しかしながら、上述した従来のドラフトチャンバーでは、以下に説明する種々の課題がある。
上記従来のドラフトチャンバーでは、昇降スライド式扉の昇降操作により昇降するウェイトの配置位置が該ドラフトチャンバーの背面側であったり(特許文献2参照)、或いは、左右の側板の背面側であったり(特許文献1参照)することから、それぞれ上記ベルトやワイヤを支持する案内プーリー等を所々に配置しなければならないばかりか、ドラフトチャンバーの奥行(正面板から背面板までの長さ)は多種多様であるところ、上述した従来のドラフトチャンバーではそうした奥行の長さに応じてその都度上記ベルトやワイヤ等の長さを変更しなければならない。
また、これまでのドラフトチャンバーでは、昇降スライド式扉の昇降操作により昇降するウェイトは吊り下げられた状態で昇降する構造とされていることから、該昇降スライド式扉の昇降操作により振動し、近傍の部材に衝突し又はその衝突音が発生する場合がある。
そこで、本発明は、上述した従来のドラフトチャンバーが有する課題を解決するために提案されたものであって、奥行の長さが異なる場合であっても、昇降スライド式扉の昇降操作により連動して昇降動作するウェイトと該昇降スライド式扉とを接続する線状体の長さを変更することが無いとともに、該昇降スライド式扉の昇降操作により振動することがない新規なドラフトチャンバーを提供することを目的とするものである。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、テーブルの上方に形成された作業空間を形成する背面板、左側板、右側板、天板及び透明な樹脂により成形された正面板並びに昇降スライド式扉を備え、上記昇降スライド式扉の左側には左側支柱が配置され、該昇降スライド式扉の右側には右側支柱が配置され、これら左側支柱や右側支柱には、該昇降スライド式扉に線状体を介して連結されてなるとともに該昇降スライド式扉の昇降操作に連動して下降又は上昇するウェイトが配置され、上記昇降スライド扉の左側には、一端が前記左側支柱に配置されたウェイトに連結された線状体の他端が連結されてなるとともに左側昇降ガイド部材が取り付けられた左側間隔調整具が配置され、昇降スライド扉の右側には、一端が前記右側支柱に配置されたウェイトに連結された線状体の他端が連結されてなるとともに右側昇降ガイド部材が取り付けられた右側間隔調整具が配置され、前記左側支柱には、上記左側昇降ガイド部材がガイドされる左ガイド部が形成され、前記右側支柱には、上記右側昇降ガイド部材がガイドされる右ガイド部が形成されてなるとともに、上記左側間隔調整具は、該左側間隔調整具に取り付けられた左側昇降ガイド部材が上記左ガイド部に圧接される方向及びその逆方向に調節可能とされ、上記右側間隔調整具は、該右側間隔調整具に取り付けられた右側昇降ガイド部材が上記右側ガイド部に圧接される方向及びその逆方向に調節可能とされてなることを特徴とするものである。
上記第1の発明に係るドラフトチャンバーでは、ウェイトは上記左側支柱や右側支柱にそれぞれ線状体を介して配置されている。ここで、線状体とは、昇降スライド式扉とウェイトとを接続できるものであれば良く、紐やワイヤは勿論、ベルトも含まれる。そして、上記昇降スライド式扉を上昇操作すると、上記左右のウェイトは下降し、該昇降スライド式扉を下降操作すると、上記左右のウェイトは上昇する。したがって、この第1の発明では、ドラフトチャンバーの奥行が長くなったり短くなったりした場合でも、そうした設計変更に影響を受けないので、昇降スライド式扉やウェイト等、特に線状体の長さは一定寸法のものを量産することができる。
また、この第1の発明では、上記昇降スライド扉の左側には、一端が前記左側支柱に配置されたウェイトに連結された線状体の他端が連結されてなるとともに左側昇降ガイド部材が取り付けられた左側間隔調整具が配置され、昇降スライド扉の右側には、一端が前記右側支柱に配置されたウェイトに連結された線状体の他端が連結されてなるとともに右側昇降ガイド部材が取り付けられた右側間隔調整具が配置され、前記左側支柱には、上記左側昇降ガイド部材がガイドされる左ガイド部が形成され、前記右側支柱には、上記右側昇降ガイド部材がガイドされる右ガイド部が形成されてなるとともに、上記左側間隔調整具は、該左側間隔調整具に取り付けられた左側昇降ガイド部材が上記左ガイド部に圧接される方向及びその逆方向に調節可能とされ、上記右側間隔調整具は、該右側間隔調整具に取り付けられた右側昇降ガイド部材が上記右側ガイド部に圧接される方向及びその逆方向に調節可能とされている。
したがって、この第1の発明では、上記左側昇降ガイド部材又は右側昇降ガイド部材を、上記左側ガイド部又は右側ガイド部に圧接される方向又はその逆方向に調節することにより、昇降ガイド式扉の左右両側が、左側支柱や右側支柱との間の隙間やその隙間に基づくがた付きがない状態で配置されることとなり、極めてスムーズな昇降動作を実現することができる。
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記ウェイトの左右両側には、少なくともそれぞれ2つの車輪が転動自在に配置されてなる一方、前記左側支柱及び右側支柱には、これらの左右両側に配置された2つの車輪を該左側支柱及び右側支柱の長さ方向にそれぞれガイドする昇降ガイド部が互いに対向した状態で形成されてなることを特徴とするものである。
この第2の発明によれば、上記ウェイトの左右両側に配置されたそれぞれ2つの車輪は、左側支柱及び右側支柱に互いに対向した状態で形成された昇降ガイド部により、該左側支柱及び右側支柱の長さ方向にガイドされることから、極めてスムーズに昇降移動する。
なお、上記それぞれ2つの車輪には該車輪の回転中心に配置された支軸が存在し、この支軸が上記ガイド部方向に移動可能となされ、該ガイド部に圧接するよう構成されてなるものであっても良い。
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、前記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記左側昇降ガイド部材と右側昇降ガイド部材とは、それぞれ軸を中心に回動するとともに外周には凹溝が形成されたガイドホイールであり、上記左ガイド部と右ガイド部とは、それぞれ上記凹溝に対応した凸条であることを特徴とするものである。
この第3の発明によれば、上記第1の発明と同じように、上記昇降ガイド式扉の昇降動作にがたつきを生じさせることなく極めてスムーズに操作することができる。
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第3の発明において、前記左側支柱と前記左ガイド部である凸条と前記昇降ガイド部とは一体成形されてなるとともに、前記右側支柱と前記右ガイド部である凸条と前記昇降ガイド部とは一体成形されてなることを特徴とするものである。
上記第1の発明(請求項1記載の発明)によれば、ドラフトチャンバーの奥行が長くなったり短くなったりした場合でも、そうした設計変更に影響を受けないので、昇降スライド式扉やウェイト等、特に線状体の長さは一定寸法のものを量産することができる。特に、この第1の発明では、上記左側昇降ガイド部材又は右側昇降ガイド部材を、上記左側ガイド部又は右側ガイド部に圧接される方向又はその逆方向に調節することにより、昇降ガイド式扉の左右両側が、左側支柱や右側支柱との間の隙間やその隙間に基づくがた付きがない状態で配置されることとなり、極めてスムーズな昇降動作を実現することができる。
また、第2の発明(請求項2記載の発明)によれば、上記ウェイトの左右両側に配置されたそれぞれ2つの車輪は、左側支柱及び右側支柱に互いに対向した状態で形成された昇降ガイド部により、該左側支柱及び右側支柱の長さ方向にガイドされることから、極めてスムーズに昇降移動する。
また、第3の発明(請求項3記載の発明)によれば、上記第1の発明と同じように、上記昇降ガイド式扉の昇降動作にがたつきを生じさせることなく極めてスムーズに操作することができる。
また、第4の発明(請求項4記載の発明)では、前記左側支柱と前記左ガイド部である凸条と前記昇降ガイド部とは一体成形されてなるとともに、前記右側支柱と前記右ガイド部である凸条と前記昇降ガイド部とは一体成形されてなることから、組立工程も簡易なものとなるばかりか、例えば、正面板や昇降スライド式扉等の位置決めも高精度に行うことができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態に係るドラフトチャンバーを、図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態に係るドラフトチャンバー1は、図1又は図2に示すように、上面上で化学実験等がされるテーブル2(甲板)2と、このテーブル2上の作業空間ないし閉塞空間(符号は省略する。)を形成する左側板3と、この左側板3に対向してなる右側板4と、背面板5と、天板6と、正面板7とを備えている。なお、上記テーブル2の前端側の左右両側には、ゴム又は軟質樹脂により円柱状に成形された緩衝体8が立設されている。また、上記テーブル2の上面の正面側には、後述する跳ね上げ式扉25の下端が当接しテーブル2との隙間を埋める隙間閉塞部材9が取り付けられている。また、上記左側板3と右側板4と天板6と正面板7とは、それぞれ透明な樹脂により板状に成形されており、上記左側板3と右側板4及び背面板5は、上記テーブル2の上面に対して鉛直方向に起立している。また、上記天板5は、上記テーブル2と平行とされている。また、上記背面板5には図示しない排気口が二つ形成され、これらの排気口には、それぞれ図示しない排気ダクト13が固定されている(図3参照)。なお、上記背面板5の正面、すなわち、上記作業空間に面した側には、図示しない開口が多数形成された分散板が該背面板の正面に着脱可能に固定され、作業空間内の空気が上記排気ダクト13内に均一に吸引されるように構成されている。
そして、上記背面板5の周囲には上側枠部材5a、左側枠部材5b、右側枠部材5cがそれぞれ固定され、図4に示すように、上記左側板3の上端には、上側枠部材3aが固定され、背面には図示しない背面側枠部材が固定され、下端には下端側枠部材3cが固定され、正面側には正面側枠部材3dが固定されている。また、上記右側板4の上端には、図4に示すように、上側枠部材4aが固定され、背面側には背面側枠部材4bが固定され、下端には下端側枠部材4cが固定され、正面には正面側枠部材4dが固定されている。そして、上記背面板5に固定された左側枠部材5bと、左側板3に固定された背面側枠部材とは互いに固定され、右側板4に固定された背面側枠部材4bとは互いに固定されている。また、図3に示すように、上記天板6の背面側には背面側枠部材6aが固定され、左端には左側枠部材6bが固定され、右側には右側枠部材6c(図1参照)が固定され、正面側には正面側枠部材6dが固定されている。そして、上記天板6に固定された背面側枠部材6aと背面板5に固定された上側枠部材5aとが固定され、左側枠部材6bは、上記左側板3に固定された上側枠部材3aに固定されている。また、上記天板6に固定された右側枠部材6cと右側板4に固定された上側枠部材4aとは互いに固定されている。また、図1及び図2に示すように、上記正面板7の上端には上端側枠部材7aが固定され下端側枠部材7bが固定されている。そして、上記正面板7は、上端側が背面側となり下端側が手前側となるように傾斜してなるものであり、左側は該正面板7の傾斜角度と同じ角度で傾斜した左側傾斜支柱15に接続固定され、右側も正面板7の傾斜角度と同じ角度で傾斜した右側傾斜支柱16に接続固定されている。そして、上記正面板7に固定された上端側枠部材7aは、図3に示すように、上記天板6に固定された正面側枠部材6dに固定されている。また、上記左側板3に固定された正面側枠部材3dは、上記左側傾斜支柱15に固定され、右側板4に固定された正面側枠部材4dは、上記右側傾斜支柱16に固定されている。なお、上記左側傾斜支柱15は、本発明を構成する左側支柱であり、上記右側傾斜支柱16は、本発明を構成する右側支柱であり、それぞれアルミニウムにより押出し成形されてなるものである。
また、上記正面板7の固定位置よりも僅かに正面側には、図3に示すように、該正面板7の傾斜角度と同じ角度で傾斜しているとともに、その傾斜角度を維持した状態で昇降する昇降スライド式扉18が配置されている。この昇降スライド式扉18は、上記正面板7、左側板3及び右側板4並びに天板6と同じ透明な樹脂により長方形状に成形されている。そして、上記昇降スライド式扉18は、扉本体(符号は省略する。)と、この扉本体の上端に固定された上端側枠部材18aと、透明の樹脂により長方形状に成形された板体からなる扉本体の下端に固定された下端側枠部材18bと、扉本体の左端に固定された左側枠部材18cと、右端に固定された右側枠部材18dとから構成されている。そして、上記左側枠部材18cと右側枠部材18dとは、それぞれ上記テーブル2上に固定された上記隙間閉塞部材9の上面位置まで延長されている。そして、図1又は図2に示すように、上記左側枠部材18cの右側には、一方の扉受け片18eが形成され、右側枠部材18dの左側には他方の扉受け片18fが形成されている。なお、上記左側枠部材18cの下端側中途部には、後述するストッパ本体63に係合する係合片23が固定されている(図1参照)。この係合片23は、図8に示すように、やや手前側に厚みを有する板体であり、下面には背面側から正面側にかけて徐々に上昇するとともに、後述するストッパ本体63が摺接する一方の摺接面23aが形成されている。また、この係合片28の上面は、後述するストッパ本体63と係合する係合面23bが形成されている。
そして、上記昇降スライド式扉18の扉本体の下方には、跳ね上げ式扉25が配置されている。この跳ね上げ式扉25は、透明の樹脂により長方形状に成形された板体からなる扉本体(符号は省略する。)と、この扉本体の上端に固定された上端側枠部材25aと、上記扉本体の下端に固定された保護部材25bとから構成されている。そして、図2に示すように、上記昇降スライド式扉18を構成する下端側枠部材18bと、上記上端側枠部材25aとは、該跳ね上げ式扉25が手前に回動可能となるように三つの蝶番26により連結されている。また、この跳ね上げ式扉25の正面の下端側の左右両側には、該跳ね上げ式扉25を手前に回動操作する際に作業者が把持する操作用摘まみ27がそれぞれ固定されている。また、上記跳ね上げ式扉25は、図1に示すように回動操作されず、図2に示すように、上記昇降スライド式扉18の傾斜角度と同じ角度で位置している場合には、上記左側枠部材18cや右側枠部材18dの正面と平行とされている。
そして、図2に示すように、上述した昇降スライド式扉18を構成する左側枠部材18cの左側は、上記左側傾斜支柱15内に挿入され、昇降スライド式扉18を構成する右側枠部材18dの右側は、上記右側傾斜支柱16内に挿入されている。これら左側傾斜支柱15と右側傾斜支柱16は、後述するストッパ60の有無を除き、左右対称に構成されてなるものであり、図1に示すように、左側傾斜支柱15の右側には、上記昇降スライド式扉18を構成する左側枠部材18cの左側がガイドされるガイド溝が形成された左ガイド部材29が配置され、右側傾斜支柱16の左側には、該昇降スライド式扉18を構成する右側枠部材18dの右側がガイドされるガイド溝が形成された右ガイド部材30が配置されている。
そして、この実施の形態に係るドラフトチャンバー1では、上記昇降スライド式扉18は、左側ウェイト及び右側ウェイトにそれぞれ線状体であるワイヤを介して接続され、後述するように、(上記跳ね上げ式扉25が連結された)昇降スライド式扉18を上昇操作や下降操作することにより、上記左側ウェイト及び右ウェイトがそれぞれ下降移動し又は上昇移動するように構成されている。そして、上記左側ウェイトその他の部材は、上記左側傾斜支柱15内に配置され、上記右側ウェイトその他の部材は、上記右側傾斜支柱16内に配置されている。そして、上記昇降スライド式扉18の左側に配置された左側傾斜支柱15と、昇降スライド式扉18の右側に配置された右側傾斜支柱16及びこれらの内部は、左右対称に構成されている。そこで、以下、右側傾斜支柱16の内部構成を説明する。
図5は、右側傾斜支柱16に内部に配置された上記右側ウェイト32等を示すものであり、該右側ウェイト32には、上端に上部取付板32aが固定され、下側には下部取付板32bが固定されている。そして、上記上部取付板32aの一端には第1の車輪33が転動自在に配置され、該上部取付板32aの他端には第2の車輪34が転動自在に配置され
ている。また、上記下部取付板32bの一端には第3の車輪35が転動自在に配置され、上記下部取付板32bの他端には第4の車輪36が転動自在に配置されている。そして、上記右側ウェイト32が配置された上記右側傾斜支柱16内には、上記第1及び第3の車輪33,35をこの右側傾斜支柱16の長さ方向にガイドする一方のガイドレール16aと、上記第2及び第4の車輪34,36を、この右側傾斜支柱16の長さ方向にガイドするとともの上記一方のガイドレール16aと平行となされた他方のガイレール16bとが形成されている。したがって、上記右側ウェイト32の昇降移動は、上記一方及び他方のガイドレール16a,16bによりそれぞれガイドされながら位置決めされた状態でなされる。また、上部取付板32aの中央には、一方の接続片32cが形成され、この一方の接続片32cには、上記ワイヤ(線状体)38の一端側が固定されている。
また、上記右側傾斜支柱16内であって、該右側傾斜支柱16の上端側には、図5に示すように、滑車43が取り付けられている。この滑車43は、図6に示すように、上記右側傾斜支柱16に対して、ボルト44とナット45とにより回動自在に固定されてなるものである。なお、上記滑車43と右側傾斜支柱16との間には、スペーサ46が配置されている。また、上記滑車43は、円盤状に成形され外周には上記ワイヤ38が約半周に亘って巻回される溝部43aが形成され、中央には上記ボルト44の軸部(符号は省略する。)が挿通された図示しない貫通穴が形成されている。
そして、この実施の形態に係るドラフトチャンバー1では、上記昇降スライド式扉18を構成する左側枠部材18cの下端側の左側と、上記右側枠部材18dの下端側の右側には、図1に示すように、それぞれ(左側ないし右側)間隔調整具50が固定されている。これらの間隔調整具50は、左右対称の状態で配置されてなるものである。そこで、以下、上記右側枠部材18dに固定された間隔調整具50について説明する。この間隔調整具50は、図5又は図7に示すように、上記右側枠部材18dに固定された金具51と、この金具51の上端側中途部に固定された支軸52を中心に回動可能に配置された回動金具53と、この回動金具53に固定された固定軸54を中心に回動するガイドホイール55とを備えている。なお、このガイドホイール55は、本発明を構成する左側昇降ガイド部材又は右側昇降ガイド部材である。
上記金具51は、図7に示すように、上記右側枠部材18dの正面と平行に位置する主板部51aを有し、この主板部51aの上端には、該主板部51aの上端からL字状に折曲された上部折曲片51bが形成され、この上部折曲片51bには上記ワイヤ38の他端側が固定されている。また、上記主板部51aの下端には、該主板部51aの下端からL字状に折曲され上記上部折曲片51bと対向する下部折曲片51dが形成されている。この下部折曲片51dは、上記昇降スライド式扉18を最も下降させた際に、その下面が上記テーブル2の上面に固定した円盤状の緩衝体8(図1参照)に当接する部位である。また、上記主板部51aには、後述するように、上記回動金具53の回動操作に伴って移動する上記固定軸54の移動範囲をカバーする円形状の開口51eが開設されている。また、上記主板部51aには、上記下部折曲片51dの近傍に中間折曲片51fが形成されている。そして、この中間折曲片51fの中心には図示しないネジ穴が形成され、このネジ穴には、調節ネジ57が螺着されている(図7の(b)及び(c)参照)。
また、上記回動金具53には、上記回動軸54が固定され、また、この回動軸54が固定された部位よりも下方には、上記支軸52を中心として円弧状に形成された長孔53aが形成されている(図7の(a)参照)。そして、この長孔53a内には、先端が上記主板部51aに螺着されたネジ58の軸部(符号は省略する。)が挿通されている。また、上記回動金具53には、先端側が上記ガイドホイール55の配置側に折曲されてなる当接片53bが形成され、この当接片53bには、上記調節ネジ57の先端が当接している。
また、上記ガイドホイール55は、樹脂により円盤状に一体成形されてなるとともに、外周には前記右側傾斜支柱16に形成された直線状の凸条16c(図5参照)に対応した凹溝55aが形成されている。なお、上記ガイドホール55は、本発明(請求項1記載の発明)を構成する右側昇降ガイド部材であり、上記凸条16cは、本発明(請求項1記載の発明)を構成する右ガイド部である。
したがって、上記調節ネジ57を螺進させると、上記回動金具53やこの回動金具53に固定軸54を介して固定された上記ガイドホイール55は、上記支軸52を中心に、図7の(a)中において、上記長孔53aの長さの範囲内において、反時計回り方向に回転する。すなわち、上記調節ネジ57を螺進操作は、前記右側傾斜支柱16に形成された上記凸条16cに対して上記ガイドホイール55を押圧(接近)させる操作であり、逆に、上記調節ネジ57の螺退操作は、上記凸条16cから上記ガイドホイール55を離間させる操作である。なお、先に説明したように、上記間隔調整具50は、上記昇降スライド式扉18の左端に固定された左側枠部材18cの下端側の左側にも取り付けられ、上記調節ネジ57を螺進操作することにより、前記左側傾斜支柱15に形成された凸条15c(図8の(a)参照)に対して上記ガイドホイール55が接近し、螺退操作することにより該凸条15aに対して上記ガイドホイール55が離間するように構成されている。すなわち、この実施の形態に係るドラフトチャンバー1では、上記それぞれの調節ネジ57を螺進させることにより、上記各ガイドホイール55を上記左側傾斜支柱15及び右側傾斜支柱16にそれぞれ形成された凸条15c,16cに密着させ、昇降スライド式扉18の昇降動作にがたつきがないようにし、より具体的には、例えば、作業者が上記跳ね上げ式扉25の下端の右側や左側などを支持して上昇操作した場合であっても、確実に上昇するようにされている。なお、このように、上記跳ね上げ式扉25が支持されて該跳ね上げ式扉25と昇降スライド式扉18とが上昇操作された場合、或いは、後述するように、跳ね上げ式扉25が回動され昇降スライド式扉18の下端が作業者のより支持された状態で上昇操作されると、上記左側ウェイト及び右側ウェイト32は、作業者による上昇長さと同じ長さ上記右側傾斜支柱16や左側傾斜支柱15にそれぞれ形成されたスライドレール16a,16bに上記ガイド車輪33・・・36がガイドされながら下降する。なお、上記凸条15aは、本発明を構成する第2のガイド部であり、右側傾斜支柱16にも、こうした第2のガイド部としての凸条が形成されている。
また、図1、図2又は図3に示すように、上記左側傾斜支柱15の下端側中途部には、ストッパ60が取り付けられている。このストッパ60は、図8に示すように、上記左側傾斜支柱15に基端側が固定された取付片61と、この取付片61に固定された支軸62と、この支軸62を中心に回動するストッパ本体63と、このストッパ本体63が、上記昇降スライド式扉18の左端に固定された左側枠部材18cの下方の正面側に回動するように常に付勢してなる弾性材64と、を備えている。上記取付片61は、上記左側傾斜支柱15の正面に固定された固定板部61aと、この固定板部61aから正面側に起立してなる起立板部61bと、この起立板部61bの前端から右側傾斜支柱16側に延長されてなる延在板部61cとからなり、上記起立板部61bには、開口(符号は省略する。)が形成されている。そして、上記支軸62を中心に回動するストッパ本体63は、上記開口に挿通されている。このストッパ本体63は、先に説明した係合片23の下面に形成された一方の摺接面23aに摺接する他方の摺接面63aを一端側に備え、下面(符号は省略する。)は、上記係合片23の上面である係合面23bに係合する面とされている。また、このストッパ本体63の他端側は、以下に説明するように作業者が指で操作する操作部63cとされている。すなわち、図8の(a)に示すように、上昇操作された昇降スライド式扉18が作業者により下降操作されると、やがて左側枠部材18cに固定された上記係合片23に形成された一方の摺接面23aと上記ストッパ本体63に形成された他方の摺接面63aとが互いに摺接するとともに上記ストッパ本体63は上記弾性材74の弾性力に抗して徐々に上記左側枠部材18cの正面から離間する方向に回動させられ、やがて、図8の(b)に示すように、上記係合片23の正面に至り、この係合片23の正面を摺接しながら係合片23の正面の上端に至ると、図8の(c)に示すように、上記弾性材64の弾性力により再び回動させられ左側枠部材18cの上面に当接する。このように、上記弾性材64の弾性力により再び回動させられ左側枠部材18cの上面に当接した状態は、図2又は図4に示すように、昇降スライド式扉18が最も下降した状態であり、後述するように、跳ね上げ式扉25が降りている状態においては、上記正面板7の下方は完全に閉塞された状態である。したがって、こうした状態において、作業者が上記操作用摘まみ27を把持しながら昇降スライド式扉18及び跳ね上げ式扉25全体を上昇操作しても、図8の(c)に示すように、上記ストッパ本体63の下面に、上記係合片23の上面である係合面23bが衝突(係合)し、操作不能となる。
以下、このように構成された本実施の形態に係るドラフトチャンバー1の操作方法を説明しながら、作用効果を説明する。
先ず、図2に示すように、前述した昇降スライド式扉18と跳ね上げ式扉25とによりこのドラフトチャンバー1の正面側が閉塞した状態から説明する。この状態においては、上述したように、上記ストッパ60を構成するストッパ本体63の一端側は上記係合片23の上面に位置し(図8の(c)参照)ロックされていることから、跳ね上げ式扉25を上昇させることはできない。しかし、この実施の形態に係るドラフトチャンバー1では、このように昇降スライド式扉18を上昇操作できない状態であっても、上記各操作用摘まみ27を把持しながら、跳ね上げ式扉25を跳ね上げ操作(下端側が上方に位置するように回動操作)し、図1に示すように、昇降スライド式扉18の下方を開放することができる。そして、このドラフトチャンバー1では、上記正面板7及び昇降スライド式扉18は、前述したように、同じ角度で傾斜しているとともに、昇降スライド式扉18は正面板7の配置位置よりも手前側に位置していることから、該跳ね上げ式扉25を、図9に示すように、上記昇降スライド式扉18に持たせ掛けることができ、跳ね上げた状態を自重で維持させることができる。このように、跳ね上げ式扉25を跳ね上げてその状態を維持させると、上記昇降スライド式扉18の下側には、開口が形成されることから、上記作業空間内で実験作業を行うことができるとともに、昇降スライド式扉18の背面に付着した有害物質を払拭することもできる。
或いは、図2又は図3に示す状態から、上述したように、跳ね上げ式扉25を操作することなく、上記ストッパ本体63の他端側に形成された上記操作部63cを、上記弾性材64の弾性力に抗してこのドラフトチャンバー1の背面側に押圧させ、該ストッパ本体63によるロック状態を解除させるとともに、上記各操作用摘まみ27を把持しながら、上昇操作すると、該跳ね上げ式扉25と昇降スライド式扉18とが一体的に上昇する。このとき、上記左側傾斜支柱15及び右側傾斜支柱16内にそれぞれ配置された左側ウェイト及び右側ウェイト32は、該昇降スライド式扉18の上昇長さと同じ長さ下降する。また、このように上昇する昇降スライド式扉18は、上記正面板7の正面と対向する位置に上昇し、左側傾斜支柱15と右側傾斜支柱16の上面に形成された天板15d、16d(図1参照)の下面に当接する。このとき、上記昇降スライド式扉18は、正面板7の上端よりも上昇することなく、したがって、昇降スライド式扉18の背面に有害物質が付着している場合であってもこのドラフトチャンバー1の外部に露出することがない。そして、図10に示すように、跳ね上げ式扉25と昇降スライド式扉18が一体的に上昇することにより、該跳ね上げ式扉25の下方には、開口が形成されることから、上述したように、作業者はこの開口から手や腕を挿入し化学実験等を行うことができるとともに、該跳ね上げ式扉25の背面に付着した有害物質等を払拭することができる。
さらにまた、このドラフトチャンバー1では、図9に示す状態から昇降スライド式扉18を跳ね上げ式扉25と一体的に上昇操作し、或いは、図10に示す状態から、跳ね上げ式扉25を跳ね上げると、図11に示すように、正面板7の正面側に昇降スライド式扉25が位置し、この昇降スライド式扉18の正面側に跳ね上げ式扉25が位置することとなり、該正面板7の下方は、昇降スライド式扉18と跳ね上げ式扉25とを合計した面積に等しい大きな開口が形成される。したがって、作業者は、こうした大きな開口を利用して、正面板7の背面や、天板6の下面、左側板3及び右側板4のそれぞれの内側面、さらには背面板5の正面をそれぞれ掃除することができ、それぞれに付着した有害物質等を簡単に払拭することができる。
したがって、この実施の形態に係るドラフトチャンバー1によれば、人体に極めて有害な物質を上記作業空間で扱っても、該ドラフトチャンバー1の内部を綺麗に清掃することができ、またこのドラフトチャンバー1の外側に有害物質を拡散させてしまう危険性を回避することができる。
また、この実施の形態に係るドラフトチャンバー1では、左側ウェイトと右側ウェイト32が配置され、これらと、昇降スライド式扉18と跳ね上げ式扉25とを合算した荷重とのバランスがとられていることから、昇降スライド式扉18を任意の位置にてその状態を保持させることができる。特に、この実施の形態に係るドラフトチャンバー1では、こうした左側ウェイトや右側ウェイト32は、該昇降スライド式扉18の昇降動作をガイドする左側傾斜支柱15や右側傾斜支柱16に配置されており、左側板3や右側板4或いは背面板5に配置されているものではないことから、このドラフトチャンバー1の奥行等の長さを変更する場合であっても、ワイヤ38等の線状体の長さを変更する必要性がない。
また、前述したように、こうした左側ウェイトや右側ウェイト32とのバランスの中で昇降操作される昇降スライド式扉18の左右両側には、前述した間隔調整具50が取り付けられ、これらの間隔調整具50を構成する調節ネジ57を螺進させることにより、上記各ガイドホイール55を上記左側傾斜支柱15や右側傾斜支柱16にそれぞれ形成された凸条15c,16cに密着させ、昇降スライド式扉18の昇降動作にがたつきを生じさせることなく極めてスムーズに操作することができる。