以下、実施例について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、特徴的なロボットハンドと、このロボットハンドを用いて被把持物を把持する例について、図1〜図7に従って説明する。図1(a)は、ロボットハンドの構成を示す概略斜視図である。
図1(a)に示すように、四角形の板状の載置台1の上に被把持物2が載置されている。載置台1の図中上側を向く面は平面1aとなっている。この平面1aの法線の方向は重力加速度が作用する方向と逆の方向であり、この方向をZ方向とする。そして、平面1aに沿った方向をX方向及びY方向とし、X方向、Y方向、Z方向はそれぞれ直交する方向である。
被把持物2は柔軟な物体であり、例えば、クリームコロッケ、こんにゃく、豆腐、寒天等の形態の物体である。そして、被把持物2は押圧することにより変形し易い形態であり、押圧をやめると元の形状に戻る形態の物体である。従って、被把持物2の対向する側面2aを挟んで把持するとき、被把持物2が変形するので被把持物2は把持することが難しくなっている。図を見やすくするために載置台1上には被把持物2が1個のみ載置されているが、載置台1には複数の被把持物2が配列して設置されていても良い。
被把持物2のZ方向にはロボット3に設置されたロボットハンド4が位置している。ロボット3はY方向に延在するアーム5とアーム5に接続された図示しない複数のアーム及び関節を備えている。そして、ロボット3はこれらの関節を回動させることにより、アーム5を移動させることが可能になっている。
アーム5の先端には昇降機構6及び回転機構7が設置されている。昇降機構6及び回転機構7は昇降回転軸8を回動させ、Z方向に往復移動させる。昇降機構6及び回転機構7の構造は特に限定されない。例えば本実施形態では昇降機構6はモーターとボールネジとを組み合わせた構造であり、ボールネジが昇降回転軸8を直動させている。回転機構7はモーターと減速ギアとを組み合わせた構造であり、減速ギアが昇降回転軸8を回動させている。
昇降回転軸8の−Z方向の一端にロボットハンド4が設置されている。ロボットハンド4は昇降回転軸8と接続する間隔調整部9を備え、間隔調整部9の−Z側には間隔調整部9と接続して第1支持部10と第2支持部11とが設置されている。
間隔調整部9は直動機構を備え、第1支持部10と第2支持部11とをX方向に往復移動する。そして、間隔調整部9は第1支持部10と第2支持部11とを独立して移動させることができる。これにより、間隔調整部9は第1支持部10と第2支持部11との距離を調整する機能を備えている。間隔調整部9が備える直動機構の構造は特に限定されないが、本実施形態では例えば、この直動機構はステップモーターとボールネジとを組み合わせて構成されている。
第1支持部10は、Z方向に長い角棒状の縦部材10aの一端にY方向に長い直方体の横部材10bが中央で接続した形状となっている。同様に、第2支持部11もZ方向に長い角棒状の縦部材11aの一端にY方向に長い直方体の横部材11bが中央で接続した形状となっている。縦部材10a及び縦部材11aは間隔調整部9の直動機構と接続されている。そして、縦部材10aと縦部材11aとの間隔が間隔調整部9によって調整される。第1支持部10及び第2支持部11の材質は洗浄及び消毒に耐える材質であれば良く、特に限定されない。本実施形態では例えば、第1支持部10及び第2支持部11の材質にステンレス鋼を採用している。尚、洗浄は、例えば、洗浄液に浸漬して超音波洗浄する方法とブラッシング等の機械的洗浄とを組み合わせた方法を用いることができる。消毒には、例えば、煮沸消毒や塩素消毒等を行うことができる。
横部材10bの−Z側には載置部12及び押え部13が設置されている。載置部12は丸棒を用いて形成され、横部材10bと載置部12とで四角形の枠が形成されている。載置部12は強度があり載置台1と被把持物2との間に進行しても変形し難い強度となっている。載置部12の−Z方向の側に位置する底部12aは直線状に形成され、平面1aと平行になっている。これにより、載置部12を平面1aに沿って移動させることができる。従って、被把持物2と平面1aとの間で載置部12を容易に移動させることができる。
横部材10bと載置部12とに囲まれた場所には押え部13が配置されている。押え部13は略四角形の板を備えている。同様に、第2支持部11では横部材11bの−Z側に載置部14及び押え部15が設置されている。載置部14は第1支持部10の載置部12と同様の形状であり、同様の機能を備えている。押え部15は第1支持部10の押え部13と同様の形状であり、同様の機能を備えている。
ロボットハンド4に接続して制御部16が設置されている。制御部16は、ロボットハンド4に設置されたセンサーが出力する信号を入力して間隔調整部9を制御する。
図1(b)及び図1(c)は、第1支持部の構造を示す模式断面図であり、図1(c)は図1(b)のA−A’線から見た模式側断面図である。図1(b)及び図1(c)に示すように、横部材10bは中空構造であり、内部に第1軸受け17及び第2軸受け18を備えている。第1軸受け17及び第2軸受け18はボールベアリングであり、第1軸受け17及び第2軸受け18の外輪が横部材10bに固定されている。
第1軸受け17及び第2軸受け18の内輪には支持軸19が回動可能に支持されている。支持軸19には押え部13が固定されており、押え部13は支持軸19を回転軸にして回動可能になっている。支持軸19の−Y方向側の一端にはコイルバネ20が設置されている。コイルバネ20の一端は支持軸19に接続し、他端は横部材10bに接続されている。これにより、−Y方向から支持軸19を見たとき、支持軸19は反時計回りに回転するように付勢されている。
横部材10bの−Z方向側には回転止部23が2箇所設置されている。コイルバネ20により押え部13は回転止部23に押圧されている。横部材10bの内部においてY方向側には検出部24が設置されている。検出部24は支持軸19の回転を検出するための部位であり、抵抗型エンコーダー、光学式エンコーダー、磁気式のエンコーダー等を用いることができる。本実施形態では例えば、検出部24に抵抗型のエンコーダーが用いられている。抵抗型のエンコーダーは構造が簡単であるので、容易に入手または製造することができる。検出部24は支持軸19の回転角度を検出する。支持軸19の回転角度は押え部13の角度と同じ角度であるので、検出部24は押え部13の角度を検出する。尚、横部材11bの内部構造も横部材10bの内部構造と同じ構造となっている。そして、横部材11bに設置された検出部24は押え部15の角度を検出する。
載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15の材質は洗浄及び消毒に耐える材質であれば良く、特に限定されない。本実施形態では例えば、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15の材質にステンレス鋼を採用している。金属は洗浄及び消毒しても劣化し難い材料である。従って、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15の劣化を抑制しながら洗浄及び消毒することができる。さらに、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15の洗浄及び消毒する場所は載置台1に近い場所であり間隔調整部9と反対側になっている。従って、間隔調整部9に洗浄液や消毒液が付着することを抑制しながら載置部及び押え部を洗浄することができる。
図2(a)は、ロボットハンドの構成を示す模式正面図であり、ロボットハンドが被把持物を把持する様子を示している。図2(a)に示すように、間隔調整部9が第1支持部10と第2支持部11とを移動させて、第1支持部10と第2支持部11との間隔を被把持物2のX方向の長さより狭くしている。被把持物2の底2bは載置台1の平面1aに接触している。そして、載置部12及び載置部14が載置台1の平面1aと被把持物2の底2bとの間を進行し、被把持物2が載置部12及び載置部14の上に載置されている。
押え部13及び押え部15は被把持物2の側面2aを押圧し、側面2aに接触した形態となる。従って、載置部12は押え部13と離れ、載置部14は押え部15と離れる。このときの載置部12と押え部13とが成す角度を第1角度25とし、載置部14と押え部15とが成す角度を第2角度26とする。第1角度25は、第1支持部10に設置された検出部24が検出する角度である。第2角度26は、第2支持部11に設置された検出部24が検出する角度である。
押え部13の載置台1側の端と載置部12の載置台1側の端とのX方向の距離を載置部押え部間距離としての第1載置部押え部間距離27とする。押え部13の長さは既知の長さであるので、制御部16は第1角度25と三角関数を用いることにより第1載置部押え部間距離27を容易に算出することができる。同様に、押え部15の載置台1側の端と載置部14の載置台1側の端とのX方向の距離を載置部押え部間距離としての第2載置部押え部間距離28とする。押え部15の長さは既知の長さであるので、制御部16は第2角度26と三角関数を用いることにより第2載置部押え部間距離28を容易に算出することができる。
図2(b)は、載置部を示す要部模式断面図であり、載置部12が載置台1と被把持物2との間を進行する様子を示している。図2(b)に示すように、載置部12は断面形状が円形になっている。従って、載置部12が被把持物2に沿って移動するとき、載置部12は載置台1及び被把持物2に引っかかり難くなっている。その結果、載置部12は被把持物2に沿って容易に移動することができる。
図2(c)は、ロボットハンドの洗浄を説明するための模式図である。ロボットハンド4が被把持物2を把持するとき、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15に被把持物2の一部が付着する場合がある。ロボットハンド4に付着した被把持物2の一部を除去したいときには洗浄を行う。図2(c)に示すように、清浄槽29には洗浄液30が満たされている。操作者は載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15を洗浄液30に浸漬する。清浄槽29には図示しない超音波発生装置が設置されている。これにより、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15は超音波洗浄が行われる。
検出部24は横部材10b及び横部材11bに設置されている。そして、横部材10b及び横部材11bは載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15の間隔調整部9側に設置されている。従って、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15を洗浄液30に浸漬するときにも検出部24が洗浄液30に浸漬しないようにすることができる。検出部24は洗浄液30により機能が劣化する場合がある。本実施形態のロボットハンド4では検出部24が洗浄液30に接触しないので、検出部24が洗浄液30により機能が劣化することを防止することができる。
図3は、ロボットハンドの電気制御ブロック図である。図3において、ロボットハンド4はロボットハンド4の動作を制御する制御部16を備えている。そして、制御部16はプロセッサーとして各種の演算処理を行うCPU(中央演算処理装置)31と、各種情報を記憶するメモリー32とを備えている。さらに、間隔調整駆動装置33、第1検出部24a、第2検出部24b、ロボット3は入出力インターフェイス34及びデータバス35を介してCPU31に接続されている。
間隔調整駆動装置33は間隔調整部9を駆動する装置である。間隔調整部9は第1間隔調整部9a及び第2間隔調整部9bを有している。第1間隔調整部9aは第1支持部10を移動し、第2間隔調整部9bは第2支持部11を移動する。間隔調整駆動装置33は第1間隔調整部9a及び第2間隔調整部9bを独立して移動することが可能になっている。
検出部24は第1検出部24a及び第2検出部24bから構成されている。第1検出部24aは押え部13が回動するときの第1角度25を検出し、第2検出部24bは押え部15が回動するときの第2角度26を検出する。そして、第1検出部24aは第1角度25をCPU31に出力し、第2検出部24bは第2角度26をCPU31に出力する。
メモリー32は、RAM、ROM等といった半導体メモリーや、ハードディスク、DVD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、ロボットハンド4の動作の制御手順が記述されたプログラムソフト36を記憶する記憶領域や、被把持物2の形状、重量、柔らかさ等のデータであるワーク属性データ37を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、第1角度25及び第2角度26を用いて算出する第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28等のデータである載置部押え部間距離データ38を記憶するための記憶領域が設定される。さらに、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28と比較して判定するための判定データ39を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、CPU31のためのワークエリアやテンポラリーファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
CPU31は、メモリー32内に記憶されたプログラムソフト36に従って、被把持物2を把持する制御を行うものである。具体的な機能実現部として間隔制御部42を有する。間隔制御部42は検出部24が検出する第1角度25及び第2角度26を入力する。そして、第1支持部10及び第2支持部11の移動と停止を間隔調整駆動装置33に指示する。
他にも、CPU31は通信部43を有する。通信部43はロボット3との通信を行い。ロボット3から被把持物2を把持する指示信号及び被把持物2を開放する指示信号を入力する。そして、指示信号を間隔制御部42に出力する。さらに、間隔制御部42から信号を入力し、ロボット3にロボットハンド4を移動させる指示信号を出力する。
さらに、CPU31は有無判定部44を有する。有無判定部44は第1支持部10及び第2支持部11を移動したときの第1角度25及び第2角度26の変化から、把持する場所に被把持物2が存在しているか否かの判断を行う。
他にも、CPU31は形状変形判定部45を有する。形状変形判定部45は被把持物2を把持して上昇するときの第1支持部10及び第2支持部11の変化から、被把持物2が変形しているか否かの判断を行う。
さらに、CPU31は載置部押え部間距離演算部46を有する。載置部押え部間距離演算部46は第1角度25を入力して第1載置部押え部間距離27を算出し、第2角度26を入力して第2載置部押え部間距離28を算出する。
尚、本実施形態では、上記の各機能がCPU31を用いてプログラムソフトで実現することとしたが、上記の各機能がCPU31を用いない単独の電子回路(ハードウェア)によって実現できる場合には、そのような電子回路を用いることも可能である。
(ロボットハンドの制御方法)
次に、上述したロボットハンド4を用いて被把持物2を把持するときのロボットハンドの制御方法について図4〜図7にて説明する。図4は、把持作業を示すフローチャートである。図5〜図7は、把持作業におけるロボットハンドの制御方法を説明するための模式図である。
図4に示すフローチャートにおいて、ステップS1は、ハンド移動工程に相当する。この工程は、載置部12及び載置部14を移動して載置台1に接近させる工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、載置部移動工程に相当する。この工程は、載置部12及び載置部14が載置台1と被把持物2との間に進行して間隔を狭める工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は距離検出工程に相当する。この工程は、検出部24が第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28を検出する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は有無判定工程に相当する。この工程は、押え部13と押え部15との間に被把持物2が存在するかを判定する工程である。載置部12と載置部14との間隔が所定の間隔になったときに判定する。第1角度25及び第2角度26の出力がともに”0度”のとき、押え部13及び押え部15が被把持物2に接触していないと解釈する。そして、押え部13と押え部15との間に被把持物2が存在しないと判定する。そして、ステップS12に移行する。第1載置部押え部間距離27または第2載置部押え部間距離28が有無判定値まで到達したとき押え部13と押え部15との間に被把持物2が存在していると判定する。そして、ステップS5に移行する。
ステップS5は、第1距離判定工程に相当する。この工程は、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第1判定値まで到達したかを判定する工程である。第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第1判定値まで到達したときには載置部12及び載置部14が被把持物2を載置する場所に到達したことを意味する。第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第1判定値まで到達しないときにはステップS2に移行する。第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第1判定値まで到達したときにはステップS6に移行する。
ステップS6は、停止工程に相当する。この工程は、間隔調整部9が載置部12及び載置部14の移動を停止する工程である。次に、ステップS7に移行する。ステップS7は、ハンド上昇工程に相当する。この工程は、ロボット3がロボットハンド4を所定の高さまで上昇する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は、距離検出工程に相当する。この工程は、検出部24が第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28を検出する工程である。次にステップS9に移行する。ステップS9は、第2距離判定工程に相当する。この工程は、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第2判定値まで到達したかを判定する工程である。第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第2判定値まで到達したときには被把持物2に重力が作用して被把持物2が変形したことを意味する。第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第2判定値まで到達しないときにはステップS10に移行する。第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第2判定値まで到達したときにはステップS11に移行する。
ステップS10は、ハンド上昇工程に相当する。この工程は、ロボット3がロボットハンド4を上昇させる工程である。そして、被把持物2がロボットハンド4に把持されており、把持作業を終了する。
ステップS11は、ハンド下降工程に相当する。この工程は、被把持物2の形状が変形しないように載置台1上に載置する工程である。次にステップS12に移行する。ステップS12は、載置部移動工程に相当する。この工程は、載置部12及び載置部14の間隔を離して、載置部12及び載置部14を被把持物2と載置台1との間から外す工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は、ハンド上昇工程に相当する。この工程は、ロボット3がロボットハンド4を上昇させる工程である。そして、ロボットハンド4は被把持物2を把持せずに把持作業を終了する。以上の工程により被把持物2を把持する把持作業が終了する。
次に、図5〜図7を用いて、図4に示したステップと対応させて、ロボットハンド4が被把持物2を把持する把持作業におけるロボットハンドの制御方法を詳細に説明する。図5(a)及び図5(b)はステップS1のハンド移動工程に対応する図である。図5(a)に示すように、ステップS1において、載置台1には3個の被把持物2が配置されている。尚、図中の載置台1及び被把持物2は一部を図示しており、載置台1には多数の被把持物2が配置されている。そして、被把持物2が配置されている場所の位置精度は低く、被把持物2の間隔にはバラツキがある状態となっている。
ロボット3が被把持物2と対向する場所にロボットハンド4を移動する。このとき、被把持物2は載置部12と載置部14との中央から外れた場所に位置している。図5(b)に示すように、次に、ロボット3はロボットハンド4を下降させて載置部12及び載置部14を載置台1に接近させる。このとき、被把持物2の位置にバラツキがあるので、被把持物2が載置部12と載置部14との中央に位置するとは限らない。本実施形態では載置部12は載置部14に比べて被把持物2に近い場所に位置している例について説明する。
図5(c)及び図5(d)はステップS2の載置部移動工程、ステップS3の距離検出工程、ステップS5の第1距離判定工程、ステップS6の停止工程に対応する図である。図5(c)に示すように、ステップS2において、間隔制御部42が間隔調整駆動装置33に第1支持部10及び第2支持部11をそれぞれ移動させる指示信号を出力する。そして、間隔調整部9は第1支持部10及び第2支持部11を移動する。これにより、第1支持部10に接続する載置部12及び第2支持部11に接続する載置部14が移動させられて、載置部12と載置部14との間隔が狭くなる。棒状の載置部12及び載置部14は載置台1と被把持物2の底2bとの間を移動する。
さらに、第1支持部10に接続する押え部13及び第2支持部11に接続する押え部15が移動させられる。これにより、押え部13及び押え部15の一部が被把持物2と接触して傾斜する。ステップS3において第1検出部24aが第1角度25を検出し、第2検出部24bが第2角度26を検出する。そして、載置部押え部間距離演算部46は第1角度25を入力して第1載置部押え部間距離27を算出し、第2角度26を入力して第2載置部押え部間距離28を算出する。
ステップS5において、間隔制御部42は第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28を第1判定値47と比較する。第1載置部押え部間距離27が第1判定値47まで到達したとき、ステップS6に移行して間隔制御部42は第1支持部10の移動を停止する。第1載置部押え部間距離27が第1判定値47まで到達しないとき、ステップS2、ステップS3、ステップS5を繰り返して行う。これにより、第1載置部押え部間距離27が第1判定値47に到達するまで載置部12は移動させられる。
同様に、第2載置部押え部間距離28が第1判定値47まで到達したとき、ステップS6に移行して間隔制御部42は第2支持部11の移動を停止する。第2載置部押え部間距離28が第1判定値47まで到達しないとき、ステップS2、ステップS3、ステップS5を繰り返して行う。これにより、第2載置部押え部間距離28が第1判定値47に到達するまで載置部14は移動させられる。
間隔調整駆動装置33は第1支持部10と第2支持部11とをそれぞれ並行して移動する。そして、第1載置部押え部間距離27が第2載置部押え部間距離28より先に第1判定値47に到達したときには、第1支持部10を第2支持部11より先に停止する。そして、間隔調整駆動装置33は第2支持部11の移動を継続する。
図5(d)に示すように、その結果、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第1判定値47となる場所にて載置部12及び載置部14が停止される。第1判定値47は被把持物2における載置部12及び載置部14の相対位置を指示する値である。第1判定値47により載置部12と載置部14との間隔が設定される。さらに、側面2aと載置部12との距離及び側面2aと載置部14との距離が設定される。従って、予め予備実験を行って被把持物2を安定して把持できる場所に載置部12及び載置部14が位置するように第1判定値47を設定するのが好ましい。
図6(a)はステップS4の有無判定工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS4において、ロボットハンド4と対向する場所に被把持物2が存在しないときのロボットハンドの制御方法を説明する。ステップS2にて第1支持部10及び第2支持部11を移動する。そして、ステップS3にて検出部24が第1角度25及び第2角度26を検出する。ロボットハンド4と対向する場所に被把持物2が存在しないときには第1角度25及び第2角度26の出力がともに”0度”となる。
有無判定部44は間隔調整部9が移動させた第1支持部10及び第2支持部11の移動量を入力して載置部12と載置部14との距離である載置部間距離48を算出する。そして、載置部間距離48が所定の距離となったときの第1角度25及び第2角度26の出力を確認する。そして、第1角度25及び第2角度26の出力がともに”0度”のときには押え部13及び押え部15が被把持物2と接触していないと判定する。そして、押え部13と押え部15との移動範囲内に被把持物2が無いとを判定してステップS12に移行する。
図6(b)はステップS7のハンド上昇工程、ステップS8の距離検出工程、ステップS9の第2距離判定工程に対応する図である。図6(b)に示すように、ステップS7において、ロボット3はロボットハンド4を上昇させて、載置部12及び載置部14を載置台1から離す。本ステップは被把持物2が変形するか否かを確認するために上昇するので、上昇量は被把持物2の変形する程度がわかる量とする。本実施形態では、例えば、被把持物2の厚みの2割に設定した。
ステップS8において、検出部24が第1角度25及び第2角度26を検出し載置部押え部間距離演算部46が第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28を算出する。次に、ステップS9において、形状変形判定部45が第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28と第2判定値49とを比較する。第2判定値49は第1判定値47より短い距離となっている。被把持物2の変形が小さく、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第2判定値49より長いときにはステップS10に移行する。
図6(c)はステップS10のハンド上昇工程に対応する図である。図6(c)に示すように、ステップS10において、ロボット3はロボットハンド4を上昇させる。被把持物2は載置部12及び載置部14に載置され、押え部13及び押え部15に両側の側面2aを押さえられている。これにより、被把持物2はロボットハンド4に安定して把持されている。従って、ロボット3は被把持物2を安全に搬送することができる。
図7(a)はステップS9の第2距離判定工程に対応する図である。図7(a)に示すように、ステップS9では、載置部12及び載置部14が載置台1から離れている。被把持物2には重力が作用するので載置部12及び載置部14上に載置された被把持物2が変形し載置台1の方向に垂れることがある。
形状変形判定部45が第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28と第2判定値49とを比較する。被把持物2の変形が大きくなると第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が短くなる。そして、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第2判定値49より短いときにはステップS11に移行する。
図7(b)はステップS11のハンド下降工程に対応する図である。図7(b)に示すように、ステップS11ではロボット3がロボットハンド4を下降させて、載置部12及び載置部14を載置台1まで下降する。これにより、被把持物2は載置台1上に載置される。
図7(c)はステップS12の載置部移動工程に対応する図である。図7(c)に示すように、ステップS12ではロボット3が載置部12及び載置部14を移動させて、載置部12と載置部14との間隔を広げる。これにより、載置部12及び載置部14は被把持物2から離れた場所に位置する。
図7(d)はステップS13のハンド上昇工程に対応する図である。図7(d)に示すように、ステップS13において、ロボット3はロボットハンド4を上昇させる。これにより、ロボットハンド4は次の被把持物2と対向する場所に移動することができる。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ロボットハンド4は棒状の載置部12及び載置部14を備えている。間隔調整部9は載置部12及び載置部14を移動して載置部12と載置部14との間隔を調整する。載置部12と載置部14との間隔を被把持物2の長さより狭い間隔とすることにより、載置部12及び載置部14の上に被把持物2を載置することができる。
(2)本実施形態によれば、押え部13及び押え部15が被把持物2の側面2aを押えることにより、載置部12及び載置部14と被把持物2の側面2aとの距離を調整している。従って、被把持物2を安定して載置部12及び載置部14の上に載置することができる。その結果、ロボットハンド4は柔軟な被把持物2を把持することができる。
(3)本実施形態によれば、被把持物2が並んで位置するときには、隣り合う被把持物2の間に棒状の載置部12及び載置部14を通過させる。これにより、載置部12及び載置部14を被把持物2の底に移動させることができる。従って、被把持物2が接近して並んで位置しているときにも被把持物2を把持することができる。
(4)本実施形態によれば、載置部12と押え部13とが対を成し、載置部14と押え部15とが対を成している。そして、間隔制御部42は第1載置部押え部間距離27と第2載置部押え部間距離28とが同じ距離となるように載置部12及び載置部14を制御する。押え部13及び押え部15は被把持物2の側面2aを押えるので押え部13及び押え部15は側面2aと接触した状態となる。従って、載置部12及び載置部14は被把持物2の側面2aから等距離の場所に位置する為、被把持物2の重心と載置部12及び載置部14との距離を等距離にすることができる。従って、ロボットハンド4は被把持物2を安定して把持することができる。
(5)本実施形態によれば、押え部13及び押え部15はコイルバネ20により被把持物2に押圧されている。コイルバネ20は簡易に製造可能な要素である。また、検出部24にはエンコーダーが用いられている。エンコーダーは回転板の回転角度を検出する構造を有し簡易に製造可能な要素である。従って、ロボットハンド4は製造し易い部材により構成されている為、容易に製造することができる。
(6)本実施形態によれば、ロボットハンド4には検出部24及び間隔調整部9が設置されている。検出部24及び間隔調整部9は電子回路等を備え洗浄や除菌により損傷を受け易い。ロボットハンド4が被把持物2を把持するとき、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15に被把持物2の一部が付着することがある。このときには、載置部12、押え部13、載置部14及び押え部15を洗浄し除菌することにより清浄な状態にすることができる。そして、検出部24は押え部13及び押え部15の間隔調整部9側に設置されている。従って、検出部24が洗浄や除菌により損傷を受けないように押え部13、押え部15、載置部12及び載置部14を洗浄や除菌することができる。
(7)本実施形態によれば、ステップS2の載置部移動工程では被把持物2を移動させずに載置部12及び載置部14を移動させている。従って、少ない力で載置部12及び載置部14を移動させることができる。
(8)本実施形態によれば、ステップS2の載置部移動工程において載置部12及び載置部14を移動している。そして、ステップS4の有無判定工程にて押え部13及び押え部15が被把持物2に接触しないときには押え部13及び押え部15の移動範囲内に被把持物2が無いと判定している。従って、ロボットハンド4が位置する場所に被把持物2が無いときには、被把持物2が無いときに行う行動に移行することができる。
(9)本実施形態によれば、ステップS9の第2距離判定工程で第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第1判定値47より短い第2判定値49まで達したか否かを判定する。被把持物2が柔らかいとき被把持物2が重力の作用をうけて変形する。これにより、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が短くなる。従って、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が第2判定値49まで達したとき、ステップS11のハンド下降工程において載置部12及び載置部14を載置台1まで下降する。これにより、被把持物2が重力の作用を受けて変形するのを防止することができる。
(第2の実施形態)
次に、ロボットハンドの一実施形態について図8の押え部の支持構造を説明するための模式図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第1角度25及び第2角度26を検出するのにエンコーダーの代わりに測長器を用いる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、図8(a)に示すように、ロボットハンド52は縦部材53aと横部材53bからなる第1支持部53を備えている。第1支持部53は、Z方向に長い角棒状の縦部材53aの一端にY方向に長い直方体の横部材53bが中央で接続した形状となっている。
横部材53bの−Z側には載置部12及び押え部13が設置されている。載置部12は丸棒を用いて形成され、横部材53bと載置部12とで四角形の枠が形成されている。横部材53bと載置部12とに囲まれた内側には押え部13が配置されている。押え部13は略四角形の板を備えている。
横部材53bは中空構造であり、内部に第1軸受け17及び第2軸受け18を備えている。第1軸受け17及び第2軸受け18の外輪が横部材53bに固定されている。第1軸受け17及び第2軸受け18の内輪には支持軸54が回動可能に支持されている。支持軸54には押え部13が固定されており、押え部13は支持軸54を回転軸にして回動可能になっている。支持軸54の−Y方向側の一端にはコイルバネ20が設置されている。コイルバネ20の一端は支持軸54に接続し、他端は横部材53bに接続されている。これにより、−Y方向から支持軸54を見たとき、支持軸54は反時計回りに回転するように付勢されている。
横部材53bの−Z方向側には回転止部23が2箇所設置されている。コイルバネ20及び回転止部23により押え部13は回転止部23に押圧されている。支持軸54のY方向側の一端には反射板55が設置されている。そして、支持軸54が回動するときには押え部13と連動して反射板55も回動する。横部材53bには貫通孔53cが設置され、反射板55の一部は貫通孔53cを貫通して横部材53bの縦部材53a側に突出している。横部材53bの−X側の側面には測長器56が設置され、測長器56の一部が反射板55と対向する場所に位置している。
図8(b)及び図8(c)は、第1支持部の構造を示す要部模式断面図であり、図8(a)のB−B’線から見た図である。図8(b)は、押え部13が載置部12と平行になっている状態を示し、図8(c)は、押え部13が載置部12に対して斜めになっている状態を示している。図8(b)及び図8(c)に示すように、支持軸54に伴って反射板55が回動するとき反射板55と測長器56との距離が変わる。測長器56は反射板55と測長器56との距離を検出する機能を備えている。測長器56の検出方法は特に限定されないが、非接触で距離を検出する装置が好ましい。測長器56の検出方式には光学式、磁気式、静電容量式等の方式を用いることができる。本実施形態においては、例えば、光学式を用いている。
測長器56は内部にLED(Light Emitting Diode)を備え、反射板55に向けて光線57を射出する。光線57が反射板55を照射する場所である照射地点55aにて光線57が乱反射する。測長器56は内部に受光素子が直線に沿って配置された光センサーを備えている。この光センサーが反射板55において乱反射する場所を検出する。測長器56はLEDと光センサーとの距離を三角測量法にあてはめることにより測長器56と照射地点55aとの距離である照射距離57aを検出する。
支持軸54が回転するときは第1角度25が大きくなり、照射距離57aも長くなる。そして、CPU31は照射距離57aと三角関数を用いて第1角度25を算出する。制御部16は第1角度25を用いて第1載置部押え部間距離27を算出する。従って、ロボットハンド52においては測長器56を用いて第1載置部押え部間距離27を算出することができる。
載置部12及び押え部13を洗浄及び消毒する場所は載置台1に近い場所であり、測長器56は横部材53bに対して載置部12及び押え部13の反対側に位置している。従って、測長器56に洗浄液や消毒液が付着することを抑制しながら載置部12及び押え部13を洗浄することができる。
第1支持部53は第1の実施形態における第1支持部10に対応する部位である。第2支持部11に対応する部位においても第1支持部53と同様に検出部24の代わりに測長器56を用いても良く、検出部24を用いても良い。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、測長器56が用いられている。測長器56は変位を検出することができる為、押え部13の変位を容易に検出することができる。測長器56は直線に沿って移動する物を検出する構造を有し簡易に製造可能な要素である。従って、ロボットハンド52は製造し易い部材により簡便な構成されている為、容易に製造することができる。
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、間隔調整部9は第1支持部10を移動させる第1間隔調整部9aと第2支持部11を移動させる第2間隔調整部9bとを備えていた。これによらず、間隔調整部9の機能を第1支持部10と第2支持部11とを同時に移動させる機能にしても良い。このとき、間隔調整部9は第1支持部10と第2支持部11との距離を変える機能を有する。
駆動方法としては、ステップS2の載置部移動工程〜ステップS5の第1距離判定工程を繰り返す。このとき、第1載置部押え部間距離27と第2載置部押え部間距離28との一方が第1判定値47となるまで繰り返す。次に、第1載置部押え部間距離27と第2載置部押え部間距離28とが同じ距離になるようにロボット3を駆動してロボットハンド4を移動させる。そして、ステップS2の載置部移動工程〜ステップS5の第1距離判定工程を繰り返す。この方法により、第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28を第1判定値47にすることができる。
この方法により、ロボットハンド4は被把持物2を安定して把持することができる。さらに、被把持物2を移動させずに載置部12及び載置部14を移動するので、少ない力で載置部12及び載置部14を移動させることができる。さらに、間隔調整部9は第1支持部10と第2支持部11とを同じように移動する機構を備えていれば良いので、移動機構の数を少なくすることができる。
(変形例2)
前記第1の実施形態では、ステップS5の第1距離判定工程において第1載置部押え部間距離27と第1判定値47と比較した。そして、第1載置部押え部間距離27は押え部13の端と載置部12の端とのX方向の距離とした。第1載置部押え部間距離27は押え部13が被把持物2と接触する場所と載置部12とのX方向の距離としても良い。そして、第1載置部押え部間距離27は第1角度25と被把持物2の形状データとから算出される。これにより、被把持物2の形状に適した場所に載置部12及び載置部14を配置できる。従って、被把持物2の形状によらず安定して被把持物2を把持することができる。
(変形例3)
前記第1の実施形態では、縦部材10a及び縦部材11aはZ方向の長さが変わらない部位であった。縦部材10a及び縦部材11aに直動機構を設置して、Z方向の長さが変えられる部位にしてもよい。縦部材10aを短くするとき、載置部12が上昇して被把持物2に食い込む。このため載置部12と被把持物2との相対位置を変わりにくくすることができる。そして、被把持物2が載置台1上を滑りやすいときには、載置部12と載置部14とのうち固定したい方の載置部を上昇させる。そして、残りの方の載置部を移動する。これにより、被把持物2を移動させずに一方の載置部を移動させることができる。その結果、精度良く載置部12及び載置部14を配置することができる。
(変形例4)
前記第1の実施形態では、押え部13及び押え部15を付勢するコイルバネ20を用いたが板バネにしても良い。同様の機能を果たすことができればよい。
(変形例5)
前記第1の実施形態では、ステップS9の第2距離判定工程において被把持物2の変形が大きくなると第1載置部押え部間距離27及び第2載置部押え部間距離28が短くなる。このとき、ステップS11〜ステップS13において、被把持物2の把持を行わずにロボットハンド4を上昇した。被把持物2の変形が大きいときには載置部12と載置部14との間隔を再調整して再度把持しなおしても良い。
具体的には、ステップS11のハンド下降工程の後、載置部12と載置部14との間隔を変更する再調整工程を実施する。次に、ステップS7に移行する。そして、所定の回数の再調整工程を行った結果被把持物2を把持できないときにはステップS11〜ステップS13に移行する。以上のようなステップを行うことにより、さらに柔軟な被把持物2を把持することができる。