一般的な射出成形機の射出装置は、その外周面に電気ヒータ等の加熱手段を配置させ、一方の端部に射出ノズルを、他方の端部に材料供給ホッパ等の材料供給部を備える加熱シリンダと、その加熱シリンダ内に、その長手軸中心に回転可能に、且つ、該軸方向に移動可能に配置されるスクリュとで構成される。また、スクリュの外周面には、加熱シリンダの内周面とスクリュの外周面との間に形成される樹脂流路において、スクリュを回転させることにより、材料供給部から供給された樹脂ペレット等の樹脂材料を射出ノズル側に流動させるフライトが連続して形成される。フライトの形状やサイズは、材料供給部側から射出ノズル側へ、樹脂材料の供給(流動)、圧縮、計量を行えるようそれぞれの仕様に設計されている。説明を簡単にするために、加熱シリンダの射出ノズル側を射出装置の”前方”、材料供給部側を”後方”とし、スクリュや樹脂材料等のそれぞれの方向への移動を”前進”及び”後退”とする。
更に、スクリュの前方端部にはスクリュヘッドが配置され、スクリュヘッドとスクリュとの間には、逆止リング(チェックリングとも呼称される)が、スクリュの長手軸方向に所定量移動可能に配置される。材料供給部から供給された樹脂ペレット等の樹脂材料は、スクリュが回転され、フライトにより前方に流動される間に、加熱シリンダの外周面に配置された加熱手段の熱エネルギに加えて、フライトの回転力によるせん断熱の熱エネルギにより溶融状態となる(可塑化工程)。そして、溶融状態となった樹脂材料(溶融樹脂)は、その流動による樹脂圧力により、逆止リングを前方に移動させ、樹脂流路を開放状態にすると共に、スクリュヘッドの溝部を経由して射出ノズル及びスクリュヘッド間に到達する。この時、射出ノズルは、射出ノズルもしくは、射出ノズルがドッキングしている固定金型の樹脂流入口に配置されている樹脂遮断開放切換弁等により閉じられた状態であるため、射出ノズル及びスクリュヘッド間に到達した溶融樹脂の樹脂圧力はスクリュヘッドにも作用し、スクリュ全体を後退させる。この後退に連動して形成される、加熱シリンダ内の射出ノズル及びスクリュヘッド間の空間に同溶融樹脂が連続して貯留される。この空間が拡張され、所定量の溶融樹脂が貯留されるまで、スクリュの回転とスクリュ全体の後退とが継続され、逆止リングの開放状態が維持される(計量工程)。この溶融樹脂が貯留される空間を貯留部と呼称する。
射出ノズル及びスクリュヘッド間の貯留部に所定量の溶融樹脂が貯留された後、スクリュの回転を停止させ、スクリュを所定速度及び所定力で前進させると、この溶融樹脂は、後方の樹脂流路へ逆流する溶融樹脂の樹脂圧力により逆止リングを後方へ移動させ、加熱シリンダの内周面とスクリュの外周面との間に形成される樹脂流路及びスクリュヘッド間をシールして、後方の樹脂流路への溶融樹脂の逆流を防止すると共に、射出ノズルを介して、射出ノズルをドッキングさせた固定金型及び可動金型内に形成される金型キャビティに射出充填される(射出充填工程)。
このような射出装置はインラインスクリュ式射出装置と呼称される。インラインスクリュ式射出装置は、先に説明したように、計量工程の開始時から完了時まで、スクリュ前方に貯留される溶融樹脂量の増大に連動してスクリュが後退する一方、材料供給部の位置は変わらないため、樹脂を可塑化(溶融)させる樹脂流路の距離(可塑化流動長)が、計量工程の開始時から完了時まで、スクリュの後退量に比例して短くなる。そのため、計量工程が完了に近づくにつれて、可塑化流動長の短縮化が顕著となり、射出装置の可塑化能力の低下や、樹脂材料の可塑化状態のばらつき等を生じるという問題が指摘されている。
また、インラインスクリュ式射出装置においては、加熱シリンダ後方の材料供給部から供給された樹脂材料を、加熱シリンダの内周面とスクリュの外周面との間に形成される樹脂流路において、フライトによりスクリュ前方に流動させる間に可塑化(溶融)させるため、射出装置に所定の可塑化能力を発揮させるには、所定の可塑化流動長を確保できる全長を有するスクリュが必要となる。更に、そのスクリュを加熱シリンダ内で長手軸方向に移動させるため、その移動ストローク(射出ストローク)及びその移動機構の配置を含め、射出装置の全長が長くなるという問題も指摘されている。
このようなインラインスクリュ式射出装置の問題を解決するために、特許文献1や特許文献2や特許文献3のような射出装置が提案されている。
特許文献1には、ホッパ(材料供給部)を介して熱可塑性材料(樹脂材料)が供給されるバレル(加熱シリンダ)と、前記バレル内に配設され外径面が前記バレル内径面と間隔(樹脂流路)を有する中空の回転体であり、この回転体の外径面上に形成された螺旋状の外溝(フライト)と、前記回転体の先端部に設けられたメルト注出用の開口端(射出ノズル)と、前記回転体に形成され前記熱可塑性材料を内部に導く通過穴とを有する外スクリュと、前記外スクリュ内に配設され外径面が前記外スクリュ内径面と間隔(樹脂流路)を有する回転体であり、この回転体の外径面上に形成された螺旋状の内溝(フライト)を有し、前記外スクリュに対して回転軸方向に相対移動可能な内スクリュと、前記バレル内に供給される材料を加熱するための前記バレルの外側面に配設された熱交換手段(加熱手段)と、前記外スクリュの回転駆動用の駆動装置とを有する熱可塑化装置(射出装置)が開示されている。
すなわち、特許文献1の熱可塑化装置(射出装置)は、インラインスクリュ式射出装置のスクリュを、外スクリュと、同外スクリュ内に配置される内スクリュとの二重スクリュ構造とし、通過穴を介して、外スクリュの樹脂流路から内スクリュの樹脂流路へと、スクリュ全長内でそれぞれのスクリュの樹脂流路を折り返して連続させている。この樹脂流路の折り返しにより、所定の可塑化流動長を確保しても、スクリュ長を短くでき、熱可塑化装置(射出装置)をコンパクトに形成することができるとしている。
特許文献2には、スクリュを回転自在に挿入したバレル(加熱シリンダ:可塑化工程専用)を複数個平行に配置するとともに、最初のバレルの材料供給口から投入された材料(樹脂材料)が材料流出口(樹脂流出口)から他のバレルの材料供給口(樹脂流入口)に導入されるように成した可塑化装置と、先端に溶融樹脂射出用ノズル(射出ノズル)を有し、前記可塑化装置から供給された溶融樹脂を計量する射出バレル(加熱シリンダ:計量工程及び射出充填工程専用)と、射出バレル内を進退し、前記射出バレル内に計量された溶融樹脂を射出するプランジャと、前記プランジャを進退させる駆動装置とを有する射出成形機の射出化装置が開示されている。
特許文献2においては、可塑化装置と射出バレル及びプランジャ等を組み合わせた射出化装置が、射出装置に相当する。この特許文献2の射出装置は、樹脂流路の折り返しにより、所定の可塑化流動長を確保しても、スクリュ及び射出装置の全長を短くすることができる点は、特許文献1と同じである。しかしながら、その樹脂流路の折り返しにおいて、二重スクリュ構造ではなく、単純に、スクリュを回転自在に挿入した加熱シリンダを複数個平行に配置して、それぞれの樹脂流出口と樹脂流入口とを連通させることにより、それぞれの加熱シリンダのスクリュの樹脂流路を折り返して連続させる点が相違する。更に、特許文献2の射出化装置においては、計量工程及び射出充填工程を、バレル内のスクリュではなく、スクリュとは別に設けられ、射出バレル内を進退するプランジャに行わせる点と、可塑化工程を、バレル内のスクリュのみに行わせる点も特許文献1と相違する。
特許文献3には、1個の溶融樹脂射出用ノズル(射出ノズル)を有する射出バレル(加熱シリンダ/計量工程及び射出充填工程専用)内を進退し、溶融樹脂を射出、計量するプランジャと、前記プランジャを進退させる駆動装置と、前記射出バレルの周りに複数個設け、樹脂材料供給口にホッパ(材料供給部)を夫々備えた第1加熱バレル(加熱シリンダ/可塑化工程専用)と、前記第1加熱バレル内に回転自在に夫々挿入されたスクリュと、前記スクリュを回転駆動するための回転駆動装置と、前記回転駆動装置の動力を各スクリュへ伝達する動力伝達装置とを有する射出成形機の射出装置が開示されている。この射出装置は、溶融樹脂を計量しておくプランジャ前方の射出バレル前室(貯留部)と前記複数の加熱バレルのスクリュ前方の前室の間に夫々開閉弁を設けたことを特徴の一つとしている。
特許文献3の射出装置は、特許文献1及び特許文献2のように、樹脂流路の折り返しによりスクリュ及び射出装置の全長を短くするものではなく、スクリュに射出充填工程を行わせず、可塑化工程のみを行わせることで、スクリュの長手軸方向の移動を不要とし、スクリュの全長内に、その長手軸方向の移動量(射出ストローク)及び、それを進退させる駆動装置を含めて配置されるプランジャに、計量工程及び射出充填工程を行わせることにより、射出装置の全長を短くするものである。従って、この射出装置は、特許文献1及び特許文献2のように、その全長を大幅に短くすることができるものではない。しかしながら、このプランジャを備えた射出バレルに、可塑化させた溶融樹脂を供給する第1加熱バレルを複数個配置させ、これら各第1加熱バレルのスクリュの樹脂流路と、プランジャ前方に形成される貯留部との間の通路(連絡樹脂流路)に開閉弁を設けることにより、複数の第1加熱バレルにおいて、複数種類の樹脂材料を可塑化させ、開閉弁の切り替えで任意の樹脂材料をプランジャ前方の貯留部に供給することができる。そして、この構成により、特許文献1及び特許文献2にはない、材料替え及び色替えが容易になるという別の効果を奏するとしている。また、同構成は、容量の多い成形品を可塑化するのにも便利、すなわち、複数の第1加熱バレルにおいて、単一種類の樹脂材料を可塑化させることにより、高可塑化能力も得られるとしている。
特許文献1の熱可塑化装置(射出装置)においては、スクリュが二重構造である点、及び、射出充填工程において、内スクリュのみをその長手軸方向に移動させる点において、スクリュの構造が複雑になるという問題がある。また、その構造上、外スクリュの熱交換手段(加熱手段)や回転駆動装置で、内スクリュの樹脂流路における樹脂材料の温度制御や、内スクリュの回転速度制御を直接行うことができない。従って、内スクリュのこれらの制御を外スクリュと独立して行う場合、内スクリュ専用の熱交換手段(加熱手段)や回転駆動装置が必要となるため、スクリュの構造は更に複雑になり、この問題が顕著化することは言うまでもない。
一方、特許文献2の射出化装置(射出装置)においては、樹脂流路の折り返しが、二重スクリュ構造によるものではなく、単純に、スクリュを回転自在に挿入した加熱シリンダを、投入された樹脂材料が樹脂流出口から他の加熱シリンダの樹脂流入口に導入されるよう、各加熱シリンダを連結させ、それぞれの樹脂流路を折り返して連続させたものであるため、スクリュ構造を複雑にすることなく、その全長と射出装置の全長とを短くすることができる。しかしながら、計量工程及び射出充填工程をプランジャに行わせるため、プランジャの1つ上流側のスクリュの樹脂流路と、プランジャ前方に形成される貯留部との間に、射出充填工程時における、溶融樹脂の樹脂流路への逆流を防止する逆止弁機構が必要となる。
ここで、特許文献2の射出装置のように、樹脂材料の可塑化工程と、可塑化された溶融樹脂の計量工程及び射出充填工程とを、それぞれ、スクリュとプランジャという別構成で行わせる射出装置として、所謂、プリプラ式射出装置が知られている(例えば、特開平10−249897等)。このようなプリプラ式射出装置においては、スクリュ及びプランジャ間の射出充填時における溶融樹脂のスクリュ側への逆流を防止する逆止弁機構が、複雑化、大型化、コスト高になるという問題が指摘されており、同様の構成を有する特許文献2の射出装置においても、スクリュ及びプランジャ間の逆止弁機構に同様の問題があると考えられる。しかしながら、特許文献2の射出装置においては、この逆止弁機構が主要な構成要件であるにもかかわらず、具体的な構成やその詳細どころか、この逆止弁機構の有無・要否についてさえ、全く記載されていない。
更に、特許文献3の射出装置も、樹脂材料の可塑化工程と、可塑化された溶融樹脂の計量工程及び射出充填工程とを、それぞれ、スクリュとプランジャという別構成で行わせるため、スクリュ及びプランジャ間に開閉弁(逆止弁機構)を設けている。そのため、特許文献2の射出装置と同様に、この逆止切機構の問題があると考えられるが、特許文献2の射出装置においては、この逆止弁機構を連絡樹脂流路に夫々設けている記載はあるものの、具体的な構成等、その詳細については全く記載されていない。特に、特許文献3の射出装置においては、この切替弁を複数設ける構成のため、この問題が顕著化せざるを得ない。
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、構造が複雑にならず、複雑な逆止弁機構が不要で、その全長を短くすることができる、射出成形機の射出装置を提供することを目的としている。
発明の上記目的は、いずれか一方の端部外周面上方に樹脂流入口を、他方の端部外周面下方に樹脂流出口を有する第1加熱シリンダと、
いずれか一方の端部外周面上方に樹脂流入口を、他方の端部端面に射出ノズルを有する第2加熱シリンダと、
前記第1加熱シリンダ内に、その両端が支持されると共に、その長手軸中心に回転可能に配置される第1スクリュと、
前記第1加熱シリンダの内周面と前記第1スクリュの外周面との間に形成される第1樹脂流路と、
前記第2加熱シリンダ内に、その長手軸中心に回転可能に配置され、且つ、その長手方向にも移動可能に構成されると共に、前記射出ノズル側に逆止リングを有する第2スクリュと、
前記第2加熱シリンダの内周面と前記第2スクリュの外周面との間に形成される第2樹脂流路と、
を備え、
前記第1加熱シリンダの樹脂流出口と、前記第2加熱シリンダの前記樹脂流入口とを、連絡樹脂流路により連通させ、前記連絡樹脂流路において、前記第1樹脂流路と前記第2樹脂流路とを折り返して連続させると共に、
上流側の前記第1加熱シリンダの前記樹脂流入部が材料供給部として形成され、
下流側の前記第2加熱シリンダが上流側の前記第1加熱シリンダより、前記射出ノズル側に突出するように配置されている射出成形機用の射出装置によって達成される。
すなわち、第1加熱シリンダの樹脂流出口と、第2加熱シリンダの樹脂流入口とを、連絡樹脂流路により連通させ、スクリュ全長内でそれぞれのスクリュの樹脂流路を折り返して連続させる構成のため、射出装置の構造が複雑にならず、スクリュ及び射出装置の全長を短くすることができる。また、第1加熱シリンダ内の第1スクリュにおいては、その長手軸方向の移動はなく、樹脂材料を可塑化させる回転動作のみ行われる。従って、第1加熱シリンダの樹脂流入口と樹脂流出口とをその外周面に設ければ、第1スクリュ両端を第1加熱シリンダに支持させることができ、スクリュの片持ち支持構造に対して、第1スクリュの支持構造を簡素化できると共に、第1スクリュの回転動作を正確に、且つ、安定させることができる。
また、第1加熱シリンダ内の第1スクリュの第1樹脂流路において可塑化された溶融樹脂が、特許文献2や特許文献3のように、計量工程及び射出充填工程を行うプランジャの前方ではなく、下流の第2加熱シリンダの後方の樹脂流入口へ供給され、その第2樹脂流路を前方に流動されて、同第2加熱シリンダ内の第2スクリュ前方において計量工程及び射出充填工程が行われると共に、下流の第2加熱シリンダ内の第2スクリュ前方に配置された逆止リングにより、射出充填工程時における、同第2スクリュ後方の第2樹脂流路への溶融樹脂の逆流が防止される。そのため、下流の第2加熱シリンダ後方の樹脂流入口とその上流の第1加熱シリンダの樹脂流出口との間の連絡樹脂流路に、切替弁等の複雑な逆止弁機構は不要となる。
更に、特許文献2や特許文献3のようなプランジャではなく、下流の第2加熱シリンダ内の第2スクリュをその長手軸方向に前進させて、同第2スクリュ前方の貯留部に貯留された溶融樹脂を同第2加熱シリンダ前方の射出ノズルから射出する(射出充填工程)ため、射出充填工程時における同スクリュ後方への溶融樹脂の逆流は、インラインスクリュ式射出装置において、そのスクリュ前方(スクリュヘッド及びスクリュ前方端部間)に備えられる一般的な逆止リングで防止することができる。また更に、第1加熱シリンダ及び第2加熱シリンダの配置により、射出装置の全高や全幅が大きくなっても、射出ノズルを有する第2加熱シリンダが第1加熱シリンダより射出ノズル側に突出するように配置されていれば、固定盤の背面の凹部から、射出装置の第2加熱シリンダの射出ノズルを固定金型に容易にドッキングさせることができる。
次に、本発明に係る射出成形機の射出装置においては、前記第1加熱シリンダが複数個配置され、上流側の前記第1加熱シリンダの前記材料流出口と、下流側の前記第1加熱シリンダの前記材料流入口とを、前記連絡樹脂流路により連通させ、前記連絡樹脂流路において、複数の前記第1樹脂流路を折り返して連続させても良い。
つまり、上下に配置させた第1加熱シリンダ15と第2加熱シリンダ25との間に、更に、第1加熱シリンダを配置させ、上流側の第1加熱シリンダの材料流出口と、下流側の第1加熱シリンダの材料流入口とを、連絡樹脂流路により連通させ、連絡樹脂流路において、これら第1樹脂流路を折り返して連続させた第1スクリュ16の第1樹脂流路10で可塑化工程を完了させるものである。このように、折り返して連続させた第1樹脂流路12で可塑化工程行わせるため、それぞれの第1樹脂流路の可塑化流動長、すなわち、それぞれの第1スクリュ全長を更に短く、あるいは、同じスクリュ全長で、より長い可塑化流動長を確保することができる。
また、本発明に係る射出成形機の射出装置においては、前記第2加熱シリンダの上方に、前記第1加熱シリンダが配置されることが好ましい。
このように、複数の加熱シリンダが鉛直方向に重ねて配置されることにより、大気を介して上方に移動する、各加熱シリンダから外部へ放出される熱エネルギが、それぞれの上方の加熱シリンダを加熱させるため、上方に配置された加熱シリンダの加熱効率を向上させることができる。
更に、本発明に係る射出成形機の射出装置においては、少なくとも2つの前記第1スクリュの回転駆動源を共有させても良い。
第1加熱シリンダ内の第1スクリュにおいては、その長手軸方向の移動はなく、樹脂材料を可塑化させる回転動作のみ行われるため、第1加熱シリンダが複数個配置される場合、1つの回転駆動源の回転力を、ギア、チェーン及びベルト等の公知の伝達手段で適宜、任意の複数の第1スクリュに伝達させ、共有させることが容易である。これにより、回転駆動源の個数を少なくし、射出装置の構造を簡素化することができる。
一方、本発明に係る射出成形機の射出装置においては、前記材料供給部を有する、少なくとも2つの前記第1加熱シリンダの樹脂流出口と、1つの前記第2加熱シリンダの少なくとも2つの樹脂流入口とを連通させる形態であっても良い。
すなわち、本発明に係る射出成形機の射出装置は、複数の第1加熱シリンダの第1スクリュの第1樹脂流路を、1つの第2加熱シリンダの第2スクリュの第2樹脂流路に折り返して連続させる形態とすることも可能である。これにより、複数の上流側の第1スクリュの第1樹脂流路で、それぞれ異なる種類や色の樹脂材料の可塑化工程を行わせ、任意の可塑化された溶融樹脂のみ下流側の第2スクリュの第2樹脂流路に供給させ、計量工程及び射出充填工程を行わせれば、材料替え性や色替え性にすぐれた射出装置となる。また、複数の上流側の第1スクリュの第1樹脂流路で、同じ色や種類の樹脂材料の可塑化工程を行わせれば、大量の樹脂材料の可塑化が可能な、高可塑化能力を有する射出装置となる。どちらの形態においても、最下流の第2加熱シリンダ後方の樹脂流入口とその1つ上流の第1加熱シリンダの樹脂流出口との連通部分に、切替弁等の複雑な逆止弁機構が不要なことは先に説明したとおりである。
本発明に係る射出成形機の射出装置は、いずれか一方の端部外周面上方に樹脂流入口を、他方の端部外周面下方に樹脂流出口を有する第1加熱シリンダと、
いずれか一方の端部外周面上方に樹脂流入口を、他方の端部端面に射出ノズルを有する第2加熱シリンダと、
前記第1加熱シリンダ内に、その両端が支持されると共に、その長手軸中心に回転可能に配置される第1スクリュと、
前記第1加熱シリンダの内周面と前記第1スクリュの外周面との間に形成される第1樹脂流路と、
前記第2加熱シリンダ内に、その長手軸中心に回転可能に配置され、且つ、その長手方向にも移動可能に構成されると共に、前記射出ノズル側に逆止リングを有する第2スクリュと、
前記第2加熱シリンダの内周面と前記第2スクリュの外周面との間に形成される第2樹脂流路と、
を備え、
前記第1加熱シリンダの樹脂流出口と、前記第2加熱シリンダの前記樹脂流入口とを、連絡樹脂流路により連通させ、前記連絡樹脂流路において、前記第1樹脂流路と前記第2樹脂流路とを折り返して連続させると共に、
上流側の前記第1加熱シリンダの前記樹脂流入部が材料供給部として形成され、
下流側の前記第2加熱シリンダが上流側の前記第1加熱シリンダより、前記射出ノズル側に突出するように配置されているため、構造が複雑にならず、複雑な逆止弁機構が不要で、その全長を短くすることができる。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1乃至図3は、説明を容易にするために、射出装置以外の射出成形機や、その固定盤や固定金型及び可動金型等の構成は図示していない。また、同様の理由で、断面であっても、後述する加熱手段等には断面であることを表すハッチングを割愛した。
図1を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る射出成形機の射出装置を示す概略断面図である。
最初に、本発明の実施例1に係る射出成形機の射出装置の基本構成について説明する。図示しない射出成形機の型締装置の固定盤の背面側に、固定盤を介して、固定盤の正面側(可動盤と対向する面)に取り付けられた固定金型にドッキング可能に配置された射出装置1は、射出充填工程が完了した状態である。射出装置1の上方に位置するのは、図示しない固定盤側(図面左側)の端部外周面上方に材料供給部14を、その他方(図面右側)の端部外周面下方に樹脂流出口13を有する第1加熱シリンダ15である。また、その下方には、固定盤側(図面左側)の端部端面中央に射出ノズル23を、その他方(図面右側)の端部外周面上方に樹脂流入口24を有する第2加熱シリンダ25があり、上方の第1加熱シリンダ15の樹脂流出口13と、その下方の第2加熱シリンダ25の樹脂流入口24とが、連絡樹脂流路21により連通されている。
そして、第1加熱シリンダ15は、その内部に、その長手軸中心に回転可能に配置される第1スクリュ16と、第1加熱シリンダ15の内周面と第1スクリュ16の外周面との間に形成される第1樹脂流路10と、を備えている。また、第2加熱シリンダ25は、その内部に、その長手軸中心に回転可能に配置され、且つ、その長手軸方向にも移動可能に構成されると共に、射出ノズル23側に逆止リング28を有する第2スクリュ26と、第2加熱シリンダ25の内周面と第2スクリュ26の外周面との間に形成される第2樹脂流路11と、を備えている。これらの構成により、射出装置1の樹脂流路は、上流側の第1樹脂流路10と下流側の第2樹脂流路11とを、それぞれの樹脂流路が連通されている連絡樹脂流路21において折り返して連続させている。ここで、説明を簡単にするために、第2加熱シリンダ25の射出ノズル23側(図面左側)を射出装置1の”前方”、その他方(図面右側)を射出装置1の”後方”とし、第2スクリュ26や樹脂材料等のそれぞれの方向への移動を”前進”及び”後退”とする。
次に、個々の基本構成の詳細について説明する。第1加熱シリンダ15及び第2加熱シリンダ25のそれぞれの外周面には、電気ヒータ等の第1加熱手段15a及び第2加熱手段25aが巻き付けられるように配置されている。これら加熱シリンダの外周面に配置される加熱手段の熱エネルギは、それぞれの加熱シリンダを介して、各樹脂流路中の樹脂材料の可塑化や可塑化状態の維持に消費される。しかしながら、その熱エネルギを100%の効率で樹脂材料の可塑化や可塑化状態の維持に消費させることは困難であり、熱エネルギの一部は、各スクリュや各加熱シリンダ等の、射出装置を構成する各部位をも加熱させる。そして、加熱された各部位から外部へ放出される熱エネルギの大部分はその性質上、大気を介して上方に移動する。そのため、射出装置1のように、2つの加熱シリンダを上方に積み上げるように配置させることにより、下方の加熱シリンダやスクリュから放出される熱エネルギが、その上方の加熱シリンダやスクリュに伝播し、これらを加熱させる。その結果、上方の加熱シリンダの加熱手段による熱エネルギは、下方の加熱シリンダの加熱手段の熱エネルギよりも、より多くの割合で樹脂流路中の樹脂材料の可塑化や可塑化状態の維持に消費され、上方の加熱シリンダの樹脂流路中の樹脂材料の加熱効率を向上させることができる。その結果、上方の加熱シリンダの加熱手段の出力を抑え、消費電力を低減させたり、同じ消費電力でも、可塑化能力を向上させたりすることができる。
また、第1加熱シリンダ15の前方外周面上方の材料供給部14は、上方が大きく開放可能な材料供給ホッパであることが一般的であり、同ホッパに配置されたレベルセンサ等によって同ホッパ内の樹脂材料量をモニタしながら、外部からバッチで樹脂材料が供給されることが多い。しかしながら、使用する樹脂材料の種類等、必要に応じて、材料供給装置がその上流に取り付けられたり、材料供給パイプ等の材料供給手段が直接、連結されたりする場合もある。
そして、第1スクリュ16の外周面には、第1樹脂流路10において、第1スクリュ16を回転させることにより、材料供給部14から供給された樹脂ペレット等の樹脂材料を後方の樹脂流出口13に流動させる第1フライト16aが連続して形成される。同様に、第2スクリュ26の外周面には、第2樹脂流路11において、第2スクリュ26を回転させることにより、樹脂流入口24から供給された樹脂材料を前方の射出ノズル23に流動させる第2フライト26aが連続して形成される。これら第1フライト16aや第2フライト26aの形状やサイズは、材料供給部14から供給された樹脂材料が、樹脂流出口13に到達するまでの第1樹脂流路10と、樹脂流入口24から供給された溶融樹脂が、逆止リング28に到達するまでの第2樹脂流路11において、計量に適した可塑化状態(溶融状態)となるような仕様、あるいは、可塑化状態の樹脂材料が射出充填に適した樹脂圧力となるように圧縮するような仕様に設計されている。
これらフライトの仕様は、第1樹脂流路10において完全に可塑化工程を完了させ、第2樹脂流路11において、計量と射出充填のために適切な樹脂圧力となるよう溶融樹脂を圧縮させる仕様としても良いし、可塑化工程を第1樹脂流路10だけでなく、第2樹脂流路11の一部においても行わせる仕様としても良く、所望する射出装置の仕様に合わせて適宜設計されれば良い。また、電動モータ等の第1スクリュ回転駆動手段16b及び第2スクリュ回転駆動手段26bにより、第1スクリュ16及び第2スクリュ26の、それぞれが支持されている加熱シリンダの後方から突出させた後方部分にそれぞれ配置された、ギアやリングギア、チェーン及びベルト等の第1回転駆動伝達機構16c及び第2回転駆動伝達機構26cを介して、第1スクリュ16及び第2スクリュ26を任意の速度、任意の回転力で回転させることができる。ここで、第1加熱シリンダ15に配置された第1スクリュ16は、射出充填工程には使用されないため、その長手軸方向に移動させる必要はない。そのため、本実施例1のように、材料供給部14と樹脂流出口13とをその外周面に設け、第1スクリュ16の両端を第1加熱シリンダ15に支持させる形態が好ましい。これにより、一般的なインラインスクリュ式射出装置のスクリュの片持ち支持構造に対して、スクリュの支持構造を簡素化できると共に、スクリュの回転動作を正確に、且つ、安定させることができる。
一方、第2加熱シリンダ25に配置された第2スクリュ26は、その長手軸中心に回転可能に配置されるだけでなく、油圧シリンダや、電動モータ及びボールねじ等を組み合わせた第2スクリュ駆動手段26dにより、第2スクリュ26の長手軸方向にも、任意の速度、任意の移動力で移動可能に構成されている。本実施例1においては、第2スクリュ駆動手段26dは、電動モータ26e及びボールネジ26fを組み合わせた構成を前提にしている。
また、第2スクリュ26の射出ノズル23側に配置された逆止リング28は、先に説明したような、一般的な射出成形機の射出装置のスクリュ前方に配置され、計量工程においては、溶融樹脂の樹脂圧力により樹脂流路(第2樹脂流路11)及び逆止リング(逆止リング28)前方の貯留部(貯留部20)間を開放し、射出充填工程においては、計量工程時とは逆向きに作用する溶融樹脂の樹脂圧力により樹脂流路(第2樹脂流路11)及び逆止リング(逆止リング28)前方の貯留部(貯留部20)間をシールする一般的な構成であっても良い。更に、それぞれの工程における逆止リングの開放及びシール動作を、スクリュの回転動作を利用して、機械的に且つ強制的に行うことができる構成が開示されており(例えば、本出願人が出願人である、特開平7−214619や特開2008−254359等)、このような逆止リングであっても良く、公知の逆止リングが採用されれば良い。
引き続き、図1を参照しながら、本発明の実施例1に係る射出成形機の射出装置を使用する射出成形方法を説明する。ここで、図1は、第2スクリュ26が射出充填完了位置に到達して射出充填工程が完了した状態を示したもので、以下の説明の理解を容易にするために参照するものであるが、それぞれの説明する状態を逐次示すものではない。また、図中の矢印は、射出充填工程の完了とは直接関係なく、以下の説明の理解を容易にするための、樹脂材料や各構成要素の一般的な移動、回転、圧力等の作用方向を示すものである。
射出充填工程が完了した後、第1スクリュ回転駆動手段16b及び第1回転駆動伝達機構16cにより第1スクリュ16を回転させると、樹脂供給部14から供給された樹脂材料は、第1フライト16aにより第1樹脂流路10において後方に流動され、第1加熱シリンダ15の後方外周面下方の樹脂流出口13に到達する間に、第1加熱手段15a及び第1フライト16aの回転力によるせん断熱の熱エネルギにより溶融状態となる(可塑化工程)。本実施例1においては、この第1樹脂流路10において、供給された樹脂材料の可塑化を完了させるものとするが、先に説明したように、下流の第2樹脂流路11の一部においても、可塑化工程を継続させても良い。このように、第1スクリュ16の第1樹脂流路10を可塑化工程専用とすることにより、所定の可塑化流動長を確保しても、一般的なインラインスクリュ式射出装置の一本物のスクリュに対して、第1スクリュ16の全長を大幅に短くすることができる。
次に、第1加熱シリンダ15の後方外周面下方の樹脂流出口13と、その下方の第2加熱シリンダ25の後方外周面上方の樹脂流入口24とが連通された連絡樹脂流路21を経由して、樹脂流出口13から、樹脂流入口24へ溶融樹脂が供給される。下方の第2加熱シリンダ25においては、第2スクリュ回転駆動手段26b及び第2回転駆動伝達機構26cにより第2スクリュ26が、任意の速度、任意の回転力で回転されており、樹脂流入口24から供給された溶融樹脂は、第2フライト26aにより第2樹脂流路11において前方に流動され、第2スクリュ26の、射出ノズル23側に配置された逆止リング28を、その流動による樹脂圧力により前方に移動させ、樹脂流路を開放状態にすると共に、その逆止リング28を介して、射出ノズル23と逆止リング28との間の空間に流動される。この射出ノズル23と逆止リング28との間の、同溶融樹脂が貯留される空間を貯留部20とする。
この時、射出ノズル23は、射出ノズル23もしくは、射出ノズル23がドッキングしている図示しない固定金型の樹脂流入口に配置されている樹脂遮断開放切換弁等により閉じられた状態である。そのため、射出ノズル23と逆止リング28との間の貯留部20に流動された溶融樹脂の樹脂圧力は第2スクリュ26にも作用する。これにより、第2スクリュ26全体が後退方向の力を受け後退を始める。この後退に連動して貯留部20が拡張され、溶融樹脂が連続して貯留される。所定量の溶融樹脂が貯留されるまで、第2スクリュ26の回転動作と後退動作とが継続され、逆止リング28の開放状態が維持される(計量工程)。
この第2スクリュ26の後退動作時、この後退動作に所定の抵抗力(背圧)を作用させるために、第2スクリュ駆動手段26dにより第2スクリュ26へ前進方向の力を作用させても良い。第2スクリュ26の第2フライト26aの適切な設計、そして、第2スクリュ26の回転力及び回転速度と合わせて、このように後退動作への抵抗力を制御することで、貯留部20の溶融樹脂を適切な樹脂圧力に制御しながら貯留させることも可能である。貯留部20に所定量の溶融樹脂が貯留されたことが、第2スクリュ26の図示しない位置検出機能等により確認されれば、第2スクリュ回転駆動手段26b及び第2回転駆動伝達機構26cによる第2スクリュ26の回転動作を停止させ、計量工程の完了となる。
ここで、第2スクリュ26は、その第2樹脂流路11の一部において、樹脂材料の可塑化工程を行わせる仕様であったとしても、その上流に、可塑化工程専用の第1樹脂流路10を形成させる第1スクリュ16が配置されることにより、計量工程及び射出充填工程専用とすることができるため、一般的なインラインスクリュ式射出装置の一本物のスクリュに対して、その全長を大幅に短くすることができる。そのため、一般的なインラインスクリュ式射出装置と同様に、射出充填工程のために、第2スクリュ26をその長手軸方向に移動させる形態であっても、その長手軸方向の移動量(射出ストローク)及び、それを進退させる駆動装置を含め、射出装置の全長を短くすることができる。
このように、第1スクリュ16及び第2スクリュ26の全長を、一般的なインラインスクリュ式射出装置の一本物のスクリュに対して大幅に短くし、それぞれのスクリュの樹脂流路を折り返して連続させることにより、構造が複雑にならず、所定の可塑化流動長を確保しても、射出装置の全長を短くすることができる。
計量工程が完了した後、第2スクリュ駆動手段26d(電動モータ26e及びボールねじ26e)により、第2スクリュ26を任意の速度、任意の移動力で前進させる(射出充填工程)。この時、射出ノズル23は、適切なタイミングで開放されている。また、逆止リング28は、射出充填工程時の、貯留部20の溶融樹脂の第2樹脂流路11への逆流による樹脂圧力により後方へ移動され、貯留部20及び第2樹脂流路11間をシールするため、貯留部20の溶融樹脂は、第2樹脂流路11へ逆流することなく射出ノズル23から射出される。
このように、射出充填工程時における、貯留部20の溶融樹脂の第2樹脂流路11への逆流は、公知の逆止リングにより防止される。また、第1スクリュ16の第1樹脂流路10において可塑化された溶融樹脂は、特許文献2や特許文献3のように、直接、計量工程及び射出充填工程を行う第2スクリュ26の前方に形成される貯留部20に供給・流動されるのではなく、第2加熱シリンダ25の後方の樹脂流入口24へ供給・流動されるため、第1加熱シリンダ15の樹脂流出口13及び第2加熱シリンダ25の樹脂流入口24間の連絡樹脂流路21に、射出充填工程時における溶融樹脂の逆流による樹脂圧力が作用することはない。その結果、連絡樹脂流路21に複雑な逆止弁機構は不要である。
次に、図2を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図2は本発明の実施例2に係る射出成形機の射出装置を示す概略断面図である。
実施例2の射出装置2と、実施例1の射出装置1との基本構成上の相違点は、上下に配置させた第1加熱シリンダ15と第2加熱シリンダ25との間に、更に、その内部に、その長手軸中心に回転可能に配置される第3スクリュ36を備える第3加熱シリンダ35を配置させ、実施例1における樹脂流路の1回の折り返しを2回とし、1回の折り返しを介して連続させた第1スクリュ16の第1樹脂流路10と、第3スクリュ36の第3樹脂流路12とで可塑化工程を完了させる点である。また、もう1つの相違点は、最下流となる、射出ノズル23を有する第2加熱シリンダ25が、その上方に配置される第1加熱シリンダ15及び第3加熱シリンダ35より、射出ノズル23側に突出するように配置されている点である。これら以外の基本構成は実施例1で説明した個々の基本構成と同じため、それらの説明は割愛し、図2において実施例1(図1)と同じ基本構成については同じ符号を付し、実施例1との相違点についてのみ説明する。
最上流に位置する第1加熱シリンダ15及びその内部の第1スクリュ16は実施例1と基本的に同じである。しかしながら、可塑化工程をその第1樹脂流路10と、その下流に位置する第3加熱シリンダ35及びその内部の第3スクリュ36の第3樹脂流路12とを折り返して連続させるため、実施例1に対して、材料供給部14が第1加熱シリンダ15の後方外周面上方に、樹脂流出口13が前方外周面下方にと、前後逆に配置され、材料供給部14から供給させた樹脂材料の第1樹脂流路10における流動方向も前後逆になる。
一方、第1加熱シリンダ15の下方に配置される第3加熱シリンダ35は、その内部に、その長手軸中心に回転可能に配置される第3スクリュ36と、第3加熱シリンダ35の内周面と第3スクリュ36の外周面との間に形成される第3樹脂流路12と、を備えている。そして、第3加熱シリンダ35の前方外周面上方に樹脂流入口34を、後方外周面下方に樹脂流出口33を有している。この構成は、基本的に、実施例1における第1加熱シリンダ15の材料供給部14が、樹脂流入口34に置き換えられただけであり、第3加熱シリンダ35の外周面に、電気ヒータ等の第3加熱手段35aが巻き付けられるように配置されている点も、第3加熱シリンダ35内の第3スクリュ36の外周面に、連続して第3フライト36aが形成され、その第3樹脂流路12における樹脂材料が前方の樹脂流入口34から後方の樹脂流出口33に流動される点も、実施例1における第1加熱シリンダ15及び第1スクリュ16と同じである。また、射出装置2においては、3つの加熱シリンダを上方に積み上げるように配置させるため、2つの加熱シリンダを上方に積み上げるように配置させる実施例1の射出装置1よりも、最上流の加熱シリンダ(第1加熱シリンダ15)の第1樹脂流路10中の樹脂材料の加熱効率を更に向上させることができる。
そして、上方の第1加熱シリンダ15の樹脂流出口13と、その下方の第3加熱シリンダ35の樹脂流入口34とを、連絡樹脂流路21aにおいて連通させることにより、上流側の第1樹脂流路10と下流側の第3樹脂流路12とを折り返して連続させている。本実施例2では、実施例1において、第1樹脂流路10のみで行わせていた樹脂材料の可塑化工程を、第1樹脂流路10と、折り返して連続させた第3樹脂流路12とで行わせるため、それぞれの樹脂流路の可塑化流動長、すなわち、それぞれのスクリュ全長を更に短く、あるいは、実施例1の第1スクリュ16と同じスクリュ全長で、より長い可塑化流動長を確保することができる。このような射出装置の形態は、その全長を更に短くする必要がある射出装置や、可塑化流動長を多く必要とする、可塑化させにくい樹脂材料を使用する射出装置に好適である。また、実施例1の射出装置に対して、その全長を長くすることなく、より長い可塑化流動長を確保することができるので、最下流側の第2加熱シリンダ25内の、第2スクリュ26の第2樹脂流路11の一部に樹脂材料の可塑化工程を行わせる必要はほとんどなくなり、第2スクリュ26の全長も確実に短くすることができ、射出装置2の全長の短縮化に寄与する。
第3加熱シリンダ35の下方に配置され、最下流に位置する第2加熱シリンダ25及び第2スクリュ26は、上方に配置される加熱シリンダが第3加熱シリンダ35であることを除けば、実施例1と基本的に相違はない。上方の第3加熱シリンダ35の樹脂流出口33と、第2加熱シリンダ25の樹脂流入口24とを、連絡樹脂流路21bにおいて連通させることにより、上流側の第3樹脂流路12と下流側の第2樹脂流路11とを再び折り返して連続させている。供給された樹脂材料は、上流側の第1樹脂流路10及び第3樹脂流路12において完全に可塑化されているため、第3加熱シリンダ35の樹脂流出口33から、第2加熱シリンダ25の樹脂流入口24に溶融樹脂が供給され、第2加熱シリンダ25の第2スクリュ26において計量工程及び射出充填工程が行われる。これら、第2加熱シリンダ25の第2スクリュ26において行われる計量工程及び射出充填工程は実施例1と基本的に相違はないため、説明は割愛する。
ここで、実施例2の射出装置2の第1スクリュ16及び第3スクリュ26は、実施例1の射出装置1の第1スクリュ15と同様に、射出充填工程には使用されないため、それぞれのスクリュの両端をそれぞれの加熱シリンダに支持させる形態が好ましく、これにより、一般的なインラインスクリュ式射出装置のスクリュの片持ち支持構造に対して、スクリュの支持構造を簡素化できると共に、スクリュの回転動作を正確に、且つ、安定させることができることは言うまでもない。
更に、実施例1の射出装置1の第1スクリュ16に対して、実施例2の射出装置2の第1スクリュ16及び第3スクリュ26は、それぞれの樹脂流路を折り返して連続させて、それぞれのスクリュ全長を短くすることができるため、最下流の、射出ノズル23を有する第2加熱シリンダ25が、その上方に配置される第1加熱シリンダ15及び第3加熱シリンダ35より、射出ノズル23側に突出しても、射出装置2の全長に及ぼす影響は少なく、実施例1の射出装置1の全長と同程度とすることも可能である。実施例2においては、最下流の、射出ノズル23を有する第2加熱シリンダ25を、その上方に配置される第1加熱シリンダ15及び第3加熱シリンダ35より、射出ノズル23側に距離αだけ突出するように配置されているが、このように配置されることにより、3つの加熱シリンダが上方に積み重ねられ、その全高が高くなる射出装置2においても、固定盤の背面の凹部から、射出装置の射出ノズルを固定金型に容易にドッキングさせることができる。更に、この配置は、射出ノズルを有する加熱シリンダに対して、他の加熱シリンダが横方向に配置される場合においても有効であり、射出装置の全幅が大きくなっても、最下流の、射出ノズル23を有する第2加熱シリンダ25が、その横方向に配置される第1加熱シリンダ15及び第3加熱シリンダ35より、射出ノズル23側に突出していれば、固定盤の背面から、射出装置の射出ノズルを固定金型に容易にドッキングさせることができる。
図3を参照しながら本発明の実施例3を説明する。図3は本発明の実施例3に係る射出成形機の射出装置を示す概略断面図等である。図3(a)が射出装置の概略断面図で、図3(b)のY−Y矢視図、図3(b)が図3(a)のX−X矢視図を示す。
実施例3の射出装置3と、実施例1の射出装置1との基本構成上の相違点は、第2加熱シリンダ25の上方に、2つの第1加熱シリンダを横方向に並べて配置させ、2つの第1加熱シリンダのそれぞれの樹脂流出口と、下方の第2加熱シリンダの2つの樹脂流入口とを連通させる点である。これにより、樹脂流路の折り返しは1回であるが、2つの樹脂流路を1つの樹脂流路に折り返して連続させる形態となる。もう1つの相違点は、実施例2の射出装置2と同様に、下流となる、射出ノズル23を有する第2加熱シリンダ25が、その上方に配置される2つの第1加熱シリンダより、射出ノズル23側に突出するように配置されている点である。これら以外の基本構成は実施例1で説明した個々の基本構成と同じため、それらの説明は割愛し、図3において実施例1(図1)及び実施例2(図2)と同じ基本構成については同じ符号を付し、実施例1及び実施例2との相違点についてのみ説明する。
まず、2つの第1加熱シリンダ及び関連する基本構成を区別するために、図3(b)の図面右側の第1加熱シリンダ(図3(a)の図面奥側)及び関連する基本構成に付す符号に「’」(アポストロフィー)を付して区別するものとする。先に説明したように、最上流に位置する2つの第1加熱シリンダ15及び第1加熱シリンダ15’は実施例1の射出装置1の第1加熱シリンダ15と基本的に同じである。また、それぞれの第1樹脂流路10及び第1樹脂流路10’において、供給された樹脂材料の可塑化を完了させるものとする。
第1加熱シリンダ15の材料供給部14から供給された樹脂材料は、第1スクリュ16の第1樹脂流路10において完全に可塑化され、第1加熱シリンダ15の後方外周面下方の樹脂流出口13から、連絡樹脂流路21を経由して、第2加熱シリンダ25の後方外周面上方に設けられた2つの樹脂流入口の、1つの樹脂流入口24から第2スクリュ26の第2樹脂流路11に流動される。
一方、第1加熱シリンダ15’の材料供給部14’から供給された樹脂材料は、第1スクリュ16’の第1樹脂流路10’において完全に可塑化され、第1加熱シリンダ15’の後方外周面下方の樹脂流出口13’から、連絡樹脂流路21’を経由して、第2加熱シリンダ25の後方外周面上方に設けられた2つの樹脂流入口の、もう1つの樹脂流入口24’から第2スクリュ26の第2樹脂流路11に流動される。そして、第2加熱シリンダ25の第2スクリュ26において計量工程及び射出充填工程が行われる。これら、第2加熱シリンダ25の第2スクリュ26において行われる計量工程及び射出充填工程は実施例1と基本的に相違はないため、説明は割愛する。
このように構成される本実施例3の射出装置3において、上流側の第1スクリュ16の第1樹脂流路10と、同じく上流側の第1スクリュ16’の第1樹脂流路10’とで、それぞれ異なる種類や色の樹脂材料の可塑化工程を行わせ、任意の可塑化された溶融樹脂のみ下流側の第2スクリュ26の第2樹脂流路20に供給させ、計量工程及び射出充填工程を行わせれば、材料替え性や色替え性にすぐれた射出装置となる。
具体的には、樹脂Aについて、第1スクリュ16の第1樹脂流路10で可塑化工程を行わせ、第2スクリュ26の第2樹脂流路11で計量工程及び射出充填工程を行わせる成形サイクルを所要回繰り返した後、樹脂Bについて、第1スクリュ16’の第1樹脂流路10’で可塑化工程を行わせ、第2スクリュ26の第2樹脂流路11で、計量工程及び射出充填工程を行わせる成形サイクルに切り換えるものとする。樹脂Bへの切り替え直後の数ショットは、第2スクリュ26の第2樹脂流路11に残っている樹脂Aの溶融樹脂がすべて射出されるまで、樹脂A及び樹脂Bが混合された不良品となるが、第2スクリュ26の第2樹脂流路11の溶融樹脂が、第1樹脂流路10’から供給される樹脂Bの溶融樹脂にすべて置換されれば、樹脂Bへの成形サイクルへの切り替え(樹脂替え)が完了する。
ここで、樹脂Aを使用した成形サイクルの終了直後は、第2加熱シリンダ25の樹脂流入口24の上流側、すなわち、連絡樹脂流路21及び第1樹脂流路10には、可塑化された樹脂Aの溶融樹脂が満たされているため、第1加熱シリンダ15’の第1樹脂流路10’において樹脂Bの可塑化工程が開始されても、可塑化された樹脂Bの溶融樹脂が、第2加熱シリンダ25の樹脂流入口24から第1加熱シリンダ15の樹脂流出口13側に逆流することなく、第2樹脂流路20を前方に流動されるため、連絡樹脂流路21に複雑な逆止弁機構は不要である。同様に、樹脂Bから樹脂Aへの切り替えにおいても、連絡樹脂流路21’に複雑な逆止弁機構は不要である。
そして、樹脂Bの成形サイクル中は、第1加熱シリンダ15の第1加熱手段15aの加熱出力を、第1樹脂流路10の後方においては、可塑化された樹脂Aの溶融状態を維持できる程度に低下させると共に、その前方から中央においては、可塑化されていない樹脂Aの可塑化が進行ぜず、且つ、変質しない温度に保温する程度に低下させるよう、樹脂Aの可塑化状態に応じて、部分的に、加熱劣化を最小限に留めるような加熱制御を行えば、第1加熱シリンダ15において、無駄な熱エネルギを消費させることなく、樹脂Aの品質を劣化させることもなく、次の樹脂Aへの切り替えまでその状態を維持させることができる。
また、2つの上流側の第1スクリュ16の第1樹脂流路10と、第1スクリュ16’の第1樹脂流路10’とで、同じ色や種類の樹脂材料の可塑化工程を行わせれば、大量の樹脂材料の可塑化が可能な、高可塑化能力を有する射出装置となる。この場合においても、第1加熱シリンダの樹脂流出口及び第2加熱シリンダの樹脂流入口間の連絡樹脂流路に複雑な逆止弁機構は不要である。
更に、可塑化工程のみが行われる第1スクリュ16及び第1スクリュ16’については、その長手軸方向の移動はなく、その両端が支持されると共に、樹脂材料を可塑化させる回転動作のみ行われるため、1つの回転駆動源の回転力を、ギア、チェーン及びベルト等の公知の伝達手段で適宜、任意の複数のスクリュに伝達させ、共有させることが容易である。すなわち、図3(b)に示すように、第1スクリュ回転駆動手段16bの回転駆動力を、ギア、チェーン及びベルト等で構成される第1回転駆動伝達機構16c及び第1回転駆動伝達機構16c’により、2つの第1スクリュに伝達させれば、回転駆動源の個数を少なくし、射出装置の構造を簡素化することができる。計量工程及び射出充填工程のため、その長手軸方向にも移動する第2スクリュ26においても、その回転動作を他のスクリュの回転動作を行わせる回転駆動源と共有させることも、伝達駆動機構の工夫により可能ではあるが、射出装置の構造を簡素化する点から、第1スクリュ16及び第1スクリュ16’のように、回転動作のみ行われるスクリュの回転駆動源を共有させることが好ましい。同様の構成は、実施例2の射出装置2の、第1スクリュ16及び第3スクリュ36についても適用できることは言うまでもない。
また、更に、実施例2の射出装置2と同様に、最下流の第2加熱シリンダ25が、他の2つの第1加熱シリンダより、射出ノズル23側に距離αだけ突出するように配置されている。この配置は、固定金型へのドッキングにおいて、全高だけでなく全幅も大きくなる射出装置3に好適である。
実施例1の射出装置1乃至実施例3の射出装置3における射出充填工程の完了後、図示しない射出成形機においては、型締装置の型締動作により、固定金型及び可動金型間に形成された金型キャビティに射出充填された溶融樹脂が冷却固化するまで型締状態が維持される。そして、その冷却固化時間経過後、型締装置により固定金型から可動金型が型開きされ、冷却固化させた樹脂成形品が製品取出手段等により、金型キャビティから金型外へ搬送される。引き続き、型締装置により可動金型が固定金型へ型閉じされ、再び、固定金型及び可動金型間に金型キャビティが形成されて、次の射出充填工程の準備が完了する。この間、射出装置1乃至射出装置3においては、射出充填工程完了後、次の射出充填工程のタイミングに合わせて、可塑化工程及び計量工程を完了させれば良い。
本発明に係る射出成形機の射出装置においては、先に説明した効果とは別に、構造的なメリットも享受できる。すなわち、複数の加熱シリンダ及びスクリュにより、複数の樹脂流路が形成される構成から、各スクリュの用途を絞り込むことができ、一本物のスクリュに対して、より用途に適したフライト仕様の加工が可能になり、スクリュが短いため、その加工性も向上する。また、スクリュのフライトの一部が磨耗等で交換する必要が生じた場合でも、その磨耗した部分のスクリュのみ交換すればよく、スクリュの引き出しスペースも少なくてすむため、スクリュのメンテナンス性も向上する。このように、射出装置を構成する加熱シリンダやスクリュ等の全長の短縮化は、それら各構成部位の加工・製作・組立・メンテナンスにも、非常に大きなメリットがあることは言うまでもない。