JP5936044B2 - インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法 - Google Patents

インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5936044B2
JP5936044B2 JP2012069274A JP2012069274A JP5936044B2 JP 5936044 B2 JP5936044 B2 JP 5936044B2 JP 2012069274 A JP2012069274 A JP 2012069274A JP 2012069274 A JP2012069274 A JP 2012069274A JP 5936044 B2 JP5936044 B2 JP 5936044B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
ink
organic solvent
mixture
binder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012069274A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013199606A (ja
Inventor
ちさと 栗山
ちさと 栗山
北田 満
満 北田
定 永浜
定 永浜
龍一 松岡
龍一 松岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
DIC Corp
Original Assignee
DIC Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by DIC Corp filed Critical DIC Corp
Priority to JP2012069274A priority Critical patent/JP5936044B2/ja
Publication of JP2013199606A publication Critical patent/JP2013199606A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5936044B2 publication Critical patent/JP5936044B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Polymerisation Methods In General (AREA)
  • Graft Or Block Polymers (AREA)
  • Polyurethanes Or Polyureas (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Description

本発明は、例えばインクジェット印刷用インクに使用するバインダーの製造方法に関する。
近年、成長が著しいインクジェット印刷関連業界では、インクジェットプリンターの高性能化やインクの改良等が飛躍的に進み、一般家庭でも容易に銀塩写真並みの高光沢で高精細な画像を得ることが可能となりつつある。
なかでもインクについては、従来の染料インクから顔料インクへの移行や、溶剤系から水系への移行等の、高画質化や環境負荷低減を目的とした改良が急速に進められており、現在は、水系の顔料インクをベースとした開発が積極的に行われている。
また、前記インクには、インクジェットプリンター等の高性能化に伴って、年々、様々な性能が要求されるようになっている。例えば、インクジェットプリンターを構成するインク吐出ノズルの経時的な詰まりを引き起こすことなく、長期間にわたりインクの吐出不良や吐出方向の異常を引き起こさないインクの吐出安定性や、バインダー樹脂に、顔料または染料や、その他の添加剤を混合し製造して得られるインクの、経時的な分離や凝集を引き起こさない配合安定性が挙げられる。
前記インク吐出性や配合安定性に優れたインクジェット印刷用インクとしては、例えば顔料と、水と、該顔料を包含しかつ該顔料をインク組成物中に分散可能とする水不溶性ビニルポリマーのポリマー粒子と、ウレタン樹脂とを少なくとも含むインク組成物が知られており、前記インク組成物と、界面活性剤であるアセチレングリコール類とを混合したものを使用できることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、前記インク組成物であっても、産業界から求められる非常に高いレベルの吐出性や配合安定性には、あと一歩及ぶものではなく、長期間にわたって使用した場合に経時的なインク吐出ノズルの詰まり等を引き起こす場合があった。
一方、インクジェット印刷物の使用分野が広範となるのに伴い、より一層の高いレベルの耐擦過性が求められるなかで、前記文献1に記載されたようなインク組成物では、例えば極所的に強い外力が加わった場合等に、依然として顔料の脱落等に起因した印刷画像の色落ちや劣化や損傷を引き起こす場合があった。また、前記インク組成物を用いて印刷して得られた印刷物は、その表面に、例えばアルカリ性洗浄剤等が付着した場合に、印字表面に浮きやにじみが発生するという問題があった。
特開2006−282760号公報
本発明が解決しようとする課題は、非常に優れたインク吐出性と配合安定性とを両立でき、かつ、耐擦過性及び耐アルカリ性に優れた印刷物を形成可能なインクジェット印刷インクの製造に使用するインクジェット印刷インク用バインダー及びその製造方法を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、以下の製造方法によって、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、親水性基を有するポリウレタン(A1)粒子中に、一部または全部のビニル重合体(A2)が内在し形成した複合樹脂粒子(A3)と、アセチレン化合物(B)と、水系媒体(C)とを含有するインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法であって、前記製造方法が、
親水性基を有するポリオール(a1−1)を含むポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)とを有機溶剤(D)中または無溶剤下で反応させ親水性基を有するポリウレタン(A1)を得、必要に応じ有機溶剤(D)を供給することによって前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]を製造する工程(1)、
前記有機溶剤(D)溶液[I]と前記アセチレン化合物(B)と前記水系媒体(C)とを混合することによって混合物[II]を製造し、前記混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)の一部または全部を除去することによって混合物[III]を製造する工程(2)、及び、
前記混合物[III]と、前記ビニル重合体(A2)の製造に使用するビニル単量体混合物とを混合し、前記ビニル単量体混合物をラジカル重合する工程(3)を含むことを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法に関するものである。
また、本発明は、前記インクジェット印刷インク用バインダーと、顔料または染料とを含有するインクジェット印刷用インク、及び、それを用いて印刷の施された印刷物に関する。
本発明の製造方法によれば、優れたインク吐出性と配合安定性とを有し、かつ、耐擦過性及び耐アルカリ性に優れた印刷画像を形成可能なインクジェット印刷用インクの製造に使用可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得ることができる。
また、本発明の製造方法によって得られたインクジェット印刷インク用バインダーは、インクの乾燥性にも優れることから、例えば産業用ワイドフォーマットプリンター等のインク吐出量の多いプリンターを用いた場合であっても、その生産効率を低下させることなく、高鮮明で耐擦過性及び耐アルカリ性等に優れた印刷画像を形成することができる。
本発明は、親水性基を有するポリウレタン(A1)粒子中に、一部または全部のビニル重合体(A2)が内在し形成した複合樹脂粒子(A3)と、アセチレン化合物(B)と、水系媒体(C)と、必要に応じてその他の添加剤を含有するインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法である。
本発明の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)〜工程(3)を経る方法である。以下、各工程についてそれぞれ詳細に説明する。
前記工程(1)は、親水性基を有するポリオール(a1−1)を含むポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)とを有機溶剤(D)中または無溶剤下で反応させ親水性基を有するポリウレタン(A1)を得、必要に応じ有機溶剤(D)を供給することによって前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]を製造する工程である。
前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]の具体的な製造方法としては、例えば前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを、予め30℃〜150℃に調整した有機溶剤(D)中に一括または逐次供給し、70℃〜150℃で3時間〜30時間程度反応させる方法が挙げられる。前記反応は、前記ポリオール(a1)及び前記ポリイソシアネート(a2)の合計量に対して5質量%〜300質量%の有機溶剤(D)の存在下で行うことが好適であり、前記反応終了後、必要に応じて前記有機溶剤(D)を更に供給してもよい。
また、前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]は、例えば前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを無溶剤下で混合し、60℃〜200℃で0.5時間〜10時間程度反応させ、その反応途中または反応終了後に、有機溶剤(D)を供給し混合することによって製造することができる。
前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]の製造に使用するポリオール(a1)としては、親水性基を有するポリオール(a1−1)や、その他のポリオール(a1−2)等を組み合わせ使用することができる。前記ポリオール(a1)は、複数の種類のものが予め混合されていてもよく、別々に反応容器中に供給してもよい。
前記親水性基を有するポリオール(a1−1)と前記その他のポリオール(a1−2)とを組み合わせ使用する場合、例えば前記親水性基を有するポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを有機溶剤(D)中で反応させることによってウレタンプレポリマー(A1−1)の有機溶剤(D)溶液を製造し、次いで、前記ウレタンプレポリマー(A1−1)の有機溶剤(D)溶液と、前記その他のポリオール(a1−2)とを混合し反応させることによって、ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]を製造することが、非常に優れたインクの配合安定性と吐出安定性とを両立したインクジェット印刷用インクを製造するうえで好ましい。
また、前記親水性基を有するポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを無溶剤下で反応させることによってウレタンプレポリマー(A1−1)を製造し、次いで、前記ウレタンプレポリマー(A1−1)と、前記その他のポリオール(a1−2)や有機溶剤(D)を含む混合物とを混合し反応させることによってポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]を製造することもできる。
また、前記親水性基を有するポリオール(a1−1)は、2回以上に分割して、前記ポリイソシアネート(a2)と混合し反応させてもよい。具体的には、前記親水性基を有するポリオール(a1−1)の一部と前記ポリイソシアネート(a2)とを有機溶剤(D)中で反応させることによってウレタンプレポリマー(A1−1)の有機溶剤(D)溶液を製造し、次いで前記ウレタンプレポリマー(A1−1)の有機溶剤(D)溶液と、残りの親水性基を有するポリオール(a1−1)や前記その他のポリオール(a1−2)とを一括または別々に供給し反応させることによって、ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]を製造することが、吐出安定性や配合安定性に優れたインクジェット印刷用インクを製造するうえで好ましい。この場合、前記ポリウレタン(A1)の製造に使用する親水性基を有するポリオール(a1−1)の全量の40質量%〜80質量%を前記ウレタンプレポリマー(A1−1)の有機溶剤(D)溶液を製造する際に使用し、残りの20質量%〜60質量%を前記ウレタンプレポリマー(A1−1)との反応に使用することが、吐出安定性や配合安定性に優れたインクジェット印刷用インクを製造するうえで好ましい。
前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)との反応は、例えば前記ポリオール(a1)の有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(a2)の有するイソシアネート基の当量割合[前記イソシアネート基/前記水酸基]が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。また、後述する鎖伸長剤を使用する場合には、前記当量割合が1.1〜1.5の範囲であることが好ましい。
前記親水性基を有するポリオール(a1−1)としては、例えばアニオン性基を有するポリオール、カチオン性基を有するポリオール、ノニオン性基を有するポリオールを使用することができ、アニオン性基を有するポリオールやカチオン性基を有するポリオールを使用することが好ましく、アニオン性基を有するポリオールを使用することが、インクの良好な吐出安定性と配合安定性とを付与するうえで好ましい。
前記アニオン性基を有するポリオールとしては、カルボキシル基やスルホン酸基、カルボキシレート基やスルホネート基等を有するポリオールを使用することができ、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基を有するポリオールと各種ポリカルボン酸またはラクトンとを反応させて得られるカルボキシル基を有するポリエステルポリオールや、片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体等を使用することもできる。
前記片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体としては、具体的には、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のチオグリセリンの存在下でカルボキシル基をを有するするビニル単量体を重合して得られるものを好適に使用できる。
前記スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩と、前記低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用することができる。
また、前記アニオン性基を有するポリオールとしては、前記したカルボキシル基を有するポリオールやスルホン酸基を有するポリオール等の低分子量の親水性基を有するポリオールと、例えばアジピン酸等の各種ポリカルボン酸とを反応させて得られる親水性基を有するポリエステルポリオール等を使用することもできる。
前記アニオン性基を有するポリオールとしては、アニオン性基の一部または全部が予め塩基性化合物によって中和され、例えばカルボキシレート基やスルホネート基を形成したものであってもよい。
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、沸点が100℃以上のモノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるインクの分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.2〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.6〜1.5(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
また、前記カチオン性基を有するポリオールとしては、例えば3級アミノ基を有するポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和、または、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等の四級化剤で四級化されていてもよい。
また、前記ノニオン性基を有するポリオールとしては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオールを使用することができる。
具体的には、ポリアルキレンオキサイド鎖の分子量が400〜3,000程度であるポリオールを使用することが好ましく、600〜1,000のポリオールを使用することがより好ましい。また、前記ポリアルキレンオキサイド鎖がポリエチレンオキサイド鎖であるポリオールを使用することが好ましい。
前記ポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリオールとしては、例えばパーストープ社が商品名「Ymer N120」として市販しているものを使用することができる。
前記親水性基を有するポリオール(a1−1)は、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)との合計量に対して、1質量%〜45質量%の範囲で使用することが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲で使用することが、インクの良好な保存安定性と配合安定性とを両立するうえでより好ましい。また、前記親水性基を有するポリオール(a1−1)として前記アニオン性基を有するポリオールを使用する場合も、5質量%〜20質量%の範囲で使用することが好ましい。
また、前記ポリウレタン(A1)の製造に使用可能な前記その他のポリオール(a1−2)としては、例えば脂肪族環式構造を有するポリオールを使用することができる。
前記脂肪族環式構造を有するポリオールとしては、例えばシクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、ジシクロヘキサンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等の、概ね100〜500程度の低分子量の脂肪族環式構造を有するポリオールや、脂肪族環式構造を有するポリカーボネートポリオール、脂肪族環式構造を有するポリエステルポリオール、脂肪族環式構造を有するポリエーテルポリオールを1種または2種以上を併用して使用することができる。
また、前記その他のポリオール(a1−2)としては、前記脂肪族環式構造を有するポリオールの他に、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオール等を使用することができる。前記ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオールは、前記親水性基を有するポリオール(a1−1)や前記脂肪族環式構造を有するポリオールと区別する観点から、親水性基や脂肪族環式構造を有さないものである。親水性基を有するのポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオールやポリエステルポリオールは、前記親水性基を有するポリオール(a1−1)に包含され、脂肪族環式構造を有するポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオールやポリエステルポリオールは、前記脂肪族環式構造を有するポリオールに包含される。
前記その他のポリオール(a1−2)としては、インクの良好な吐出安定性と配合安定性とを両立し、かつ、耐擦過性に優れた印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インクを得るうえで、前記ポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオールを前記親水性基を有するポリオール(a1−1)と組み合わせ使用することが好ましく、前記ポリエーテルポリオールとアニオン性基を有するポリオールとを組み合わせ使用することがより好ましい。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、インクの吐出安定性や配合安定性に優れ、耐擦過性に優れた印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダー及びインクを得る観点から、ポリテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコール等を使用することが特に好ましい。
前記ポリエーテルポリオールとしては、500〜7,000の数平均分子量を有するものを使用することができる。前記ポリエーテルポリオールとしてポリテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコールを使用する場合には、500〜5,000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、500〜3,500の数平均分子量を有するものを使用することが、より一層優れた吐出安定性と配合安定性を両立し、かつ、耐擦過性に優れた印刷画像を形成するうえでより好ましい。
また、前記その他のポリオールとして使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を使用することできる。
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールや、ポリヘキサメチレンアジペート等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
前記その他のポリオール(a1−2)としての前記ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオールは、前記ポリウレタン(A1)の製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計量に対して25質量%〜95質量%の範囲で使用することが好ましい。とりわけ、ポリエーテルポリオール、好ましくは、ポリテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコールを使用する場合には、前記ポリウレタン(A1)の製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計量に対して30質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましく、45質量%〜85質量%の範囲で使用することが、より一層優れた吐出安定性と配合安定性を両立し、かつ、耐擦過性に優れた印刷画像を形成するうえでより好ましい。
また、前記工程(1)で使用するポリイソシアネート(a2)としては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造を有するジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。なかでも、脂肪族環式構造を有するジイソシアネートを使用することが、吐出安定性や配合安定性に優れたインクを得るうえで好ましい。また、前記ポリイソシアネート(a2)としては、前記官能基[X]を有するポリイソシアネートを使用することもできる。
また、前記ポリウレタン(A1)の製造工程(1)で使用する有機溶剤(D)としては、例えばアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、テトラヒドラフランに代表される水系媒体より低沸点である溶剤を、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類を使用することが、インクジェット印刷インク用バインダーの製造工程における凝集等を防止し、安定して製造を行うことができるため好ましい。
また、前記有機溶剤(D)としては、前記水系媒体(C)より低沸点の溶剤のほかに、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のモノアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール化合物、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類等のより親水性の高い有機溶剤を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。前記親水性の高い有機溶剤は、前記工程(3)の前後で使用することが好ましい。
また、前記ポリウレタン(A1)としては、耐擦過性に優れた印刷画像を形成可能なインクジェット印刷用インクを得る観点から、ウレア結合を有するものを使用することが好ましい。前記耐擦過性は、印刷画像表面に摩擦等の外力が加わった場合に生じうる顔料等の欠落に起因した印刷画像の劣化等を防止可能な特性を指す。
前記ウレア結合を有するポリウレタン(A1)は、例えば、前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを有機溶剤(D)中または無溶剤下で反応させ、必要に応じ有機溶剤(D)を供給することによって分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A1−1)の有機溶剤(D)溶液を製造し、次いで該有機溶剤(D)溶液とアミノ基を有する化合物とを混合し、前記ウレタンプレポリマー(A1−1)が有するイソシアネート基とアミノ基を有する化合物とを反応させることによって製造することができる。
前記アミノ基を有する化合物としては、例えばエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジソプロパノールアミンや、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等を使用することができる。
前記ポリウレタン(A1)としては、3,000〜200,000の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、10,000〜80,000の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、20,000〜65,000の重量平均分子量を有するものを使用することが、インクジェット印刷用インクの非常に優れた吐出安定性及び非常に優れた配合安定性を両立できるため好ましい。また、本発明で得られるインクジェット印刷用インクに優れた耐擦過性を付与する場合には、前記ポリウレタン(A1)としては、重量平均分子量50,000超えて200,000以下の高分子量体を使用することもできる。
前記ポリウレタン(A1)として比較的高分子量のものを製造する場合には、必要に応じて鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a1)とを10℃〜60℃に調整した有機溶剤(D)中に一括または逐次供給し、10℃〜60℃で0.1時間〜5.0時間程度反応させることによってウレタンプレポリマー(A1−1)の有機溶剤(D)溶液を製造し、次いで、前記有機溶剤(D)溶液と鎖伸長剤とを混合し反応させる方法が挙げられる。
また、前記ポリウレタン(A1)を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン等の1個の1級アミノ基と1個の2級アミノ基をを有するするジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド類等のポリアミン、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を使用することができる。
前記鎖伸長剤を使用する場合には、例えば前記ポリアミンが有するアミノ基と、前記ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基との当量比[アミノ基/イソシアネート基]が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
前記工程(1)で得られたポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]は、該溶液[I]の全量に対して、前記ポリウレタン(A1)を15質量%〜85質量%含むものであることが好ましい。
次に、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法を構成する前記工程(2)について説明する。
前記工程(2)は、前記有機溶剤(D)溶液[I]と前記アセチレン化合物(B)と前記水系媒体(C)とを混合することによって混合物[II]を製造し、前記混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)の一部または全部を除去することによって混合物[III]を製造する工程である。前記混合物[III]は、前記ポリウレタン(A1)や前記アセチレン化合物(B)が水系媒体(C)に分散や溶解等したものである。
本発明の製造方法では、後述する工程(2)において、有機溶剤(D)の一部または全部を除去する工程を開始する前に、予め前記有機溶剤(D)溶液[I]とアセチレン化合物(B)と水系媒体(C)とを混合し、混合物[II]を製造することが重要である。これにより、インクジェットプリンターを構成するインク吐出ノズルの経時的な詰まりや吐出方向の異常を引き起こすことなく、長期間にわたるインクの吐出安定性と、インクジェット印刷用インクの配合安定性とを備えたインクジェット印刷用インクの製造に使用可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得ることができる。
したがって、本願発明では、前記工程(2)における有機溶剤(D)の一部または全部を除去する工程を開始する前に、アセチレン化合物(B)を使用することが必須である。但し、本願発明は、従来技術のように、アセチレン化合物を、インクジェット印刷インク用バインダーと顔料等とを混合、配合しインクを製造する際に使用することを排除するものではない。
前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]と、前記アセチレン化合物(B)と、水系媒体(C)とを混合する方法としては、20℃〜80℃の条件下、それらを一括または逐次供給し混合する方法等が挙げられる。それらは、例えば前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]と前記水系媒体(C)とを混合し、次いでアセチレン化合物(B)を混合してもよく、また、前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]と、前記アセチレン化合物(B)と、前記水系媒体(C)とをそれぞれ別々に混合してもよく、前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]と、前記アセチレン化合物(B)及び前記水系媒体(C)の混合物とを、混合してもよい。
前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]と前記水系媒体(C)とを混合する際には、前記ポリウレタン(A1)が有するアニオン性基等の親水性基の一部または全部を、塩基性化合物等を用いて予め中和することが、前記ポリウレタン(A1)の前記水系媒体(C)中における良好な分散安定性を維持するうえで好ましい。なお、前記親水性基の中和は必ずしも必須ではなく、また、前記ポリウレタン(A1)の製造に使用する前記親水性基を有するポリオール(a1−1)の一部または全部が予め中和され、例えばカルボキシレート基やスルホネート基を有するものである場合には、再度、中和の工程を経る必要はない。
前記工程(2)で使用する前記アセチレン化合物(B)は、前記複合樹脂粒子(A3)100質量部に対して0.001質量部〜0.5質量部の範囲で使用することが好ましく、0.005質量部〜0.1質量部の範囲であることが、インクの優れた吐出安定性と保存安定性とを維持するうえでより好ましい。
前記アセチレン化合物(B)としては、例えばアセチレンモノアルコールやアセチレングリコール等を単独または併用して使用することができる。
前記アセチレンモノアルコールは、アセチレン基と1個の水酸基を有する化合物であって、例えば下記一般式(3)で示される構造を有する化合物を使用することができる。
前記アセチレングリコールは、アセチレン基と2個の水酸基を有する化合物であって、例えば下記一般式(1)や(2)で示される化合物を使用することができる。
前記したなかでも、アセチレングリコールを使用することが、インクの優れた配合安定性、及びインクの優れた吐出安定性を長期間維持できるため好ましい。
Figure 0005936044
(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。R及びRは、それぞれ独立してメチル基またはエチル基である。)
Figure 0005936044
(一般式(2)中のR及びRは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。R及びRは、それぞれ独立してメチル基またはエチル基である。m及びnは、1〜60の整数である。)
Figure 0005936044
(一般式(3)中のR及びRは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。)
前記アセチレン化合物(B)としては、具体的には、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールおよび2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,4,4,7,9−ペンタメチル−5−デシン−7−オールや、それらのアルキレンオキサイド付加物を使用することができる。
前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドや、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド等との共重合体が挙げられるが、エチレンオキサイドであることが好ましい。
また、前記アセチレン化合物(B)としては、前記一般式(1)で表されるアセチレングリコールを含むものとして市販されるサーフィノール104シリーズや、前記一般式(2)で表されるアセチレングリコールを含むものとして市販されるサーフィノール400シリーズ、前記一般式(3)で表されるアセチレンモノアルコールを含むものとして市販されるサーフィノール500シリーズ(いずれもエアープロダクツ社製)を使用することができ、なかでも前記サーフィノール104シリーズやサーフィノール400シリーズ、及びそれらを溶剤等で希釈したものを使用することが好ましい。
また、前記水系媒体(C)としては、水や、水及びそれと混和する有機溶剤の混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、環境に対する負荷を低減する観点から、水のみを使用することが特に好ましい。
前記水系媒体(C)は、前記工程(2)において、前記ポリウレタン(A1)の全量に対して100質量%〜700質量%の範囲となるよう使用することが好ましく、300質量%〜500質量%の範囲で使用することがより好ましい。
また、前記有機溶剤(D)が多量に残留したインクジェット印刷インク用バインダーを用いて得られたインクジェット印刷用インクは、VOC規制や環境調和型製品を提供するうえで好ましくない。したがって、本工程(2)により、混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)の好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上、特に好ましくは有機溶剤(D)の全てを除去することが好ましい。
前記有機溶剤(D)の除去方法としては、例えば蒸留法や還流法等が挙げられる。なかでも、蒸留法を採用することが好ましく、減圧下で蒸留を行う減圧蒸留法を採用することが、前記混合物[II]中の有機溶剤(D)を効率よく除去するうえで好ましい。
前記減圧蒸留法は、例えば、反応容器中の前記混合物[II]を、常圧(100kPa)に対して1KPa〜50KPaの範囲で、0.5時間〜5.0時間かけて減圧し、その後、前記と同様の減圧条件下で3時間〜30時間程度蒸留を実施する。前記減圧蒸留途中における前記混合物[II]中の有機溶剤(D)の量は、流量計により適宜確認することができる。
前記蒸留法によって有機溶剤(D)を除去する場合には、通常、有機溶剤(D)の沸点が水系媒体(C)の沸点よりも低いため、蒸留によって有機溶剤(D)が優先的に除去されるが、水系媒体(C)の一部も併せて除去される。
本発明では、前記混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)の全質量の50質量%〜300質量%と同質量の水系媒体(C)が、前記混合物[II]中から除去されるまで蒸留を継続することが好ましく、50質量%〜150質量%と同質量の水系媒体(C)が、前記混合物[II]中から除去されるまで蒸留を継続することが好ましい。
具体的には、前記混合物[II]中に有機溶剤(D)が10質量部含まれていた場合、その50質量%〜300質量%である5質量部〜30質量部の水系媒体(C)が、混合物[II]中から除去されるまで蒸留を継続することが好ましい。
これにより、前記混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)を、より好ましくは99質量%以上を、特に好ましくは実質的に全て除去することが可能となる。
また、本発明では、前記アセチレン化合物(B)の全量の好ましくは60質量%〜100質量%、より好ましくは60質量%〜90質量%を、前記工程(2)における有機溶剤(D)の一部または全部を除去する工程の前に、前記有機溶剤(D)溶液[I]と前記水系媒体(C)等と混合し、好ましくは残りの40質量%〜0質量%、より好ましくは40質量%〜10質量%のアセチレン化合物を、前記工程(2)における前記有機溶剤(D)の一部または全部を除去した後に使用することが、製造過程における泡の発生を抑制し、インクジェット印刷インク用バインダーの生産効率を向上するうえで好ましい。
前記残りの40質量%〜10質量%のアセチレン化合物(B)は、前記有機溶剤(D)の除去途中、または、そのすべてを除去した後に供給してもよいが、前記混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)の全量の80質量%以上が前記混合物[II]から除去された後、前記混合物[II]中に含まれる前記有機溶剤(D)の全量の10質量%と同質量の水系媒体(C)が除去されるまでの間に、供給し混合することが好ましい。
具体的には、前記混合物[II]中に有機溶剤(D)が10質量部含まれていた場合、その80質量%に相当する8質量部以上の有機溶剤(D)が混合物[II]から除去された後に、前記アセチレン化合物(B)を供給することが好ましい。また、前記供給は、前記有機溶剤(D)の全量の10質量%に相当する1重量部の水系媒体(C)が、前記混合物[II]から除去されるまでに行うことが好ましい。これにより、インクジェット印刷インク用バインダーの製造途中に生じうる発泡を抑制し、その生産効率を向上することが可能となる。前記アセチレン化合物(B)の前記混合物[II]への供給は、一括または逐次供給のいずれでも良い。
次に、前記工程(3)について説明する。
前記工程(3)は、前記工程(2)で得た前記混合物[III]と、前記ビニル重合体(A2)の製造に使用するビニル単量体混合物とを混合し、前記ビニル単量体混合物をラジカル重合することによってビニル重合体(A2)を製造する工程である。
前記工程(3)で使用するビニル単量体混合物としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル単量体、スチレン、ブタジエン等を使用することができる。なかでも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが、インクの優れた吐出性を付与するうえでより好ましい。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を使用することができる。なかでも、炭素原子数1個〜6個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸n−ブチルを組み合わせ使用することが、印刷画像の優れた耐擦過性と耐アルカリ性等の耐久性と、インクの優れた吐出性とを両立するうえでより好ましい。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、前記ビニル重合体(A2)の製造に使用するビニル単量体の全質量に対して70質量%以上の範囲で使用することが好ましく、80質量%以上で使用することがより好ましく、90質量%以上で使用することが、インクの優れた吐出性を付与するうえで好ましい。
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、−50℃〜0℃の範囲のホモポリマーを形成しうる(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、50℃〜120℃の範囲のホモポリマーを形成しうる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを組み合わせ使用することもできる。かかる場合には、[−50℃〜0℃の範囲のホモポリマーを形成しうる(メタ)アクリル酸アルキルエステル/50℃〜120℃の範囲のホモポリマーを形成しうる(メタ)アクリル酸アルキルエステル)の質量割合が、100/0〜25/75の範囲で使用することが、インクの吐出性と印刷物の耐久性とを向上するうえで好ましい。
前記−50℃〜0℃の範囲のホモポリマーを形成しうる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸ブチル等を使用することができ、50℃〜120℃の範囲のホモポリマーを形成しうる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸メチル等を使用することができる。
また、前記ビニル単量体としては、前記複合樹脂粒子(A)を形成可能な範囲で、カルボキシル基を有するビニル単量体を使用することができ、例えば(メタ)アクリル酸や、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート等を使用することができる。また、前記1個のカルボキシル基を有するビニル単量体(a1)としては、アロニックス M−5300(東亞合成(株)製、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート)等を使用することもできる。
前記カルボキシル基を有するビニル単量体を使用する場合には、前記複合樹脂粒子(A3)を製造するうえで使用するビニル単量体の全量に対して0.1質量%〜85質量%の範囲で使用することが好ましい。
また、前記ビニル単量体としては、前記したものの他に、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸β−(パーフルオロオクチル)エチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレンやα−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等を使用することもできる。
また、前記その他のビニル単量体としては、前記したものの他に架橋性官能基を有するビニル単量体を使用することもできる。
前記架橋性官能基を有するビニル単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する重合性単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基を有する重合性単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基を有する重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基を有する重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有する重合性単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基を有する重合性単量体;アリル(メタ)アクリレート等のアリル基を有する重合性単量体;アクロレイン等のカルボニル基を有するビニル単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基を有するビニル単量体等を使用することができる。
前記ビニル単量体のラジカル重合は、重合開始剤を使用することによって行うことができる。具体的には、前記ビニル単量体のラジカル重合は、40℃〜90℃程度の条件下にで前記ビニル単量体混合物と重合開始剤とを混合することによって進行かせることができる。
前記重合開始剤としては、例えば過硫酸塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等のラジカル重合開始剤や、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。
前記ラジカル重合開始剤としては、後述する還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
前記重合開始剤の代表的なものである過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、有機過酸化物類として、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等を使用することができる。
前記工程(1)〜(3)によって得られたインクジェット印刷インク用バインダーは、優れたインク吐出安定性と配合安定性とを維持する観点から、好ましくは10nm〜350nm程度の平均粒子径を有する前複合樹脂粒子(A3)が、前記水系媒体(C)中に安定して分散または溶解したものであることが好ましい。
前記複合樹脂粒子(A3)としては、前記水系媒体(C)中に安定して分散する観点から、親水性基を有することが好ましい。
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、なかでもアニオン性基を使用することがより好ましい。
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、前記カルボキシル基やスルホン酸基の一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散安定性を付与するうえで好ましい。また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができ、前記ノニオン性基としては、例えばポリエチレンオキサイド鎖等を使用することができる。
前記親水性基は、前記複合樹脂粒子(A3)全体に対して1mmol/kg〜2,000mmol/kgの範囲で存在することが好ましく、15mmol/kg〜1,500mmol/kgの範囲であることが良好な保存安定性や吐出安定性を備えたインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえでより好ましい。
前記複合樹脂粒子(A3)は、前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)とがそれぞれ別々に独立して樹脂粒子を形成し水系媒体(C)中に分散した状態で存在するものではなく、前記親水性基を有するポリウレタン(A1)粒子中に、一部または全部のビニル重合体(A2)が内在し形成したものである。
具体的には、前記複合樹脂粒子(A3)は、一部または全部のビニル重合体(A2)が前記ポリウレタン(A1)粒子内部に、単一または複数の粒子状に分散したものであることが好ましく、前記ビニル重合体(A2)がコア層を形成し、前記ポリウレタン(A1)がシェル層を形成した、いわゆるコア・シェル型のものであることが好ましい。
なお、前記複合樹脂粒子(A)は、前記ビニル重合体(A2)の全部が前記ポリウレタン(A1)粒子内に存在するものが好ましいが、必須ではなく、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーの良好な保存安定性やインクの吐出安定性等を損なわない範囲で、前記ビニル重合体(A2)の一部が前記複合樹脂粒子(A)の最外部に存在してもよい。前記ビニル重合体(A2)の全量の概ね0.1質量%〜30質量%程度のものが前記複合樹脂粒子(A3)の最外部に存在してもよい。
具体的には、前記ビニル重合体(A2)としてカルボキシル基等の親水性基を有するビニル重合体を使用する場合には、前記ビニル重合体(A2)の一部が複合樹脂粒子(A3)の最外部に存在し、複合樹脂粒子(A3)の水性媒体(C)中における分散安定性の向上に寄与しうるものであってもよい。
一方、前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)とが複合樹脂粒子を形成せず、それぞれ別々に独立して水性媒体(C)中に分散したインクジェット印刷インク用バインダーでは、インク吐出ノズルの詰まりを引き起こしたり、印刷画像の耐擦過性や耐アルカリ性の低下等を引き起こす場合がある。
なお、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーは、前記複合樹脂粒子(A3)の他に、前記複合樹脂粒子(A3)を形成せずそれぞれ独立して形成した前記ポリウレタン(A1)粒子や前記ビニル重合体(A2)粒子が含まれることを排除するものではない。したがって、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーは、必須成分である前記複合樹脂粒子(A3)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で前記ポリウレタン(A1)粒子や前記ビニル重合体(A2)粒子が含まれていても良い。
また、前記複合樹脂粒子(A3)は、前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)とが化学的に結合していないものであることが好ましい。前記化学的な結合とは、前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)との共有結合を指す。前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)とが共有結合することなく形成された複合樹脂粒子(A3)を使用することが、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーの保存安定性をより一層向上させ、かつ、良好なインク吐出性と耐擦過性と、耐アルカリ性等の耐久性を付与するうえで好ましい。
また、前記複合樹脂粒子(A3)は、インクジェット印刷インク用バインダーの良好な保存安定性や良好なインク吐出性を維持する観点から、10nm〜350nmの範囲の平均粒子径を有するものであることが好ましい。
前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)との質量割合[(A1)/(A2)]は、インクの吐出性に優れ、耐擦過性や耐アルカリ性等の耐久性に優れた高鮮明な印刷物を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえで、1/99〜99/1の範囲であることが好ましく、10/90〜90/10の範囲であることがより好ましく、45/55〜80/20の範囲であることが特に好ましい。
また、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーは、前記インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して、前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)とを合計10質量%〜50質量%含むものであることが、インクの優れた吐出性と印刷物の優れた耐擦過性と耐久性とを両立するうえで好ましく、15質量%〜40質量%であることがより好ましい。
また、前記インクジェット印刷インク用バインダーは、前記複合樹脂粒子(A3)を、前記インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して5質量%〜40質量%含むことが好ましく、10質量%〜30質量%含むことが好ましい。また、前記インクジェット印刷インク用バインダーは、前記水系媒体(C)を、前記インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して60質量%〜95質量%含むものであることが好ましく、70質量%〜90質量%含むものであることがより好ましい。
次に、本発明のインクジェット印刷用インクについて説明する。
本発明の製造方法によって得られたインクジェット印刷インク用バインダーは、インクの吐出安定性や配合安定性に優れたインクジェット印刷用インクの製造に使用することができる。
本発明のインクジェット印刷用インクは、前記インクジェット印刷インク用バインダーの他に、顔料や染料、その他必要に応じて各種の添加剤をを有するするものである。
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等を使用することができる。
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料を使用することができる。
これらの顔料は2種類以上のものを併用することができる。また、これらの顔料が表面処理されており,水系媒体に対して自己分散能を有しているものであっても良い。
また、前記染料としては、例えばモノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系等を使用することができる。
また、前記添加剤としては、例えば高分子分散剤や粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤をはじめ、従来のインクジェット印刷用インクのバインダーに使用されていたアクリル樹脂等を使用することができる。
前記高分子分散剤としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を使用することができ、それらはランダム型、ブロック型、グラフト型のいずれのものも使用することができる。前記高分子分散剤を使用する際には、高分子分散剤を中和するために酸または塩基を併用しても良い。
本発明のインクジェット印刷用インクを製造する際には、従来技術と同様に、インクバインダーと顔料または染料などとを混合しインクを配合する段階において、前記添加剤としてアセチレン化合物等の界面活性剤を使用してもよい。但し、前記アセチレン化合物は、インクの良好な吐出安定性や配合安定性等を維持する観点から、前記工程(2)の段階で使用することが必須である。
前記インクジェット印刷用インクは、例えば以下の製造方法によって調製することができる。
(V)前記顔料または染料と前記水系媒体と前記インクジェットインク用バインダーと必要に応じて前記添加剤とを、各種の分散装置を用いて一括して混合しインクを調製する方法。
(W)前記顔料または染料と前記水系媒体と必要に応じて前記添加物とを、各種の分散装置を用いて混合することで顔料または染料の水系分散体からなるインク前駆体を調製し、次いで、前記顔料または染料の水系分散体からなるインク前駆体と前記インクジェット印刷インク用バインダーと、必要に応じて水系媒体と添加物とを、各種の分散装置を用いて混合しインクを調製する方法。
上記(W)に記載したインクの製造方法で使用可能な顔料を含むインク前駆体は、例えば以下の方法によって調製することができる。
(w1)顔料及び高分子分散剤等の添加剤を2本ロールやミキサー等を用いて予備混練して得られた混練物と、水系媒体とを各種の分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(w2)顔料と高分子分散剤を各種の分散装置を用いて混合した後、前記高分子分散剤の溶解性をコントロールすることによって該高分子分散剤を前記顔料の表面に堆積させ、更に分散装置を用いてそれらを混合することで顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(w3)顔料と前記添加物とを各種の分散装置を用いて混合し、次いで前記混合物と樹脂エマルジョンとを分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
前記インクジェット印刷用インクの製造に使用可能な分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなどを、単独または、2種類以上組み合わせて使用することができる。
前記方法で得られたインクジェット印刷用インク中には、概ね250nm以上の粒子径を有する粗大粒子が存在する場合がある。前記粗大粒子は、プリンターノズルの詰まり等を引き起こし、インク吐出特性を劣化させる場合があるため、前記顔料の水系分散体の調製後、またはインクの調製後に遠心分離又は濾過処理等の方法によって、粗大粒子を除去することが好ましい。
前記で得たインクジェット印刷用インクは、200nm以下の体積平均粒子径を有するものを使用することが好ましく、特に写真画質のようにより一層高光沢の画像を形成する場合には、80nm〜120nmの範囲であることがより好ましい。
また、前記インクジェット印刷用インクは、保存安定性やインク吐出性を低下させない範囲で、必要に応じて硬化剤や硬化触媒を併用しても良い。
前記硬化剤としては、例えばシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート等を使用することができ、前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム等を使用することができる。
また、前記インクジェット印刷用インクは、インクジェット印刷用インク全体に対して、前記複合樹脂粒子(A3)を0.1質量%〜10質量%含有することが、該インクによって形成される印刷画像の速乾性と耐久性とを両立するうえで好ましく、更に水系媒体(C)を50質量%〜95質量%、顔料を0.5質量%〜15質量%含有することが好ましい。
前記方法で得られた本発明のインクジェット印刷用インクは、もっぱらインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷に使用することができ、例えば紙やプラスチックフィルム、金属フィルムまたはシート等の基材に対するインクジェット印刷に使用することができる。本発明のインクジェット印刷用インクであれば、前記基材表面に、鮮明な文字や写真画像を形成することができる。
また、本発明のインクジェット印刷用インクは、前記文字や写真等を形成するだけでなく、透明プラスチック基材上に印刷することで液晶ディスプレイに使用するカラーフィルターの製造にも使用することができる。
前記方法で得られた本発明のインクジェット印刷用インクは、もっぱらインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷に使用することができ、例えば紙やプラスチックフィルム、金属フィルムまたはシート等の基材に対するインクジェット印刷に使用することができる。インクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知の方式を適用することができる。
本発明のインクジェット印刷用インクを用いて印刷された印刷物は、優れた耐擦過性を有することから顔料等の欠落に起因した印刷画像の劣化等を引き起こしにくく、また優れた耐アルカリ性を有することから、アルカリ性洗浄剤等の印刷画像表面への付着によるにじみ等の発生を防止でき、かつ高発色濃度の画像を有するものであるから、例えばインクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物など様々な用途に使用することができる。
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
(調製例1)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(数平均分子量1,000)100.0質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸15.6質量部、イソホロンジイソシアネート47.8質量部、有機溶剤としてメチルエチルケトン54.5質量部を、DMTDL(ジブチルスズジレウレート)0.06質量部を触媒として使用し反応させた。
前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン22.4質量部を供給し、更に反応を継続した。
前記反応物の分子量が20,000から60,000の範囲に達した時点で、メタノール1.4質量部を投入し前記反応を終了し、メチルエチルケトンを用いて不揮発分を調整することによって、不揮発分50質量%のポリウレタン(A1−1)の有機溶剤溶液を得た。
前記ウレタン樹脂(A1−1)の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液13.4質量部を加えることによって、前記ウレタン樹脂(A1−1)が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで水659.1質量部を加え十分に攪拌することによって、ウレタン樹脂(A1−1)とメチルエチルケトンと水とを含み、前記ウレタン樹脂(A1−1)が前記水中に分散又は溶解した混合物(II’−1)を得た。
次いで、前記混合物(II’−1)を約2時間エージングした後、前記混合物(II’−1)中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.06質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物(II−1)を得、該混合物(II−1)を約1kPa〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物(II−1)中に含まれるメチルエチルケトンの163質量部を除去したことを確認した後、減圧下でサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.03質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。次いで、前記混合物(II−1)中に含まれる水の164質量部を脱水したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整することにより、不揮発分25質量%の水分散体からなる混合物(III−1)を得た。
(調製例2)
調製例1で得たポリウレタン(A1−1)の有機溶剤溶液と同様の有機溶剤溶液に、48質量%水酸化カリウム水溶液13.4質量部を加えることによって、前記ウレタン樹脂(A1−1)が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで水595.3質量部を加え十分に攪拌することによって、ウレタン樹脂(A1−1)とメチルエチルケトンと水とを含み、前記ウレタン樹脂(A1−1)が前記水中に分散又は溶解した混合物(II’−2)を得た。
次いで、前記混合物(II’−2)を約2時間エージングした後、前記混合物(II’−2)中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.06質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物(II−2)を得、該混合物(II−2)を約1kPa〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物(II−2)中に含まれるメチルエチルケトンの163質量部を除去したことを確認した後、減圧下でサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.03質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。次いで、前記混合物(II−2)中に含まれる水の99質量部を脱水したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整することにより、不揮発分25質量%の水分散体からなる混合物(III−2)を得た。
(調製例3)
前記調製例1で得た混合物(II’−1)を、約2時間エージングした後、前記混合物(II’−1)中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.03質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物(II−3)を得、該混合物(II−3)を約1kPa〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物(II−3)中に含まれるメチルエチルケトンの158質量部を除去したことを確認した後、減圧下でサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.06質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。
次いで、前記混合物(II−3)中に含まれる水の164質量部を脱水したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整することにより、不揮発分25質量%の水分散体からなる混合物(III−3)を得た。
(調製例4)
前記調製例1で得た混合物(II’−1)を、約2時間エージングした後、前記混合物(II’−1)中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.09質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物(II−4)を得、該混合物(II−4)を約1kPa〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物(II−4)中に含まれるメチルエチルケトンの163質量部と、前記混合物(II−4)中に含まれる水の164質量部とを除去したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整することにより、不揮発分25質量%の水分散体からなる混合物(III−4)を得た。
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、調製例1で得た前記混合物(III−1)741.0質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。
80℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、アクリル酸n−ブチル32.4質量部及びメタクリル酸メチル47.0質量部を含むビニル単量体混合物と、過硫酸カリウム水溶液(濃度:2質量%)32.4質量部とを、別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80±2℃に保ちながら60分間かけて滴下し反応させた。
滴下終了後、同温度にて180分間攪拌し前記反応を継続した後、生成物を30℃まで冷却し、不揮発分が25質量%になるように脱イオン水で調整し、200メッシュで濾過することによって、本発明のインクジェット印刷インク用バインダー(X−1)を得た。 [実施例2]
前記混合物(III−1)の代わりに、調製例2で得た混合物(III−2)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、本発明のインクジェット印刷インク用バインダー(X−2)を得た。
[実施例3]
前記混合物(III−1)の代わりに、調製例3で得た混合物(III−3)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、本発明のインクジェット印刷インク用バインダー(X−3)を得た。
[実施例4]
前記混合物(III−1)の代わりに、調製例4で得た混合物(III−4)を使用すること以外は実施例1と同様の方法で、本発明のインクジェット印刷インク用バインダー(X−4)を得た。
[比較例1]
温度計、窒素ガス導入管及び攪拌機を備えた窒素置換された容器中にメチルエチルケトン80.2質量部を加え、該メチルエチルケトン中で、2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.0質量部及びイソホロンジイソシアネート42.4質量部を混合し、80℃で4時間反応させた。4時間後、メチルエチルケトンを更に47.7質量部を供給し、60℃以下に冷却した後、ポリエーテルポリオール(「PTMG2000」三菱化学株式会社製のポリオキシテトラメチレングリコール、数平均分子量2,000)175.2質量部を80℃で反応を継続させた。
反応物の重量平均分子量が20,000から50,000の範囲に達したことを確認した後、メタノール1.7質量部を投入することによって反応を終了した。次いで、メチルエチルケトン51.9質量部を追加することによってウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液18.9質量部を加えることによって、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで水917.8質量部を加え十分に攪拌することによって、ウレタン樹脂とメチルエチルケトンと水とを含み、前記ウレタン樹脂が前記水中に分散又は溶解した混合物(II’−5)を得た。
次いで、混合物(II’−5)を約2時間エージングした後、約20分攪拌し、該混合物(II’−5)を約1〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物(II’−5)中に含まれるメチルエチルケトンの180質量部と、前記混合物(II’−5)中に含まれる水の185質量部とを除去したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整することにより、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダー(X’−5)1,000質量部を得た。
[比較例2]
前記混合物(II’−5)を約2時間エージングした後、前記混合物(II’−5)中にノプコ8034L(サンノプコ製:シリコーン鉱物油系消泡剤)0.09質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物(II’−6)を得、該混合物(II’−6)を約1〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物(II’−6)中に含まれるメチルエチルケトンの180質量部を除去したことを確認した後、減圧下でノプコ8034L(サンノプコ製:シリコーン鉱物油系消泡剤)0.04質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。前記混合物(II’−6)中に含まれる水の185質量部を除去できたことを確認し、減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整することにより、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダー(X’−6)1,000質量部を得た。
[残留有機溶剤の測定方法]
前記で得たインクジェット印刷インク用バインダー中の残留しうる溶剤(メチルエチルケトン)の量は、ガスクロマトグラフ(株式会社 島津製作所製の「GC−2014」)を用いて測定した。
[生産性の判定基準]
○:残留有機溶剤量が100ppm未満で、かつ減圧蒸留時間が5時間以内であったもの。
△:残留有機溶剤量が100ppm未満または減圧蒸留時間が5時間以内であったもの。
×:残留有機溶剤量が100ppm以上で、かつ、減圧蒸留時間が5時間を越えたもの。
Figure 0005936044
Figure 0005936044
調製例5(キナクリドン系顔料の水系分散体)
ビニル重合体(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、重量平均分子量が11,000、酸価156mgKOH/g)を1500g、キナクリドン系顔料(クロモフタールジェットマジェンタDMQ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を4630g、フタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドン(1分子あたりの平均フタルイミドメチル基数が1.4)を380g、ジエチレングリコールを2600g、及び34質量%水酸化カリウム水溶液688gを、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60℃になるまで低速(自転回転数:21回転/分,公転回転数:14回転/分)で混練を行い、内容物温度が60℃に達した後、高速(自転回転数:35回転/分,公転回転数:24回転/分)に切り替え、4時間、混練を継続した。
前記混練物に、2時間で総量8,000gの60℃に加温したイオン交換水を加え、不揮発分が37.9質量%の着色樹脂組成物を得た。
前記方法で得た着色樹脂組成物の12kgに、ジエチレングリコール744gと、イオン交換水7380gとを少量ずつ添加しながら分散撹拌機で撹拌し、顔料の水系分散体の前駆体(分散処理前の水系顔料分散液)を得た。
次いで、この顔料の水系分散体前駆体の18kgを、ビーズミル(浅田鉄工(株)製ナノミルNM−G2L、ビーズφ;0.3mmのジルコニアビーズ、ビーズ充填量;85%、冷却水温度;10℃、回転数;2660回転/分(ディスク周速:12.5m/sec)、送液量;200g/10秒)を用いて処理し、前記ビーズミルの通過液を13000G×10分の遠心処理した後、有効孔径0.5μmのフィルターにより濾過処理を行うことによってキナクリドン系顔料の水系分散液を得た。この顔料水系分散体中のキナクリドン系顔料濃度は14.9質量%であった。
[インクジェット印刷用インクの調製例]
インクジェット印刷用インクの全量に対してキナクリドン系顔料の濃度が4質量%で、かつ複合樹脂粒子(A3)の濃度が1質量%となるよう、前記実施例1〜4及び比較例1〜2で得たインクジェット印刷インク用バインダー(X−1)〜(X−4)、(X’−1)〜(X’−2)のいずれかと、調製例5で得たキナクリドン系顔料の水系分散体と、2−ピロリジノンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、グリセリンと、界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製)とイオン交換水とを、下記配合割合にしたがって混合、攪拌することによって、それぞれインクジェット印刷用インクを調製した。
(インクジェット印刷用顔料インクの配合割合)
・調製例5で得たキナクリドン系顔料の水系分散体(顔料濃度14.9質量%);26.8g
・2−ピロリジノン;8.0g
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル;8.0g
・グリセリン;3.0g2
・界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製);0.5g
・イオン交換水;48.7g
・前記実施例1〜4及び比較例1〜2で得たインクジェット印刷インク用バインダー;4.0g
〔インクの配合安定性の評価〕
インクの配合安定性は、前記で得たインクジェット印刷用インクの粘度と、該インク中の分散粒子の粒子径に基づいて評価した。
[粘度に基づくインクの配合安定性(I)の評価方法]
前記で得たインクジェット印刷用インクの初期粘度を、東機産業(株)製のVISCOMETER TV−22を用いて測定した。次いで、前記インクをスクリュー管等のガラス容器に密栓し、70℃の恒温器で6週間の加熱試験を行った後の前記インクの粘度を、前記と同様の方法で測定した。
前記加熱試験前後のインクの粘度変化を、下記式(I)により算出し評価した。
(式I)
[{(加熱試験後のインク中の分散粒子の粒子径)−(加熱試験前のインク中の分散粒子の粒子径)}/(加熱試験前のインク中の分散粒子の粒子径)]×100
[判定基準]
○: 粒子径の変化の割合が、3%未満
△: 粒子径の変化の割合が、3%以上10%未満
×: 粒子径の変化の割合が、10%以上
[粒子径に基づくインクの配合安定性(II)の評価方法]
前記で得たインクジェット印刷用インク中に含まれる分散粒子の粒子径を、日機装(株)社製のマイクロトラック UPA EX150を用いて測定した。次いで、前記インクをスクリュー管等のガラス容器に密栓し、70℃の恒温器で6週間の加熱試験を行った後の前記インク中に含まれる分散粒子の粒子径を、前記と同様の方法で測定した。
前記加熱試験前後のインク中に含まれる分散粒子の粒子径変化を、下記式(II)により算出し評価した。
(式II)
[{(加熱試験後のインクの粘度)−(加熱試験前のインクの粘度)}/(加熱試験前のインクの粘度)]×100
[判定基準]
○: 粘度の変化の割合が、2%未満
△: 粘度の変化の割合が、2%以上5%未満
×: 粘度の変化の割合が、5%以上
〔インクの吐出安定性の評価〕
前記のインクジェット印刷用インクを黒色インクカートリッジに充填したPhotosmart D5360(ヒューレットパッカード社製)にて、診断ページを印刷しノズルの状態を確認した。1ページあたり18cm×25cmの領域の印字濃度設定100%のベタ印刷を連続で20ページ実施した後、再度診断ページを印刷しノズルの状態を確認した。連続ベタ印刷の前後でのノズルの状態変化をインク吐出安定性として評価した。評価基準を以下に記す。
[判定基準]
◎:ノズルの状態に変化がなく、吐出異常が発生していないもの
○:ノズルへの若干のインクの付着が確認されたものの、インクの吐出方向の異常は発生していないもの
△:前記ベタ印刷を連続で20ページ実施した後に、インクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じたもの
×:印刷途中でインクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じ、連続して500ページの印刷を完了できなかったもの
Figure 0005936044
Figure 0005936044
〔インクジェット印刷用インクの印刷性能評価〕
(耐擦過性)
写真印刷用紙(光沢)[HPアドバンスフォト用紙 ヒューレットパッカード社製]の印刷面に、市販のサーマルジェット方式インクジュットプリンター(Photosmart D5360;ヒューレットパッカード社製)を用い、前記インクを黒色インクカートリッジに充填し、印字濃度設定100%のベタ印刷を行うことで評価用印刷物を得た。
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、該印刷面を、約5kgの荷重をかけて爪で擦過し、該印刷面の色等のこすれ具合を下記評価基準にしたがって目視で評価した。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
[判定基準]
A: 印刷面に傷は全くなく、印材の剥離等もみられなかった。
B: 印刷面に若干の傷が発生したものの実用上問題ない程度であり、色材の剥離等もみられなかった。
C: 印刷面に若干の傷が発生し、かつ、色材の剥離等もみられた。
D: 印刷面の約50%以上の範囲で著しい傷が発生し、かつ、色材の剥離等もみられた。
[耐薬品性]
(耐アルカリ性)
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、印刷面に、0.5質量%KOH水溶液をスポイトで3滴滴下し、10秒後に印刷面を指で擦過し、該印刷面の表面状態を目視で評価した。評価基準を以下に記す。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
[判定基準]
A: 印刷面に色材等の剥がれは全くみられず、印刷面の変色もみられなかった。
B: 印刷面に色材等の剥がれはみられなかったが、印刷面の変色が僅かに発生した。
C: 印刷面に色材等の若干の剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
D: 印刷表面の約50%以上の範囲にわたって色材等の著しい剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
(耐アルコール性)
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、印刷面に、5質量%エタノール水溶液をスポイトで3滴滴下し、10秒後に印刷面を指で擦過し、該印刷面の表面状態を目視で評価した。評価基準を以下に記す。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
[判定基準]
A: 印刷面に色材等の剥がれは全くみられず、印刷面の変色もみられなかった。
B: 印刷面に色材等の剥がれはみられなかったが、印刷面の変色が僅かに発生した。
C: 印刷面に色材等の若干の剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
D: 印刷表面の約50%以上の範囲にわたって色材等の著しい剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
Figure 0005936044
Figure 0005936044

Claims (11)

  1. 親水性基を有するポリウレタン(A1)粒子中に、一部または全部のビニル重合体(A2)が内在し形成した複合樹脂粒子(A3)と、アセチレン化合物(B)と、水系媒体(C)とを含有するインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法であって、前記製造方法が、
    親水性基を有するポリオール(a1−1)を含むポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)とを有機溶剤(D)中または無溶剤下で反応させ親水性基を有するポリウレタン(A1)を得、必要に応じ有機溶剤(D)を供給することによって前記ポリウレタン(A1)の有機溶剤(D)溶液[I]を製造する工程(1)、
    前記有機溶剤(D)溶液[I]と前記アセチレン化合物(B)と前記水系媒体(C)とを混合することによって混合物[II]を製造し、前記混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)の一部または全部を除去することによって混合物[III]を製造する工程(2)、及び、
    前記混合物[III]と、前記ビニル重合体(A2)の製造に使用するビニル単量体混合物とを混合し、前記ビニル単量体混合物をラジカル重合する工程(3)を含むことを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  2. 前記工程(2)が、前記混合物[II]中に含まれる有機溶剤(D)の一部または全部とともに、前記水系媒体(C)の一部を除去する工程であって、除去される前記水系媒体(C)の質量が、前記混合物[II]中に含まれる前記有機溶剤(D)の全質量の50質量%〜300質量%と同質量である請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  3. 前記アセチレン化合物(B)の使用量が、前記複合樹脂粒子(A3)100質量部に対して0.001質量部〜0.5質量部である請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  4. 前記アセチレン化合物(B)の60質量%〜90質量%が前記工程(2)における有機溶剤(D)の一部または全部を除去する工程の前に使用され、残りの40質量%〜10質量%のアセチレン化合物(B)が、前記有機溶剤(D)の一部または全部を除去した後に使用される請求項3に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  5. 前記工程(2)で使用される前記アセチレン化合物(B)の40質量%〜10質量%が、前記混合物[II]中に含まれる前記有機溶剤(D)の全量の80質量%以上が前記混合物[II]から除去された後、前記混合物[II]中に含まれる前記有機溶剤(D)の全量の10質量%と同質量の水系媒体(C)が除去されるまでに、前記混合物[II]中に供給される請求項4に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  6. 前記有機溶剤(D)及び/または前記水系媒体(C)の一部を除去する方法が減圧蒸留法である請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  7. 前記複合樹脂粒子(A3)が、親水性基としてカチオン性基またはアニオン性基を有するものである請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  8. 前記アニオン性基が、カルボキシル基及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上である請求項7に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  9. 前記ビニル重合体(A2)が炭素原子数1個〜6個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むビニル単量体を重合して得られるものである請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
  10. 前記ポリウレタン(A1)と前記ビニル重合体(A2)との質量割合[(A1)/(A2)]が1/99〜99/1の範囲である請求項1に記載のインクジェット印刷用インク用バインダーの製造方法。
  11. 前記アセチレン化合物(B)が、アセチレンモノアルコール及びアセチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上を含むものである請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。
JP2012069274A 2012-03-26 2012-03-26 インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法 Active JP5936044B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012069274A JP5936044B2 (ja) 2012-03-26 2012-03-26 インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012069274A JP5936044B2 (ja) 2012-03-26 2012-03-26 インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013199606A JP2013199606A (ja) 2013-10-03
JP5936044B2 true JP5936044B2 (ja) 2016-06-15

Family

ID=49520082

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012069274A Active JP5936044B2 (ja) 2012-03-26 2012-03-26 インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5936044B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6482025B2 (ja) * 2015-07-30 2019-03-13 大日精化工業株式会社 ポリマー水分散体、その製造方法、水性顔料分散液及びインクジェット記録用インク
CN117980421A (zh) * 2021-10-28 2024-05-03 Dic株式会社 水性喷墨墨液用粘结剂、水性喷墨墨液以及印刷层
CN117999323A (zh) * 2021-10-28 2024-05-07 Dic株式会社 水性喷墨墨液用粘结剂、水性喷墨墨液以及印刷层

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3483372B2 (ja) * 1995-10-20 2004-01-06 キヤノン株式会社 水系微粒子分散インク
JP2007056120A (ja) * 2005-08-24 2007-03-08 Toyo Ink Mfg Co Ltd 樹脂組成物の水性分散体の製造方法及び樹脂組成物の水性分散体
JP5546108B2 (ja) * 2008-04-28 2014-07-09 キヤノン株式会社 インクジェット記録用顔料インクの製造方法
JP2011088977A (ja) * 2009-10-21 2011-05-06 Seiko Epson Corp インクジェット記録用インク組成物の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013199606A (ja) 2013-10-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4984196B1 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物
JP5170345B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、インクジェット印刷用インク、印刷物、及び、バインダーの製造方法
JP5093424B1 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物
JP5760569B2 (ja) ポリウレタンの製造方法
JP5316427B2 (ja) 水性ウレタン樹脂組成物、それを含むインク用バインダー、インクジェット印刷インク用バインダー及びインクジェット印刷用インク、ならびに、それを用いて印刷の施された印刷物
JP5062502B2 (ja) 水性ウレタン樹脂組成物、それを含むコーティング剤、接着剤、インクジェット印刷インク用バインダー、インクジェット印刷用インク及び印刷物
WO2011004675A1 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物
WO2010143518A1 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物
JP5936044B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法
JP5936043B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法
JP5029931B2 (ja) インクジェット印刷用インクの製造方法及び印刷物
JP5831023B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法
JP4894979B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法、インクジェット印刷用インク及び印刷物
JP5939426B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物
JP4600791B1 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物
JP2010195965A (ja) インクジェット顔料インク用バインダー
JP5029932B2 (ja) インクジェット印刷用インク及びインクジェット印刷用インクの製造方法、並びに、印刷物
JP5939427B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法
JP5831022B2 (ja) インクジェット印刷インク用バインダーの製造方法
JP2014024975A (ja) インク及びインクジェット印刷用インク
WO2012008214A1 (ja) インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150304

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160113

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160328

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160414

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160427

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5936044

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250