JP5960934B1 - 飛行体の落下に対する防護建造物 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、2001年9月に発生した米国同時多発テロ事件以降、米国原子力規制委員会は原子力施設の防衛を強化する為の規制・基準を定めた。
我が国が原子力施設保有国として、東電福島事故を踏まえ、同様の対応をすべきであるという要請が高まってきた。
産業設備が防護建造物で包囲されていても、飛行機が墜落して防護建造物に衝突し、全壊とならなくても防護建造物が部分的に破壊され、破砕物が防護建造物の内部に散乱することによって内部の産業設備に対して被害を与え、設備の稼働が困難になったり、危険物質が外部に漏出することが予想されるので、このようなことが起こらないように、防護建造物の構造部材への衝撃をできるだけ緩和すると共に、防護建造物の破砕物が飛散したり亀裂が拡大しないようにする必要がある。
また、防護建造物を短期間で建造することができるようにし、破壊されても修復を容易に、かつ、短期間で行えるようにすることが要求されている。
更に、外殻は、曲面状のプレキャストコンクリート部材に二方向に配設された緊張鋼材を緊張定着することによってプレストレスを与えると共に部材同士を圧着接合して一体化して曲面状とした多層防護機能を備えた防護建造物である。
また、防護建造物の形状は、シェル、ドーム、アーチ型などの曲面形状とし、飛行体の墜落による衝撃緩和作用について方向依存性が無いようにしてある。
飛行体の墜落による建造物の崩壊については、2001年9月11日に起こった「米国同時多発テロ事件」で、世界貿易センタービルが崩壊したのは、局所的破壊に起因する進行性崩壊の結果と判明された。
また、PC造のドームを爆破解体した際に、ドームの原型を留めたままの解体となり、PC造が進行性破壊防止機能を有していることが実証されたとの報告もある。
そこで、飛行体の墜落による建築物の進行性崩壊が防止できる構造にするため、本発明では、PC構造を採用し、プレストレス力の抵抗力と復元力によって、衝撃力で防護建造物に生じる変形を小さく抑制することができる。また、衝突後、残留変形を残すことなく防護建造物が元の状態に戻るという優れた効果が得られ、進行性崩壊の防止を図ることができる。
更に、外殻の内面に密着させた飛散防止膜を設けることによって、万一外殻に局部的に損傷や亀裂等が生じた場合でも、破砕物が飛散したり亀裂が拡大したりすることを防ぐことができる。
また、防護建造物の形状をシェル、ドーム、アーチ型などの曲面形状として飛行体の墜落に対しての衝撃緩和作用について方向依存性が無いようにしたことによって、どの断面においても多層防護機能が等しいものとなり、特定の部分に追加補強部材を設ける必要がなく、施工効率を高めることができ、コストの低減を図ることができる。
プレキャストコンクリート部材を接合組立し、緊張鋼材によって緊張し圧着接合して組み立てるので、短期間で構築することができると共に、短期間で修復することが可能である。
本発明の防護建造物は、緩衝層、緩衝補強層、PC構造とした曲面の外殻及び飛散防止膜で形成された多層防護機能を備えた防護建造物であるので、従来技術では得られない相乗効果を得ることができ、内部の重要施設の破壊や損傷を防止して確実に保護することを可能にしたのである。
図1は、産業設備Sが防護建造物1で覆われて防護された状態を示す正面図である。
図示の例は、断面が半円形のアーチが長手方向に連続したものであり、防護建造物1が産業設備Sの全体をすべて収容するものである。長手方向の両端部は開放してある。防護建造物1の長さを産業設備Sより長くし、両端部にスペースが形成されるように産業設備の種類に応じた適当な空間が形成されている。こうすることによって、平常時の産業設備の利用は、不便なことなく従来通りに使用できるが、飛行体の落下に対しては、両端部を長くしたため、防護建造物1の両端で遮断して産業設備を防護することができる。
防護建造物1の端部を開放することなく、扉を有する壁を設けたり、端部側を曲面構造物によって閉鎖されるようにしてもよい。
プレキャストコンクリート部材10の大きさは、収容する設備の大きさ、製造設備、運搬条件、及び施工現場の条件等を考慮して決める。
なお、コンクリート部材の製作は、プレキャストに限ることはなく、現場打ちとし、同じように二方向ともに緊張鋼材を配設して緊張定着してプレストレスを付与することによって現場打ちコンクリートPC構造としてもよい。
ハニカム材11の形成材料は、軽量な高強度素材としてアルミニウム等の軽金属とすることが好ましいが、炭素繊維強化プラスチック、アラミド繊維等の合成樹脂複合材料としてもよい。要するに、軽量な高強度素材であればよく、素材は限定されない。
ハニカム材11はプレキャストコンクリート部材10に設けたアンカーで固定する。ハニカム材11同士はボルトとナットで緊結するか、溶接などの手段で一体化する。
膜材としては炭素繊維膜やセルロースナノファイバー膜など軽量で強度の高いファイバーを樹脂で膜状としたものが好ましい。
図5に示すように、支保工5において完成したアーチ部材1aをアーチ組立サイトから防護建造物構築場所まで移動させて長手方向も同様に圧着接合で一体化する。
アーチ部材1aの移動には組立サイトから設置場所までレール(図示しない)を予め敷設しておくと、アーチの組立作業と防護建造物の構築作業を同時におこなうことができ、効率的に工事をすすめることができる。
図6は、プレキャストコンクリート部材10を組立完成し、部材同士が二方向に配設された緊張鋼材20で緊張定着されて(定着具図示省略)一体化されたことを示すものである。
緊張鋼材20は、PC鋼より線、または、PC鋼線とするが、耐久性の向上を図るために防錆処理が施されている緊張鋼材、例えば、全素線エポキシ樹脂塗装型PC鋼より線(商品名:SCストランド、登録商標)を用いることが好ましい。
例えば、本発明の多層防護機能を備えた防護建造物は、緩衝層、緩衝補強層、PC構造とした曲面の外殻及び飛散防止膜の少なくとも計4層で形成されたものとするが、これに限ることなく、従来の単層防護機能に比べ、本発明と同じように多層防護機能を得ることができるなら、層数を増減、層の形成順番や構成材料を変更してもよい。
また、防護建造物1の端部を開放し、端部側より通路とする距離を開けて壁や障害物等を設置し、飛行体の突入を遮断することとしてもよい。
10 プレキャストコンクリート部材
10a 接合用段部
10b 接合用段部
11 ハニカム材
12 緩衝層
12a 基層部
12b リブ
3 飛散防止膜
4 基台
5 支保工
20 緊張鋼材
Claims (6)
- プレストレストコンクリート製の曲面構造物の外殻、この外殻の内面に密着させた飛散防止膜が設けてあり、外殻の外表面にはハニカム材が緩衝補強層として固定してあり、更にハニカム材の上面に縦横のリブを有するゴム製の外装材で形成された緩衝層が設けてある多層防護機能を備えた防護建造物。
- 請求項1において、外殻は曲面を有するプレキャストコンクリート部材を接合組み立て、プレキャストコンクリート部材同士は二方向に配設される緊張鋼材を緊張定着してプレストレスを与えると共に圧着接合して一体化してある多層防護機能を備えた防護建造物。
- 請求項1または2において、ハニカム材は、軽量な高強度素材で形成されたものである防護建造物。
- 請求項1〜3いずれかにおいて、緩衝層は廃タイヤを再生したゴムである防護建造物。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、曲面構造物は、アーチ構造物、球体構造物、シェル構造物のいずれかである防護建造物。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、飛散防止膜は、セルロースナノファイバーを用いて形成されたものである防護建造物。
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