インク
本発明のインクは、改変されたインクバインダー(binder)系を含む。インクにおける放射線硬化性材料および光開始剤の存在は、乾燥させたインクフィルム内に架橋ポリマーが形成され、したがって、様々な基材への接着性が改善され、溶剤への耐性が改善され得ることを意味する。一方、少なくとも30重量%の有機溶剤の存在は、溶剤系インクジェット用インクの有利な特性が維持されると期待されることを意味する。
「放射線硬化性材料」とは、光開始剤の存在下で、放射線に、一般に紫外光に曝露されると重合または架橋する材料を意味する。
放射線硬化性材料は、450以下の分子量を有するモノマー、オリゴマーまたはその混合物を含むことができる。モノマーおよび/またはオリゴマーは、異なる官能度を有することができ、単官能性、二官能性、三官能性またはそれ以上の官能性のモノマーおよび/またはオリゴマーの組合せを含む混合物を使用することができる。
好ましくは、放射線硬化性材料は、放射線硬化性オリゴマーを含む。
本発明における使用に適した放射線硬化性オリゴマーは、主鎖、例えばポリエステル、ウレタン、エポキシまたはポリエーテル主鎖、および1つまたは複数の放射線重合可能な基を含む。重合可能な基は、放射線への曝露時に重合することができる任意の基であってよい。
好ましいオリゴマーは、500〜4000、より好ましくは600〜4000の分子量を有する。分子量(数平均)は、オリゴマーの構造が公知であり、または分子量がポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定できる場合に、算出され得る。
一実施形態では、放射線硬化性材料は、フリーラジカル重合によって重合する。
適切なフリーラジカル重合可能なモノマーは、当技術分野で周知であり、これには(メタ)アクリレート、α,β−不飽和エーテル、ビニルアミドおよびその混合物が含まれる。
単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、当技術分野で周知であり、好ましくはアクリル酸のエステルである。好ましい例には、フェノキシエチルアクリレート(PEA)、環式TMPホルマールアクリレート(CTFA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、オクタデシルアクリレート(ODA)、トリデシルアクリレート(TDA)、イソデシルアクリレート(IDA)およびラウリルアクリレートが含まれる。PEAが特に好ましい。
適切な多官能性(メタ)アクリレートモノマーには、二官能性、三官能性および四官能性モノマーが含まれる。インクジェット用インクに含まれ得る多官能性アクリレートモノマーの例には、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、ならびにエトキシ化またはプロポキシル化グリコールおよびポリオールのアクリレートエステル、例えばプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ならびにその混合物が含まれる。
また、適切な多官能性(メタ)アクリレートモノマーには、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレートなどのメタクリル酸のエステル(すなわちメタクリレート)が含まれる。(メタ)アクリレートの混合物を使用することもできる。
(メタ)アクリレートは、本明細書ではその標準の意味を有するものとし、すなわちアクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。単官能性および多官能性も、それらの標準の意味を有するものとし、すなわち硬化時に重合反応に参加する、それぞれ1つおよび2つ以上の基を意味する。
α,β−不飽和エーテルモノマーは、フリーラジカル重合によって重合することができ、1つまたは複数の(メタ)アクリレートモノマーと併用される場合、インクの粘度を低減するのに有用となり得る。その例は当技術分野で周知であり、これには、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルおよびエチレングリコールモノビニルエーテルなどのビニルエーテルが含まれる。α,β−不飽和エーテルモノマーの混合物を使用することができる。
N−ビニルアミドおよびN−(メタ)アクリロイルアミンも、本発明のインクにおいて使用することができる。N−ビニルアミドは、当技術分野で周知のモノマーであり、したがって詳細な説明は必要ない。N−ビニルアミドは、アミドの窒素原子に結合しているビニル基を有し、(メタ)アクリレートモノマーと同様にさらに置換されていてもよい。好ましい例は、N−ビニルカプロラクタム(NVC)およびN−ビニルピロリドン(NVP)である。同様に、N−アクリロイルアミンも当技術分野で周知である。N−アクリロイルアミンも、アミドに結合しているビニル基を有するが、カルボニル炭素原子を介して結合しており、やはり(メタ)アクリレートモノマーと同様にさらに置換されていてもよい。好ましい一例は、N−アクリロイルモルホリン(ACMO)である。
特に好ましい放射線硬化性材料は、フリーラジカル重合可能な基、好ましくは(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーである。アクリレート官能性オリゴマーが最も好ましい。
一実施形態では、オリゴマーは、2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上のラジカル重合可能な基を含む。6つの重合可能な基を含むオリゴマーが、特に好ましい。
オリゴマーは、好ましくはウレタン主鎖を含む。
特に好ましい放射線硬化性材料は、優れた接着特性および伸長特性を有することから、ウレタンアクリレートオリゴマーである。最も好ましいのは、良好な耐溶剤性を有するフィルムをもたらすことから、三官能性、四官能性、五官能性、六官能性またはそれ以上の官能性のウレタンアクリレート、特に六官能性ウレタンアクリレートである。
放射線硬化性オリゴマーの他の適切な例には、急速な硬化速度を有し、良好な耐溶剤性を有する硬化フィルムをもたらす、ビスフェノールAエポキシアクリレートおよびエポキシノボラックアクリレートなどのエポキシ系材料が含まれる。
本発明の好ましいインクにおいて使用される放射線硬化性オリゴマーは、光開始剤の存在下で放射線に曝露されると硬化して、架橋された固体フィルムを形成する。得られたフィルムは、基材に対する良好な接着性および良好な耐溶剤性を有する。インクの残りの構成要素と適合性があり、硬化して架橋された固体フィルムを形成することができる任意の放射線硬化性オリゴマーが、本発明のインクにおける使用に適している。したがって、インク配合者は、広範な適切なオリゴマーから選択することができる。特にオリゴマーは、25℃で液体形態の低分子量材料であり得る。このことは、低粘度のインクを生成することが目的の場合に有益である。さらに、低分子量の液体オリゴマーを使用することは、低分子量の液体オリゴマーが広範な溶剤に混和する可能性が高いため、インクを配合するときに有利である。
本発明における使用に好ましいオリゴマーは、60℃で0.5〜20Pa.s、より好ましくは60℃で5〜15Pa.s、最も好ましくは60℃で5〜10Pa.sの粘度を有する。オリゴマーの粘度は、40mmの傾斜/2°の鋼製錐体を、60℃においてせん断速度25秒−1で使用する、T.A.Instruments製のARG2レオメータを使用して測定することができる。
一実施形態では、放射線硬化性材料は、インク中に存在する放射線硬化性材料の総重量に対して、50〜100重量%または75〜100重量%のフリーラジカル硬化性オリゴマー、および0〜50重量%または0〜25重量%のフリーラジカル硬化性モノマーを含む。
好ましくは、インクは、インクの総重量に対して20重量%未満、または好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の、450未満の分子量を有する放射線硬化性材料(例えば、(メタ)アクリレート)を含む。特に好ましい一実施形態では、本発明のインクは、450未満の分子量を有する放射線硬化性材料を実質的に含まない。
一実施形態では、インクは、インクの総重量に対して20重量%未満、または好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の、600未満の分子量を有する(メタ)アクリレートを含む。特に好ましい実施形態では、本発明のインクは、600未満の分子量を有する(メタ)アクリレートを実質的に含まない。
「実質的に含まない」とは、それぞれ450未満または600未満の分子量を有する放射線硬化性材料が、意図的にはインクに添加されないことを意味する。しかし、例えば市販の放射線硬化性オリゴマー内、または顔料分散液に不純物として存在し得る、微量の放射線硬化性材料は許容される。
本発明の代替の一実施形態では、放射線硬化性材料は、カチオン重合によって重合することができる。適切な材料には、オキセタン、脂環式エポキシド、ビスフェノールAエポキシド、エポキシノボラック等が含まれる。この実施形態の放射線硬化性材料は、カチオン硬化性モノマーおよびオリゴマーの混合物を含むことができる。例えば、放射線硬化性材料は、エポキシドオリゴマーおよびオキセタンモノマーの混合物を含むことができる。
一実施形態では、放射線硬化性材料は、インク中に存在する放射線硬化性材料の総重量に対して、0〜40重量%のカチオン硬化性オリゴマーおよび60〜100重量%のカチオン硬化性モノマーを含む。
放射線硬化性材料は、フリーラジカル重合可能な材料およびカチオン重合可能な材料の組合せを含むこともできる。
放射線硬化性材料は、インクの総重量に対して、好ましくは2重量%〜65重量%、より好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜35重量%、より好ましくは8〜25重量%、最も好ましくは10重量%〜25重量%の量で、組成物中に存在する。
本発明のインクは、1つまたは複数の光開始剤を含む。本発明のインクがフリーラジカル重合可能な材料を含む場合、光開始剤系はフリーラジカル光開始剤を含み、インクがカチオン重合可能な材料を含む場合、光開始剤系はカチオン光開始剤を含む。インクがフリーラジカル重合可能な材料およびカチオン重合可能な材料の組合せを含む場合、フリーラジカル開始剤およびカチオン開始剤の両方が必要とされる。
フリーラジカル光開始剤は、当技術分野で公知のもののいずれかから選択することができる。例えば、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、イソプロピルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、またはその混合物である。かかる光開始剤は公知であり、例えば、商標IrgacureおよびDarocur(Cibaから)ならびにLucerin(BASFから)などで市販されている。
カチオン硬化系の場合、任意の適切なカチオン開始剤、例えばスルホニウムまたはヨードニウムをベースとする系を使用することができる。非限定的な例には、RhodiaのRhodorsil PI 2074;Siber HegnerのMC AA、MC BB、MC CC、MC CC PF、MC SD;Alfa ChemicalsのUV9380c;UCB ChemicalsのUvacure 1590;およびLamberti spaのEsacure 1064が含まれる。
好ましくは、光開始剤は、インクの総重量に対して1〜20重量%、好ましくは4〜10重量%の量で存在する。
本発明のインクは、有機溶剤を含有する。有機溶剤は、周囲温度で液体の形態であり、インクの残りの構成要素のための担体として作用することができる。本発明のインクの有機溶剤構成要素は、単一の溶剤または2つ以上の溶剤の混合物であってよい。公知の溶剤系インクジェット用インクと同様、本発明のインクにおいて使用される有機溶剤は、インクを乾燥させるために、印刷されたインクから一般には加熱時に蒸発する必要がある。溶剤は、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、アルコール、ケトン、エステルおよびピロリドンなどの、印刷産業において一般に使用されている任意の溶剤から選択することができる。
有機溶剤は、インクの総重量に対して、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%の量で存在する。上限は、インクの総重量に対して、一般に85重量%または75重量%である。
公知の溶剤系インクジェット用インクは、架橋または重合を生じることなく、溶剤を蒸発させることによってのみ乾燥される。したがって、生成されたフィルムは、化学的耐性の特性に限界を有する。アルコールおよびガソリンなどの一般的な溶剤に対するプリントの耐性を改善するために、これらの溶剤への可溶性が制限されたバインダー材料が、インクに添加される。バインダーは、一般に25℃で固体形態であり、したがって、溶剤がインクから蒸発すると、印刷された固体フィルムが生成される。塩化ビニルコポリマー樹脂などの適切なバインダーは、一般に、すべてにおいて可溶性が低いが、共に「有害」と分類され、強烈な匂いを有するグリコールエーテル酢酸エステルおよびシクロヘキサノンなどの溶剤への可溶性が最も強力である。これらの溶剤は、一般にバインダーを可溶化するためにインクに添加される。
本発明のインクは、インクが乾燥するときに硬化する放射線硬化性材料を含み、したがって、改善された耐溶剤性を有する印刷されたフィルムを提供するために、必ずしもインクにバインダーを含む必要はない。したがって、本発明の一実施形態では、塩化ビニルコポリマー樹脂などのバインダーを可溶化するための有機溶剤は必要とされず、このことは、インク配合者が、適切な溶剤または溶剤混合物を選択するときにより自由に選択できることを意味する。
好ましい一実施形態では、有機溶剤は、低毒性であり、かつ/または匂いの少ない溶剤である。米国環境保護庁または欧州理事会によってVOC規制免除対象になっている溶剤も好ましい。
最も好ましい溶剤は、グリコールエーテルおよび有機カーボネートならびにその混合物から選択される。プロピレンカーボネートなどの環式カーボネート、ならびにプロピレンカーボネートおよび1つまたは複数のグリコールエーテルの混合物が、特に好ましい。
代替の好ましい溶剤には、PVC基材へのインクの接着性を改善することが見出されているラクトンが含まれる。ラクトンおよび1つまたは複数のグリコールエーテルの混合物、ならびにラクトン、1つまたは複数のグリコールエーテルおよび1つまたは複数の有機カーボネートの混合物が、特に好ましい。γ−ブチロラクトンおよび1つまたは複数のグリコールエーテルの混合物、ならびにγ−ブチロラクトン、1つまたは複数のグリコールエーテルおよびプロピレンカーボネートの混合物が、特に好ましい。
本発明の別の実施形態では、二塩基性エステルおよび/またはバイオソルベント(bio-solvent)を使用することができる。
二塩基性エステルは、当技術分野で公知の溶剤である。これらは、以下の一般式を有する3〜8個の炭素原子を有する飽和脂肪族ジカルボン酸のジ(C1〜C4アルキル)エステルと説明することができる。
式中、Aは(CH2)1〜6を表し、R1およびR2は、同じでも異なっていてもよく、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であってよいC1〜C4アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはメチルを表す。二塩基性エステルの混合物を使用することができる。
バイオソルベントまたは生物学的な供給源由来の溶剤代替物は、大気に放出される環境汚染性のVOCの量を劇的に低減する潜在可能性を有し、環境維持性であるというさらなる利点を有する。さらに、より低いコストおよびより高い純度でバイオソルベントを生成することができる、生物学的原料由来のバイオソルベントの新しい生成方法が発見されつつある。
バイオソルベントの例には、大豆メチルエステル、乳酸エステル、ポリヒドロキシアルカノエート、テルペンおよび非鎖状(non-linear)アルコールおよびD−リモネンが含まれる。大豆メチルエステルは、大豆から調製される。脂肪酸エステルは、大豆油をメタノールでエステル化することによって生成される。乳酸エステルは、好ましくは、メタノールおよび/またはエタノールと反応してエステルを生成する発酵由来の乳酸を使用する。一例は、トウモロコシ(再生可能な供給源)から得られ、FDAによって食品添加物としての使用に承認されている乳酸エチルである。ポリヒドロキシアルカノエートは、糖類または脂質の発酵から得られる線状ポリエステルである。テルペンおよび非鎖状アルコールは、トウモロコシ穂軸/もみ殻から得ることができる。一例は、柑橘類の皮から抽出することができるD−リモネンである。
他の溶剤は、有機溶剤構成要素に含まれ得る。他の溶剤の特に一般的な供給源は、インクジェット用インク配合物に着色剤を導入する方式に由来する。着色剤は通常、溶剤、例えば酢酸2−エチルヘキシル中の顔料分散液の形態で調製される。溶剤は、顔料分散液の総重量に対して顔料分散液の約40〜50重量%になる傾向があり、顔料分散液は、一般に、インクの約5〜15重量%を構成し、それを超えることもある。
インクは、好ましくは実質的に水を含まないが、いくらかの水は、一般にインクによって空気から吸収され、またはインクの構成要素内の不純物として存在し、およびかかるレベルは許容される。例えばインクは、インクの総重量に対して5重量%未満の水、より好ましくは2重量%未満の水、最も好ましくは1重量%未満の水を含むことができる。
本発明のインクは、有色インクまたは無色インクであってよい。
「無色」とは、インクが実質的に着色剤を含まず、したがって肉眼では色を検出できないことを意味する。しかし、目で検出できる色を生成しない微量の着色剤は許容され得る。一般に、存在するこの着色剤の量は、インクの総重量に対して0.3重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.03重量%未満になる。無色インクは、「透明」または「無色透明」と説明することもできる。
本発明の有色インクは、少なくとも1つの着色剤を含む。着色剤は、インクの液体媒体に溶解または分散することができる。好ましくは、着色剤は当技術分野で公知であり、商標Paliotol(BASF plcから利用可能)、Cinquasia、Irgalite(共にCiba Speciality Chemicalsから利用可能)およびHostaperm(Clariant UKから利用可能)などで市販されている種類の分散性顔料である。顔料は、例えばピグメントイエロー13、ピグメントイエロー83、ピグメントレッド9、ピグメントレッド184、ピグメントブルー15:3、ピグメントグリーン7、ピグメントバイオレット19、ピグメントブラック7などの任意の所望の色であってよい。特に有用なのは、ブラックおよび三色法印刷に必要な色である。顔料の混合物を使用することができる。
本発明の一態様では、以下の顔料が好ましい。シアン:フタロシアニンブルー15.4などのフタロシアニン顔料。イエロー:ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー151およびピグメントイエロー155などのアゾ顔料。マゼンタ:ピグメントバイオレット19またはCromophtal Jet magenta 2BCおよびCinquasia RT−355Dなどの混合結晶キナクリドンなどのキナクリドン顔料。ブラック:ピグメントブラック7などのカーボンブラック顔料。
インクに分散した顔料粒子は、インクがインクジェットノズルを通過できるように十分小さくすべきであり、一般に8μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは1μm未満、特に好ましくは0.5μm未満の粒径を有する。
着色剤は、インクの総重量に対して、好ましくは20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、最も好ましくは2〜5重量%の量で存在する。しかし、より高い濃度の顔料は、例えばインクの総重量に対して30重量%または25重量%以下のホワイトインクを必要とし得る。
インクは、任意選択により熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂は、放射線への曝露時に架橋することができる反応基を含まない。換言すれば、熱可塑性樹脂は、放射線硬化性材料ではない。適切な材料は、ポリスチレン標準を用いてGPCによって決定して、10,000〜100,000の範囲の分子量を有する。熱可塑性樹脂は、例えばエポキシ、ポリエステル、ビニルまたは(メタ)アクリレート樹脂から選択することができる。メタクリレートコポリマーが好ましい。存在する場合、インクは、インクの総重量に対して1〜5重量%の熱可塑性樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂は、硬化前にインクフィルムの粘度を増大して、改善されたプリント解像度をもたらす。熱可塑性樹脂はまた、硬化したインクのガラス転移温度を低下して、車両側面適用などの適用のためのフィルムの可撓性を高める。
一実施形態では、本発明のインクは、インクの総重量に対してなくとも50重量%の有機溶剤;放射線硬化性材料(該放射線硬化性材料は、インク中に存在する放射線硬化性材料の総重量に対して50〜100重量%の、600〜4000の分子量を有するフリーラジカル硬化性オリゴマー、および0〜50重量%の、450以下の分子量を有するフリーラジカル硬化性モノマーを含む);フリーラジカル光開始剤;および任意選択により着色剤を含む。
インクジェット用インクは、望ましい低粘度を示す(25℃で200mPa.s以下、好ましくは100mPa.s以下、より好ましくは25mPa.s以下、より好ましくは10mPa.s以下、最も好ましくは7mPa.s以下)。
高品質のプリント画像を生成するために、小さい噴射液滴サイズが望ましい。さらに、小さい液滴は、大きい液滴サイズと比較して体積に対する表面積の比が大きく、それにより噴射されたインクからの溶剤の蒸発が容易になる。したがって、小さい液滴サイズは、乾燥速度において利点をもたらす。好ましくは、本発明のインクジェット用インクは、50ピコリットル未満、好ましくは30ピコリットル未満、最も好ましくは10ピコリットル未満の液滴サイズで噴射される。
50ピコリットル以下の液滴サイズを噴射することができるプリントヘッドとの適合性を達成するために、低粘度のインクが必要である。25℃で10mPa.sの粘度が好ましく、例えば2〜10mPas、4〜8mPa.s、または5〜7mPa.sが好ましい。組成物において使用されるアクリレートモノマーおよびオリゴマーの相対的に高い粘度に起因して、従来の放射線硬化性インクを用いてこれらの低粘度を達成するには問題があるが、本発明のインクにおける著しい量の有機溶剤の存在によって、これらの低粘度を達成することができる。
インク粘度は、スピンドル00を用いて25℃において20rpmで運転されるDV1低粘度用の粘度計などの、サーモスタット制御のカップおよびスピンドル配置を備えたブルックフィールド粘度計を使用して測定することができる。
インクの特性または性能を改善するために、当技術分野で公知の種類の他の構成要素がインク内に存在することができる。これらの構成要素は、例えば界面活性剤、消泡剤、分散剤、光開始剤の共力剤、熱または光による悪化に対する安定剤、防臭剤(reodorant)、流動またはスリップ助剤、殺生物剤、および識別用トレーサーであってよい。
本発明の一態様では、インクの表面張力は、市販の界面活性剤などの1つまたは複数の表面活性材料を添加することによって制御される。インクの表面張力の調節によって、様々な基材、例えばプラスチック基材上のインク表面の湿潤を制御することができる。表面張力が大きすぎるとインクがたまり、かつ/またはプリントの被覆度が高い領域に色むらの外観をもたらすことがある。表面張力が小さすぎると、異なる有色インクの間に過度のインクのにじみが生じることがある。表面張力は、好ましくは20〜32mNm−1、より好ましくは21〜27mNm−1の範囲である。
本発明はまた、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクを含むインクセット(いわゆる三色セット)を提供し、これらのインクの少なくとも1つは、本発明のインクである。好ましくは、インクセットにおけるインクのすべてが、本発明のインクである。三色セットのインクを使用して、白色基材上に印刷された点をオーバーレイすることによって、広範な第2の色および色調を生成することができる。
本発明のインクセットは、任意選択により、1つまたは複数の明色インクを含むことができる。任意の色のインクの明色バージョンを使用することができるが、好ましい色は、ライトシアン、ライトマゼンタおよびライトブラックである。特に好ましいのは、ライトシアンインクおよびライトマゼンタインクである。明色インクは、印刷された画像の色域を拡大し、ハイライトから暗部領域までのグラデーションを平滑にするように働く。
本発明のインクセットは、任意選択により、グリーンインク、オレンジインクおよびバイオレットインクの1つまたは複数を含むことができる。これらの色はさらに、生成され得る色域を拡大する。バイオレットおよびオレンジインクが好ましく、最も好ましいのはオレンジインクである。
本発明のインクセットは、任意選択によりホワイトインクを含むことができる。ホワイトインクは、2つの方式で使用することができる。透明基材上に印刷する場合、ホワイトインクは、画像を裏側から見ることができるように画像上に印刷され得る。あるいは、ホワイトインクは、画像が印刷される前に、有色基材上にベースコートを印刷するために使用することができる。
先に詳説したインクの範囲を用いても、いくつかの色は、特に生成困難なことがある。印刷される色がコーポレートカラーなどの標準と正確に一致することが必須である場合、本発明のインクセットは、任意選択により、オーバーレイなしに純粋形態で印刷されるように設計される、一致したスポットカラーを有する1つまたは複数のインクを含有することができる。
本発明のインクは、高度な光沢仕上げを有する画像を生成することができる。このことは、インクが光沢の少ない基材上に印刷される場合に、多量のインクの沈着を有する画像の領域(例えば、画像が濃色または暗色の陰影を有する場合)が、少量のインクの沈着を有する画像の領域(例えば、画像に薄い陰影しかない場合)よりも著しく高い光沢レベルを有することを意味する。換言すれば、プリントのハイライト領域は、暗部領域よりも低い光沢レベルを有することになる。濃い陰影から薄い陰影への(例えば、強い光沢から弱い光沢への)遷移が生じる画像に、明確な線が現れるおそれがあり、これにより画像が魅力的でなくなることがある。
均一な仕上げを提供し、したがって画質を改善するために、プリント全体を、任意選択により無色インクまたはワニスでコーティングすることができる。しかし好ましくは、本発明のインクは、無色インクと一緒に印刷される。したがって、本発明のインクセットは、好ましくは無色インクを含む。
無色インクは、本発明の有色インクと同時に噴射されるが、無色インクは、多量の有色インクの沈着を有していない画像の、空白のまたはハイライト領域に沈着する。このことは、インクフィルムが、基材の印刷された表面全体を被覆し、それによってプリントにわたってより均一な仕上げを有するプリントが得られることを意味する。プリントはまた、フィルムにわたってより均一なインクフィルム重量を有する傾向があり、したがって表面トポグラフィーがより均一になり、多量の有色インクの沈着領域からハイライトへの遷移がより平滑になるので、プリント外観が改善される。
プリントヘッドは、初歩的なプリンターのコストの著しい部分を占め、したがってプリントヘッドの数(したがって、インクセットのインクの数)を少なく保つことが望ましい。しかし、プリントヘッドの数の低減は、プリントの品質および生産性を低下し得る。したがって、プリントの品質および生産性を損なうことなくコストを最小限に抑えるために、プリントヘッドの数の平衡を保つことが望ましい。本発明のある好ましいインクセットは、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクおよびブラックインクを含む。色のこの制限された組合せによって、プリントにわたって均一な非常に高度な光沢、色調の非常に良好な目盛り(graduation)、および高色域を有するプリントを達成することができる。先のインクセットのさらなるバリエーションは、先のインクセットと、透明ワニス、金属インクおよびホワイトインクの1つまたは複数を含むことができる。インクセットの別の例は、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクおよびブラックインク、無色インク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクならびにオレンジインクである。
本発明のインクがインクセットで提供される場合、インクセットにおける異なるインクの表面張力は、好ましくはわずか2mNm−1、より好ましくはわずか1mNm−1、最も好ましくはわずか0.5mNm−1だけ異なる。このようにして異なるインクの表面張力の平衡を注意深く保つことによって、印刷された画像の品質および外観を改善することができる。
本発明のインクセットは、任意選択により、1つまたは複数の金属効果インクを含むことができる。銀などの金属色の使用は、例えば広告画像において人気が高まりつつある。
従来の溶剤系の金属インクは、非常に輝きのある金属効果をもたらすことができる。金属顔料は、フレークまたは血小板状の形態であり、これらは、乾燥していない液体インク内で無作為に配向している。溶剤を含有するインクの場合、乾燥過程における溶剤喪失の結果としてインクフィルムの厚さが低減するにつれて、フレークは、プリント表面に対して平行に配列することができる。プリント表面と平行な金属顔料フレークの配列は、良好な反射性および金属的輝きをもたらす。しかし、生成されたフィルムは、しばしば非常に低い摩擦特性を有するおそれがあり、このことは、顔料がプリント表面から容易に除去され得ることを意味する。UV硬化した金属インクは、一般に、より良好な摩擦特性を有するが、金属顔料フレークには急速なUV硬化過程中に配列するための時間がないため、しばしばくすんだ外観になる。
本発明の金属インクは、以下に論じる通り2段階でインクを乾燥させるため、これらの問題を克服する。金属フレークは、溶剤蒸発ステップ中に配列するための時間があり、最終画像において輝きのある金属効果を生成することができる。しかし、UV硬化段階では、摩擦耐性フィルムが得られる。
本発明の無色インクは、ワニスとして使用することができる。本発明の一実施形態では、無色インクは、従来の溶剤系金属効果インクのためのワニスとして使用することができる。金属効果のあるプリントは、公知のUV硬化性ワニスで保護することができるが、これらの材料が噴射されるときに生成される多量のフィルム重量は、プリントの金属的輝きをくすませ、それらの外観にとって有害となる。しかし、本発明の無色インクにおける相対的に高い割合の揮発性溶剤の存在は、少量のフィルム重量を沈着させる。一般に、UVワニスは、プリント表面にわたって12μmのフィルムを生成し得る。本発明の無色インクを使用することによって、フィルム重量は2〜3μmまで低減され得る。ハイブリッドワニスの少量のフィルム重量により、金属プリントの外観に対する有害な作用(affect)がはるかに低減される。
本発明のインクは、主に可撓性基材上に印刷するために設計されるが、基材の性質は限定されず、これには、ガラス、金属、プラスチックおよび紙などのインクジェット印刷にかけることができる任意の基材が含まれる。最も好ましいのは、可撓性基材、特にグラフィック印刷産業で使用される可撓性基材である。非限定的な例には、ポリエステル、繊維性メッシュ、ビニル基材、紙等が含まれる。本発明のインクは、特に、粘着性(self adhesive)ビニルおよびバナー(banner)グレードのPVC基材上への印刷に適している。
インクは、高速水冷撹拌機を用いて撹拌し、または水平ビーズミルで粉砕するなどの公知の方法によって調製することができる。
印刷方法
本発明の印刷方法は、インクを低線量の化学線に曝露することによって、インクジェット用インクを初期にピンニングすることを必要とする。これにより、インクを部分的に硬化させ、それによって画像領域間のにじみおよびぼかしを制御することにより画質を最大限にする。次に、さらに硬化させることができる高粘度コーティングを提供するために、溶剤を蒸発させることによってインクを乾燥させる。次に、コーティングを化学線にさらに曝露して、インクを完全に硬化させる。
用語「乾燥」および「硬化」は、放射線硬化性インクジェット用インクに言及する場合、当技術分野では、放射線硬化性材料の重合および/または架橋によってインクジェット用インクが液体から固体に変換することを意味するために、しばしば交換可能に使用されることに留意されたい。しかし、本明細書では、「乾燥」は、蒸発によって溶剤を除去することを意味し、「硬化」は、放射線硬化性材料の重合および/または架橋を意味する。本発明のハイブリッドインクおよび方法では、ピンニングおよび乾燥によって粘度が顕著に上昇し、最終的な硬化によって、インクジェット用インクが液体インクから固体フィルムに変換される。
図1は、本発明の方法で使用されるインクジェット印刷装置の例示的な一実施形態の斜視図を示す。この装置は、プリンターヘッド(1)、加熱ユニット(2)、およびUV硬化ユニット(3)を含む。
図2は、本発明の方法で使用されるインクジェット印刷装置の例示的な一実施形態の断面図を示す。プリンターは、ロール−ツー−ロールプリンターである。この装置は、プリントヘッド(1)、加熱ユニット(複数可)(2)、反射体(4)および電球(5)を含むUV硬化ユニット(3)を含むプリントキャリッジを含む。
図3は、やはり本発明の範囲に含まれるフラットベッドプリンターの写真を示す。
従来の溶剤系インクでは、プリンターの生産性は、バルク溶剤を排出するその系の能力に左右される。多すぎる湿潤インクが媒体上に沈着されると、インクが流れて、印刷された画像を不鮮明にする。この理由から、高蒸気圧を有する溶剤が、インクにおいては好ましい。しかし、溶剤蒸気圧が高すぎると、プリントヘッドノズルプレート上でのインクの乾燥がノズルを閉塞するおそれがある。溶剤の選択におけるこの妥協は、生産性を制限する。
溶剤プリンターの低い生産性が理由で、その資本コストは、商業的な実現可能性を維持するために相対的に低くなければならない。したがって、内部機構は簡素に保たれ、妥当な品質の画像を生成するために、プリントヘッドはできるだけ少なくされる。複雑性の低下により、これらの機械は、操作および維持が容易になる。
ここ数年、UV硬化性インク系は、より広い生産性範囲のワイドフォーマットグラフィック市場において、溶剤インクプリンターに大きく取って代わってきている。溶剤プリンターとは違い、表面上に沈着したインクは、加熱時にはほとんど蒸発しない。その代わり材料は、エネルギー源への曝露により、固体に変換される。ほとんどの場合、エネルギー源は強烈なUV光であり、これは、光開始剤の存在下で硬化性分子を光架橋して固体を形成するものである。
UV硬化性プリンターの認識される最も大きな利益は、高い生成率をもたらすそれらの能力である。ほとんどのUVプリンターでは、硬化供給源は、プリントヘッドクラスタの片側または両側上を往復するプリントヘッドキャリッジ上に搭載される。ある場合には、硬化システムは、プリントヘッド間にも位置する。プリントヘッドと硬化ユニットとの一般的な分離距離は、100mm未満であり、プリントと硬化の間の最長時間は、1m/秒で移動するプリントヘッドキャリッジでは0.1秒になると思われる。1秒未満のUVインクの固化時間は、乾燥に数分かかることがある溶剤インクと比較して好ましい。しかし、UV硬化性インク用のインクジェットプリンターは、必然的により複雑になり、結果的に溶剤系インクのためのインクジェット用インクプリンターよりも高価である。
本発明のインクは、溶剤系インクジェット用インクを伴う使用に適したインクジェットプリンターを、化学線源と併用して印刷することができる。
溶剤系インクジェット用インクを印刷するのに適したプリンターの特徴は、当業者に周知であり、下記の特徴を含む。
先に論じた通り、溶剤系インクジェット用インクの印刷に適したプリンターは、一般に資本コストが低く、このことは、このプリンターが簡素な内部機構を有する傾向があることを意味する。実際このことは、溶剤系インクの印刷に適したインクジェットプリンターが、一般に、インク供給部からプリントヘッドにインクを送達するための重力供給システムを含むことを意味する。それとは対照的に、UVプリンターは、インクをプリントヘッドに送達するための加圧型ヘッダータンクを使用し、これによってノズル内のメニスカスの位置を制御することができる。
プリントヘッドは、全体的なプリンターコストの高い割合を占めることから、溶剤系インクジェット用インクの印刷に適したインクジェットプリンターは、高品質画像を提供するのに必要な、最小数のプリントヘッドを含む。いずれにしても、溶剤系インクジェット用インクは、一般にUVインクよりも乾燥に長時間を必要とするので、基材に多量のインクを適用するために多くのプリントヘッドを使用することは、インクだまりを作り、画像を不鮮明にすることから、その利点が損なわれる。
さらに、溶剤系インクジェット用インクを印刷するためのプリントヘッドには、溶剤系インクが低粘度であることから、インクを加熱するための手段が備えられておらず、したがって、プリントヘッドにおいて噴射可能な粘度を生成するための加熱は必要ない(UV硬化性インクと対照的)。したがって、公知の溶剤系インクは、周囲温度で噴射される。
溶剤系インクジェット用インクは、溶剤の蒸発に起因して、ノズルプレート上での乾燥の影響を受けやすい。したがって溶剤系インクジェット用インクのためのプリンターは、一般に、使用しないときにはプリントヘッドに蓋をするために使用できる吸引カップを含み、これによって溶剤蒸気の飽和環境を確立し、蒸発を制限する。万一プリントヘッドが閉塞した場合、吸引カップを使用して、蠕動ポンプを用いて少量のインクをその閉塞部を介して押し出して、ワイパーブレードを使用して過剰のインクを除去した後に、その性能を回復することができる。
本発明のインクは、溶剤および放射線硬化性構成要素の両方を含み、したがって有機溶剤の蒸発と、化学線への曝露時の放射線硬化性構成要素の硬化との組合せによって乾燥する。
本発明のインクは、驚くべきことには、化学線源も提供されるという条件で、従来の溶剤系インクジェット用インクを印刷するのに適したプリンターにおいて使用することができる。一般に、溶剤系インク用のインクジェットプリンターのプリントヘッドは、外部からは加熱されない。本発明のインクは、周囲温度で、好ましくは35℃未満、または30℃未満、または約25℃で噴射することができ、したがって、溶剤系インクジェット用インクを印刷するために使用されるプリントヘッドおよびノズルと適合性がある。本発明の印刷装置の基礎としての、従来の溶剤系インクジェット用インクを印刷するためのプリンター、特に従来の溶剤系インクジェット用インクを用いる使用のためのプリントヘッド、ノズルおよびインク送達システムの使用は、本発明の印刷装置が低資本コストであることを意味する。
従来の溶剤系インクジェット用インクを印刷するのに適したプリンターは、本発明のインクの印刷において使用する前に適応され得る。インクの正確な性質および硬化供給源の位置に応じて、インクと化学的に適合性のある不透明なインク供給構成要素を使用することができ、および/またはUVスクリーンフィルターフィルムを、装置の正面のプリントウィンドウに適用することができる。これらはわずかな適応であり、プリンターコストまたは性能に対して著しい効果をもたらさないと思われる。
一実施形態では、本発明の印刷装置は、1つまたは複数のピエゾドロップオンデマンドプリントヘッドを含む。好ましくは、プリントヘッドは、50ピコリットル以下、より好ましくは30ピコリットル以下、特に好ましくは10ピコリットル以下の液滴サイズのインクを噴射することができる。
本発明の印刷装置は、インクが基材に適用された後の適切なときにインクから溶剤を蒸発させるための手段を含む。公知の溶剤系インクジェット用インクから溶剤を蒸発させるのに適した任意の手段を、本発明の装置において使用することができる。その例は当業者に周知であり、これには乾燥器、加熱器、エアナイフおよびその組合せが含まれる。
一実施形態では、溶剤は、加熱によって除去される。加熱は、例えば、基材の下に提供される加熱プレート(抵抗加熱器、誘導加熱器)または基材の上に提供される放射加熱器(加熱棒、IRランプ、固体IR)の使用によって、基材を介して、および/または基材の上方から適用することができる。好ましい一実施形態では、インクを、予熱した基材上に噴射することができ、次いでその基材を加熱プラテン上に移動する。本発明の装置は、1つまたは複数の加熱器を含むことができる。
本発明のインクを印刷する場合、インクが硬化する前に、溶剤のかなりの部分を蒸発させるのが好ましい。溶剤の実質的にすべてを、インクが最終的に硬化する前に蒸発させるのが好ましい。これは、一般に従来の溶剤系インクジェット用インクを乾燥し得る条件に、印刷されたインクを曝露することによって達成される。本発明のインクの場合、かかる条件によって溶剤の大部分は除去されるが、インク内の放射線硬化性構成要素の存在を前提として、微量の溶剤がフィルム内に残存すると予測される。
溶剤の蒸発ステップは、さらにそれが画質を規定すると思われることから、重要であると考えられる。したがって溶剤の蒸発ステップは、従来の溶剤系インクに期待され得るように、高度に光沢のある印刷された画像をもたらすと考えられる。さらに、溶剤の蒸発によるインクのかなりの部分の喪失によって、等体積の公知の放射線硬化性インクを噴射することによって生成され得るフィルムよりも薄い印刷されたフィルムが形成される。より薄いフィルムは改善された可撓性を有するので、このことは有利である。
標準の溶剤系インクとは違い、溶剤が蒸発しても、インクが完全に固体となることは期待されない。むしろ、表面上に残存するのは、高粘度状態の放射線硬化性インクである。この粘度は、後のインクの硬化に必要な時間スケールにおいてインク流を阻害し、または著しく妨げ、画像劣化を防止するのに十分高い。インクは、放射線源への曝露時に硬化して、相対的に薄い重合フィルムを形成する。本発明のインクは、一般に1〜20μm、好ましくは1〜10μm、例えば2〜5μmの厚さを有する印刷されたフィルムを生成する。フィルムの厚さは、共焦点レーザー走査顕微鏡を使用して測定することができる。
化学線源は、放射線硬化性インクを硬化させるのに適した任意の化学線源であってよいが、好ましくはUV源である。適切なUV源には、水銀放電ランプ、蛍光管、発光ダイオード(LED)、フラッシュランプおよびその組合せが含まれる。1つまたは複数の水銀放電ランプ、蛍光管またはフラッシュランプを、放射線源として使用することができる。LEDが使用される場合、これらは、好ましくは複数のLEDの配列として提供される。
好ましくは、化学線源は、使用時にオゾンを発生しない供給源である。
インクの初期ピンニングのための化学線源は、インクの最終的な硬化を実施するための化学線源と同じでも異なっていてもよい。
UV放射線源は、SUVD Svecia UV乾燥器などの専用コンベアUV硬化ユニット内に非直結式に置くことができる。しかし好ましくは、放射線源は直列に置かれ、このことは、加熱ステップと硬化ステップとの間で印刷装置から基材が除去されてはならないことを意味する。
放射線源は可動性であってよく、このことは、供給源がプリントヘッドの移動と平行に、プリント幅にわたって行き来できることを意味する。
一実施形態では、1つまたは複数の化学線源は、その化学線源をプリント幅にわたって横断させるキャリッジ上に位置する。キャリッジは、溶剤の蒸発の前および後に照射できるように、プリンターキャリッジの上流および下流に置くことができる。この実施形態では、化学線源は、プリンターキャリッジとは独立に移動し、したがってプリントヘッドの移動は、溶剤を蒸発させるのに適した時間を提供するために減速される必要はない。したがって、全体的な生産性が改善され得る。
放射線源が離れたキャリッジ上に提供される場合、追加のキャリッジレール、モーターおよび制御システムを提供する必要がある。この適応は、装置コストを大きく増大し得る。
好ましくは、放射線源は静的である。このことは、供給源が、使用時に基材のプリント幅にわたって行き来しないことを意味する。その代わり、化学線源は固定され、基材が供給源に対してプリント方向に移動する。
化学線源が、プリンターのプリントゾーンに提供される場合、ノズル内での早計の硬化をもたらすおそれがあるプリントヘッドにおける光汚染を回避しなければならない。ランプシャッターなどの光汚染を防止するための適応は、追加のコストを生じる。したがって放射線源は、印刷装置のプリントゾーンの外側に位置するのが好ましい。プリントゾーンとは、プリントヘッドが移動することができる印刷装置の領域を意味し、したがって、インクが基材に適用される領域を意味する。
プリントゾーンの外側に位置する静的放射線源を含む本発明の好ましい印刷装置は、経済的に魅力があり、したがって初歩的なワイドフォーマットデジタルグラフィック使用に適していると期待される。したがって、この実施形態は特に好ましい。初歩的とは、ワイドフォーマットデジタルグラフィック使用に適した、最も簡素で安価なプリンターを意味する。
プリントゾーンの外側に化学線源を置き、可動性の放射線源の使用を回避することによって、印刷装置に対する潜在的に高価な適応を回避することができる。
静的硬化ユニットは、好ましくは全プリント幅に及び、一般に、より小さいワイドフォーマットグラフィックプリンターでは少なくとも1.6mである。蛍光管、水銀放電ランプおよび発光ダイオードは、静的硬化ユニットとして使用することができる。
本明細書で論じられる化学線源は、いずれもインクジェット用インクの初期ピンニングで使用することができる。化学線の線量は、放射線硬化性材料を完全に硬化させるのに必要な線量よりも低く、すなわち1〜200mJ/cm2、好ましくは1〜100mJ/cm2、より好ましくは1〜50mJ/cm2、最も好ましくは約35mJ/cm2である。
ピンニング源の波長は、一般に200〜700nm、好ましくは300〜500nm、最も好ましくは350〜450nmである。
インク液滴によって基材表面上に影響を与えた後、すぐにインク液滴をピンニングすることによって、インク流を止めることが好ましい。良質の画像を達成するために、影響を与えてから5秒以内、好ましくは1秒以内、最も好ましくは0.5秒位内にインクをピンニングすることが好ましい。ピンニングの結果として、インクの粘度は、放射線硬化性材料の重合および/または架橋によって上昇し、それによってインク流が止められ、最終的な画質が改善される。
溶剤を蒸発させた後、組成物は、追加の化学線に曝露される。これは、ピンニングに必要な放射線に追加される線量の放射線である。最終的な硬化を達成するのに必要な線量は、ピンニング線量よりも高くなる。提供される線量によって、固体フィルムが形成される。適切な線量は、200mJ/cm2超、より好ましくは少なくとも300mJ/cm2、最も好ましくは少なくとも500mJ/cm2であり得る。上限はそれほど関連しないが、放射線源が強力であるほど費用がかかるという商業上の要因によってのみ制限されることになる。一般的な上限は、5J/cm2であり得る。溶剤の蒸発と、インクの最終的な硬化との間の遅延は、インクの初期ピンニングほど重要ではないが、一般には、噴射の少なくとも1分後である。
高圧および中圧水銀放電ランプは、操作するのに相対的に高価になり得る。ランプユニット自体は、重く、高価になることがあり、操作者への意図しないUV曝露を防止するために、追加の遮蔽が必要になることが多い。ランプによって生成されるオゾンを除去するために、抽出も必要とされる。さらに、高出力ランプのために大放電電流が取り込まれる場合、ランプに使用されるガスの抵抗性が、使用中に変化するため、電子安定器が必要とされる。したがって、高圧および中圧水銀放電ランプは、本発明の好ましいUV源ではない。
現在利用可能なLED供給源は、相対的に高価であり、UV放射線のLED供給源を含む印刷装置は、初歩的なプリンターの使用に適する可能性が低い。したがって、現在利用可能なLEDを含む化学線源は、好ましくない。しかし、インクを硬化するためのUVのLED供給源の開発が進行中であり、LED供給源のコストは、将来的に著しく低下すると予測される。この場合には、LEDを含む化学線源を含む本発明の印刷装置は、初歩的な印刷システムに適していると思われる。
本発明の一実施形態では、放射線源はUV蛍光灯を含む。
本発明の別の実施形態では、放射線源は、1つまたは複数のフラッシュランプを含む。フラッシュランプは、2つのタングステン電極間の、キセノンまたはクリプトンなどの不活性なガスの放電破壊によって操作される。水銀放電ランプとは違い、フラッシュランプは、高温での操作を必要としない。フラッシュランプは、熱安定化時間がなく、瞬時にスイッチオン状態になる利点も有する。エンベロープ材料は、有害なオゾンを発生し得る波長の伝送を防止するためにドープすることもできる。したがって、フラッシュランプは操作するのに経済的であり、したがって初歩的なプリンターにおける使用に適している。
フラッシュランプは、低温パルスモードおよび変調モードを含むいくつかのモードで操作することができる。低温パルスモードは、UV放射線のフラッシュが必要とされるたびに、ランプ出力が完全なオフから非常に短期間でスイッチオンされる場合である。普通は低温パルスの間欠的性質により、フラッシュランプは、通常は一定のランプ出力が必要とされる従来の硬化適用へのその適合性が排除され得る。しかし、フラッシュランプが、プリントゾーンの下流で本発明のインクジェット用インクを硬化するために使用される場合には、硬化供給源の間欠的性質は、有害な作用を有することはない。例えば、溶剤系インクジェット用インクのためのプリンターの平均生成速度は、一般に0.5m/分であるが、各プリントヘッドキャリッジパスの端部においてプリンターを通り抜ける基材の運動は、実際に3〜6mmずつ生じる。このことは、基材が1回1〜3秒間、静的であることを意味し、これは、インクを硬化するために、同じ画像領域上でランプが高出力で数回フラッシュするのに十分すぎるほどの時間である。ただし、ランプが基材の前進ステップと共時的に誘発されるならば、ランプ出力のパルス性質は、基材に熱による損傷をもたらさずに、インクを硬化するのに十分な線量およびピーク放射照度を提供することができる。
このモードで操作する場合、フラッシュランプは、使用時に一定の放射線を放射せず、したがってランプが基材上にある期間中、かなりの割合の間「オフ」になっており、それにより、温度感受性の基材に熱による損傷を与える危険性が低減する。
フラッシュランプを駆動するための電位パルスを発生させるのに必要な回路素子は、相対的に安価であり、AC−DC変換器、高電位コンデンサおよびインダクタからなる。簡素さと、水銀放電ランプよりも大幅に低い平均電力消費によって、このランプのための資本および運転コストは、初歩的なハイブリッド型溶剤/UVプリンターにおける使用にとって経済的である。
しかし、フラッシュランプは、変調モードで操作されることが好ましい。変調モードでは、パルス発信中に大きい即時UV出力が達成されるが、ガス放電の反復誘発が必要でないことから、ランプ寿命は長くなる。変調はまた、パルス間に、ランプにおいてランプの赤外線(IR)出力を強化する相対的に小さい電流が流れるという利益を有する。パルス間の絶対的な電力は小さいので、ランプは、印刷されたインクからの溶剤の除去を助ける低出力IR加熱器として作用することになる。
フラッシュランプは、一般に、使用中の冷却を必要とし、フラッシュランプの最大平均出力は、使用される冷却方法に応じて決まる。より高い出力では、より緻密な冷却方法が必要である。対流空冷が使用される場合、最大平均出力は約0〜15W/cm2であり、強制空冷が使用される場合、最大平均出力は約15〜30W/cm2であり、水冷が使用される場合、最大平均出力は約30〜60W/cm2である。急速なインク硬化を達成するためにランプの出力を最大にすることが好ましいが、この要件は、経済的なUV放射線源が提供される場合には、適切な冷却手段を提供するコストとの平衡を保たなければならない。再循環冷水器を提供すると、コストが著しく追加され、したがって初歩的なプリンターにおける使用に適する可能性が低くなる。したがって、フラッシュランプの最大平均出力は、好ましくは約30W/cm2であり、ランプは、好ましくは強制空冷システムを使用して冷却される。
フラッシュランプのUV出力は、高電流密度を提供することにより、IR出力と比較して強化することができる。これは、ランプの出力を増大することによって達成することができる。ランプの出力は、ランプの内径に比例し、したがって、IR出力と比較されるUV出力の強化は、大電源と共に大きい内径のランプを使用することによって達成することができる。例えば、4mmの内径ランプでは38W/cmを生成するのと比較して、約10mmのランプ内径は94W/cmを生成することができる。
内径10mmを有する単一の1.6mの長さのフラッシュランプの使用は、15kW超を提供することができる電源を必要とし得る。構成が簡素であるにもかかわらず、この大きさの電源はまだ高価であり、三相の電力接続を必要とし得る。したがって放射線源は、プリント幅に沿って伸びる一連の短いランプと、ランプ間のスイッチ切り替えをする小さい電源から形成されるのが好ましい。印刷装置を介する印刷された基材の通過は、相対的に緩慢であるのが好ましく、したがってランプは、基材が進行する前に全プリント幅にわたって順に、急速にパルスを発することができる。ハイブリッド型溶剤/放射線硬化性インクジェット用インクによって提供される画像は、溶剤除去段階によって規定されると考えられるので、その幅にわたってプリントが受けるわずかに異なる曝露時間は、画質には影響を及ぼさないと予測される。
中圧水銀灯は、様々な適用に合わせて設計されたインクのUV硬化を達成するために、印刷産業で広く使用されている。中圧水銀灯は、一般にエネルギー入力のわずか15%しか所望のUV放射線に変換されず、相対的に非効率的であり、入力エネルギーの残りは、赤外放射線/熱および可視光に変換される。中圧水銀灯の高い熱出力は、いくつかの印刷適用で使用される熱感受性基材の劣化または歪みに関する問題をもたらすおそれがある。1つの解決策は、熱を基材から逃してUV放射線だけを材料上に集める二色性反射体を使用することである。しかしこれらは、ランプの効率を制限し、コストを大幅に追加する。
低圧水銀灯は、中圧水銀灯よりもかなり効率的である。エネルギー入力の約35%がUV放射線に変換され、エネルギー入力の85%が254nmの波長(UVC)を有する。したがってこれらのランプは、中圧水銀灯よりも使用時の熱の発生が少なく、このことは、低圧水銀灯が、運転するのにより経済的であり、感受性基材に対して損傷を与える可能性が低いことを意味する。さらに、低圧水銀灯は、使用時にオゾンを発生しないように製造することができ、したがって、中圧水銀灯よりも使用するのにより安全である。
低圧水銀灯は、浄水産業で広範に使用されているが、印刷産業での広範な適用は、まだ見られていない。一般的な中圧水銀灯は、80〜240W/cmの範囲の出力を有する。それとは対照的に、低圧水銀灯の最大出力は、約30〜440mW/cmであり、このことは、低圧水銀灯のピーク放射照度も低いことを意味する。これらのランプの低出力および低ピーク放射照度は、それらが放射線硬化性インクジェット用インクの効果的な硬化を提供できないことを示唆する。
単一の低圧水銀灯または2つ以上の低圧水銀灯を使用することができる。
IUPACの化学用語一覧(PAC、2007年、79、293「光化学で使用される用語集(Glossary of terms used in photochemistry)」、第3版(IUPAC推奨2006年)、doi:10.1351/pac200779030293)は、低圧水銀灯を、「約0.1Pa(0.75×10−3トール;1トール=133.3Pa)の圧力の水銀蒸気を含有する共鳴ランプ。かかるランプは、25℃で、主に253.7nmおよび184.9nmを放射する。これらは殺菌灯とも呼ばれる。冷陰極および熱陰極、ならびに冷却無電極(マイクロ波によって励起)の低圧水銀灯がある。ウッドランプは、UV−Aスペクトル領域(315〜400nm)で放射する、追加の蛍光層を伴う低圧水銀アークである」と説明している。
低圧水銀灯は主に、約254nmのピーク波長を有するUV放射線を放射するが、放射線の波長は、ランプの内面を蛍光体でコーティングすることによって変えることができる。ランプの好ましい一実施形態では、かかる蛍光体コーティングを使用しない。本発明の方法では、ランプは、好ましくは約254nmのピーク波長の放射線、または換言すれば、低圧ランプ環境において水銀蒸気によって放射される放射線の自然のもしくは未変化の波長の放射線を放射する。
蛍光体コーティングの使用は、ランプの発光効率を低下し得る。しかし、本発明に従って使用される蛍光体を含まない好ましいランプは、UVCの発生について45%を超える効率を有する。この高い効率は、硬化ユニットの運転コストを最小限に抑える一助になる。
低圧水銀灯では、UV出力は温度に伴って変わる。ランプが最初にスイッチオンされると、液体水銀が気化し始め、温度が上昇すると水銀の蒸気圧は最適レベルに達し、UVC放射線の出力が最大に達する。ランプの温度が上昇すると、蒸気圧がさらに上昇し続けて、UVC出力を低減する。したがって低圧水銀灯は、最大UVC出力を達成することができる最適な温度で操作され、この温度は一般に、標準の低圧ランプについては約25〜40℃である。しかし、エネルギー入力が高すぎるとランプ温度が最適な温度を超えて上昇するおそれがあるため、操作温度に対するこの制限によって、エネルギー入力を制限する。エネルギー入力の制限は、達成可能な最大UV出力を制限する。したがって、低圧水銀灯からの達成可能な最大UV出力は、操作温度およびエネルギー入力によって制限される。標準の低圧水銀灯は、それらの普通の構成で380mW/cm未満の線出力密度を有する。しかしU形ランプは、この最大2倍の、例えば650mW/cmの効果的な総出力密度を有することができる。
標準の低圧水銀灯のUVC出力は、許容される時間枠内で本発明のインクを硬化するのに十分であるが、UVC硬化線量がより短時間で送達されて、より速い硬化速度が可能になるのが好ましい。
低圧水銀灯はアマルガムランプであってよい。アマルガムランプでは、液体水銀の代わりに、一般にビスマスおよび/またはインジウムと共に水銀のアマルガムが使用される。しかし、ビスマスまたはインジウムの代わりに、水銀と適合性があり、または共にアマルガムを形成することができる他の適切な材料を使用することができる。アマルガムランプは、従来の低圧水銀灯と同じスペクトル出力を有する。アマルガムは、操作時に温度が上昇すると、徐々に水銀蒸気を放出するが、圧力が高すぎると、蒸気は再吸収される。この自己調整は、ランプの種類および製造者に応じて、最適な水銀蒸気圧がより高い温度で、約80〜160℃、例えば83℃で達成されることを意味する。したがってアマルガムランプは、標準の低圧水銀灯よりも高い最適な温度で操作され、このことは、より大きいエネルギー入力が許容され得ることを意味する。より大きいエネルギー入力は、それに付随してUVC出力を増大し、これにより、ランプの長い操作期間中、安定な状態が保たれる。
一般に、アマルガムランプは、最大140℃の温度で、380mW/cmを超える線出力密度で運転することができ、かかるランプは、従来の低圧水銀灯の出力の約5倍に等しい出力を達成することができる。アマルガムランプによって発生する多量の放射線および熱の組合せは、通常の低圧水銀灯と比較して、本発明で使用されるインクの乾燥および硬化において有用な利点を提供する。
本発明の一実施形態では、硬化ランプの線出力密度は、2000mW/cm未満、好ましくは200mW/cm〜1500mW/cm、より好ましくは380mW/cm〜1,500mW/cmである。より好ましい実施形態では、線出力密度は、380mW/cm〜1,200mW/cmであり、最も好ましい一実施形態では、380〜1000mW/cmまたは500〜1000mW/cmである。
標準の低圧水銀灯は、0.45Amps/cmを超えない電流密度を有するが、アマルガムランプは、このレベルを超える電流密度を有する。
アマルガムランプの温度は、最適なUV光出力が維持されるように制御することができる。温度制御は、石英スリーブ(quartz sleeve)内の水にランプを浸漬することによって達成され得る。水に対して電気絶縁が提供されると同時に、ランプ周りの空隙が、水による過剰な冷却を防止する。ランプを通過して流れる水を制御することによって、最適なランプ温度を最大UV出力に合わせて維持することができる。この方法は好都合ではあるが、冷却装置の追加のコストを招くことから好ましくない。
好ましい一実施形態では、低圧水銀灯(複数可)にわたって空気を吹きつけて、ランプ温度を制御する。さらに好ましい一実施形態では、ランプ(複数可)によって温められた強制空気を、印刷された画像の表面上に向けて、硬化の前に溶剤を除去する一助にする。例えば、過剰の温風を抽出し、プリント過程の上流に移送するために、ランプ反射体の後方に1つまたは複数の送風機を置いて、印刷された画像を乾燥させ、ピンニングする一助にし、したがってプリンターの効率を増大することができる。
低圧水銀灯は、ランプを流れる電流を調整するために、補助電子安定器と一緒に使用されるのが好ましい。多くの種類の安定器が、利用可能である。本発明における使用に好ましいのは、入力メイン周波数を、ランプのイオン化プラズマの緩和時間よりも大きい周波数に変換し、それによって最適な光出力を維持する電子安定器である。
より好ましい実施形態では、急速または瞬時起動モードで操作される電子安定器が提供され、この場合低圧水銀灯の電極は、頻繁なスイッチ切り替えによって生じる電極の損傷を低減するために、点火前に予め温めることができる。予熱は、冷却開始法よりも実施するのに高価であるが、本発明の好ましいアマルガムランプは高出力であり、高温で操作され、使用時にはしばしばスイッチ切り替えされる可能性が高いため、予熱が好ましい。
低圧水銀灯は、あらゆる方向に光を放射する。したがって、印刷された画像の効率的なUV硬化のために、ランプを少なくとも1つの反射体と共に使用して、印刷された表面に、放射されたUV光の大部分が効率的に向かうようにすることが好ましい。反射体は、好ましくは、喪失を最小限に抑えてUV光を効率的に反射する材料、例えば80%を超える反射効率を有するアルミニウムから製造される。長期UV曝露中に鏡面仕上げがかすむのを防止するために、Alanodから利用可能な320Gなどの、予め陽極酸化処理したアルミニウムが好ましい。この材料は、効率的な反射体を提供するために、圧延または曲げによって、曲線または多面体の(faceted)形状に容易に形成される。
一実施形態では、反射体は、印刷された基材に向けられた放射線が細線に集まり、それによって印刷された基材におけるピーク放射照度を増大するように、楕円形の形状を有することが好ましい。「楕円反射体」は、当技術分野で公知の用語であり、図4に示す通りの全体的形状を有する反射体を指す。
有限直径の低圧水銀灯は、放射された光のすべてが楕円の焦点から生じるのを防止する。したがって、好ましい一実施形態では、基材におけるピーク照射照度をさらに増大するために、直径30mm未満、好ましくは20mm未満、より好ましくは10mm未満の低圧水銀灯が、楕円形の反射体と組み合わせて使用される。
一実施形態では、電球によって生成される放射線がプリント表面に向かうように、低圧水銀灯の電球は、反射コーティングで部分的にコーティングされる。反射材料は、UVC放射線を反射する任意の材料であってよく、コーティングは、例えば塗装または真空蒸着によって適用することができる。
基材上に印刷されたインクが受ける総UV線量は、基材がランプ前を通過する速度と反比例する。本発明の好ましい実施形態に従って使用される低圧水銀灯は、中圧水銀灯と比較して相対的に低出力を有するが、静的ランプの使用は、従来の走査型大型フォーマットプリンターによって達成されるよりも長時間にわたって、印刷されたインクをランプからの放射線に曝露することができる。したがって、低圧ランプによって提供される総線量は、より高出力のランプを使用する走査型の硬化ユニットによって提供される総線量を超え得る。
低圧水銀灯のエンベロープは、一般に、1メートルを超える長さのランプを製造することができる溶融石英から製造される。直列の静的硬化ユニットを使用して全プリント幅にわたって均一な硬化を確実にするために、プリント幅を数センチメートル超えるアーク長を有するランプを提供して、電極近くの放射分散(emission variance)に対抗することが好ましい。最終的なランプ長は、電極の封入と一緒になって、ある場合にはほぼ3mに等しくなることがある。この長さのランプは、幅広い直径のエンベロープに対して達成可能である。しかし、ランプの直径の幅が小さくなるほど脆弱になり、それらの長さに沿って追加の支持体が必要になり得るが、これは放射照度プロファイルを妨害するおそれがある。この場合、全幅の硬化を達成するために、いくつかの小さいランプを城郭状(castellated)配列またはねじれ配列で使用することが好ましいことがある。
ここで、限定的することを企図しない以下の実施例を参照することによって、本発明を説明する。
インクジェット用インクを、表1に記載した配合に従って調製した。インクジェット用インク配合物を、所与の量で構成要素を混合することによって調製した。これらの量は、インクの総重量に対する重量パーセントとして示される。
ガンマブチロラクトンおよびジエチレングリコールジエチルエーテルは、有機溶剤である。Nippon Gohsei 7630Bは、60℃で6.9Pa.sの粘度を有する六官能性ウレタンアクリレートオリゴマーである。
シアン顔料分散液は、分散剤としてのDisperbyk 168(20.0wt%)、トリエチレングリコールジビニルエーテルであるRapicure DVE3(50.0wt%)、および顔料であるIrgalite blue GLVO(30.0wt%)から構成されている。マゼンタ、イエローおよびブラック顔料分散液は、類似しているが、これらの顔料は明らかに異なる色である。
Irgacure 819およびIrgacure 2959は、フリーラジカル光開始剤である。UV12は安定剤であり、BYK 331は、ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサンであり、表面張力を低減する。
220ミクロンの光沢PVCおよびコーティングされた透明光沢ポリエステルフィルムは、共に、先のインクジェット用インク組成物における溶剤に対して非受容性であることが見出され、したがってピンニング応答が緩慢だったので、これらの材料を試験基材として選択した。
次に、実施例1によるインクの12ミクロン(湿潤)フィルムを、2番のKバーアプリケーターを使用して試験基材上に流延した。湿潤フィルムを、速度20m/分で動作するコンベアの3mm上につり下げた395nmのUV LED源に曝露した。395nmのLEDは、Nordsonから供給されたものであり、名目上の出力は10Wであった(配列表面において)。
曝露した後、印刷物を、硬化過程に一般に関連する物理的変化の徴候について、主に表面を剥離する粘度の増大について評価した。インクフィルムをヘラで伸ばし、フィルム性質の任意の変化を記録することによって変化を評価し、それによって部分的な硬化が達成されたか否かを決定する。曝露後にフィルムの変化がはっきりと認められなくなるまで、LED出力を段階的に下げた。結果を表2〜5に記載する。
これらの結果は、流延フィルムにおいて、低LED出力でもフィルムの部分的な硬化がはっきりと認められることを示している。シアンおよびマゼンタインクは、全LED出力の2.5%に曝露した後でも、物理的変化が生じた証拠を示した。イエローおよびブラックインクは、反応性が低いが、全出力の1/10で動作するLEDに曝露した後でも物理的変化が生じた証拠を示した。
UV光の強度および線量を、EITによって供給されたパワーパック2を使用して、様々なLED出力設定で測定した。知見の概要を、表6および7に記載する。
これらのデータは、インクが、溶剤を除去する必要なしに395nmもの非常に低線量のUV光に応答することを示しており、やはり低い線量および光強度で物理的変化が生じた証拠を示している。使用したLEDは、全出力で動作させると水冷を必要とし、それによってプリンターの複雑度および費用が著しく増大する。低出力のLED系は、このような高価な冷却を必要とせず、低UV線量によってもたらされる物理的変化は、基材表面上にインクの液滴をピンニングしてにじみを予防し、過度なドットが非受容性基材上に広がるのを予防するのに十分である。
本明細書の先の表1に記載したインク1を使用して、溶剤が除去される前にインクを395nm UV LEDによる様々なレベルのUV光に曝露したときの、画質に対する作用を評価した。
この実施例では、Xaar 1001プリントヘッドおよびインク供給部(理論的な液滴範囲、6ナノグラム単位で42〜6ナノグラム)を取り付けた試験プリンターリグ(rig)、Phoseon 395nm 4W UV LED源、XY換算表、エクステンションチューブを取り付けたモノクロデジタルカメラ、およびEITによって供給されたパワーパック2(各チャンネルからの出力については表7を参照)を使用した。
インクを、Klockner−Pentaplast GmbHによって供給された220ミクロンのGenotherm(剛性の光沢PVC)基材(非受容性材料)上に印刷した。各サイズ2つの7列の液滴を沈着させて、理論的な液滴サイズが左から右に向かって小さくなる14列の液滴を生成した。本明細書で先に記載した液滴配列でインクを噴射させて、基材上に180×180dpiの試験パターンを形成した。この第1の液滴配列が沈着した後、試験印刷物をLED源からの様々なUV線量に曝露した。UVA2チャネルからのデータが、Phoseon製395nm LEDの395nmの出力に最も近いため、このデータを使用した。
UV曝露は以下の通りであった。
基材表面からのLEDの距離:10mm
画像上の有効なLEDの線速度:200mm/s
ヘッドからのLEDの配列距離:10cm
ピンニング前の基材上の液滴の滞留時間:0.5秒
結果を表8に記載する。
第1の液滴配列を沈着させ、ピンニングした後、第2の配列を、Y方向にノズルピッチ(70ミクロン)の半分だけずらして沈着させた。これによって、既にピンニングされた液滴の間にこれらの液滴が沈着した、180×360dpiの最終的な液滴配列が得られた。
取り込んだ画像を視覚的に検査することによって、UVピンニング過程の有効性を評価することが可能であり、UVピンニング線量が低減するにつれて液滴が広がり、融合することを示す配列の第1領域は、最大液滴質量を用いる列の対となる。
これらの領域として画像8および9(それぞれ、画像5および6の左側最上部に相当する)をより詳しく見ると、29.57mJ/cm2のピンニング線量に曝露すると、隣接する液滴の融合は低減され、したがってインクだまりおよび色と色の間のにじみが少ない、より高質な印刷画像が得られることが明らかである。
画像7も同様に、ピンニング線量の増大の作用を示しており、この場合、液滴流はさらに制限されているが、液滴の過剰なピンニングは、基材上をインクで完全に被覆するのにある度合いの液滴の広がりが必要とされる印刷物の、例えば固体の色領域の画質を悪化することがあるので、これを回避するために注意が必要である。
画像1は、LEDの全出力設定に相当する。この線量は、画像を過剰にピンニングし、それによって熱乾燥段階の前にフィルム内の溶剤が捕捉されて、花模様を作り(bloom)、または濁った外観を生じる。液滴の広がりの度合いが不十分であると、基材を完全に被覆することができず、画像の下の基材が見えてしまうため、画質に伴うさらなる問題も生じる。