以下、本発明に係る金型装置の一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
<第一実施形態>
図1は、発泡成形体(成形品)を成形するための金型装置1を示している。この金型装置1は、左右一対(1組)の金型2,3からなり、左側の金型2を構成する金属製で雌型の成形型4と、右側の金型3を構成する金属製で雄型の成形型5とを前面側で合わせて発泡成形体を成形するように構成されている。図1に示す金型装置1は、1組の金型2,3を左右方向(水平方向)に開閉させる横型の金型装置である。
一方の金型2は、前記雌型の成形型4と、この成形型4がインナープレート(取付側板とも言う)6を介して取り付けられる金属製の第1フレーム7と、第1フレーム7の背面側の開口部7Kを閉じる金属製の第1バックプレート8とを備えている。また、他方の金型3は、前記雄型の成形型5と、成形型5がインナープレート(取付側板とも言う)9を介して取り付けられる金属製の第2フレーム10と、第2フレーム10の背面側の開口部10Kを閉じる金属製の第2バックプレート11とを備えている。
雌型の成形型4は、前端(図1では右端)が開口されて凹部12Aが形成された円形の本体部12と、この本体部12の開口端から径方向外方側に突出形成された環状の鍔部13とを備えている。また、図1及び図2に示すように、前記本体部12の後端には、その外周縁から径方向中心に向かって所定距離の位置に周方向に沿って周溝12Mが形成されるよう、後方側へ突出する突出部12Tを備えている。この突出部12Tの成形型4の径方向外周面には、周方向に沿って所定間隔を置いて周溝12Mから成形型4の径方向外方側に凹部12Bが形成されるよう、外側に突出する多数(図2では18個)の突起12tを備えている。
インナープレート6は、外形が矩形状(ほぼ正方形状)で金属製の(例えばアルミニウム、ステンレス、銅などからなる)板部材からなり、その中心部に本体部12を挿入可能な円形の孔6Aを備えている。また、インナープレート6の外周縁が、第1フレーム7から内側に突出したフランジ部7Aの前面に当て付けられ、インナープレート6が第1フレーム7のフランジ部7Aに複数のボルト14(図1では1個のみ図示している)により固定されている。
雄型の成形型5は、雌型の成形型4の凹部12A内に入り込んで発泡性合成樹脂(発泡性合成樹脂粒子が好ましい)を充填するための成形空間Sを形成すべく、本体部12の開口を閉じる円形で板状の部材からなっている。そして、この成形型5は、外形が矩形状で板状のインナープレート9の内周縁に固定され、このインナープレート9の外周縁背面が、第2フレーム10から内側に突出したフランジ部10Aの前面に当て付けられ、インナープレート9が第2フレーム10のフランジ部10Aに複数のボルト15(図1では1個のみ図示している)により固定されている。インナープレート9は、矩形状(ほぼ正方形状)で金属製の(例えばアルミニウム、ステンレス、銅などからなる)部材からなり、その中心部に成形型5の背面を蒸気室17内に露出させるための円形の孔9Aを備えている。
第1フレーム7は、図1及び図2に示すように、正面視がほぼ矩形状の環状枠体に形成されるとともに、成形型4の背面(後面)側に配置されている。そして、成形型4の鍔部13がインナープレート6の内周縁側前面に当接した状態でボルトBにより固定され、そのインナープレート6の外周縁側背面が第1フレーム7のフランジ部7Aの前面に当接した状態でボルト14により固定されている。また、第1バックプレート8は、矩形状の板状材からなり、第1フレーム7の背面(後面)側の開口部7Kを閉じるように第1フレーム7の背面に取り付けられている。このように第1フレーム7と第1バックプレート8により成形型4の背面を囲うことにより一方の成形型4の蒸気室16が形成されている。尚、第1フレーム7と第1バックプレート8の2つの部材から成形型4の背面側を囲う壁を構成しているが、1つの部材又は3つ以上の部材から成形型4の背面側を囲う壁を構成してもよい。
また、第2フレーム10は、第1フレーム7と同様に、正面視がほぼ矩形状の環状枠体に形成されるとともに、成形型5の背面(後面)側に配置されている。そして、成形型5の外周縁がインナープレート9の内周縁にボルト(図示せず)により固定され、そのインナープレート9の外周縁が第2フレーム10のフランジ部10Aにボルト15により固定されている。また、第2バックプレート11は、第2フレーム10の背面側の開口部10Kを閉じるように第2フレーム10の背面に取り付けられている。このように第2フレーム10と第2バックプレート11により成形型5の背面を囲うことにより他方の成形型5の蒸気室17が形成されている。尚、第2フレーム10と第2バックプレート11とから成形型5の背面側を囲う壁を構成しているが、1つの部材又は3つ以上の部材から成形型5の背面側を囲う壁を構成してもよい。
更に、第1フレーム7を構成する横向きの上側の壁部7Bに、複数(図では2個)の孔7a,7bが形成され、それらの孔7a,7bのうちの前側に位置する孔7aの上端に蒸気案内管18が接続されている。また、後側に位置する孔7bの上端に冷却水供給管19が接続され、かつ、該孔7bの下端に冷却水案内管20が接続されている。冷却水案内管20の長手方向複数個所には、冷却水吐出口20Aが設けられている。
また、第1フレーム7と同様に、第2フレーム10を構成する横向きの上側の壁部10Bに、複数(図では2個)の孔10a,10bが形成され、それらの孔10a,10bのうちの前側に位置する孔10aの上端に蒸気案内管21が接続されている。また、後側に位置する孔10bの上端に冷却水供給管22が接続され、かつ、該孔10bの下端に冷却水案内管23が接続されている。冷却水案内管23の長手方向複数個所には、冷却水吐出口23Aが設けられている。
前記のように前側に位置する孔7a又は10aから蒸気を蒸気室16又は17に供給することによって、成形型4又は5の上端に蒸気が直ちにかかりやすくなり、成形型4又は5の温度を上げる時間を短縮することができ、好ましい。前記管18〜23は、金属や硬質樹脂などの硬質なパイプで構成する他、耐熱性を有する合成樹脂などで形成される可撓性を有するホースで構成してもよい。特に、冷却水案内管20又は23を、屈曲自在な材料(金属や合成樹脂など)で構成しておけば、蒸気室16又は17内の障害物(例えば後述するサポート部材28)を迂回させながら所望位置まで案内することができる利点がある。また、孔7a,7b,10a,10bに管18〜23を接続する方法としては、孔7a,7b,10a,10bをねじ孔に形成し、それらねじ孔に管18〜23に形成のねじ部をねじ込んで接続するねじ込み手段や、嵌め合いによる嵌合手段、あるいは接着剤などによる接着手段などを用いることができる。尚、成形型4,5には、多数の微細な孔(図示せず)が形成されており、一方の蒸気室16内に供給された蒸気の一部が一方(蒸気室16と同一側)の成形型4の孔を通して成形空間S内に入る、あるいは、他方の蒸気室17内に供給された蒸気の一部が他方(蒸気室17と同一側)の成形型5の孔を通して成形空間S内に入るようになっている。
図1及び図2に示すように、一方(図1において左側)の蒸気室16の減容化を行うための減容部材24を、該一方の蒸気室16内に設けている。
減容部材24は、熱伝導率の低い材料として、ポリエチレンからなる発泡合成樹脂材料を用いることによって、軽量化を図りながらも、蒸気室16の減容化と共に断熱効果を発揮できるようにしている。発泡合成樹脂材料としては、ポリエチレンの他、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、PVC樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
減容部材24は、インナープレート6の後面の一部を覆うように配置された多数の発泡成形体24A,24B…から構成されている。つまり、図2に示すように、インナープレート6の外周縁の4辺部分を覆う4つの長方形状の長尺で所定の厚みを有する板状の第1発泡成形体24A,24B,24C,24Dと、4つの第1発泡成形体24A,24B,24C,24Dが取り付けられたインナープレート6の内側部分の4つのコーナー部(角部)を覆う三角形状で所定の厚みを有する板状の第2発泡成形体24E,24F,24G,24Hとを備えている。尚、発泡成形体24A,24B…の発泡倍率は、30倍に設定している。また、発泡成形体24A,24B…の発泡倍率は、30倍から90倍の範囲に設定することになるが、耐久面及びコスト面の両面から考えると、50倍から70倍に設定することが好ましい。
第1発泡成形体24A,24B,24C,24Dは、これとほぼ同一長さでかつこれよりも幅狭な寸法(第1発泡成形体の約半分以下の寸法であるが、どのような寸法であってもよい)を有する金属プレート25を用いてインナープレート6に固定されている。具体的には、複数の棒状の螺子体をインナープレート6にそれの表面から突出するように固定し、それら螺子体に第1発泡成形体24A,24B,24C,24Dを貫通させてから、さらに金属プレート25を貫通させ、金属プレート25から突出した螺子体の先端にナット26を螺合させることによって、第1発泡成形体24A,24B,24C,24Dをインナープレート6に対して取り外し可能に固定する。
第2発泡成形体24E,24F,24G,24Hも第1発泡成形体24A,24B,24C,24Dと同様に、複数の棒状の螺子体をインナープレート6にそれの表面から突出するように固定し、それら螺子体に第2発泡成形体24E,24F,24G,24Hを貫通させてから、さらに金属プレート25を貫通させ、金属プレート25から突出した螺子体の先端にナット26を螺合させることによって、第2発泡成形体24E,24F,24G,24Hをインナープレート6に対して取り外し可能に固定する。
図1及び図2に示すように、成形型4とバックプレート8との間隔を保持するための多数のサポート部材(支持部材)28の一端が、成形型4及びインナープレート6の一部(成形型4の近傍)に取り付けられている。尚、インナープレート6のサポート部材28が取り付けられている内側部分には、発泡成形体を備えさせていないが、該内側部分にもサポート部材28を迂回する状態で発泡成形体を備えさせて実施することもできる。また、右側の成形型5とバックプレート11との間隔を保持するための多数のサポート部材(支持部材)29の一端が、成形型5及びインナープレート9に取り付けられている。
上記構成の金型装置1を用いて、発泡成形体を成形する過程について説明する。まず、成形型4,5の前面側の合わせ面同士を合わせて両成形型4,5を閉じる。このとき、成形型4,5のうちの一方のみを移動させて閉じてもよいし、両方の成形型4,5を移動させて閉じてもよい。閉じることにより形成された成形空間Sに発泡性合成樹脂粒子を図示しない充填装置により充填する。次に、図示していないバルブを開放状態にすることにより、蒸気案内管18,21を介して蒸気室16,17に蒸気を供給して加熱する。加熱が終了すると、開放しているバルブを閉じてから、図示していない冷却水供給バルブを開放状態にして蒸気室16,17に冷却水案内管20,23を介して冷却水を供給して成形型4,5を冷却する。続いて、減圧冷却工程に移り、蒸気室16,17内を減圧することにより蒸気室内の残存水分や成形された発泡成形体に付着もしくは内部に含有されている水分を蒸発させるとともに蒸発潜熱を利用して冷却を促進させて、減圧冷却工程を終了する。こののち、成形型4,5を開いて成形型4,5から発泡成形体を取り出して作業が完了する。尚、前記減圧冷却工程を設けることによって、冷却を促進させることができるが、減圧冷却工程は省略してもよい。
前記取り出した発泡成形体を図3(a)〜(d)に示している。この発泡成形体は、例えば電極の両端を覆って梱包するための梱包材として用いられ、板状の円盤状本体部30Aと、この円盤状本体部30Aの一方の面に突出形成される円筒状の突条部30Bとから構成されている。突条部30Bは、突出端側ほど厚みが薄くなる(先細りとなる)断面形状が台形状に形成されている。また、突条部30Bの内外面のうちの外面に、周方向に所定間隔(等間隔)を置いて径方向外側に突出する多数(図では18個)の突起部30Cを備えている。この突起部30Cは、基端から突出端に渡って同じ突出量で形成された縦長状の突起から構成され、突条部30Bの強度を高めるようにしている。
前述したように、一方の蒸気室16内に減容部材24を設けているので、蒸気室16の容量を減容部材24の体積の分だけ減らすことができる。その結果、蒸気室16内に供給する蒸気の供給量を減容部材24の体積の分だけ減らせる。しかも、減容部材24を熱伝導率の低い材料で構成しているので、蒸気室16内に供給される蒸気の熱が減容部材24に奪われることを抑制することができる。このような効果を裏付けるための実験を行い、次のような実験結果が得られた。
蒸気室の容積(体積)が160,930cm3の成形型4を用い、減容部材24の容積(体積)を22,860cm3(蒸気室の容積の14.2%分)とし、金型の温度が従来と同一温度にまで蒸気量を減らしたときの蒸気量を調べた。また、蒸気量の他、成形に要するサイクル時間の短縮化も行えるかどうかを調べた。尚、減容部材24を設けていない従来の蒸気量は、6.0kgで、サイクル時間が176秒であった。
表1から考察すれば、本発明1のように蒸気室16内に減容部材24を備えさせることによって、蒸気量が従来の成形型のものに比べて1.6kg(26.6%)減らすことができ、サイクル時間も25秒(14.2%)減らすことができた。これは、蒸気室16の容積が減容部材24を備えさせることによる効果だけでなく、インナープレート6の温度が金型温度よりも5℃低い温度であるため、蒸気の熱がインナープレート6に奪われていない効果が発揮され、その分蒸気量を更に減らすことができたものと推察できる。更に、サイクル時間、つまり加熱時間と冷却時間の短縮を図ることができた。尚、ここでは、一方の蒸気室16内にのみ減容部材24を備えさせたが、他方の蒸気室17内にも減容部材24を備えさせておけば、蒸気効果を更に高めることができると考えられる。
<第二実施形態>
第二実施形態では、複数(図では6個)の発泡成形体(成形品)を同時に成形できる(多数個取りが可能な)金型装置31を示し、その金型装置31が、図4及び図5に示されている。
この金型装置31は、左右一対(1組)の金型32,33からなり、左側の金型32を構成する雌型の成形型34と、右側の金型33を構成する雄型の成形型35とを前面側で合わせて発泡成形体を成形するように構成されている。尚、金型32,33は、金型を構成する成形型34,35及びインナープレート(取付プレートとも言う)36,37の形状が異なる以外は、図1と同様であるため、同一符号を付している。金型32,33は、前記と同様に、インナープレート36,37がビス38,40により取り付けられた成形型34,35と、第1及び第2フレーム7,10と、第1及び第2バックプレート8,11とを備えている。
前記成形型34,35は、複数の発泡成形体を同時形成可能にすべく、成形型34,35の合わせ面のそれぞれに、縦方向と横方向とに間隔を置いて複数(ここでは6個)の成形空間形成用の雌型及び雄型の型部34A,35Aを備えている。このように構成された一対の金型32,33のうちの一方の金型32の第1フレーム7の上側の壁部7Bに複数の孔7a,7bが形成されている。それらの孔7a,7bのうちの前側に位置する孔7aに蒸気案内管18が接続され、成形型34の上側に位置する3個の型部34Aに向けて蒸気を供給し、残りの後側に位置する孔7bの上端に冷却水供給管19が接続され、かつ、該孔7bの下端に冷却水案内管20が接続されている。冷却水案内管20の長手方向複数個所には、冷却水吐出口20Aが設けられている。
他方の金型33は、一方の金型32と同様に第2フレーム10の上側の壁部10Bに複数の孔10a,10bが形成されている。それらの孔10a,10bのうちの前側に位置する孔10aに蒸気案内管21が接続され、成形型35の上側に位置する3個の型部35Aに向けて蒸気を供給し、残りの後側に位置する孔10bの上端に冷却水供給管22が接続され、かつ、孔10bの下端に冷却水案内管23が接続されている。冷却水案内管23の長手方向複数個所には、冷却水吐出口23Aが設けられている。
左側のインナープレート36は、外形が長方形で所定の厚みを有する板状部材に形成され、その板状部材の上側3箇所で下側3箇所の合計6箇所に、型部34Aの内径よりも大きく、かつ、型部34Aのフランジ34aを板状部材に当接可能となる大きさの円形の開口36Aが形成されている。そして、それら開口36Aに対応して型部34Aを配置して複数のビス38によりインナープレート36に固定している。また、6個の型部34Aが固定されたインナープレート36の外周縁を複数(図4では1個のみ示している)のビス39により第1フレーム7のフランジ部7Aに固定している。
右側のインナープレート37は、左側のインナープレート36と同様に、外形が長方形で所定の厚みを有する板状部材に形成され、その板状部材の上側3箇所で下側3箇所の合計6箇所に、型部35Aの内径とほぼ同一の大きさで、かつ、型部35Aのフランジ35aをインナープレート37に当接可能となる大きさの円形の開口37Aが形成されている。そして、それら開口37Aに対応して型部35Aを配置して複数のビス40によりインナープレート37に固定している。また、6個の型部35Aが固定されたインナープレート37の外周縁を複数(図4では1個のみ示している)のビス41により第2フレーム10のフランジ部10Aに固定している。
右側のインナープレート37の後面(蒸気室側の面)に、減容部材42を備えている。減容部材42は、インナープレート37の後面のほぼ全域を覆うように配置された多数の発泡成形体42A,42B,42C,42D…から構成されている。つまり、図4及び図5に示すように、第2フレーム10のフランジ部10Aにビス止めされたインナープレート37の背面(後面)の外周縁のうちの図の左右両端辺部分を覆う2つの長方形状で長尺な板状の第1発泡成形体42A,42Bと、第1発泡成形体42A,42Bの上端同士間及び下端同士間に渡って所定間隔を置いてインナープレート37の背面の上端部及び下端部に配置された複数(図では3個)の長方形状で板状の第2発泡成形体42C,42Dと、インナープレート37の背面の第2発泡成形体42C,42C間又は42D,42D間の隙間に配置され、一方の第2発泡成形体42C又は42Dから他方の第2発泡成形体42D又は42Cに向かって延びる複数(図では2個)の長方形で板状の第3発泡成形体42E,42Fと、第3発泡成形体42E,42Fの間を埋めるようにインナープレート37の背面に配置された複数(4個)の矩形で板状の第4発泡成形体42G,42Hと、第1発泡成形体42A,42Bの上下方向中央部同士間に渡るようにインナープレート37の背面に配置された複数(図では6個)の長方形で板状の第5発泡成形体42Iとを設けている。
第1発泡成形体42A,42Bは、それとほぼ同一長さでかつそれよりも幅狭な寸法(第1発泡成形体の約半分以下の寸法であるが、どのような寸法であってもよい)を有する金属プレート43によって固定される。具体的には、複数の棒状の螺子体をインナープレート37にそれの表面から突出するように固定し、それら螺子体に第1発泡成形体42A,42Bを貫通させてから、さらに金属プレート43を貫通させ、金属プレート43から突出した螺子体の先端にナット44を螺合させることによって、第1発泡成形体42A,42Bをインナープレート37に対して取り外し可能に固定する。
第2発泡成形体42C,42D及び第3発泡成形体42E,42Fは、第2発泡成形体42C,42Dの左右両端に渡る長さで第2発泡成形体42C,42Dよりも幅狭な寸法(第1発泡成形体の約半分以下の寸法であるが、どのような寸法であってもよい)を有する金属プレート45によって固定される。具体的には、複数の棒状の螺子体をインナープレート37にそれの表面から突出するように固定し、それら螺子体に第1発泡成形体42C,42Dを貫通させてから、さらに金属プレート45を貫通させ、金属プレート45から突出した螺子体の先端にナット46を螺合させることによって、第2発泡成形体42C,42D及び第3発泡成形体42E,42Fをインナープレート37に対して取り外し可能に固定する。
第5発泡成形体42Iは、左右両端に渡る長さを有する上下一対の金属プレート47,48によって固定される。そして、第4発泡成形体42G,42Hのうちの上から2番目と3番目の第4発泡成形体42G,42Hが、上下一対の金属プレート47,48によって固定される。具体的には、複数の棒状の螺子体をインナープレート37にそれの表面から突出するように固定し、それら螺子体に第1発泡成形体42I及び第4発泡成形体42G,42Hを貫通させてから、さらに金属プレート47,48を貫通させ、金属プレート47,48から突出した螺子体の先端にナット49を螺合させることによって、第5発泡成形体42I及び4発泡成形体42G,42Hをインナープレート37に対して取り外し可能に固定する。
上から1番目と4番目の第4発泡成形体42G,42Hは、第4発泡成形体42G,42Hとほぼ同一長さで第4発泡成形体42G,42Hよりも幅狭な寸法を有する金属プレート50によって固定される。具体的には、複数の棒状の螺子体をインナープレート37にそれの表面から突出するように固定し、それら螺子体に第1発泡成形体42C,42Dを貫通させてから、さらに金属プレート50を貫通させ、金属プレート50から突出した螺子体の先端にナット51を螺合させることによって、第4発泡成形体42G,42Hをインナープレート37に対して取り外し可能に固定する。
図4及び図5に示すように、成形型34,35とバックプレート8,11との間隔を保持するための多数のサポート部材(支持部材)52が成形型34,35及びインナープレート36,37の一部(成形型35の近傍)に取り付けられている。
上記のように、一方の蒸気室17に減容部材42を設けているので、蒸気室17の容量を減容部材42の体積の分だけ減らすことができる。その結果、蒸気室17内に供給する蒸気の供給量を減容部材42の体積の分だけ減らせる。しかも、減容部材42を熱伝導率の低い材料で構成しているので、蒸気室17内に供給される蒸気の熱が減容部材42に奪われることを抑制することができる。このような効果を裏付けるための実験を行い、次のような実験結果が得られた。
蒸気室の容積(体積)が120,700cm3の成形型35を用い、減容部材42の容積(体積)を12,142cm3(蒸気室の容積の10%分)とし、金型の温度が従来と同一温度にまで蒸気量を減らしたときの蒸気量を調べた。また、蒸気量の他、成形に要するサイクル時間の短縮時間も調べた。尚、減容部材24を設けていない従来の蒸気量は、6.4kgで、サイクル時間が131秒であった。
表2から考察すれば、本発明2のように蒸気室17内に減容部材42を備えさせることによって、蒸気量が従来の成形型のものに比べて0.8kg(12.5%)減らすことができ、サイクル時間も3秒(2.3%)減らすことができた。これは、蒸気室17の容積が減容部材42を備えさせることによる効果だけでなく、インナープレート37の温度が金型温度よりも5℃低い温度であるため、蒸気の熱がインナープレート37に奪われていない効果が発揮され、その分蒸気量を更に減らすことができたものと推察できる。更に、サイクル時間、つまり加熱時間と冷却時間の短縮を図ることができた。尚、ここでは、一方の蒸気室17内にのみ減容部材42を備えさせたが、他方の蒸気室16内にも減容部材42を備えさせておけば、蒸気効果を更に高めることができると考えられる。
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
前記実施形態では、減容部材を中身が詰まった中実部材から構成したが、例えば図6(a),(b)に示すように、一端が開放された開口部53Kを有する箱型状の減容部材53から構成してもよい。減容部材53は、一枚の長方形の板部53Aと、この板部の4辺から立ち上げられた4枚の側部53B,53C,53D,53Eと、特定の側部53Dの開口部53K側端から90度折り曲げて外方へ延びる外向きフランジ部53Fとを備えている。フランジ部53Fには、ボルトBを挿通可能な孔53aを備えている。前記減容部材53をそのフランジ部53Fがインナープレート6の背面に接触するように配置することによって、減容部材53の開口部53Kが閉じられた状態になり、その状態で、ボルトBをフランジ部53Fの孔53aを通してインナープレート6を貫通し成形型4の鍔部13にねじ込むことによって、減容部材53とインナープレート6とを成形型4に固定している。内部に空間を有する減容部材53を用いることによって、減容部材53の軽量化及び材料費コストの低減化を図りながらも、蒸気室の減容化を効率よく行うことができる。また、図6(a),(b)では、一端が開放された5つの側部からなる箱型状の減容部材53を示しているが、6つの側部からなる内部に密閉された空間を有する内部中空型の密閉型に構成された減容部材であってもよい。
また、前記実施形態では、減容部材を発泡成形体から構成したが、減容部材を構成する材料としては、非発泡の合成樹脂の他、木、紙など熱伝導率の低い材料であればどのような材料であってもよい。また、金属板の表面に断熱層を備えたものから減容部材を構成することもできる。
また、前記実施形態では、減容部材をインナープレートに取り付けたが、インナープレート以外の箇所、例えばバックプレートに取り付けてもよいし、インナープレートとバックプレートの両方に取り付けてもよく、要するに成形型以外であれば、どこに取り付けてもよい。また、場合によっては、蒸気室内の空きスペースに減容部材を固定しないで置いておいてもよい。尚、減容部材を取り外し可能に取り付けておけば、減容部材の交換を行える利点があるが、減容部材が耐久性に優れた材料から構成する場合には、減容部材を取り外し不能に取り付けてもよい。