JP5936472B2 - 遊星歯車組のキャリア構造 - Google Patents
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Description
そして遊星歯車組は、上記キャリア構造のプラネタリピニオンを、キャリア構造の中心部におけるサンギヤおよびキャリア構造の外周部におけるリングギヤに噛合させて構成する。
つまり、対向プレートの一方は共通な軸部に直接結合するが、他方のプレートは、このプレートと上記一方のプレートとの間に橋絡させて架設した支柱により、当該一方のプレートに結合し、結果的に上記他方のプレートは、上記一方のプレートを介し、共通な軸部に間接的に結合していた。
かかる対向プレートへの入力荷重は、これらプレートを、それぞれの回転方向支持剛性に応じた角度だけ変位させようとする。
他方のプレートは、対向プレート間に架設した支柱により上記一方のプレートを介して間接的に軸部に結合させているため、上記一方のプレートの捩り剛性に応じた変位と支柱の剛性に応じた変位との和値に相当する大きな角度に亘って変位する。
このため対向プレートが相互に、少なくとも上記一方のプレートの剛性に応じた変位角度分だけ相対変位し、これらプレート間に橋絡させて回転自在に支持したプラネタリピニオンの回転軸線(プラネタリピニオンを支承するようプレート間に架設したピニオンシャフト)を、上記の相対変位に応じた角度だけ対応方向に傾斜させる。
このため遊星歯車組が大きなギヤノイズや振動を発生したり、歯当たりの不良により伝動効率や耐久性を低下されるという問題を生ずる懸念があった。
しかし、対向プレート間の相対変位を許容範囲内のものにするには、上記支柱が、プラネタリピニオンの支持強度要件を十分満足しているのに、これを超えて高剛性にする必要が生じ、相当な重量増を伴う。
かかる支柱の重量増はコスト上の不利益だけでなく、大型化により収納スペースの確保に関する設計上の困難をも生じ、更には支柱が回転体であることから、伝動効率(エネルギー消費)の点でも不利益を免れない。
先ず、本発明の前提となる遊星歯車組のキャリア構造を説明するに、これは、
一対の対向プレートおよび軸部を一体化したキャリア本体と、上記軸部から偏心した軸線周りで回転し得るよう上記対向プレート間に橋絡させて支持したプラネタリピニオンとから成るものである。
上記対向プレートのうち一方を上記軸部に結合し、他方のプレートは、複数の支柱を介して前記軸部に結合し、
前記複数の支柱は、前記他方のプレートの外周部から前記一方のプレートと前記軸部との相互結合部に向け収斂するよう延在すると共に、両端がそれぞれこれら相互結合部および前記他方のプレートの外周部に結合または一体化した構成に特徴づけられる。
対向プレートのうち一方は軸部に結合し、他方のプレートは、複数の支柱を介して前記軸部に結合し、
前記複数の支柱は、前記他方のプレートの外周部から前記一方のプレートと前記軸部との相互結合部に向け収斂するよう延在すると共に、両端がそれぞれこれら相互結合部および前記他方のプレートの外周部に結合または一体化したものであるため、
遊星歯車組の伝動中、支柱を介して軸部に結合した他方のプレートは、一方のプレートの変位による影響を何ら受けることがなくなり、支柱の剛性に応じた角度分しか変位しないこととなる。
従ってこれら変位量の差(対向プレート間の相対変位)が、上記一方のプレートの変位による影響を受けないこととなり、そのため、支柱の剛性を増大することなしに当該変位量間の差(対向プレート間の相対変位)を小さくすることができる。
しかもこの効果を、支柱の剛性増大に殆ど頼ることなしに達成し得て、支柱の剛性増大による重量増大およびコストアップや、伝動効率の低下(エネルギー損失の増大)を伴うことなしに上記の効果が奏し得られる。
遊星歯車組が大きなギヤノイズや振動を発生したり、歯当たりの不良により伝動効率や耐久性を低下されるという前記の問題を解消することができる。
よって、支柱の剛性増大による重量増やコストアップを回避し得ると共に、支柱の大型化による設計上の困難を防止し得るほか、回転体である支柱の重量増による伝動効率の低下(エネルギー損失の増大)をも回避することができる。
<第1実施例の構成>
図1,2は、本発明の第1実施例になる遊星歯車組のキャリア構造を示し、図1は、該キャリア構造の全体側面図、図2は、該キャリア構造の概略を示す説明用の図面である。
しかし他方のプレート3は、一方のプレート2と上記軸部5の軸端近傍との相互結合部における、図2(b)に「5a」で示した軸端から延在する支柱4を介して軸部5に結合する。
そして各支柱4を、上記軸部5の軸端5aに向け収斂するよう図2(a)に明示するごとくに傾斜させて延在させ、最終的にプレート3から遠い各支柱4の遊端を共通な環状体4aに合流させて、これに一体化する。
かかる環状体4aを、前記した軸端5aに嵌着することにより、この軸端5aから延在する支柱4を介してプレート3を軸部5に結合することが可能である。
ここでプラネタリピニオン6は、大径ピニオン部7および小径ピニオン部8を一体に有した段付きピニオンとする。
各プラネタリピニオン6を対向プレート2,3の周縁部間で軸線方向に延在させて、これら対向プレート2,3の周縁部間に回転自在に支持する。
プラネタリピニオン6の大径ピニオン部7を、キャリア構造の中心におけるサンギヤ(図示せず)に噛合させ、また小径ピニオン部8をキャリア構造の外周におけるリングギヤ(図示せず)の内周歯に噛合させ、これらにより遊星歯車組を構成する。
上記した本実施例による遊星歯車組のキャリア構造にあっては、
対向プレート2,3のうち一方のプレート2は軸部5に直接結合し、他方のプレート3は、一方のプレート2と軸部5との相互結合部における軸部5上の箇所から延在する支柱4を介して軸部5に結合するため、
遊星歯車組の伝動中、支柱4を介して軸部5に結合した他方のプレート3は、一方のプレート2の変位による影響を何ら受けることがなくなり、支柱4の剛性に応じた角度分しか変位しないこととなる。
従ってこれら変位量の差(対向プレート2,3間の相対変位)が、一方のプレート2の変位による影響を受けないこととなり、そのため、支柱4の剛性を増大することなしに当該変位量間の差(対向プレート2,3間の相対変位)を小さくすることができる。
しかもこの効果を、支柱4の剛性増大に殆ど頼ることなしに達成し得て、支柱4の剛性増大による重量増大およびコストアップや、伝動効率の低下(エネルギー損失の増大)を伴うことなしに上記の効果が奏し得られる。
遊星歯車組が大きなギヤノイズや振動を発生したり、歯当たりの不良により伝動効率や耐久性を低下されるという前記の問題を解消することができる。
よって、支柱4の剛性増大による重量増やコストアップを回避し得ると共に、支柱4の大型化による設計上の困難を防止し得るほか、回転体である支柱4の重量増による伝動効率の低下(エネルギー損失の増大)をも回避することができる。
図2(a)に示すごとく、キャリア本体1内に軸部5が殆ど延在しないような構造にすることが、従来構造におけると同様に可能である。
このため、キャリア本体1内に収容するギヤの設置スペースは従来通り不変に確保し易く、従ってキャリア構造の設計のし易さ、および組み立て作業性を悪化させることなしに前記した諸々の作用・効果を達成することができる。
キャリア本体1(キャリア構造)の組み立て部品点数を増やすことなく上記の効果が奏し得られ、コスト上および生産性の点で大いに有利である。
他方のプレート3に対する支柱4の結合剛性が高まり、前記の作用・効果を一層顕著なものにすることができる。
図3は、本発明の第2実施例になるキャリア構造を示す。
本実施例においては、基本的に図1,2につき前述した第1実施例と同様に構成するが、軸部5に直接結合するプレート2を、プラネタリピニオン6の支承透孔2a間における円周領域2bが扇形に切り欠かれた形状となす。
なお切り欠き2bは上記の扇形および大きさに限られず、プラネタリピニオン6の支承が可能であれば、任意に選定することができる。
かかる切り欠き2bは、プレート2の捩り剛性、つまりプラネタリピニオン支承透孔2aが形成されているプレート部分2cの円周方向剛性を低下させることとなり、以下の効果を奏し得る。
しかるに、プレート2の捩り剛性は通常、支柱4の剛性よりも高く、設計上の工夫がなければ、これら剛性の差に応じた対向プレート2,3の相対変位(プラネタリピニオン6の傾斜)は、許容範囲内に抑制し得ても、0近辺の微小値または0にすることが困難である。
よって、プレート2がその捩り剛性に応じて変位する変位量と、プレート3が支柱4の剛性に応じて変位する変位量との差を、限りなく0に近づけることができ、対向プレート2,3の相対変位(プラネタリピニオン6の傾斜)を殆ど無くし得る。
このため本実施例では、ギヤの噛み合い不良を生じないようにするという第1実施例の効果を更に確実なものにすることができ、遊星歯車組が大きなギヤノイズや振動を発生したり、歯当たりの不良により伝動効率や耐久性を低下されるという問題をほぼ完全に回避することができる。
図4は、本発明の第3実施例になるキャリア構造を示す。
本実施例においては、基本的に図1,2につき前述した第1実施例と同様に構成するが、軸部5に直接結合したプレート2を、プレート3から遠い各支柱4の遊端が合流する共通な環状体4aと、プレート2の外周部との間に延在するステー9によっても、プレート2と軸部5との相互結合部における軸部5上の箇所に結合する。
そして、プレート2から遠い各ステー9の遊端を、円周方向同位置にある支柱4の遊端に向け延在させて当該支柱4の遊端に突き合わせ、これら支柱4の遊端における共通な環状体4aに結合することで、ステー9の遊端をそれぞれ、プレート2と軸部5との相互結合部における軸部5上の箇所に結合する。
また、プレート2に近いステー9の端部はそれぞれ、プレート2の外周部に結合、若しくは一体化する。
図4に示す本実施例のキャリア構造によれば、軸部5に直接結合させたプレート5を、プレート2と軸部5との相互結合部(環状体4a)から延在するステー9を介しても軸部5に結合したため、
遊星歯車組の伝動中における対向プレート2,3の捩り剛性を第1実施例よりも更に近づけることができ、対向プレート2,3間の相対変位を一層小さくし得る。
よって、対向プレート2,3間に橋絡させて回転自在に支持したプラネタリピニオン6の回転軸線の傾斜を更に効果的に抑制でき、第1実施例の前記した作用効果が更に顕著なものとなる。
ステー9の配置が支柱4の配置と同様になって、遊星歯車組の伝動中に受ける捩り反力に対するステー9の剛性が支柱4のそれと同様なものとなり、上記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
図5,6は、本発明の第4実施例になるキャリア構造を示す。
本実施例においては、基本的に図4につき上述した第3実施例と同様に構成するが、ステー9の遊端と支柱4の遊端とをプレート2,3間の中間位置において結合し、これによりステー9の長さと支柱4の長さとが略同じになるよう構成する。
本実施例のキャリア構造によれば、ステー9の長さと支柱4の長さとが略同じであることによって、遊星歯車組の伝動中に受ける捩り反力に対するステー9の剛性が支柱4のそれと同様なものとなる。
よって、対向プレート2,3間に橋絡させて回転自在に支持したプラネタリピニオン6の回転軸線の傾斜を第3実施例よりも更に効果的に抑制でき、前記した作用効果を更に顕著なものにし得る。
なお前記した第1実施例では、他方のプレート3を、一方のプレート2と軸部5との相互結合部における軸部5上の箇所から延在する支柱4で軸部5に結合することとしたが、
他方のプレート3を、一方のプレート2と軸部5との相互結合部におけるプレート2上の箇所から延在する支柱4で軸部5に結合するようにしてもよいのは言うまでもなく、この場合も同様な効果を達成し得ること勿論である。
2 一方のプレート
2a プラネタリピニオン支承透孔
2b 扇形切り欠き
3 他方のプレート
3a プラネタリピニオン支承透孔
4 支柱
4a 環状体
5 軸部
5a 軸端
6 プラネタリピニオン
7 大径ピニオン部
8 小径ピニオン部
9 ステー
Claims (9)
- 一対の対向プレートおよび軸部を一体化したキャリア本体と、前記軸部から偏心した軸線周りで回転し得るよう前記対向プレート間に橋絡させて支持したプラネタリピニオンとから成るキャリア構造を具えた遊星歯車組において、
前記対向プレートのうち一方を前記軸部に結合し、他方のプレートは、複数の支柱を介して前記軸部に結合し、
前記複数の支柱は、前記他方のプレートの外周部から前記一方のプレートと前記軸部との相互結合部に向け収斂するよう延在すると共に、両端がそれぞれこれら相互結合部および前記他方のプレートの外周部に結合または一体化したことを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 請求項1に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記支柱は、前記相互結合部における前記軸部上の箇所と、前記他方のプレートとの間に延在するものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 請求項2に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記一方のプレートを前記軸部の一方の軸端近傍に結合し、
前記支柱は、前記一方のプレートと前記軸端近傍との相互結合部における前記軸端と、前記他方のプレートとの間に延在するものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 前記プラネタリピニオンが複数個一組として円周方向に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記一方のプレートは、前記プラネタリピニオンを回転自在に支持したピニオン支持部間の円周領域を切り欠かれたものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記支柱は前記他方のプレートに一体化して設け、該他方のプレートから遠い遊端を前記一方のプレートと軸部との相互結合部に結合したものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記一方のプレートは、前記相互結合部から延在するステーを介しても前記軸部に結合したものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 請求項6に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記相互結合部から延在するステーは、前記一方のプレートを外周部において前記軸部に結合するものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 請求項6または7に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記ステーは、前記一方のプレートから前記支柱に接近する方向へ延在し、前記他方のプレートから遠い該支柱の端部に結合したものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。 - 請求項6〜8のいずれか1項に記載された、遊星歯車組のキャリア構造において、
前記ステーおよび支柱は、これらステーおよび支柱の長さが略同じになるよう構成したものであることを特徴とする遊星歯車組のキャリア構造。
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