JP5928778B2 - アルミニウム基端子金具、及び電線の端末接続構造 - Google Patents
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Description
[端子金具]
〔組成〕
本発明アルミニウム基端子金具は、アルミニウム合金から構成されるものとする。アルミニウム合金は、種々の組成のものがあるが、特に、曲げなどの機械的特性や耐熱性に優れる組成のもの、具体的には、JIS規格に規定される2000系合金、6000系合金、7000系合金といったいわゆる熱処理合金が好適である。2000系合金は、ジュラルミン、超ジュラルミンと呼ばれるAl-Cu系合金であり、強度に優れる。具体的な合金番号として、例えば、2024,2219などが挙げられる。6000系合金は、Al-Mg-Si系合金であり、強度、耐食性に優れる。具体的な合金番号として、例えば、6061などが挙げられる。7000系合金は、超々ジュラルミンと呼ばれるAl-Zn-Mg系合金であり、非常に高強度である。具体的な合金番号として、例えば、7075などが挙げられる。
本発明端子金具は、代表的には、後述する溶体化処理及び時効処理を施して、析出物を積極的に生成させた素材を用いて製造される。従って、本発明の一形態として、当該端子金具を構成するアルミニウム合金は、析出物が存在する形態が挙げられる。また、鋳造時の冷却速度を調整するなどして、晶出物を積極的に生成させた素材を利用した場合には、本発明の一形態として、当該端子金具を構成するアルミニウム合金は、晶出物が存在する形態が挙げられる。その他、本発明の一形態として、当該端子金具を構成するアルミニウム合金は、晶出物及び析出物の双方を具える形態が挙げられる。上記熱処理により、強度などの機械的特性の向上も図ることができ、強度に優れる端子金具とすることができる。母材の組成や鋳造条件、熱処理条件にもよるが、晶析出物の大きさ(直径)は、0.5μm以上10μm以下、好ましくは2μm以上5μm以下であると、後述する導通部を生成し易い上に、粗大な晶析出物の存在による割れの発生などを抑制できる。晶析出物の大きさ(直径)は、母材の断面をとり、この断面に存在する晶析出物を抽出し、各晶析出物の等価面積円の直径を求め、その平均が挙げられる(n≧20個)。
本発明端子金具は、電線に具える導体が接続される導体接続部と、別の接続対象と電気的に接続される電気的接続部とを具える種々の形状のものを利用できる。公知の端子金具の形状を利用することもできる。
本発明端子金具では、その表面において少なくとも上述の電気的接続部における接点領域に陽極酸化層及びSn層を具えることを特徴の一つとする。
電気的接続部における接点領域に具えるSn層は、Sn及び不可避的不純物で構成される層であり、接点材料に利用する。端子金具において接点領域以外の箇所では、Sn層の有無は問わない。例えば、端子金具の表面全体に上述の陽極酸化層及びSn層の双方を具える形態とすると、Sn層の形成にあたりマスキングの形成・除去が不要であり、生産性に優れる。接点領域以外の箇所に設けられたSn層は、例えば、金属光沢による外観の向上に寄与する。或いは、端子金具の表面全体に上述の陽極酸化層を具え、接点領域にのみSn層を更に具える形態、つまり、Sn層を部分的に具える形態とすることができる。このように陽極酸化層の形成領域とSn層の形成領域とが異なっていてもよい。
本発明端子金具では、陽極酸化層に母材からSn層に至って貫通する孔部分があり、この孔部分にSn層と同様のSnが充填された導通部を具えることを最大の特徴とする。本発明端子金具は、母材とSn層との間に絶縁物からなる陽極酸化層が介在していながら、この導通部を構成するSnを介して母材とSn層とが接触することで、導通をとることができる。
本発明端子金具は、上述のように十分な導通がとれ、低抵抗な接続構造を形成することができる。例えば、接点領域の電気抵抗値が10mΩ以下である。
本発明端子金具は、代表的には、素材板を所定の形状に打ち抜き、所定の形状になるようにプレス加工といった塑性加工を施すことで製造することができる。素材板は、例えば、鋳造→熱間圧延→冷間圧延→種々の熱処理(少なくとも溶体化処理及び時効処理を含む)という工程により製造することができる。
〔電線〕
本発明端子金具が取り付けられる電線は、導体と、導体の外周に設けられた絶縁層とを具え、導体がAl合金等から構成されたアルミニウム基電線とする。つまり、本発明電線の端末接続構造は、アルミニウム合金からなる端子金具と、Al合金等からなる導体という主成分が同種の金属からなる接続構造であり、端子金具の各部間及び導体と端子金具間のいずれも、電池腐食が実質的に生じない。
導体を構成するアルミニウム合金は、例えば、Fe,Mg,Si,Cu,Zn,Ni,Mn,Ag,Cr及びZrから選択される1種以上の元素を合計で0.005質量%以上5.0質量%以下含有し、残部がAl及び不純物からなるものが挙げられる。各元素の好ましい含有量は、質量%で、Fe:0.005%以上2.2%以下、Mg:0.05%以上1.0%以下、Mn,Ni,Zr,Zn,Cr及びAg:合計で0.005%以上0.2%以下、Cu:0.05%以上0.5%以下、Si:0.04%以上1.0%以下が挙げられる。これらの添加元素は、1種のみ、又は2種以上を組み合わせて含有することができる。上記添加元素に加えて、Ti,Bを500ppm以下の範囲で含有することができる(質量割合)。上記添加元素を含有する合金として、例えば、Al-Fe合金、Al-Fe-Mg合金、Al-Fe-Mg-Si合金、Al-Fe-Si合金、Al-Fe-Mg-(Mn,Ni,Zr,Agの少なくとも1種)合金、Al-Fe-Cu合金、Al-Fe-Cu-(Mg,Siの少なくとも1種)合金、Al-Mg-Si-Cu合金などが挙げられる。導体を構成する線材として、公知のアルミニウム合金線を利用できる。
絶縁層の構成材料は、種々の絶縁材料、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン系樹脂をベースとしたハロゲンフリーの樹脂組成物、難燃性組成物などが挙げられる。絶縁層の厚さは、所望の絶縁強度を考慮して適宜選択することができる。
上記導体は、例えば、鋳造→熱間圧延(→ビレット鋳造材の場合:均質化処理)→冷間伸線加工(→適宜、軟化処理・撚り合わせ・圧縮)という工程により製造することができる。この導体に絶縁層を形成することで、アルミニウム基電線を製造することができる。
上述の電線の端部において絶縁層を剥がして導体を露出させ、この露出部分を上述した本発明端子金具の導体接続部に配置して接続する。例えば、圧着片を具える形態では、底部に導体を配置し、この導体を包むように圧着片を折り曲げ、更に圧縮する。このとき、クリンプハイト:C/Hが所定の大きさ(高さ)となるように圧縮状態を調整する。上記工程により、本発明電線の端末接続構造や、アルミニウム基電線の端部に本発明端子金具が取り付けられた端子付き電線を製造することができる。
種々の組成のアルミニウム合金を用意し、前処理⇒陽極酸化処理⇒Sn層の形成という手順で、母材上に陽極酸化層とSn層とを順に具える試料を作製し、断面観察を行った。
上記試験結果から、アルミニウム合金からなる端子金具において、その表面の少なくとも一部に陽極酸化層を具え、更にその上にSn層を具えることで、Sn層が剥離し難く、長期に亘り、母材表面にSn層を存在させることができるといえる。そして、陽極酸化層を貫通して、Sn層から母材に連続するようにSn成分が存在する(導通部を具える)ことで、導通をとることができるといえる。また、このような導通部が存在する陽極酸化層は、溶体化処理及び時効処理を施したアルミニウム合金からなる素材を用いることで形成できるといえる。
30 Sn層 31 導通部 32 突部 S 試験板 T 粘着テープ
100F メス型端子金具 100M オス型端子金具 110 ワイヤバレル部
120 インシュレーションバレル部 130 メス型嵌合部 131 箱部
132,133 弾性片 140 オス型嵌合部 200 電線 210 導体 220 絶縁層
Claims (6)
- 電線の導体が接続される導体接続部と、前記導体接続部に延設され、別の接続対象と電気的に接続される電気的接続部とを具えるアルミニウム基端子金具であって、
当該アルミニウム基端子金具を構成する母材は、アルミニウム合金であり、
前記電気的接続部における接点領域に、
前記母材に形成された陽極酸化層と、
前記陽極酸化層に接して形成され、当該接点領域の最表面を構成するSn層と、
Snから構成され、前記陽極酸化層を貫通して前記Sn層から前記母材に連続する導通部と、
Snから構成され、前記導通部に連続し、前記母材と前記陽極酸化層との境界から母材側に突出した突部とを具え、
前記突部において、前記境界に沿った最大長さが1μm以上5μm以下であるアルミニウム基端子金具。
但し、前記電線の導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成されたものとする。 - 前記母材を構成するアルミニウム合金は、2000系合金、6000系合金、及び7000系合金から選択される1種である請求項1に記載のアルミニウム基端子金具。
- 前記陽極酸化層の厚さが0.3μm以上10μm以下である請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム基端子金具。
- 前記Sn層の厚さが0.3μm以上2μm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム基端子金具。
- 前記電気的接続部は、別の端子金具に嵌合して電気的に接続される嵌合部であり、
前記接点領域は、前記嵌合部の一部である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム基端子金具。 - 導体を具える電線と、前記導体の端部に取り付けられた端子金具とを具える電線の端末接続構造であって、
前記導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成され、
前記端子金具は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム基端子金具である電線の端末接続構造。
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