JP5925539B2 - ガラス板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、成形されたガラス板の端面を研削する工程を含んだガラス板の製造方法に関する。
従来より、TFT(Thin Film Transistor)を使用したフラットパネルディスプレイ等のガラス板を製造する際、成形されたガラス素板を所定の大きさに切断する。ガラス素板の切断では、機械的な切断とレーザによる溶断があり、一般的には機械的な切断が多く用いられている。機械的な切断によるガラス板の切断では、ガラス板に機械的にダイヤモンドカッター等により切れ目を入れて切断するため、切断された端面には、数μm〜100μm程度の深さのクラックが生成されている。このクラックは、ガラス板の機械的強度の劣化を招くため、研削により取り除くことが行われる。すなわち、ガラス板の機械的強度を上げ、ガラス板のカケ、ワレを防止し、後工程でのハンドリングをし易くするために、ガラス板の端面の面取りを伴うガラス板の端面の研削、さらには、端面の研磨が行われる。
さらにガラス板は、ガラス主表面に塵や微粒子等が付着しないようにきれいに洗浄される。
特に、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いるガラス板(以降、フラットパネルディスプレイ用ガラス板という)は、縦方向長さ及び横方向長さが数1000mmであり、厚さは例えば0.7mmさらには0.5mm以下である。このため、フラットパネルディスプレイの製造中ガラス板に大きな歪を与えて破損が発生しないように、また、ガラス板の端面に固着したガラスの微粒子等が、ガラス主表面に移動して付着し、ガラス主表面に凸部を形成することで、TFT(Thin Film Transistor)等の形成の障害となることを防止するために、ガラス板の端面の研削、研磨は十分に行われる。
ガラス板の端面の研削では、一般に研削ホイール等が用いられる。しかし、研削ホイールを長期間使用すると、研削ホイールの研削面から砥粒が脱落したり、摩耗したり、目詰まりを起こし、さらに、研削面が摩擦により高温となり砥粒が熱により破損する場合がある。このため、研削ホイールを用いる研削の際、研削ホイールの研削面を冷やし、また、ガラス板の端面と研削ホイールの研削面との間の摩擦抵抗を調整するために、一般に、水を加工液として研磨面及び端面に供給することが行われている。加工液には、研削ホイールの研削面とガラス板の端面との間の摩擦力を低減させること(潤滑性)、ガラス板への熱の流入を抑制すること(冷却性)、研削面とガラス板の端面との間に加工液の介在により、研削面の砥粒やチップポケット(切り屑の逃げ場となる空間)への切り屑の溶着を防ぐこと(浸透性、洗浄性)、が少なくとも機能として要求される。
しかし、研削ホイールの研削面及びガラス板の端面に水を加工液として供給しても、ガラス板の端面と研削ホイールの研削面との間の摩擦抵抗を十分に低下できず、依然として大きい(潤滑性が悪い)場合がある。この結果、研削ホイールの研削面は摩擦により高温化し砥粒の早期摩耗により寿命を早める場合がある。
一方、ガラス加工において、高い加工性を有し、泡立ちを少なく抑え、加えてpHの上昇を抑制し、さらに、十分な防錆性を発現する加工液が知られている(特許文献1)。
特開2011−63466号公報
しかし、上記加工液を用いた場合、上記加工液の成分がガラス主表面に付着することが多く、後工程で行う洗浄処理で確実に洗浄できない虞がある。すなわち、洗浄液の成分と加工液の成分が異なることから、洗浄液で、ガラス主表面に付着した加工液の成分を除去できない場合がある。この場合、ガラス板の主表面に付着した成分が、薄膜を形成し、あるいは微小な凸部を形成し、後工程で行われるTFTの形成等の処理の障害になる虞がある。
そこで、本発明は、ガラス板の端面を研削あるいは研磨する際、潤滑性を有し、洗浄によって容易に除去できる加工液を用いて、効率よくガラス板を製造することができるガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、表示装置用のガラス板の製造方法である。当該製造方法は、
成形されたガラス板の端面を、研削ホイールあるいは研磨ホイールを回転させることにより研削あるいは研磨をする工程と、
端面が研削あるいは研磨された前記ガラス板の主表面を、洗浄液を用いて洗浄する工程と、を有する。
前記研削あるいは研磨をする工程では、非イオン系又は陰イオン系の組成物を界面活性剤として含む液を水に加えた加工液を用いて前記端面の研削あるいは研磨が行われ、
前記加工液には、表面張力が50mN/m未満になるように、前記界面活性剤が含有される。
前記界面活性剤を含む液はアルカリ性である、ことが好ましい。
前記洗浄する工程では、非イオン系又は陰イオン系の組成物を界面活性剤として含む液を水に加えた洗浄液を用いて前記ガラス板の表面の洗浄が行われ、前記加工液に用いる界面活性剤の含有率は、前記洗浄液に用いる界面活性剤の含有率に比べて低い、ことが好ましい。
前記研削あるいは研磨する工程では、前記研削ホイールを所定の周速度で回転させる駆動モータを用いて前記研削ホイールを回転させ前記ガラス板の端面を加工し、前記駆動モータの加工電流値の上昇を抑制するよう、前記水に加える前記液の量を決定する、ことが好ましい。
前記加工液は、前記界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含む、ことが好ましい。
前記ガラス板は、表面にTFTが形成される液晶ディスプレイ用ガラス基板であって、0.7mm以下の厚さを有し、前記研削する工程では、前記ガラス板の端面を曲面状に研削する面取り加工を行う、ことが好ましい。
前記ガラス板の組成は、SiO :50〜70質量%、Al :10〜25%質量%を含むアルミノシリケートガラスであって、さらにR’ O:0.0質量%以上2.0質量%以下である、ことが好ましい。
前記研削あるいは研磨する工程では、前記洗浄液に含まれる界面活性剤と同じ界面活性剤を水に加えた加工液を用いて前記端面の研削あるいは研磨が行われる、ことが好ましい。
上述のガラス板の製造方法によれば、ガラス板の端面を研削あるいは研磨する際、潤滑性を有し、洗浄によって容易に除去できる加工液を用いて、効率よくガラス板を製造することができる。
本実施形態のガラス板の製造方法の工程図である。 本実施形態の熔解工程〜採板・切断工程を行う装置を模式的に示す図である。 本実施形態の端面加工工程を説明する図である。 本実施形態の洗浄工程を説明する図である。 本実施形態の研削で用いる加工液の界面活性剤の濃度に対する表面張力の変化の一例を示す図である。 本実施形態の研削工程で使用する駆動モータの加工電流値の、ガラス板の研削加工枚数に対する変化の例を示す図である。
以下、本発明のガラス板の製造方法について本実施形態に基づいて詳細に説明する。
[ガラス板の組成]
本実施形態で製造されるガラス板は、特に限定されないが、例えば、携帯電子機器等の電子機器の表示画面に用いるカバーガラスや、フラットディスプレイパネル等の表示装置の基板等に用いられる。
ガラス板の組成は特に限定されないが、例えば、以下の組成比率のガラス板に適用され得る。
(a)SiO:50〜70質量%、
(b)B:5〜18質量%、
(c)Al:10〜25質量%、
(d)MgO:0〜10質量%、
(e)CaO:0〜20質量%、
(f)SrO:0〜20質量%、
(o)BaO:0〜10質量%、
(p)RO:5〜20質量%(ただしRはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる、ガラス板に含有される全ての成分であり、少なくとも1種である)、
(q)R’O: 0.0質量%以上2.0質量%以下(ただしR’はLi、NaおよびKから選ばれる、ガラス板に含有される全ての成分であり、少なくとも1種である)、
(r)酸化スズ、酸化鉄および酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を合計で0.05〜1.5質量%。
[ガラス板の製造方法]
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法の工程図である。本実施形態のガラス板の製造方法は、フラットパネルディスプレイ用ガラス板の製造方法である。本実施形態のガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、成形工程(ST4)と、徐冷工程(ST5)と、採板・切断工程(ST6)と、端面加工工程(ST7)と、洗浄工程(ST8)と、検査・梱包・出荷工程(ST9)と、を有する。出荷工程では、梱包工程でコンテナ等への箱詰めされた複数のガラス板の束が、納入先の業者に搬送される。
図2は、熔解工程(ST1)〜採板・切断工程(ST6)を行う装置を模式的に示す図である。当該装置は、図2に示すように、主に熔解装置200と、成形装置300と、採板装置400と、を有する。熔解装置200は、熔解槽201と、清澄槽202と、攪拌槽203と、ガラス供給管204,205,206と、を有する。ガラス供給管204は、熔解槽201と清澄槽202を接続し、ガラス供給管205は、清澄槽202と攪拌槽203を接続する。ガラス供給管206は、攪拌槽203と成形装置300とを接続する。
熔解工程(ST1)では、熔解槽201内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および電極を用いた直接通電で加熱して熔解することで熔融ガラスMGを得る。
清澄工程(ST2)は、清澄槽202において行われ、ガラス供給管204を通って供給され熔融ガラスMGを清澄槽202内で加熱する。清澄槽202では、加熱された熔融ガラスMG中に含まれる気泡が、加熱された熔融ガラスMG中の清澄剤の還元反応で生じた酸素を吸収することにより成長し液面に浮上して放出される。その後、熔融ガラスMGを冷却する過程で生じる清澄剤の還元反応により気泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラスMG中に吸収されて気泡が消滅する。これにより清澄槽202は、熔融ガラスMGを清澄する。
均質化工程(ST3)では、ガラス供給管205を通って供給された熔融ガラスMGを、攪拌槽203がスターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。この後、ガラス供給管206を通して熔融ガラスMGが成形装置300に供給される。
成形装置300では、成形工程(ST4)及び徐冷工程(ST5)が行われる。
成形工程(ST4)では、熔融ガラスMGをシートガラスGに成形し、シートガラスGの流れを作る。本実施形態では、成形体310を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。徐冷工程(ST5)では、成形装置300は、成形されて流れるシートガラスGを引き伸ばし、かつ、一定の厚さを有し、かつ反り及び歪みが生じないように温度調整をしてシートガラスGを冷却する。
採板・切断工程(ST6)では、切断装置400が、成形装置300から供給されたシートガラスGを所定の長さに切断することで、板状のガラス板に採板する。採板されたガラス板はさらに、図示されないダイヤモンドカッターあるいはレーザ等により所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板11が作製される。
なお、本実施形態の成形工程では、ダウンドロー法を用いるが、ダウンドロー法に限定されず、フロート法、ロールアウト法等を成形工程に用いることができる。
次に、端面加工工程が行われる(ST7)。端面加工工程では、作製されたガラス板11に端面加工が施される。
図3は、端面加工工程を説明する図であり、ガラス板11の端面加工を行う端面加工処理ラインの装置配置を示す。ガラス板の端面加工処理ライン10には、第1面取り機12、第2面取り機14、コーナーカット機16、および反転機18と、が設けられ、第1面取り機12、反転機18、第2面取り機14、および、コーナーカット機16が、搬送経路の上流側から順に配置されている。
図3に示すように、成形されたガラス板11を搬送しながら、研削ホイールあるいは研磨ホイールを回転させることによりガラス板の端面を研削、研磨する。具体的には、第1面取り機12において、矩形状のガラス板11の短辺の端面について、搬送経路の両側に設けられた、例えば研削用のダイヤモンドホイール12aを用いて研削が行われる。この後、搬送経路の両側に設けられた研磨ホイール12bを用いて研削されたガラス11の端面の研磨が行われる。ダイヤモンドホイール12aの砥粒には、例えば#400のダイヤモンド砥粒が用いられ、研磨ホイール12bの砥粒には、例えば#400のSiC砥粒が用いられる。研磨後、反転機18は、ガラス板11の向きを90度回転させて、搬送経路に沿ってガラス板11を第2面取り機14に搬送する。第2面取り機14において、矩形状のガラス板11の長辺の端面に対して、搬送経路の両側に設けた研削用ダイヤモンドホイール14aを用いて研削を行い、この後、搬送経路の両側に設けられた研磨ホイール14bを用いて研削されたガラス板11の端面の研磨が行われる。ダイヤモンドホイール14aの砥粒には、例えば#400のダイヤモンド砥粒が用いられ、研磨ホイール14bの砥粒には、例えば#400のSiC砥粒が用いられる。この後、コーナーカット機16にガラス板11は搬送され、コーナーカット用ダイヤモンドホイール16aを用いてガラス板11のコーナーが研削、研磨される。この場合、ガラス板11の搬送速度は、例えば5m/分とされて、ガラス板11の連続生産が行われる。コーナーカット用ダイヤモンドホイール16aの砥粒には、例えば#400のダイヤモンド砥粒が用いられる。
ここで、ガラス板11の端面の研削及び研磨では、後述する洗浄工程(ST8)で用いる洗浄液に含まれる界面活性剤と界面活性剤を水に加えた加工液を用いて研削、及び研磨が行われる。この点は後述する。
次に、洗浄工程が行われる(ST8)。洗浄工程では、端面加工されたガラス板11を洗浄する。
図4は、洗浄工程を説明する図である。図4に示されるように、端面が研削されたガラス板11の主表面が、洗浄液を用いて洗浄される。具体的には、複数の洗浄ブラシ30がガラスシート24の幅方向に沿って二列に並んだ洗浄装置が洗浄に用いられる。洗浄ブラシ30は例えば円形状をなしており、複数の繊維が円板状の基部に植毛されている。洗浄の際、洗浄ブラシ30は、隣接する洗浄ブラシ30と互いに反対方向に回転する。また、洗浄装置には、ガラス板11の幅方向に沿って、洗浄液をガラス板11上に供給する供給ノズル32が複数設けられている。洗浄液は界面活性剤を含んでいる。洗浄ブラシ30は、ガラス板11の両側の主表面の他にガラス板11の端面も洗浄する。
また、洗浄工程において、複数のガラス板11を図示されないカセットに収容し、洗浄液が収容された図示されない洗浄槽にガラス板11を浸漬して超音波による洗浄を行ってもよい。
最後に、検査・梱包・出荷工程が行われる(ST9)。具体的には、ガラス板11に気泡、脈理、あるいは失透等の異常欠陥の有無が、図示されない欠陥検査装置を用いて検査された後、検査合格品のガラス板11が最終製品としてガラス板の束の形態で梱包され、図示されないコンテナに収納されて、トラック等の車両により、納入先に出荷される。
このようなガラス板の製造方法において、ガラス板11の端面の研削及び研磨を行う端面加工工程(ST7)では、洗浄工程(ST8)で用いる洗浄液に含まれる界面活性剤と同じ界面活性剤を水に加えた加工液を用いてガラス板11の端面の研削及び研磨が行われる。加工液に用いる界面活性剤の含有率は、洗浄液に用いる界面活性剤の含有率に比べて低い。
界面活性剤としては、例えば非イオン系や陰イオン系等の組成物が用いられる。このような界面活性剤を含む洗浄液として、例えば、非イオン系を界面活性剤として含む無機アルカリ性洗浄剤製品名KG(横浜油脂工業株式会社製)が挙げられる。
加工液に用いる界面活性剤は、加工液における表面張力が50mN/m未満になるように、加工液に対する含有率が調整されることが好ましい。加工液の表面張力が50mN/m以上である場合、加工液は研削、研磨における潤滑性を確保できず、研削ホイールや研磨ホイールを駆動するモータの加工電流値の上昇を抑制することができない。なお、表面張力は例えば静的表面張力測定法を用いた市販の表面張力計によって計測することができる。
なお、研削ホイール及び研磨ホイールは、図3に示すダイヤモンドホイール12a、及び研磨ホイール12b、ダイヤモンドホイール14a、及び研磨ホイール14b、コーナーカット用ダイヤモンドホイール16aを含む。
また、加工液は、界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含むことが好ましい。臨界ミセル濃度とは、界面活性剤の含有量を増やしても、表面張力が効果的に低下せず、略一定値を示すときの界面活性剤の臨界濃度をいう。図5は、界面活性剤に非イオン系を用い、加工液の界面活性剤濃度に対する表面張力の変化の一例を示す図である。この場合、臨界ミセル濃度は0.3%と算出されるため、界面活性剤の、加工液における含有率は0.3%以上であることがより好ましい。この場合、加工液の表面張力は40mN/m以下となる。なお、臨界ミセル濃度は、濃度調整、撹枠、表面張力測定を臨界ミセル濃度に達するまで自動で行う市販の自動測定装置などにより求めることができる。
加工液に用いる水は、逆浸透膜によるフィルタ処理を行ったRO水を用いることができる。また、加工液に用いる水は、イオン交換処理、EDI(Electrodeionization)処理、逆浸透膜によるフィルタ処理、及び脱炭酸ガス装置を通した脱炭酸ガス処理を施した純水であることが、ガラス基板の表面を清浄に保つ点で好ましい。具体的には、フィルタを用いて微粒子等の異物を水から除去し、この後、活性炭を透過させて有機物を除去した後、イオン交換処理、EDI(Electrodeionization)処理、逆浸透膜によるフィルタ処理、及び脱炭酸ガス装置を通した脱炭酸ガス処理を施すことが好ましい。イオン交換処理では、水に含まれるイオン性物質、例えば、塩素イオンやナトリウムイオン等を、イオン交換樹脂膜を用いて水から除去する。EDI処理では、イオン交換樹脂膜を用い、かつ電極に電位を与えて形成された電位勾配を利用して、水からイオン性物質をより精度良く除去する。さらに、逆浸透膜(RO膜)によるフィルタ処理では、イオン性物質、塩類、あるいは有機物を水から除去する。さらに、脱炭酸ガス処理では、脱炭酸ガス装置を用いて炭酸ガスを水から除去する。
このように、本実施形態の端面加工工程では、洗浄工程で用いる洗浄液に含まれる界面活性剤と同じ界面活性剤を水に加えた加工液を用いてガラス板11の端面の研削あるいは研磨が行われる。したがって、研削時あるいは研磨時の研削抵抗あるいは研磨抵抗は抑制される他、洗浄工程で用いる界面活性剤と同じ界面活性剤を用いるので、洗浄工程において、研削時にガラス板11の主表面に付着した界面活性剤の成分を洗浄液で容易に洗浄することができる。研削抵抗あるいは研磨抵抗が小さくなるので、研削あるいは研磨によって発生する摩擦熱も抑制されるので、研磨面からガラス板11への熱の流入を抑制することができる。また、加工液は界面活性剤を含むので、ガラス板11の端面の洗浄も同時に行われる。勿論、加工液を用いるので、研削面の砥粒やチップポケット(切り屑の逃げ場となる空間)への切り屑の溶着を防ぐこともできる。
本実施形態で用いる加工液には、表面張力が50mN/m未満になるように、界面活性剤が含有されるので、研削ホイールや研磨ホイールを駆動する駆動モータの加工電流値の上昇を抑制することができる。このため、研削時の研削抵抗あるいは研磨時の研磨抵抗が抑制され、研削ホイールや研磨ホイールの砥粒が受ける熱あるいは力が低減される。このため、研削ホイールや研磨ホイールの寿命も長くなる。
また、本実施形態の加工液が、界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含むことで、研削あるいは研磨時の研削抵抗あるいは研磨抵抗を確実に抑制することができる。
さらに、本実施形態で用いる水を、イオン交換処理、EDI(Electrodeionization)処理、逆浸透膜によるフィルタ処理、及び脱炭酸ガス装置を通した脱炭酸ガス処理を施した水を用いることで、ガラス板11の端面のみならず主表面にも、水に含まれていた不純物の成分が付着する機会が減少する。
本実施形態のガラス板の製造方法は、特に、TFT等を形成するために、ガラス板11の主表面の洗浄精度が要求されるフラットディスプレイパネルの表示装置の基板に好適に用いることができる。
本実施形態では、コーナーカットを含む端面の研削及び研磨時に用いる加工液が、洗浄工程に用いる界面活性剤と同じ界面活性剤を含むが、研削及び研磨の少なくとも一方において用いる加工液が、洗浄工程に用いる界面活性剤と同じ界面活性剤を含んでもよい。
[実施例]
本実施形態の効果を調べるために、非イオン系の組成物を界面活性剤として含む横浜油脂工業株式会社製無機アルカリ性洗浄剤製品名KGを用いて、上述した純水に上記界面活性剤を含ませた加工液を作成した。この加工液を用いて、ダイヤモンドホイール12aを研削ホイールとして用いてガラス板11の端面の研削を、図3に示す端面加工処理ライン10上で行った。
ガラス基板11として、以下のガラス組成のガラスを用いた。
SiO: 60質量%、
: 10質量%、
Al: 19.8質量%、
CaO: 5質量%、
SrO: 5質量%、
SnO: 0.2質量%。
ダイヤモンドホイール12aの砥粒は#400とした。ダイヤモンドホイール12aは、略39m/秒の周速度で回転させ、1100mm×1300mmのサイズのガラス板11を送り速度9m/分で搬送した。その際、ガラス板11の端面とダイヤモンドホイール12aの研削面の間に加工液を供給して、ガラス板11の端面を曲面状に研削する面取り加工を行った。
加工液として、純水(従来例)の他に、逆浸透膜によるフィルタ処理を施した水に界面活性剤を0.05%(実施例1)、0.1%(実施例2)、0.3%(実施例3)の濃度で加えた3種類の加工液を用いた。実施例3の0.3%が、臨界ミセル濃度である。
加工液の表面張力は、図5に示すように、従来例>実施例1>実施例2>実施例3となり、実施例2、3において表面張力は50mN/m未満であった。
ガラス板11の端面の研削時、ダイヤモンドホイール12aを略39m/秒の周速度を一定に維持するためにダイヤモンドホイール12aの駆動モータに要する加工電流値を計測した。図6は、計測結果の一例である。すなわち、図6は、上記駆動モータに要する加工電流値が、ガラス板11の研削加工枚数に対してどのように変化するかを示している。図6に示すように、従来例及び実施例1〜3のいずれの場合においても、研削加工枚数が増えるにつれて加工電流値が増大した。これは、ダイヤモンドホイール12aの加工研削力の低下によるものである。しかし、従来例に比べて実施例1、実施例1に比べて実施例2、実施例2に比べて実施例3の方が、ガラス板11の研削加工枚数に対する加工電流値の増大が抑制されていることがわかる。特に、界面活性剤を、臨界ミセル濃度である0.3%含有した加工液では、ガラス板の研削加工枚数が増加しても加工電流値が上昇しなかった。また、実施例1〜3を用いて研削されたガラス板11の端面の加工結果も、従来例の加工液を用いて研削されたガラス板11の端面の研削結果と同様の加工精度であった。
以上より、洗浄工程で用いる洗浄液に含まれる界面活性剤を水に含有させた加工液は、研削、研磨において加工液は潤滑性を有しつつ、加工結果も良好であることがわかった。したがって、加工液を用いて、効率よくガラス板11を製造することができる。
以上、本発明のガラス板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
10 端面加工処理ライン
12 第1面取り機
12a,14a ダイヤモンドホイール
12b,14b 研磨ホイール
14 第2面取り機
16 コーナーカット機
16a コーナーカット用ダイヤモンドホイール
18 反転機
30 洗浄ブラシ
32 供給ノズル
200 熔解装置
201 熔解槽
202 清澄槽
203 攪拌槽
204,205,206 ガラス供給管
300 成形装置
310 成形体
400 切断装置

Claims (8)

  1. 表示装置用のガラス板の製造方法であって、
    厚さ0.7mm以下に成形されたガラス板の端面を、研削ホイールあるいは研磨ホイールを回転させることにより研削あるいは研磨をする工程と、
    端面が研削あるいは研磨された前記ガラス板の主表面を、洗浄液を用いて洗浄する工程と、を有し、
    前記研削あるいは研磨をする工程では、非イオン系又は陰イオン系の組成物を界面活性剤として含む液を水に加えた加工液を用いて前記端面の研削あるいは研磨が行われ、
    前記加工液には、表面張力が50mN/m未満になるように、前記界面活性剤が含有される、ことを特徴とする表示装置用のガラス板の製造方法。
  2. 前記界面活性剤を含む液はアルカリ性である、請求項1に記載の表示装置用のガラス板の製造方法。
  3. 前記洗浄する工程では、非イオン系又は陰イオン系の組成物を界面活性剤として含む液を水に加えた洗浄液を用いて前記ガラス板の表面の洗浄が行われ、
    前記加工液に用いる界面活性剤の含有率は、前記洗浄液に用いる界面活性剤の含有率に比べて低い、請求項1または2に記載の表示装置用のガラス板の製造方法。
  4. 前記研削あるいは研磨をする工程では、前記研削ホイールを所定の周速度で回転させる駆動モータを用いて前記研削ホイールを回転させ前記ガラス板の端面を加工し、
    前記駆動モータの加工電流値の上昇を抑制するよう、前記水に加える前記液の量を決定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置用のガラス板の製造方法。
  5. 前記加工液は、前記界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置用のガラス板の製造方法。
  6. 前記ガラス板は、表面にTFTが形成される液晶ディスプレイ用ガラス基板であって
    前記研削する工程では、前記ガラス板の端面を曲面状に研削する面取り加工を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置用のガラス板の製造方法。
  7. 前記ガラス板の組成は、SiO:50〜70質量%、Al:10〜25%質量%を含むアルミノシリケートガラスであって、さらにR’O:0.0質量%以上2.0質量%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示装置用のガラス板の製造方法。
  8. 前記研削あるいは研磨をする工程では、前記洗浄液に含まれる界面活性剤と同じ界面活性剤を水に加えた加工液を用いて前記端面の研削あるいは研磨が行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示装置用のガラス板の製造方法。
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