以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。以下に説明する実施の形態において、本発明に係るタッチパネルシステムはスマートフォンに適用される。しかしながら、本発明に係るタッチパネルシステムが適用可能なのはスマートフォンに限定されるものではない。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るタッチパネルシステム11の構成を示すブロック図である。図1を参照して、タッチパネルシステム11は、タッチパネル2と、ディスプレイ(表示装置)3と、マイクロコンピュータ(制御部)4と、メモリ(記憶部)5と、通信部7と、2次電池8とを備える。タッチパネル2は、タッチ操作部(操作面)21と、センサ電極(センサ)22とを含む。ディスプレイ3は、液晶ドライバ31と、液晶表示部(表示面)32とを含む。マイクロコンピュータ4は、A/D(アナログ−デジタル)変換部41と、CPU(Central Processing Unit)42とを含む。メモリ5は、ROM(Read-Only Memory)51と、RAM(Random Access Memory)52とを含む。
タッチパネル2は、液晶表示部32に取り付けられる。タッチ操作部21は、ユーザ(使用者)のタッチ入力を受け付ける。センサ電極22は、タッチ操作部21のタッチされた位置を検出して、タッチされた位置とタッチ入力の強さとを示す電圧信号を出力する。
より具体的には、タッチ操作部21のタッチされた位置は以下のように求められる。タッチパネル2は表面型静電容量方式に分類される。センサ電極22は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる透明導電膜を含む。透明導電膜は長方形であって、その四隅の各々にはごく微弱な電流が流されている。ユーザがタッチ操作部21にタッチすると、タッチ操作部21の静電容量が変化する。透明導電膜の四隅の各々に流れる電流は、タッチ操作部21の静電容量の変化量に応じて変化する。この電流の変化量は、タッチ操作部21のタッチされた位置と透明導電膜の四隅との間の距離に反比例する。したがって、透明導電膜の四隅の電流の変化量の比から、タッチ操作部21のタッチされた位置を求めることができる。
液晶表示部32は、ユーザがタッチ操作部21にタッチするための画像を表示する。液晶ドライバ31は、CPU42からのデータ信号を受けて、液晶表示部32を制御する。なお、ディスプレイ3の表示方式は液晶を用いた方式に限られず、他の表示方式を用いてもよい。
ROM51は、初期テーブル(第1の基準テーブル)Tiを記憶する。初期テーブルTiには、タッチ操作部21の形状と、タッチ操作部21の各位置における電圧信号の基準値とが定められる。基準値は、タッチ入力の有効および無効を判定するために用いられる。基準値は、タッチ操作部21のセンサ電極22(基準面)からの変位に基づいて定められる。初期テーブルTiのデータ構造については後に詳細に説明する。初期テーブルTiは、たとえばタッチパネルシステム11の製品出荷時にROM51に記憶される。したがって、初期テーブルTiは書き換えが不可能である。
A/D変換部41は、センサ電極22の四隅の各々から電圧信号を受ける。センサ電極22の四隅からの1組の電圧信号を電圧信号Sと表す。A/D変換部41は、これら4つの電圧信号の各々をA/D変換して、電圧信号SのデータをCPU42に出力する。電圧信号Sから、センサ電極22の四隅における電流の変化量と、タッチの強さに対応する信号強度とを示す情報が得られる。
CPU42は、センサ電極22の四隅における電流の変化量に基づいて、タッチ操作部21のタッチされた位置を算出する。また、CPU42は、初期テーブルTiに定められた基準値をROM51から受ける。CPU42は、電圧信号の信号強度と、タッチ操作部21のタッチされた位置に対応する基準値とを比較する。CPU42は、タッチ操作部21の電圧信号の信号強度が基準値よりも大きい場合に、タッチ操作部21に対するタッチ入力を有効と判定する。CPU42は、タッチ操作部21のタッチされた位置と、電圧信号の信号強度と、タッチ入力の判定結果とを判定結果テーブルTrに書き込む。判定結果テーブルTrのデータ構造については、後により詳細に説明する。
また、CPU42は、タッチ操作部21のタッチされた位置に応じて、液晶ドライバ31にデータ信号を出力する。これにより、液晶表示部32にはタッチ入力の判定結果に応じた画像が表示される。
RAM52は判定結果テーブルTrを記憶する。通信部7は、タッチパネルシステム11をスマートフォンとして機能させるための無線通信の機能を有する。2次電池8には、タッチパネルシステム11の各部の動作のための電力が蓄えられる。
図2は、図1に示したタッチパネルシステム11の形状の一例を示す外観図である。図2を参照して、タッチ操作部21の外周形状は長方形である。タッチ操作部21の長手方向の長さLyと短手方向の長さLxとの比は、たとえば4:3である。筐体10は、タッチ操作部21を収容するとともに、タッチ操作部21の四辺を囲むように設けられる。筐体10には、たとえば樹脂が用いられる。タッチ操作部21の四隅のうちの1つを原点Oとする。x軸はタッチ操作部21の短手方向に沿って設定される。y軸はタッチ操作部21の長手方向に沿って設定される。
図3は、図2のIII−III線に沿うタッチパネルシステム11の断面の概略を示す断面図である。図3を参照して、液晶表示部32とセンサ電極22とは、いずれも平面形状であって、大きさがほぼ等しい。液晶表示部32の上にセンサ電極22が設けられる。センサ電極22の上には、タッチ操作部21が設けられる。液晶表示部32とセンサ電極22とタッチ操作部21とは、筐体10の上面に取り付けられる。筐体10の内部には、2次電池8と回路基板4aとが設置される。回路基板4aには、マイクロコンピュータ4、ROM51、RAM52、および通信部7(いずれも図1参照)が実装される。センサ電極22を基準面として、z軸は基準面からタッチ操作部21の厚み方向に設定される。なお、この明細書では、「変位」とは基準面からのz軸方向の変位を意味する。
タッチ操作部21には、曲面を有するガラスが用いられる。タッチ操作部21のx軸方向の中心(Lx/2)において、タッチ操作部21の変位が最も大きい。タッチ操作部21のx軸方向の中心(Lx/2)から両端(原点OおよびLx)に向かうに従って、タッチ操作部21の変位は小さくなる。ユーザの指101がタッチ操作部21にタッチすると、センサ電極22は、タッチ操作部21のタッチされた位置を検出する。
図4は、図1に示したタッチパネル2における、タッチ操作部21の形状と、センサ電極22が出力する電圧信号の信号強度との間の関係を説明するための図である。図4(A)〜(C)を参照して、図4(A)は、タッチ操作部21の曲率が小さい場合を表す。図4(B)は、タッチ操作部21の曲率が中程度である場合を表す。図4(C)は、タッチ操作部21の曲率が大きい場合を表す。
曲線21a〜21cの各々は、タッチ操作部21の変位を表す。曲線21a〜21cにはz軸を参照する。一方、波形41a〜41c,42a〜42c,43a〜43cは、センサ電極22から出力される電圧信号の信号強度を表す。波形41a〜41c,42a〜42c,43a〜43cにはI軸を参照する。
まず、図4(B)の波形41b,42b,43bを参照して、電圧信号の信号強度が、x軸方向に沿った各位置において、タッチ操作部21の変位に依存することを説明する。波形41bは、x軸方向に沿った各位置における電圧信号の信号強度を表す。タッチ操作部21の変位が大きい位置では、タッチ入力による静電容量の変化量が小さい。このため、電圧信号の信号強度が小さくなる。タッチ操作部21の中心(Lx/2)では、タッチ操作部21の変位(曲線21b参照)が最も大きい。したがって、タッチ操作部21の中心(Lx/2)の位置の電圧信号の信号強度が最も小さくなる。一方、タッチ操作部21の変位が小さい位置では、タッチ入力による静電容量の変化量が大きい。このため、電圧信号の信号強度は大きくなる。タッチ操作部21の端(Lx)の付近では、タッチ操作部21の変位が小さい。したがって、タッチ操作部21の端(Lx)の付近では、電圧信号の信号強度が大きくなる。
次に、図4(A)〜(C)を参照して、タッチ操作部21の曲率と電圧信号の信号強度との間の関係について説明する。曲線21a〜21cを比較すると、タッチ操作部21の端(Lx)では、タッチ操作部21の変位があまり変わらない。そのため、波形43a,43b,43cを比較すると、電圧信号の信号強度はほぼ同程度である。しかしながら、タッチ操作部21の曲率が大きくなるに従って、タッチ操作部21の中心(Lx/2)におけるタッチ操作部21の変位が大きくなる。タッチ操作部21の曲率が大きくなるに従って、タッチ操作部21の中心(Lx/2)における電圧信号の信号強度は小さくなる。
以下、初期テーブルTiのデータ構造について詳細に説明する。図5は、図1に示したROM51に記憶される初期テーブルTiのデータ構造を説明するための図である。図5(A)は、タッチ操作部21の表面形状を近似してポリゴン表示した図である。図5(B)は、初期テーブルTiに含まれるデータを概念的に表す。
まず、図5(A)を参照して、タッチ操作部21の表面形状は、たとえば4個のポリゴンP1〜P4の組み合わせによって近似的に表現される。ポリゴンの各々は、頂点V1〜V9のうちの4個の頂点を有する四辺形である。なお、ここでは説明のためにタッチ操作部21の形状を4個のポリゴンによって簡易的に表現している。一般には、タッチ操作部21の表面形状の近似には、より多くのポリゴンが用いられる。
次に、図5(B)を参照して、初期テーブルTiは、頂点V1の座標(x1,y1,z1)〜頂点V9の座標(x9,y9,z9)を有する((1)参照)。これら頂点V1〜V9の座標を用いてポリゴンP1〜P4が定義される((2)参照)。より具体的には、各ポリゴンは、ある頂点と、次に参照すべき頂点とが鎖のように繋がったデータ構造によって定義される。たとえばポリゴンP1では、頂点V1―頂点V2―頂点V4―頂点V5の順に頂点を参照すべき旨が規定されている。
各ポリゴンの4個の頂点の座標を定義したテーブルを準備することも考えられる。しかしこの場合、データ量が大きくなってしまう。あるポリゴン(たとえばポリゴンP1)は、そのポリゴンに隣接するポリゴン(たとえばポリゴンP2)との間で、4個の頂点のうちの2個(頂点V4,V5)を共有する。本実施の形態によれば、初期テーブルTiでは、まず頂点が定義され、それら頂点の間の関係を用いて各ポリゴンが定義される。このため、頂点の座標が重複して定義されることがない。したがって、データ量を小さくすることができる。
ポリゴンP1〜P4には、基準値R1〜R4がそれぞれ定められている。タッチ入力の有効および無効の判定には、そのタッチ入力の位置に対応するポリゴンにおける基準値が用いられる。
図6は、図5に示した初期テーブルTiの基準値を3次元空間上に表した図である。図6を参照して、xy平面上の各座標は、タッチ操作部21でのタッチ入力の位置を示す。R軸は基準値の大きさを示す。図4で説明したように、タッチ操作部21の変位が大きくなるに従って、電圧信号の信号強度は小さくなる。そのため、基準値は、タッチ操作部21の両端(原点OおよびLx)で最も大きく定められる。基準値は、両端から中心(Lx/2)に向かうに従って小さくなる。
図7は、図1に示したタッチパネルシステム11における、タッチ入力の判定処理の手順を示すフローチャートである。図1および図7を参照して、タッチ操作部21へのタッチ入力をセンサ電極22が検出すると処理が開始される。
ステップS11において、A/D変換部41は、センサ電極22の四隅から、たとえば図1に示す電圧信号Sを受ける。A/D変換部41は、電圧信号SをA/D変換して、電圧信号SのデータをCPU42に出力する。上述のように、電圧信号Sのデータには、センサ電極22の四隅における電流の変化量と、タッチの強さに対応する信号強度とを示す情報が含まれる。
ステップS12において、CPU42は、センサ電極22の四隅における電流の変化量に基づいて、タッチ操作部21のタッチされた位置の座標を算出する。
ステップS13において、CPU42は、ROM51に記憶された初期テーブルTiを参照して、タッチ操作部21のタッチされた位置の座標に基づいて、対応するポリゴンを決定する。CPU42は、ROM51の初期テーブルTiを参照して、そのポリゴンにおける基準値を取得する。
ステップS14において、CPU42は、電圧信号の信号強度と基準値とを比較する。電圧信号の信号強度が基準値よりも大きい場合(ステップS14においてYES)、処理はステップS15に進む。一方、電圧信号の信号強度が基準値以下の場合(ステップS14においてNO)、処理はステップS16に進む。
ステップS15において、CPU42は、このタッチ入力を有効と判定する。
ステップS16において、CPU42は、このタッチ入力を無効と判定する。無効と判定されるタッチ入力には、たとえば、ノイズに起因する電圧信号、およびローグランドマス状態に起因する電圧信号が含まれる。ローグランドマス状態は、周囲電荷容量の減少によって引き起こされる。また、ユーザがタッチ操作部21を手のひらでタッチした場合も無効と判定される。
ステップS17において、CPU42は、タッチ操作部21のタッチされた位置の座標と、電圧信号の信号強度と、対応するポリゴンと、そのポリゴンにおける基準値と、タッチ入力の判定結果とを判定結果テーブルTrに書き込む。RAM52は、更新された判定結果テーブルTrを記憶する。ステップS17の処理が終了すると、全体の処理が完了する。
図8は、図1に示したRAM52に記憶される判定結果テーブルTrのデータ構造を説明するための図である。図8を参照して、タッチ入力により、4種類の電圧信号Sが得られる。この4種類の電圧信号を電圧信号Sa〜Sdとする。電圧信号Saを例にすると、タッチされた位置の座標(xa,ya)と、電圧信号Saの信号強度Iaと、座標(xa,ya)に対応するポリゴンP3と、ポリゴンP3における基準値R3と、そのタッチ入力が「有効」との判定結果とが書き込まれている。
判定結果テーブルTrは、たとえば以下のように用いられる。CPU42は、ROM51に記憶されたソフトウェア(一例としてアプリケーションソフトウェア)を読み込む。タッチ操作部21にタッチ入力があると、CPU42は、そのタッチ入力に関する判定結果を判定結果テーブルTrに書き込む。CPU42は、ソフトウェアでの要求に応じて、RAM52に記憶された判定結果テーブルTrを参照する。これにより、CPU42は、タッチ入力のタッチされた位置と判定結果とを取得する。CPU42は、判定結果に基づいて、ソフトウェアによる処理(たとえば画像処理)を実行する。
以上のように、初期テーブルTiが、タッチ操作部21の各位置における電圧信号の基準値を有する。電圧信号の基準値は、タッチ操作部21の各位置における基準面からの変位に基づいて予め定められる。この基準値を用いてタッチ入力の有効および無効を判定することにより、タッチ入力の判定精度を向上することができる。
上述のように、一般に、曲面を有するタッチ操作部にはフィルムが材料として用いられる。一方、ガラスはフィルムよりも強度が高く、表面の傷に対する耐久性も高い。しかし、曲面を有するガラスを用いたタッチパネルでは、特に、ガラスが厚い中央付近、あるいはタッチ操作部21の端および四隅の付近では、誤った判定が生じ易い。そのため、従来、曲面を有するガラスをタッチパネルに用いることは困難であった。
本実施の形態によれば、タッチ入力の判定精度の向上により、タッチ操作部21に曲面を有するガラスを用いることができる。そのため、ガラスを用いたタッチ操作部は平面形状に限るという制約がなくなる。これにより、タッチ操作部のデザインの自由度が向上する。また、ガラスはフィルムよりも光の透過率が高く、歪みも小さい。したがって、液晶表示部32の視認性を向上させることができる。
なお、タッチ操作部21の曲率が大きい場合(図4(C)参照)、タッチ操作部21の中心(Lx/2)では、センサ電極22からA/D変換部41に出力される電圧信号のS/N比(信号対ノイズ比)の低下が著しい。S/N比を改善する対策としては、センサ電極22をノイズ源から遠ざけることが考えられる。
ノイズ源としては、液晶ドライバ31、あるいはマイクロコンピュータ4およびその周辺回路(たとえば通信部7)などが挙げられる。液晶ドライバ31が主なノイズ源である場合には、センサ電極22を液晶ドライバ31からできるだけ遠くに配置する。また、マイクロコンピュータ4およびその周辺回路が主なノイズ源である場合には、マイクロコンピュータ4およびその周辺回路が実装された回路基板4aをセンサ電極22からできるだけ遠くに配置する。たとえば、センサ電極22―液晶表示部32―回路基板4a―2次電池8の順序で重ねられていた構成(図3参照)を、センサ電極22―液晶表示部32―2次電池8―回路基板4aの順序に変更することができる。
[実施の形態2]
実施の形態1のタッチパネルシステム11は、タッチ操作部21の上面に対するタッチ入力を受け付ける。本実施の形態に係るタッチパネルシステムでは、タッチ操作部の上面だけでなく側面に対するタッチ入力が可能である。
図9は、本発明の実施の形態2に係るタッチパネルシステム12の断面の概略を示す断面図である。図9を参照して、タッチ操作部21は、筐体10の上面だけでなく側面上部にも設けられる。また、センサ電極22に加えて、タッチ操作部21の側面方向からのタッチ入力を検出するためのサイド電極22sが設けられる。サイド電極22sは、液晶表示部32と交差する方向に設けられる。タッチパネルシステム12のそれ以外の構成については、実施の形態1に係るタッチパネルシステム11の構成(図1参照)と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。
図10は、本発明の実施の形態2に係るタッチパネルシステム12において、ROM51に記憶される初期テーブルTiの基準値を3次元空間上に表した図である。図10は図6に対比される。図9および図10を参照して、サイド電極22sを設けることによって、タッチ操作部21の側面付近(x軸方向の0およびLxの付近)では、サイド電極22sからのx軸方向の変位が小さくなる。そのため、タッチ操作部21の側面付近に対してタッチ入力があった場合に、電圧信号の信号強度が大きくなる。したがって、図10では、タッチ操作部21の側面付近の基準値が図6と比較して高く定められる。
実施の形態2によれば、タッチ操作部21の形状だけでなく、センサ電極22の形状も平面に限定する必要がない。実施の形態2によれば、タッチ操作部21の形状に応じて、センサ電極22およびサイド電極22sを適切に組み合わせて設けることができる。これにより、タッチ操作部へのタッチ入力の判定精度を一層向上することができる。
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、初期テーブルTiは、たとえば製品出荷時にROM51に記憶される。しかし、一般に、タッチパネルシステムのタッチ操作部の表面形状には、製品ごとにある程度のばらつきがある。本実施の形態では、ユーザの補正操作によって初期テーブルTiを補正することができる。
図11は、本発明の実施の形態3に係るタッチパネルシステム13の構成を示すブロック図である。図11を参照して、メモリ5はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)53を含む。タッチパネルシステム13のそれ以外の構成については、実施の形態1に係るタッチパネルシステム11の構成(図1参照)と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。
CPU42は、ユーザの補正操作によって初期テーブルTiを補正して、補正テーブル(第2の基準テーブル)Tcを生成する。EEPROM53は補正テーブルTcを記憶する。なお、上述のように、初期テーブルTiはROM51に記憶されているため書き換えが不可能である。したがって、初期テーブルTiをCPU42が読み込むことにより、補正テーブルTcの生成後であっても、たとえば製品出荷時の状態に戻すことができる。
図12は、図11に示したEEPROM53に記憶される補正テーブルTcのデータ構造を説明するための図である。図12を参照して、補正テーブルTcは、補正時に液晶表示部32に表示される、指定箇所D1の座標(xd1,yd1)〜指定箇所D6の座標(xd6,yd6)を有する((3)参照)。また、補正テーブルTcは、補正テーブルTcを用いるか否かを切替えるためのフラグを有する。補正テーブルTcを用いる場合には、補正テーブルTcのフラグが1に設定される。逆に、たとえば製品出荷時の状態に戻す場合には、補正テーブルTcのフラグは0に設定される。補正テーブルTcのそれ以外のデータ構造については、初期テーブルTi(図5(B)参照)におけるデータ構造と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。
以下、初期テーブルTiを補正する方法について詳細に説明する。初期テーブルTiのデータのうち、タッチ操作部21へのタッチ入力の位置と電圧信号の基準値とが補正される。まず、タッチ入力の位置の補正について説明する。液晶表示部32に、ユーザがタッチすべき指定箇所D1〜D6が表示される。ユーザは、指定箇所D1〜D6の各々に対し、対応するタッチ操作部21の位置をタッチする。これにより、指定箇所D1〜D6の各々に対し、タッチされた位置と、その位置における電圧信号の信号強度とが取得される。タッチ操作部21へのタッチ入力の位置は、指定箇所D1〜D6の座標とタッチされた位置の座標との間の差分値に基づいて補正される。
次に、電圧信号の基準値の補正について説明する。上述のように、指定箇所D1〜D6の各々に対し電圧信号の信号強度が取得される。電圧信号の信号強度に基づいて、各指定箇所における基準値が定められる。指定箇所間における基準値は、各指定箇所における基準値に基づいて、公知の曲線近似を用いたデータ補間により求められる。曲線近似には、タッチ操作部21の曲面形状が単純な場合には、たとえばパラメトリック曲線(一例として3次の多項式近似)を用いることができる。一方、タッチ操作部21の曲面形状が複雑な場合には、たとえばグレゴリ曲面を曲線近似に用いることができる。
補正テーブルTcでは、初期テーブルTiの頂点の座標(たとえばV1(xc1,yc1,zc1))が、上記差分値に基づいて補正される。より具体的には、補正後のx座標xc1は、補正前のx座標x1に補正値を加えたものである。これにより、ポリゴンの各々の定義も更新される。更新されたポリゴンの各々について、補正後の基準値(たとえば基準値Rc1)が規定される。
図13は、液晶表示部32に表示される指定箇所の配置を説明するための図である。図13を参照して、液晶表示部32には、ユーザがタッチすべきたとえば6点の指定箇所91a〜91fが表示される。指定箇所91c,91dは、タッチ操作部21の中心付近に配置される。より具体的には、指定箇所91c,91dは、タッチ操作部21の長手方向を3等分し、短手方向を2等分するように配置される。一方、指定箇所91a,91b,91e,91fは、タッチ操作部21の四隅の付近にそれぞれ配置される。より具体的には、指定箇所91a,91b,91e,91fは、タッチ操作部21の隅からの距離が長手方向では(Ly/5)、短手方向では(Lx/5)となるようにそれぞれ配置される。以下、このように指定箇所を配置する理由について説明する。
タッチ操作部21の長手方向あるいは短手方向に沿って指定箇所が2点しかない場合には、直線近似しかできない。曲線近似を用いたデータ補間を実行するためには、指定箇所は少なくとも3点必要である。図12のように指定箇所91a〜91fを配置することによって、長手方向の補正に4点(たとえば91a,91c,91d,91e)、短手方向の補正に3点(たとえば91a,91c,91b)を用いることができる。したがって、長手方向および短手方向の双方に対して曲線近似を用いたデータ補間が可能になる。
一般に、タッチ操作部21の形状は、Ly:Lx=2:1,4:3,16:9などの長方形である。本実施の形態では、Ly:Lx=4:3である。指定箇所の位置(タッチ操作部21の長手方向に配置する指定箇所の数および短手方向に配置する指定箇所の数)は、長手方向の長さLyと短手方向の長さLxとの比に基づいて定められることが好ましい。長手方向に4点、短手方向に3点の指定箇所を配置することにより、長手方向と短手方向とで指定箇所の間隔を均等にすることができる。以上の理由により、指定箇所の数は、少なくとも6点であることがより好ましい。たとえばLy:Lx=16:9の場合には、Ly:Lx=4:3の場合よりも、指定箇所の数を長手方向について増やせばよい。
指定箇所の数が少ない方がユーザの補正操作の手間を減らすことができる。しかし、タッチ操作部21が複雑な表面形状を有する場合には、指定箇所の数をより多くすることが好ましい。指定箇所の数が多いほど曲線近似の近似精度が高くなる。その結果、タッチ入力の判定精度が向上する。
タッチ操作部21の四隅での指定箇所91a,91b,91e,91fを、タッチ操作部21の隅のできるだけ近くに配置する方が曲線近似の近似精度が高くなる。しかしながら、タッチ操作部21の隅に指定箇所を近づけ過ぎると、ユーザがタッチするときに、ユーザの指の一部がタッチ操作部21の外に出てしまうおそれがある。そのため、これらの指定箇所は、ユーザの指がタッチ操作部21の外に出ない範囲で、タッチ操作部21の四隅の近くに配置される。つまり、タッチ操作部21の大きさに応じて、(Lx/5)あるいは(Ly/5)などの数値は適宜変更される。本実施の形態における上記の数値は、タッチ操作部21の対角線の長さがたとえば3インチ程度の場合に適する。
図14は、図11に示したタッチパネルシステム13における、ユーザによる初期テーブルTiの補正処理の手順を示すフローチャートである。図11,図12,および図14を参照して、ユーザの初期テーブルTiの補正を要求する操作により処理が開始される。
ステップS21において、CPU42は、ユーザがタッチすべき6点の指定箇所91a〜91fを液晶表示部32に表示するように液晶ドライバ31を制御する。
ステップS22において、ユーザは、液晶表示部32に表示された指定箇所91a〜91fの各々に対し、対応するタッチ操作部21の位置をタッチする。
ステップS23において、CPU42は、すべての指定箇所に対するタッチ入力が完了したか否かを判断する。すべての指定箇所についての電圧信号のデータを受けた場合に、CPU42は、すべての指定箇所に対するタッチ入力が完了したと判断する。この場合(ステップS23においてYES)、処理はステップS24に進む。すべての指定箇所についての電圧信号のデータを受けるまでは、CPU42は、タッチ入力が完了していない指定箇所があると判断する。この場合(ステップS23においてNO)、処理はステップS22に戻る。
ステップS24において、CPU42は、指定箇所D1〜D6の座標と、それぞれに対応するタッチされた位置の座標との差分値に基づいて、タッチ入力の位置を補正する。また、CPU42は、タッチ入力で取得した電圧信号の信号強度に基づいて、電圧信号の基準値を補正する。CPU42は、これら補正の結果を補正テーブルTcに書き込む。それ以降、CPU42は、補正テーブルTcを用いてタッチ入力の有効および無効を判定する。
ステップS25において、EEPROM53は、更新された補正テーブルTcを記憶する。ステップS25の処理が終了すると、全体の処理が完了する。
なお、ステップS21〜S23において、ユーザからのタッチ入力がない状態で一定時間が経過した場合、CPU42は一連の処理を打ち切る。この場合には、それ以前の補正処理で生成した補正テーブルTcを継続して使用することが好ましい。
図15は、図13に示した補正テーブルTcの基準値を3次元空間上に表した図である。図15を参照して、図15は図6および図10に対比される。図15によれば、xy平面の各位置ごとに基準値がわずかに増減されている様子が分かる。この基準値の増減は、タッチ操作部21の表面形状に応じて、補正処理により求められたものである。したがって、タッチパネルシステム13に製品ばらつきがある場合に、タッチ入力の判定精度を一層向上することができる。
なお、タッチパネルシステム13の製品ばらつきとしては、個々の部品については、センサ電極22の製造時のばらつき、あるいはタッチ操作部21の表面形状の歪みなどが考えられる。また、タッチパネル2を液晶表示部32に取り付ける際に生じる組み立てばらつきも考えられる。組み立てばらつきとは、たとえば、タッチパネル2全体が液晶表示部32に対して傾斜して取り付けられること、あるいはタッチパネル2が液晶表示部32に対して均一に取り付けられないことなどである。
[実施の形態4]
実施の形態3によれば、ユーザの補正操作によって補正テーブルTcを生成する。しかし、補正テーブルTcをタッチパネルシステムの外部から取得してもよい。本実施の形態では、タッチパネルシステムの外部から補正テーブル(以下、外部テーブル(第3の基準テーブル)Toと言う)が供給される。たとえば、タッチ操作部21が破損しないように保護するための保護カバーを購入した場合に、ユーザは、その保護カバーに対応する外部テーブルToをダウンロードする。
図16は、本発明の実施の形態4に係るタッチパネルシステム14の構成を示すブロック図である。図16を参照して、CPU42は通信部7から外部テーブルToを受ける。タッチパネルシステム14のそれ以外の構成については、実施の形態3に係るタッチパネルシステム13の構成(図11参照)と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。なお、図16に示される補正テーブルTpについては、実施の形態6で説明する。
通信部7は、CPU42の制御に基づいて、タッチパネルシステム14の外部から外部テーブルToをダウンロードする。CPU42は、通信部7から外部テーブルToを受けて、EEPROM53に記憶させる。本実施の形態では、通信部7は無線ネットワークから外部テーブルToを取得する。しかし、外部テーブルToを取得する通信方式は、これに限定されるものではない。
図17は、図16に示したタッチパネルシステム14において、保護カバー24の装着の様子を説明するための図である。図17(A),(B)を参照して、図17(A)は、保護カバー24の装着前のタッチパネルシステム14の断面の概略を示す断面図である。図17(B)は、保護カバー24の装着後のタッチパネルシステム14の断面の概略を示す断面図である。なお、図17(A),(B)には、筐体10などは図示していない。
図17(A)を参照して、タッチ操作部23の表面形状は平面である。図17(B)を参照して、タッチ操作部23が破損しないように保護するために、保護カバー24が取り付けられる。保護カバー24には、たとえば強化ガラスあるいは光の透過率の高い樹脂が用いられる。保護カバー24の装着後には、タッチパネルシステム14は、保護カバー24の表面に対するタッチ入力を受け付ける。両端のサイド電極22sのx軸方向の位置をそれぞれx1,x2とする。
図18は、図17に示した保護カバー24の装着前後において、電圧信号の信号強度の変化の様子を説明するための図である。図18(A),(B)を参照して、図18(A)は、保護カバー24の装着前の電圧信号の信号強度を表す。図18(B)は、保護カバー24の装着後の電圧信号の信号強度を表す。
まず、図18(A)を参照して、保護カバー24の装着前には、x1およびx2の位置を除き、電圧信号の信号強度はほぼ一定である。x1およびx2の位置では、信号強度がそれ以外の位置と比べて少し低下している。
次に、図18(B)を参照して、保護カバー24の装着後には、電圧信号の信号強度が全体的に低下している。特にx1とx2との間の位置では、信号強度が大きく低下していることが分かる。このように、保護カバー24の装着前後では、電圧信号の信号強度が大きく変化する。そのため、電圧信号の基準値も初期テーブルTiに予め定められた値から変更することが必要である。
たとえば、タッチパネルシステム14の製品出荷後に、タッチパネルシステム14の製造業者以外の第三者が保護カバーを販売することがあり得る。この場合には、製造業者は、タッチパネルシステム14を製品出荷時に、その保護カバーに対応する初期テーブルTiをROM51に記憶させることはできない。本実施の形態によれば、タッチ操作部23の形状を変更した場合に、変更後の形状に対応する外部テーブルToを新たに取得することができる。
外部テーブルToには、保護カバー24の品名(あるいは型番)を示す識別番号を含んでもよい。保護カバーを購入した場合に、ユーザは、その保護カバーに対応する外部テーブルToをダウンロードする必要がある。その具体的な手順としては、液晶表示部32に複数の保護カバーの品名が表示される。ユーザは、その中から該当の品名を選択する。品名に対応する識別番号を外部テーブルToが含むことで、ユーザは、購入した保護カバーに対応する外部テーブルToを選択することが容易になる。
実施の形態3では、初期テーブルTiに補正処理を行なって、補正テーブルTcを生成する。しかし、外部テーブルToに補正処理を行なってもよい。適切な補正処理を行なうための指定箇所の位置は、保護カバー24の形状に応じて変わると考えられる。そのため、外部テーブルToは指定箇所の座標を有することが好ましい。
図19は、複雑な形状を有する保護カバーの一例を示す図である。図19を参照して、このタッチパネルシステムには、複雑な形状をした保護カバー25が取り付けられる。このように、本実施の形態によれば、単なる曲面形状に限らず、任意の形状の保護カバーを取り付けることが可能である。
また、保護カバー25には、凹凸を有する記号26が形成されている。従来のタッチパネルでは、タッチ入力の判定精度が低下するため、タッチ操作部に凹凸を設けることはできなかった。本実施の形態によれば、タッチ操作部の表面に、絵、文字、模様、ロゴ、あるいは商標などを凹凸によって設けることができる。
[実施の形態5]
実施の形態4では、タッチパネルシステム14の外部から外部テーブルToを取得する。しかし、タッチパネルシステムは、複数の初期テーブルをROM51に予め記憶させてもよい。
本実施の形態に係るタッチパネルシステムの構成は、実施の形態4に係るタッチパネルシステム14の構成(図16参照)と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。ROM51には、たとえばタッチパネルシステムの製品出荷時に複数の初期テーブルが記憶される。
図20は、本発明の実施の形態5に係るタッチパネルシステムにおける、初期テーブルのデータ構造を示す図である。図20を参照して、本実施の形態では、たとえば製品出荷時に、ROM51に3個の初期テーブルTi1〜Ti3が記憶される。初期テーブルTi1〜Ti3は、タッチ操作部21の異なる形状にそれぞれ対応している。初期テーブルTi1〜Ti3の各々は、品名に対応する識別番号を有する。保護カバーを購入した場合に、ユーザは、その保護カバーの品名を選択する。これにより、その保護カバーの品名に対応する識別番号を有する初期テーブルがROM51から読み込まれる。
ユーザは、初期テーブルTi、補正テーブルTc、および外部テーブルToのうちの所望のテーブルを選択することができる。図21は、本発明の実施の形態5に係るタッチパネルシステムにおける、テーブルの変更処理の手順を示すフローチャートである。図21を参照して、ユーザがテーブルを変更するための操作を実行した場合に処理が開始される。
ステップS31において、ユーザが初期テーブルTiの変更を選択した場合(ステップS31において「初期テーブルの変更」)、処理はステップS32に進む。ユーザが補正テーブルTcの作成を選択した場合(ステップS31において「補正テーブルの生成」)、処理はステップS34に進む。ユーザが外部テーブルの取得を選択した場合(ステップS31において「外部テーブルの取得」)、処理はステップS37に進む。
(初期テーブルの変更)
ステップS32において、CPU42は、保護カバーの品名が液晶表示部32に表示されるように液晶ドライバ31を制御する。ユーザは、購入した保護カバーの品名を選択する。これにより、該当の保護カバーに対応する初期テーブルが選択される。その後、処理はステップS33に進む。
ステップS33において、CPU42は、ユーザが選択した初期テーブルを読み込む。ステップS33の処理が終了すると、全体の処理が完了する。
(補正テーブルの生成)
ステップS34において、CPU42は、一連の補正処理を実行する。この補正処理は、ステップS21〜S23(図14参照)における処理と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。その後、処理はステップS35に進む。
ステップS35において、CPU42は補正テーブルTcを生成する。その後、処理はステップS36に進む。
ステップS36において、CPU42は、生成した補正テーブルTcをEEPROM53に記憶する。ステップS36の処理が終了すると、全体の処理が完了する。
(外部テーブルの取得)
ステップS37において、CPU42は、保護カバー24の品名が液晶表示部32に表示されるように液晶ドライバ31を制御する。ユーザは、購入した保護カバー24の品名を選択する。これにより、該当の保護カバー24に対応する外部テーブルToが選択される。その後、処理はステップS38に進む。
ステップS38において、CPU44は、該当の外部テーブルToを通信部7から取得する。その後、処理はステップS39に進む。
ステップS39において、CPU42は、外部テーブルToをEEPROM53に記憶する。ステップS39の処理が終了すると、全体の処理が完了する。
たとえば、タッチパネルシステムの製造業者が純正品の保護カバーを販売することがあり得る。この場合、その保護カバーの形状が製品出荷前に分かっていれば、製造業者はその保護カバーの形状に対応する初期テーブルをROM51に予め記憶させることができる。これにより、ユーザが外部テーブルToを取得する手間を省くことができる。
[実施の形態6]
タッチ操作部が曲面を有するタッチパネルでは、タッチ入力される位置と、液晶表示部に表示される位置との間で視差が生じる可能性がある。そのため、この視差を補正する必要がある。
本発明の実施の形態6に係るタッチパネルシステム16は、実施の形態4に係るタッチパネルシステム14の構成(図16参照)と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。
図22は、本発明の実施の形態6に係るタッチパネルシステム16の断面の概略を示す断面図である。図22を参照して、センサ電極22cはITOからなる透明導電膜である。センサ電極22cはガラス基板27の表面に形成される。そのため、センサ電極22cは、ガラス基板27とほぼ同じ曲率を有する。センサ電極22cの上には、保護層28が設けられる。保護層28には、たとえばフィルムまたは樹脂の被膜が用いられる。
本実施の形態では、センサ電極22cと液晶表示部32との間が離れている。そのため、液晶表示部32からの光がユーザの眼102に達するまでの間に、保護層28上のタッチ位置と液晶表示部32との間で視差が生じる。この視差の補正が以下の手順で実行される。
液晶表示部32に複数の指定箇所が表示される(図12参照)。これら指定箇所の各々をユーザがタッチする。たとえば、液晶表示部32上で座標(x1,y1)の指定箇所に対し、ユーザが座標(x1+ax1,y1+ay1)の位置をタッチする。視差補正係数は、これらの座標のx軸方向およびy軸方向のそれぞれの差分値(ax1,ay1)として定められる。このようにして定められた視差補正係数を用いて、各ポリゴンの定義が更新される。
図23は、視差補正の補正テーブルpのデータ構造を説明するための図である。図23を参照して、補正テーブルTpでは、頂点V1〜V9が視差補正係数ax1〜ax9,ay1〜ay9をそれぞれ有する((1)参照)。補正テーブルTpのそれ以外のデータ構造については、補正テーブルTcの構造(図12参照)と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。
図24は、図22に示したタッチパネルシステム16における、視差補正処理の手順を示すフローチャートである。図24を参照して、タッチ操作部21へのタッチ入力をセンサ電極22cが検出すると処理が開始される。ステップS11〜S13における処理の各々は、図7で説明した処理と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。
ステップS14において、CPU42は、センサ電極22cからの電圧信号の信号強度と、補正テーブルTpの基準値のうちのタッチされた位置に対応する基準値とを比較する。電圧信号の信号強度が対応する基準値よりも大きい場合(ステップS14においてYES)、処理はステップS41に進む。一方、電圧信号の信号強度が対応する基準値以下の場合(ステップS14においてNO)、処理はステップS16に進む。
ステップS16において、CPU42は、このタッチ入力を無効と判定する。この後、処理はステップS11に戻る。実施の形態1では、タッチ入力を無効と判定した場合にも、CPU42はその判定結果を判定結果テーブルTrに書き込む(図7参照)。しかし、本実施の形態のように、タッチ入力を無効と判定した場合には、CPU42は判定結果を判定結果テーブルTrに書き込まなくてもよい。
ステップS41において、CPU42は、タッチ入力の位置に対応するポリゴンのz座標と所定値(たとえば0.5mm)とを比較する。ポリゴンのz座標が所定値よりも大きい場合(ステップS41においてYES)、処理はステップS42に進む。一方、ポリゴンのz座標が所定値以下の場合(ステップS41においてNO)、処理はステップS43に進む。
ステップS42において、ポリゴンのz座標が所定値より大きい位置では視差が大きい可能性がある。そのため、CPU42は、視差補正係数を用いて視差補正処理を実行する。
ステップS43において、CPU42は、視差補正処理後のx座標およびy座標に対して、タッチ入力の判定結果を判定結果テーブルTrに書き込む。RAM52は、更新された判定結果テーブルTrを記憶する。ステップS43の処理が終了すると、全体の処理が完了する。
本実施の形態によれば、タッチ操作部のタッチされる位置と、液晶表示部に表示される画像の位置との間で視差が生じる場合に、タッチ入力の判定精度を向上させることができる。
なお、各実施の形態では静電容量方式のタッチパネルシステムについて説明したが、本発明が適用可能なタッチパネルの方式はこれに限定されるものではない。本発明は、たとえば抵抗膜方式(アナログ方式またはマトリックス方式)、静電容量方式(投影型静電容量方式)、光学方式(赤外線走査方式、赤外線遮光方式、画像認識方式)、超音波方式(表面弾性波方式、音響パルス認識方式)、および電磁誘導方式についても適用可能である。
初期テーブルTi(図5(B)参照)、判定結果テーブルTr(図8参照)、補正テーブルTc(図14参照)、および補正テーブルTp(図23参照)のデータ構造はあくまで一例である。これらのテーブルのデータ構造は上記に限定されるものではない。また、初期テーブルTiはEEPROM53に記憶されていてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。