JP5940071B2 - ピストンリングの製造方法 - Google Patents

Description

本発明は、第１の請求項の上位概念を形成する部分に基づくピストンリングの製造方法に関する。

特に圧縮ピストンリングの掻取り作用効果を改良するために、リング摺動面が、一方の側に凹部を形成するか又は完全に凹部を形成するということが一般的に公知である。同様に、凹部を備えた圧縮ピストンリングの摺動面に、クロム層を設けるということが一般的に公知である。

国際出願第２００８０９８５３４号から、凹部（Kammerung）を備えた摺動面、上側面及び下側面並びに内側の周面を有する本体を備えたピストンリングを見て取ることができる。摺動面には少なくとも１つのＰＶＤカバー層が提供されていて、本体は完成した状態において縁領域側でのみ、つまり凹部の外側でカバー層を有する。この構成では縁部の領域において、比較的硬質のＰＶＤ層が運転状態において破断し、エッジの掻取り作用はこれにより減じられる、ということが起こり得る。

ドイツ連邦共和国特許第１０２００６０４６９１５号において、特に鋼又は鋳鉄から成る支持材料を含み、周期的に（一定の順序で）形成された多層構造から成る摩耗防護コーティング部を備えた、内燃機関用のピストンリングが開示されていて、各周期性は、金属窒化物から成る少なくとも２つの個別層から成る。
イギリス特許出願第１４４１９６１号からは、ピストンリングを製造する上位概念部に記載した方法が看取できる。
国際公開第２０１１／０６４８８８号は、一方の側に凹部を有するピストンリングであって、この凹部に耐摩耗性の層が供給されているピストンリングを開示している。耐摩耗性の層は、種々異なる材料から形成され、第１の層は、硬質材料層により形成されていて、第２の層は別の層構造を含んでいる。
ドイツ連邦共和国特許第１０３５９８０２号から、ピストンリング及びこのピストンリングを製造する方法が公知になっている。所定の摺動面輪郭が設けられている、ピストンリングの摺動面に蒸着層を形成するために、所定の摺動面輪郭を備えた本体に、上記摺動面輪郭の外側で被覆部が設けられる。次いで、摺動面に蒸着層を提供し、その後、被覆部を取り除くので、この被覆部を取り除いた後に、摺動面と、少なくとも１つの、本体の側面との間に、実質的にシャープな摺動面が形成される。蒸着層は、ＰＶＤ法又はＣＶＤ法により形成することができる。

本発明の根底にある目的は、少なくとも１つのＰＶＤ層を備えたピストンリングを製造する択一的な方法を提供することである。この方法におけるピストンリングは、先行技術と比べて、改良された掻取り作用効果を有しかつ破断のおそれは少ない。

さらに、特に掻取りエッジ（機能エッジ）の領域に高められた耐破断性を備えたピストンリングを設計することが望ましい。

上記目的は、少なくとも摺動面及び／又は凹部の部分領域を窒化処理し、次いで摺動面にＰＶＤカバー層又は多層系を設けることにより達成される。

本発明に係る方法の有利な改良形は、方法に関する従属請求項から読み取ることができる。

上記目的は本発明に係る方法により製造された、好ましくは摺動面側で、一方の側において凹部が形成されているか又は完全に凹部が形成されていて、摺動面の凹部が形成された領域に、底部側で円筒形状とは異なる輪郭が加工されていて、ピストンリングの完成した状態において、摺動面の凹部が形成された領域に、少なくとも１つの耐摩耗性の層が設けられているピストンリングによっても達成される。

ピストンリングの有利な改良形は、物を対象とする従属請求項から読み取ることができる。

本発明に係る方法、及びその方法により製造されたピストンリングでもって、形成された鋭利なエッジを有する、つまりシャープな掻取りエッジの掻取り作用効果の改良をもたらすことができる。掻取りエッジの領域には耐摩耗性（硬質）の材料は与えられていないので、自体先鋭化する掻取りエッジ（機能エッジ）が形成される。この掻取りエッジは、破断するおそれがない。

凹部の底部の領域における各輪郭は、好ましくは機械加工される。

使用態様に応じて、凹部の領域の底部に、直線形に斜めに又は湾曲して延在する輪郭を有することは有利であってよい。

望ましくは、摺動面がＰＶＤ若しくはＤＬＣカバー層だけを備えていてよいか、又はドイツ連邦共和国特許第１０２００６０４６９１５号に記載されているように、多層構造が使用される。

特に円筒加工により露出した摺動面のウェブ幅は、本発明に係る別の思想によれば、０．０５〜０．４５ｍｍの間にある。

ピストンリング本体は、鋳鉄、鋳鋼又は鋼線から成っていてよい。この構成において、選択された出発材料に基づいて、掻取りエッジは角が尖って形成されていてよいか、丸味を帯びて形成されていてよいか、又は傾斜部を備えていてよい。

鋳鉄ピストンリングにおける掻取りエッジは、例えば角が尖って（９０°）構成されていてよいか、又は要求に応じて０．１ｍｍの曲率を持って丸味付けすることができる。

鋼リングにおいて、掻取りエッジの領域は、窒化処理されて又は窒化処理されずに構成することができる。窒化処理されない構成において、掻取りエッジは同様に角を尖らせて（９０°）形成することができる。

窒化処理された鋼リングの構成において、必要な場合には以下のリング構成を付与することができる。つまり、
−掻取りエッジは、０．１ｍｍ未満の半径方向の引込み部（Einzug）を有し、鋼ウェブ及び摺動面は窒化処理されており、この構成においてピストンリングの製造後には、ＰＶＤカバー層の下側にあった窒化層は存在しない。
−掻取りエッジは０．１５ｍｍ未満の傾斜部を備えていて、鋼ウェブ及び摺動面は窒化処理されていて、完成したリングにおいてＰＶＤカバー層の下側の窒化層は残っている。

したがって材料及び使用態様に応じて、少なくとも１つの耐摩耗性の層、好ましくはＰＶＤ層若しくは多層構造を有するピストンリング、特に圧縮ピストンリングを製造することができる。

ＰＶＤ層を既に唯一のカバー層として見なすことができると、ＰＶＤ層は、掻取りエッジの領域において母材に至るまでほぼ円筒状に除去され、規定可能な幅のコーティングされていないウェブが形成される。

複数の摩耗層が与えられていると、ＰＶＤカバー層は、摺動面の母材に至るまで研磨されてよいか、又はＰＶＤカバー層の下側の、少なくとも１つの耐摩耗性の層（例えば窒化層）が残っている程度に研磨される。

使用態様に応じて同様に、製造されかつコーティングされた摺動面に、例えばラッピング加工又はホーニング加工による球状の輪郭を備えることが有利であってもよい。

一方の側に凹部が形成されているピストンリングの製造プロセスを示す図である。 完全に凹部が形成されたピストンリングの製造プロセスを示す図である。 図１に示した一方の側に凹部が形成されたピストンリングの掻取りエッジの種々異なる実施の形態を示す図である。

本発明の対象を、実施の形態に基づいて図面に記載し、以下に説明する。

図１は３つの図を含む。上側の図は、既に一方の側に凹部２を備えたピストンリング本体１を拡大して示す。後の掻取りエッジ３の領域には、差し当たって１つのウェブ４が残っている。凹部２の底部５には、円筒形状から逸れた凸状の輪郭６が設けられている。

真ん中の図から、後の摺動面７にＰＶＤカバー層８が提供されていていることが看取可能である。このＰＶＤカバー層８は、一方ではウェブ４の輪郭、他方では底部５の輪郭６に追従する。

択一的には、ドイツ連邦共和国特許第１０２００６０４６９１５号に対応する摩耗防護コーティング部を、底部５の輪郭６あるいはウェブ４に提供することもできる。

図１の下側の図は、完成したピストンリング１′を示す。真ん中の図においてまだ看取可能なウェブ４は、予め設定可能な幅ｂを備えた、下側の図においてシャープな掻取りエッジ３を含むウェブ４′が形成されるように除去されている。したがって完成したピストンリング１′は、凹部２の領域にだけＰＶＤカバー層８を有し、その一方で、ウェブ４′はその幅ｂに亘って見て、コーティングされずに構成されている。この手段により、運転状態において常に自体先鋭化する掻取りエッジ３が形成される。同様に、摺動面７に半径方向において相対する内側の周面７′並びに上側面３′及び下側面３″が看取可能である。

同様に図２は、３つの図を示している。上側の図に示したピストンリング本体１は、いわゆる完全な凹部２を含む。この完全な凹部２には、２つの外側ウェブ４が付与されている。この実施の形態において、底部５は直線上に斜めに延在する輪郭６を持って形成されている。円筒状の形状を破線で示す。

図２の真ん中の図において、個々のＰＶＤカバー層８又は多層構造が後の摺動面７に提供されていることが看取可能である。摺動面７は、ウェブ４の輪郭にも底部５の輪郭にも追従している。図１とは異なり、後の掻取りエッジ３は、角が尖って構成されているのではなく、規定可能な寸法の曲率部を有する。同様に、摺動面７が各ウェブ４′の領域において、規定された幅ｂを有しており、かつ摺動面７の、この実施の形態において付与されているウェブ４′及び凹部２の領域にも、円筒ラッピングプロセス（Rundlaeppvorgang）が施されている点で図１とは異なる。同様に、内側の周面７′、上側面３′及び下側面３″が看取可能である。

図３は、完成したピストンリング１の種々異なる実施の形態を示す図である。輪郭は、図１の下側の図に似通っている。図３の上側の図には、シャープな掻取りエッジ３、及びこの実施の形態において０．０５〜０．４５ｍｍの幅を有するようになっているウェブ４′が看取可能である。

図３の真ん中の図には、掻取りエッジ３が最大０．１ｍｍの曲率Ｒを有するようになっている、ことが看取可能である。

図３の下側の図は、ウェブ４′が、全幅が最大０．１５ｍｍの傾斜部９を介して、ピストンリング１の下側のリング面へと進出している状態を示す。

Claims (11)

1. 半径方向外側の摺動面（７）、半径方向内側の周面（７′）及び前記両面の間で延在している側面（３′，３″）を有する金属製の本体（１）に、前記摺動面側で凹部（２）を設け、
   少なくとも前記凹部（２）の底部（５）に、円筒形状から逸れた輪郭（６）を設け、
   前記摺動面（７）に前記凹部（２）も含めて少なくとも１つの耐摩耗性の層（８）を設け、
   予め規定可能な幅（ｂ）のウェブ（４′）を掻取りエッジ（３）共々形成するように、前記少なくとも１つの耐摩耗性の層（８）を少なくとも部分的に除去する、ピストンリング（１′）の製造方法であって、
   前記摺動面（７）及び／又は前記凹部（２）の少なくとも部分領域及び前記掻取りエッジ（３）の領域を窒化処理し、次いで前記摺動面（７）に、前記少なくとも１つの耐摩耗性の層としてのＰＶＤカバー層（８）又は多層構造（８）を設け、窒化層が残っている程度に前記ＰＶＤカバー層（８）又は多層構造（８）を除去することを特徴とする、ピストンリングの製造方法。
2. 前記凹部（２）の少なくとも前記底部（５）の各輪郭（６）を、機械加工することを特徴とする、請求項１記載の方法。
3. 前記凹部（２）に、直線形に斜めに延在する輪郭（６）又は湾曲して延在する輪郭（６）を設けることを特徴とする、請求項１又は２記載の方法。
4. 前記掻取りエッジ（３）を、角を尖らせて形成することを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項記載の方法。
5. 前記掻取りエッジ（３）に、最大０．２ｍｍの曲率（Ｒ）で対応付けられた側面（３″）に進入する湾曲部を設けることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項記載の方法。
6. 前記掻取りエッジ（３）に、対応付けられた側面（３″）に進入する傾斜部（９）を設けることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項記載の方法。
7. 鋳鉄、鋳鋼又は鋼線からなる本体（１）を使用することを特徴とする、請求項１から６までのいずれか１項記載の方法。
8. 半径方向外側の摺動面（７）、半径方向内側の周面（７′）及び前記両面の間で延在している側面（３′，３″）を有するピストンリングであって、
   前記摺動面（７）側に規定された幅（ｂ）のウェブ（４′）及び凹部（２）が設けられた金属製の本体（１）と、
   前記凹部（２）に設けられた少なくとも１つの耐摩耗性の層（８）と、
   を備え、
   前記ウェブ（４′）は、掻取りエッジ（３）を含み、
   前記少なくとも１つの耐摩耗性の層（８）と前記凹部（２）との間に窒化層が設けられていることを特徴とするピストンリング。
9. 前記摺動面（７）側で、一方の側において前記凹部（２）が形成されているか、又は完全に前記凹部（２）が形成されており、前記摺動面（７）の前記凹部（２）が形成された領域において底部側で、円筒形状から逸れた輪郭（６）が形成されている、請求項８記載のピストンリング。
10. 前記凹部（２）には、前記少なくとも１つの耐摩耗性の層（８）としてＰＶＤカバー層（８）が設けられていることを特徴とする、請求項８又は９記載のピストンリング。
11. 前記凹部（２）には、前記少なくとも１つの耐摩耗性の層（８）として多層構造（８）が設けられていることを特徴とする、請求項８又は９記載のピストンリング。

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