JP5546108B2 - インクジェット記録用顔料インクの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録用顔料インクの製造方法に関する。
インクジェット記録方法に好適に用いられるインクとして、水溶性染料や水分散性顔料を使用したインクが挙げられる。水分散性顔料を使用したインク(以下、単に「顔料インク」という。)は、水溶性染料を使用したインク(以下、単に「染料インク」という。)と比較して、耐水性、耐光性の点で優れている。
しかし、従来、顔料インクで記録媒体上に記録を行った場合には、形成された画像の耐擦過性が問題となっていた。即ち、顔料は記録媒体表面近傍に残存しやすいため、擦過により顔料が記録媒体からはがれやすかった。特に、インク受容層を有するコート紙に記録を行う場合は、画像の耐擦過性が良好ではなかった。
この問題を解決するために、耐擦過性に優れたウレタン樹脂を使用した顔料インクが提案されている(特許文献1、2、3参照)。また、ウレタン樹脂で被覆処理したカーボンブラックを用いた顔料インクが提案されている(特許文献4参照)。
特開2005−225948号公報 特開2004−131586号公報 特開2006−335858号公報 特開2001−214089号公報
しかし、これらの顔料インクを用いてインクジェット記録方法で記録を行った場合であっても、インクジェット吐出特性の点で、近年の高い要求を満足することができない場合があった。
本発明の目的は、インクジェット吐出特性に優れ、かつ基体上にインク受容層を有するコート紙上で得られる画像の耐擦過性にも優れたインクジェット記録用顔料インクの製造方法を提供することである。
本発明者らは、ウレタン樹脂を含有するインクジェット記録用の顔料インクについて、鋭意検討した。この結果、インク中で顔料に吸着していない、インク中に浮遊しているウレタン樹脂(浮遊ウレタン樹脂)がインクジェット吐出特性を劣化させていることを見出した。また、顔料の表面に吸着したウレタン樹脂がインクジェット吐出特性を劣化させる場合があることを見出した。これらのインクジェット吐出特性の劣化は、インクジェット吐出が熱エネルギーによるものである場合、即ちサーマルインクジェット吐出である場合に顕著であった。
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
また、本発明は、少なくとも水と、顔料と、疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合することによって得られるビニル樹脂と、ウレタン樹脂とを含み、前記ウレタン樹脂の酸価は前記ビニル樹脂の酸価より低く、前記ウレタン樹脂の含有量は前記顔料の含有量に対して25質量%以上、100質量%以下であり、前記顔料に吸着していない浮遊ウレタン樹脂の含有量はインク全量に対して0.4質量%以下であるインクジェット記録用顔料インクの製造方法であって、有機溶媒中で前記顔料を湿潤させ、該有機溶媒中に前記ビニル樹脂及び前記ウレタン樹脂を溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られた溶液中に、アルカリを含む水を加え転相する転相工程と、前記転相工程で得られた溶液中の顔料を微粒子化する微粒子化工程と、前記微粒子化工程で得られた溶液から有機溶媒を除去する除去工程とを有することを特徴とするインクジェット記録用顔料インクの製造方法である。
本発明によれば、インクジェット吐出特性、とりわけサーマルインクジェット吐出特性に優れ、かつ基体上にインク受容層を有するコート紙上で得られる画像の耐擦過性に優れたインクジェット記録用顔料インクの製造方法を提供可能である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
本発明に使用する顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく使用できる。有機顔料は、1次粒子の数平均粒子径が120nm以下であり、BET比表面積が50m/g以上であることが好ましい。また、無機顔料であれば、1次粒子の数平均粒子径が50nm以下であり、BET比表面積が200m/g以上であることが好ましい。また、有色、無色または淡色の顔料、または金属光沢顔料等のいずれを使用してもよい。また、染料を併用してもよい。
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色の顔料の好ましい例を示す
黒色の顔料としては、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250、Raven5750、Raven7000、Raven5000 ULTRAII、Raven1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン製)、Black Pearls L、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上、デグッサ製)、#25、#33、#40、#47、#52、#900、#2300、#2600、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されない。
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
イエロー色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に使用するウレタン樹脂は、後述のビニル樹脂より酸価が低いものであればいずれのものでもよく、ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させることによって得ることができる。本発明においては、主鎖構造中にエステル結合を有するエステル系ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物。イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物。キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物。トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は、2種以上を併用してもよい。
また、前記ジオール化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の複素環式エーテルを重合させて得られるジオール化合物が挙げられる。前記重合は、共重合であってもよい。前記ジオール化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。これらの中では、インクジェット吐出特性の点からポリエステルジオールが好ましい。
また、本発明においては、ジオール化合物として、カルボン酸基を有するジオール化合物を併用し、親水性を高めることが好ましい。具体的なカルボン酸基を有するジオール化合物としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が挙げられる。これらの中では、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
また、本発明においては、ウレタン樹脂の酸価が20mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましい。ウレタン樹脂の酸価が20mgKOH/g未満の場合は、インクの分散安定性が劣化する傾向となる。また、ウレタン樹脂の酸価が60mgKOH/g以下になるように導入することが好ましく、50mgKOH/g以下になるように導入することがより好ましい。ウレタン樹脂の酸価が60mgKOH/gより大きい場合は、顔料への吸着性が低下し、インク中の浮遊ウレタン樹脂の含有量が増加する傾向となる。
本発明のインク中においては、ウレタン樹脂の含有量は、顔料の含有量に対して25質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。また、100質量%以下であることが好ましく、66質量%以下であることがより好ましい。ウレタン樹脂の含有量が25質量%未満の場合は、得られる記録物の耐擦過性が不十分となる傾向となり、100質量%を超える場合はインクの保存安定性および吐出特性が劣化する傾向となる。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、5000以上が好ましく、8000以上がより好ましい。また、100000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量が5000未満の場合は、得られる記録物の耐擦過性が不十分となる傾向になる。また、100000を超える場合は、インクの保存安定性および吐出特性が劣化する傾向になる。
ウレタン樹脂より形成されるフィルムの、下記に定義される破断伸度は、コート紙上の印字物の耐擦過性の点から、10%以上が好ましく、300%以上がより好ましい。また、1000%以下が好ましく、800%以下がより好ましい。前記破断伸度とは、ポリマー溶液を所定の型で流延成形し、前記成形物から溶媒を乾燥除去し、得られる所定形状・寸法の試験片(JISK7113の2号型試験片に準拠)を作製し、この試験片(フィルム)について測定した引張破壊伸びをいう。
本発明のインクジェット記録用顔料インクは、インク中の顔料に吸着していない、インク中に浮遊している浮遊ウレタン樹脂の含有量が、インク全量に対して0.4質量%以下であることが必須である。浮遊ウレタン樹脂の含有量が0.4質量%を超える場合は、インクジェット吐出特性、特にサーマルインクジェット吐出特性が劣化する。この理由は定かではないが、浮遊ウレタン樹脂は熱安定性が低く、吐出時の熱によって分解してしまい、吐出を劣化させると考えられる。インク中の浮遊ウレタン樹脂の含有量は、
(インク中の浮遊ウレタン樹脂の含有量)=(仕込みのウレタン樹脂の含有量)−(顔料に吸着しているウレタン樹脂の含有量)
の関係がある。仕込みのウレタン樹脂とは、インクを調製する際に添加するウレタン樹脂のことを言う。前記した関係から、浮遊ウレタン樹脂の含有量を減らすためには、仕込みのウレタン樹脂の含有量を減らすことと、添加したウレタン樹脂のうち、より多くのウレタン樹脂を顔料に吸着させることが挙げられる。より多くのウレタン樹脂を顔料に吸着させるためには、後述するインクの製造方法を採用することが考えられる。
尚、インク中の浮遊ウレタン樹脂の含有量は、インクに30000G、3時間の条件で遠心処理を行い、遠心処理後に全インクの25体積%にあたる上澄み液を取り出し、分光光度計(UV−Vis測定装置)を用いて測定する。
また、本発明のインクジェット記録用顔料インクは、疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合することによって得られるビニル樹脂を含むことが必須である。ビニル樹脂としては、前記ウレタン樹脂より酸価が高ければ、いずれのビニル樹脂であっても使用可能である。また、ビニル樹脂の中でも、疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合することによって得られるビニル樹脂を利用することによって、高い顔料の分散性能を得ることができる。
前記のビニル樹脂の主鎖構造としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーいずれのものでも使用可能だが、生産の容易性よりランダムコポリマーが好ましい。ランダムコポリマーが顔料等の色材を内包し、分散安定性のよいインクを提供するためには、次のようなことが必須である。それは、ランダムコポリマーが、疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合することによって得られることである。なお、「親水性」とは水に対する親和性が大きい性質で、「疎水性」とは水に対して親和性が小さい性質である。
以下に本発明中におけるビニル樹脂が有する疎水性モノマーの好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(前記式中のRは、H又はCHである。)
以下に本発明中におけるビニル樹脂が有する親水性モノマーの好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(前記式中のRは、H又はCHである。)
また、本発明のビニル樹脂は、水溶性を付加するために、アルカリ金属塩の形態で使用されることが好ましい。この際に用いられる、アルカリ金属塩のカウンターイオンは、原子や化合物であれば特に限定されるものではない。前記カウンターイオンとしては、例えば水素カチオン、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン、アンモニウムカチオン等が挙げられる。
本発明において、共重合されたビニル樹脂の具体例としては、スチレン−(メタ)アクリルエステル−(メタ)アクリル酸系樹脂。スチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂。スチレン−スチレンスルホン酸系樹脂。ビニルナフタレン−(メタ)アクリルエステル−(メタ)アクリル酸系樹脂。ビニルナフタレン−(メタ)アクリル酸系樹脂。(メタ)アクリルエステル−(メタ)アクリル酸系樹脂。(メタ)アクリル酸系樹脂。アルケニルエーテル系樹脂等が挙げられる。この中でも、分散安定性、製造時のコストの面から、スチレン−アクリル酸系樹脂が好ましい。なお、本明細書中、(メタ)アクリルと表記されているものは、メタクリル及び/又はアクリルのことを指すものとする。
本発明において使用するビニル樹脂は、重量平均分子量は1000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましい。また、30000以下であることが好ましく、15000以下であることがより好ましい。
また、前記ビニル樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上であることが好ましく、120mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、300mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が100mgKOH/g未満の場合は、樹脂の疎水性が高すぎて顔料の分散性能が低くなる傾向となる。逆に酸価が300mgKOH/gを超える場合も、同様に顔料の分散性が低くなる傾向となる。
また、前記ビニル樹脂の含有量は、前記ウレタン樹脂の含有量に対して、66質量%以上であることが好ましい。また、500質量%以下であることが好ましく、200質量%以下であることがより好ましい。ビニル樹脂の含有量が、ウレタン樹脂の含有量に対して66質量%未満の場合は、インクの保存安定性および吐出特性が劣化する傾向となる。また、500質量%を超える場合は、得られる記録物の耐擦過性が不十分となる傾向となる。また、記録物の耐擦過性の点から、前記ビニル樹脂と前記ウレタン樹脂の含有量の合計が、顔料に対して50質量%以上であることが好ましく、200質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用顔料インクは、ビニル樹脂の酸価がウレタン樹脂の酸価よりも高いことが必須である。このような構成をとることにより、インクの吐出特性が良好となるが、これは以下の理由によるものと考えられる。即ち、ビニル樹脂の酸価をウレタン樹脂の酸価よりも高くすると、疎水性の高い顔料への吸着性は、ビニル樹脂よりもウレタン樹脂の方が高くなる。このため、ウレタン樹脂が顔料に優先的に吸着し、顔料に吸着したウレタン樹脂の上にビニル樹脂が吸着する。このように、熱に対してより安定性の高いビニル樹脂がウレタン樹脂を内包した形となることで、顔料の外側の表面がビニル樹脂で覆われ、顔料の分散安定性及び熱安定性が高まる。この結果、インクの吐出特性、特にはサーマルインクジェット吐出特性が良好となる。一方、ビニル樹脂の酸価が前記ウレタン樹脂よりも低くなると、疎水性の高い顔料への吸着性は、ウレタン樹脂よりもビニル樹脂の方が高くなる。このため、ビニル樹脂が顔料に優先的に吸着し、顔料に吸着したビニル樹脂の上層にウレタン樹脂が吸着する。よって、顔料の外側の表面がウレタン樹脂で覆われ、顔料の分散安定性及び熱安定性は劣化する。また、ウレタン樹脂が顔料に優先的に吸着しにくくなることから、浮遊ウレタン樹脂が発生しやすくなる。
このように、本発明のインクジェット記録用顔料インクは、ウレタン樹脂に加えてビニル樹脂が顔料に吸着していることが好ましい。ここで、ビニル樹脂が顔料に吸着しているとは、ビニル樹脂が顔料表面に直接吸着している状態や、顔料に吸着したウレタン樹脂の上にビニル樹脂が吸着している状態のことを言う。顔料に吸着しているビニル樹脂の含有量は、
(インク中の浮遊ビニル樹脂の含有量)=(仕込みのビニル樹脂の含有量)−(顔料に吸着しているビニル樹脂の含有量)
の関係がある。インク中の浮遊ビニル樹脂とは、インク中で顔料に吸着していない、インク中に浮遊しているビニル樹脂のことを言う。また、仕込みのビニル樹脂とは、インクを調製する際に添加するビニル樹脂のことを言う。インク中の浮遊ビニル樹脂の含有量は、細いキャピラリー径の中を液体を流すことにより生じるポアズイユ流を利用し、粒子径の異なる粒子を分離できる装置により測定する。このような装置としては、例えば、CHDF2000(Matec Applied Sciences製)などがある。
また、耐擦過性を良好にしつつ、更に良好なインクジェット吐出特性を得るためは、以下の関係を満たすことがより好ましい。即ち、前記ウレタン樹脂の酸価をα、前記ビニル樹脂の酸価をβとしたとき、前記αとβが、β/α≧2の関係を満たすことが好ましい。また、β/α≧2.7の関係を満たすことがより好ましい。
本発明のインクジェット記録用顔料インクは、サーマルインクジェット記録用として用いられることが、本願発明の効果を十分発揮する上で好ましい。また、必要に応じて水溶性有機溶剤および水を加えても良い。水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類。ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレンまたはオキシプロピレン重合体。エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。1、2、6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類。エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル、ブチル)エーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル類。トリエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類。スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、エチレン尿素、ビスヒドロキシエチルスルフォン、ジグリセリン、トリグリセリン等が挙げられる。特に良好なものとしては、エチレングリコール、1、2−ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、エチレン尿素、トリメチロールプロパンが挙げられる。水溶性有機溶剤の種類や含有量は特に限定されないが、インク全量に対して、3質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。
本発明にかかるインクにおいて、よりバランスのよい吐出特性を得るためには、インク中に界面活性剤を併用することが好ましい。中でもノニオン界面活性剤を併用することが好適である。ノニオン界面活性剤の中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。これらのノニオン系界面活性剤のHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値は、10以上である。併用される界面活性剤の含有量は、インク全量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
また、本発明にかかるインクは、所望の物性値を有するインクとするために、前記した成分の他に、必要に応じて、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。
インクの表面張力は、25mN/m以上となるようにすることが好ましく、26mN/m以上となるようにすることがより好ましい。また、45mN/m以下となるようにすることが好ましく、35mN/mになるようにすることがより好ましい。
本発明のインクは、浮遊ウレタン樹脂を減少させる目的で、以下の工程を有するインクの製造方法により前記ウレタン樹脂を前記顔料に吸着させ、インクを製造することが好ましい。即ち、有機溶媒中で前記顔料を湿潤させ、該有機溶媒中に前記ビニル樹脂及び前記ウレタン樹脂を溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られた溶液中に、アルカリを含む水を加え転相する転相工程と、前記転相工程で得られた溶液中の顔料を微粒子化する微粒子化工程と、前記微粒子化工程で得られた溶液から有機溶媒を除去する除去工程とを有することを特徴とするインクジェット記録用顔料インクの製造方法である。
前記溶解工程は、有機溶媒中で前記顔料を湿潤させ、該有機溶媒中に前記ビニル樹脂及び前記ウレタン樹脂を溶解させる工程である。有機溶媒中で顔料を湿潤させるとは、有機溶媒中で特に顔料の表面を湿潤させることを言う。有機溶媒中で前記顔料を湿潤させる方法としては、特に限定されるものではないが、攪拌時に脱泡される遊星式攪拌機を使用して攪拌することが好ましい。前記ビニル樹脂、前記ウレタン樹脂を溶解させる方法としては、特に限定されるものではないが、それぞれの樹脂を有機溶媒中に加え、機械的に攪拌することが好ましい。
また、前記湿潤と前記溶解の順番は特に限定されないが、前記ビニル樹脂、ウレタン樹脂を有機溶媒中で溶解させ、その後、湿潤した顔料を含む有機溶媒と混合する方法が好ましい。
前記溶解工程に使用する有機溶媒としては、いかなる有機溶媒でも使用可能であるが、顔料と親和性が良くて顔料を湿潤させやすく、前記ビニル樹脂、ウレタン樹脂に対して溶解性が高い有機溶媒が好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
前記転相工程は、前記溶解工程で得られた前記顔料、前記ビニル樹脂、前記ウレタン樹脂を含む溶液中にアルカリを含む水を加え、有機相から水相へ転相する工程である。前記アルカリとしては、特に限定されるものではないが、好ましいアルカリとして、以下のようなものが挙げられる。即ち、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物塩、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンである。中でも、インクジェット吐出特性の点から、水酸化カリウムがより好ましい。前記アルカリの含有量としては、インクジェット吐出特性の点から、前記ビニル樹脂およびウレタン樹脂の酸の合計量に対して0.8当量以上含むことが好ましく、1.0当量以上含むことがより好ましい。また、1.2当量以下含むことが好ましく、1.1当量以下含むことがより好ましい。
前記微粒子化工程は、前記転相工程で得られた溶液中の顔料を微粒子化する工程である。
前記微粒子化工程における微粒子化では、低濃度分散系に対し高せん断速度を与えられる分散機を用いることが好ましい。具体的には、ナノマイザー(吉田機械興業社製)等の衝突型分散機や、ビーズミル等のメディアを用いた分散機等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
前記除去工程は、前記微粒子化工程で得られた溶液から有機溶媒を除去し、顔料水分散液を得る工程である。前記除去工程における有機溶媒を除去する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、蒸留や水蒸気蒸留等が挙げられる。蒸留の際には、顔料水分散液の分散安定性を保つために必要に応じて水を添加していくこともできる。有機溶媒の除去にあたっては全ての有機溶媒を除去する必要はなく、有機溶媒の残存量としては顔料水分散液の保存安定性の観点から適宜決定される。また、前記除去工程の後に、ふたたび前記微粒子化工程の微粒子化を行っても良い。
本発明においては、上記の工程で得られた顔料水分散液に、さらに水や上記水溶性有機溶剤等を加える等、公知の方法を用いることでインクジェット記録用インクを得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、以下の記載で、「部」又は「%」とあるものは、特に断らない限り質量基準である。
(ウレタン樹脂の合成方法)
表1に示す各成分をアセトン溶媒中、N気流下でジブチル錫ジラウレートを触媒として使用し、50℃の条件下で反応させてウレタン樹脂A1〜A3を得た。得られた各ウレタン樹脂について、以下の方法で酸価および破断伸度の測定を行なった。結果を表1に示す。
(酸価測定法)
前記した各ウレタン樹脂を、テトラヒドロフラン200mlとエタノール100mlの混合液中に2gずつ溶解させた。これを、規定度を測定済みの水酸化カリウム−エタノール溶液を用いて中和滴定(JIS0070に準拠)し、酸価を測定した。
(破断伸度測定法)
前記した各ウレタン樹脂の水分散液を所定の型で流延成形し、前記成形物から溶媒を乾燥除去し、試験片(JISK7113の2号型試験片に準拠)を作製した。その後、この試験片(フィルム)をテクスチャーアナライザTA.XT Plus(Stable Micro Systems社製)を用いて0.5mm/secのスピードで引っ張り試験を行い、破断伸度を測定した。
(実施例1)
超音波発生装置の槽内に、機械的攪拌装置を備えた500mLナスフラスコを入れた。次に、前記ナスフラスコに、ウレタン樹脂A1を2.5g、ビニル樹脂B1(スチレンアクリル酸ランダムコポリマー、酸価;140mg/KOHg)を2.5g、テトラヒドロフランを120mLを添加した。さらに、前記ナスフラスコを、超音波をかけながらよく攪拌した。また、別の容器にカーボンブラック#2600(一次粒子の数平均粒子径13nm、BET比表面積370m/g、三菱化学製)を5g取り、テトラヒドロフランを120mL添加した。さらに、前記容器中の顔料が有機溶媒で十分に湿潤するまで、遊星式攪拌機(クラボウ製)にて混合した。その後、混合物を前記ナスフラスコに添加し、ウレタン樹脂、ビニル樹脂とよく混合した。
次に、前記ナスフラスコに、ウレタン樹脂とビニル樹脂の中和率が100%になるだけの水酸化カリウムを含むアルカリ水溶液を滴下注入し、転相させた。転相後、60分間プレミキシングを行い、ナノマイザNM2−L200AR(吉田機械興業製)を用いて、2時間分散することによって、顔料を微粒子化した。この溶液から、ロータリエバポレータを用いて有機溶媒であるテトラヒドロフランを除去し、濃度調整を行って顔料濃度4%の顔料水分散液を得た。得られた顔料水分散液を用い、以下に示す組成で、合計100部になるようにインクを調製した。
・前記の顔料水分散液 50部
・1、2−ヘキサンジオール 5部
・グリセリン 15部
・アセチレングリコール界面活性剤 1部
・イオン交換水 残部
こうして得られたインクを、水酸化カリウムにて、pHを9.5に調整し、ガラスフィルターAP20(ミリポア製)に通し実施例1のインクを得た。
(実施例2)
超音波発生装置の槽内に、機械的攪拌装置を備えた500mLナスフラスコを入れた。次に、前記ナスフラスコに、ウレタン樹脂A1を2.5g、ビニル樹脂B1を2.5g、テトラヒドロフランを120mL添加した。さらに、前記ナスフラスコを、超音波をかけながらよく攪拌した。また、別の容器にカーボンブラック#2600(一次粒子の数平均粒子径13nm、BET比表面積370m/g、三菱化学製)を5g取り、テトラヒドロフランを120mL添加し、顔料表面が溶媒で十分濡れるまで遊星式攪拌機(クラボウ製)にて混合した。その後、混合物を前記ナスフラスコに添加し、ウレタン樹脂、ビニル樹脂とよく混合した。
次に、前記ナスフラスコに、ウレタン樹脂とビニル樹脂の中和率が100%になるだけの水酸化カリウムを含むアルカリ水溶液を滴下注入し、転相させた。転相後、1時間プレミキシングを行い、ナノマイザNM2−L200AR(吉田機械興業製)を用いて、1時間分散することによって、顔料を微粒子化した。この溶液から、ロータリエバポレータを用いて有機溶媒であるテトラヒドロフランを除去した。さらに、ナノマイザNM2−L200AR(吉田機械興業製)を用いて、1時間分散することによって、顔料をさらに微粒子化した。その後、濃度調整を行って顔料濃度4%の顔料水分散液を得た。得られた顔料水分散液を用い、以下に示す組成で、合計100部になるようにインクを調製した。
・前記の顔料水分散液 50部
・1、2−ヘキサンジオール 5部
・グリセリン 15部
・アセチレングリコール界面活性剤 1部
・イオン交換水 残部
こうして得られたインクを水酸化カリウムにて、pHを9.5に調整し、ガラスフィルターAP20(ミリポア製)に通し実施例2のインクを得た。
(実施例3)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂A1の代わりにウレタン樹脂A2を使用した以外は、実施例2と同様にして、実施例3のインクを得た。
(実施例4)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂A1の代わりにウレタン樹脂A3を使用した以外は、実施例2と同様にして、実施例4のインクを得た。
(実施例5)
顔料水分散液の作成の際に、ビニル樹脂B1の代わりに、ビニル樹脂B2(スチレンアクリル酸ランダムコポリマー、酸価;70mgKOH/g)を使用した。これ以外は、実施例3と同様にして、実施例5のインクを得た。
実施例6)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂の使用量を1.75gに変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例6のインクを得た。
(実施例7)
顔料水分散液の作成の際に、カーボンブラック#2600の代わりにC.I.Pigment Blue−15:3(一次粒子の数平均粒子径80nm、BET比表面積68m/g、東洋インキ製)を使用した。これ以外は、実施例3と同様にして、実施例7のインクを得た。
(実施例8)
顔料水分散液の作成の際に、カーボンブラック#2600の代わりにC.I.Pigment Red−122(一次粒子の数平均粒子径70nm、BET比表面積70m/g、東洋インキ製)を使用した。これ以外は、実施例3と同様にして、実施例8のインクを得た。
(実施例9)
顔料水分散液の作成の際に、カーボンブラック#2600の代わりにC.I.Pigment Yellow−128(一次粒子の数平均粒子径70nm、BET比表面積85m/g、ciba製)を使用した。これ以外は、実施例3と同様にして、実施例9のインクを得た。
(比較例1)
超音波発生装置の槽内に、機械的攪拌装置を備えた500mLナスフラスコを入れた。この中にビニル樹脂B1を2.5g、テトラヒドロフランを120mL添加し、超音波をかけながら、よく攪拌した。また、別の容器にカーボンブラック#2600(一次粒子の数平均粒子径13nm、BET比表面積370m/g、三菱化学製)を5g取り、テトラヒドロフランを120mL添加した。さらに、前記容器中の顔料が有機溶媒で十分に湿潤するまで遊星式攪拌機(クラボウ製)にて混合した。その後、混合物を前記500mlナスフラスコの中に添加し、ビニル樹脂とよく混合した。
次に、前記ナスフラスコに、ビニル樹脂の中和率が100%になるだけの水酸化カリウムを含むアルカリ水溶液を滴下注入し、転相させた。転相後、60分間プレミキシングを行い、ナノマイザNM2−L200AR(吉田機械興業製)を用いて、2時間分散することによって、顔料を微粒子化した。この溶液から、ロータリエバポレータを用いて有機溶媒であるテトラヒドロフランを除去した。次いで、ウレタン樹脂A1溶液を、トリエチルアミンを含有する脱イオン水に滴下することによって作られた樹脂エマルジョン水溶液を樹脂エマルジョンの固形分として2.5g添加した。次に濃度調整を行って顔料濃度4%の顔料水分散液を得た。得られた顔料水分散液を用い、以下に示す組成で、合計100部になるようにインクを調製した。
・前記の顔料水分散液 50部
・1、2−ヘキサンジオール 5部
・グリセリン 15部
・アセチレングリコール界面活性剤 1部
・イオン交換水 残部
こうして得られたインクを水酸化カリウムにて、pHを9.5に調整し、ガラスフィルターAP20(ミリポア製)に通し比較例1のインクを得た。
(比較例2)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂A1の代わりにウレタン樹脂A2を使用した以外は、比較例1と同様にして、比較例2のインクを得た。
(比較例3)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂A1の代わりにウレタン樹脂A3を使用した以外は、比較例1と同様にして、比較例3のインクを得た。
(比較例4)
超音波発生装置の槽内に機械的攪拌装置を備えた500mLナスフラスコを入れた。次に、前記ナスフラスコに、ビニル樹脂B1を2.5g、テトラヒドロフランを120mL添加し、超音波をかけながらよく攪拌した。また、別の容器にカーボンブラック#2600(一次粒子の数平均粒子径13nm、BET比表面積370m/g、三菱化学製)を5g取り、テトラヒドロフランを120mL添加した。さらに、前記容器中の顔料が有機溶媒で十分に湿潤するまで遊星式攪拌機(クラボウ製)にて混合した。その後、混合物を前記ナスフラスコに添加し、ビニル樹脂とよく混合した。
次に、前記ナスフラスコに、ビニル樹脂の中和率が100%になるだけの水酸化カリウムを含むアルカリ水溶液を滴下注入することで転相させた。転相後、60分間プレミキシングを行い、ナノマイザNM2−L200AR(吉田機械興業製)を用いて、2時間分散することによって、顔料を微粒子化した。この溶液から、ロータリエバポレータを用いて有機溶媒であるテトラヒドロフランを除去した。次いで、ウレタン樹脂A4(市販のウレタン樹脂エマルジョン、スーパーフレックス470(酸価10mgKOH/g、第一工業製薬製))を固形分として2.5g添加した。その後、濃度調整を行って顔料濃度4%の顔料水分散液を得た。得られた顔料水分散液を用い、以下に示す組成で、合計100部になるようにインクを調製した。
・前記の顔料水分散液 50部
・1、2−ヘキサンジオール 5部
・グリセリン 15部
・アセチレングリコール界面活性剤 1部
・イオン交換水 残部
こうして得られたインクを水酸化カリウムにて、pHを9.5に調整し、ガラスフィルターAP20(ミリポア製)に通し比較例4のインクを得た。
(比較例5)
顔料水分散液の作成の際に、ス−パ−フレックス470の代わりにウレタン樹脂A5(市販のウレタン樹脂エマルジョン、ス−パ−フレックス840(酸価23mgKOH/g、第一工業製薬製))を使用した。これ以外は、比較例4と同様にして、比較例5のインクを得た。
(比較例6)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂を使用しなかったこと以外は、実施例3と同様にして、比較例6のインクを得た。
(比較例7)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂の使用量を0.25gに変更した以外は、実施例3と同様にして、比較例7のインクを得た。
(比較例8)
顔料水分散液の作成の際に、ビニル樹脂B1の代わりにビニル樹脂B3(スチレンアクリル酸ランダムコポリマー、酸価;40mgKOH/g)を使用した以外は、実施例3と同様にして、比較例8のインクを得た。
(比較例9)
顔料水分散液の作成の際に、ウレタン樹脂の使用量を3gに変更した以外は、実施例3と同様にして、比較例9のインクを得た。
(比較例10)
超音波発生装置の槽内に機械的攪拌装置を備えた500mLナスフラスコを入れた。次に前記ナスフラスコに、ス−パ−フレックス840(第一工業製薬製)を固形分換算で0.6g、カーボンブラック#2600(一次粒子の数平均粒子径13nm、BET比表面積370m/g、三菱化学製)を5g、テトラヒドロフランを240mL添加した。さらに、前記ナスフラスコに超音波をかけながら、よく攪拌した。その後、水、有機溶媒であるテトラヒドロフランをロータリエバポレータを用いて除去し、樹脂被覆カーボンブラックを得た。
次に、以下の組成の溶液を作成した。
樹脂被覆カーボン 5.6部
ビニル樹脂B1 0.05部
2−ピロリドン 0.5部
水酸化カリウム水溶液(B1中和当量) 残部
前記の溶液を、60分間プレミキシングを行い、ナノマイザNM2−L200AR(吉田機械興業製)を用いて、2時間分散を行った。その後、濃度調整を行って顔料濃度4%の顔料水分散液を得た。得られた顔料水分散液を用い、以下に示す組成で、合計100部になるようにインクを調製した。
・前記の顔料水分散液 50部
・1、2−ヘキサンジオール 5部
・グリセリン 15部
・アセチレングリコール界面活性剤 1部
・イオン交換水 残部
こうして得られたインクを水酸化カリウムにて、pHを9.5に調整し、ガラスフィルターAP20(ミリポア製)に通し比較例10のインクを得た。
(比較例11)
顔料水分散液の作成の際に、カーボンブラック#2600の代わりにC.I.Pigment Blue−15:3(一次粒子の数平均粒子径80nm、BET比表面積68m/g、東洋インキ製)を使用した。これ以外は、比較例3と同様にして、比較例11のインクを得た。
(比較例12)
顔料水分散液の作成の際に、カーボンブラック#2600の代わりにC.I.Pigment Red−122(一次粒子の数平均粒子径70nm、東洋インキ製)を使用した、これ以外は、比較例3と同様にして、比較例12のインクを得た。
(比較例13)
顔料水分散液の作成の際に、カーボンブラック#2600の代わりにC.I.Pigment Yellow−128(一次粒子の数平均粒子径70nm、ciba製)を使用した。これ以外は、比較例3と同様にして、比較例13のインクを得た。
(比較例14)
顔料水分散液の作成の際に、ビニル樹脂を使用しなかった以外は、実施例2と同様にして、比較例14のインクを得た。
<インクの評価>
各実施例及び各比較例で得られたインクについて、下記の方法及び基準で、インク中の浮遊ウレタン樹脂の含有量の測定、サーマルインクジェット吐出特性の評価、印字物の耐擦過性の評価を行った。
(インク中の浮遊ウレタン樹脂の含有量の測定)
各インクを、ポリテトラフルオロエチレン製の10ml遠心管(Part No.364693 ベックマンコールター製)に8ml加えた。次いで、インクの入った遠心管を超遠心機Allegra 64R(ベックマンコールター製)を用いて2時間、30000Gの条件で遠心処理を行った。
遠心処理後に、前記遠心管中の全インクの25体積%にあたる上澄み液を取り出して、UV−Vis測定装置U−3300(日立ハイテク製)を用いて上澄み液中のウレタン樹脂の含有量を測定した。この結果を表2に示した。
(インクジェット吐出特性の評価)
各インクをインクジェット記録装置のインクタンクに充填し、インク吐出周波数を10kHzに設定し、標準電圧で液滴を吐出した。インクジェット記録装置としては、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJ−F930(キヤノン製)を用いた。液滴を連続吐出させ、吐出開始後30秒の、液滴の飛翔速度V1を測定した。また、染料インクBCI−6、シアン(キヤノン製)の同様の条件での飛翔速度をV2として測定し、以下のように分類し、表2に示した。
◎:V1/V2が0.8以上
○:V1/V2が0.6以上0.8未満
△:V1/V2が0.4以上0.6未満
×:V1/V2が0.4未満
(耐擦過性の評価)
各インクを用いて、前記と同様のインクジェット記録装置BJ−F930(キヤノン製)により、1200dpi×2400dpiで100%デューティーのベタ画像を形成した。記録媒体としては、受容層としてシリカが表層に塗布されたキヤノン製コート紙、LFM−GP101Rを使用した。次に、得られた印字物を2日間室温放置後、HEIDON表面性測定機Type:14FW(新東科学製)にて、ボール圧子を使用して評価した。使用した重りは500g、圧子のボールは直径4mmのアクリル球、擦過速度は2400mm/minにて擦過試験を行った。結果は以下のように分類し、表2に示した。
◎:擦過部に擦過痕が見られなかった
○:擦過部に擦過痕は見られたものの、白地発生が見られなかった
×:擦過部に擦過痕が見られ、さらに白地発生が見られた
実施例1〜9と比較例1〜5、8、9、11〜13の結果を比較することにより、インク中の浮遊ウレタン樹脂の含有量がインク全量に対して0.4質量%以下であると、インクジェット吐出特性が良好であることが分かる。また、実施例1〜9と比較例6、7、10の結果を比較することにより、インク中のウレタン樹脂の含有量がインク全量に対して25質量%以上、100質量%以下であると、耐擦過性が良好であることが分かる。また、実施例1〜9と比較例14の結果を比較することにより、インク中にビニル樹脂を含有させることにより、インクジェット吐出特性が良好であることが分かる。

Claims (7)

  1. 少なくとも水と、顔料と、疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合することによって得られるビニル樹脂と、ウレタン樹脂とを含み、前記ウレタン樹脂の酸価は前記ビニル樹脂の酸価より低く、前記ウレタン樹脂の含有量は前記顔料の含有量に対して25質量%以上、100質量%以下であり、前記顔料に吸着していない浮遊ウレタン樹脂の含有量はインク全量に対して0.4質量%以下であるインクジェット記録用顔料インクの製造方法であって、
    有機溶媒中で前記顔料を湿潤させ、該有機溶媒中に前記ビニル樹脂及び前記ウレタン樹脂を溶解させる溶解工程と、
    前記溶解工程で得られた溶液中に、アルカリを含む水を加え転相する転相工程と、
    前記転相工程で得られた溶液中の顔料を微粒子化する微粒子化工程と、
    前記微粒子化工程で得られた溶液から有機溶媒を除去する除去工程とを有することを特徴とするインクジェット記録用顔料インクの製造方法。
  2. 前記ビニル樹脂が前記顔料に吸着している請求項1に記載のインクジェット記録用顔料インクの製造方法
  3. 前記ウレタン樹脂の酸価をα、前記ビニル樹脂の酸価をβとしたとき、前記αとβが、β/α≧2
    の関係を満たす請求項1又は2に記載のインクジェット記録用顔料インクの製造方法
  4. 前記ウレタン樹脂が、主鎖構造中にエステル結合を有するエステル系ウレタン樹脂である請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録用顔料インクの製造方法
  5. 前記ウレタン樹脂の酸価が、20mgKOH/g以上、60mgKOH/g以下である請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録用顔料インクの製造方法
  6. 0.5mm/secの引張速度で行う引張試験によって測定される、前記ウレタン樹脂より形成されるフィルムの破断伸度が、10%以上、1000%以下である請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェット記録用顔料インクの製造方法
  7. 前記インク中の前記ウレタン樹脂の含有量が、前記顔料の含有量に対して45質量%以上、100質量%以下であり、前記ビニル樹脂の含有量が、前記ウレタン樹脂の含有量に対して66質量%以上、500質量%以下である請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録用顔料インクの製造方法。
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