本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、第1反応系列(第1反応器と第1冷却塔を含む)と第2反応系列(第2反応器と第2冷却塔を含む)の異なる反応系列で生成および回収した(メタ)アクリル酸含有液を、同一の晶析器に導入して精製(メタ)アクリル酸を得て、晶析により発生した低純度の(メタ)アクリル酸残留液を第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送するものである。すなわち本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、(メタ)アクリル酸製造原料を第1反応器に導入して(メタ)アクリル酸含有ガスを得る工程と、第1反応器から得られた(メタ)アクリル酸含有ガスを第1冷却塔に導入して(メタ)アクリル酸含有液を得る工程と、第1冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を晶析器に導入する工程と、(メタ)アクリル酸製造原料を第2反応器に導入して(メタ)アクリル酸含有ガスを得る工程と、第2反応器から得られた(メタ)アクリル酸含有ガスを第2冷却塔に導入して(メタ)アクリル酸含有液を得る工程と、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を、第1冷却塔を介してまたは介さずに前記晶析器に導入する工程と、晶析器に導入された(メタ)アクリル酸含有液から(メタ)アクリル酸を結晶化することにより、精製(メタ)アクリル酸と、精製(メタ)アクリル酸より低純度の(メタ)アクリル酸残留液を得る工程と、晶析器から得られた(メタ)アクリル酸残留液を、第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送する工程とを有するものである。以下、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法の各工程について詳しく説明する。
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法では、まず、(メタ)アクリル酸製造原料を第1反応器または第2反応器に導入して、(メタ)アクリル酸含有ガスを得る。以下、第1反応器で(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸含有ガスを得る工程を第1反応工程と称し、第2反応器で(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸含有ガスを得る工程を第2反応工程と称する。
第1反応工程と第2反応工程では、(メタ)アクリル酸製造原料を第1反応器または第2反応器に導入して(メタ)アクリル酸を生成させ、(メタ)アクリル酸含有ガスを得る。(メタ)アクリル酸製造原料としては、反応により(メタ)アクリル酸が生成するものであれば特に限定されず、例えば、プロパン、プロピレン、(メタ)アクロレイン、イソブチレン等が挙げられる。アクリル酸は、例えば、プロパン、プロピレンまたはアクロレインを1段で酸化させたり、プロパンやプロピレンをアクロレインを経由して2段で酸化させることにより得ることができる。アクロレインは、プロパンやプロピレンを原料として、これを酸化させることにより得られるものに限定されず、例えば、グリセリンを原料として、これを脱水させることにより得られるものであってもよい。メタクリル酸は、例えば、イソブチレンやメタクロレインを1段で酸化させたり、イソブチレンをメタクロレインを経由して2段で酸化させることにより得ることができる。第1反応器と第2反応器での(メタ)アクリル酸生成反応は、同一であっても異なっていてもよい。
第1反応工程と第2反応工程では、(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸をガス状で得ることが好ましい。従って、(メタ)アクリル酸含有ガスは、(メタ)アクリル酸製造原料を気相酸化させることにより得ることが好ましい。この際、(メタ)アクリル酸製造原料を触媒と接触させて気相酸化させること(接触気相酸化)が好ましく、接触気相酸化に用いられる触媒としては従来公知の触媒を用いればよい。
例えば、プロピレンをアクリル酸製造原料として用いる場合、触媒としては、モリブデンとビスマスを含む複合酸化物触媒(モリブデン−ビスマス触媒)を用いることが好ましい。プロパンやアクロレインをアクリル酸製造原料として用いる場合、触媒としては、モリブデンとバナジウムを含む複合酸化物触媒(モリブデン−バナジウム触媒)を用いることが好ましい。
第1反応器や第2反応器としては、固定床反応器、流動床反応器、移動床反応器等を使用することができる。なかでも、反応効率に優れる点で多管式固定床反応器を用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸製造原料を2段で酸化反応させて(メタ)アクリル酸を生成する場合は、1段目の酸化反応を行う反応器と2段目の酸化反応を行う反応器を組み合わせたり、反応器を1段目の酸化反応を行う領域と2段目の酸化反応を行う領域とに分けることにより、(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸を生成してもよい。後者の場合、例えば固定床反応器では、固定床反応器の反応管の入口側((メタ)アクリル酸製造原料の導入側)に1段目の酸化反応を行うための触媒を充填し、出口側に2段目の酸化反応を行う触媒を充填すればよい。
第1反応工程と第2反応工程において、(メタ)アクリル酸製造原料から(メタ)アクリル酸含有ガスを生成する反応は、公知の反応条件で行えばよい。例えば、プロピレンを2段で酸化反応させてアクリル酸を生成する場合、プロピレン含有ガスを分子状酸素とともに反応器に導入して、例えば、反応温度250℃〜450℃、反応圧力0MPaG〜0.5MPaG、空間速度300h-1〜5000h-1の条件で1段目の酸化反応を行い、次いで、反応温度250℃〜380℃、反応圧力0MPaG〜0.5MPaG、空間速度300h-1〜5000h-1の条件で2段目の酸化反応を行えばよい。
第1反応工程と第2反応工程で得られた(メタ)アクリル酸含有ガスはそれぞれ第1冷却塔と第2冷却塔に導入して冷却することにより、(メタ)アクリル酸含有ガスから(メタ)アクリル酸含有液が得られる。すなわち、第1反応器から得られた(メタ)アクリル酸含有ガスを第1冷却塔に導入することにより(メタ)アクリル酸含有液が得られ、第2反応器から得られた(メタ)アクリル酸含有ガスを第2冷却塔に導入することにより(メタ)アクリル酸含有液が得られる。以下、第1冷却塔で(メタ)アクリル酸含有ガスから(メタ)アクリル酸含有液を得る工程を第1冷却工程と称し、第2冷却塔で(メタ)アクリル酸含有ガスから(メタ)アクリル酸含有液を得る工程を第2冷却工程と称する。また、第1冷却塔と第2冷却塔をまとめて、単に「冷却塔」と称する場合がある。
冷却塔としては、塔内部で(メタ)アクリル酸含有ガスを冷却して(メタ)アクリル酸含有液が得られるものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸含有ガスから(メタ)アクリル酸を凝縮させて(メタ)アクリル酸含有液を得る凝縮塔や、(メタ)アクリル酸含有ガスを捕集溶剤と接触させて冷却することにより、捕集溶剤に(メタ)アクリル酸を吸収させて(メタ)アクリル酸含有液を得る捕集塔等が挙げられる。
凝縮塔としては、例えば、伝熱面を備えた熱交換器を用いることができる。伝熱面を介して(メタ)アクリル酸含有ガスを冷却することにより、(メタ)アクリル酸含有ガスから(メタ)アクリル酸を凝縮させることができ、その結果、(メタ)アクリル酸含有液が得られる。熱交換器としては従来公知の熱交換器を用いればよく、例えば、プレート式熱交換器、多管式(シェル・アンド・チューブ式)熱交換器、二重管式熱交換器、コイル式熱交換器、スパイラル式熱交換器等を採用することができる。熱交換器は、複数を直列に繋げることにより、多段で(メタ)アクリル酸含有ガスを冷却して、分別凝縮することにより(メタ)アクリル酸含有液を回収してもよい。
凝縮塔としては、(メタ)アクリル酸含有ガスを凝縮液と接触させて、(メタ)アクリル酸含有ガスから(メタ)アクリル酸含有液を得るものでもよい。この場合、凝縮塔内に棚板(シーブトレイ)を設けたり、凝縮塔内に充填物を充填して、(メタ)アクリル酸含有ガスと凝縮液との接触効率を高めるようにすることが好ましい。(メタ)アクリル酸含有ガスは、例えば、凝縮塔の下部から凝縮塔内に導入されて、凝縮塔内を下部から上部に移動する間に分別凝縮する。このとき、例えば(メタ)アクリル酸含有液は凝縮塔の中段から抜き出され、(メタ)アクリル酸より高沸点の物質は凝縮塔の下段から抜き出され、(メタ)アクリル酸より低沸点の物質は凝縮塔の上段から抜き出される。凝縮塔からは、各段において凝縮液の一部を抜き出して熱交換器等で冷却した後、凝縮塔の同じ段に戻してもよい。なお、凝縮塔に返送される凝縮液には、一般に、冷却工程以外からの液媒体は加えられない。
冷却塔として用いられる捕集塔としては、捕集塔内で(メタ)アクリル酸含有ガスと捕集溶剤とを接触させることができるものであれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸含有ガスを捕集塔の下部から捕集塔内に導入するとともに、捕集溶剤を捕集塔の上部から捕集塔内に導入することにより、(メタ)アクリル酸含有ガスが捕集塔内を上昇する間に捕集溶剤と接触して冷却され、(メタ)アクリル酸が捕集溶剤に吸収され、(メタ)アクリル酸含有液として回収される。捕集塔としては、例えば、塔内に棚板(シーブトレイ)が設けられた棚段塔、塔内に充填物が充填された充填塔、塔内壁表面に捕集溶剤が供給される濡れ壁塔、塔内空間に捕集溶剤がスプレーされるスプレー塔等を採用することができる。
捕集溶剤としては、(メタ)アクリル酸を吸収し、溶解できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ジフェニルエーテル、ジフェニル、ジフェニルエーテルとジフェニルとの混合物、水、(メタ)アクリル酸含有水(例えば、(メタ)アクリル酸製造プロセス内で生成し、(メタ)アクリル酸を含む水性溶剤)等を使用することができる。なかでも、捕集溶剤としては、水または(メタ)アクリル酸含有水を用いることが好ましく、水を50質量%以上(より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上)含有する(メタ)アクリル酸含有水または水を用いることがより好ましい。
捕集溶剤の温度や供給量は、捕集溶剤によって(メタ)アクリル酸含有ガスが冷却され、(メタ)アクリル酸が捕集溶剤に十分吸収されるように、適宜設定されればよい。捕集溶剤の温度は、(メタ)アクリル酸の捕集率を高める点から、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、また35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。捕集溶剤の供給量は、(メタ)アクリル酸含有ガスの捕集塔への供給量(G)に対する捕集溶剤の捕集塔への供給量(L)の比で示される液ガス比(L/G)が、2L/m3以上であることが好ましく、3L/m3以上がより好ましく、5L/m3以上がさらに好ましく、また15L/m3以下が好ましく、12L/m3以下がより好ましく、10L/m3以下がさらに好ましい。
捕集溶剤に吸収された(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸含有液として捕集塔から抜き出される。(メタ)アクリル酸含有液は、例えば、捕集塔の(メタ)アクリル酸含有ガスの供給位置より下方の位置(例えば、捕集塔の底部)から抜き出せばよい。
捕集塔は、捕集塔から排出された(メタ)アクリル酸含有液の一部を、(メタ)アクリル酸含有ガスの供給位置および(メタ)アクリル酸含有液の排出位置より上方かつ捕集溶剤の供給位置より下方の位置から捕集塔に返送する循環ラインを有していることが好ましい。循環ラインを通して、捕集塔から排出された(メタ)アクリル酸含有液の一部を捕集塔に戻して循環させることにより、(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度を高めることができる。循環ラインには、循環ラインを通る(メタ)アクリル酸を冷却するための熱交換器が設けられることが好ましい。
冷却塔では、(メタ)アクリル酸の重合を抑制するために重合防止剤を添加してもよい。重合防止剤としては、従来公知の重合防止剤を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、メトキノン(p−メトキシフェノール)等のキノン類;フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、ビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン等のフェノチアジン類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4,4’,4”−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル)フォスファイト等のN−オキシル化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、アクリル酸銅、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅等の銅塩化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、ギ酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン等のマンガン塩化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンやその塩、p−ニトロソフェノール、N−ニトロソジフェニルアミンやその塩等のニトロソ化合物等が挙げられる。これらの重合防止剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1冷却塔と第2冷却塔から得られ次工程に供される(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度は特に限定されないが、少なくとも第1冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液は、(メタ)アクリル酸濃度が80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度が80質量%以上であれば、(メタ)アクリル酸含有液をさらに精製せずに晶析器に導入しても、効率的に(メタ)アクリル酸を晶析することができる。第2冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液も(メタ)アクリル酸濃度が80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましいが、第2冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液は(メタ)アクリル酸濃度が80質量%未満であってもよい。
第1冷却塔と第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液は同一の晶析器に導入される。晶析器に導入された(メタ)アクリル酸含有液は、結晶化することにより精製(メタ)アクリル酸が得られる。本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法では、このように異なる冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を同一の晶析器に導入することにより、晶析器に供給される(メタ)アクリル酸含有液が常に晶析器の処理能力に見合った規定量が確保されやすくなり、高品質の精製(メタ)アクリル酸を効率良く製造することができる。これについて、下記に詳述する。なお以下、(メタ)アクリル酸含有溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化することにより精製(メタ)アクリル酸を得る工程を晶析工程と称する。
晶析工程では(メタ)アクリル酸含有液から(メタ)アクリル酸を結晶化するが、晶析工程では、得られる精製(メタ)アクリル酸の品質(具体的には(メタ)アクリル酸濃度や不純物濃度)を確保しつつ、晶析にかかる投入エネルギー量(エネルギー原単位)を低減することが望ましい。晶析器は仕様上所定の処理量が規定され、その規定量の範囲内で所望の品質の精製(メタ)アクリル酸が効率的に得られるように設計されているのが一般的である。従って、精製(メタ)アクリル酸の品質を確保しつつ晶析にかかるエネルギー原単位を減らすためには、(メタ)アクリル酸含有液を晶析器の仕様に基づき規定量供給することが好ましく、特にその規定量の範囲内でエネルギー原単位を最小化することが好ましい。一方で、1つの処理系列に粗製系(本発明では反応器と冷却器)と精製系(本発明では晶析器)が設けられる場合は、精製系でアクリル酸の重合等が起こって装置が停止したりしても、粗製系を稼働し続けて、精製系の再稼働後に溜まった液を処理できるように、精製系の処理能力を粗製系の処理能力よりも高くすることが一般的である。従って、例えば、第1反応工程と第1冷却工程によって得られた(メタ)アクリル酸含有液のみを晶析器に供給する場合は、晶析器に供給する(メタ)アクリル酸含有液の量が晶析器の仕様上の規定量に対して不十分な量となったり、晶析にかかるエネルギー原単位が最適化されない場合が出てくる。
そこで本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法では、第1冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液に加え、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を晶析器に導入する。このように(メタ)アクリル酸含有液を晶析器に導入することにより、晶析器に(メタ)アクリル酸含有液を常に所望量供給することが容易になり、晶析にかかるエネルギー原単位を抑えて、高純度の精製(メタ)アクリル酸を効率良く製造することができるようになる。
第1冷却塔と第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液は、全量を晶析器に導入してもよく、一部のみを晶析器に導入してもよい。後者の場合は、第1冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液と第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液のうちの一方の一部と他方の全量を晶析器に導入してもよく、両方の一部を晶析に導入してもよい。第1冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液と第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液のうち、晶析器に導入しなかった(メタ)アクリル酸含有液は、一時的に貯留して別のタイミング(晶析器の処理能力に余剰が出た場合等)で晶析器に導入してもよいし、他の精製手段(例えば、他の晶析器による晶析や蒸留等)により精製してもよい。後者の場合、他の精製手段は常時稼働させる必要はなく、その結果、精製系全体として計画的に洗浄やメンテナンス等の設備維持を行うことが可能となる。
第1冷却塔と第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液は、精製することなく晶析器に導入してもよく、精製した後晶析器に導入してもよい。なお、(メタ)アクリル酸含有液を精製した後に晶析器に導入する場合は、晶析以外の精製手段(例えば、蒸留や放散、抽出等)で精製するものとする。(メタ)アクリル酸製造プロセスを簡略化して効率的に(メタ)アクリル酸を製造するためには、第1冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を精製せずに晶析器に導入することが好ましい。同様の理由から、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液も精製せずに晶析器に導入することが好ましい。第1冷却塔と第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を精製することなく晶析器に導入する場合は、第1冷却塔と第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を直接導入してもよいが、例えば、晶析器の前段に設けられた貯留槽を介して、晶析器に導入することが好ましい。その結果、晶析器に導入される(メタ)アクリル酸含有液の性状が均質化され、安定して(メタ)アクリル酸含有液から(メタ)アクリル酸を結晶化しやすくなる。
(メタ)アクリル酸含有液を精製せずに晶析器に導入する場合は、晶析器で高純度の精製(メタ)アクリル酸を効率的に得る点から、(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸含有率が高いことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸濃度が80質量%以上であることが好ましい。すなわち、晶析器に導入する(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度は80質量%以上が好ましい(より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である)。一方、(メタ)アクリル酸含有液を精製した後に晶析器に導入する場合は、(メタ)アクリル酸濃度が例えば80質量%未満の(メタ)アクリル酸含有液を精製することが好ましい。
また製造設備によっては、第1反応工程と第1冷却工程によって得られる(メタ)アクリル酸含有液と、第2反応工程と第2冷却工程によって得られる(メタ)アクリル酸含有液とで、(メタ)アクリル酸濃度や不純物濃度が大きく異なる場合がある。このような場合、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度が第1冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度よりも低ければ、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を第1冷却塔を介して晶析器に導入することも好ましく、その結果、既存の設備(すなわち第1冷却塔)を利用して第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を簡便に精製することが可能となる。
第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を第1冷却塔を介して晶析器に導入する場合、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液は第1冷却塔の任意の位置に導入すればよい。例えば、第1冷却塔として凝縮塔(すなわち第1凝縮塔)を採用する場合は、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を第1凝縮塔内の凝縮液に加えればよい。第1冷却塔として捕集塔(すなわち第1捕集塔)を採用する場合は、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を、捕集溶剤や、第1冷却塔の循環ラインを流れる(メタ)アクリル酸含有液に加えればよい。第1冷却塔として捕集塔を採用する場合は、好ましくは、第1捕集塔の循環ラインに第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を供給する。このように第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を第1捕集塔の循環ラインに供給することにより、第1捕集塔の塔頂に供給する場合と比較して、第1捕集塔での(メタ)アクリル酸のロスが低減する。
第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を第1冷却塔を介して晶析器に導入する場合、例えば、第1冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液は(メタ)アクリル酸濃度が80質量%以上であり、第2冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液は(メタ)アクリル酸濃度が80質量%未満であることが好ましい。また、第2冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度が第1冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度よりも1質量%以上低いことが好ましく、5質量%以上低いことがより好ましく、15質量%以上低いことがさらに好ましい。第1冷却塔と第2冷却塔で得られた(メタ)アクリル酸含有液がこのような(メタ)アクリル酸濃度であれば、第2冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を効率的に精製できる。
第1冷却塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液と、第2冷却塔から第1冷却塔を介してまたは介さずに得られた(メタ)アクリル酸含有液は、晶析工程に供される。晶析工程では、晶析器に導入された(メタ)アクリル酸含有液から、精製(メタ)アクリル酸と、精製(メタ)アクリル酸より低純度の(メタ)アクリル酸残留液が得られる。具体的には、(メタ)アクリル酸含有液を冷却することにより(メタ)アクリル酸を結晶化し、結晶化した(メタ)アクリル酸を回収することにより精製(メタ)アクリル酸が得られ、一方、(メタ)アクリル酸含有液を冷却した際の未結晶残渣が(メタ)アクリル酸残留液として晶析器から排出される。この(メタ)アクリル酸残留液は、精製(メタ)アクリル酸よりも不純物が多く含まれ、低純度のものとなる。
晶析工程において結晶化した(メタ)アクリル酸は、融解することにより(メタ)アクリル酸融解液を得て、これを精製(メタ)アクリル酸として回収することが好ましい。また、得られる(メタ)アクリル酸融解液の純度を上げることを目的に、結晶化した(メタ)アクリル酸をまず部分的に融解し、結晶間や結晶表面に存在する不純物を洗い流し、その後残りの結晶化した(メタ)アクリル酸を融解して、精製(メタ)アクリル酸を回収することが好ましい。結晶化した(メタ)アクリル酸を部分的に融解して得られた不純物は、(メタ)アクリル酸残留液として晶析器から排出することが好ましい。
晶析器としては、(メタ)アクリル酸含有液を結晶化できるものであれば特に限定されない。晶析器としては、例えば、伝熱面を有し、伝熱面での熱交換によって(メタ)アクリル酸含有溶液を結晶化および融解する晶析器が挙げられる。この場合、伝熱面の一方側に冷熱媒を供給し他方側に(メタ)アクリル酸含有液を供給することにより、伝熱面を介した熱交換によって(メタ)アクリル酸含有溶液が冷却されて、(メタ)アクリル酸が結晶化する。結晶化した(メタ)アクリル酸は、伝熱面の一方側に温熱媒を供給し、伝熱面を介した熱交換によって加温されて、(メタ)アクリル酸融解液が得られる。伝熱面を有する晶析器としては、一般に熱交換器として用いられる装置を採用することができる。例えば、プレート式熱交換器、多管式(シェル・アンド・チューブ式)熱交換器、二重管式熱交換器、コイル式熱交換器、スパイラル式熱交換器等を採用することができる。
(メタ)アクリル酸含有液を結晶化する際の伝熱面の温度(冷熱媒を使用する場合は、冷熱媒の温度)は、(メタ)アクリル酸含有液の凝固点未満であれば特に限定されない。結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する際の伝熱面の温度(温熱媒を使用する場合は、温熱媒の温度)は、結晶化した(メタ)アクリル酸の融点超であれば特に限定されないが、高温では(メタ)アクリル酸が重合するため、40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましい。
晶析工程において、結晶化や融解の際の温度や処理時間は、得られる精製(メタ)アクリル酸の純度と生産効率(単位時間あたりの生産量)を勘案し、適宜設定すればよい。例えば、より高純度の精製(メタ)アクリル酸を得るために生産効率を多少落としてもよく、逆に、生産効率を優先して精製(メタ)アクリル酸を得てもよい。晶析条件は、精製(メタ)アクリル酸の品質や生産コスト等を総合的に勘案して、任意に設定される。
晶析工程では、結晶化と融解を交互に複数回繰り返し、より純度の高い精製(メタ)アクリル酸を得てもよい。すなわち、(メタ)アクリル酸含有液を結晶化および融解して(メタ)アクリル酸融解液を得た後、得られた(メタ)アクリル酸を結晶化および融解することを1回以上行い、精製(メタ)アクリル酸を得てもよい。結晶化と融解の回数は、得られる精製(メタ)アクリル酸の純度と生産効率(単位時間あたりの生産量)を勘案し、適宜設定すればよい。また、得られた精製(メタ)アクリル酸を、さらに任意の精製手段により精製してもよい。
晶析工程で得られた(メタ)アクリル酸残留液、すなわち晶析器から得られた(メタ)アクリル酸残留液は、第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送される。(メタ)アクリル酸残留液は(メタ)アクリル酸の純度が低いため、晶析工程よりも前の工程に戻すことが好ましい。従って、晶析器に導入する(メタ)アクリル酸含有液の品質の変動をできるだけ抑えるためには、(メタ)アクリル酸残留液を第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送することが好ましい。その結果、(メタ)アクリル酸残留液が有効活用されるようになるとともに、(メタ)アクリル酸残留液を(メタ)アクリル酸製造プロセス内で返送しても、晶析工程で得られる精製(メタ)アクリル酸の品質を確保しやすくなる。
晶析工程において結晶化と融解を複数回繰り返す場合は、少なくとも1回目の結晶化で得られる(メタ)アクリル酸残留液を第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送することが好ましい。1回目の結晶化で得られる(メタ)アクリル酸残留液は、特に(メタ)アクリル酸の純度が低く、晶析器に供給する(メタ)アクリル酸含有液よりも(メタ)アクリル酸濃度が低くなるためである。2回目以降(例えばk回目であり、kは2以上の整数である)の結晶化で得られる(メタ)アクリル酸残留液は、それより前の回(すなわちk−1回目かそれより前)の結晶化に供してもよい。
(メタ)アクリル酸残留液は、冷却塔の任意の位置に導入すればよい。例えば、冷却塔として凝縮塔を採用する場合は、(メタ)アクリル酸残留液を凝縮塔内の凝縮液に加えればよい。冷却塔として捕集塔を採用する場合は、(メタ)アクリル酸残留液を、捕集溶剤や、捕集塔の循環ラインを流れる(メタ)アクリル酸含有液に加えればよい。
(メタ)アクリル酸残留液は、好ましくは、第1捕集塔および/または第2捕集塔に返送する。冷却塔として捕集塔を用いれば、(メタ)アクリル酸残留液を捕集塔に返送しても、品質の安定した(メタ)アクリル酸含有液を容易に得ることができる。より好ましくは、(メタ)アクリル酸残留液は、捕集塔の循環ラインに供給することにより、捕集塔に返送する。(メタ)アクリル酸残留液を捕集塔の循環ラインに供給することにより、捕集塔の塔頂に供給する場合と比較して、捕集塔での(メタ)アクリル酸のロスが低減する。
(メタ)アクリル酸残留液は、精製することなく第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送してもよく、精製した後に第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送してもよい。例えば、(メタ)アクリル酸残留液の(メタ)アクリル酸濃度が低すぎる場合は、精製することなく第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送すると、第1冷却塔および/または第2冷却塔から得られる(メタ)アクリル酸含有液の(メタ)アクリル酸濃度が低下して、晶析工程で得られる精製(メタ)アクリル酸の品質に影響を及ぼすおそれがある。また、(メタ)アクリル酸残留液を第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送することにより、不純物が(メタ)アクリル酸製造プロセス内で循環・濃縮して、高純度の精製(メタ)アクリル酸を効率的に製造できなくなるおそれがある。このような場合は、(メタ)アクリル酸残留液を精製した後、第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送することが好ましい。
(メタ)アクリル酸残留液の精製は、蒸留や放散、抽出等の公知の精製手段により行えばよい。(メタ)アクリル酸残留液に含まれる不純物を効果的に除去する点からは、蒸留により(メタ)アクリル酸残留液を精製した後、第1冷却塔および/または第2冷却塔に返送することが好ましい。
以上、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法について説明したが、晶析器に導入する(メタ)アクリル酸含有液は第1反応系列と第2反応系列で生成および回収されたものに限らない。例えば、第1反応系列や第2反応系列とは別の第3反応系列で生成および回収された(メタ)アクリル酸含有液を、第1反応系列と第2反応系列で生成および回収された(メタ)アクリル酸含有液とともに晶析器に導入してもよい。この場合、第3反応系列は第3反応器と第3冷却塔を含み、第3反応器と第3冷却塔は上記に説明した反応器と冷却塔を採用することができる。第4反応系列以降についても同様である。
次に、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法の例について、図面を参照して説明する。なお、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
図1には、第1冷却塔と第2冷却塔としてそれぞれ第1捕集塔と第2捕集塔を用い、第1捕集塔と第2捕集塔から得られた(メタ)アクリル酸含有液を精製することなく晶析器に導入して精製(メタ)アクリル酸を得る(メタ)アクリル酸の製造フローを示す。
図1に示した製造フローでは、まず、(メタ)アクリル酸製造原料1を第1反応器11と第2反応器21にそれぞれ導入して、(メタ)アクリル酸含有ガス12,22を得る。
次いで、第1反応器11から得られた(メタ)アクリル酸含有ガス12を第1捕集塔(第1冷却塔)13に導入して、(メタ)アクリル酸含有液14を得るとともに、第2反応器21から得られた(メタ)アクリル酸含有ガス22を第2捕集塔(第2冷却塔)23に導入して、(メタ)アクリル酸含有液24を得る。第1捕集塔13と第2捕集塔23にはそれぞれ、(メタ)アクリル酸含有ガス12,22が第1および第2捕集塔13,23の下部から導入されるとともに、捕集溶剤15,25が第1および第2捕集塔13,23の上部から供給され、(メタ)アクリル酸含有ガス12,22が捕集溶剤15,25と接触することにより(メタ)アクリル酸含有液14,24が生成する。生成した(メタ)アクリル酸含有液14,24は、第1および第2捕集塔13,23の塔底から排出される。
第1捕集塔13と第2捕集塔23にはそれぞれ、(メタ)アクリル酸含有液14,24の一部を、(メタ)アクリル酸含有ガス12,22の供給位置および(メタ)アクリル酸含有液14,24の排出位置より上方かつ捕集溶剤15,25の供給位置より下方の位置から第1および第2捕集塔13,23に返送する循環ライン16,26が設けられている。循環ライン16,26にはそれぞれ熱交換器17,27が設けられ、循環ライン16,26を通る(メタ)アクリル酸含有液14,24が熱交換器17,27で冷却された後、第1および第2捕集塔13,23に返送される。
第1捕集塔13の塔頂からの排出ガスは、一部がリサイクルガス18として第1反応器11の入口側に戻され、他部が廃ガス19として製造プロセスの系外に排出される。同様に、第2捕集塔23の塔頂からの排出ガスは、一部がリサイクルガス28として第2反応器21の入口側に戻され、他部が廃ガス29として製造プロセスの系外に排出される。
第1捕集塔13から得られた(メタ)アクリル酸含有液14は、精製することなく晶析器31に導入される。第2捕集塔23から得られた(メタ)アクリル酸含有液24も、精製することなく(第1捕集塔13を介さずに)晶析器31に導入される。晶析器31に導入された(メタ)アクリル酸含有液14,24は晶析器31内で結晶化され、精製(メタ)アクリル酸32と、精製(メタ)アクリル酸32より低純度の(メタ)アクリル酸残留液33が得られる。晶析器31から得られた(メタ)アクリル酸残留液33は、蒸留塔34に導入されて精製された後、第1捕集塔13の循環ライン16に供給される。蒸留塔34で精製された(メタ)アクリル酸残留液33’は循環ライン16で(メタ)アクリル酸含有液14に加えられ、(メタ)アクリル酸残留液33’の一部が第1捕集塔13に返送されるとともに、他部がライン35を通って第2捕集塔23の循環ライン26に供給され、第2捕集塔23に返送される。
図2には、図1とは異なる(メタ)アクリル酸の製造フローを示す。図2に示す製造フローでは、図1に示した製造フローと同様にして(メタ)アクリル酸含有液14,24を得るが、第2捕集塔23から得られる(メタ)アクリル酸含有液24の(メタ)アクリル酸濃度が、第1捕集塔13から得られる(メタ)アクリル酸含有液14の(メタ)アクリル酸濃度より低いため、第2捕集塔23から得られる(メタ)アクリル酸含有液24を直接晶析器31に導入せずに、第1捕集塔13を介して晶析器31に導入することで、(メタ)アクリル酸含有液24の(メタ)アクリル酸濃度を高めることができる。これについて、下記に詳述する。
図2に示した製造フローでは、第1捕集塔13から得られた(メタ)アクリル酸含有液14は、精製することなく晶析器31に導入される。一方、第2捕集塔23から得られた(メタ)アクリル酸含有液24は、ライン30を通って第1捕集塔13の循環ライン16に供給され、第1捕集塔13に導入される。第1捕集塔13では、第2捕集塔23よりも高濃度の(メタ)アクリル酸含有液が得られるため、第2捕集塔23から得られた(メタ)アクリル酸含有液24を第1捕集塔13に導入することにより、第2捕集塔23で得られた(メタ)アクリル酸含有液24を精製することができ、(メタ)アクリル酸含有液24の(メタ)アクリル酸濃度を高めて晶析器31に導入することができる。
図2に示した製造フローでは、第2捕集塔23から得られた(メタ)アクリル酸含有液24を全量晶析器31に導入すると晶析器31の処理能力を超えるため、(メタ)アクリル酸含有液24の一部を晶析器31に導入し、他部を蒸留塔41に導入し、精製(メタ)アクリル酸42を得ている。蒸留塔41の上部からは(メタ)アクリル酸よりも高沸点の不純物43が排出される。晶析器31に導入された(メタ)アクリル酸含有液14,24は結晶化され、精製(メタ)アクリル酸32と(メタ)アクリル酸残留液33が得られる。(メタ)アクリル酸残留液33は、蒸留塔34に導入されて精製された後、第1捕集塔13の循環ライン16に加えられ、第1捕集塔13に返送される。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
比較例1
図1に示した製造フロー中、第1反応器と第1捕集塔と晶析器を用いて(すなわち、第2反応器と第2捕集塔を用いずに)アクリル酸を製造した。第1捕集塔の塔底から、アクリル酸94.0質量%、酢酸2.0質量%、水2.5質量%、プロピオン酸0.1質量%、フルフラール0.1質量%、その他の不純物1.3質量%からなるアクリル酸含有液を7.8t/hで得て、これをそのまま晶析器に導入して精製アクリル酸を得た。晶析器には冷凍機から冷熱媒と温熱媒が供給され、このときの冷凍機能力のエネルギー原単位は570kWh/t−アクリル酸であった。得られた精製アクリル酸は、不純物として、酢酸500質量ppm、プロピオン酸95質量ppm、フルフラール0.1質量ppmを含有し、色調(APHA)は4であり、製造量は4.6t/hであった。
実施例1
比較例1と同様の設備を用いて、図1に示した製造フローに従いアクリル酸を製造した。第1捕集塔の塔底から、アクリル酸94.0質量%、酢酸2.0質量%、水2.5質量%、プロピオン酸0.1質量%、フルフラール0.1質量%、その他の不純物1.3質量%からなるアクリル酸含有液を7.8t/hで得た。一方、第2捕集塔の塔底からも、第1捕集塔からのアクリル酸含有液と同組成のアクリル酸含有液を得た。第1捕集塔から得られたアクリル酸含有液の量7.8t/hは、晶析器の仕様上のアクリル酸含有液供給量10.3t/hよりも低かったため、晶析器には、第1捕集塔から得られたアクリル酸含有液7.8t/hに加え、第2捕集塔から得られたアクリル酸含有液2.5t/hも併せて、アクリル酸含有液を合計10.3t/h供給した。晶析器からは、不純物として、酢酸500質量ppm、プロピオン酸100質量ppm、フルフラール0.1質量ppmを含有し、色調(APHA)が4である精製アクリル酸を6.0t/hで得た。また冷凍機能力のエネルギー原単位は510kWh/t−アクリル酸であった。実施例1では、比較例1と同程度の品質の精製アクリル酸が得られ、比較例1と比較してエネルギー原単位を10.5%削減できた。
実施例2
図2に示した製造フローに従いアクリル酸を製造した。実施例2では、第1反応器と第1捕集塔と晶析器を、比較例1と同様の設備を使用した。第2捕集塔の塔底から、アクリル酸72.5質量%、酢酸2.5質量%、水24.0質量%、プロピオン酸0.0質量%、フルフラール0.0質量%、その他の不純物1.0質量%からなるアクリル酸含有液を得て、第2捕集塔から得られたアクリル酸含有液2.9t/hを第1捕集塔の循環ラインに供給し、第1捕集塔の塔底からは、アクリル酸93.8質量%、酢酸2.0質量%、水2.8質量%、プロピオン酸0.1質量%、フルフラール0.1質量%、その他の不純物1.2質量%からなるアクリル酸含有液を10.3t/hで得た。第1捕集塔の塔底から得られたアクリル酸含有液を10.3t/hで晶析器に供給し、精製アクリル酸を6.0t/hで得た。得られた精製アクリル酸は、不純物として、酢酸510質量ppm、プロピオン酸105質量ppm、フルフラール0.1質量ppmを含有し、色調(APHA)は4であった。また冷凍機能力のエネルギー原単位は510kWh/t−アクリル酸であった。実施例2でも、比較例1と同程度の品質の精製アクリル酸が得られ、比較例1と比較してエネルギー原単位を10.5%削減できた。