JP5958281B2 - ギヤの締結構造 - Google Patents
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Description
従来、この種のギヤの締結構造として、リングギヤをデフケースに圧入した後、デフケースから環状に突出したカラーをリングギヤの側面部分に折り込むようにして変形させ、リングギヤをデフケースに締結するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
カラーを変形させてデフケースに締結する際、大きな荷重(N)が、カラーを介してリングギヤの側面に作用し、リングギヤの歯面が変形してしまう可能性があった。
具体的には、図14(a)に示す締結前のリングギヤが、図14(b)に示すように、矢印aの荷重の作用により、荷重が加わる側の側面部の外周部分が大きくなって円錐台形状に変形してしまう可能性があった。
このような歯面精度誤差が生ずると、例えば、図15(a)に示す歯溝振れFr(μm)が、変形後、すなわちかしめ後で不良状態を示すNGになってしまうものが僅かにできてしまうことになった。また、図15(b)に示す累積ピッチ誤差FPK(μm)が、かしめ後、NGになってしまうものが一部発生してしまうことになった。また、図15(c)に示すねじれ角誤差FH(平均値)(μm)が、かしめ後、ほぼ全箇所NGになってしまうことになった。
図15(a)、(b)、(c)に示すような誤差が発生すると、ギヤノイズの増大や、歯当たりの悪化によるギヤ強度の低下を招くおそれがあるという問題があった。
従来のギヤは、鍛造工程により作製した形状のものに対して、歯車の精度を向上させるよう、切削加工して、製品の形状にしていたので、両側面を含めてほぼ全体に渡って切削加工を施していた。
本発明に係るギヤの締結構造においては、第2の側面部に生ずる応力(N/m2)を低下させる溝が設けられており、鍛造工程により溝を形成することができる。したがって、この溝を切削工程で加工する必要がなくなり、切削加工部位を少なくすることができ、従来無駄になっていた素材を少なくすることができる。その結果、溝の部分に相当する素材の量を少なくすることができるとともに、切削加工工数を少なくすることができるので、従来のギヤと比較して低コストのギヤが得られる。
さらに、この構成により、本発明に係るギヤの締結構造においては、ギヤがフランジに圧入された状態で、底面が回転軸線方向で一端よりも第1の側面部側に位置するよう構成されているので、底面が回転軸線方向で一端よりも第1の側面部と反対側に位置する場合と比較して、第2の側面部が変形し易くなり、第2の側面部に生ずる応力を低減することができ、ギヤの歯部の変形を抑制することができる。
図1に示すように、ディファレンシャル10は、ディファレンシャル機構11と、ディファレンシャル機構11を収容するデフケース13と、デフケース13に締結された環状のギヤとしてのリングギヤ12とを含んで構成されている。このディファレンシャル10は、図示しないトランスアクスルを構成しており、エンジンから出力されリングギヤ12を介して入力される動力を、左右の駆動輪に伝達するようになっている。また、このディファレンシャル10は、ディファレンシャル機構11により左右の駆動輪がそれぞれ異なった回転速度で回転することを許容するよう構成されている。
歯部33は、本体部31の外周から径方向外方に突出する複数の歯33aを有している。この歯33aは、はすば歯車で形成されており、比較的滑らかに動力を伝達するようになっている。なお、この歯33aは、はすば歯車以外の形状を有する歯車でもよい。例えば、平歯車であってもよい。
第1の側面部34は、図3に示すように、突出側側面部34aと、凹み側側面部34bとを有している。なお、突出側側面部34aと凹み側側面部34bとが同一平面にあるよう、単一の平面を有する側面部で形成してもよい。
なお、第2の側面部35も第1の側面部34と同様、図4(b)に示すように、突出側側面部35aと凹み側側面部35bとが同一平面にあるよう、単一の平面を有する側面部で形成してもよい。
図4(a)に示すように、歯側壁面38aの突出側側面部35aとが交わる角部と歯33aの歯底との距離L1は、歯33aの歯底と歯先との長さL0で示される歯33aの歯たけよりも大きくなる位置で溝38が形成されている。
回転軸線方向に切断した断面において、対向壁面38bは、凹み側側面部35bの側面とのなす角がθになるよう形成された傾斜面を有している。
また、側壁41aには、ピニオンシャフト21を支持する支持孔41bと、固定ピン22を支持する支持孔41cとを有している。
左支持ボス43も、右支持ボス42と同様、図示しないトランスアクスルケースに装着された軸受で支持されるとともに、左ドライブシャフト1Lが回転可能に挿通されるようになっている。
側面支持部51は、回転軸線方向の右支持ボス42側の一方端部で、リングギヤ12の凹み側側面部34bをかしめ固定するよう径方向の外方に円盤状に突出して形成されている。
かしめ固定部52は、回転軸線方向の左支持ボス43側の他方端部でリングギヤ12の凹み側側面部35bを支持するよう回転軸線方向に円環状に突出して形成された環状突起61を有している。この環状突起61は、かしめ型によって押圧された際にリングギヤ12の凹凸部36を押圧するとともに押圧変形し、押圧後の凹凸部36の復元力(N)により、フランジ44がリングギヤ12に固着して、フランジ44とリングギヤ12とがかしめ固定されるようになっている。
この当接面71aは、図4(a)に示すように、回転軸線に平行な線Lrと当接面71aに沿った線Ltとのなす角がθになるよう形成されている。
この構成により、リングギヤ12がフランジ44に圧入された状態、すなわち図4(a)に示す状態で、当接面71aと対向壁面38bに形成された傾斜面とが垂直に交わるようになっている。
準備ステップにおいては、各ステップで必要な圧入装置や締結装置における圧入荷重(N)や締結荷重(N)の設定などの準備、圧入治具、金型、工具などの器具類の準備が行われる。
次いで、リングギヤ12の第1の側面部34が受け型U側に向くように、図示しない押し型にリングギヤ12がセットされる。そして、リングギヤ12の圧入面部32がフランジ44の外周部に接するようにして、所定の圧入荷重(N)が押し型に加えられリングギヤ12がフランジ44に圧入される。この圧入は、リングギヤ12の第1の側面部34の凹み側側面部34bが、フランジ44の側面支持部51に当接することにより完了する。
この場合、圧入が完了したリングギヤ12およびデフケース13がセットされた状態で、押圧型Woの傾斜面が環状突起61の当接面71aに全周に渡って当接するまで下降する。
なお、この締結型Wによるかしめ固定は、いわゆる一発かしめにより行われるので、締結型Tによるかしめ固定に比べ加工時間を短時間にすることができる。
このように、ディファレンシャル10においては、かしめ後であっても、従来の締結構造において生じていた図15(a)ないし図15(c)に示すようなギヤ歯面の精度の問題が解消されるという効果が得られる。
その結果、当接面71aに締結荷重が矢印方向に加えられた際、前述の垂直よりも小さな角度で形成された場合と比較して、リングギヤ12の所定の剛性が確保され、かしめ固定が適正に行われ適正な締結力を有してリングギヤ12とフランジ44とが締結されるという効果が得られる。すなわち、リングギヤ12に締結荷重が作用しても、凹み側側面部35bが弾性変形し、かしめ固定が完了した際、変形した凹み側側面部35bが変形前の元の形状に復帰し、いわゆるスプリングバックにより所定の締結力を有して、リングギヤ12がデフケース13に締結される。
すなわち、前述のリングギヤ12の溝38の対向壁面38bに形成された傾斜面の角度と、溝38の深さとの関係を適宜設定することにより、フランジ44のかしめ固定部52における締結力を確保できるとともに、リングギヤ12の歯部33における歯面の変形を抑制することができる。
第2実施形態に係るディファレンシャル110においては、第1実施形態に係るディファレンシャル10のリングギヤ12が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1から図6に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
第1の側面部134は、図11および図12に示すように、突出側側面部134aと、凹み側側面部134bとからなり、突出側側面部134aと凹み側側面部134bとの間で、回転軸線方向に凹むとともに、回転軸線を中心として環状に形成された側面支持部側溝138を有している。
突出側側面部134aは、第1実施形態の突出側側面部34aと同様に形成され、凹み側側面部134bは、第1実施形態の凹み側側面部34bに形成されている凹凸部36以外は、第1実施形態の凹み側側面部34bと同様に形成されている。
図11および図12に示すように、側面支持部側溝138の第1の側面部134における歯側壁面138aおよび対向壁面38bは、第1実施形態の溝38と同様の形状を有している。
しかしながら、本発明のギヤの締結構造においては、第2の側面部が凹凸部以外の形状を有する構造で構成してもよい。例えば、第2の側面部と圧入面部との角部を平坦な傾斜面を有する構造、いわゆる面取りを施した構造で構成するようにしてもよい。
しかしながら、本発明のギヤの締結構造においては、リングギヤがフランジに圧入された状態で、環状突起の当接面と溝の対向壁面に形成された傾斜面とが垂直以外の異なる角度で交わる構造で構成するようにしてもよい。例えば、当接面と対向壁面に形成された傾斜面とのなす角度を、リングギヤおよびフランジの形状や大きさ、素材の材質や硬度などの機械的強度に応じて60°ないし100°程度の範囲で形成した構造で構成するようにしてもよい。
しかしながら、本発明に係るギヤの締結構造においては、ギヤをフランジに圧入する以外の構造で構成するようにしてもよい。例えば、ギヤおよびフランジの圧入部分に締め代を設けず、圧入に代えて、単に、ギヤをフランジに挿入しギヤとフランジを嵌合させる構造で構成してもよい。
Claims (5)
- 回転可能に支持され外周部の径方向外方に円盤状に突出するフランジを有するケースと、前記フランジの外周部に締結された環状のギヤと、を有するギヤの締結構造において、
前記フランジが、回転軸線方向の一方端部で前記ギヤ12の第1の側面部を支持する側面支持部と、前記回転軸線方向の他方端部で前記ギヤの前記第1の側面部と反対側の第2の側面部にかしめ固定されたかしめ固定部と、を有し、
前記かしめ固定部が、前記回転軸線方向に環状に突出する環状突起を有し、
前記ギヤが、外周から径方向外方に突出する複数の歯からなる歯部を有し、
前記第2の側面部が、前記歯と前記フランジのかしめ固定部との間に、前記回転軸線方向に凹むとともに前記回転軸線を中心として環状に形成された溝を有し、
前記環状突起が、かしめ型が当接する当接面が形成された当接面部を有し、
前記当接面部が、前記回転軸線方向で前記第1の側面部側に位置する一端を有し、
前記溝が、前記回転軸線方向における底面を有し、
前記底面が前記回転軸線方向で前記一端よりも前記第1の側面部側に位置することを特徴とするギヤの締結構造。 - 前記溝は、前記歯の歯底から前記歯の歯たけの距離だけ離れて前記第2の側面部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のギヤの締結構造。
- 前記溝が、径方向において前記歯の側に位置する歯側壁面と前記歯側壁面と対向する対向壁面とを有し、
前記回転軸線方向に切断した断面において、前記対向壁面と、前記環状突起の前記当接面と、のなす角が垂直であることを特徴とする請求項1に記載のギヤの締結構造。 - 前記ギヤが、前記第2の側面部に直交し前記フランジに圧入された圧入面部を有し、前記第2の側面部と前記圧入面部との角部に形成された凹凸部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載のギヤの締結構造。
- 前記ギヤの前記第1の側面部が、前記歯と前記フランジの前記側面支持部との間に、前記回転軸線方向に凹むとともに前記回転軸線を中心として環状に形成された側面支持部側溝を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載のギヤの締結構造。
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