形態の排出ロール54は、搬送経路43の下側に配置され、図示しない駆動源により回転駆動される駆動ロール54aと、搬送経路43の上側において駆動ロール54aに接触して配置され、駆動ロール54aの回転に伴って回転する従動ロール54bとを備えている。
また、定着筐体部55のうち、排出ロール54の取り付け位置よりも下方となる部位には、外側且つ側方に向かって突出して形成され、図1に示す画像形成装置1に定着装置50を装着した際に、本体筐体部1aとともに排紙積載部1bを形成する板状突出部55aが設けられている。さらに、定着筐体部55の内側であって搬送経路43の上方には、検知片56に設けられた孔に挿入され、この検知片56を回転可能に支持する支持軸55bが設けられている。
検知片56は、上述したように、定着筐体部55に設けられた支持軸55bに回転可能に取り付けられており、図示しないバネにより、図中反時計回り方向に押し付けられている。そして、検知片56は、通常の状態において、搬送経路43を塞ぐ位置に配置されており、この部位を搬送方向Aに沿って用紙Pが通過する際に、用紙Pによって押されることに伴い図中時計回り方向に回転することで、用紙Pの通過を検知するようになっている。
図3は、定着装置50における定着ユニット500の全体構成を示す斜視図である。図4は、図3に示す定着ユニット500の断面図であり、ここでは、図3におけるIV−IV断面を示している。図5は、図3に示す定着ユニット500の分解斜視図である。図6は、定着ユニット500における加圧モジュール52の分解斜視図である。図7は、加圧モジュール52における加圧部材521(詳細は後述する)の分解斜視図である。
ここで、図3および図5においては、図中右下側が画像形成装置1に装着した際のフロント側となり、図中左上側が画像形成装置1に装着した際のリア側となる。また、図4は、フロント側からリア側をみたときの断面を示している。さらに、図6および図7においては、図中左下側が画像形成装置1に装着した際のフロント側となり、図中右上側が画像形成装置1に装着した際のリア側となる。
本実施の形態の定着ユニット500は、上述したように、加熱モジュール51、加圧モジュール52および支持モジュール53を備えている。本実施の形態では、加熱モジュール51に設けられた加熱ロール510と、加圧モジュール52に設けられた加圧ベルト520とが、両者の対向部位において接触することで、用紙Pが通過する定着ニップ部Nを形成するように、支持モジュール53による支持がなされている。そして、加熱モジュール51および加圧モジュール52を支持する支持モジュール53は、図2に示す定着筐体部55に取り付けられている。
本実施の形態の加熱モジュール51は、ロール状の形状を有し、定着ニップ部Nを通過する用紙Pに接触してこの用紙Pを加熱する加熱ロール510を備えている。
この加熱ロール510は、円筒状に形成された円筒部材511と、円筒部材511における内周面の内側に配置され、給電に伴って発熱する発熱体512と、円筒部材511における外周面のうち軸方向両端側を除く部位を被覆する被覆部材513と、円筒部材511の外周面における奥側端部において、被覆部材513によって覆われていない部位に固定して取り付けられるギア514とを備えている。なお、加熱ロール510のうち、円筒部材511における軸方向両端側には、それぞれ、被覆部材513によって覆われないことにより円筒部材511の外周面が露出する露出部515が設けられている。なお、図5に示す分解斜視図においては、発熱体512の記載を省略している。
これらのうち、円筒部材511は、アルミニウムやステンレス等の金属製パイプで構成されている。また、発熱体512は、例えばハロゲンランプ等で構成されている。さらに、被覆部材513は、耐熱性および弾性を有するゴム等の材料で構成されている。ただし、被覆部材513として、円筒部材511の外周面に積層される弾性層(ゴムなど)と、弾性層の上に積層される離型層(フッ素系樹脂など)とを積層したものを用いることもある。ギア514は、図1に示す画像形成装置1に定着装置50を装着した場合に、本体筐体部1aのリア側に設けられたギア(図示せず)と噛み合うようになっており、本体筐体部1a側から駆動力を受けることにより、加熱ロール510をロール回転方向Bに回転させるようになっている。
次に、本実施の形態の加圧モジュール52は、無端ベルト状の形状を有し、定着ニップ部Nを通過する用紙Pを加熱ロール510との間に挟み込んで加圧する加圧ベルト520と、加圧ベルト520における内周面の内側に配置され、加圧ベルト520を加熱ロール510に向けて押し付けることで加圧する加圧部材521と、加圧ベルト520における内周面の内側に配置され、加圧部材521を固定した状態で支持するとともに加圧ベルト520を回転可能な状態で保持するベルト保持部材522と、加圧ベルト520における軸方向両端よりも外側においてベルト保持部材522に取り付けられ、ベルト回転方向Cに沿って回転する加圧ベルト520の蛇行を規制する規制部材523とを備えている。ここで、規制部材523は、ベルト保持部材522の軸方向両端側にそれぞれ取り付けられている。また、加圧モジュール52は、加圧ベルト520における内周面と対向する位置においてベルト保持部材522に固定して取り付けられ、加圧ベルト520の内周面に接触することで加圧ベルト520の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材524をさらに備えている。
これらのうち、加圧ベルト520は、ポリイミド等の合成樹脂にて薄肉の円筒状に形成されるベルト基材の表面に、フッ素系樹脂からなる離型層を形成したもので構成されている。
また、加圧部材521は、加圧ベルト520の内側のうち加圧ベルト520を挟んで加熱ロール510と対向する部位に配置され、加圧ベルト520の内周面を介して加圧ベルト520を加熱ロール510側に押し付けることで定着ニップ部Nを形成させる押付部材70と、定着ニップ部Nからみて押付部材70の背面側に取り付けられ、加圧ベルト520の内側において押付部材70を支持するとともに、規制部材523を介してベルト保持部材522に取り付けられる押付支持部材80と、膜状の形状を有し、加圧ベルト520の内側において押付部材70に取り付けられるとともに定着ニップ部Nにおいて加圧ベルト520の内周面と押付部材70との間を通過するように配置される膜部材90とを備えている。
加圧部材521を構成する押付部材70は、加圧ベルト520と対向する側に対向面(詳細は後述する)が形成されており、その背後には、押付支持部材80を差し込むための溝部71が軸方向に沿って設けられている。また、押付部材70は、押付部材70における搬送方向Aの上流側の側面に設けられ、軸方向に並べて配置されるとともに膜部材90の取り付けに使用される4つのフック部72を備えている。さらに、押付部材70は、押付部材70における軸方向両端部から、それぞれが軸方向に沿い且つ外側に向かって突出する2つの突出部73を備えている。さらにまた、押付部材70は、対向面から4つのフック部72と同じ面に突出して形成される7つのリブ74を備えている。本実施の形態の押付部材70は、例えば耐熱性を有する合成樹脂を一体成型することで形成されている。また、押付部材70の硬度は、加熱ロール510における円筒部材511よりも低硬度であって、加熱ロール510における被覆部材513よりも高硬度である。
加圧部材521を構成する押付支持部材80は、板状に形成されるとともにその一端が押付部材70の溝部71に差し込まれる押付部81と、押付部81と一体的に構成されるとともに押付部81からみて90°折り曲げられた状態に設定される折れ曲がり部82とを有している。ここで、押付部81の軸方向両端部は、それぞれ、折れ曲がり部82の軸方向両端部よりも外側に位置しており、押付部81におけるこれら2つの突出部位が、それぞれ突出部83となっている。本実施の形態の押付支持部材80は、ステンレス等からなる1枚の金属板に各種加工を施すことによって形成されている。
加圧部材521を構成する膜部材90は、長方形状を呈しており、その一辺側には、押付部材70に設けられた4つのフック部72のそれぞれに対応する位置に設けられ、それぞれにフック部72が1つずつはめ込まれる4つの開口部91が設けられている。本実施の形態の膜部材90は、耐熱性が高く且つ摩擦係数が低いフッ素系樹脂で構成されている。
さらに、ベルト保持部材522は、加圧ベルト520のベルト回転方向Cと交差する軸方向に沿って延び、加熱ロール510側に向けて開口することで断面がU字状に形成された保持本体5221と、保持本体5221の外周面に、軸方向に並べて複数設けられるとともにそれぞれがベルト回転方向Cに沿って形成されるリブ5222と、保持本体5221における軸方向両端部にそれぞれ設けられる側壁5223とを備えている。なお、ベルト保持部材522に設けられた複数のリブ5222のうち、保持本体5221の軸方向中央部に配置される複数個のリブ5222のそれぞれには、潤滑剤供給部材524を装着するための切欠が設けられている。
ここで、ベルト保持部材522における2つの側壁5223のそれぞれには、軸方向に沿い且つ外側に向かって突出する第1凸部5223aおよび第2凸部5223bが設けられている。また、2つの側壁5223のそれぞれには、保持本体5221の外周面に設けられた開口と同じ側を向くように形成された切欠部5223cが設けられている。なお、本実施の形態のベルト保持部材522は、例えば耐熱性を有する合成樹脂を一体成型することで構成されている。
また、2つの規制部材523は、それぞれ、円形状を有し且つ一端部が直線状に切り欠かれた規制本体5231を備えており、各規制本体5231には、それぞれにおいて加圧部材521と対向する側に設けられた第1凹部5231aおよび第2凹部5231bと、各規制本体5231を貫通して設けられる長方形状の貫通孔5231cとが設けられている。
さらに、潤滑剤供給部材524は、直方体状の形状を有しており、ベルト保持部材522における保持本体5221の外周面のうち、複数個のリブ5222が設けられていない部位に、軸方向に沿って取り付けられている。この潤滑剤供給部材524は、例えばスポンジやフェルト等によって構成されており、その内部には、潤滑剤として潤滑油が含浸されている。
さらに、本実施の形態の支持モジュール53は、加熱ロール510を備えた加熱モジュール51を支持するロール支持部材531と、ロール支持部材531に対して回転可能に取り付けられるとともに、加圧ベルト520を備えた加圧モジュール52を支持するベルト支持部材532と、ロール支持部材531に取り付けられるとともに、加熱モジュール51における加熱ロール510をその軸方向両端部において回転可能に支持する2つのすべり軸受533と、加熱ロール510および加圧ベルト520の軸方向両端側においてロール支持部材531とベルト支持部材532とに跨って取り付けられ、これらロール支持部材531およびベルト支持部材532を介して、加熱モジュール51における加熱ロール510と加圧モジュール52における加圧ベルト520との間に定着ニップ部Nを形成させるための力を付与する2本の引っ張りバネ534とを備えている。
これらのうち、ロール支持部材531は、加熱ロール510の軸方向両端側にそれぞれ設けられる2枚の側板5311と、加熱ロール510の軸方向に沿って設けられ、これら2枚の側板5311を連結する2枚の連結板5312とを備えている。ここで、2枚の側板5311には、それぞれ、ベルト支持部材532を取り付けるための軸部5311aと、引っ張りバネ534の一端を装着するためのバネ装着部5311bと、すべり軸受533を装着するための軸受装着部5311cとが設けられている。なお、本実施の形態では、連結板5312における一部の部位が、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において、搬送されてくる用紙Pを定着ニップ部N側に向けて案内するガイド(案内部材)としての機能を有している(図4参照)。
一方、ベルト支持部材532は、ロール支持部材531における2つの側板5311にそれぞれ対応して設けられた2つの側板5321を備えている。これら2つの側板5321には、それぞれ、ロール支持部材531に設けられた軸部5311aが回転可能な状態で挿入される軸装着孔5321aと、引っ張りバネ534の他端を装着するためのバネ装着孔5321bと、加圧モジュール52の加圧部材521における押付支持部材80に設けられた突出部83がはめ込まれるはめ込み部5321cとが設けられている。
また、2つのすべり軸受533は、ロール支持部材531における2つの軸受装着部5311cにそれぞれはめ込まれるとともに、それぞれが、加熱ロール510における2つの露出部515に接触するようになっている。
さらに、引っ張りバネ534は、その一端がロール支持部材531に設けられたバネ装着部5311bに、その他端がベルト支持部材532に設けられたバネ装着孔5321bに、それぞれ取り付けられるようになっている。
ではここで、上述した定着ユニット500の組み立て構造について説明しておく。
まず、加熱モジュール51を構成する加熱ロール510は、その外周面に被覆部材513が設けられるとともに露出部515が形成された円筒部材511に対し、内部に発熱体512を挿入して固定するとともに、その軸方向の一端部(奥側)の外周面にギア514を固定して構成されている。
また、加圧モジュール52において、加圧部材521は、押付部材70に設けられた溝部71に押付支持部材80における押付部81の一端側を差し込むとともに、押付部材70に設けられた4つのフック部72に、膜部材90に設けられた4つの開口部91をそれぞれはめ込むことで構成されている。そして、加圧部材521は、ベルト保持部材522の保持本体5221に設けられた開口からベルト保持部材522の内側に挿入されている。これにより、保持本体5221の開口には、加圧部材521の押付部材70における対向面が位置するようになっている。このとき、ベルト保持部材522における各側壁5223よりも外側には、加圧部材521における押付部81に設けられた各突出部83が、それぞれ突出した状態となっている。また、保持本体5221の外周面には、軸方向に沿って潤滑剤供給部材524が取り付けられている。
さらに、加圧モジュール52において、内部に加圧部材521を収容するとともに外部に潤滑剤供給部材524を装着したベルト保持部材522は、加圧ベルト520の内側に挿入されている。このとき、ベルト保持部材522の外周面に設けられた複数のリブ5222およびベルト保持部材522の外周面に取り付けられた潤滑剤供給部材524は、それぞれ、加圧ベルト520の内周面に対向した状態となっている。
さらにまた、加圧モジュール52において、内部に加圧部材521を収容するとともに外部に潤滑剤供給部材524を装着し、さらに加圧ベルト520の内部に挿入されたベルト保持部材522の軸方向両端部には、それぞれ規制部材523が取り付けられている。このとき、各規制部材523における第1凹部5231aおよび第2凹部5231bには、ベルト保持部材522の軸方向両端部に設けられた第1凸部5223aおよび第2凸部5223bが、それぞれはめ込まれている。ここで、各規制部材523の直径は、取り付け対象となるベルト保持部材522の直径よりも大きくなっている。このため、ベルト保持部材522の軸方向両端部では、規制部材523の端縁側がベルト保持部材522の外周面よりもはみ出した状態となっており、この部位が、加圧ベルト520における軸方向両端部と対向することで、回転時における加圧ベルト520の蛇行を規制している。また、各規制本体5231に設けられた貫通孔5231cには、加圧部材521における押付支持部材80の軸方向両端部にそれぞれ設けられた突出部83が、ベルト保持部材522の側壁5223に設けられた切欠部5223cを介して、貫通してはめ込まれるようになっている。
このように、本実施の形態では、加圧ベルト520と、加圧部材521と、潤滑剤供給部材524を取り付けたベルト保持部材522とが、2つの規制部材523を介して一体化し、加圧モジュール52を構成している。そして、加圧モジュール52の軸方向両端部からは、加圧部材521の押付支持部材80に設けられた突出部83が、それぞれ外側に向かって突出している。
一方、支持モジュール53では、ロール支持部材531の2つの側板5311のそれぞれに設けられた軸部5311aが、ベルト支持部材532を構成する2つの側板5321のそれぞれに設けられた軸装着孔5321aにはめ込まれている。そして、ベルト支持部材532を構成する2つの側板5321のそれぞれに設けられたはめ込み部5321cには、加圧モジュール52の軸方向両端側から突出する突出部83がはめ込まれている。これにより、加圧モジュール52は、ベルト支持部材532を構成する2つの側板5321によって支持されるとともに、これら2つの側板5321を介して、ロール支持部材531に対し回転可能な状態で保持されている。
また、支持モジュール53において、ロール支持部材531の2つの側板5311のそれぞれに設けられた軸受装着部5311cには、それぞれ、すべり軸受533が取り付けられている。そして、2つのすべり軸受533のうち、フロント側に設けられたすべり軸受533は、加熱ロール510のうちフロント側に設けられた露出部515の形成部位を、リア側に設けられたすべり軸受533は、加熱ロール510のうちリア側に設けられた露出部515の形成部位を、それぞれ支持するようになっている。その結果、加熱ロール510は、2つのすべり軸受533を介して、ロール支持部材531に回転可能に支持されている。
さらに、支持モジュール53において、フロント側に設けられた引っ張りバネ534は、その一端が、ロール支持部材531のうちフロント側に設けられた側板5311のバネ装着部5311bに取り付けられ、その他端が、ベルト支持部材532のうちフロント側に設けられた側板5321のバネ装着孔5321bに取り付けられている。一方、支持モジュール53において、リア側に設けられた引っ張りバネ534は、その一端が、ロール支持部材531のうちリア側に設けられた側板5311のバネ装着部5311bに取り付けられ、その他端が、ベルト支持部材532のうちリア側に設けられた側板5321のバネ装着孔5321bに取り付けられている。
この結果、ロール支持部材531によって支持される加熱モジュール51と、ベルト支持部材532によって支持される加圧モジュール52とは、ロール支持部材531に設けられた2つの軸部5311aと、ベルト支持部材532に設けられた2つの軸装着孔5321aとの連結部位を中心として、2つの引っ張りバネ534により、加熱モジュール51に設けられた加熱ロール510と、加圧モジュール52に設けられた加圧ベルト520とが接触する方向に押される。このとき、加圧モジュール52に設けられた押付部材70は、加圧モジュール52に設けられた加圧ベルト520を介して、加熱モジュール51に設けられた加熱ロール510を押す。これにより、加熱モジュール51に設けられた加熱ロール510と加圧モジュール52に設けられた加圧ベルト520との間には、両者が接触することに伴って定着ニップ部Nが形成される。
続いて、上述した加圧モジュール52において、加圧部材521に設けられた押付部材70の構成について詳述する。
図8は、加圧部材521における押付部材70の斜視図であり、図9は、押付部材70を図8におけるIX方向からみた側面図である。図10(a)は、押付部材70を図8におけるXa方向からみた側面図であり、図10(b)は、押付部材70を図8におけるXb方向からみた上面図である。
ここで、図8においては、図中左下側が画像形成装置1に装着した際のフロント側となり、図中右上側が画像形成装置1に装着した際のリア側となる。また、図9は、フロント側からリア側をみたときの側面を示している。さらに、図10(a)および図10(b)においては、それぞれ、図中下側が画像形成装置1に装着した際のフロント側となり、図中上側が画像形成装置1に装着した際のリア側となる。
本実施の形態の押付部材70には、上述したように、1つの溝部71、4つのフック部72、2つの突出部73および7つのリブ74を備えている。また、この押付部材70には、加圧モジュール52を構成した際に、加圧ベルト520の内周面に対向する位置におかれる対向面700が設けられている。
押付部材70に設けられる対向面700は、搬送方向Aの上流側から順に、第1対向面701、第1対向面701に続く第2対向面702、第2対向面702に続く第3対向面703、第3対向面703に続く第4対向面704を有している。
押付部材70に設けられる対向面700のうち、第1対向面701は、リブ74から搬送方向Aの下流側に向かって形成される平面で構成されている。また、第2対向面702は、第1対向面701との境界である第1稜部710から搬送方向Aの下流側に向かって形成される平面で構成されている。さらに、第3対向面703は、第2対向面702との境界である第2稜部720から搬送方向Aの下流側に向かって形成される凹面で構成されている。さらにまた、第4対向面704は、第3対向面703との境界である第3稜部730から搬送方向Aの下流側に向かって形成される平面とこの平面に続き搬送方向Aの下流側に向かって形成される凸状の湾曲面とで構成されている。ここで、本実施の形態では、押付部材70に設けられた第4対向面704の背面側に、押付支持部材80(図7等を参照)を装着するための溝部71が設けられている。また、第4対向面704は、後述するように、加熱ロール510および加圧ベルト520による定着ニップ部Nの形成(例えば図4参照)に用いられる。
本実施の形態において、これら第1対向面701、第2対向面702、第3対向面703および第4対向面704を含む対向面700は、全体としてみたときに、例えば図10(a)に示したように、押付部材70の軸方向両端部から軸方向中央部に向かって、徐々に盛り上がっていく凸状且つ曲線状の形状を有している。また、例えば図10(b)に示すように、対向面700に形成される第1稜部710、第2稜部720および第3稜部730のうち、第1稜部710および第2稜部720は、押付部材70の軸方向に沿って直線状に形成されており、これらのうち搬送方向Aにおいて最下流側となる第3稜部730は、押付部材70の軸方向中央部から軸方向両端部に向かって、搬送方向Aに沿って稜の位置が徐々にずれていくように曲線状に形成されている。別の見方をすれば、第3稜部730は、搬送方向Aの下流側からみたときに凸状且つ曲線状となるように、押付部材70の対向面700に形成されているともいえる。
なお、本実施の形態においては、第4対向面704によって押付部が構成される。また、本実施の形態では、第1対向面701および第2対向面702によって突出部が構成される。
図11は、定着ユニット500の定着ニップ部N周辺における加圧ベルト520の配置を説明するための図である。
本実施の形態では、定着ニップ部Nからみて搬送方向Aの上流側に、連結板5312のうち用紙Pの案内部材を構成している部位が配置される。ここで、連結板5312のうち搬送方向Aの下流側端部を案内出口Goとし、定着ニップ部Nのうち搬送方向Aの上流側端部を定着ニップ入口Niとし、これら案内出口Goおよび定着ニップ入口Niを通過する直線を直線Tとすると、本実施の形態では、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において、加圧ベルト520の一部の領域が、直線Tよりも加熱ロール510側に突出するようになっている。これは、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において、加圧ベルト520の内周面を、押付部材70における第2対向面702の形成部位が押す構成となっていることによるものである。
図12は、定着ユニット500における定着ニップ部Nの周辺を、フロント側(図4において図中手前側)から眺めたときの拡大側面図を示している。また、図13は、図12に示す定着ニップ部Nの周辺を、図12における上部側からみたときの拡大上面図を示している。ここで、図12は、定着ニップ部Nに用紙Pが突入する前の状態を例示しており、図13は、定着ニップ部Nを用紙Pが通過しているときの状態を例示している。ただし、図13においては、押付部材70および押付支持部材80とともに加圧部材521を構成する、膜部材90の記載を省略している。
最初に、定着ニップ部Nの周辺における、加圧モジュール52を構成する加圧ベルト520と加圧部材521(押付部材70、押付支持部材80および膜部材90)との関係について説明する。
上述したように、本実施の形態では、押付部材70に設けられた4つのフック部72に膜部材90の一端側に設けられた4つの開口部91(図7参照)がそれぞれ取り付けられており、この膜部材90の他端側は、搬送方向Aに沿って押付部材70に設けられた対向面700を覆うように配置されている。したがって、押付部材70の対向面700と加圧ベルト520の内周面との間には、膜部材90が存在している。
ベルト回転方向Cに沿って回転する加圧ベルト520は、膜部材90を介して第1対向面701と第2対向面702とに連続して接触した後、第3対向面703にはほとんど接触せずに、膜部材90を介して第4対向面704に接触するようになっている。なお、第3対向面703との対向部位において、加圧ベルト520は、引き続き膜部材90に接触した状態となっており、実際には、第3対向面703と膜部材90とが接触しない状態になっている。
また、ベルト回転方向Cに沿って回転する加圧ベルト520は、対向面700における第1稜部710および第2稜部720においてそれぞれ屈曲することで、第1稜部710を通過した後の移動方向および第2稜部720を通過した後の移動方向が変化するようになっている。
さらに、押付部材70が取り付けられた押付支持部材80は、押付部材70の対向面700を、膜部材90を介して加熱ロール510側に向けて押している。このとき、押付部材70に設けられた対向面700のうち、溝部71からみて裏側に位置する第4対向面704には、溝部71に取り付けられた押付支持部材80により、他の面(第1対向面701、第2対向面702および第3対向面703)よりも大きな力がかかるようになっている。
次に、定着ニップ部Nの周辺における、加熱モジュール51を構成する加熱ロール510と、加圧モジュール52を構成する加圧ベルト520との関係について説明する。
本実施の形態では、上述したように、支持モジュール53(図3等を参照)を用いた、加熱モジュール51および加圧モジュール52の支持、および、両者の相対的な位置決めが行われる。そして、この位置決めに伴い、加圧ベルト520のうち、膜部材90を介して押付部材70の第4対向面704と対向する部位が、加熱ロール510の外周面に接触するようになっている。
ここで、本実施の形態では、押付部材70の硬度が、加熱ロール510を構成する被覆部材513の硬度よりも高く設定されている。これにより、加圧ベルト520のうち、膜部材90を介して第4対向面704と対向する部位が、加熱ロール510に設けられた被覆部材513に食い込んだ状態で接触することで、定着ニップ部N(図13においてハッチングを付した部位)を形成するようになっている。また、本実施の形態では、定着ニップ部Nにおいて、搬送方向Aの下流側(用紙Pの出口側)における食い込み量が、搬送方向Aの上流側(用紙Pの入口側)における食い込み量よりも大きくなるように、押付部材70における第4対向面704の形状、および、加熱ロール510と加圧ベルト520と押付部材70との位置関係が設定されている。なお、この例において、定着ニップ部Nにおける搬送方向Aの上流側の端部は、対向面700における第3稜部730に沿って存在している。また、この例においては、例えば図13から明らかなように、加圧ベルト520における軸方向両端部が、押付部材70における軸方向両端部よりも内側に位置しており、定着ニップ部Nを通過する用紙Pにおける幅方向両端部が、加圧ベルト520における軸方向両端部よりも内側に位置している。
ここで、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側では、加熱ロール510の外周面が円弧状を呈しているのに対し、加圧ベルト520の外周面は、押付部材70に連続して設けられた第1対向面701、第2対向面702および第3対向面703(さらに第3対向面703よりも搬送方向Aの下流側に位置する定着ニップ部N)により、段階的に面の傾斜が変化している。より具体的に説明すると、第1対向面701に対向する部位における加圧ベルト520の外周面と、この部位に対向する加熱ロール510の外周面の接線との成す角度よりも、第2対向面702に対向する部位における加圧ベルト520の外周面と、この部位に対向する加熱ロール510の外周面の接線との成す角度の方が、より小さくなっている。また、第2対向面702に対向する部位における加圧ベルト520の外周面と、この部位に対向する部位における加熱ロール510の外周面の接線との成す角度よりも、第3対向面703と対向する部位における加圧ベルト520の外周面と、この部位と対向する部位における加熱ロール510の外周面の接線との成す角度の方が、より小さくなっている。したがって、本実施の形態では、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において、加熱ロール510と加圧ベルト520との間に形成される空間(ギャップ)が、搬送方向Aに沿って不連続且つ段階的に減少するようになっている。定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において、加熱ロール510の外周面と加圧ベルト520の外周面とのギャップがこのような関係を有しているのは、押付部材70における対向面700に、第1稜部710を挟んで第1対向面701および第2対向面702を設け、且つ、第2稜部720を挟んで第2対向面702および第3対向面703を設けたことによるものである。
なお、本実施の形態では、上述した定着ニップ部Nに加えて、加圧ベルト520のうち、膜部材90を介して押付部材70の第3対向面703と対向する部位も、加熱ロール510の外周面に接触するようになっている。ただし、この部位は、図12からも明らかなように、押付部材70における第3対向面703が存在していることから、押付部材70による加熱ロール510側への押し付けは行われない。
では、定着ニップ部Nを通過する用紙Pの挙動について説明を行う。なお、ここでは、加熱ロール510が発熱体512(図4参照)によって既に加熱されているものとし、また、駆動に伴って加熱ロール510がロール回転方向Bに回転しており、定着ニップ部Nにおいて加熱ロール510に接触する加圧ベルト520が、加熱ロール510の回転に伴ってベルト回転方向Cに回転しているものとする。
二次転写装置30(図1参照)を通過することにより、一方の面にトナー像が二次転写された用紙Pは、搬送方向Aに沿って定着装置50に向けて搬送されてくる。このとき、用紙Pは、連結板5312の面に接触しながら連結板5312の面に沿って搬送される。なお、図12に示す例においては、用紙Pのうち図中下側を向いている面が、トナー像の被転写面となる。
そして、搬送方向Aに沿って搬送されてくる用紙Pの先端が、連結板5312を通過した後、ベルト回転方向Cに回転する加圧ベルト520のうち、第1対向面701と対向する部位に突き当たる。用紙Pの先端が加圧ベルト520に突き当たると、この用紙Pの先端側は、第1対向面701に沿って移動する加圧ベルト520によって案内されながら移動していくが、第1稜部710との対向部を通過した後は、用紙P自身が有するコシによって、加熱ロール510側へと向かって移動していく。これに伴い、用紙Pの先端は、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において、ロール回転方向Bに回転する加熱ロール510の外周面(実際には被覆部材513)に突き当たる。また、これに続いて、この用紙Pにおける被転写面が、加熱ロール510の外周面に接触し始める。
このとき、加熱ロール510は、発熱体512(図4参照)によって加熱されており、用紙Pにおける被転写面のうち、加熱ロール510の外周面と接触する領域に存在するトナーは、加熱ロール510から受ける熱により徐々に溶融していく。その結果、用紙Pは、被転写面に存在するトナー(溶融に伴って粘着性が増したトナー)を介して、加熱ロール510の外周面に張り付いた状態となる。
そして、先端側から順次加熱ロール510に張り付いた状態となりながら搬送されていく用紙Pの先端は、ベルト回転方向Cに回転する加圧ベルト520のうち、第3対向面703と対向する部位を通過していくことに伴い、加熱ロール510と加圧ベルト520との間に挟まれ始める。それから、用紙Pの先端は、加熱ロール510と加圧ベルト520とに挟まれた状態を維持しつつ、第3稜部730との対向部を通過することに伴い、加圧ベルト520のうち、第4対向面704と対向する部位すなわち定着ニップ部Nに進入していく。
定着ニップ部Nでは、進入してくる用紙Pに対し、加熱ロール510を用いた加熱および押付部材70を用いた加圧が施されることにより、用紙Pにおける被転写面に形成されたトナー像が、用紙Pに定着される。ここで、定着ニップ部Nでは、加熱ロール510と加圧ベルト520(押付部材70における第4対向面704)との位置関係が、図12に示すようになっていることから、定着ニップ部Nを通過する用紙Pに対しては、定着ニップ部Nにおける搬送方向Aの上流側よりも下流側において、より大きな力が加わる。このため、用紙Pは、定着ニップ部Nにおける最下流側において加熱ロール510(被覆部材513)側に強く押されることになり、定着ニップ部Nを通過した用紙Pの先端には、加熱ロール510の外周面から離れる方向へと向かう力がかかる。その結果、定着ニップ部Nを通過した定着済の用紙Pは、トナーによる張り付き力に抗して加熱ロール510の外周面から離れ(剥離され)、検知片56(図2参照)側に向かって搬送されていくことになる。
また、この例では、用紙Pが、第3稜部730から定着ニップ部Nに進入するようになっているが、本実施の形態の第3稜部730は、図13にも示したように、搬送方向Aの下流側からみたときに凸状且つ曲線状となるように形成されている。このため、第3稜部730から定着ニップ部Nに進入する用紙Pの先端は、幅方向中央部から幅方向両端部に向かって、順次第3稜部730を通過していくことになる。したがって、第3稜部730を通過する用紙Pには、幅方向中央部から幅方向両端部に向かって、用紙Pを幅方向両端部の外側へと押し出そうとする力がかかる。その結果、用紙Pが第3稜部730を介して定着ニップ部Nに進入した際に、加圧に伴って用紙Pにしわが生じるという事態の発生が回避されることになる。
なお、上述した説明においては、用紙Pの先端が、加圧ベルト520のうち、第1対向面701と対向する部位に最初に突き当たるものとして説明を行ったが、加圧ベルト520のうち、第2対向面702と対向する部位に最初に突き当たったとしても、この用紙Pの先端を、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側にて加熱ロール510に到達させることが可能である。
以上説明したように、本実施の形態では、連結板5312によって案内されつつ定着ニップ部Nに向かって搬送されてくる用紙Pを、押付部材70に設けられた第1対向面701(あるいは第2対向面702)に沿って移動する加圧ベルト520を用いて、加熱ロール510側へと案内するようにした。これにより、定着ニップ部Nに向かって搬送されてくる用紙Pを、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において、加熱ロール510に接触させることが可能になる。また、これにより、例えば薄紙などの用紙Pを用いることに伴い、定着前の用紙Pに波打ち状のしわが発生しているような場合であっても、加圧ベルト520に用紙Pを先に突き当てることにより、このしわを定着ニップ部Nに到達する前に伸ばしておくことが可能となる。そして、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側で加熱ロール510に用紙Pを接触させておくことにより、定着ニップ部Nに到達する前から、加熱ロール510を用いて用紙Pを接触加熱することが可能になる。この構成を採用することにより、定着ニップ部Nにおいてのみ用紙Pを接触加熱する場合と比較して、用紙Pに対する熱の供給効率を向上させることができる。より具体的に説明すると、本実施の形態の構成を採用することにより、同じ定着性能を得ようとした場合に、例えば発熱体512の発熱量が同じである場合には定着速度(定着装置50を通過する用紙Pの移動速度)を増速することが可能となり、例えば定着速度が同じである場合には発熱体512の発熱量を低減することが可能となる。
ここで、本実施の形態では、加熱ロール510をモータ等にて回転駆動する一方、加圧ベルト520については、加熱ロール510から定着ニップ部Nを介して受けた駆動力によって従動回転させるようにしている。ここで、定着ニップ部Nよりもベルト回転方向Cの上流側において、加圧ベルト520は、押付部材70(より具体的には第1対向面701および第2対向面702)との対向部を通過する際に、その進行方向が曲げられるようになっている。このため、加圧ベルト520のうち対向部から定着ニップ部Nに至る部位(第3対向面703と対向する部位)は、他の部位よりも大きな張力がかかることになり、この部位において加圧ベルト520にしわが発生するのを抑制することが可能になる。したがって、加圧ベルト520にしわが生じたままの状態で加圧ベルト520が定着ニップ部Nに突入することに伴い、加圧ベルト520にダメージ(折り目)が生じるのを抑制することができるようになる。
また、本実施の形態では、定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において用紙Pを加熱ロール510に案内する案内機能と、定着ニップ部Nを通過する用紙Pを加熱ロール510側に押し付けることで、定着ニップ部Nを通過した用紙Pを加熱ロール510から剥離する剥離機能とを、一つの構成部材である押付部材70に具備させるようにした。この構成を採用することにより、上述した案内機能を実現させる部材と上述した剥離機能を実現させる部材とを別々に設けた場合と比較して、装置の構成を簡略化することができる。
ここで、本実施の形態では、固定して配置される押付部材70の対向面700とベルト回転方向Cに回転する加圧ベルト520の内周面との間に、摩擦係数が低い膜部材90を配置するようにした。この構成を採用することにより、膜部材90を設けない場合と比較して、長期の使用に伴う、押付部材70および加圧ベルト520の摩耗による劣化を抑制することができる。
さらに、本実施の形態では、定着ニップ部Nの形成に用いられる第4対向面704に対し、凹面からなる第3対向面703を搬送方向Aの上流側に隣接して設け、これら第3対向面703と第4対向面704との境界に位置する第3稜部730を、上述したように湾曲させた状態で配置するようにした。この構成を採用することにより、第3稜部730を軸方向に沿う直線状とした場合と比較して、定着ニップ部Nを用紙Pが通過する際におけるしわの発生を抑制することができる。
さらにまた、本実施の形態の定着装置50において、連結板5312(案内部材)は、用紙Pを定着ニップ部Nよりも搬送方向Aの上流側において加圧ベルト520に突き当てるための機能を有していればよいことになる。このため、連結板5312(案内部材)の取付精度を高めなくてもよくなる。
なお、本実施の形態では、加熱ロール510と、押付部材70における第2稜部720との対向部を通過する加圧ベルト520との間にギャップを設けていたが、このギャップの大きさは小さいほどよい。また、圧力がかからない範囲において、加熱ロール510と、第2稜部720との対向部を通過する加圧ベルト520とを接触させるようにしてもかまわない。
また、本実施の形態では、押付部材70に設けられる第3稜部730を曲線状としていたが、これに限られるものではなく、例えば2本の直線をV字状に配置したものとしてもよい。