JP5946002B2 - 注液式空気電池 - Google Patents
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Description
本発明は、酸素を正極活物質として利用する空気電池に関し、とくに、使用時に電解質用液体を注入するようにした注液式空気電池に関するものである。
従来の注液式空気電池としては、空気亜鉛電池として特許文献1に記載されたものがあった。この特許文献1に記載の空気亜鉛電池は、電解質容器とバッテリスタックを備えている。電解質容器は、電解質が充填してあると共に、下方に突出する電解質排出口と、この排出口を閉塞する電解質密封フィルムを備えている。他方、バッテリスタックは、複数のカソードチューブ及びアノードチューブから成るものであって、上方に突出する電解質注入口と、この注入口内に配置した差し込み管状部を備えている。
上記の空気亜鉛電池は、バッテリ筐体に、電解質容器とバッテリスタックを上下に配置して収容し、この際、電解質容器の電解質排出口と、バッテリスタックの電解質注入口とを所定間隔をおいて相対向させた状態に保持する。この空気亜鉛電池は、電解質容器の上部を外側から押すことで、電解質容器を下降させて電解質排出口の電解質密封フィルムを電解質注入口の差し込み管状部により引き裂き、これにより電解質容器の電解液をバッテリスタックに供給して、発電を開始するものとなっている。
しかしながら、上記したような従来の空気電池では、発電中において、自己放電副反応によりバッテリスタックに水素ガスが発生し、空になった電解質容器に水素ガスが流入して溜まってしまうという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、貯液タンクとセル集積体を上下に配置した注液式空気電池において、発電中に発生した水素ガスが貯液タンクに溜まるのを防ぐことができる注液式空気電池を提供することを目的としている。
本発明の注液式空気電池は、電解質用液体の収容部を有する単セルを複数配列してなり且つ夫々の収容部への注液口を上部に配置したセル集積体と、セル集積体の上側に配置され且つ電解質用液体を貯留した貯液タンクを備えている。また、注液式空気電池は、貯液タンクの下部を開放するタンク開放手段と、タンク開放手段による貯液タンクの開放部からセル集積体の各注液口に至る間に注液用の閉空間を形成するマニホルドを備えており、マニホルドが、セル集積体において発生したガスを上方に排出するためのガス抜き部を有する構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
上記の構成において、電解質用液体は、電解液そのものや、電極構造体の内部に混入させた電解質用溶質材を溶融するための液体(水)などを含むものである。
本発明の注液式空気電池は、上記構成を採用したことから、貯液タンクとセル集積体を上下に配置した注液式空気電池において、発電中に発生した水素ガスが貯液タンクに溜まるのを防ぐことができる。
〈第1実施形態〉
図1〜図3に示す注液式空気電池C1は、単セル1を複数配列してなるセル集積体Sと、セル集積体Sの上側に配置され且つ電解質用液体2を貯留した貯液タンクTを備えている。また、注液式空気電池Cは、貯液タンクTの下部を開放するタンク開放手段と、貯液タンクTとセル集積体Sとを接続するマニホルド6を備えている。ここで、説明の都合上、図1〜図3中に示す矢印Pを空気流通方向とし、後記する実施形態も同様とする。
図1〜図3に示す注液式空気電池C1は、単セル1を複数配列してなるセル集積体Sと、セル集積体Sの上側に配置され且つ電解質用液体2を貯留した貯液タンクTを備えている。また、注液式空気電池Cは、貯液タンクTの下部を開放するタンク開放手段と、貯液タンクTとセル集積体Sとを接続するマニホルド6を備えている。ここで、説明の都合上、図1〜図3中に示す矢印Pを空気流通方向とし、後記する実施形態も同様とする。
単セル1は、図1に示すように、平板状の空気極1Aと、同じく平板状の金属負極1Bとの間に、電解質用液体2の収容部1Cを有しており、複数枚の単セル1と、これらを保持するセルフレームFによってセル集積体Sを構成している。セル集積体Sにおける各単セル1は、図1(B)に示すように、空気流通方向Pに直交する方向に所定間隔をおいて配列され、隣接する単セル1同士の間に空気流路Afを形成している。空気流路Afには隣接する単セル同士を電気的に接続する集電体(図示せず)を形成している。このようなセル集積体Sは、組電池と称することもある。
フレームFは、各単セル1の上端部及び下端部、空気流通方向Pの前後端部、並びに隣接する単セル1同士の上端部間を液密的(水密的)に閉塞すると共に、上端部に、各単セル1の夫々の収容部1Cに連通する注液口Hと、夫々の収容部1Cへの液戻り口Rを備えている。各注液口Hは空気流通方向Pに直交する方向に一列に配置してあり、各液戻り口Rも同様に一列に配置してある。
これにより、各単セル1の収容部1Cは、上下及び空気流通方向Pの前後においてフレームFにより閉塞され、夫々の注液口H及び液戻り口Rにより上側のみに開放されている。このようにして、セル集積体Sは、電解質用液体2の収容部1Cを有する単セル1を複数配列してなり且つ夫々の収容部1Cへの注液口H及び液戻り口Rを上部に配置した構成になっている。
また、セル集積体Sは、その上部に傾斜を有しており、この実施形態では、空気流通方向Pの上流側を下位側とし且つ下流側を上位側とする傾斜である。そして、セル集積体Sは、傾斜の下位側に夫々の収容部1Cへの注液口Hを配置すると共に、傾斜の上位側に夫々の収容部1Cへの液戻り口Rを配置している。
さらに、セル集積体Sは、各単セル1の収容部1Cの上側、より具体的には空気極1A、金属負極1B及び収容部1Cの上側で、注液口Hとの間に、余剰の電解質用液体2を収容する余剰保持領域9を有している。
単セル1を構成する空気極1Aは、詳細な図示を省略したが、正極部材と、最外層に配置した液密通気部材で構成してある。正極部材は、例えば、触媒成分、及び触媒成分を担持する導電性の触媒担体を含むものである。
正極用触媒成分としては、具体的には、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、等の金属及びこれらの合金、これらの金属の酸化物、複合酸化物、硫化物、ポルフィリン型有機金属、フタロシアニン型有機金属、WC、Mo2C、カーボンブラックや活性炭などの炭素など公知のものを使用することができる。触媒成分の形状や大きさは、特に限定されるものではなく、従来公知の触媒成分と同様の形状及び大きさを採用することができる。
触媒担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、及び触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。触媒担体としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、充分な電子伝導性を有しているものであればよく、公知のカーボンを使用することができる。
液密通気部材は、電解質用液体に対して液密性を有し、且つ酸素に対して通気性を有する部材である。この液密通気部材は、電解質用液体が外部へ漏出するのを阻止し得るように、ポリオレフィンやフッ素樹脂などの撥水膜を用いており、一方、正極部材に酸素を供給し得るように多数の微細孔を有している。
単セル1を構成する金属負極1Bは、標準電極電位が水素より卑な金属単体又は合金から成る負極活物質を含むものである。標準電極電位が水素より卑な金属単体としては、例えば亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)などを挙げることができる。また、合金としては、これらの金属元素に1種以上の金属元素又は非金属元素を加えたものを挙げることができる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、空気電池に適用される従来公知の材料を適用することができる。
電解質用液体2は、電解液そのものや、単セル1の内部に混入させた固体の電解質を溶融するための液体(水)などを含むものである。電解液の場合には、例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液を適用することができるが、これらに限定されるものではなく、空気電池に適用する従来公知の電解液を用いることができる。
貯液タンクTは、筐体3に変形可能な内部タンク4を収容した構造である。この実施形態の筐体3は、やや扁平な直方体形状であり、図2(A)にも示すように、底面に、フレームFの注液口H群の上側に相対向する開口部3Cを有し、この開口部3Cに、タンク開放手段を構成する可動板5が組み付けてある。開口部3Cは、筐体3の底面の幅方向(空気流通方向Pに直交する方向)にわたる水平部と、筐体3の両側面に連続する垂直部を有している。
他方、可動板5は、開口部3Cの幅に対応する幅寸法と、筐体3の底面の幅よりも長い長手寸法を有する板部材であり、中央に、スリット5Aを有している。この可動板5は、開口部3Cの両側の垂直部で上方移動が規制され、図1(A)に示すように、筐体3の底部を貫通した状態になる。
内部タンク4は、例えば樹脂製の袋体である。この場合、使用する樹脂は、自在に変形可能なものであれば特に制限はないが、電解質用液体(電解液)2がアルカリ水溶液である場合には、少なくとも電解質用液体2と接触する部分に耐アルカリ性樹脂を用いる必要がある。具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、及びテフロン(登録商標)などが挙げられる。この内部タンク4は、変形した際に破けて液漏れが起きるような材質であってはならない。
この実施形態の内部タンク4は、電解質用液体2を貯留すると共に、図1(A)に示すように、筐体3の開口部3Cに組み付けた可動板5により、部分的に持ち上げられた状態で筐体3に収容されている。また、内部タンク4は、例えば、ベローズ状に成形したり適当な折り目を設けたりして収縮変形し易い構成にし、収縮変形した際に容積が極力小さくなる構成であることが非常に有効である。なお、上記の内部タンク4の収縮変形とは、その容積を減少させるように変形することであり、伸縮性を有する素材を必須要件としたものではない。
タンク開放手段は、この実施形態では、貯液タンクTの内部タンク4の下部を開放する手段であって、前記可動板5、一対の電磁アクチュエータ7,7、及び複数の開封口金8により構成してある。電磁アクチュエータ7,7は、図1(B)に示すように、空気流通方向Pに対して筐体3の左右両側に固定してあり、下向きにした出力軸を可動板5の端部に連結して、可動板5を上昇限に保持している。
開封口金8は、図2(B)〜(D)に示すように、角筒状の部材であり、上端部に鋸刃状の切刃8Aを有している。開封口金8は、セル集積体SのフレームFの上面において、可動板5のスリット5Aに対応する範囲内に複数個(図示例では5個)が直列配置してある。ここで、スリット5Aは、先述した筐体3の開口部3Cと可動板5との位置関係により、フレームFの注液口H群の範囲内にある。また、開封口金8は、切刃8Aが可動板5の上面よりも下位側に位置している。この際、内部タンク4は、先述の如く可動板5により部分的に持ち上げられているので、開封口金8の切刃8Aとは離間している。なお、図1(B)には、一部の開封口金8のみを拡大して図示している。
上記のように、注液式空気電池C1は、貯液タンクTが、筐体3に変形可能な内部タンク4を収容した構造を有している。そして、注液式空気電池C1は、タンク開放手段が、内部タンク4の底部を部分的に持ち上げて保持する可動板5と、可動板5を下降させる電磁アクチュエータ7と、マニホルド6内に配置され且つ可動板5とともに下降した内部タンク4の底部を切断開放する開封口金8を備えた構成になっている。
マニホルド6は、貯液タンクTとセル集積体Sとを液密的に接続する変形自在な環状体であり、電解質用液体2に対する耐性を確保するために、内部タンク4と同じ材料で形成することができる。
より具体的には、マニホルド6は、その上端部が、タンク開放手段による貯液タンクTの開放部を包囲する部分、すなわち内部タンク4の底面において開封口金8との相対向部を包囲する部分に対して液密的に接着してある。また、マニホルド6は、同じく上端部が、可動板5の上面にも接着してあり、この際、内部タンク4の底部とともに可動板5の上面に接着してある。このマニホルド6は、中間部が、可動板5のスリット5Aの内側を通過している。
さらに、マニホルド6は、下端部が、セル集積体Sの注液口H群及び液戻り口R群を包囲する部分に対して液密的に接着してある。この実施形態では、マニホルド6は、下端部全周に枠部6Aを有し、この枠部6Aをセル集積体Sの上端部全周に接着固定している。このようにして、マニホルド6は、タンク開放手段による貯液タンクTの開放部からセル集積体Sの各注液口Hに至る間に注液用の閉空間を形成している。なお、タンク開放手段による貯液タンクTの開放部は、筐体3の開口部3Cの位置で形成される。
さらに、マニホルド6は、セル集積体Sにおいて発生したガスを上方に排出するためのガス抜き部10を有している。このガス抜き部10は、適宜曲成したパイプにより形成してあり、空気流通方向Pの下流側において、セル集積体Sの前記液戻り口Rの上側に配置してある。そして、ガス抜き部10は、タンク開放手段(5,7,8)による貯液タンクTの開放部(筐体3の開口部3C)よりも下位側に配置したガス入口10Aと、前記開放部よりも上位側に配置したガス出口10Bを有している。
さらに、注液式空気電池C1は、セル集積体S及び貯液タンクTを収容する分配ケース11を備えている。分配ケース11は、その上部において、空気流通方向Pの上流側(図1(A)中で右側)に、空気の導入口11Aを有すると共に、他方側に、排出口11Bを有している。図示例の分配ケース11は、導入口11Aから単セル1同士の間の夫々の空気流路Afを経て排出口11Bに至る流通経路を形成している。
また、注液式空気電池C1は、上記の分配ケース11を備えた構成において、前記ガス抜き部10が、分配ケース11の排出口11Bに配置してあり、この実施形態では、ガス抜き部10のガス出口10Bが、排出口11Bの同軸線上に向けて配置してある。
なお、注液式空気電池C1は、上記した構成のほか、分配ケース11の導入口11Aの入口側に配置するブロワ(図示せず)、電磁アクチュエータ7及びブロワ等を制御するコントローラ、及び操作用のスイッチ類などを含む構成にすることができる。また、貯液タンクTに貯留された電解質用液体2の量は、各単セル1の収容部1C及び余剰保持領域9の総容積、若しくは総容積よりも若干少ない量である。
上記構成を備えた注液式空気電池C1は、例えば、自動車の補助電源として車載され、運転席近傍に配置したスイッチにより起動させることができる。すなわち、注液式空気電池C1は、両電磁アクチュエータ7を作動させると、図1の状態から図3の状態に移行するように、両電磁アクチュエータ7の出力軸が下方に移動して可動板5が下降する。すると、可動板5とともに内部タンク4の底部が下がり、可動板5の下降動作に相対してスリット5Aから開封口金8が突出し、内部タンク4の底部を開封口金8の切刃8Aにより切断して開放する。この際、開封口金8は、角筒状であるから、電解質用液体2の流通を何ら妨げることはない。
これにより、注液式空気電池C1は、内部タンク4内の電解質用液体2がマニホルド6内を流下して、フレームFの各注液口Hから各単セル1の収容部1Cへの注液が開始される。この際、マニホルド6は、貯液タンクTの底部の一カ所から流出した電解質用液体2を各単セル1の収容部1Cに分配する機能、電解質用液体2の液漏れや飛散を阻止する機能を有する。
また、注液式空気電池C1は、上記の如く各単セル1の収容部1Cに電解質用液体2が供給されると、外部や空気流路Afに面している空気極1Aには空気(酸素)が供給されているので、速やかに発電(放電)を開始することとなる。ここで、注液式空気電池C1は、上記の如く注液を開始すると、セル集積体Sにおいて自己放電副反応により水素ガスが発生する。
これに対して、注液式空気電池C1は、マニホルド6が、セル集積体Sにおいて発生したガスを上方に排出するためのガス抜き部10を有するので、そのガス抜き部10から水素ガスが排出されることとなり、注液開始に伴い発生した水素ガスが貯液タンクTに流入して溜まるのを防ぐことができる。なお、本発明の注液式空気電池C1は、貯液タンクTにも僅かな量の水素ガスが流入する可能性はあるが、大量の水素ガスが溜まることはない。
また、上記の注液式空気電池C1は、前記ガス抜き部10が、貯液タンクTの開放部よりも下位側に配置したガス入口10Aと、前記開放部よりも上位側に配置したガス出口10Bを有するものとしたので、例えば、振動や加速度が作用する走行中に注液並びに発電を開始しても、ガス抜き部10から電解質用液体2が漏れるような事態を未然に阻止することができる。
さらに、上記の注液式空気電池C1は、セル集積体S、その上部の傾斜の下位側に注液口Hを配置すると共に、傾斜の上位側に液戻り口Rを配置し、液戻り口Rの上側にガス抜き部10を配置したので、セル集積体Sの内部で発生した水素ガスが、上部の傾斜に沿って移動して、上位側の液戻り口Rから排出され、その上側のガス抜き部10から円滑に排出されることとなる。
さらに、上記の注液式空気電池C1は、分配ケース11の排出口11Bに前記ガス抜き部10を配置しいるので、分配ケース11内に流通する空気、すなわち導入口11Aからセル集積体Sの空気流路Afを経て排出口11Bから排出される空気により、ガス抜き部10から出た水素ガスを速やかに外部に排出することができる。
ここで、ガス抜き部10のガス出口10Bは、分配ケース11の排出口11B内に向けて配置してあれば水素ガスの排出が可能である。ただし、同ガス出口10Bは、少なくとも貯液タンクTの開放部よりも上位側とすることで、上述の如く電解質用液体2の漏れを防止し得るものとなり、さらには、図示例のように、排出口11Bの同軸線上に向けて配置すれば、分配ケース11内を流通する空気による水素ガスの排出がより円滑になる。
つまり、図示例の分配ケース11では、セル集積体Sの収容空間と排出口11Bとの間に直角のコーナー部分があるので、空気の入り口温度(外気温)の変動や、放電出力の変動に伴いガス流量が変動したり、振動・傾斜がある場合に、排出口11Bに流入した空気が、コーナー部分から離れるように蛇行して流れる可能性がある。これに対して、空気流速が最も速くなる領域に、排出口11Bを配置すれば、空気の流れが変動して蛇行しても水素ガスを円滑に排出することができる。電池システムの設置場所に応じて排出口11Bの形状を上方へ設置するなど異なる形状とした場合でも、排出口11Bの配管中の空気ガス流速が最も速い領域にガス出口10Bを設置することが良好である。
さらに、上記の注液式空気電池C1は、セル集積体Sと、電解質用液体2の貯液タンクTと、タンク開放手段(5,7,8)と、マニホルド6を備えたことから、電解質用液体2の注液の自動化が容易であり、振動、傾斜及び加速度が作用するような状況下であっても、液漏れを生じることなく注液を確実に行うことができ、速やかに発電を開始し得る。したがって、注液式空気電池C1は、自動車用の補助電源等に使用した場合、走行中でも確実に注液を行うことができ、しかも、液漏れを確実に阻止し得るので、強アルカリ性の電解質用液体2を用いる高出力の空気電池への適用に非常に有効である。
さらに、注液式空気電池C1は、貯液タンクTが、筐体3に変形可能な内部タンク4を収容した構造を有しており、タンク開放手段が、可動板5と、電磁アクチュエータ7と、マニホルド6内に配置された開封口金8を備えていることから、可動板5や電磁アクチュエータ7といった可動部が電解質用液体2に全く触れない構造になり、長期保存した場合でも確実な開放動作を実現することができる。
なお、タンク開放手段としては、開封口金8の方がアクチエータにより上部へ移動して内部タンク4を開封する機構とすることもできる。また、可動式の切刃を備えた構成や、貯留タンクT全体を下降させてその下部を開放する構成などを採用することも可能であるが、上記実施形態のような内部タンク4、可動板5、電磁アクチュエータ7及び開封口金8を採用すれば、上記の如く可動部が電解質用液体2に触れない構造にし得るうえに、小さい駆動力で内部タンク4を開放することができ、システム構造の小型軽量化などに貢献することができる。
さらに、注液式空気電池C1は、上記の変形可能な内部タンク4を備えているので、可動板5の下降に伴って、電解質用液体2の重量により内部タンク4の底部を下降させることも可能である。これに対して、この実施形態の注液式空気電池C1は、先述の如く、マニホルド6の上端部とともに内部タンク4の底部を可動板5の上面に接着しているので、可動板5とタンク底部とが一体的に下降することとなり、開封口金8によって内部タンク4の底部をより確実に切断開放することができる。
さらに、注液式空気電池C1は、セル集積体Sが、各単セル1の収容部1Cの上側に、余剰の電解質用液体2を収容する余剰保持領域9を有していることから、電解質用液体2が、マニホルド6内に溢れることなく各単セル1に分配される。これにより、電解質用液体2を各単セル1にほぼ均等に分配することができる。さらに、電解質用液体2を余すことなく各単セル1内に注液することにより、隣接する単セル1同士の間の電解質用液体2による短絡、いわゆる液絡を防ぐことができ、漏電による発電損失や不要な発熱を抑制することができる。
また、上記の注液式空気電池C1は、セル集積体Sの上部を傾斜させて、その上位側に液戻り口Rを配置し且つ下位側に注液口Hを配置したので、貯液タンクTからマニホルド6に流出した電解質用液体2が、主に注液口Hから収容部1Cに供給される。この際、注液式空気電池C4は、電解質用液体2の分配の不均衡が生じた場合には、当然、下位側の注液口Hからマニホルド6内に電解質用液体2が溢れることとなるが、とくに、振動、傾斜及び加速度が作用した場合には、注液口Hよりも上位側にある液戻り口Rが余剰の電解質用液体2を排出する補償機能を発揮し、マニホルド6に電解質用液体2を溢れさせつつ、不足している単セル1に分配する。つまり、振動、傾斜及び加速度の作用を受ける車載用の電源により一層好適なものとなる。
なお、上記の注液式空気電池C1は、上記の実施形態では、セル集積体Sの上部を一方向の傾斜面としたが、複数の傾斜面を設けることや、上部内側のみに傾斜面を設けることも可能であるし、階段状の段差を設けることも可能である。ただし、電解質用液体2が水素ガスの流動性を考慮すれば、段差よりも傾斜面の方がより好ましい。
〈第2実施形態〉
図4及び図5は、本発明の注液式空気電池の第2及び第3の実施形態を説明する図である。なお、以下の各実施形態において、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図4及び図5は、本発明の注液式空気電池の第2及び第3の実施形態を説明する図である。なお、以下の各実施形態において、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図4に示す注液式空気電池C2は、第1実施形態で説明したもの(図1参照)と同等の基本構成を備えており、とくに、分配ケース11が、排出口11B内を流通する流体を加速させる加速部12を備えており、ガス抜き部10が、加速部12にガス出口10Bを向けて配置した構成である。
この実施形態における加速部12は、排出口11Bの途中に一体成形したベンチュリ管である。すなわち、排出口11は、加速部12により一部の内径が絞られた形態になっている。他方、ガス抜き部10は、中間を90度曲成したパイプから成り、加速部12の入口側において、その同軸線上にガス出口10Bを配置している。
上記の注液式空気電池C2は、先の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができるうえに、発電中においては、分配ケース11の排出口11Bにおいて、加速部12により空気の流速が高くなり(圧力が低くなり)、これによりガス抜き部10を通った水素ガスが吸い出されるように排出される。つまり、水素ガスの排出がより一層速やかになる。
また、上記の注液式空気電池C2は、導入口11Bから排出口11Bに至る分配ケース11内の流路において、排出口Bに加速部12があるので、圧力損失分布が流路の下流側で大きくなる。これにより、単セル1同士の間に形成した複数の空気流路Afに対する空気の分配量のばらつきを小さくできるという効果がある。
〈第3実施形態〉
図5に示す注液式空気電池C3は、第2実施形態で説明したもの(図4参照)と同等の基本構成を備えており、とくに、貯液タンクTの内部タンク4を加圧して収縮変形させるタンク加圧手段を備えている。
図5に示す注液式空気電池C3は、第2実施形態で説明したもの(図4参照)と同等の基本構成を備えており、とくに、貯液タンクTの内部タンク4を加圧して収縮変形させるタンク加圧手段を備えている。
貯液タンクTを構成する筐体3は、空気流通方向Pの上流側(図5(A)中で右側)に、筐体3の内部に空気を導入するための導入管3Aを有すると共に、他方側に、筐体3の内部の空気を排出するための排出管3Bを有している。前記導入管3A及び排出管3Bは、例えば同軸線上に配置され、且つ分配ケース11の導入口11A及び排出口11B内に夫々配置されている。
このタンク加圧手段は、筐体3の内部に空気を導入することにより内部タンク4を加圧して収縮変形させる手段であり、上記の導入管3A及び排出管3Bのほか、導入管3Aの入口側に配置したブロワ(図示せず)等を含む構成にすることができる。また、この実施形態では、筐体3の排出管3Bに、空気流量を調整する調圧弁15を備えている。
上記の注液式空気電池C3は、先の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができ、とくに、調圧弁15を開放状態にして起動する。このとき、注液式空気電池C3は、分配ケース11の導入口11Aから空気を導入し、加圧空気用の経路(11A,3A,3,3B,11B)と、発電空気用の経路(11A,Af,11B)とに空気を分配して流通させた後、タンク開放手段により、タンクを開封する。
これにより、注液式空気電池C3は、内部タンク4を空気により加圧して電解質用液体2を押し出すようにすることで、セル集積体Sへの注液を促進させると共に、同セル集積体Sに空気(酸素)を供給する。この際、注液式空気電池C3は、調圧弁15の開度を調整することで、筐体3と内部タンク4の間に流れる空気流量を制御することが可能である。
また、この実施形態の注液式空気電池C3は、電解質用液体2の注液が終了したところで、調圧弁15を絞り、又は閉塞する。つまり、電解質用液体2の注液後には、筐体3の内部を流れる空気が発電に寄与しないリーク流量分になるので、調圧弁15を絞る又は閉塞することで、空気のリーク量を減少又は無くし、導入した空気をセル集積体Sに効率良く供給することができる。なお、注液開始以降は、先の実施形態と同様に、ガス抜き部10により水素ガスの排出を行う。
しかも、上記の注液式空気電池C3は、導入した空気のリーク量を大幅に減少させることで、導入口11Aの入口側に配置したブロワに加わる補機損失を低減し、システム効率を向上させることができる。さらに、セル集積体Sが、隣接する単セル1同士の間のピッチ(L)を狭くして、出力密度(kW/L)や発電密度(kWh/L)を高めた高密度セル集積体である場合でも、簡便な機構により、注液の調整や、発電時における空気のリーク量の抑制を行うことができる。
さらに、上記の注液式空気電池C3は、発電に不可欠である空気を分配ケース11に導入して、その一部を内部タンク4の加圧媒体として利用するので、非常に簡単な構造でありながら、電解質用液体2の注液を促進する機能と、各単セル1への充分な空気(酸素)供給の機能とを両立させることができる。
本発明の注液式空気電池は、その構成が上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各部位の形状、個数及び材料などの構成の細部を適宜変更することが可能であり、各実施形態の構成を組み合わせることもできる。
C1〜C3 注液式空気電池
H 注液口
R 液戻り口
S セル集積体
T 貯液タンク
1 単セル
1C 収容部
2 電解質用液体
3 筐体
3A 導入管(タンク加圧手段)
3B 排出管(タンク加圧手段)
4 内部タンク
6 マニホルド
10 ガス抜き部
10A ガス入口
10B ガス出口
11 分配ケース
11A 導入口
11B 排出口
12 加速部
H 注液口
R 液戻り口
S セル集積体
T 貯液タンク
1 単セル
1C 収容部
2 電解質用液体
3 筐体
3A 導入管(タンク加圧手段)
3B 排出管(タンク加圧手段)
4 内部タンク
6 マニホルド
10 ガス抜き部
10A ガス入口
10B ガス出口
11 分配ケース
11A 導入口
11B 排出口
12 加速部
Claims (6)
- 電解質用液体の収容部を有する単セルを複数配列してなり且つ夫々の収容部への注液口を上部に配置したセル集積体と、
セル集積体の上側に配置され且つ電解質用液体を貯留した貯液タンクと、
貯液タンクの下部を開放するタンク開放手段と、
タンク開放手段による貯液タンクの開放部からセル集積体の各注液口に至る間に注液用の閉空間を形成するマニホルドを備え、
マニホルドが、セル集積体において発生したガスを上方に排出するためのガス抜き部を有することを特徴とする注液式空気電池。 - 前記ガス抜き部が、貯液タンクの開放部よりも下位側に配置したガス入口と、前記開放部よりも上位側に配置したガス出口を有することを特徴とする請求項1に記載の注液式空気電池。
- セル集積体が、その上部に傾斜を有しており、傾斜の下位側に夫々の収容部への注液口を配置すると共に、傾斜の上位側に夫々の収容部への液戻り口を配置しており、
前記ガス抜き部が、液戻り口の上側に配置してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の注液式空気電池。 - 空気の導入口及び排出口を有し且つセル集積体及び貯液タンクを収容する分配ケースを備え、
前記ガス抜き部が、分配ケースの排出口に配置してあることをを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の注液式空気電池。 - 前記分配ケースが、排出口内を流通する流体を加速させる加速部を備えており、
前記ガス抜き部が、加速部にガス出口を向けて配置してあることを特徴とする請求項4に記載の注液式空気電池。 - 貯液タンクが、筐体に変形可能な内部タンクを収容した構造を有しており、
内部タンクを加圧して収縮変形させるタンク加圧手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の注液式空気電池。
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