JP5942410B2 - バルブユニット、液体噴射ユニット、および液体噴射装置、並びにバルブユニットの製造方法 - Google Patents

バルブユニット、液体噴射ユニット、および液体噴射装置、並びにバルブユニットの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドに対して液体供給源からの液体を供給するバルブユニット、これを備えた液体噴射ユニット、および液体噴射装置、並びにバルブユニットの製造方法に関するものである。
圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズルから液滴として噴射(吐出)させる液体噴射ヘッドとしては、例えば、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンターという)等の画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等がある。
例えば、上記の記録ヘッドでは、液体状のインクを封入したインクカートリッジ(液体供給源の一種。以下、単にカートリッジという)内のインクを、記録ヘッドのリザーバー(共通液室あるいはマニホールドとも言う。)を介して圧力室に導入し、圧電振動子や発熱素子等の圧力発生手段を駆動して圧力室内のインクに圧力変動を付与し、この圧力変動を利用して、圧力室に連通するノズルからインクを噴射する。この構成の記録ヘッドでは、カートリッジから記録ヘッドにインクを供給する流路の途中に設けられたバルブユニット(自己封止ユニット、或いはダンパー部材とも言う。)と組み合わせてインク噴射ユニットを構成したものもある(例えば、特許文献1参照)。この流路形成部材には、その内部の流路の途中にバルブが設けられており、当該流路の開口面が薄手のフィルムで封止されている。そして、記録ヘッドのノズルからインクが噴射されることによりリザーバーの内部が負圧になるに連れて、フィルムが受圧板を介してバルブを押圧し、これによりバルブが開かれてインクカートリッジからのインクが記録ヘッドのリザーバー側に供給されるように構成されている。
上記のように構成された記録ヘッドは、圧力変化に速やかに応じてフィルムが変位し易いように、フィルムを積極的に撓ませた状態で当該フィルムを流路形成部材に超音波溶着や熱溶着などによって溶着されている。具体的には、フィルムと流路形成部材との溶着位置よりもフィルムの中央部が治具などによって、開口面よりも押し下げられた状態或いは開口面よりも外側に引っ張られた状態で溶着されていた(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−228238号公報
しかしながら、上記流路形成部材にフィルムを溶着する際に治具によってフィルムを強制的に撓ませた状態で接合する場合には、フィルムに不規則な皺が発生することがあった。これにより、溶着部分に皺が入り込んで溶着不良が生じたり、フィルムの面内で剛性がばらつくことで圧力変化に対する感度がばらついたりする虞があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルムに皺が生じることを防止することが可能なバルブユニット、液体噴射ユニット、および液体噴射装置、並びにバルブユニットの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のバルブユニットは、液体供給源からの液体を、底部に形成された貫通孔を通じて導入すると共に、導入した液体を液体供給対象側に導出する供給調整室と、
前記貫通孔を開閉する開閉バルブと、
前記開閉バルブを押圧可能な押圧部を有し、前記供給調整室の一側の開口面を封止する可撓性のフィルムと、をユニット本体に備え、
前記供給調整室内の圧力の低下に伴って前記フィルムが供給調整室の一側から他側へ向けて変形し、閉弁状態にある開閉バルブを前記押圧部により押圧して開弁状態に変換する一方、前記供給調整室内の圧力の増加に伴って前記フィルムが供給調整室の他側から一側へ向けて変形し、開弁状態にある開閉バルブに対する押圧を解除することにより閉弁状態に変換するバルブユニットであって、
前記供給調整室の底部に、前記フィルムの押圧部を供給調整室の外側に向けて付勢するフィルム付勢部材が設けられ、
前記フィルム付勢部材の自由長は、前記供給調整室の底部から当該供給調整室の開口周縁部におけるフィルムとの溶着位置までの深さよりも長く設定されていることを特徴とする。
上記構成によれば、フィルム付勢部材の自由長が、供給調整室の底部から当該供給調整室の開口周縁部におけるフィルムとの溶着位置までの深さよりも長く設定されていることで、ユニット本体に対してフィルムを溶着させる際、フィルムに皺が生じることを抑制しつつフィルムに撓みを与えることが可能となる。すなわち、溶着時の加熱によってフィルムの押圧部がフィルム付勢部材の付勢力によって次第に押し戻されて、供給調整室の開口周縁部の溶着位置よりも外側に変位してフィルムに撓みが与えられることで、フィルムに対して治具などで強制的に撓みを与えて溶着する場合と比較して、フィルムに皺が生じ難くなる。これにより、皺による溶着不良や、圧力変化に対するフィルムの感度ばらつき等の不具合を抑制することが可能となる。その結果、バルブユニットの歩留まりを向上させることができる。
上記バルブユニットにおいて、前記開閉バルブは、前記押圧部に固定されていないことが望ましい。
また、本発明の液体噴射ユニットは、上記のバルブユニットと、
ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、を備え、
前記バルブユニットからの液体を前記液体噴射ヘッドに導入することを特徴とする。
また、本発明の液体噴射装置は、上記の液体噴射ユニットと、
前記バルブユニットへ液体を供給する液体供給源と、
を備えたことを特徴とする。
これらの液体噴射ユニットおよび液体噴射装置によれば、バルブユニットから安定して液体が供給されるため、信頼性の向上が期待できる。
さらに、本発明のバルブユニットの製造方法は、液体供給源からの液体を、底部に形成された貫通孔を通じて導入すると共に、導入した液体を液体供給対象側に導出する供給調整室と、前記貫通孔を開閉する開閉バルブと、前記バルブを押圧可能な押圧部を有し、前記供給調整室の一側の開口面を封止する可撓性のフィルムと、をユニット本体に備え、前記供給調整室内の圧力の低下に伴って前記フィルムが供給調整室の一側から他側へ向けて変形し、閉弁状態にある開閉バルブを前記押圧部により押圧して開弁状態に変換する一方、前記供給調整室内の圧力の増加に伴って前記フィルムが供給調整室の他側から一側へ向けて変形し、開弁状態にある開閉バルブに対する押圧を解除することにより閉弁状態に変換するバルブユニットの製造方法であって、
前記供給調整室の底部に、前記フィルムの押圧部を供給調整室の外側に向けて付勢するフィルム付勢部材が設けられ、
前記フィルム付勢部材の自由長は、前記供給調整室の底部から当該供給調整室の開口周縁部におけるフィルムとの溶着位置までの深さよりも長く設定され、
前記ユニット本体の前記供給調整室の開口周縁部に設けられた溶着部と前記フィルムとの溶着の際、前記フィルム付勢部材の付勢力によってフィルムの前記押圧部に対応する部分を前記溶着部と前記フィルムとの溶着位置よりも外側に変位させることで、当該フィルムに撓みを与えることを特徴とする。
上記製造方法によれば、フィルム付勢部材の自由長が、供給調整室の底部から当該供給調整室の開口周縁部におけるフィルムとの溶着位置までの深さよりも長く設定されていることで、ユニット本体に対してフィルムを溶着させる際、フィルムに皺が生じることを抑制しつつフィルムに撓みを与えることが可能となる。すなわち、溶着時の加熱によってフィルムの押圧部がフィルム付勢部材の付勢力によって次第に押し戻されて、供給調整室の開口周縁部の溶着位置よりも外側に変位してフィルムに撓みが与えられることで、フィルムに対して治具などで強制的に撓みを与えて溶着する場合と比較して、フィルムに皺が生じ難くなる。これにより、皺による溶着不良や、圧力変化に対するフィルムの感度ばらつき等の不具合を抑制することが可能となる。その結果、バルブユニットの歩留まりを向上させることができる。
上記製造方法において、前記フィルムに対して面方向のテンションが付与された状態で前記溶着部と前記フィルムとを溶着することが望ましい。
この構成によれば、フィルムに対して面方向のテンションが付与された状態で前記溶着部と前記フィルムとを溶着することで、当該テンションに抗しつつフィルムを徐々に撓ませることが出来るので、フィルムに皺が生じることがより確実に抑制される。
プリンターの構成を説明する平面図である。 インク噴射ユニットの構成を説明する断面図である。 記録ヘッドの要部断面図である。 バルブユニットの側面図である。 バルブユニットの断面図である。 貫通孔の構成を説明する平面図である。 フィルムとユニット本体との溶着工程を説明する断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面等を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、本実施形態では、液体噴射ユニットの一例として、液体噴射装置の一種であるインクジェット式記録装置に搭載されるインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッドの一種。以下、「記録ヘッド」という。)を備えたインク噴射ユニット10を例に挙げて説明する。
図1はインク噴射ユニット10(図2)を搭載するインクジェット式記録装置(以下、プリンターという)の構成を示す平面図である。例示したプリンター1は、記録紙等の記録媒体(着弾対象:図示せず)の表面に対して液体状のインク(本発明における液体の一種)を噴射して当該記録媒体上に画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、フレーム2と、このフレーム2内に配設されたプラテン3とを備えており、紙送りモーターの駆動により回転する紙送りローラー(何れも図示せず)によってプラテン3上に記録紙が搬送されるようになっている。また、フレーム2内には、プラテン3と平行にガイドロッド4が架設されており、このガイドロッド4には、インク噴射ユニット10を収容したキャリッジ5が摺動可能に支持されている。このキャリッジ5は、パルスモーター6の駆動によって回転する駆動プーリー7と、この駆動プーリー7とはフレーム2における反対側に設けられた遊転プーリー8との間に架設されたタイミングベルト9に接続されている。そして、キャリッジ5は、パルスモーター6を駆動することで、ガイドロッド4に沿って紙送り方向と直交する主走査方向に往復移動するように構成されている。
フレーム2の一側には、インクカートリッジ13(液体供給源の一種)を着脱可能に搭載するカートリッジホルダー14が設けられている。インクカートリッジ13は、エアチューブ15を介してエアポンプ16と接続されており、このエアポンプ16からの空気が各インクカートリッジ13内に供給される。そして、この空気によるインクカートリッジ13内の加圧により、インク供給チューブ17を通じてインク噴射ユニット10側にインクが供給(圧送)されるように構成されている。
インク供給チューブ17は、例えば、シリコーン等の合成樹脂で作製された可撓性を有する中空部材であり、このインク供給チューブ17の内部には、各インクカートリッジ13に対応するインク流路が形成されている。また、プリンター1本体側とインク噴射ユニット10側との間には、プリンター1本体側の制御部(図示せず)からインク噴射ユニット10側に駆動信号等を伝送するためのFFC(フレキシブルフラットケーブル)18が配線されている。
次に、インク噴射ユニット10の構成について説明する。ここで、図2はキャリッジ5に取り付けられるインク噴射ユニット10の断面図、図3は記録ヘッド20の要部断面図である。例示したインク噴射ユニット10は、ノズル43が形成されたノズル形成基板36を有する記録ヘッド20(液体噴射ヘッド)と、記録ヘッド20の上部、即ち、記録ヘッド20の上流側に配置されたバルブユニット21と、を備えている。なお、本実施形態では、記録ヘッド20の上部に2つのバルブユニット21が装着される例を示しているが、これには限られず、記憶ヘッド20が噴射可能なインクの種類の数に応じて1つ又は3つ以上のバルブユニット21が装着される構成もある。
記録ヘッド20は、導入針ユニット24、ヘッドケース25、振動子ユニット26、流路ユニット27、及び駆動基板28から構成されている。導入針ユニット24は、合成樹脂から作製された部材であり、その上面にはフィルター45を介在させた状態で合計2本のインク導入針46がノズル列に直交する方向(主走査方向)に並べて取り付けられている。各インク導入針46には、それぞれバルブユニット21が装着される。導入針ユニット24の内部には、各インク導入針46に対応したインク導入路47が形成されている。インク導入路47の上流端は、フィルター45を介してインク導入針46と連通する一方、インク導入路47の下流端は、パッキン48を介してヘッドケース25のケース流路34と連通する。
ヘッドケース25は、中空箱体状部材であり、その先端面(下面)には流路ユニット27を固定し、ケース内部に形成された収容空部12内には、振動子ユニット26を収容し、先端面とは反対側の基端面(上面)側には、駆動基板28と導入針ユニット24が配置される。このヘッドケース25の内部には、その高さ方向を貫通してケース流路34が形成されている。このケース流路34は、バルブユニット21側から導入針ユニット24のインク導入路47を介して供給されたインクを共通インク室40に導入するための流路であり、1つの共通インク室40に対して1本ずつ設けられている。本実施形態における記録ヘッド10は2条のノズル列(ノズル群)に対応して2つの共通インク室40を有しており、合計2本のケース流路34がヘッドケース25内部に形成されている。
振動子ユニット26は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子31と、この圧電振動子31に駆動基板28からの駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル32(配線部材)と、圧電振動子31を固定する固定板33から構成される。圧電振動子31は、圧力室42の一部を区画する可撓面(振動板38)に接合されている。そして、この圧電振動子31は、駆動信号の印加により伸縮して圧力室42の容積を膨張又は収縮することで、圧力室42内のインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動の制御によりノズル43からインクを噴射させることができる。
流路ユニット27は、ノズル43が開設されたノズル形成基板36、インク流路を形成する流路形成基板37、流路形成基板37の開口面を封止する振動板38を積層した状態で接合して一体化することにより作製されており、共通インク室40からインク供給口41及び圧力室42を通りノズル43に至るまでの一連のインク流路(液体流路)を形成するユニット部材である。共通インク室40から分岐する圧力室42は、ノズル43毎に形成されており、バルブユニット21側からケース流路34及び共通インク室40を介してインクが供給されるように構成されている。この流路ユニット27は、ノズル形成基板36を下側(プリンタ本体のプラテン3側)に向けた姿勢でヘッドケース25の先端面に接合される。
記録ヘッド20と導入針ユニット24との間に配置される駆動基板28は、一端にフレキシブルケーブル32が半田付け等によって電気的に接続され、他端にプリンター本体側からのFFC18が接続されており、このFFCを通じて制御部側から駆動信号を受け、この駆動信号を、フレキシブルケーブル32を通じて圧電振動子31側へ供給するように構成されている。この駆動基板28は、ヘッドケース25の上面の中央部に配置されている。
次に、インクカートリッジ7内のインクを記録ヘッド20に導入するバルブユニット21の構成について説明する。図4はバルブユニット21の側面図、図5は図4中のX−X線断面図である。なお、図4(a)は、バルブユニット21の一側面図、図4(b)は、バルブユニット21の他側面図である。
本実施形態におけるバルブユニット21(サブタンクとも言う。)は、ポリプロピレン等の合成樹脂によって成型されたユニット本体50(外郭)の内部に、インク供給室51、供給調整室52、開閉バルブ53等を備えている。ユニット本体50の両側面(一側面および他側面)には、それぞれ可撓性を有するフィルム22a(本発明におけるフィルムに相当),フィルム22bがそれぞれ貼着されており、これらのフィルム22a,22bによって供給調整室52およびインク供給室51の開口部が封止されている。フィルム22は、圧力変化に応じて変位可能とするべく、軟質であると共に、水分透過度や、酸素や窒素透過度の低い材質であることが求められる。このため、本実施形態におけるフィルム22は、内側(供給調整室52またはインク供給室51側)から順に、ポリプロピレンフィルム層、シリカ(SiO)からなるバリア層、およびポリエチレンテレフタラートからなる補強層を積層してラミネートした3層構造となっている。
バルブユニット21(ユニット本体50)の一側面に貼着(溶着)されたフィルム22aの中央部には、当該フィルム22aと比較して硬質の材料により形成された受圧板55(本発明における押圧部の一種)が取り付けられている。本実施形態における受圧板55は、ポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチック材料により円盤状に形成されている。この受圧板55は、フィルム22aがユニット本体50に取り付けられる前の段階で、当該フィルム22aに対して熱溶着等により予め取り付けられる。なお、フィルム22aに対して受圧板55が設けられない構成もある。すなわち、フィルム22aが直接的に開閉バルブ53を押圧する。この構成では、当該開閉バルブ53を押圧する部分が本発明における押圧部に相当する。
ユニット本体50の一端部には、インク供給チューブ17が接続される接続部54が設けられている。そして、インクカートリッジ13からインク供給チューブ17を通じて供給されるインクは、接続部54を介してバルブユニット21内のインク供給室51に導入される。また、ユニット本体部50の他端部の底面側には、インク導入針46が挿入される針接続部56が突設されている。針接続部56の内部空間にはインク導入針46が液密に嵌入されるシール部材57(図2参照)が嵌め込まれている。この針接続部56には、後述するインク導出路67が連通されている。そして、針接続部56の内部空間には、供給調整室52側からインク導出路67を流下してきたインクが流入する。
ユニット本体50の他側面には、図4(b)に示すように、インク導入路58が形成されている。インク供給チューブ17を介して接続部54から供給されるインクは、インク導入路58を介して、ユニット本体50の他側面の略中央部に形成されたインク供給室51に供給される。このインク供給室(バルブ収容室)51は、後述する供給調整室52と比較して小容積の円筒状空間により構成されている。このインク供給室51の他側面側の開口部には、バネ受け座59が嵌め込まれている。ユニット本体50の他側面の開口部は、インク供給室51の他側面側の開口部よりも少し大きくなっている。これにより、図5に示すように、両者の間には段差部61が形成されている。そして、この段差部61には、供給側フィルター60が、インク供給室51の開口部を覆う状態で溶着等により取り付けられている。この供給側フィルター60は、インク導入路58側からインク供給室51側に流入するインクを濾過する。そして、インク供給室51およびインク導入路58を覆うように、フィルム22bがユニット本体50に対して熱溶着されることで、インク供給室51およびインク導入路58が密閉されている。
また、インク供給室51と供給調整室52とは、隔壁62によって区画されている。この隔壁62には、開閉バルブ53を摺動可能に支持するための貫通孔64が、隔壁62を貫通する状態で開設されている。この貫通孔64には、図6に拡大して示すように、貫通孔64の周囲に沿って一定の間隔で複数の切欠き孔64aが形成されている。これらの切欠き孔64aにより、インク供給室51側から供給調整室52側へのインクの供給が可能となっている。なお、本実施形態においては、貫通孔64の周囲に沿って4つの切欠き孔64aが形成されている。
一方、ユニット本体50の供給調整室52は、ユニット本体50を一側面から他側面に向けて窪ませて形成された、円形状の開口を有する凹部により構成されている。上記の隔壁62は、この供給調整室52の底部を構成している。そして、供給調整室52の開口面(すなわち、ユニット本体50の一側面)には、フィルム22aが熱溶着により貼着されている。すなわち、供給調整室52は、ユニット本体50に形成された凹部と、当該凹部の開口面を封止するフィルム22aとにより構成されている。供給調整室52の底部を構成する隔壁62における貫通孔64の開口周縁部には、円筒状の隆起部65が突設されている。そして、この隆起部65の周囲には、受圧板付勢バネ63(本実施形態における付勢部材に相当)が嵌装されている。
受圧板付勢バネ63の一端は、フィルム22aの受圧板55と当接するとともに、受圧板付勢バネ63の他端は隆起部65を囲繞する状態で供給調整室52の底部(隔壁62)に着座されている。図7(a)に示すように、この受圧板付勢バネ63の自由長Lは、供給調整室52の底部から当該供給調整室52の開口周縁部におけるフィルム22aとの溶着位置(後述する溶着用突起部77に相当する位置)までの深さDよりも長く設定されている。これにより、図5に示すように、フィルム22aの受圧板55に対応する部分(受圧板55に溶着されている部分あるいは受圧板55と接触している部分)が、フィルム22aとユニット本体50との溶着位置よりも外側(インク供給室51とは反対側)に位置する。そして、供給調整室52内にインクが十分に満たされてフィルム22aに負圧が作用していない状態では、フィルム22aの受圧板55に対応する部分は、供給調整室52の開口面よりも外側に膨出する。この状態では、受圧板55は、開閉バルブ53の軸部69の先端には当接せず、両者の間には所定の間隙が形成される。
図4(a)に示すように、供給調整室52の上部には、導出口66が形成されている。そして、ユニット本体50の一側面には、導出口66に連通するインク導出路67が、供給調整室52の開口縁に沿って針接続部56に向けて円弧状に形成されている。なお、供給調整室52の導出口66とインク導出路67は、ユニット本体50に形成された溝部分をフィルム22によって封止されて構成されている。そして、インク導出路67は、針接続部56の内部空間に連通されている。
本実施形態における開閉バルブ53は、軸部69と、当該軸部69の基端側に一体的に形成された円板部70とを有している。軸部69は、インク供給室51側から貫通孔64に挿通されて、先端側を供給調整室52内に突出させている。また、円板部70は、後述するバルブ付勢バネ71と共にインク供給室51内に収容されている。円板部70の軸部69突設側の面は、エラストマーやゴムなどからなる弾性部材83に覆われている。また、円板部70の背面(供給側フィルター60と対向する側の面)には、バルブ付勢バネ71の一端が接続されており、このバルブ付勢バネ71の他端は、バネ受け座59に接続されている。上述したように、バネ受け座59は、インク供給室51の他側(供給側フィルター60側)の開口縁部に固定されている。このバネ受け座59には、インクが流通可能な流通孔73が形成されている。
上記の構成において、バルブユニット21には、インクカートリッジ13側からインク供給チューブ17を通じて正圧によりインクが供給(圧送)される。ここで、記録ヘッド20が非記録状態、すなわちインクを消費しない状態においては、バルブユニット21におけるバルブ付勢バネ71による付勢力(バネ荷重)が、開閉バルブ53における円板部70に作用する。また、円板部70にはインク供給室51に供給されるインクの加圧力(供給圧力)も加わっている。これにより、開閉バルブ53の円板部70は、弾性部材83を隔壁62に密着させて貫通孔64を閉鎖し、閉弁状態とする。
一方、記録ヘッド20が記録状態となり、インクを消費する場合においては、供給調整室52内のインクの減少に伴い、当該供給調整室52の内部の圧力が低下すると、フィルム22aが受圧板55を伴ってインク供給室51側(供給調整室52の底部側)に変位する。フィルム22aがある程度(受圧板55と、開閉バルブ53の軸部69の先端との間の間隙に相当する距離)インク供給室51側に変位すると、受圧板55が開閉バルブ53の軸部69の先端部に当接する。この状態から供給調整室52の内部の圧力がさらに低下し、その負圧が、受圧板付勢バネ63、バルブ付勢バネ71、インクの供給圧力、及びフィルム22aの変位反力の和(以下、適宜、バルブ閉成力ともいう。)よりも大きくなると、受圧板55が当該バルブ閉成力に抗しながら軸部69を押圧し、開閉バルブ53をインク供給室51側に向けて変位させる。これにより、円板部70による隔壁62(貫通孔64の周縁部)への当接が解かれ、開閉バルブ53は閉弁状態から開弁状態に変換する。
開弁状態に変換されると、インク供給室51内におけるインクは、貫通孔64を通じて供給調整室52内に供給され、これにより供給調整室52内部の圧力が上昇する。これに伴い、開閉バルブ53は、バルブ閉成力によって閉成方向(供給調整室52側)に移動して再び閉弁状態に切り換えられる。その結果、インク供給室51から供給調整室52へのインクの供給が停止される。
図7は、フィルム22aをユニット本体50に対して熱溶着する工程を示している。フィルム22aは、供給調整室52内の圧力変化に応じて撓み変形するための撓み代を設けるべく、ユニット本体50に対して撓みをもたせて熱溶着される。本発明に係る製造方法では、このフィルム22aに撓みを与えつつ熱溶着する点に特徴を有している。
まず、図7(a)に示すように、図示しない定盤等に載置されたユニット本体50と、ヒートツール76(加熱手段)との間に、フィルム22aをセットする。フィルム22aの中央部には、受圧板55が予め溶着されている。また、フィルム22aは、図示しない治具によって当該フィルム22aの面方向にテンションが付与された平坦状態で保持される。そして、ユニット本体50に予め組み付けられた開閉バルブ53および受圧板付勢バネ63に対し、受圧板55の平面位置が一致するように、フィルム22aが位置決めされる。なお、ユニット本体50において、供給調整室52の開口周縁部には、フィルム22aが溶着される溶着用突起部77が突設されている。
図7(a)の状態において、受圧板付勢バネ63の先端部は、供給調整室52の開口周縁部に突設された溶着用突起部77よりも供給調整室52の外側に突出している。この状態でヒートツール76(加熱部76aはオフの状態)をユニット本体50側に向けて下降させると、受圧板55が受圧板付勢バネ63の先端部に当接する。この状態から、受圧板付勢バネ63の付勢力に抗しつつヒートツール76をユニット本体50側に向けてさらに下降させると、図7(b)に示すように、ヒートツール76の加熱部76aが、フィルム22aを間に介在させた状態で溶着用突起部77に当接する。このとき、フィルム22aには、治具によるテンションが維持されているため、当該フィルム22aは撓むことなくほぼ平坦な状態を保っており、溶着用突起部77上のフィルム22aには、皺が生じていない。続いて、この状態で、ヒートツール76の加熱部76aが通電されて当該加熱部76aによる加熱が行われる。これにより、加熱部76aが当接している部分のフィルム22aと溶着用突起部77とが加熱されて両者が溶融する。その後、ヒートツール76を上昇させて加熱をオフにする。これにより、フィルム22aと溶着用突起部77の溶融部分の温度が常温まで自然冷却され、当該部分が硬化して互いに溶着する。ここで、溶着時においては、ヒートツール76の加熱によってフィルム22aが全体的に柔らかくなるので、治具によるフィルム22aに対するテンションおよびフィルム22aの反力に抗しつつ受圧板55が受圧板付勢バネ63の付勢力によって次第に押し戻されて、供給調整室52の開口周縁部の溶着位置よりも外側に変位する。これにより、図7(c)に示すように、フィルム22aの中心部分が供給調整室52の外側に膨出して撓んだ状態となる。このようにして、溶着後、加熱により柔らかくなったフィルム22aに対して受圧板付勢バネ63の付勢力によって徐々に撓みが与えられることで、フィルムに対して治具などで強制的に撓みを与えた状態で溶着する場合と比較してフィルム22aに皺が生じ難くなる。これにより、皺による溶着不良や、圧力変化に対するフィルム22aの感度ばらつき等の不具合を抑制することが可能となる。その結果、バルブユニット21の歩留まりを向上させることができる。そして、このような構成のバルブユニット21を備えたインク噴射ユニット10では、バルブユニット21から安定してインクが供給されるため、信頼性の向上が期待できる。
なお、以上は、液体噴射ユニットの一種であるインク噴射ユニット10を例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射ユニットにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置に搭載される液体噴射ユニット、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置に搭載される液体噴射ユニット、バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に搭載される液体噴射ユニット等にも適用することができる。
1…プリンター,10…液体噴射ユニット,13…インクカートリッジ,20…記録ヘッド,21…バルブユニット,22a,22b…フィルム,43…ノズル,50…ユニット本体,51…インク供給室,52…供給調整室,53…開閉バルブ,55…受圧板,63…受圧板付勢バネ,76…ヒートツール,77…溶着用突起部

Claims (5)

  1. 液体供給源からの液体を、底部に形成された貫通孔を通じて導入すると共に、導入した液体を液体供給対象側に導出する供給調整室と、
    前記貫通孔を開閉する開閉バルブと、
    前記開閉バルブを押圧可能な押圧部を有し、前記供給調整室の一側の開口面を封止する可撓性のフィルムと、をユニット本体に備え、
    前記供給調整室内の圧力の低下に伴って前記フィルムが供給調整室の一側から他側へ向けて変形し、閉弁状態にある開閉バルブを前記押圧部により押圧して開弁状態に変換する一方、前記供給調整室内の圧力の増加に伴って前記フィルムが供給調整室の他側から一側へ向けて変形し、開弁状態にある開閉バルブに対する押圧を解除することにより閉弁状態に変換するバルブユニットであって、
    前記供給調整室の底部に、前記フィルムの押圧部を供給調整室の外側に向けて付勢するフィルム付勢部材が設けられ、
    前記開閉バルブは、前記押圧部に固定されておらず、
    前記フィルム付勢部材の自由長は、前記供給調整室の底部から当該供給調整室の開口周縁部のうちフィルム溶着された位置までの深さよりも長く設定されていることを特徴とするバルブユニット。
  2. 請求項1に記載のバルブユニットと、
    ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、を備え、
    前記バルブユニットからの液体を前記液体噴射ヘッドに導入することを特徴とする液体噴射ユニット。
  3. 請求項2に記載の液体噴射ユニットと、
    前記バルブユニットへ液体を供給する液体供給源と、
    を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
  4. 液体供給源からの液体を、底部に形成された貫通孔を通じて導入すると共に、導入した液体を液体供給対象側に導出する供給調整室と、前記貫通孔を開閉する開閉バルブと、前記開閉バルブを押圧可能な押圧部を有し、前記供給調整室の一側の開口面を封止する可撓性のフィルムと、をユニット本体に備え、前記供給調整室内の圧力の低下に伴って前記フィルムが供給調整室の一側から他側へ向けて変形し、閉弁状態にある開閉バルブを前記押圧部により押圧して開弁状態に変換する一方、前記供給調整室内の圧力の増加に伴って前記フィルムが供給調整室の他側から一側へ向けて変形し、開弁状態にある開閉バルブに対する押圧を解除することにより閉弁状態に変換するバルブユニットの製造方法であって、
    前記供給調整室の底部に、前記フィルムの押圧部を供給調整室の外側に向けて付勢するフィルム付勢部材が設けられ、
    前記フィルム付勢部材の自由長は、前記供給調整室の底部から当該供給調整室の開口周縁部におけるフィルムとの溶着位置までの深さよりも長く設定され、
    前記ユニット本体の前記供給調整室の開口周縁部に設けられた溶着部と前記フィルムとの溶着の際、前記フィルム付勢部材の付勢力によってフィルムの前記押圧部に対応する部分を前記溶着部と前記フィルムとの溶着位置よりも外側に変位させることで、当該フィルムに撓みを与えることを特徴とするバルブユニットの製造方法。
  5. 前記フィルムに対して面方向のテンションが付与された状態で前記溶着部と前記フィルムとを溶着することを特徴とする請求項4に記載のバルブユニットの製造方法。
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