JP5949199B2 - リチウムマンガン含有酸化物とその製造方法、リチウムイオン二次電池の正極活物質、およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムマンガン含有酸化物とその製造方法、リチウムイオン二次電池の正極活物質、およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムマンガン含有酸化物とその製造方法、リチウムイオン二次電池の正極活物質、およびリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な正極及び負極と、液状、ゲル状もしくは固体状の電解質とから概略構成され、高出力及び高エネルギー密度などの利点を有している。
特許文献1には、層状構造を有し、かつ一般式Li2−xMn1−y3−p(ここで、x,y及びpは、0≦x≦2/3、0≦y≦1/3、及び0≦p≦1を満たす。)で表わされるリチウムマンガン酸化物であって、X線回折(XRD)で測定される(001)結晶面のピークの半値幅が0.22°以上であり、平均粒子径が130nm以下であるリチウム二次電池用正極活物質が開示されている(請求項1)。
特許文献1において、上記式で表されるリチウムマンガン酸化物としては、LiMnOまたはLi〔Li0.33Mn0.67〕Oが挙げられている(請求項2)。
特許文献1に記載されているように、一般的にはLiMnOおよびLi〔Li0.33Mn0.67〕Oは、Mnの価数が4であるため、Liイオンを充電の際放出することが難しいとされている(特許文献1の段落0002)。
特許文献1には、「本発明においては、X線回折で測定される(001)結晶面のピークの半値幅が0.22°以上であるので、結晶性が低く、結晶構造が不安定である。このため、リチウムが活物質から容易に放出されやすくなっているため、放電容量を高くすることができるものと思われる。また、本発明のリチウムマンガン酸化物の平均粒子径は、130nm以下である。このため、活物質粒子中をリチウムが拡散する距離が短くなり、より容易に活物質からリチウムが放出され、このため放電容量を高めることができるものと思われる。」と記載されている(段落0018)。
特許文献1の実施例1〜5においては、水酸化リチウムと炭酸マンガンとの混合物をアセトン中で粉砕し、60℃で乾燥後、400℃〜800℃で焼成し、Li〔Li0.33Mn0.67〕Oで表わされるリチウムマンガン酸化物を製造している(特許文献1の段落0048−0049)。
特開2010-135285号公報
プラグインハイブリッド車(PHV)あるいは電気自動車(EV)等に搭載されるリチウムイオン二次電池では、4.5V以上の高電位使用において、初期および充放電を繰り返した後の充放電特性が良好であることが求められる。
本発明者が特許文献1の記載の方法に準拠して正極活物質を製造し、評価したところ、4.5V以上の高電位使用において、初期充放電効率が低く、充放電を繰り返した後の容量維持率が低いことが明らかとなった(後記比較例2を参照)。
特許文献1の正極活物質では、結晶構造を不安定にすることにより、リチウム放出を可能としている。特許文献1の正極活物質は構造が不安定であるため、高電位使用において高性能が得られず、耐久性も良くないと考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、4.5V以上の高電位使用において初期および充放電を繰り返した後の充放電特性を向上することが可能なリチウムマンガン含有酸化物とその製造方法を提供することを目的とするものである。
なお、本発明のリチウムマンガン含有酸化物は、4.5V以上の高電位使用に好適なものであるが、任意の充放電条件で使用可能である。
本明細書において、特に明記しない限り、高電位は「4.5V以上」と定義する。また、特に明記しない限り、「初期特性」は初期の充放電特性、「サイクル特性」は充放電を繰り返した後の充放電特性を意味するものとする。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法は、
LiMnOと、
LiMnOと反応してリチウム含有化合物となり、かつ当該リチウム含有化合物が元の化合物より高酸化数となるリチウム非含有酸化物からなる少なくとも1種の還元剤とを、
不活性雰囲気下、400〜600℃で熱処理することにより複合するものである。
本発明の第1のリチウムマンガン含有酸化物は、
上記の本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法により製造されたものである。
本発明の第2のリチウムマンガン含有酸化物は、
LiMnOと、LiMoO、LiWO、およびLiSnOからなる群より選ばれた少なくとも1種のリチウムイオン伝導性化合物とが複合されたものである。
本発明のリチウムイオン二次電池用の正極活物質は、
上記の本発明の第1または第2のリチウムマンガン含有酸化物を含むものである。
本発明のリチウムイオン二次電池は、
上記の本発明のリチウムマンガン含有酸化物を正極活物質として用いたものである。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、4.5V以上の高電位使用において初期および充放電を繰り返した後の充放電特性を向上することが可能なリチウムマンガン含有酸化物とその製造方法を提供することができる。
実施例1〜3、および比較例1〜2で得られた正極活物質のXRDパターンである。 実施例1で得られたリチウムイオン二次電池のCV試験結果を示すグラフである。 実施例2で得られたリチウムイオン二次電池のCV試験結果を示すグラフである。 実施例3で得られたリチウムイオン二次電池のCV試験結果を示すグラフである。 比較例1で得られたリチウムイオン二次電池のCV試験結果を示すグラフである。 実施例1で得られたリチウムイオン二次電池の充放電試験における初期特性の評価結果を示すグラフである。 実施例2で得られたリチウムイオン二次電池の充放電試験における初期特性の評価結果を示すグラフである。 実施例3で得られたリチウムイオン二次電池の充放電試験における初期特性の評価結果を示すグラフである。 比較例1で得られたリチウムイオン二次電池の充放電試験における初期特性の評価結果を示すグラフである。 比較例2で得られたリチウムイオン二次電池の充放電試験における初期特性の評価結果を示すグラフである。 実施例1〜3、および比較例1〜2で得られたリチウムイオン二次電池の充放電試験におけるサイクル特性の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明について詳述する。
[リチウムマンガン含有酸化物とその製造方法]
本発明のリチウムマンガン含有酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質用として好適なものである。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法は、
LiMnOと、
LiMnOと反応してリチウム含有化合物となり、かつ当該リチウム含有化合物が元の化合物より高酸化数となるリチウム非含有酸化物からなる少なくとも1種の還元剤とを、
不活性雰囲気下、400〜600℃で熱処理することにより複合するものである。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法では、反応温度を400〜600℃としてある。
反応温度が400℃未満では反応が進みにくい。反応温度が600℃超では、粒成長が起こりやすくなり、粗大粒子が生成されて比表面積が小さくなり、正極活物質として適さないものとなる。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法では、熱処理雰囲気は不活性雰囲気下とする。
酸素ガスあるいはオゾンガスの存在下では、雰囲気中の酸素元素と還元剤との反応が起こり、所望の反応が起こらなくなる。
不活性雰囲気としては、Nガス雰囲気、あるいはAr等の希ガス雰囲気等が挙げられる。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法に用いる原料のLiMnOの合成方法は特に制限されず、「背景技術」に挙げた特許文献1等に記載の方法が挙げられる。例えば、リチウム含有材料とマンガン含有材料とを、大気雰囲気等の酸素含有雰囲気下で焼成することにより、LiMnOを合成できる。
ここで、リチウム含有材料としては特に制限なく、水酸化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、および硫酸リチウム等が挙げられる。マンガン含有材料としては特に制限なく、MnO、Mn、およびMn等が挙げられる。リチウム含有材料およびマンガン含有材料は各々、1種または2種以上用いることができる。
LiMnO合成における反応温度は特に制限なく、例えば400〜650℃が好ましい。反応温度が400℃未満では反応が進みにくい。反応温度が650℃超では、粒成長が起こりやすくなり、粗大粒子が生成されて比表面積が小さくなり、正極活物質として適さないものとなる。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法に用いる原料のLiMnOは、市販品を用いてもよい。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物は、上記の本発明のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法により製造されたものである。
一般的に、LiMnO単独ではMnの価数が4であるため、リチウムイオンを充電の際放出することが難しいとされている(特許文献1の段落0002)。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、4.5V以上の高電位使用において初期および充放電を繰り返した後の充放電特性を向上することができる。
上記還元剤は、LiMnOと反応してリチウムイオン伝導性化合物となると考えられる。
LiMnOの分解はリチウムイオンと酸素イオンの脱離によって起きるため、LiMnOにおけるリチウムイオンと酸素イオンの吸蔵・放出を可逆的に起こす必要がある。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物は、リチウムイオンと酸素イオンを吸蔵・放出するLiMnOと、上記還元剤がLiMnOと反応して生成され、リチウムイオンを伝導し、酸素イオンを伝導しないリチウム含有化合物とを含むと考えられる。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物では、上記還元剤がLiMnOと反応して生成されるリチウムイオン伝導性化合物の存在によって、リチウムイオンの伝導が効果的に起こり、リチウムイオンの吸蔵・放出が効果的に起こると考えられる。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物では、酸素イオンの授受がLiMnO内のみで行われ、外部に伝導しないため、酸素イオン脱離に伴うLiMnOの劣化が抑制されると考えられる。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物では、リチウムイオンの吸蔵・放出が効果的に起こり、LiMnOからの酸素イオン脱離が抑制されるので、4.5V以上の高電位使用において初期および充放電を繰り返した後の充放電特性が向上されると考えられる。
還元剤としては、一般式MO(式中、Mはリチウム元素を除く少なくとも1種の金属元素、zは1または2)で表されるものが挙げられる。この還元剤は、LiMnOと反応して一般式LiMOz+2(式中、Mおよびzは前記と同様)で表されるリチウム含有化合物となると考えられる。このリチウム含有化合物は、リチウムイオン伝導性を有し、酸素イオン伝導性を有しないと考えられる。
還元剤としては、MoO、WO、およびSnOからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
還元剤としてMoOを用いる場合、LiMnOと反応により、LiMoOが生成されると考えられる。
還元剤としてWOを用いる場合、LiMnOと反応により、LiWOが生成されると考えられる。
還元剤としてSnOを用いる場合、LiMnOと反応により、LiSnOが生成されると考えられる。
LiMnOと上記還元剤との反応において、LiMnOからリチウム元素と酸素元素が還元剤に供給されると考えられる。この反応により、LiMnOの一部はリチウム元素抜けおよび酸素元素抜けが生じて、一般式Li2−xMnO3−y(0<x<2、0<y<3)で表される組成になると考えられる。
一般式MO(式中、Mは前記と同様)で表される還元剤を用いる場合、上記製造方法により得られるリチウムマンガン含有酸化物は、LiMnO結晶相と、一般式Li2−xMnO3−y(0<x<2、0<y<3)で表される結晶相と、一般式LiMOz+2(式中、Mおよびzは前記と同様)で表される結晶相を含むものとなると考えられる。
本発明によれば、LiMnOと、LiMoO、LiWO、およびLiSnOからなる群より選ばれた少なくとも1種のリチウムイオン伝導性化合物とが複合されたリチウムマンガン含有酸化物を提供することができる。なお、上記したように、このリチウムマンガン含有酸化物は、一般式Li2−xMnO3−y(0<x<2、0<y<3)で表される結晶相を含むと考えられる。
本発明によれば、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=18.7°付近のピークの積分強度をI1とし、2θ=44.7°付近のピークの積分強度をI2としたとき、0.9≦I1/I2≦1.1を充足するリチウムマンガン含有酸化物を提供することができる。
XRDパターンにおいて、2θ=18.7°付近および2θ=44.7°付近に、LiMnO結晶相に由来するピークが現れる。
XRDパターンにおいて、2θ=18.7°付近には、LiMnO結晶相に由来するピークと、一般式Li2−xMnO3−y(0<x<2、0<y<3)で表される結晶相に由来するピークとが重なって現れ、2θ=44.7°付近にはLiMnO結晶相に由来するピークのみが現れると考えられる。
2θ=44.7°付近のピークの積分強度I2を基準として、2θ=18.7°付近のピークの積分強度I1を規格化することで、一般式Li2−xMnO3−y(0<x<2、0<y<3)で表される結晶相の存在および量を数値化できると考えられる。
後記実施例1〜3のリチウムマンガン含有酸化物は、0.9≦I1/I2≦1.1を充足する。後記実施例1〜3のリチウムマンガン含有酸化物は、1.0≦I1/I2≦1.1を充足する。
本発明におけるXRDパターン、およびXRDパターンのピーク強度の具体的な測定方法については、[実施例]の項を参照されたい。
本発明のリチウムマンガン含有酸化物は、4.5V以上の高電位使用のリチウムイオン二次電池の正極活物質用として特に好適である。
以上説明したように、本発明によれば、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、4.5V以上の高電位使用において初期および充放電を繰り返した後の充放電特性を向上することが可能なリチウムマンガン含有酸化物及びその製造方法を提供することができる。
[リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記の本発明のリチウムマンガン含有酸化物を正極活物質として用いたものである。
正極と負極とセパレータと非水電解質と電池容器を用い、公知方法により、リチウムイオン二次電池を製造することができる。
<正極>
正極は、公知の方法により、アルミニウム箔などの正極集電体に正極活物質を塗布して、製造することができる。
本発明では、上記の本発明のリチウムマンガン含有酸化物を正極活物質として用いる。
正極活物質として、上記の本発明のリチウムマンガン含有酸化物以外の公知の正極活物質を併用しても構わない。ただし、本発明のリチウムマンガン含有酸化物の使用量が多い程、より高い効果が得られる。
例えば、N−メチル−2−ピロリドン等の分散剤を用い、正極活物質と、炭素粉末等の導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤とを混合して、スラリーを得、このスラリーをアルミニウム箔等の集電体上に塗布し、乾燥し、プレス加工して、正極を得ることができる。
本発明によれば、
下記条件でサイクリックボルタメトリー(CV)試験を行い、電圧に対する電流変化をグラフにしたとき、
充電側のデータにおいて、4.1〜4.3Vの範囲内にピークトップを有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。
(条件)
上限電圧:4.8V、
下限電圧:2.0V、
挿引速度:0.2mV/s、
温度:25℃。
CV試験における充電側のデータの4.1〜4.3Vの範囲内のピークトップは、一般式Li2−xMnO3−y(0<x<2、0<y<3)で表される結晶相に由来すると考えられる。
<負極>
負極活物質としては特に制限なく、Li/Li+基準で2.0V以下にリチウム吸蔵能力を持つものが好ましく用いられる。負極活物質としては、黒鉛等の炭素、金属リチウム、リチウム合金、リチウムイオンのド−プ・脱ド−プが可能な遷移金属酸化物/遷移金属窒化物/遷移金属硫化物、及び、これらの組合わせ等が挙げられる。
負極は例えば、公知の方法により、銅箔などの負極集電体に負極活物質を塗布して、製造することができる。
例えば、水等の分散剤を用い、負極活物質と、変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス等の結着剤と、必要に応じてカルボキシメチルセルロースNa塩(CMC)等の増粘剤とを混合して、スラリーを得、このスラリーを銅箔等の集電体上に塗布し、乾燥し、プレス加工して、負極を得ることができる。
負極活物質として金属リチウムおよび/またはリチウム合金を用いる場合、集電体を用いずに、負極活物質をそのまま負極として用いることができる。
<非水電解質>
非水電解質としては公知のものが使用でき、液状、ゲル状もしくは固体状の非水電解質が使用できる。
例えば、プロピレンカーボネ−トあるいはエチレンカーボネ−ト等の高誘電率カーボネート溶媒と、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の低粘度カーボネート溶媒との混合溶媒に、リチウム含有電解質を溶解した非水電界液が好ましく用いられる。
混合溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/エチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒が好ましく用いられる。
リチウム含有電解質としては例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF{C(2k+1)(6−n)(n=1〜5の整数、k=1〜8の整数)等のリチウム塩、及びこれらの組合わせが挙げられる。
<セパレータ>
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し、かつリチウムイオンが透過可能な膜であればよく、多孔質高分子フィルムが好ましく使用される。
セパレータとしては例えば、PP(ポリプロピレン)製多孔質フィルム、PE(ポリエチレン)製多孔質フィルム、あるいは、PP(ポリプロピレン)−PE(ポリエチレン)の積層型多孔質フィルム等のポリオレフィン製多孔質フィルムが好ましく用いられる。
<電池容器>
電池容器としては公知のものが使用できる。
二次電池の型としては、円筒型、コイン型、角型、あるいはフィルム型等があり、所望の型に合わせて電池容器を選定することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極活物質として上記の本発明のリチウムマンガン含有酸化物を用いたものである。
本発明によれば、4.5V以上の高電位使用において初期および充放電を繰り返した後の充放電特性を向上することが可能なリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
<正極活物質の製造>
特許文献1の段落0048に記載の方法に準拠し、以下の方法にてLiMnOを合成した。
水酸化リチウム(LiOH・HO)と、炭酸マンガン(MnCO・nHO、n=約0.5)とを、Li/Mnモル比=2となるように混合した。ボールミルを用い、得られた混合物をアセトン中で1時間粉砕した。この際、アセトン量は、水酸化リチウムと炭酸マンガンの合計と同量とした。得られた粉砕物を60℃で乾燥させ、大気中450℃で10時間焼成した。乳鉢を用いて得られた焼成物を粉砕し、再度大気中450℃で24時間焼成した。
得られたLiMnO100質量%に対して、還元剤として5質量%のMoOを添加し、混合した。得られた混合物をアルゴン気流中600℃で20時間焼成した。その後、乳鉢を用いて得られた焼成物を粉砕し、粉砕物を100メッシュで篩通しした。
正極活物質の主な合成条件を表1に示す。
<正極の製造>
分散剤としてN−メチル−2−ピロリドン((株)和光純薬工業社製)を用い、上記のリチウムマンガン含有酸化物からなる正極活物質と、導電剤であるアセチレンブラック(電気化学工業(株)社製HS−100)と、結着剤であるPVDF((株)クレハ社製KFポリマー♯1120)とを、85/10/5(質量比)で混合して、スラリーを得た。
上記スラリーを集電体であるアルミニウム箔上にドクターブレード法で塗布し、80℃で30分間乾燥し、プレス機械を用いて圧延して、正極を得た。正極活物質層は、目付3.2mg/cm、厚み16μmとした。
<負極>
負極活物質として、金属リチウムを用いた。これをそのまま負極として用いた。
<セパレータ>
PP(ポリプロピレン)製多孔質フィルムからなる市販のセパレータを用意した。
<非水電解質>
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/3/4(体積比)の混合溶液を溶媒とし、電解質としてリチウム塩であるLiPFを1mol/Lの濃度で溶解して、非水電界液を調製した。
<電池容器>
電池容器として、SUS製CR2032型コインセルを用意した。
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記の正極と負極とセパレータと非水電解液と電池容器を用い、公知方法により、リチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例2)
正極活物質の製造条件を下記に変更した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1と同様にして得られたLiMnO100質量%に対して、還元剤として5質量%のWOを添加し、混合した。得られた混合物をアルゴン気流中600℃で20時間焼成した。その後、乳鉢を用いて得られた焼成物を粉砕し、粉砕物を100メッシュで篩通しした。
(実施例3)
正極活物質の製造条件を下記に変更した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1と同様にして得られたLiMnO100質量%に対して、還元剤として5質量%のSnOを添加し、混合した。得られた混合物をアルゴン気流中600℃で20時間焼成した。その後、乳鉢を用いて得られた焼成物を粉砕し、粉砕物を100メッシュで篩通しした。
(比較例1)
正極活物質の製造条件を下記に変更した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1と同様にして得られたLiMnOに対して、還元剤を添加せずに、アルゴン気流中600℃で20時間焼成した。その後、乳鉢を用いて得られた焼成物を粉砕し、粉砕物を100メッシュで篩通しした。
(比較例2)
実施例1と同様にして得られたLiMnOをそのまま正極活物質として用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
(正極活物質の評価)
各例において得られた正極活物質について、以下の評価を実施した。
<XRD分析>
各例において得られた正極活物質について、粉末XRD分析を実施して、結晶相の同定を行った。
測定装置としてリガク社製UltimaIVを用いた。X線源としてCu管球を用い、検出器として一次元半導体検出器(D/teX)を用いて、測定を行った。測定条件は、2θ=10〜80°、スキャンスピード10°/minとした。
各例で得られた正極活物質のXRDパターンを図1に示す。
各例において、2θ=18.7°付近のピークの積分強度I1と、2θ=44.7°付近のピークの積分強度I2とを測定し、I1/I2を求めた。
ピークの積分強度は、リガク社製統合粉末X線解析ソフトPDXLを用い、自動プロファイル処理にて求めた。
ピーク強度比I1/I2の測定結果を表1に示す。
(リチウムイオン二次電池の評価)
各例において得られたリチウムイオン二次電池について、以下の評価を実施した。
<サイクリックボルタメトリー(CV)試験>
各例において得られたリチウムイオン二次電池について、以下の条件で3サイクルのCV試験を行った。
上限電圧:4.8V(Li金属基準)、
下限電圧:2.0V(Li金属基準)、
挿引速度:0.2mV/s、
温度:25℃。
各例において得られたCV試験データの充電側データにおいて、4.1〜4.3Vの範囲内のピークトップの有無を評価した。
実施例1〜3、比較例1におけるCV試験結果を図2A〜図2Dに示す。
なお、比較例2のCV試験結果は、比較例1と同様であったので、図示を省略してある。
実施例1〜3で得られたリチウムイオン二次電池では、CV試験の1〜3サイクルの充電側データにおいて、4.1〜4.3Vの範囲内にピークトップが見られた。比較例1、2で得られたリチウムイオン二次電池では、CV試験の1〜3サイクルの充電側データにおいて、4.1〜4.3Vの範囲内にピークトップが見られなかった。
評価結果を表2に示す。
<充放電試験>
〔初期特性の評価〕
各例において得られたリチウムイオン二次電池について、25℃の恒温槽内で、電流密度7.5mA/gの定電流条件で、充電電圧を4.8V(リチウム金属基準)とし、放電電圧を2.0V(リチウム金属基準)として、3サイクルの充放電試験を行った。
各例において得られたリチウムイオン二次電池について、1サイクルの充放電試験の結果を図3A〜図3Eに示す。
各例において、1サイクル目の放電容量と充電容量とを求め、下記式に基づいて充放電効率を求めた。1サイクル目の放電容量および充放電効率の評価結果を表2に示す。
充放電効率(%)=(1サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の充電容量)×100
〔サイクル特性の評価〕
上記3サイクルの充放電後、さらに、以下の20サイクルの充放電試験を実施した。
25℃の恒温槽内で、電流密度50mA/gの定電流条件で4.6V(リチウム金属基準)に充電した後、電流密度が7.5mA/gになるまで、4.6Vの電圧を保持した。その後、電流密度50mA/gの定電流条件で2.0V(リチウム金属基準)まで放電した。これら充放電を20サイクル実施した。
各サイクルについて放電容量を測定した。サイクル充放電試験の結果を図4に示す。図中、縦軸は放電容量である。
各例において、1サイクル目と20サイクル目の放電容量の測定結果を表2に示す。
(結果)
表1および表2に示すように、LiMnOと、MoO、WO、およびSnOからなる群より選ばれた還元剤とを、不活性雰囲気下、400〜600℃で熱処理することにより複合してリチウムマンガン含有酸化物を得、得られたリチウムマンガン含有酸化物を正極活物質として用いた実施例1〜3では、LiMnOを正極活物質として用いた比較例1、2よりも、初期特性およびサイクル特性が優れたリチウムイオン二次電池が得られた。
Figure 0005949199
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本発明のリチウムマンガン含有酸化物とその製造方法は、プラグインハイブリッド車(PHV)あるいは電気自動車(EV)等に搭載されるリチウムイオン二次電池の正極活物質に好ましく適用できる。

Claims (4)

  1. LiMnOと、
    一般式MO (式中、Mはリチウム元素を除く少なくとも1種の金属元素、zは1または2)で表され、Li MnO と反応してLi MO z+2 (式中、Mおよびzは前記と同様)となるリチウム非含有酸化物である少なくとも1種の還元剤とを、
    不活性雰囲気下、400〜600℃で熱処理することにより複合するリチウムイオン二次電池正極活物質用のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法。
  2. 前記還元剤は、MoO、WO、およびSnOからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池正極活物質用のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法。
  3. LiMnOと、LiMoO、LiWO、およびLiSnOからなる群より選ばれた少なくとも1種のリチウムイオン伝導性化合物とが複合されたリチウムマンガン含有酸化物を製造する請求項2に記載のリチウムイオン二次電池正極活物質用のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法
  4. LiMnO結晶相と、一般式Li2−xMnO3−y(0<x<2、0<y<3)で表される結晶相と、一般式LiMOz+2(式中、Mおよびzは前記と同様)で表される結晶相とを含むリチウムマンガン含有酸化物を製造する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池正極活物質用のリチウムマンガン含有酸化物の製造方法。

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