本発明の空気調和機は、室内に温風を吹き出す空気調和機であって、空気を加熱する熱交換器と、前記熱交換器によって加熱された空気を温風として室内に吹き出すファンと、前記熱交換器に冷媒を送出する圧縮機と、温風の吹き出し方向を上下に変更する上下風向変更羽根と、空気調和機から吹き出される温風の吹出温度を検出する吹出温度検出デバイスと、室内温度を検出する室内温度検出デバイスと、目標の室内温度である設定温度をユーザーが設定するためのコントローラと、前記ファンの回転数、前記圧縮機の出力、および前記上下風向変更羽根の向きを制御する制御装置と、を有し、前記制御装置が、室内温度と設定温度とが等しくなるように前記ファンの回転数および前記圧縮機の出力を制御する室内温度維持制御を実行しつつ、吹出温度と設定温度との間の温度差が所定温度差を超えた場合には、室内の床面に温風が到達できるように、前記ファンの回転数を追加的に上げる足元暖房制御を実行する。
このような構成によれば、吹出温度と設定温度との間の温度差が所定温度差を超えた場合、すなわち室内に吹き出された温風が浮き上がる場合、ファンの回転数が上げられる。これにより、室内の床面、すなわちユーザーの足元に温風を十分に到達させることができる。
前記制御装置が、温風が床面に到達することができる設定温度、吹出温度、および前記ファンの回転数との対応関係の情報を予め保持し、吹出温度と設定温度との差が前記所定温度差を超えて前記ファンの回転数を追加的に上げるとき、前記ファンの回転数を、設定温度、吹出温度、および前記対応関係の情報に基づいて決定してもよい。これにより、室内の床面、すなわちユーザーの足元に温風を十分に且つ速やかに到達させることができる。
前記コントローラが、前記制御装置が前記足元暖房制御を実行するか否かをユーザーが選択できるように構成されてもよい。これにより、ユーザーの好みに合わせて足元暖房を選択的に実行することができる。
前記室内温度検出デバイスは、空気調和機に吸い込まれる空気の温度を室内温度として検出するように構成されてもよい。
また、前記吹出温度検出デバイスは、前記熱交換器内の冷媒が流れる配管の温度を吹出温度として検出するように構成されてもよい。
以下、本発明の空気調和機に係る実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態の空気調和機においては、具体的な構成ついて説明するが、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が適用された各種空気調和機を含むものである。
本発明の一実施の形態の空気調和機は、室内機と室外機が冷媒配管及び制御配線等により互いに接続されたセパレート型の空気調和機である。室内機と室外機によりヒートポンプが構成されており、室外機には圧縮機が設けられている。本実施の形態の空気調和機における室内機は、室内の壁面に取り付ける壁掛け式室内機である。
図1は、本実施の形態の空気調和機における室内機の概略構成を示す側面断面図である。図1に示すように、室内機1は、空気取り入れ口となる前面開口部2aと上面開口部2bとを持つ本体2、及び本体2の前面開口部2aを開閉する可動式の前面パネル3とを備えている。また、本体2の下方側には、熱交換された空気を吹き出す吹出口2cが配設されている。なお、図1は本実施の形態の空気調和機における空調運転停止時の状態を示している。
図2の(a)及び(b)は、本実施の形態の空気調和機における空調運転時の各状態を示す側面断面図であり、図2の(a)及び(b)においては内部構成を省略している。図2において、(a)は例えば冷房運転時の一状態を示しており、(b)は例えば暖房運転時の一状態を示している。
図1に示すように、本実施の形態の空気調和機の空調運転停止時においては、前面パネル3が、本体2に密着して前面開口部2aを閉じるように構成されている。一方、空気調和機の空調運転時においては、図2の(a)及び(b)に示すように、前面パネル3が、本体2から離れる方向に所定距離だけ移動して前面開口部2aを開放するように構成されている。
図1に示すように、本体2の内部には、熱交換器4と、前面開口部2a及び上面開口部2bからフィルタ6を通して取り入れた室内空気を熱交換器4で熱交換して室内に吹き出すためのファン5とが設けられている。前面開口部2a及び上面開口部2bと熱交換機6との間に設けられたフィルタ6は、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入られた室内空気に含まれる塵埃を除去するために設けられている。
本実施の形態の空気調和機において熱交換した空気を室内に吹き出すための吹出口2cには、当該吹出口2cを開閉するとともに、空気の吹き出し方向を上下方向に変更することができる上下風向変更羽根10が設けられている。さらに、吹出口2cの内部には空気の吹き出し方向を左右に変更することができる左右風向変更羽根9が設けられている。
上下風向変更羽根10は、下羽根11と、この下羽根11の上方に設けられた上羽根12とを備えている。上下風向変更羽根10は、下羽根11と上羽根12とが協働して、吹出口2cから吹き出される空気の吹き出し方向を制御するように構成されている。下羽根11は、下羽根駆動軸13に固定されており、下羽根駆動軸13の回動動作により、下羽根駆動軸13を中心として回動するよう設けられている。上羽根12は、後述するリンクアーム(主アーム14、従アーム15)の機能によって下羽根11と略平行に保持された状態で下羽根11に対して近接・離間動作するように構成されている。
左右風向変更羽根9は、例えば、室内機1の正面から見て左側に位置する一組の羽根と、右側に位置する一組の羽根とで構成されている。各一組の羽根は、複数枚(例えば、5枚)の羽根で構成されている。また、各一組の羽根は、それぞれが別々の駆動源(例えば、駆動モータ)16に連結されており、それぞれの駆動源16により独立して制御される。
空気調和機が空調運転を開始すると、上下風向変更羽根10が開動作を行い吹出口2cが開放される。このように吹出口2cが開放された状態でファン5が駆動されて、室内空気が前面開口部2a及び上面開口部2bを通して室内機1の内部に取り入れられる。取り入れられた室内空気は、フィルタ6を通り、熱交換器4において熱交換されて、ファン5に吸い込まれる。ファン5に吸い込まれた熱交換された空気は、ファン5の下流側に形成された通風路17を通り、吹出口2cより吹き出される。
ファン5の下流側に形成され、吹出口2cにおける上流側に配置される通風路17は、ファン5の下流側に配置されて空気の流れを案内するリアガイダ7と、このリアガイダ7に対向するスタビライザ8と、本体2の両側壁(図示せず)とで形成されている。
吹出口2cからの空気の吹き出し方向は、上下風向変更羽根10及び左右風向変更羽根9により制御される。上下風向変更羽根10及び左右風向変更羽根9の角度調整等の動作は、室内機1を制御する制御装置(図7参照)により制御される。
なお、本実施の形態におけるスタビライザ8は、ファン5の下流近傍に配設され、ファン5の排出部付近に発生する渦を安定化させるスタビライザ機能を有する壁部分と、このスタビライザ機能を有する壁部分の下流側に配設され、ファン5により搬送された空気の圧力回復を担うディフューザ機能を有する壁部分とを含み、通風路17における吹出口2cに至る上側の壁部分を示している。
次に、上下風向変更羽根10の構成について、さらに詳しく説明する。図3は、上下風向変更羽根10の構成を示す概略図である。
上下風向変更羽根10は、前述したように、下羽根11と上羽根12とを有し、下羽根11と上羽根12は、吹出口2cの近傍において連動して回動し、一体化した一枚羽根による気流ガイド動作、若しくは2枚羽根による気流ガイド動作を行うよう構成されている。1枚羽根状態の上下風向変更羽根10において、吹出口2cから吹き出される空気の上流側となる下羽根11は、内部が空洞の樹脂材で構成されており、剛性を有すると共に、断熱構成、軽量構成及び結露の発生を防止する構成を有している。一方、吹出口2cから吹き出される空気の下流側となる上羽根12は、1枚の板材を加工して形成されており、剛性を有すると共に軽量化が図られている。
下羽根11と上羽根12とは、略平行な状態を維持するようにリンク機構により連結されている。本実施の形態においては、下羽根11と上羽根12とは、主アーム14と従アーム15により構成された一対のリンクアームにより、互いの距離が離接するよう連結されている。したがって、下羽根11と上羽根12と主アーム14と従アーム15とにより、4節リンク機構が構成されている。主アーム14と従アーム15は、上下風向変更羽根10における気流の流れ方向において所定距離だけ離れた位置に設けられており、主アーム14と従アーム15により生じる気流の乱れを可能な限り少なくなるよう構成されている。
なお、「略平行な状態」とは、下羽根11と上羽根12とが完全に平行な状態のみならず、巨視的に見て概ね平行な状態も含むことを意味する。下羽根11及び上羽根12としては、直線形状や同一の厚さを有するものだけでなく、湾曲形状や、段差部を有する形状のものを使用することができるからである。
下羽根11は、下羽根駆動軸13に固定されており、下羽根駆動軸13により回動するよう構成されている。下羽根駆動軸13は、吹出口2cの壁側の下端部2d(図3参照)の縁に沿ってその近傍に配設されており、本体2に設けられた下羽根駆動源(図示省略)により回動可能に構成されている。下羽根駆動源については後述する。
主アーム14は、下羽根駆動軸13と同軸上に配置された上羽根駆動軸19により所定角度だけ回動するよう構成されている。上羽根駆動軸19は、本体2に設けられた上羽根駆動源(図示省略)により回動するよう構成されている。上羽根駆動源については後述する。
上記のように構成された上下風向変更羽根10においては、下羽根駆動軸13が下羽根駆動源により回動したとき、下羽根11と上羽根12との位置関係が保持された状態で下羽根が回動するよう構成されている。また、上羽根駆動軸19が上羽根駆動源により回動したとき、主アーム14が回動して、上羽根12が下羽根11に対して離接動作を行う。
図4は下羽根駆動軸13を回動したときの下羽根11と上羽根12との回動動作を示す図である。図5は上羽根駆動軸19のみを回動したときの下羽根11と上羽根12との離接動作を示す図である。
図4に示すように、下羽根駆動軸13を回動したときには、下羽根11と上羽根12は同じ距離を保持した状態で上下風向変更羽根10の全体が回動動作を行う。一方、図5に示すように、上羽根駆動軸19を回動したときには、下羽根11の位置が保持された状態で、上羽根12が下羽根11に対して略平行な状態で移動して、離接動作を行う。
図6は、下羽根11と上羽根12を含む上下風向変更羽根10等の構成を示す分解斜視図である。図6に示すように、下羽根11の両側には羽根駆動源となるギアユニット20,21が設けられている。図6において、下羽根11の右側に配設された第1のギアユニット20は、下羽根駆動軸13を回動する下羽根駆動源である。一方、下羽根11の左側に配設された第2のギアユニット21は、上羽根駆動軸19を回動する上羽根駆動源である。
本実施の形態においては、4節リンク機構を構成する主アーム14及び従アーム15の対は、上下風向変更羽根10における両側と中央の3箇所に設けられている。各主アーム14の一端部分に形成された貫通孔は、上羽根駆動軸19により貫通されて係合しており、上羽根駆動軸19の回動に応じて所定角度だけ駆動可能に構成されている。各主アーム14の他端部分は、上羽根12の対応する所定位置に回動可能に軸支されている。また、各従アーム15の両端部分は、下羽根11と上羽根12における対応する所定位置に回動可能に軸支されている。
4節リンク機構を構成する主アーム14と従アーム15は、一枚羽根状態において、下羽根11に形成された凹部の内部に収納されるよう構成されている。また、一枚羽根状態において、主アーム14と従アーム15は、実質的に1直線上の一列状態に配置されるように、軸支位置が設定されており、下羽根11の凹部内部に直線状に収納される構成である。
図7は、本実施の形態の空気調和機の制御系を示すブロック図である。
本実施の形態の空気調和機の制御装置50は、室内温度を検出する室内温度検出センサ51および温風の吹出温度を検出する吹出温度検出センサ52の検出結果やリモートコントローラ53に対するユーザーの操作に基づいて、ファン5、左右風向変更羽根9(すなわち駆動モータ16)、上下風向変更羽根10(すなわち第1および第2のギアユニット20、21)、および圧縮機54を制御するように構成されている。
室内温度検出センサ51は、室内温度を検出する室内温度検出デバイスの一例であって、具体的には、室内から室内機1内に吸い込まれる空気の温度を検出するように構成されている。例えば、室内温度検出センサ51は、上面開口部2bとフィルタ6との間に配置されている。代わりとして、例えば、室内の壁面に、室内温度を検出するセンサを室内温度検出センサ51として設けてもよい。
吹出温度検出センサ52は、室内機1から室内に吹き出される空気(温風)の吹出温度を検出する吹出温度検出デバイスの一例であって、具体的には、熱交換器4内の冷媒が流れる配管内の温度を検出するように構成されている。代わりとして、例えば、熱交換器4によって加熱された空気(温風)が流れる通風路17に、温風の温度を検出するセンサを吹出温度検出センサ52として設けてもよい。
なお、吹出温度検出センサ52が検出する温風の吹出温度は、圧縮機54の出力(すなわち回転数)を制御することにより制御される。例えば、圧縮機54の回転数が上がると、圧縮機54から熱交換器4に送出される冷媒の圧力が上がり、その結果、熱交換器4によって加熱された空気の温度が上がる。すなわち、温風の吹出温度が上がる。一方、圧縮機54の回転数が下がると、圧縮機54から熱交換器4に送出される冷媒の圧力が下がり、その結果、熱交換器4によって加熱された空気の温度が下がる。すなわち、温風の吹出温度が下がる。なお、吹出温度は、上記のように圧縮機54の出力を制御することにより制御されるとしたが、ファン5の回転数または冷凍サイクルに接続された膨張弁(図示しない)を制御することで制御してもよい。
リモートコントローラ53は、空気調和機をユーザーが遠隔操作するためのコントローラであって、例えば、リモートコントローラ53によってユーザーは、室内機1から吹き出される温風の温度、風向、または風量を変更することができる。ユーザーがリモートコントローラ53に対して温度、風量、または風向を変更するための操作を実行すると、制御装置50は、圧縮機54の回転数、ファン5の回転数、左右風向変更羽根9の向き、または上下風向変更羽根10の向きを制御する。
また、リモートコントローラ53は、ユーザーによって目標の室内温度(設定温度)を設定できるように構成されている。制御装置50は、室内温度検出センサ51によって検出される室内温度がリモートコントローラ53を介してユーザーによって設定された設定温度を維持するように、ファン5の回転数および圧縮機54の回転数を制御する(「室内温度維持制御」を実行する)。
室内温度維持制御は、例えば、図8に示す設定温度、ファン回転数、および吹出温度の対応関係に基づいて実行される。図8は、一例として、室内温度を設定温度の20℃、25℃、30℃に維持するために必要なファン回転数および吹出温度を示している。
図8に示すグラフは、横軸がファン回転数(rpm)を示し、縦軸が吹出温度(℃)を示している。また、線aは室内温度を設定温度の20℃に維持するためのファン回転数および吹出温度、線bは室内温度を設定温度の25℃に維持するためのファン回転数および吹出温度、線cは室内温度を設定温度を30℃に維持するためのファン回転数および吹出温度を示している。
例えば、室内温度を設定温度の20℃に維持するために、制御装置50は、線aに基づいてファン5の回転数と吹出温度(すなわち圧縮機54の出力)とを決定する。例えば、室内温度を設定温度の20℃に維持するために、ファン5の回転数を900rpmと決定し、吹出温度を39℃と決定する。制御装置50は、決定したファン5の回転数でファン5を回転させるとともに、決定した吹出温度になるように圧縮機5の出力(回転数)を制御する。
また、室内温度維持制御に加えて、制御装置50は、「足元暖房」制御を実行するように構成されている。
「足元暖房」制御について、図9を参照しながら説明する。
図9に点線に示すようにユーザーの足元を暖めるための温風を室内の床面に向かって空気調和機の室内機1から吹き出しても、実際には、実線に示すように温風が床面に到達せずに浮き上がることがある。これは、室内の床面近くに冷たく重い空気がたまることにより、室内機1から吹き出された軽い温風が室内の床面に十分に到達できないことによって起こる。すなわち、これは吹き出された温風と室内空気との温度差によって生じる。
このように、室内機1から吹き出された温風が浮き上がると、空気調和機によって室内を暖房しているにもかかわらず、ユーザーは寒さを感じることがある、特に足元が寒いと感じることがある。
この対処として、空気調和機の制御装置50は、室内の床面に温風を十分に到達させることができる「足元暖房」制御を実行するように構成されている。
「足元暖房」制御では、温風が室内の床面に十分に到達できるように、上下風向変更羽根10によって室内機1から吹き出される温風の風向を斜め下方向または下方向に変更するとともに、ファン5の回転数を上げる、または吹出し温度を下げる。
足元暖房制御は、例えば、図10に示す設定温度、ファン回転数、および吹出温度の対応関係に基づいて実行される。図10は、一例として、室内温度が設定温度の20℃、25℃、30℃であるときに、温風を室内の床面に到達させるために必要なファン回転数および吹出温度を示している。
図10に示すグラフは、横軸がファン回転数(rpm)を示し、縦軸が吹出温度(℃)を示している。また、線dは室内温度が設定温度の20℃であるときに温風が室内の床面に十分に到達することができるファン回転数および吹出温度を示している。線eは室内温度が設定温度の25℃であるときに温風が室内の床面に十分に到達することができるファン回転数および吹出温度、線fは室内温度が設定温度の30℃であるときに温風が室内の床面に十分に到達することができるファン回転数に対する吹出温度を示している。
例えば、室内温度が設定温度の約20℃であって温風の吹出温度が約42℃であるときは、すなわち吹出温度と設定温度との間の差が約22℃のときは、温風を室内の床面に十分に到達させるためには、ファン5を約1,100rpmで回転させる必要がある。この回転数より低いと、温風は浮き上がって室内の床面に十分に到達することができない。
制御装置50は、室内温度検出センサ51が検出する室内温度と、吹出温度検出センサ52が検出する吹出温度と、図10に示す、室内温度、吹出温度、およびファン回転数の対応関係(情報)とに基づいて、ファン5の回転数を決定するように構成されている。制御装置50は、この対応関係情報を予め保持している。
例えば、室内温度が設定温度の20℃であって吹出温度が40℃である場合、制御装置50は、図10に示す室内温度、吹出温度、およびファン回転数の対応関係情報に基づいて、ファン5の回転数を800rpmに決定する。制御装置50は、決定したファン5の回転数でファン5を回転させる。
制御装置50は、このような足元暖房制御を、室内温度維持制御を実行しつつ行うように構成されている。
具体的には、制御装置50は、室内温度と設定温度とが等しくなるようにファン5の回転数および圧縮機54の出力(すなわち吹出温度)を制御する室内温度維持制御を実行しつつ、室内の床面に温風が到達できるように上下風向変更羽根10によって温風の風向を斜め下方向または下方向に変更するとともにファン5の回転数を追加的に上げる足元暖房制御を実行するように構成されている。例えば、吹出温度と設定温度との間の温度差が所定温度差を超えた場合に、すなわち吹出温度と設定温度で維持されている室内温度との間の温度差が温風が浮き上がる温度差である場合に、足元暖房制御を実行するように構成されている。
室内温度維持制御を実行しつつ足元暖房制御を実行するためには、室内温度が維持できる且つ温風を室内の床面に十分に到達させることができるファン回転数および吹出温度を決定する必要がある。
図11は、図8と図10を重ねた図である。図11に示すように、設定温度20℃、25℃、30℃それぞれについて、室内温度を一定に維持するための図8の線a〜cと、温風を室内の床面に十分に到達させるための図10の線d〜fは交差する。この線a〜cと線d〜fとの交点が、室内温度を一定に維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させるために必要なファン回転数および吹出温度を示している。例えば、室内温度を設定温度の20℃で維持しつつ温風を室内の床面に十分に到達させるためには、約820rpmのファン回転数と約40℃の吹出温度が必要である。
ここからは、室内温度維持制御を実行しつつ足元暖房制御を実行するための制御の流れ、すなわち制御装置50の動作の流れを説明する。図12A〜図12Dは、室内温度維持制御を実行しつつ足元暖房制御を実行するための制御の一例の流れ示すフロー図である。
図12Aに示すように、まず、制御装置50は、ステップS1において、室内機1に搭載された人感センサ(図示せず)の検出結果に基づいて上下風向変更羽根10を制御することにより、温風の風向が変更される。人感センサは、室内機1に対して予め設定された室内の複数のエリアにおいて人が居るエリアを検知するように構成されている。制御装置50は、検知されたエリアに対して予め設定された下向きの風向になるように上下風向変更羽根10の角度を変更する。次にステップS2において、室内温度センサ51によって検出された室内温度と、リモートコントローラ53を介してユーザーによって設定された設定温度(目標の室内温度)が等しい(または、その温度差が予め決められた所定の範囲内であるか)か否かを判定する。等しい(または、その温度差が予め決められた所定の範囲内である)場合、制御装置50は、ステップS3において制御Aを実行する(制御Aの内容については後述する)。なお、室内機1が人感センサを搭載していない場合、このような空気調和機は一般的に部屋の広さ(能力別に)に応じて商品展開され、商品ごとに、対応する部屋の広さに応じて出荷段階で予め部屋の中央付近にいる人の足元をねらった下向きの風向に対応する上下風向変更羽根10の角度が記憶されているため、足元暖房制御が実行されると、ステップS1において、その記憶された風向になるように上下風向変更羽根10の角度が自動的に変更される。
ステップS2で室内温度と設定温度が異なる(または、その温度差が予め決められた所定の範囲外である)と判定された場合、制御装置50は、ステップS4において、室内温度が設定温度に比べて低いか否かを判定する。室内温度が設定温度に比べて低い場合、ステップS5において、制御装置50は制御Bを実行する(制御Bの内容については後述する)。
一方、室内温度が設定温度に比べて高い場合、ステップS6において、制御装置50は制御Cを実行する(制御Cの内容については後述する)。
室内温度と設定温度が等しい(または、その温度差が予め決められた所定の範囲内である)ときに実行する制御Aの流れを、図12Bを参照しながら説明する。
まず、ステップS10において、制御装置50は、吹出温度が予め決められた過剰温度cに比べて高いか否かを判定する。過剰温度cは設定温度に対応して予め決定されており、例えば設定温度が25℃の場合、過剰温度cは50℃である。すなわち、このステップS10では、設定温度に対して吹出温度が過剰に高いか否かが判定される。
吹出温度が過剰温度cに比べて高い場合、空気調和機の室内機1から吹き出された温風が浮き上がり、また、室内温度が設定温度を大きく超える可能性がある。したがって、制御装置50は、室内機1から吹き出される温風の風向をステップS1で変更された下方向の風向のままで、ファン5の回転数を上げ(ステップS11)、圧縮機64の回転数を下げる、すなわち吹出温度を低下させる(ステップS12)。なお、温風の風向は、下方向に限らず、斜め下方向であってもよい。これにより、室内温度を設定温度で維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させることができる。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS10で吹出温度が過剰温度cに比べて低いと判定された場合、ステップS13において、制御装置50は、吹出温度と設定温度との間の温度差が第1の温度差(特許請求の範囲の「所定温度差」に対応)bに比べて高いか否かを判定する。第1の温度差bは設定温度に対応して予め決められており、例えば設定温度が25℃の場合、第1の温度差bは20℃である。すなわち、このステップS13では、吹出温度と設定温度との間の温度差が、空気調和機の室内機1から吹き出された温風が浮き上がるような温度差であるか否かが判定される。
ステップS13で吹出温度と設定温度との間の温度差が空気調和機の室内機1から吹き出された温風が浮き上がる温度差であると判定された場合(第1の温度差bに比べて高い場合)、制御装置50は、室内機1から吹き出される温風の風向をステップS1で変更された下方向の風向のままで、ファン5の回転数を上げる(ステップS14)。温風の風向は、斜め下方向であってもよい。なお、吹出温度が室内温度を設定温度で維持できる適温であるため、圧縮機54の回転数は変更されない。これにより、室内温度を設定温度で維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させることができる。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS13で吹出温度と設定温度との間の温度差が温風が浮き上がらない温度差と判定された場合(第1の温度差bに比べて低い場合)、ステップS15において、制御装置50は、吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて高いか否かを判定する。第2の温度差aは、第1の温度差bに比べて低く、また設定温度に対応して予め決められており、例えば設定温度が25℃の場合、第2の温度差aは12℃である。
ステップS15で吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて高いと判定された場合、制御装置50は、温風の風向(上下風向変更羽根10の向き)、ファン5の回転数、および圧縮機54の回転数を維持する。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS15で吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて低いと判定された場合、吹出温度と室内温度との間の温度差が過剰に小さく、室内温度が設定温度に比べて過剰に低くなる可能性がある。この場合、制御装置50は、吹出温度を高めるために、すなわち熱交換器4を加熱するために、ファン5の回転数を下げ(ステップS16)、圧縮機54の回転数を上げる(ステップS17)。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
次に、室内温度が設定温度に比べて低いときに実行する制御Bの流れを、図12Cを参照しながら説明する。
まず、ステップS20において、制御装置50は、図12Bに示すステップS10と同様に、吹出温度が過剰温度cに比べて高いか否かを判定する。
吹出温度が過剰温度cに比べて高い場合、制御装置50は、室内機1から吹き出される温風の風向をステップS1で変更された下方向の風向のままで、ファン5の回転数を上げ(ステップS21)、圧縮機54の回転数を下げる、すなわち吹出温度を低下させる(ステップS22)。なお、温風の風向は、下方向に限らず、斜め下方向であってもよい。これにより、室内温度を設定温度で維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させることができる。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS20で吹出温度が過剰温度cに比べて低いと判定された場合、ステップS23において、制御装置50は、吹出温度と設定温度との間の温度差が第1の温度差bに比べて高いか否かを判定する。すなわち、吹出温度と設定温度との間の温度差が、空気調和機の室内機1から吹き出された温風が浮き上がるような温度差であるか否かが判定される。
ステップS23で吹出温度と設定温度との間の温度差が空気調和機の室内機1から吹き出された温風が浮き上がる温度差であると判定された場合(第1の温度差bに比べて高い場合)、制御装置50は、室内機1から吹き出される温風の風向をステップS1で変更された下方向の風向のままで、ファン5の回転数を上げる(ステップS24)。温風の風向は、斜め下方向であってもよい。また、図12Aに示すステップS4で判定されたように室内温度が設定温度に比べて低いために、ステップS25において、制御装置50は、圧縮機54の回転数を上げて吹出温度を上げる。これにより、室内温度を設定温度で維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させることができる。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS23で吹出温度と設定温度との間の温度差が温風が浮き上がらない温度差と判定された場合(第1の温度差bに比べて低い場合)、ステップS26において、制御装置50は、吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて高いか否かを判定する。
吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて高いと判定された場合、制御装置50は、温風の風向(上下風向変更羽根10の向き)、ファン5の回転数を維持する。また、図12Aに示すステップS3で判定されたように室内温度が設定温度に比べて低いために、制御装置50は圧縮機54の回転数を上げる(ステップS27)。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS26で吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて低いと判定された場合、室内温度が設定温度に比べて過剰に低くなる可能性があるため、制御装置50は、ファン5の回転数を下げ(ステップS28)、圧縮機54の回転数を上げる(ステップS29)。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
続いて、室内温度が設定温度に比べて高いときに実行する制御Cの流れを、図12Dを参照しながら説明する。
まず、ステップS40において、制御装置50は、図12Bに示すステップS10と同様に、吹出温度が過剰温度cに比べて高いか否かを判定する。
吹出温度が過剰温度cに比べて高い場合、制御装置50は、室内機1から吹き出される温風の風向をステップS1で変更された下向きの風向のままで、ファン5の回転数を上げ(ステップS41)、圧縮機54の回転数を下げる、すなわち吹出温度を低下させる(ステップS42)。なお、温風の風向は、下方向に限らず、斜め下方向であってもよい。これにより、室内温度を設定温度で維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させることができる。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS40で吹出温度が過剰温度cに比べて低いと判定された場合、ステップS43において、制御装置50は、吹出温度と設定温度との間の温度差が第1の温度差bに比べて高いか否かを判定する。すなわち、吹出温度と設定温度との間の温度差が、空気調和機の室内機1から吹き出された温風が浮き上がるような温度差であるか否かが判定される。
ステップS43で吹出温度と設定温度との間の温度差が空気調和機の室内機1から吹き出された温風が浮き上がる温度差であると判定された場合(第1の温度差bに比べて高い場合)、制御装置50は、室内機1から吹き出される温風の風向をステップS1で変更された下向きの風向のままで、ファン5の回転数を上げる(ステップS44)。温風の風向は、斜め下方向であってもよい。また、図12Aに示すステップS4で判定されたように室内温度が設定温度に比べて高いために、ステップS45において、制御装置50は、圧縮機54の回転数を下げて吹出温度を下げる。これにより、室内温度を設定温度で維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させることができる。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS43で吹出温度と設定温度との間の温度差が温風が浮き上がらない温度差と判定された場合(第1の温度差bに比べて低い場合)、ステップS46において、制御装置50は、吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて高いか否かを判定する。
吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて高いと判定された場合、制御装置50は、温風の風向(上下風向変更羽根10の向き)、ファン5の回転数を維持する。また、図12Aに示すステップS3で判定されたように室内温度が設定温度に比べて高いために、制御装置50は圧縮機54の回転数を下げる(ステップS47)。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
一方、ステップS46で吹出温度と設定温度との間の温度差が第2の温度差aに比べて低いと判定された場合、室内温度が設定温度に比べて過剰に低くなる可能性があるため、制御装置50は、ファン5の回転数を下げ(ステップS48)、圧縮機54の回転数を上げる(ステップS49)。そして、図12Aに示すステップS1に戻る。
このような図12A〜図12Dに示す一例の制御によれば、室内温度を設定温度に維持しつつ、温風を室内の床面に十分に到達させることができる。
本実施の形態によれば、ユーザーの足元に温風を十分に到達させることができる。その結果、空気調和機によって室内を暖房しているにもかかわらず、ユーザーが寒さを感じることを抑制することができる。
上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ユーザーの足元(室内の床面)に温風を十分に到達させる足元暖房制御、すなわち上下風向変更羽根10によって温風の風向を下方向または斜め下方向に変更し、ファン5の回転数を上げる制御を実行するか否かをユーザーが選択できるようにしてもよい。例えば、リモートコントローラ53が、ユーザーが足元暖房制御を実行するか否かを選択するためのボタンを備える。これにより、ユーザーの好みに合わせて足元暖房を選択的に実行することができる。
また、上述の実施の形態の上下風向変更羽根10は、例えば図3に示すように、下羽根11と上羽根12とを備える二枚羽根構造であるが、本発明はこれに限らない。温風の吹き出し方向を上下に変更できるのであれば、上下風向変更羽根は、一枚羽根構造であってもよい。