第1の発明は、鍋を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電力を供給するインバータ手段と、前記インバータ手段を構成するスイッチング手段と、交流電源を整流し前記インバータ手段に電力供給する整流手段と、前記交流電源より供給される入力電流を検知する入力電流検知手段と、前記入力電流の目標値を設定する入力電流設定手段と、前記スイッチング手段のオン時間を設定するオン時間設定手段と、一定の時間におけるオン時間の変化量の最大値を設定する最大オン時間変化量設定手段と、前記入力電流検知手段の出力値と前記入力電流設定手段の出力値に応じて前記オン時間設定手段のオン時間と前記スイッチング手段の通電動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記オン時間設定手段により設定したオン時間の一定時間における変化量が前記最大オン時間変化量設定手段の設定オン時間以上の変化量になると、前記スイッチング手段の通電動作を停止するものである。
これによって、交流電源の電圧が低下するとスイッチング手段のオン時間設定手段により設定したオン時間が大きくなるため、設定したオン時間の一定時間における変化量が、前記最大オン時間変化量設定手段の設定オン時間以上のオン時間になると、交流電源電圧が瞬間に一定以下の電圧値まで低下したと制御手段は判断し、前記スイッチング手段の通電動作を停止するので、交流電源の電圧を検出するための検知回路や、交流電源電圧の異常電圧を検知する電源異常検知回路を必要とせず、交流電源電圧の瞬間的な異常低下を検知し、交流電源電圧が正常に戻った場合に、炊飯器の内部で使用電子部品や半導体部品が破壊したり、劣化したり、寿命が短くなることを防止できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の主要部システム構成図である。
図1において、鍋1は、加熱手段である加熱コイル2と磁気結合している。共振用コンデンサ3は、加熱コイル2に並列接続しており、加熱コイル2と並列共振回路を構成している。
スイッチング手段であるスイッチング素子4は、MOSFETやIGBTなどの半導体素子と、この半導体素子に逆接続した逆接続ダイオードで構成されている。本実施の形態において、加熱コイル2に高周波電流を供給するインバータ手段であるインバータ回路5は共振用コンデンサ3,スイッチング素子4で構成されている。
整流手段6は、整流素子であるダイオードブリッジ7とチョークコイル8と高周波平滑用コンデンサ9で構成されており、交流電源10を整流平滑し、略直流電圧をインバータ回路5に供給する。
また、チョークコイル8は、インバータ回路5の高周波電流成分が交流電源10側に高周波ノイズとして漏れることを防止している。
入力電流検知手段11は、カレントトランス12、抵抗13、ダイオードブリッジ14、電解コンデンサ15で構成されており、交流電源10と整流手段6の間に接続されたカレントトランス12の交流出力信号をダイオードブリッジ14,電解コンデンサ15で構成する整流平滑回路で直流信号に変換している。
抵抗13は、カレントトランス12の出力電圧値を調整するためのものである。この入力電流検知手段11により、前記交流電源10より供給される入力電流Iinを検出することができるのである。
駆動手段16は、NPNトランジスタとPNPトランジスタを使用したプッシュプル回路で構成されており、マイクロコンピュータ17内のPWM回路18がハイパルスを出力している時にスイッチング素子4を構成しているIGBTにハイ電圧を出力する。
このハイ電圧がスイッチング素子4に印加されている間、スイッチング素子4は導通状態となり、高周波平滑用コンデンサ9に充電されたエネルギーを加熱コイル2に高周波電流として供給する。
マイクロコンピュータ17は、内部のROMに予め複数の入力電流Iinの目標値に対応する8ビットの設定値を記憶しておき、炊飯工程,鍋の大きさなどの条件ごとに所定の目標値に対応した8ビットの設定値を出力する入力電流設定手段19と、スイッチング素子4のスイッチングオン時間を設定するオン時間設定手段20と、入力電流検知手段11の出力電圧をAD変換器に入力し、その入力値と入力電流設定手段19の出力値を比較してオン時間設定手段20で設定するスイッチング手段のオン時間を制御する制御手段21と、オン時間設定手段20で設定したオン時間をハイパルスで出力するPWM回路18と、スイッチング手段であるスイッチング素子4のオン時間を設定するオン時間設定手段20の設定オン時間の最大値を記憶する最大オン時間設定手段22を備えている。
制御手段21は、オン時間設定手段20で設定したオン時間が、最大オン時間設定手段
22に設定されたオン時間以上に設定されると、PWM回路18がハイパルスを出力するのを禁止し、スイッチング素子4のスイッチング通電動作を停止する。
また、同期信号出力手段23は、スイッチング手段であるスイッチング素子4のIGBTのコレクタ電圧を検知する第一の抵抗分圧回路24と、整流手段6の出力電圧を検知する第二の抵抗分圧回路25と、第一の抵抗分圧回路24と第二の抵抗分圧回路25の出力を比較する比較回路26により構成されている。
比較回路26はコンパレータで構成され、第一の抵抗分圧回路24の出力が第二の抵抗分圧回路25の出力より大の時はローを出力し、第一の抵抗分圧回路24の出力が第二の抵抗分圧回路25の出力より小の時にはハイを出力する。
この同期信号出力手段23の出力は、PWM回路18に入力し、PWM回路18は、この出力信号のロー出力からハイ出力に切り替るのを検知し、ハイパルスを出力する。なお、第一の抵抗分圧回路24の分圧比と第二の抵抗分圧回路25の分圧比は異なっている。これは、スイッチング素子4のスイッチングタイミングを最適にするためである。
以上のように構成された炊飯器について、図2及び図3を参照しながら以下その動作、作用を説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器のスイッチング素子4及び各構成手段の動作時の電圧電流の関係を示す動作タイミングチャートである。
図2(a)はスイッチング手段を構成するスイッチング素子4(IGBT)のコレクタ電圧(Vce)、図2(b)はスイッチング素子4(IGBT)の電流(Ic)、図2(c)は第一の抵抗分圧回路24の出力電圧(Vce2)、図2(d)は第二の抵抗分圧回路25の出力電圧(Vin2)、図2(e)は比較回路26の出力電圧、図2(f)はPWM回路18の出力を示している。
図2(f)に示すようにPWM回路18がハイ信号を出力すると、駆動手段16を介してスイッチング素子4がオンし、加熱コイル2を通じて電流が流れる。この時、スイッチング素子4に流れる電流(Ic)は図2(b)のように、時間とともに上昇する。スイッチング素子4に流れる電流の時間変化量dI/dtは加熱コイル2に印加される電圧VLと加熱コイルのインダクタンスをLとすると、
[数式1] dI/dt=VL/L
となる。
オン時間がオン時間設定手段20により設定されたオン時間(Ton)になると、PWM回路18はロー信号を出力し、駆動手段16を介してスイッチング素子4がオフになる。
これにより、加熱コイル2に流れる電流が共振コンデンサ3に流れ、図2(a)に示すようにスイッチング素子4(IGBT)のコレクタ電圧(Vce)が上昇する。
第一の抵抗分圧回路24の出力電圧(Vce2)は図2(c)のようにスイッチング素子4のコレクタ電圧(Vce)に比例した波形を示している。
スイッチング素子4のコレクタ電圧(Vce)が高くなると、第一の抵抗分圧回路24の出力電圧(Vce2)が第二の抵抗分圧回路25の出力電圧(Vin2)より高くなり、図2(e)に示すように比較回路26の出力がローとなる。
その後、加熱コイル2と共振コンデンサ3の共振によりスイッチング素子4のコレクタ電圧(Vce)が低下し、第一の抵抗分圧回路24の出力電圧(Vce2)が第二の抵抗分圧回路25の出力電圧(Vin2)より小さくなり、比較回路26の出力がハイとなる。図2(f)に示すようにPWM回路18は、比較回路26のハイ出力を受けて、再びハイ信号を出力する。
この動作を繰り返すことで、スイッチング素子4を高速でスイッチングし、加熱コイル2に高周波電力を供給することができ、スイッチング素子4のオン時間を大きくすると、スイッチング素子4の電流(Ic)と加熱コイル2に流れる電流が大きくなり、高周波電力すなわち、入力電流Iinが大きくなる。それと同時に、スイッチング素子4のコレクタ電圧(Vce)も高くなる。
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるスイッチング手段のオン時間と入力電流の関係を示すグラフであり、交流電源10より供給される入力電流Iinとオン時間設定手段20により設定されたオン時間(Ton)の関係を示すグラフである。
交流電源10の電源電圧Vinが一定電圧(例えばVin=100V)では、入力電流Iinは、オン時間設定手段20で設定されるオン時間(Ton)が長いほど、入力電流Iinが大きくなることを示している。
具体的には、交流電源電圧Vin=100Vにおいて入力電流Iinを12A供給するためには、オン時間はTon1(点a)が必要であり、オン時間がTon2まで伸びると、入力電流Iinは14A(点b)まで上昇する。
また、交流電源電圧(Vin)が低いと、同じオン時間(Ton)では、入力電力(Iin)が低くなることを示している。具体的には、交流電源電圧Vin=80Vにおいて、交流電源電圧Vin=100Vで入力電流Iinを12A供給するために必要であったオン時間Ton1(点a)では、入力電流(Iin)は、Iin=10A(点c)まで低下する。
すなわち、交流電源電圧Vin=80Vにおいて、入力電流(Iin)を12Aまで供給するためには、オン時間(Ton)をTon2(点d)まで延ばす必要がある。
ここで、交流電源10が、電源異常により、定格電圧100Vから80Vまで低下し、その後、定格電圧まで復帰した場合の、オン時間(Ton)と入力電流(Iin)の関係を説明する。
交流電源電圧(Vin)が100Vで、炊飯器が炊飯動作を開始し、入力電流(Iin)が12Aになるように、入力電流設定手段19の目標値が設定されている場合に、オン時間設定手段20は、オン時間(Ton)をTon1(点a)に設定して、PWM回路18にオン時間を出力し、そのオン時間Ton1の間、駆動手段16により、スイッチング手段であるスイッチング素子4を通電する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が80Vまで低下すると、低下した瞬間はオン時間Ton1でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は10A(点c)まで低下する。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも低下したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定
手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon2(点d)まで延ばす。
その後、このオン時間Ton2(点d)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が元の定格電圧100Vに復帰すると、復帰した瞬間は、オン時間Ton2でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は14A(点b)まで上昇する。
このとき、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4には、入力電流(Iin)が14Aになるように、電流(Ic)とコレクタ電圧(Vce)が印加されてしまう。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも上昇したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon1(点a)まで短くする。
その後、このオン時間Ton1(点a)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
このように、交流電源10が電源異常により、交流電源電圧(Vin)が定格電圧100Vから80Vまで低下し、その後、定格電圧まで復帰した場合、入力電流Iinは、入力電流設定手段19により設定されている目標値12Aに対して、復帰時に一瞬ではあるが、14Aまで上昇する。
そして、この状態では、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4、整流手段6を構成するダイオードブリッジ7とチョークコイル8と高周波平滑用コンデンサ9等の部品は、許容電流(たとえばIc)と耐圧(たとえばコレクタ電圧Vce)以内で動作する設計としている。
一方、交流電源10が、電源異常により、定格電圧100Vから70Vまで低下し、その後、定格電圧まで復帰した場合の、オン時間(Ton)と入力電流(Iin)の関係を説明する。
交流電源電圧(Vin)が100Vで、炊飯器が炊飯動作を開始し、入力電流(Iin)が12Aになるように、入力電流設定手段19の目標値が設定されている場合に、オン時間設定手段20は、オン時間(Ton)をTon1(点a)に設定して、PWM回路18にオン時間を出力し、そのオン時間Ton1の間駆動手段16により、スイッチング素子4を通電する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が70Vまで低下すると、低下した瞬間はオン時間Ton1でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は9A(点e)まで低下する。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも低下したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon3(点f)まで延ばす。
その後、このオン時間Ton3(点f)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が元の定格電圧100Vに復帰すると、復帰した瞬間は、オン時間Ton3でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は15.5A(点g)まで上昇する。
このとき、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4には、入力電流(Iin)が15.5Aになるように、電流(Ic)とコレクタ電圧(Vce)が印加されてしまう。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも上昇したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon1(点a)まで短くする。その後、このオン時間Ton1(点a)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
このように、交流電源10が電源異常により、交流電源電圧(Vin)が定格電圧100Vから70Vまで低下し、その後、定格電圧まで復帰した場合、入力電流Iinは、入力電流設定手段19により設定されている目標値12Aに対して、復帰時に一瞬ではあるが、15.5Aまで上昇する。
そして、この状態では、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4、整流手段6を構成するダイオードブリッジ7とチョークコイル8と高周波平滑用コンデンサ9等の部品は、許容電流(たとえばIc)と耐圧(たとえばコレクタ電圧Vce)以内で動作させる設計ができなくなる。
具体的には、スイッチング素子4のコレクタ電圧(Vce)耐圧保証が1000Vに対して、交流電源10の交流電源電圧(Vin)が定格電圧100V時に入力電流(Iin)を12Aを流すために、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)がTon1でスイッチング素子4をスイッチング動作するとコレクタ電圧(Vce)が750V印加される場合、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)がTon2まで伸びて入力電流(Iin)が14A流れたときには、コレクタ電圧(Vce)が950V印加される。
さらに、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)がTon3まで伸びて入力電流(Iin)が15.5A流れたときには、コレクタ電圧(Vce)が1000V印加されてしまい、コレクタ電圧(Vce)耐圧保証の限界動作となる。
すなわち、オン時間設定手段20で設定されたオン時間(Ton)がTon3まで長くなった場合、スイッチング素子4が破壊する可能性があることを示しているため、そのTon時間(Ton3)ではスイッチング素子4をスイッチング動作しないようにする必要がある。
したがって、最大オン時間設定手段22に設定するオン時間を、上記のオン時間Ton3よりも小さい値であるTon2に設定し、制御手段21は、オン時間設定手段20で設定されたオン時間(Ton)が、最大オン時間設定手段22に設定するオン時間Ton2以上に設定されると、PWM回路18がハイパルスを出力するのを禁止し、スイッチング素子4のスイッチング通電動作を停止する。
以上のように、本実施の形態においては、交流電源10から入力する入力電流Iinを、入力電流設定手段19で設定した電流とするように、入力電流検知手段11の出力値と入力電流設定手段19の出力値に応じてオン時間設定手段20のオン時間Tonを変更し、そのTon時間でスイッチング素子4を通電制御し、オン時間設定手段20で設定されたオン時間(Ton)が、最大オン時間設定手段22に設定された一定のオン時間に以上に設定された場合、PWM回路18がハイパルスを出力するのを禁止し、スイッチング素子4のスイッチング通電動作を停止することにより、交流電源10の電圧が低下するとスイッチング素子4のオン時間設定手段20により設定したオン時間が大きくなるため、設定したオン時間が前記最大オン時間設定手段22の設定オン時間以上のオン時間になると、交流電源電圧が一定以下の電圧値まで低下したと制御手段は判断し、その後、交流電源電圧が元の定格電圧に復帰した場合に、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4、整流手段6を構成するダイオードブリッジ7とチョークコイル8と高周波平滑用コンデンサ9等の部品が、性能保証以上で動作しないようにスイッチング素子4の通電動作を停止するので、交流電源の電圧を検出するための検知回路や、交流電源電圧の異常電圧を検知する電源異常検知回路を必要とせず、交流電源電圧の異常低下を検知し、交流電源電圧が正常に戻った場合に、炊飯器の内部で使用電子部品や半導体部品が破壊したり、劣化したり、寿命が短くなることを防止できる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における炊飯器の主要部システム図である。
図4において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、具体的な説明は実施の形態1と同じになるため省略する。
図4において、マイクロコンピュータ17は、内部のROMに予め複数の入力電流Iinの目標値に対応する8ビットの設定値を記憶しておき,炊飯工程,鍋の大きさなどの条件ごとに所定の目標値に対応した8ビットの設定値を出力する入力電流設定手段19と、スイッチング素子4のスイッチングオン時間を設定するオン時間設定手段20と、入力電流検知手段11の出力電圧をAD変換器に入力し、その入力値と入力電流設定手段19の出力値を比較してオン時間設定手段20で設定するスイッチング手段のオン時間を制御する制御手段21と、オン時間設定手段20で設定したオン時間をハイパルスで出力するPWM回路18と、スイッチング素子4のオン時間を設定するオン時間設定手段20の設定オン時間が、一定の時間において変化する量の最大値を設定する最大オン時間変化量設定手段27を備えている。
制御手段21は、オン時間設定手段20で設定したオン時間の変化量が、最大オン時間変化量設定手段27に設定されたオン時間変化量以上の変化量になると、PWM回路18がハイパルスを出力するのを禁止し、スイッチング素子4のスイッチング通電動作を停止する。
以上のように構成された炊飯器について、図5を参照しながら以下その動作、作用を説明する。
図5は、交流電源10より供給される入力電流Iinとオン時間設定手段20により設定されたオン時間(Ton)の関係を示すグラフである。
交流電源10の電源電圧Vinが一定電圧(例えばVin=100V)では、入力電流Iinは、オン時間設定手段20で設定されるオン時間(Ton)が長いほど、入力電流Iinが大きくなることを示している。
具体的には、交流電源電圧Vin=100Vにおいて入力電流Iinを12A供給するためには、オン時間はTon1(点a)が必要であり、オン時間がTon2まで伸びると、入力電流Iinは14A(点b)まで上昇する。
また、交流電源電圧(Vin)が低いと、同じオン時間(Ton)では、入力電力(Iin)が低くなることを示している。具体的には、交流電源電圧Vin=80Vにおいて、交流電源電圧Vin=100Vで入力電流Iinを12A供給するために必要であったオン時間Ton1(点a)では、入力電流(Iin)は、Iin=10A(点c)まで低下する。
すなわち、交流電源電圧Vin=80Vにおいて、入力電流(Iin)を12Aまで供給するためには、オン時間(Ton)をTon2(点d)まで延ばす必要がある。
ここで、交流電源10が、電源異常により、定格電圧100Vから80Vまで低下し、その後、定格電圧まで復帰した場合の、オン時間(Ton)と入力電流(Iin)の関係を説明する。
交流電源電圧(Vin)が100Vで、炊飯器が炊飯動作を開始し、入力電流(Iin)が12Aになるように、入力電流設定手段19の目標値が設定されている場合に、オン時間設定手段20は、オン時間(Ton)をTon1(点a)に設定して、PWM回路18にオン時間を出力し、そのオン時間Ton1の間駆動手段16により、スイッチング素子4を通電する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が80Vまで低下すると、低下した瞬間はオン時間Ton1でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は10A(点c)まで低下する。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも低下したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon2(点d)まで延ばす。その後、このオン時間Ton2(点d)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が元の定格電圧100Vに復帰すると、復帰した瞬間は、オン時間Ton2でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は14A(点b)まで上昇する。
このとき、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4には、入力電流(Iin)が14Aになるように、電流(Ic)とコレクタ電圧(Vce)が印加されてしまう。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも上昇したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon1(点a)まで短くする。
その後、このオン時間Ton1(点a)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
このように、交流電源10が電源異常により、交流電源電圧(Vin)が定格電圧10
0Vから80Vまで低下し、その後、定格電圧まで復帰した場合、入力電流Iinは、入力電流設定手段19により設定されている目標値12Aに対して、復帰時に一瞬ではあるが、14Aまで上昇する。
そして、この状態では、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4、整流手段6を構成するダイオードブリッジ7とチョークコイル8と高周波平滑用コンデンサ9等の部品は、許容電流(たとえばIc)と耐圧(たとえばコレクタ電圧Vce)以内で動作する設計としている。
一方、交流電源10の交流電源電圧(Vin)が定格電圧100Vよりも高い電圧110Vで、炊飯器が炊飯動作している状態で、電源異常により、交流電源電圧(Vin)が110Vから80Vまで低下し、その後、110Vまで復帰した場合の、オン時間(Ton)と入力電流(Iin)の関係を説明する。
交流電源電圧(Vin)が110Vで、炊飯器が炊飯動作を開始し、入力電流(Iin)が12Aになるように、入力電流設定手段19の目標値が設定されている場合に、オン時間設定手段20は、オン時間(Ton)をTon11(点h)に設定して、PWM回路18にオン時間を出力し、そのオン時間Ton1の間駆動手段16により、スイッチング素子4を通電する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が80Vまで低下すると、低下した瞬間はオン時間Ton11でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は9A(点i)まで低下する。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも低下したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon2(点d)まで延ばす。
その後、このオン時間Ton2(点d)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
この状態で、交流電源電圧(Vin)が元の電圧110Vに復帰すると、復帰した瞬間は、オン時間Ton2(点d)でスイッチング素子4を通電するために、入力電流(Iin)は15.4A(点j)まで上昇する。このとき、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4には、入力電流(Iin)が15.4Aになるように、電流(Ic)とコレクタ電圧(Vce)が印加されてしまう。
制御手段21は、入力電力(Iin)が12Aよりも上昇したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon11(点h)まで短くする。その後、このオン時間Ton11(点h)で駆動手段16により、スイッチング素子4を通電動作し、入力電流(Iin)が12Aで動作する。
このように、交流電源10が電源異常により、交流電源電圧(Vin)が電圧110Vから80Vまで低下し、その後、電圧110Vまで復帰した場合、入力電流Iinは、入力電流設定手段19により設定されている目標値12Aに対して、復帰時に一瞬ではあるが、15.4Aまで上昇する。
そして、この状態では、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチン
グ素子4、整流手段6を構成するダイオードブリッジ7とチョークコイル8と高周波平滑用コンデンサ9等の部品は、許容電流(たとえばIc)と耐圧(たとえばコレクタ電圧Vce)以内で動作させる設計ができなくなる。
具体的には、スイッチング素子4のコレクタ電圧(Vce)耐圧保証が1000Vに対して、交流電源10の交流電源電圧(Vin)が定格電圧100V時に入力電流(Iin)を12A流すために、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)がTon1(点a)でスイッチング素子4をスイッチング動作するとコレクタ電圧(Vce)が750V印加される場合、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)がTon2(点b)まで伸びて入力電流(Iin)が14A流れたときには、コレクタ電圧(Vce)が950V印加される。
一方、交流電源10の交流電源電圧(Vin)が電圧110V時に入力電流(Iin)を12A流すために、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)がTon11(点h)でスイッチング素子4をスイッチング動作するとコレクタ電圧(Vce)が780V印加される。
さらに、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)がTon2(点j)まで伸びて入力電流(Iin)が15.4A流れたときには、コレクタ電圧(Vce)が1000V印加されてしまい、コレクタ電圧(Vce)耐圧保証の限界動作となる。
すなわち、オン時間設定手段20で設定されたオン時間(Ton)が一定の時間内にTon11からTon2まで長くなった場合、スイッチング素子4が破壊する可能性があることを示しているため、そのTon時間の変動(Ton2−Ton11)ではスイッチング素子4をスイッチング動作しないようにする必要がある。
したがって、最大オン時間変化量設定手段27に設定するオン時間の変化量を、上記のTon時間の変動(Ton2−Ton11)よりも短い時間TA、たとえば、交流電源10の交流電源電圧(Vin)が定格電圧110Vにおいて、入力電流(Iin)が14A流れるオン時間がTon12(点k)であるときに、TA=(Ton2−Ton12)に設定し、制御手段21は、オン時間設定手段20で設定したオン時間の変化量が、最大オン時間変化量設定手段27に設定されたオン時間変化量TA以上の変化量になると、PWM回路18がハイパルスを出力するのを禁止し、スイッチング素子4のスイッチング通電動作を停止する。
ここで、上記のオン時間変化量を観測する一定時間とは、制御手段21が、上記のように、交流電源電圧(Vin)が110Vから80Vまで低下し、入力電力(Iin)が12Aよりも低下したことを入力電流検知手段11からの出力により検知し、入力電力(Iin)を12Aにするように、オン時間設定手段20のオン時間(Ton)を変動させるため、オン時間をTon2(点d)まで延ばすまでの制御時間以上の時間に設定すればよい。
以上のように、本実施の形態においては、交流電源10から入力する入力電流Iinを、入力電流設定手段19で設定した電流とするように、入力電流検知手段11の出力値と入力電流設定手段19の出力値に応じてオン時間設定手段20のオン時間Tonを変更し、そのTon時間でスイッチング素子4を通電制御し、オン時間設定手段20で設定されたオン時間(Ton)が、最大オン時間変化量設定手段27に設定されたオン時間変化量TA以上の変化量になると、PWM回路18がハイパルスを出力するのを禁止し、スイッチング素子4のスイッチング通電動作を停止する。
これによって、交流電源10の電圧が低下するとスイッチング素子4のオン時間設定手段20により設定したオン時間が大きくなるため、設定したオン時間の変化量が最大オン時間変化量設定手段27に設定されたオン時間変化量TA以上になると、交流電源電圧が一定以下の電圧値まで低下したと制御手段は判断し、その後、交流電源電圧が元の電圧に復帰した場合に、インバータ回路5を構成する共振用コンデンサ3やスイッチング素子4、整流手段6を構成するダイオードブリッジ7とチョークコイル8と高周波平滑用コンデンサ9等の部品が、性能保証以上で動作しないようにスイッチング素子4の通電動作を停止するので、交流電源の電圧を検出するための検知回路や、交流電源電圧の異常電圧を検知する電源異常検知回路を必要とせず、交流電源電圧の異常低下を検知し、交流電源電圧が正常に戻った場合に、炊飯器の内部で使用電子部品や半導体部品が破壊したり、劣化したり、寿命が短くなることを防止できる。