JP5927824B2 - リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の他の二次電池に比べて軽量で、高い入出力特性を有することから、近年、電気自動車、ハイブリッド型電気自動車等に用いられる高入出力用電源として注目されている。
リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素が挙げられる。近年の高容量化に伴い、黒鉛の理論的な放電容量である372mAh/gに近い負極材の開発も進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
更なる高容量化のためには、活物質を高密度に充填するか、または電極に対して高負荷(加圧)プレスして電極の体積密度を高くする必要がある。これに関連して例えば、活物質を高密度に充填するために粒度分布を変える試みが行われているが(例えば、特許文献2参照)、高容量化にはまだ不十分であり、さらに高負荷(加圧)プレスして電極の密度を上げることが必要となっている。
特許第4448279号公報 特開2005−340025号公報
しかしながら、電極に対して高負荷(加圧)プレスして電極の密度を上げていくと、電解液の電極への浸透性が低下する場合があった。電極材へのリチウムイオンの挿入・脱離反応は電解液を介しているため、電解液の浸透性の低下は、電池特性の低下を引き起こす場合がある。
本発明は、高密度化が可能で、電解液浸透性に優れるリチウムイオン二次電池用負極材、並びにこれを用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 炭素粒子群を含み、前記炭素粒子群の粒子径分布において小径側から体積累積分布を描き、累積90%となる粒子径D90の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子を第一の炭素粒子とし、累積10%となる粒子径D10の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子を第二の炭素粒子とした場合に、前記第一の炭素粒子の平均破壊強度(PD90)に対する前記第二の炭素粒子の平均破壊強度(PD10)の比率(PD10/PD90)が10以上75以下であり、前記第二の炭素粒子群の材質が非晶質炭素であるリチウムイオン二次電池用負極材。
<2> 前記第一の炭素粒子の平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下であり、前記第二の炭素粒子の平均破壊強度が、1.7MPa以上150MPa以下である、前記<1>に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
<3> 前記炭素粒子群は、4.9×10Pa以上4.9×10Pa以下の圧力による等方加圧処理物である前記<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
<4> 前記炭素粒子群は、平均破壊強度が互いに異なる複数の炭素粒子の混合物である前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
<5> 集電体と、前記集電体上に設けられ、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含有する負極材層とを含むリチウムイオン二次電池用負極。
<6> 前記<5>に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質とを含むリチウムイオン二次電池。
本発明によれば、高密度化が可能で、電解液浸透性に優れるリチウムイオン二次電池用負極材、並びにこれを用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
比較例1にかかる負極断面の全体を示すSEM画像の一例を示す図である。 比較例1にかかる負極断面の一部分の拡大図の一例を示す図である。 実施例6にかかる負極断面の全体を示すSEM画像の一例を示す図である。 実施例6にかかる負極断面の一部分の拡大図の一例を示す図である。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材(以下、単に「負極材」ともいう)は、炭素粒子群を含み、前記炭素粒子群の粒子径分布において小径側から体積累積分布を描き、累積90%となる粒子径D90の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子を第一の炭素粒子とし、累積10%となる粒子径D10の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子を第二の炭素粒子とした場合に、前記第一の炭素粒子の平均破壊強度(PD90)に対する、前記第二の炭素粒子の平均破壊強度(PD10)の比率(PD10/PD90)が1.7以上75以下であることを特徴とする。前記炭素粒子群は、例えば粒子径が互いに異なる複数の炭素粒子から構成される。
負極材をこのような構成とすることで、負極を形成した場合の電解液浸透性が向上する。さらに負極材を加圧プレスして高密度化した負極を形成する場合であっても、電解液の浸透性が維持される。これは例えば、電極材を加圧プレスした場合、破壊強度が小さくて軟らかい炭素粒子は変形をおこすものの、破壊強度が大きくて硬い炭素粒子は変形を起こしにくいため硬い炭素粒子同士の炭素粒子間の空隙が保たれ、その結果、負極材を加圧プレスして形成した負極における電解液の浸透性が維持されるためと考えることができる。また粒子径が大きく軟らかい第一の炭素粒子の間に、粒子径が小さく硬い第二の炭素粒子が入り込むことで、第一の炭素粒子間の空隙を第二の炭素粒子が支えることになり、全体として空隙が維持されると考えることができる。
本発明において、第一の炭素粒子の平均破壊強度(PD90)に対する第二の炭素粒子の平均破壊強度(PD10)の比率(PD10/PD90、以下、単に「破壊強度比率」ともいう)は1.7以上75以下であるが、下限値は2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、一方、上限値は65以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましい。
破壊強度比率(PD10/PD90)が、1.7未満であると、十分な電解液浸透性が得られない場合がある。これは例えば負極材を加圧プレスする際、第一の炭素粒子と第二の炭素粒子が同様に変形するため、空隙が維持され難くなるためと考えることができる。
また破壊強度比率が75を超えると十分な電解液浸透性が得られない場合がある。これは例えば、負極材を加圧プレスする際に、第二の炭素粒子が第一の炭素粒子中にもぐりこんでしまい、空隙が維持できないためと考えることができる。
前記第一の炭素粒子及び第二の炭素粒子は、これらを含む炭素粒子群の体積累積分布に基づいて選択される。炭素粒子群の粒子径分布及び体積累積分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製SALD−3000J)を用いて、定法により測定される。
前記炭素粒子群において、粒子径を横軸に出現頻度を縦軸にとった粒子径分布の形状は特に制限されず、単一ピークの粒子径分布であっても、複数のピークを有する粒子径分布であってもよい。電解液浸透性の観点から、複数のピークを有する粒子径分布であることが好ましく、2つのピークを有する粒子径分布であることがより好ましい。
またそれぞれの炭素粒子の粒子径は、炭素粒子の長径として与えられる。具体的には、炭素粒子を光学顕微鏡(500倍)で観察した場合に、その炭素粒子に外接する2つの平行な平面の間の距離の最大値をその炭素粒子の長径とする。
本発明において粒子径D90及び粒子径D10は特に制限されないが、粒子径D90が20μm以上50μm以下であって、粒子径D10が1μm以上30μm以下であることが好ましく、粒子径D90が25μm以上40μm以下であって、粒子径D10が5μm以上20μm以下であることがより好ましく、粒子径D90が30μm以上35μm以下であって、粒子径D10が8μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。
また粒子径D90に対する粒子径D10の比率(粒子径D10/粒子径D90)は特に制限されないが、0.1〜0.8であることが好ましく、0・2〜0.6であることがより好ましい。
第一の炭素粒子及び第二の炭素粒子の平均破壊強度はそれぞれ、微小圧縮試験機(例えば、(株)島津製作所製MCT−W500)を用いて測定される。具体的には、炭素粒子を光学顕微鏡(500倍)で観察し、長径がD10またはD90の0.9倍以上1.1倍以下である炭素粒子をそれぞれ10個選択する。選択された10個の炭素粒子それぞれについて微小圧縮試験機を用いて破壊強度を測定し、その測定値の算術平均値として平均破壊強度が与えられる。
本発明に用いられる炭素粒子としては、天然黒鉛(鱗片状、球状等)、人造黒鉛、非晶質炭素(ハードカーボン、ソフトカーボン)等が挙げられ、これらの中から前記破壊強度比率を満たすように選択される限り、どのような組み合わせであってもよい。
尚、これらの炭素粒子は、当業界で通常用いられる天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等から適宜選択して用いることができる。さらに炭素粒子とその他の材質の物質(例えば、金属、金属酸化物等)とが複合化した複合粒子や前記その他の材質の物質によって表面をある程度改質したような表面改質粒子から選択されてもよい。
本発明においては、電解液浸透性と電池特性の観点から、第一の炭素粒子(破壊強度の小さい炭素粒子)の材質が主として天然黒鉛及び人造黒鉛から選択され、第二の炭素粒子(破壊強度の大きい炭素粒子)の材質が主として天然黒鉛及び非晶質炭素から選択されることが好ましく、第一の炭素粒子の材質が主として天然黒鉛及び人造黒鉛から選択され、第二の炭素粒子の材質が主として非晶質炭素から選択されることがより好ましく、第一の炭素粒子が球状天然黒鉛から選択され、第二の炭素粒子が非晶質炭素から選択されることがさらに好ましい。ここで、「主として」とは、それぞれの炭素粒子を構成する主成分(50質量%以上)が前記材質であって、全てが前記材質である必要がないことを意味し、その量は好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。この量は、光学顕微鏡(500倍)で観察して、粒子径が該当するものを、任意に一定数選択し(例えば10個)、その材質を判断すればよい。
このような炭素粒子群は、一般に複数の種類の炭素粒子を混合して得られるので、例えば、破壊強度が小さいが体積平均粒子径(D50)が大きく、前記第一の炭素粒子として好ましい材質の炭素粒子と、体積平均粒子径(D50)が小さいが破壊強度が大きく、前記第二の炭素粒子として好ましい材質の炭素粒子とを混合することで、調製することが可能である。
また前記炭素粒子群全体としての平均破壊強度は特に制限されないが、1MPa以上150MPa以下であることが好ましく、4MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。
平均破壊強度が150MPa以下であると、電極材を加圧プレスするのに要する圧力を抑制することができ、高密度化が容易になる。また1MPa以上であると、電極材の加圧プレス時において目標密度への調整が容易になり、さらに粒子の破壊が抑制される。
尚、本発明において、炭素粒子群全体としての平均破壊強度は、炭素粒子群について小径側から体積累積分布を描き、累積50%となる体積平均粒子径(D50)の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子10個について、それぞれの炭素粒子の破壊強度の算術平均値として与えられる。
また第一の炭素粒子及び第二の炭素粒子のそれぞれの平均破壊強度は、前記破壊強度比率を満たす限り特に制限されない。なかでも第一の炭素粒子の平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下であって、第二の炭素粒子の平均破壊強度が1.7MPa以上150MPa以下であることが好ましく、第一の炭素粒子の平均破壊強度が2MPa以上30MPa以下であって、第二の炭素粒子の平均破壊強度が30MPa以上120MPa以下であることがより好ましく、第一の炭素粒子の平均破壊強度が2MPa以上25MPa以下であって、第二の炭素粒子の平均破壊強度が40MPa以上100MPa以下であることがさらに好ましい。
第一の炭素粒子の平均破壊強度が1MPa以上であると加圧プレス時の目標密度への調整が容易になり、生産性が向上する。また第一の炭素粒子の平均破壊強度が88MPa以下であると加圧プレス時に掛かる圧力が低減でき、容易に高密度化ができる。一方、第二の炭素粒子の平均破壊強度が1.7MPa以上であると第一の粒子が1MPa程度の破壊強度でも電解液浸透性向上の効果が期待できる。また第二の炭素粒子の平均破壊強度が150MPa以下であると加圧プレス時に必要な圧力が上昇することが抑制され、高密度化が容易になる。
本発明において前記破壊強度比率を所定の範囲とする方法として具体的には、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下で、平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下である炭素粒子Aと、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下で、平均破壊強度が1.7MPa以上150MPa以下である炭素粒子Bとを混合する方法、体積平均粒子径が10μmを超え30μm以下である炭素粒子及び体積平均粒子径が2μm以上10μm以下の炭素粒子を混合し、焼成処理してそれぞれの結晶化度を調整する方法、体積平均粒子径が10μmを超え30μm以下である黒鉛粒子及び体積平均粒子径が2μm以上10μm以下の非晶質炭素前駆体を混合し、焼成処理して破壊強度比率を調整する方法、体積平均粒子径が10μmを超え30μm以下である炭素粒子及び黒鉛前駆体等で表面コートされた体積平均粒子径が2μm以上10μm以下の炭素粒子を混合し、焼成処理して破壊強度比率を調整する方法等を挙げることができる。
なお、炭素粒子A及び炭素粒子Bの平均破壊強度は、体積平均粒子径(D50)の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子10個について、それぞれの炭素粒子の破壊強度の算術平均値としてそれぞれ与えられる。
本発明のリチウムイオン電池用負極材は、体積平均粒子径(D50)が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下である炭素粒子Aと、体積平均粒子径(D50)が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1.7MPa以上150MPa以下である炭素粒子Bとを混合して得られることが好ましく、体積平均粒子径(D50)が10μmを超え30μm以下であって、平均破壊強度が2MPa以上30MPa以下である炭素粒子Aと、体積平均粒子径(D50)が2μm以上10μm以下であって、平均破壊強度が50MPa以上120MPa以下である炭素粒子Bとを混合して得られることがより好ましい。
さらに本発明のリチウムイオン電池用負極材は、天然黒鉛及び人造黒鉛から選択され、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下である炭素粒子Aと、天然黒鉛及び非晶質炭素から選択され、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1.7MPa以上150MPa以下である炭素粒子Bとを混合して得られることが好ましく、天然黒鉛から選択され、体積平均粒子径が10μmを超え30μm以下であって、平均破壊強度が2MPa以上30MPa以下である炭素粒子Aと、非晶質炭素から選択され、体積平均粒子径が2μm以上10μm以下であって、平均破壊強度が50MPa以上120MPa以下である炭素粒子Bとを混合して得られることがより好ましい。
また炭素粒子Aの体積平均粒子径(S1)の炭素粒子Bの体積平均粒子径(S2)に対する平均粒子径比(S1/S2)は、1以上50以下であることが好ましく、1.5以上30以下であることがより好ましく、2以上20であることがさらに好ましい。
平均粒子径比が1以上であると加圧プレス時における炭素粒子Aに含まれる炭素粒子の変形が抑制され、空隙が維持されやすくなり、電解液浸透性が良好になる。また平均粒子径比が50以下であると加圧プレス時に炭素粒子Bに含まれる炭素粒子が炭素粒子Aに含まれる炭素粒子に埋もれることが抑制され、空隙が維持され易くなり、電解液浸透性が良好になる。
前記炭素粒子Aと炭素粒子Bの混合比率は特に限定されない。なかでも前記負極材における炭素粒子A及び炭素粒子Bの総含有量に対する炭素粒子Bの含有比率が1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
前記負極材における炭素粒子A及び炭素粒子Bの総含有量に対する炭素粒子Bの含有比率が1質量%以上であると十分な空隙が形成され易く電解液の浸透性が向上する。また50質量%以下であると、加圧プレスによる炭素粒子群Bの圧縮が抑制され、電解液浸透性の低下が抑制される。
前記負極材は、電解液浸透性と電池特性の観点から、前記平均粒子径比(S1/S2)が1以上50以下であって、前記負極材における炭素粒子A及び炭素粒子Bの総含有量に対する炭素粒子Bの含有比率が1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、前記平均粒子径比(S1/S2)が2以上20以下であって、前記負極材における炭素粒子A及び炭素粒子Bの総含有量に対する炭素粒子Bの含有比率が5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい
また前記負極材は、電解液浸透性と電池特性の観点から、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下である炭素粒子Aと、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1.7MPa以上150MPa以下である炭素粒子Bとを、前記負極材における炭素粒子A及び炭素粒子Bの総含有量に対する炭素粒子Bの含有比率が1質量%以上50質量%以下となるように混合して得られることが好ましく、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下である炭素粒子Aと、体積平均粒子径が1μm以上40μm以下であって、平均破壊強度が1.7MPa以上150MPa以下である炭素粒子Bとを、前記負極材における炭素粒子A及び炭素粒子Bの総含有量に対する炭素粒子Bの含有比率が5質量%以上20質量%以下となるように混合して得られることがより好ましい。
また、前記負極材を前記炭素粒子群Aと炭素粒子群Bを混合して構成する場合、炭素粒子群Aに含まれる炭素粒子と炭素粒子群Bに含まれる炭素粒子とを結着させることが好ましい。結着方法は特に制限されないが、炭素粒子群Aと炭素粒子群Bとを混合した後に、等方加圧処理を行って結着させる方法や、炭素粒子群Aと炭素粒子群Bとの混合物にさらにバインダ等を加えて結着させる方法等を挙げることができる。
中でも前記結着方法は、電解液浸透性と電池特性の観点から、等方加圧処理を行って結着させる方法であることが好ましい。
等方加圧処理における加圧条件は特に制限されないが、電解液浸透性の観点から、4.9×10Pa(50kgf/cm)以上4.9×10Pa(5000kgf/cm)以下であることが好ましく9.8×10Pa(100kgf/cm)以上1.96×10Pa(2000kgf/cm)以下であることがより好ましい。等方加圧処理の加圧条件が4.9×10Pa以上であると電解液浸透性がより向上する。また4.9×10Pa以下であると製造工程上の自由度が大きくなり生産性が向上する。
尚、等方加圧処理は例えば、水等の液体を加圧媒体とする静水圧プレス機や空気等を加圧媒体とする空圧による市販の等方性プレス機を用いて行うことができる。具体的には例えば、前記炭素粒子群Aと炭素粒子群Bの混合物をゴム製等の容器に充填、密閉した後、市販の等方プレス機を用いて容器ごと加圧処理することで等方加圧処理を行うことができる。
また炭素粒子群Aと炭素粒子群Bとの混合物にさらにバインダ等を加えて結着させる方法におけるバインダは、後述するリチウムイオン二次電池用負極における有機結着剤であっても、熱処理により炭素化可能な有機化合物(以下、「炭素前駆体」ともいう)であってもよい。
熱処理により炭素化可能な有機化合物(炭素前駆体)としては特に制限はない。具体的には、エチレンヘビーエンドピッチ、原油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等を熱分解して生成するピッチ、ナフタレン等を超強酸存在下で重合させて作製される合成ピッチ等を挙げることができる。またポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の熱可塑性合成樹脂を用いることもできる。さらにデンプンやセルロース等の天然高分子化合物を用いることもできる。
上記炭素前駆体は、500℃〜3000℃の不活性雰囲気中で焼成・炭素化することで混合物を結着させることができる。
また、バインダ等を加えて結着させる方法におけるバインダの含有比率は特に制限されない。例えば後述するリチウムイオン二次電池用負極における有機結着剤と同様の含有比率とすることができる。なお、バインダの含有比率はバインダとして炭素前駆体を使用した場合には、熱処理後に残る炭素化されたものの質量を基準とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材の体積平均粒子径(D50)は特に制限されない。例えば、1μm以上40μm以下とすることができ、3μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上25μm以下がより好ましい。
体積平均粒子径が、1μm以上であると比表面積が大きくなりすぎることが抑制され、リチウムイオン二次電池の初回充放電効率が向上すると共に、粒子間の空隙が十分に保たれ入出力特性が向上する。一方、体積平均粒子径が40μm以下であると形成される電極面に凸凹が発生することが抑制され電池の信頼性が向上すると共に、炭素粒子の表面から内部へのLiの拡散距離が短くなりリチウムイオン二次電池の入出力特性が向上する傾向がある。
尚、体積平均粒子径(D50)は、界面活性剤を含んだ精製水に試料を分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製SALD−3000J)で測定することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材の最大粒子径Dmaxは特に制限されず、例えば、10μm以上70μm以下とすることができ、30μm以上65μm以下であることが好ましく、30μm以上45μm以下であることがより好ましい。
最大粒子径Dmaxが70μm以下であると、電極を薄膜化することができ、入出力特性やハイレートサイクル特性が向上する。なお、最大粒子径Dmaxは、粒子径分布において小径側から体積累積分布を描いた場合に累積99.9%となる粒子径D99.9を意味する。
前記リチウムイオン二次電池用負極材は、励起波長532nmのレーザーラマン分光測定により求めたプロファイルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/IgをR値とした際、そのR値が0.10以上1.5以下あることが好ましく、0.15以上1.0以下であることがより好ましい。
R値が、0.10以上であると寿命特性及び入出力特性に優れる傾向があり、1.5以下であると不可逆容量の増大を抑制できる傾向がある。
ここで、1360cm−1付近のピークとは、通常、炭素の非晶質構造に対応すると同定されるピークであり、例えば1300cm−1〜1400cm−1に観測されるピークを意味する。また1580cm−1付近のピークとは、通常、黒鉛結晶構造に対応すると同定されるピークであり、例えば1530cm−1〜1630cm−1に観測されるピークを意味する。
尚、R値はラマンスペクトル測定装置(例えば、日本分光(株)製NSR−1000型、励起波長532nm)を用い、測定範囲(830cm−1〜1940cm−1)全体をベースラインとして求めることができる。
また前記リチウムイオン二次電池用負極材は、タップ密度が0.3g/cm以上3.0g/cm以下であることが好ましく、0.5g/cm以上2.0g/cm以下であることがより好ましい。
タップ密度が0.3g/cm以上であると、負極を作製する際の有機結着剤量を抑制でき、形成されるリチウムイオン二次電池のエネルギー密度が大きくなる傾向がある。
タップ密度は、例えば、負極材の体積平均粒子径を大きくすることで値が高くなる傾向があり、この性質を利用してタップ密度を上記範囲内に設定することができる。尚、本発明におけるタップ密度とは、容量100cmのメスシリンダーに試料粉末100cmをゆっくり投入し、メスシリンダーに栓をし、このメスシリンダーを5cmの高さから250回落下させた後の試料粉末の質量及び容積から求められる値を意味する。
前記負極材は、第一の炭素粒子の平均破壊強度が1MPa以上88MPa以下であり、第二の炭素粒子の平均破壊強度が1.7MPa以上150MPa以下であって、タップ密度が0.3g/cm以上3.0g/cm以下であることが好ましく、第一の炭素粒子の平均破壊強度が2MPa以上30MPa以下であり、第二の炭素粒子の平均破壊強度が50MPa以上120MPa以下であって、タップ密度が0.5g/cm以上2.0g/cm以下であることがより好ましい。
また前記負極材は、粒子径D90に対する粒子径D10の比率(粒子径D10/粒子径D90)が0.1〜0.8であり、破壊強度比率が2以上65以下であって、タップ密度が0.3g/cm以上3.0g/cm以下であることが好ましく、比率(粒子径D10/粒子径D90)が0.2〜0.6であり、破壊強度比率が20以上50以下であって、タップ密度が0.5g/cm以上2.0g/cm以下であることがより好ましい。
前記リチウムイオン二次電池用負極材は、第一の炭素粒子及び第二の炭素粒子を含む炭素粒子群に加えて、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、後述する有機結着剤や導電補助材等を挙げることができる。
前記リチウムイオン二次電池用負極材における、第一の炭素粒子及び第二の炭素粒子を含む炭素粒子群の含有比率は例えば75質量%以上とすることができ、90質量%以上であることが好ましい。
<リチウムイオン二次電池用負極>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と、前記集電体上に設けられ、前記リチウムイオン二次電池用負極材を含有する負極材層とを有し、必要に応じてその他の構成要素を含んで構成される。これにより、高密度で電解液浸透性に優れるリチウムイオン二次電池用負極を構成することが可能になる。
前記リチウムイオン二次電池用負極は、例えば、既述の本発明のリチウムイオン二次電池用負極材及び有機結着剤を溶剤とともに、撹拌機、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダ等の分散装置により混練して、負極材スラリーを調製し、これを集電体に塗布して負極材層を形成する、又は、ペースト状の負極材スラリーをシート状、ペレット状等の形状に成形し、これを集電体と一体化することで得ることができる。
上記有機結着剤としては特に限定されない。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体;エチレン性不飽和カルボン酸エステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)、及びエチレン性不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等)からなる(メタ)アクリル共重合体;ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの高分子化合物が挙げられる。
リチウムイオン二次電池負極の負極材層中の有機結着剤の含有比率は、リチウムイオン二次電池用負極材と有機結着剤の合計100質量部に対して0.5質量部〜20質量部であることが好ましく、1質量部〜10質量部であることがより好ましい。
有機結着剤の含有比率が0.5質量部以上であることで密着性が良好で、充放電時の膨張・収縮によって負極が破壊されることが抑制される。一方、20質量部以下であることで、電極抵抗が大きくなることを抑制できる。
また負極材スラリーには、粘度を調整するために増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(及びその塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどを使用することができる。
また、上記負極材スラリーには、必要に応じて、導電補助材を混合してもよい。導電補助材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、及び導電性を示す酸化物や窒化物等が挙げられる。導電補助材の使用量は、リチウムイオン二次電池負極材の全質量中に0.1質量%〜20質量%程度とすればよい。
また前記集電体の材質及び形状については特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いればよい。また、多孔性材料、たとえばポーラスメタル(発泡メタル)やカーボンペーパーなども使用可能である。
上記負極材スラリーを集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。塗布後は、必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行うことが好ましい。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
前記集電体上に形成された負極材層及び集電体と一体化した負極材層は、用いた有機結着剤に応じて熱処理することが好ましい。例えば、ポリアクリロニトリルを主骨格とした有機結着剤を用いた場合は、100〜180℃で、ポリイミド、ポリアミドイミドを主骨格とした有機結着剤を用いた場合には150〜450℃で熱処理することが好ましい。
この熱処理により溶媒の除去、バインダの硬化による高強度化が進み、粒子間及び粒子と集電体間の密着性が向上できる。尚、これらの熱処理は、処理中の集電体の酸化を防ぐため、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気、又は真空雰囲気で行うことが好ましい。
また、熱処理後に、負極は加圧プレス(加圧処理)することが好ましい。加圧処理することで電極密度を調整することができる。本発明のリチウムイオン二次電池用負極では、電極密度が1.0g/cm〜2.0g/cmであることが好ましく、1.2g/cm〜1.9g/cmであることがより好ましく、1.4g/cm〜1.8g/cmであることがさらに好ましい。電極密度については、高いほど体積容量が向上するほか、密着性が向上し、サイクル特性も向上する傾向がある。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、既述の本発明のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質とを含んで構成されることを特徴とする。例えば、上記本発明のリチウムイオン二次電池用負極と正極とを、必要に応じてセパレータを介して対向して配置し、電解質を含む電解液を注入することにより構成することができる。
前記正極は、前記負極と同様にして、集電体表面上に正極材層を形成することで得ることができる。この場合の集電体はアルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属や合金を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いることができる。
前記正極材層に用いる正極材料としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いればよく、特に限定されない。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、及びこれらの複酸化物(LiCoNiMn、x+y+z=1、0<x、0<y;LiNi2−xMn、0<x≦2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、リチウムバナジウム化合物、V、V13、VO、MnO、TiO、MoV、TiS、V、VS、MoS、MoS、Cr、Cr、オリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等などを単独或いは混合して使用することができる。
前記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製するリチウムイオン二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
前記電解液としては、例えば電解質であるLiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSOCF等のリチウム塩を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル等の単体もしくは2成分以上の混合物の非水系溶剤に溶解した、いわゆる有機電解液を使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群としたりし、これら極板群を外装体中に封入した構造とするのが一般的である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、特に限定されないが、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池、角型電池などとして使用される。
上述した本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、リチウムイオン二次電池用と記載したが、リチウムイオンを挿入脱離することを充放電機構とする電気化学装置全般、例えば、ハイブリッドキャパシタなどにも適用することが可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
体積平均粒子径が23μmで平均破壊強度が28MPaの球状化天然黒鉛粒子と、体積平均粒子径が10μmで平均破壊強度が51MPaの球状化天然黒鉛粒子とを用いて、黒鉛粒子の総含有量に対する体積平均粒子径が10μmで平均破壊強度が51MPaの黒鉛粒子の含有比率が10質量%となるように混合して、リチウムイオン二次電池用負極材1を得た。
(破壊強度の測定)
上記で得られたリチウムイオン二次電池用負極材1について、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製SALD−3000J)を用いて粒子径分布を測定したところ、小径側から体積累積分布を描いた場合に、累積90%となる粒子径D90は33μmであり、累積10%となる粒子径D10は14μmであった。
次いで、光学顕微鏡(500倍)を用いて粒子径D90の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個を選択し、微小圧縮試験機(例えば、(株)島津製作所製MCT−W500)を用いて、それぞれ破壊強度を測定し、その算術平均値として平均破壊強度を求めたところ、20MPaであった。また同様に粒子径D10の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個について、それぞれ破壊強度を測定し、その算術平均値として平均破壊強度を求めたところ41MPaであった。破壊強度比率(PD10/PD90)は2.1であった。
(タップ密度)
上記で得られたリチウムイオン二次電池用負極材1について、容量100cmのメスシリンダーに試料粉末100cmをゆっくり投入し、メスシリンダーに栓をし、このメスシリンダーを5cmの高さから250回落下させた後の試料粉末の質量及び容積からタップ密度を測定した。タップ密度は1.2g/cmであった。
(リチウムイオン二次電池用負極の作製)
負極材スラリーの全固形分を100質量%とした場合に、上記で得られたリチウムイオン二次電池用負極材1を96質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを1質量%となるように混合し、さらに有機結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン、クレハ化学製、#9305)5質量%溶液を固形分で3質量%となるように加えて30分間混練を行った。ついで固形分濃度が40〜50質量%となるようにN−メチル−2ピロリドン(和光化学製)を加えて、20分間混合してペースト状の負極材スラリーを作製した。
得られた負極材スラリーを厚さ10μmの電解銅箔に10mg/cmとなるように塗布し、80℃で15分乾燥した。さらに大気中105℃で1時間熱処理して、リチウムイオン二次電池用負極1を作製した。
<実施例2>
体積平均粒子径が23μmで平均破壊強度が28MPaの球状化天然黒鉛粒子と、体積平均粒子径が10μmで平均破壊強度が51MPaの球状化天然黒鉛粒子とを用いて、黒鉛粒子の総含有量に対する体積平均粒子径が10μmで平均破壊強度が51MPaの球状化天然黒鉛粒子の含有比率が20質量%となるように混合して、リチウムイオン二次電池用負極材2を得た。
得られたリチウムイオン二次電池用負極材2のD90は33μmであり、D10は13μmであった。またD90の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は20MPaであり、D10の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は47MPaであった。破壊強度比率(PD10/PD90)は2.4であった。またタップ密度は1.1g/cmであった。
また、リチウムイオン二次電池用負極材2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極2を作製した。
<実施例3>
体積平均粒子径が23μmで平均破壊強度が28MPaの球状化天然黒鉛粒子と、体積平均粒子径が10μmで平均破壊強度が51MPaの球状化天然黒鉛粒子とを用いて、黒鉛粒子の総含有量に対する体積平均粒子径が10μmで平均破壊強度が51MPaの球状化天然黒鉛粒子の含有比率が50質量%となるように混合して、リチウムイオン二次電池用負極材3を得た。
得られたリチウムイオン二次電池用負極材3のD90は31μmであり、D10は9μmであった。またD90の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は22MPaであり、D10の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は58MPaであった。破壊強度比率(PD10/PD90)は2.6であった。またタップ密度は1.1g/cmであった。
また、リチウムイオン二次電池用負極材3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極3を作製した。
<実施例4>
体積平均粒子径が20μmで平均破壊強度が5MPaの球状化天然黒鉛粒子と、体積平均粒子径5μmで平均破壊強度105MPaの鱗片状非晶質炭素粒子とを用いて、黒鉛粒子及び非晶質炭素粒子の総含有量に対する体積平均粒子径5μmで平均破壊強度105MPaの鱗片状非晶質炭素粒子の含有比率が20質量%となるように混合して、リチウムイオン二次電池用負極材4を得た。
得られたリチウムイオン二次電池用負極材4のD90は30μmであり、D10は11μmであった。またD90の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は2.5MPaであり、D10の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は85MPaであった。破壊強度比率(PD10/PD90)は34であった。またタップ密度は0.9g/cmであった。
また、リチウムイオン二次電池用負極材4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極4を作製した。
<実施例5>
体積平均粒子径が20μmで平均破壊強度が5MPaの球状化天然黒鉛粒子と、体積平均粒子径が5μmで平均破壊強度が105MPaの鱗片状非晶質炭素粒子とを用いて、黒鉛粒子及び非晶質炭素粒子の総含有量に対する体積平均粒子径が5μmで平均破壊強度が105MPaの鱗片状非晶質炭素粒子の含有比率が10質量%となるように混合した。
これをゴム製の容器に充填、密閉したのち、該ゴム製容器を静水圧プレス機で、加圧媒体の圧力9.8×10Pa(1000kgf/cm)で、等方性加圧処理を行った。次いでカッターミルを用いて解砕処理を行った後に250meshの篩に通して、リチウムイオン二次電池用負極材5を得た。
得られたリチウムイオン二次電池用負極材5のD90は31μmであり、D10は13μmであった。またD90の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は2.5MPaであり、D10の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は60MPaであった。破壊強度比率(PD10/PD90)は24であった。またタップ密度は0.9g/cmであった。
また、リチウムイオン二次電池用負極材5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極5を作製した。
<実施例6>
体積平均粒子径が20μmで平均破壊強度が5MPaの球状化天然黒鉛粒子と、体積平均粒子径が5μmで平均破壊強度が105MPaの鱗片状非晶質炭素粒子とを用いて、黒鉛粒子及び非晶質炭素粒子の総含有量に対する体積平均粒子径が5μmで平均破壊強度が105MPaの鱗片状非晶質炭素粒子の含有比率が20質量%となるように混合した。
これをゴム製の容器に充填、密閉したのち、該ゴム製容器を静水圧プレス機で、加圧媒体の圧力9.8×10Pa(1000kgf/cm)で、等方性加圧処理を行った。次いでカッターミルを用いて解砕処理を行った後に250meshの篩に通して、リチウムイオン二次電池用負極材6を得た。
得られたリチウムイオン二次電池用負極材5のD90は32μmであり、D10は12μmであった。またD90の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は2.4MPaであり、D10の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は78MPaであった。破壊強度比率(PD10/PD90)は32.5であった。またタップ密度は0.9g/cmであった。
また、リチウムイオン二次電池用負極材6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極6を作製した。
<比較例1>
リチウムイオン二次電池用負極材C1として、体積平均粒子径が20μmで、平均破壊強度が28MPaの球状化天然黒鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極C1を作製した。
また負極材C1のD90は33μmであり、D10は17μmであった。またD90の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は20MPaであり、D10の0.9倍から1.1倍となる長径を有する炭素粒子10個の平均破壊強度は28MPaであった。破壊強度比率(PD10/PD90)は1.4であった。またタップ密度は1.1g/cmであった。
<電解液浸透性>
上記で得られたリチウムイオン二次電池用負極について、以下のようにして電解液浸透性の評価を行なった。結果を表1に示す。
上記で得られたリチウムイオン二次電池用負極をそれぞれ、14mmφの円形に打ち抜き、ハンドプレスで加圧成型し、電極密度を1.6g/cmに調整し、これを評価用試料として使用した。
電解液として、エチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを体積比3対7の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度になるように溶解させ、これに0.5質量%のビニルカーボネートを添加したものを使用した。
マイクロシリンジに電解液を1μLとり、得られた評価用試料上に滴下し、目視で観察して、液滴が消失するまでの時間として浸透時間(秒)を測定した。
表1から、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を用いて作製したリチウムイオン二次電池用負極は、電解液の浸透性に優れることが分かる。
<電気化学特性>
電気化学的測定は、以下のようにして評価用のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製して放電容量維持率を測定することで行った。
(リチウムイオン二次電池用正極の作製)
正極材スラリーの全固形分を100質量%とした場合に、正極活物質としてLiCoOを94質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを3質量%となるように混合し、さらに有機結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン、クレハ化学製、#1120)12質量%溶液を固形分で3質量%となるように加えて30分間混練を行った。ついで固形分濃度が50質量%〜60質量%となるようにN−メチル−2ピロリドン(和光化学製)を加えて、20分間混合してペースト状の正極材スラリーを作製した。
得られた正極材スラリーを厚さ21μmのアルミ箔に26mg/cmとなるように塗
布し、80℃で15分乾燥した。さらに大気中105℃で1時間熱処理後、14mmφの円形に打ち抜いた。ハンドプレスで加圧成型して、電極密度を3.2g/cmに調整し、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
上記で得られたリチウムイオン二次電池用負極をそれぞれ、16mmφの円形に打ち抜き、ハンドプレスで加圧成型し、電極密度を1.5g/cmに調整したものを用いて、上記で得られた正極、セパレータ、電解液とともにアルゴン循環型グローブボックス内でCR2016型コインセルを組みたてた。なお、電解液にはエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを体積比3対7の混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度になるように溶解させ、これに0.5質量%のビニルカーボネートを添加したものを使用した。セパレータにはポリエチレン微孔膜を使用した。
得られたコインセルの充電条件は、電流密度0.1C(0.42mA)の定電流で電池電圧4.15Vまで充電した後、電池電圧4.15Vで電流密度が0.01C(0.042mA)になるまで定電圧充電した。放電条件は,電流密度0.1Cの定電流で2.7V(0.42mA)まで放電した。この試験を4サイクル行った。5サイクル目以降は、電流密度1.0C(4.2mA)の定電流で電池電圧4.15Vまで充電した後、電池電圧4.15Vで電流密度が0.01C(0.042mA)になるまで定電圧充電した。放電条件は、電流密度1.0Cの定電流で2.7V(4.2mA)まで放電する試験を300サイクルまで繰り返した。
各サイクルの放電容量維持率は、5サイクル目の放電容量に対する各サイクルの放電容量の割合とした。100サイクル目及び300サイクル目の放電容量維持率を表2に示す。

表2から、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を用いて作製したリチウムイオン二次電池用負極を用いて作製したリチウムイオン二次電池は、サイクル特性に優れることが分かる。
<断面観察>
実施例6及び比較例1で得られたリチウムイオン二次電池用負極材をそれぞれ、14mmφの円形に打ち抜いた。ハンドプレスで加圧成型して、電極密度を1.7g/cmに調整し、これを断面観察用試料として使用した。
断面観察用試料のそれぞれについて、イオンミリング装置((株)日立ハイテク製:E−3500)を用いて断面を作製した。走査型電子顕微鏡(キーエンス社製:VE−7800)を用いて、断面における粒子の状態を観察した。比較例1の電極断面のSEM画像を図1及び図2に、実施例6の電極断面のSEM画像を図3及び図4にそれぞれ示す。
図1〜図4より、比較例1の負極の電極断面では粒子間空隙の分布が不均一であるのに対して、実施例6の負極の電極断面では粒子間空隙の分布が均一であることが分かる。また、実施例6の負極の電極断面には、粒子間に微細な空隙が連続的に存在することがわかる。

Claims (6)

  1. 炭素粒子群を含み、前記炭素粒子群の粒子径分布において小径側から体積累積分布を描き、累積90%となる粒子径D90の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子を第一の炭素粒子とし、累積10%となる粒子径D10の0.9倍以上1.1倍以下の粒子径を有する炭素粒子を第二の炭素粒子とした場合に、前記第一の炭素粒子の平均破壊強度(PD90)に対する前記第二の炭素粒子の平均破壊強度(PD10)の比率(PD10/PD90)が10以上75以下であり、前記第二の炭素粒子群の材質が非晶質炭素であるリチウムイオン二次電池用負極材。
  2. 前記第一の炭素粒子の平均破壊強度が、1MPa以上88MPa以下であり、前記第二の炭素粒子の平均破壊強度が、1.7MPa以上150MPa以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  3. 前記炭素粒子群は、4.9×10Pa以上4.9×10Pa以下の圧力による等方加圧処理物である請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  4. 前記炭素粒子群は、平均破壊強度が互いに異なる複数の炭素粒子の混合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  5. 集電体と、前記集電体上に設けられ、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含有する負極材層とを含むリチウムイオン二次電池用負極。
  6. 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質とを含むリチウムイオン二次電池。
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