本発明の発明者らは、空調すべき室内における使用者の活動状況等に応じて、使用者が快適と感じる空気調和機の吹出口から吹き出される空気の流れ方向について検証した結果、以下の知見を得た。
本発明の発明者らは、使用者の安静時や活動時等の状況に応じて、当該使用者が快適と感じる室内における上部空間と下部空間の温度差が異なることを見出した。例えば、暖房時においては、使用者が快適と感じる室内の上部空間と下部空間の温度差は、安静時には約6℃(例えば、上部空間が24℃で下部空間が30℃)であり、使用者が食事をしているときのような活動量が比較的小さいときには約4℃(例えば、上部空間が24℃で下部空間が28℃)であり、使用者が室内を掃除しているときのような活動量が大きいときには約2℃(例えば、上部空間が24℃で下部空間が26℃)であることを見出した。同様に、冷房時においても使用者が快適と感じる室内の上部空間と下部空間の温度差が見いだした。しかしながら、従来の上下風向変更羽根のように吹出口から吹き出される空気を一方向のみに向ける羽根構成を用いて、使用者の状況に応じて、室内における上部空間と下部空間の温度差を最適化することは不可能であった。
本発明の発明者らは、吹出口から吹き出される空気の気流を所望の方向に流れるよう分配し、且つ分配される空気の風量を調整することにより、空調すべき室内の上部空間と下部空間の温度差を所望の温度に調整可能であることを見出した。これらの知見に基づき、本発明の発明者らは、以下の実施の形態において例示する本発明の空気調和機を成したものである。
本発明に係る第1の態様の空気調和機は、吹出口から吹き出される空気の流れ方向を上下に変更する上下風向変更羽根と、前記上下風向変更羽根を駆動する上下風向変更駆動源と、を有し、前記上下風向変更駆動源により前記上下風向変更羽根を駆動制御して空調運転を行う空気調和機であって、
前記上下風向変更羽根は、前記吹出口の近傍において回動自在に設けられた第1の羽根と第2の羽根と、前記第1の羽根と前記第2の羽根のそれぞれに回動可能に軸支される主アームと従アームとを有し、
前記第1の羽根と前記第2の羽根と前記主アームと前記従アームとにより4節リンク機構が構成され、
前記上下風向変更駆動源は、前記第1の羽根を前記第2の羽根との位置関係を保持した状態にて回動し、前記第2の羽根を前記第1の羽根に対して近づく又は離れるように駆動し、
前記主アームと前記従アームは、その一対が空気の流れ方向に沿って一直線上に配置されるよう構成されている。
このように構成された本発明に係る第1の態様の空気調和機は、使用者の状況に応じて一層快適な空調環境を作り出すことができるとともに、気流に対する整流効果を向上させることができる。
本発明に係る第2の態様の空気調和機において、前記の第1の態様における前記第1の羽根に、前記主アームと前記従アームを収納する凹部が形成されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第2の態様の空気調和機は、空気調和機の吹出口内の構成をコンパクトにすることができるとともに、主アームおよび従アームが気流の妨げとなることを抑制することができ、整流効果を向上させることができる。
本発明に係る第3の態様の空気調和機において、前記の第2の態様における前記第1の羽根の上面には段差が形成されており、
前記主アームと前記従アームが前記第1の羽根の前記凹部に収容されて、前記第1の羽根と前記第2の羽根が一体化された1枚羽根状態において、前記第2の羽根の上流側端部は、前記第1の羽根の前記段差に配置されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第3の態様の空気調和機は、1枚羽根状態において、第1の羽根に形成された段差に、第2の羽根における第1の羽根と重なる部分が確実に配置されるため、気流の流れを乱すことがなく、整流効果を向上させることができる。
本発明に係る第4の態様の空気調和機において、前記の第3の態様における前記第2の羽根の下面には段差が形成されており、
1枚羽根状態において、前記第1の羽根の下流側端部は、前記第2の羽根の前記段差に配置されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第4の態様の空気調和機は、1枚羽根状態の上下風向変更羽根の下面において第2の羽根に形成された段差の近傍部分が面一となることにより、気流に対する整流効果を向上させることができる。
本発明に係る第5の態様の空気調和機において、前記の第4の態様における前記上下風向変更羽根の前記主アームには受け部材が突設されており、
1枚羽根状態において、前記第2の羽根に対してその下流側端部を持ち上げる方向に外力が加えられたときに、前記受け部材は、前記第2の羽根の一部に当接することによりその外力を受けるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第5の態様の空気調和機は、1枚羽根状態における上下風向変更羽根の安定性を向上させることができる。
以下、本発明の空気調和機に係る実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態の空気調和機においては、具体的な構成ついて説明するが、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が適用された各種空気調和機を含むものである。
《実施の形態1》
実施の形態1の空気調和機は、室内機と室外機が冷媒配管及び制御配線等により互いに接続されたセパレート型の空気調和機である。室内機と室外機によりヒートポンプが構成されており、室外機にはコンプレッサが設けられている。実施の形態1の空気調和機における室内機は、室内の壁面に取り付ける壁掛け式室内機である。
図1は、本発明に係る実施の形態1の空気調和機における室内機の概略構成を示す側面断面図である。図1に示すように、室内機1は、空気取り入れ口となる前面開口部2aと上面開口部2bとを持つ本体2、及び本体2の前面開口部2aを開閉する可動式の前面パネル3とを備えている。また、本体2の下方側には、熱交換された空気を吹き出す吹出口2cが配設されている。なお、図1は実施の形態1の空気調和機における空調運転停止時の状態を示している。
図2の(a)及び(b)は、実施の形態1の空気調和機における空調運転時の各状態を示す側面断面図であり、図2の(a)及び(b)においては内部構成を省略している。図2において、(a)は冷房運転時の一状態を示しており、(b)は暖房運転時の一状態を示している。実施の形態1における、冷房運転時と暖房運転時における詳細な空調動作については後述する。
図1に示すように、実施の形態1の空気調和機の空調運転停止時においては、前面パネル3が、本体2に密着して前面開口部2aを閉じるように構成されている。一方、空気調和機の空調運転時においては、図2の(a)及び(b)に示すように、前面パネル3が、本体2から離れる方向に所定距離だけ移動して前面開口部2aを開放するように構成されている。
図1に示すように、本体2の内部には、熱交換器4と、前面開口部2a及び上面開口部2bからフィルタ6を通して取り入れた室内空気を熱交換器4で熱交換して室内に吹き出すためのファン5とが設けられている。前面開口部2a及び上面開口部2bと熱交換機6との間に設けられたフィルタ6は、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入られた室内空気に含まれる塵埃を除去するために設けられている。
実施の形態1の空気調和機において熱交換した空気を室内に吹き出すための吹出口2cには、当該吹出口2cを開閉するとともに、空気の吹き出し方向を上下方向に変更することができる上下風向変更手段である上下風向変更羽根10が設けられている。さらに、吹出口2cの内部には空気の吹き出し方向を左右に変更することができる左右風向変更手段である左右風向変更羽根9が設けられている。
上下風向変更羽根10は、第1の羽根の一例である下羽根11と、この下羽根11の上方に設けられた第2の羽根の一例である上羽根12とを備えている。上下風向変更羽根10は、下羽根11と上羽根12とが協働して、吹出口2cから吹き出される空気の吹き出し方向を制御するように構成されている。下羽根11は、第1の羽根駆動軸の一例である下羽根駆動軸13に固定されており、下羽根駆動軸13の回動動作により、下羽根駆動軸13を中心として回動するよう設けられている。上羽根12は、後述するリンクアーム(主アーム14、従アーム15)の機能によって下羽根11と略平行に保持された状態で下羽根11に対して近接・離間動作するように構成されている。
左右風向変更羽根9は、例えば、室内機1の正面から見て左側に位置する一組の羽根と、右側に位置する一組の羽根とで構成されている。各一組の羽根は、複数枚(例えば、5枚)の羽根で構成されている。また、各一組の羽根は、それぞれが別々の駆動源(例えば、駆動モータ)16に連結されており、それぞれの駆動源16により独立して制御される。
空気調和機が空調運転を開始すると、上下風向変更羽根10が開動作を行い吹出口2cが開放される。このように吹出口2cが開放された状態でファン5が駆動されて、室内空気が前面開口部2a及び上面開口部2bを通して室内機1の内部に取り入れられる。取り入れられた室内空気は、フィルタ6を通り、熱交換器4において熱交換されて、ファン5に吸い込まれる。ファン5に吸い込まれた熱交換された空気は、ファン5の下流側に形成された通風路17を通り、吹出口2cより吹き出される。
ファン5の下流側に形成され、吹出口2cにおける上流側に配置される通風路17は、ファン5の下流側に配置されて空気の流れを案内するリアガイダ7と、このリアガイダ7に対向するスタビライザ8と、本体2の両側壁(図示せず)とで形成されている。
吹出口2cからの空気の吹き出し方向は、上下風向変更羽根10及び左右風向変更羽根9により制御される。上下風向変更羽根10及び左右風向変更羽根9の角度調整等の動作は、室内機1を制御する制御装置(図示せず)により制御される。
なお、実施の形態1におけるスタビライザ8は、ファン5の下流近傍に配設され、ファン5の排出部付近に発生する渦を安定化させるスタビライザ機能を有する壁部分と、このスタビライザ機能を有する壁部分の下流側に配設され、ファン5により搬送された空気の圧力回復を担うディフューザ機能を有する壁部分とを含み、通風路17における吹出口2cに至る上側の壁部分を示している。
図3は、実施の形態1の空気調和機における室内機1の全体概略構成を示す斜視図であり、室内機1の一部を破断して人感センサユニットを示している。実施の形態1における室内機1には、前面パネル3に人の活動量を検知する活動量検知装置の一例として人感センサユニット18が設けられている。ここで、「人の活動量」とは、人の動きの度合いを示す概念であり、例えば、「活動量安静」、「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」などの複数の活動量レベルに分類されるものである。「活動量安静」とは、例えば、ソファでくつろいでいるときのようなほとんど活動がない場合をいう。「活動量大」とは、掃除しているときのように広い領域で大きく頻繁に活動している場合をいう。「活動量中」とは、炊事などの狭い領域で活動している場合をいう。「活動量小」とは、食事をしているときのような多少活動している場合をいう。人感センサユニット18は、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する赤外線センサにより構成されており、赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じてパルス信号に基づいて人の在否が判定される構成である。なお、人感センサユニット18の具体的な構成としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開2008−215764号公報に開示された人感センサユニットを使用することができる。
[上下風向変更羽根の構成]
次に、上下風向変更羽根10の構成について、さらに詳しく説明する。図4は、上下風向変更羽根10の構成を示す概略図である。
上下風向変更羽根10は、前述したように、下羽根11と上羽根12とを有し、下羽根11と上羽根12は、吹出口2cの近傍において連動して回動し、一体化した一枚羽根による気流ガイド動作、若しくは2枚羽根による気流ガイド動作を行うよう構成されている。1枚羽根状態の上下風向変更羽根10において、吹出口2cから吹き出される空気の上流側となる下羽根11は、内部が空洞の樹脂材で構成されており、剛性を有すると共に、断熱構成、軽量構成及び結露の発生を防止する構成を有している。一方、吹出口2cから吹き出される空気の下流側となる上羽根12は、1枚の板材を加工して形成されており、剛性を有すると共に軽量化が図られている。
下羽根11と上羽根12とは、略平行な状態を維持するようにリンク機構により連結されている。実施の形態1においては、下羽根11と上羽根12とは、主アーム14と従アーム15により構成された一対のリンクアームにより、互いの距離が離接するよう連結されている。したがって、下羽根11と上羽根12と主アーム14と従アーム15とにより、4節リンク機構が構成されている。主アーム14と従アーム15は、上下風向変更羽根10における気流の流れ方向において所定距離だけ離れた位置に設けられており、主アーム14と従アーム15により生じる気流の乱れを可能な限り少なくなるよう構成されている。
なお、「略平行な状態」とは、下羽根11と上羽根12とが完全に平行な状態のみならず、巨視的に見て概ね平行な状態も含むことを意味する。下羽根11及び上羽根12としては、直線形状や同一の厚さを有するものだけでなく、湾曲形状や、段差部を有する形状のものを使用することができるからである。
下羽根11は、第1の羽根駆動軸である下羽根駆動軸13に固定されており、下羽根駆動軸13により回動するよう構成されている。下羽根駆動軸13は、吹出口2cの壁側の下端部2d(図4参照)の縁に沿ってその近傍に配設されており、本体2に設けられた第1の羽根駆動源である下羽根駆動源(図示省略)により回動可能に構成されている。第1の羽根駆動源である下羽根駆動源については後述する。
主アーム14は、下羽根駆動軸13と同軸上に配置された第2の羽根駆動軸である上羽根駆動軸19により所定角度だけ回動するよう構成されている。上羽根駆動軸19は、本体2に設けられた第2の羽根駆動源である上羽根駆動源(図示省略)により回動するよう構成されている。第2の羽根駆動源である上羽根駆動源については後述する。なお、上羽根駆動軸19と下羽根駆動軸13を同軸上に配置することにより、空気調和機の吹出口2c内の構成をコンパクトにすることができ、吹出口2c内の風に対する通風抵抗を低減することができる。
上記のように構成された上下風向変更羽根10においては、下羽根駆動軸13が下羽根駆動源により回動したとき、下羽根11と上羽根12との位置関係が保持された状態、すなわち上羽根駆動軸19が固定された状態(上羽根駆動源が停止した状態)で下羽根が回動するよう構成されている。また、上羽根駆動軸19が上羽根駆動源により回動したとき、下羽根駆動軸13が固定された状態(下羽根駆動源が停止した状態)で主アーム14が回動して、上羽根12が下羽根11に対して離接動作を行う。
図5は下羽根駆動軸13を回動したときの下羽根11と上羽根12との回動動作を示す図である。図6は上羽根駆動軸19のみを回動したときの下羽根11と上羽根12との離接動作を示す図である。
図5に示すように、下羽根駆動軸13を回動したときには、下羽根11と上羽根12は同じ距離を保持した状態で上下風向変更羽根10の全体が回動動作を行う。一方、図6に示すように、上羽根駆動軸19を回動したときには、下羽根11の位置が保持された状態で、上羽根12が下羽根11に対して略平行な状態で移動して、離接動作を行う。
図7は、下羽根11と上羽根12を含む上下風向変更羽根10等の構成を示す分解斜視図である。図7に示すように、下羽根11の両側には羽根駆動源となるギアユニット20,21が設けられている。図7において、下羽根11の右側に配設された第1のギアユニット20は、下羽根駆動軸13を回動する下羽根駆動源(第1の羽根駆動源)である。一方、下羽根11の左側に配設された第2のギアユニット21は、上羽根駆動軸19を回動する上羽根駆動源(第2の羽根駆動源)である。このように、第1のギアユニット20と第2のギアユニット21が吹出口2cの長手方向において対向する位置(一端側と他端側)に設けられることにより、両ギアユニット20、21による共振を抑制し、低振動化を図ることができる。
実施の形態1においては、4節リンク機構を構成する主アーム14及び従アーム15の対は、上下風向変更羽根10における両側と中央の3箇所に設けられている。各主アーム14の一端部分に形成された貫通孔は、上羽根駆動軸19により貫通されて係合しており、上羽根駆動軸19の回動に応じて所定角度だけ駆動可能に構成されている。各主アーム14の他端部分は、上羽根12の対応する所定位置に回動可能に軸支されている。また、各従アーム15の両端部分は、下羽根11と上羽根12における対応する所定位置に回動可能に軸支されている。
4節リンク機構を構成する主アーム14と従アーム15は、一枚羽根状態において、下羽根11に形成された凹部24の内部に収納されるよう構成されている。また、一枚羽根状態において、主アーム14と従アーム15は、実質的に1直線上の一列状態に配置されるように、軸支位置が設定されており、下羽根11の凹部24内部に直線状に収納される構成である。このように主アーム14と従アーム15は、その一対が空気の流れ方向に沿って一直線上に(空気の流れ方向から見て重なる位置に)配置されることにより、主アーム14および従アーム15が気流の妨げとなることを抑制することができ、整流効果を向上させることができる。また、下羽根11に、主アーム14と従アーム15を収納する凹部24が形成されることにより、空気調和機の吹出口2c内の構成をコンパクトにすることができるとともに、主アーム14および従アーム15が気流の妨げとなることを抑制することができ、整流効果を向上させることができる
なお、下羽根駆動軸13はいわゆるスライド軸である。したがって、下羽根駆動軸13は通常、下羽根11に接続されているものの、下羽根11に対してスライド移動することにより、下羽根11との係合を適宜解除することができる。このように下羽根駆動軸13が下羽根11からスライドして取り外し可能に構成されることにより、上下風向変更羽根10のメンテナンスを容易に行うことができ、空気調和機の使用者に対するサービス性を向上させることができる。
図8は、4節リンク機構を構成する上下風向変更羽根10(下羽根11,上羽根12)、主アーム14及び従アーム15の連結状態を示す図である。図9は主アーム14と上羽根駆動軸19との係合状態を示す断面図である。
図8に示すように、上羽根駆動軸19は、軸に直交する断面が半円形状(D字形状)を有している。この上羽根駆動軸19と係合する主アーム14における貫通孔14aの断面孔形状は、上羽根駆動軸19の断面の半円形状における半円の直径より僅かに大きな直径を有しており、主アーム14の貫通孔14aに摺動可能に上羽根駆動軸19が挿入されている。また、主アーム14の貫通孔14aにおける軸に直交する断面形状は、円の一部が扇状に欠落した形状を有している。したがって、主アーム14の貫通孔14aに上羽根駆動軸19が挿入された状態において、空転空間A(図9参照)を有する構成となる。このため、上羽根12が下羽根11から持ち上がった2枚羽根状態においては、上羽根駆動軸19の一部が主アーム14の貫通孔14aの内面の段部Bと当接して、上羽根駆動軸19が主アーム14の段部Bを支持した状態である(図9の(a)参照)。上羽根駆動軸19が回動して、主アーム14が駆動(図9の(a)において反時計回りに回転)されると、上羽根12が下羽根11に重なって1枚羽根の状態となる。この時、図9の(b)に示すように上羽根12は下羽根11に当接する。実施の形態1の構成においては、図9の(b)に示す状態において、上羽根駆動軸19がさらに回動するが、この時は空転区間Aを回動するため、主アーム14は駆動されず、上羽根12は自由な状態となり上羽根12が自重により下羽根11に重なった1枚羽根の状態となる(図9の(c)参照)。
上記のように、2枚羽根状態においては主アーム14の貫通孔14aの段部Bと当接していた上羽根駆動軸19が、図9(c)に示すように、1枚羽根状態においては貫通孔14a内をさらに回動動作して、上羽根駆動軸19と主アーム14の段部Bとは当接状態から解放された状態となる。このように、実施の形態1の構成においては、上羽根駆動軸19の回動動作に対して、上羽根駆動軸19の力が主アーム14の段部Bに作用しない期間(空転空間A)、いわゆる空転期間を有して回動動作を行う構成となる。したがって、この空転期間においては、上羽根駆動源である第2のギアユニット21から上羽根12への駆動力伝達機構が外れて、上羽根12の自重により、上羽根12が下羽根11の上に載置される状態(1枚羽根状態)となる。
したがって、実施の形態1の空気調和機においては、上下風向変更羽根10が1枚羽根状態においては、上羽根12に対する機械的な強制駆動が解除されているため、各部品の加工寸法のバラツキ等を吸収することができる構成であり、羽根間に隙間の発生が防止されており、且つ羽根同士が所定以上に強く当接することがなく、第2のギアユニット21および第1のギアユニット20に過負荷が加わることが防止されている。
[上下風向変更羽根の動作]
図10は、暖房時の上下風向変更羽根10(下羽根11,上羽根12)の具体的な回動動作及び離接動作の例を示す図である。図10においては、主アーム14及び従アーム15等は省略して、下羽根11及び上羽根12を図示している、図11は、冷房時の上下風向変更羽根10(下羽根11,上羽根12)の具体的な回動動作及び離接動作の例を示す図である。図10及び図11は、実施の形態1の空気調和機の「通常」、「強」又は「弱」の動作状況において、人の活動量レベルとして「活動量大」、「活動量中」又は「活動量安静」を検知したときにおける上下風向変更羽根10の動作状態を示している。
例えば、暖房時においては、下羽根11を斜め下向きに固定した状態で、上羽根駆動軸19を回動制御して主アーム14を回動させて、下羽根11と上羽根12との間の距離を変更する離接動作を行っている。
一方、冷房時においては、例えば動作状況が「通常」であれば、人の活動量レベルとして「活動量大」が検知されたとき、下羽根駆動軸13が回動されて下羽根11を斜め下向きに配置すると共に、上羽根駆動軸19の駆動により上羽根12が下羽根11から所定距離を離した状態に配置される。また、人の活動量レベルとして「活動量安静」が検知されたときには、下羽根駆動軸13が回動されて下羽根11を略水平方向に配置すると共に、上羽根駆動軸19の駆動が解除された状態となり、上羽根12が下羽根11に対して重力により載置された1枚羽根状態となる。このように、1枚羽根状態においては、上羽根駆動源である第2のギアユニット21から上羽根12への駆動力伝達機構が外れて、上羽根12の自重により、上羽根の少なくとも一部が下羽根に載置されている。
図10及び図11に示すように、空気調和機において設定された動作状況(例えば、「通常」、「強」、「弱」)、及び検知された人の活動量(例えば、「活動量安静」、「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」)に応じて、上部空間と下部空間の温度差を所望の温度に調整した当該空気調和機の空調動作が実行される。このような風向制御を、下羽根11、上羽根12、主アーム14および従アーム15で構成される4節リンク機構により行うことで、使用者の状況に応じて一層快適な空調環境を作り出すことができる。
また、図11に示すような下羽根11および上羽根12が略水平方向に配置される1枚羽根状態だけでなく、下羽根11および上羽根12が水平方向から上下方向(特に下方向)に回動して配置された1枚羽根状態を形成することも可能である。1枚羽根状態においては、上羽根12の自重により上羽根12の少なくとも一部が下羽根11に載置されている。本実施の形態の空気調和機では、下羽根11および上羽根12が1枚羽根状態からそれよりも上方向に回動した1枚羽根状態に移動する際には、上羽根12が、下羽根11と同時又は下羽根11よりも先に駆動されるように構成される。逆に、下羽根11および上羽根12が1枚羽根状態からそれよりも下方向に回動した1枚羽根状態に移動する際には、下羽根11が、上羽根12と同時又は上羽根12よりも先に駆動されるように構成される。このように、ある1枚羽根状態から新たな1枚羽根状態を形成する際に、下羽根11および上羽根12が互いに押圧し合わないように回動制御されることにより、下羽根11、上羽根12、主アーム14、あるいは従アーム15にかかる負荷を軽減することができ、空気調和機の信頼性を向上させることができる。
[上下風向変更羽根の上羽根の浮き上がり防止機構]
前述のように、実施の形態1の空気調和機においては、当該空気調和機の動作状況及び検知された人の活動量に応じて、上下風向変更羽根10が2枚羽根状態と1枚羽根状態との間で変化する構成を有する。
1枚羽根状態においては、例えば、図11における動作状況が「通常」であり、人の活動量が「活動量安静」のとき、上下風向変更羽根10が略水平方向に空気を吹き出すように配置されている。このとき、第2のギアユニット21から上羽根12への駆動力伝達機構は外れた状態であり、上羽根12に対する上羽根駆動軸19の駆動が解除された状態であるため、上羽根12はその自重により下羽根11の上に載置された状態である。
図12は、1枚羽根状態を示す上下風向変更羽根10の断面図である。図12に示す1枚羽根状態においては、前述の図9において説明したように、上羽根駆動軸19の断面が半円形状(D字形状)であり、上羽根駆動軸19が回動しても主アーム14の貫通孔14aの段部と当接せず、係合しない状態であり、第2のギアユニット21から主アーム14に対する駆動力が伝達しない状態である。この結果、主アーム14に回動可能に軸支された上羽根12は、その自重により下羽根11の上に載置された1枚羽根状態となる。
実施の形態1の空気調和機においては、上下風向変更羽根10の1枚羽根状態のとき気流等の影響を受けて、上羽根12が下羽根11から飛び出さないように、以下のように特別な構成を有している。
内部に空洞を有する厚みを持つ下羽根11には、上羽根12と重なっても下羽根11の表面から上羽根12の端部が飛び出さないように、段差11aを有する凹部形状である。1枚羽根状態においては、この段差11aを有する凹部24内部に上羽根12における下羽根11と重なる部分が確実に配置されるため、気流の流れを乱すことがなく、整流効果を有する1枚羽根構成となる。また、1枚羽根状態においては、空気の流れ方向において、段差11aより上流側にある下羽根11のガイド面(図12の符号11c参照)より、段差11aより下流側にある上羽根12のガイド面(図12の符号12a参照)が確実に下方となるよう配置されている。したがって、1枚羽根状態の段差11aの部分において、下羽根11と上羽根12との間に気流が入りにくい構成となり、気流により上羽根12の上流側端部が下羽根11のガイド面11cより浮き上がらないよう構成されている。ここでガイド面とは、吹出口2cから吹き出される空気を所望の方向に案内する羽根表面のことをいう。
同様に、上羽根12の下面にも段差11dが設けられている。1枚羽根状態のときに、下羽根11の下流側端部が上羽根12の段差11dに収納されるように構成される。これにより、1枚羽根状態の上下風向変更羽根10の下面において、上羽根12の下面に形成された段差11dの近傍が面一となることにより、気流の整流効果を向上させることができる。
また、実施の形態1の空気調和機においては、図12に示すように、下羽根11における空気の流れ方向の下流側の端部近傍で上羽根12に対向する面には突起11bが形成されている。突起11bは下羽根11における左右の両端部分と、中央部分に3箇所設けている。これらの突起11bは下羽根11の形成時に樹脂成形で形成してもよく、別部材、例えばゴム部材を固着した構成でもよい。また、突起11bの形状としては、半球状、矩形状、及び吹出口からの空気の流れに沿って配置された板状でもよく、吹出口からの空気の流れに沿って徐々に高さが異なるよう斜行した構成でもよい。いずれの形状においても、下羽根11の下流側において上羽根12の下流側を持ち上がる状態として、上羽根12の上流側端部が下羽根11に確実に当接する状態となり、上羽根12の上流側端部の浮き上がりが防止される構成であればよい。
上記のように、下羽根11における空気の流れ方向の下流側端部近傍で、上羽根12に対向する面に複数の突起を形成して、下羽根11と上羽根12が空気の流れ方向の下流側において確実に接触するよう構成されている。このため、段差11aより空気の流れ方向の下流側にある上羽根12のガイド面12aは、段差11aより空気の流れ方向の上流側にある下羽根11のガイド面11cより相対的に確実に下方の位置に配置される。
図8に示すように、上下風向変更羽根10における上羽根12には第3の羽根の一例であるガイドミニ羽根23が設けられている。ガイドミニ羽根23は、下羽根11と上羽根12により形成される気流における主流に対する保護を目的とするものである。ここでは、下羽根11と上羽根12との間の空間を通って流れる気流を主流とする。ガイドミニ羽根23の詳細な動作等は後述する。また、上下風向変更羽根10の主アーム14には、受け部材の一例である当てリブ22が突設されている。この当てリブ22は、主アーム14が回動して1枚羽根状態の時、ガイドミニ羽根23の後端が当てリブ22に近接するよう配置されている。このため、もし強制的に上羽根12を下羽根11から解離(浮き上がり)するよう外力を加えても、当てリブ22がガイドミニ羽根23の後端に当接してその外力を受けることにより、上羽根12の解離動作は防止されている。すなわち、1枚羽根状態における上下風向変更羽根10の安定性を向上させることができる。
[ガイドミニ羽根の構成]
前述のように、上下風向変更羽根10の上羽根12には第3の羽根の一例であるガイドミニ羽根23が設けられており、このガイドミニ羽根23の上流側端部は、上羽根12の上流側端部より上流側に突出している。ガイドミニ羽根23は1枚羽根状態における上羽根12の浮き上がり防止機能の一端を担っているが、下記に説明するように上下風向変更羽根10により形成された主流を保護するガイド気流を形成する機能を有している。
例えば、図11に示す冷房時の上下風向変更羽根10(下羽根11,上羽根12)の動作状況が「強」のとき、吹出口2cからの空気が所望の領域に確実に到達するように、ガイドミニ羽根23が設けられている。このように構成された上下風向変更羽根10において、下羽根11と上羽根12とに挟まれた空間からは、主流となる気流が吹き出される。このとき、下羽根11の下面(吹出口2cの壁面側の下端部2dに対向する面)には下部ガイド気流が形成され、同時に、上羽根12の上面(吹出口2cの上面に対向する面)には上部ガイド気流が形成される。
実施の形態1の空気調和機における上羽根12の上面の上流側にはガイドミニ羽根23が形成されているため、上羽根12の上面に沿って流れる上部ガイド気流は、ガイドミニ羽根23により2方向に分流される構成である。一方の上部ガイド気流は、上羽根12とガイドミニ羽根23とに挟まれた空間を流れ、主流に沿って流れて主流を保護する。他方の上部ガイド気流は、ガイドミニ羽根23と吹出口2cの上面(スタビライザ8が形成されている面)とに挟まれた空間を流れて主流の上部に沿って流れる。このように、上羽根12の上面にガイドミニ羽根23を設けて、上部ガイド気流を所定の方向に分流することにより、主流に対する周りの空気との混合が防止され、主流の減衰を抑制して、所定の領域に対する温度制御がより確実なものとしている。
図13は、実施の形態1の空気調和機における上下風向変更羽根により生じるガイド気流の状態を示す図であり、上下風向変更羽根10における下羽根11と上羽根12との間の空間に流れる主流に対して、ガイドミニ羽根23により上ガイド気流が生じている状態を示している。この図13は、実験結果に基づいた図である。
図13に示すように、上下風向変更羽根10における下羽根11と上羽根12とより主流となる空気の流れが形成されており、この主流を上下に挟むようにガイド気流が生じている。上側のガイド気流である上部ガイド気流は、ミニガイド羽根23により二方向に分流されており、一方の上部ガイド気流が主流に沿って流れており、主流の流れを保護しており、他方の上部ガイド気流とともに周りの空気と主流が混合されるのを抑制している。また、発明者らは、実験によりミニガイド羽根23を設けてガイド気流を形成することにより、主流の減衰が確実に抑制されていることを確認した。
[上下風向変更羽根による上下2温度制御]
実施の形態1の空気調和機においては、前述のように上下風向変更羽根10を駆動制御することにより、下羽根11と上羽根12は同じ距離を保持した状態で回動動作を行い、及び/又は、上羽根12と下羽根11が離接動作を行う。このように駆動制御された上下風向変更羽根10により、吹出口2cから吹き出される空気を実質的に一方向、若しくは二方向(例えば、上部空間の方向と下部空間の方向)に向かう気流に分配することが可能となる。
図5に示したように、下羽根11と上羽根12は同じ距離を保持した状態で上下風向変更羽根10の全体が回動動作を行うことにより、下羽根11と上羽根12との間の空間を通って流れる主流の方向を上下方向に変更することができる。このとき、上羽根12とスタビライザ8との間の空間を通る気流の流れる方向は上部空間の方向である。
また、図6に示したように、下羽根11の位置が保持された状態で、上羽根12が下羽根11に対して略平行な状態で移動する離接動作を行うことにより、吹出口2cから吹き出される空気を実質的に一方向、若しくは二方向(例えば、上部空間の方向と下部空間の方向)に向かう気流に分配すると共に、その風量を変更することが可能となる。例えば、上羽根12が下羽根11に近づくことにより、下羽根11と上羽根12との間隔が狭くなり、上羽根12とスタビライザ8(吹出口2cの上面)との間隔が広くなる。これにより、下羽根11と上羽根12との間を通過する空気の風量が小さくなり、上羽根12とスタビライザ8との間を通過する空気の風量が大きくなる。
上記のように、実施の形態1の空気調和機においては、下羽根駆動源(第1の羽根駆動源)である第1のギアユニット20の回動動作により、下羽根11と上羽根12は同じ距離を保持した状態で上下風向変更羽根10の全体が回動動作を行って、上部空間と下部空間に向かう気流に分配することが可能となる。
また、実施の形態1の空気調和機においては、上羽根駆動源(第2の羽根駆動源)である第2のギアユニット21の回動動作により、上羽根12が下羽根11に対して離接動作を行って、下羽根11と上羽根12との間を通過する空気の風量と、上羽根12とスタビライザ8との間を通過する空気の風量が調整される。
上記のように構成された実施の形態1の空気調和機においては、上部空間へ吹き出す風量と、下部空間へ吹き出す風量との割合を自在に変動させることが可能となり、快適な空調空間を実現することができる。
図11において、動作状況が「通常」であり、人の活動量レベルが「安静」と検知されたときの上下風向変更羽根10の動作状態である1枚羽根状態のとき、空気の流れ方向における上下風向変更羽根10の長さが最大になる。この結果、吹出口2cから吹き出された空気をより遠くまで供給することができる。
なお、実施の形態1の空気調和機において、1枚羽根状態のとき、下羽根11における空気が流れるガイド面11c(図12参照)となる上面は、上羽根12における空気が流れるガイド面12a(図12参照)となる上面より上方位置となるよう構成されている。これは、吹出口2cからの空気の吹き出しにより上羽根12が下羽根11から浮き上がりことを確実に防止するためである。このように構成された1枚羽根状態の上下風向変更羽根10は、空気の流れ方向に長いガイド面を有しており、吹出口からの空気を遠くの領域に供給することが可能となると共に、吹き出された空気に対する整流効果を有する構成となる。したがって、実施の形態1の空気調和機は、吹き出された空気を所望の方向及び所望の領域に供給することが可能な構成となる。
[上下風向変更羽根による方向制御動作]
次に、実施の形態1の空気調和機における空調運転時の上下風向変更羽根10による方向制御動作について説明する。なお、以下の説明において用いる図14から図19は、実施の形態1の空気調和機における室内機1を室内の壁面に設けたときの気流の流れを示す説明図である。
冷房時においては、活動量レベルが「活動量安静」に近い場合ほど、室内の上部空間と下部空間との温度差を無くして、なるべく均一にし、なお且つ冷風を体に直接当てないように調整することが使用者にとって快適であると考えられている。例えば、活動量レベルが「活動量安静」の場合には、室内の上部空間と下部空間の温度差を約0℃、さらに室内の上部空間と下部空間の風速は気流感を感じない風速であり、いずれも約0.2m/s以下に調整した場合には、使用者が快適に感じることが知られている。このため、「活動量安静」の状況において、冷房時には、図2の(a)に示すように、上下風向変更羽根10の動作状態は1枚羽根状態であることが好ましい。したがって、実施の形態1の空気調和機においては、動作状況が「通常」で、検知された人の活動量レベルが「活動量安静」のとき、図11に示すように、上下風向変更羽根10の動作状態が下羽根11と上羽根12が一体化された1枚羽根状態であり、天井面に沿う方向(略水平方向)に風を吹き出すように、上下風向変更羽根10を第1のギアユニット20(下羽根駆動源)及び第2のギアユニット21(上羽根駆動源)により駆動制御している。このように上下風向変更羽根10が駆動制御されることにより、上下風向変更羽根10の長さ(空気が流れ方向の長さ)が最大となり、空気の整流効果が大幅に向上する。
冷房時において、室内機1の内部で冷やされた空気(冷風)は、暖かい空気より重いため吹出口2cから床面に向けて下降しようとするが、上下風向変更羽根10の長さ(空気が流れ方向の長さ)が長くなることにより、吹出口2cから吹き出された空気を天井面に沿って遠くへ流すことが可能となる。この結果、図14に示すように、室内機1の吹出口2cから吹き出された空気(冷風)を天井面に沿って室内機1が設置された壁面に対向する壁面まで供給することが可能となる。このため、実施の形態1の空気調和機においては、室内の上部空間と下部空間の温度をより均一にすることができるとともに、使用者には冷風が直接当たらない空調動作とすることができる。
なお、冷房時であっても、室内の温度が高い冷房初期の場合や、活動量レベルが「活動量大」に近い場合ほど、使用者が暑く感じやすい状況である。このため、冷風の一部を使用者の上半身に直接当てて体感温度を下げる方が、使用者にとって快適であると考えられる場合がある。例えば、活動量レベルが「活動量大」の場合には、室内の上部空間を下部空間よりも約1℃低くなるように温度差をつけ、さらに室内の上部空間は適度な気流感を感じる風速約0.5m/s前後とすることにより、使用者が快適に感じることを本発明者らは見出した。このため、冷房初期や「活動量大」の場合においては、図11において、例えば動作状況が「強」で、検知された人の活動量レベルが「活動量大」のときの上下風向変更羽根10の動作状態に示すように、上下風向変更羽根10は第1のギアユニット20(下羽根駆動源)及び第2のギアユニット21(上羽根駆動源)により駆動制御される。このように上下風向変更羽根10が駆動制御されることにより、図15又は図16に示すように、室内機1の吹出口2cから吹き出される空気(冷風)を使用者の頭上に向かう方向と使用者に向かう方向の二方向に分配することができる。
一方、暖房時においては、使用者の足元の温度が高いことが使用者にとって快適であると考えられている。このため、暖房時においては、図2の(a)及び図10に示すように、下羽根11と上羽根12との間が所定距離を有して、互いに並列位置に移動しており、且つ、上下風向変更羽根10の角度が下向きになるように第1のギアユニット20(下羽根駆動源)及び第2のギアユニット21(上羽根駆動源)により上下風向変更羽根10を駆動制御することが好ましい。
暖房時において室内機1の内部で温められた空気(温風)は、吹出口2cから上方に浮き上がろうとするが、下羽根11と上羽根12が並列位置に移動し、且つ、上下風向変更羽根の角度を下向きに駆動制御されることにより、吹出口2cから吹き出された殆どの空気の流れ方向を下方に変更することができる。この結果、図17に示すように、室内機1の吹出口2cから吹き出された空気(温風)を床面に向けて供給することができ、使用者の足元の温度を高くすることが可能となる。
なお、暖房時において、活動量が大きい時は足元だけでなく、全体を温風で天井面及び床面を含む室内の壁面全体に循環させ、室内を効率良く温めることが好ましい。このため、図10に示すように、実施の形態1の空気調和機においては、上下風向変更羽根10の動作状態を2枚羽根状態として、室内の上部空間および下部空間に向かう二方向に空気が吹き出されるように上下風向変更羽根10を駆動制御すると共に、そのときの動作状況及び人の活動量レベルに応じて下羽根11と上羽根12との間隔を調整するように、第1のギアユニット20(下羽根駆動源)及び第2のギアユニット21(上羽根駆動源)により上下風向変更羽根10を駆動制御している。したがって、実施の形態1の空気調和機においては、図18又は図19に示すように、室内機1の吹出口2cから吹き出される空気(温風)を使用者の頭上に向かう方向と使用者の足元に向かう方向の二方向に分配することができ、室内を効率良く温めて、省エネルギー性能の高い暖房器具を実現することができる。
上述したように、下羽根11、上羽根12、主アーム14および従アーム15で構成される4節リンク機構を用いて活動量レベル等に応じた風向制御を行うことで、使用者の状況に応じて一層快適な空調環境を作り出すことができる。
なお、前述の図10及び図11に示した上下風向変更羽根10の動作状態は、暖房時及び冷房時における例示であり、本発明における動作状態を特定するものではない。例えば、下羽根11と上羽根12を直列位置(一枚羽根状態)とする動作状態は、冷房時に限定されものではなく、状況に応じて暖房時においても使用可能である。また、下羽根11と上羽根12が所定距離を有して並列配置(二枚羽根状態)される動作状態においても、状況に応じて変更されるものであり、例えば、冷房時において下羽根11と上羽根12との間隔を変更して室内に対する吹き出し量を調整してもよい。したがって、室内機1の吹出口2cから空気を供給すべき目標地点までの距離が長いときには、上下風向変更羽根10を直列位置(1枚羽根状態)に移動させ、吹出口2cから空気を供給すべき目標地点までの距離が短いときに上下風向変更羽根10を並列位置(2枚羽根)に移動させることにより対応することが可能となる。あるいは、吹出口2cに流れてくる空気を空気の流れ方向に対して上方向に向けて吹き出す時には1枚羽根状態を形成し、空気の流れ方向に対して下方向に向けて吹き出す時には2枚羽根状態を形成するようにしても良い。これにより、1枚羽根状態と2枚羽根状態とを空気の吹き出し方向によって使い分け、所望の領域へ気流を届けることができ、使用者の状況に応じて一層快適な空調環境を作り出すことができる。
前述のように、安静時や活動時などの使用者の状況に応じて、使用者が快適と感じる室内の上部空間と下部空間の温度差が異なっている。このため、人感センサユニット18(図3参照)の検知信号に基づいて、上下風向変更羽根10の下羽根11と上羽根12との間隔を調整することが好ましい。例えば、図10に示したように、下羽根11と上羽根12との間隔を調整することにより、室内機1の吹出口2cから吹き出される空気を二方向(例えば、上部空間と下部空間)に向けるように分配し、当該分配される空気の風量を調整することができる。この結果、実施の形態1の空気調和機においては、空調すべき室内における上部空間と下部空間の温度差を所望の値にコントロールすることが可能になる。
以上、本発明に係る実施の形態1の空気調和機においては、上下風向変更羽根10における下羽根11と上羽根12とを一体化した1枚羽根状態のとき、上下風向変更羽根10における空気が流れる方向の長さが最大となるよう構成されている。このため、実施の形態1の空気調和機においては、上下風向変更羽根10の空気の流れる方向の長さをより少ない部品点数で長くすることが可能となる。
また、実施の形態1の空気調和機において、2枚羽根状態の下羽根11と上羽根12は互いに並行状態で回動するよう構成されているため、上下風向変更羽根10の回動による占有空間を小さくすることが可能となり、例えば、下羽根11及び上羽根12がカーテンレールなどの近接配置された他の物品との接触を回避することが可能な構成となる。したがって、実施の形態1の空気調和機においては、室内機1の設置場所が限定されることがなく、且つ高い空気の整流効果を奏することができる構成を有する。
上述のように、実施の形態1の空気調和機においては、下羽根11、上羽根12、主アーム14および従アーム15で構成される4節リンク機構により風向制御を行うことで、使用者の状況に応じて一層快適な空調環境を作り出すことができる。
本発明の空気調和機としては、前述の実施の形態1の構成に限定されるものではなく、実施の形態1の構成で示した本発明の技術的思想は、その他種々の態様で実施可能である。例えば、実施の形態1の空気調和機は、暖房と冷房を兼用する空気調和機であるが、暖房機又は冷房機それぞれの専用機であっても適用可能である。また、実施の形態1においては室内機と室外機が別体のセパレート型であるが、圧縮機、凝縮機及び蒸発機等が一体となった一体型空気調和機に対しても適用可能である。また、本発明においては、室内機として壁掛け式に特定されるものではなく、床置き式等においても、空気の吹出口における上下風向変更羽根を同様の技術的思想により変形して風向調整することが可能である。